• 検索結果がありません。

〈判例研究〉企業税条例の法律適合性--神奈川県臨時特例企業税条例事件最高裁判決を事例に(最高裁第一小法廷判決平成25年3月21日(民集67巻3号438頁))

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "〈判例研究〉企業税条例の法律適合性--神奈川県臨時特例企業税条例事件最高裁判決を事例に(最高裁第一小法廷判決平成25年3月21日(民集67巻3号438頁))"

Copied!
36
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)企業税条例の法律適合性. 企業税条例 の法律適合性 神奈川県臨時特例企業税条例事件最高裁判決を事例に (最 高 裁 第 一 小 法 廷 判 決 平 成25年3月21日(民. 村 1.は. じめ に. 2.本. 件の概要. (1)臨 時 特 例 企 業 税 条 例 制 定 の 経 緯 (2)臨 時 特 例 企 業 税 条 例 の 内 容 (3)地 裁,高 裁 の 判 断 (a)地 裁 判 決 (b)高 裁 判 決 3.最. 高 裁 判 決(破 棄 自判). (1)地 方 公 共 団 体 の 条 例 制 定 と課 税 権 (2)臨 時 特 例 企 業 税 条 例 に よ る課 税 と法 律 の 規 定 4.本. 件の整理. (1)地 方 公 共 団 体 の 条 例 制 定 と課 税 権 (2)地 方 税 法 と条 例 に よ る課 税 5.研. 究. (1)憲 法 上 の 地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 (2)地 方 税 法 と地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 (3)本 件 最 高 裁 判 決 の 意 義 (a)地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 (b)徳 島 市 公 安 条 例 事 件 との 関 係 (c)地 方 税 条 例 と地 方 税 法 の 関 係 (d)金 築 補 足 意 見 6.お. わ りに(若 干 の 検 討). 一45一. 集67巻3号438頁)). 中. 洋. 介.

(2) 近畿大学法学. 1.は. 第61巻第4号. じ め. に. 地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 につ いて は学 説 に お いて も様 々な 議 論 が な され, 特 に本 件 にお い て は,高 裁 判 決 にお い て,「 当事 者 双 方 か ら多 くの行 政 法 ・ 税 法 学 者 を 中心 とす る専 門 家 の 意 見 書 等 が 証 拠 と して 提 出 され て い る。 そ れ らは,被 控 訴 人 の 主 張 を 結 論 と して 支 持 す る もの(碓 井 光 明,金 子 宏, 岡 田正 則,武 田 昌輔,宇 賀 克 也,長 谷 部 恭 男,水 野 忠 恒,い ず れ も甲号 証) と控 訴 人 の 主 張 を 結 論 と して 支 持 す る もの(品 川 芳 宣,三 木 義 一,兼 子 仁, 中里 実,人 見 剛,占 部 裕 典,高 木 光,阿 部 泰 隆,吉 村 政 穂,鈴 木 庸 夫 等, いず れ も乙 号 証)と. に,大 き く二 分 され て お り,ま た,結 論 を 同 じ くす る. 見 解 の 中で も,そ の 論 拠 は必 ず しも 同一 で はな い。 この こ と は,本 件 の 争 点 が 慎 重 な 検 討 を 要 す る困 難 な 問 題 で あ る こ とを 如 実 に表 して い る」 と さ れ る よ う に,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 につ いて,法 律 と条 例 の 関 係 に お いて 条 例 に よ って 認 め られ る範 囲 等 につ いて 議 論 の あ る と こ ろで あ る。 本 件 最 高 裁 判 決 以 降 も地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 につ いて は学 説 に お いて も 様 々な 議 論 が な され,多. くの 研 究 者 に よ って 判 決 の 意 義 や 地 方 公 共 団 体 の. 課 税 権 につ い て の検 討 が な され て い る とこ ろ で は あ るが(1),本 稿 で は最 高 裁 判 決 の 意 図 す る と こ ろを 明 らか に し,憲 法 上 の 地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 に つ いて 検 討 す る こ と とす る。 (1)人 見 剛 「 法定外税条例の地方税法適合性 法 学 教 室395号(2013年)44頁. 神 奈 川県 臨 時特 例 企 業 税 条 例 事 件 」. 以 下,木 村 草 太 「租 税 判 例 速 報. 例 企 業 税 条 例 事 件 上 告 審 判 決 」 ジ ュ リス ト1456号(2013年)8頁. 神奈川県臨時特 以 下,其. 樹 「神 奈 川 県 臨 時 特 例 企 業 税 最 高 裁 判 決 」 自治 総 研417号(2013年)35頁. 田茂 以 下,. 渋 谷 雅 弘 「神 奈 川 県 臨 時 特 例 企 業 税 事 件 最 高 裁 判 決 に つ い て 」地 方 税64巻6号 (2013年)2頁. 以 下,碓 井 光 明 「 神 奈川 県 臨 時特 例 企 業 税 と地 方 税 法 」 磯 部 力 ・. 小 幡 純 子 ・斎 藤 誠 編 『地 方 自治 判 例 百 選 〔 第4版 〕 」(有 斐 閣,2013年)56-57頁 な ど。 一46一.

(3) 企業税条例の法律適合性. 2.本. 件 の概 要. (1)臨 時 特 例 企 業 税 条 例 制 定 の 経 緯 神 奈 川 県 が 県 税 の 減 収 に見 舞 わ れ,そ の 後 の 財 政 危 機,財 源 不 足 を 背 景 と して,法 人 事 業 税 の外 形 標 準 課 税 が 導入 され る ま で の 間 につ き,臨 時 的, 特 例 的 措 置 と して の 臨 時 特 例 企 業 税 を 賦 課 徴 収 す るた めの 神 奈 川 県 臨 時 特 例 企 業 税 条 例(平 成13年 神 奈 川 県 条 例 第37号:以 に制 定 した(同 年3月21日 8月1日. 下 本 件 条 例)を 平 成13年. 県 議 会 可 決,同 年6月22日. 総 務 大 臣 同意,同 年. 施 行)。 本 件 条 例 制 定 に 関 して は,平 成10年 度 の急 激 な税 収 の 減. 少 に対 応 す る た め に平 成10年12月 に設 置 され た,神 奈 川 県 地 方 税 制 等 研 究 会 に お いて の 検 討 を 踏 まえ た もの で あ る。 この 研 究 会 は,「 『神 奈 川 県 を は じめ とす る大 都 市 圏 の 地 方 自治 体 は,い ず れ も深 刻 な 財 政 危 機 に直 面 して い るが,今 後 の 少 子 高 齢 化 社 会 へ の 対 応 や 分 権 型 社 会 の 実 現 に向 けて,住 民 ニ ー ズ に的 確 に応 え 得 る,確 固 た る財 政 基 盤 を 構築 した い。 この た め, 県 独 自の 税 源 充 実 策 及 び大 都 市 圏 自治 体 にふ さわ しい地 方 税 財 政 制 度 の あ り方 につ いて 検討 して ほ しい』 との 諮 問 」(2)を 神 奈 川 県 知 事 よ り受 け た こ と か ら設 置 さ れ,こ. こで の 検 討 に 当 た って は,「 ア. や 地 域 経 済 の 振 興 を 重 視 した税 制,イ を 賄 うの に ふ さわ しい 税 制,ウ. 神 奈 川 ら しい生 活 環 境. 神 奈 川 と い う大 都 市 圏 特 有 の 需 要. 財 政 危 機 に対 応 で き る強 固 な 税 制,工. 景 気 に左 右 され な い安 定 性 を 兼 ね 備 え た税 制 」 と い う基 本 的 な 方 向 性 に立 脚 す る もの と され,そ. の 上 で,「 法 人 事 業 税 の 外 形 標 準 課 税 の 問題 に対 応. す る考 え 方 や,県 独 自の 税 収 確 保 策 と して の 超 過 課 税 措 置 につ いて 検 討 す る と と も に,法 定 外 普 通(目 的)税. につ いて 方 向 付 けを 」 す る もの で あ っ. (2)「 地 方 税 財 政 制 度 の あ り方 に関 す る中 間報 告 書 」(神 奈 川 県 地 方 税 制 等 研 究 会, 平 成12年5月)ま. え が き。 一47一.

(4) 近畿大学法学. 第61巻第4号. た(3>。 「地 方 税 財 政 制 度 の あ り方 に 関 す る 中 間報 告 書 」(以 下:中 間 報 告 書)に お いて,外 形 標 準 課 税 導 入 や 自動 車 税 等 の 超 過 課 税,生 活 環 境 税 制 等 につ いて の 検 討 が な され て い たが,平 成13年1月 に関 す る報 告 」(以 下:最. 終 報 告 書)に. の 「法 人 課 税 の 臨 時 特 例 措 置. お い て,外 形 標 準 課 税 と して の 臨. 時 特 例 企 業 税 の 導 入 につ いて 神 奈 川 県 知 事 に対 して 報 告 が な され た。 中間 報 告 書 に お いて は,臨 時 特 例 企 業 税 の 導 入 に関 して,こ れ が 法 人 事 業 税 の欠 損 金 繰 越 控 除 との 関 係 に つ い て,「 欠 損 金 の繰 越 控 除 は,法. 人税. 法 で 認 め られ て い る制 度 で あ るが,法 人 事 業 税 の 課 税 標 準 につ いて は,原 則 と して,法 人 税 の 課 税 標 準 で あ る所 得 の 計 算 の 例 に よ って 算 定 す る こ と と され て い る た め,法 人 税 に お け る繰 越 控 除 制 度 が 法 人 事 業 税 に も その ま ま適 用 され る仕 組 み とな って い る。 しか しな が ら,本 来,法 人 事 業 税 は, 法 人 の 活 動 と都 道 府 県 の 行 政 サ ー ビス との 受 益 関 係 に着 目 して 課 す る税 で あ り,こ う した税 の 性 格 にか ん が み れ ば,法 人 事 業 税 の 課 税 標 準 の 算 定 に お いて,過 去 の 事 業 活 動 の 結 果 と して 生 じた欠 損 金 額 を 控 除 す る合 理 的 理 由 は認 め られ」 ず,「 この 繰 越 控 除制 度 の 適 用 に よ り,都 道 府 県 の基 幹 税 目で あ る法 人 事 業 税 に大 きな 減 収 影 響 が 生 じて お り,結 果 的 に都 道 府 県 に お け る安 定 的 な 行 財 政 運 営 の 阻害 要 因 」 とな って お り,「 しか も,こ の 繰 越 控 除 制 度 は,単 年 度 課 税 方 式 の 例 外 と して 設 け られ て い る もの で あ り, ま た,昭 和61年 度 の 税 制 改 正 で は,当 時 の 厳 しい財 政 事 情 を 踏 まえ,2年 間 の 時 限 措 置 と して 繰 越 控 除 制 度 を 停 止 す る措 置 が 講 じ られ た こ とを 勘 案 す る と,法 人 の 所 得 金 額 を 計 算 す る上 で の 絶 対 的 な 制 度 と は言 え ず,政 策 的 側 面 を 持 っ た制 度 と して 位 置 付 け る こ とが で き る」 こ とか ら,外 形 標 準 課 税 導 入 まで の 間 に お いて 臨 時 的 ・時 限 的 に欠 損 金 の 繰 越 控 除 を 停 止 す る. (3)前. 掲 注(2),「 中 間 報 告 書 」8頁. 。 一48一.

(5) 企業税条例の法律適合性 こ とが 適 当 と した④。 これ を受 け て,最 終 報 告 書 に お い て は,「 法 人 税 法 上,課. 税 標 準 とな る. 『各 事 業 年 度 の所 得 の金 額 』 は,当 該 事 業 年 度 の益 金 の 額 か ら損 金 の 額 を 控 除 した金 額 と され て い る(法 人 税 法 第21条,第22条. 第1項)。. そ して,. 過 去5年 間 に生 じた欠 損 金 額 が あ る場 合,当 該 欠 損 金 額 に相 当 す る金額 は, 当該 各 事 業 年 度 の 所 得 の 金 額 の 計 算 上,損 金 の 額 に算 入 す る こ と と され て い る(同 法 第57条 第1項)。. この よ う に,法 人 税 法 上,損. 金 に算 入 す る こ. と と して い るの は,企 業 が 長 期 にわ た り継 続 的 に活 動 す る こ とを 前 提 と し て い る こ とか ら,『 所 得 』 の概 念 に は,繰 越 欠 損 金 を 差 し引 い た もの と い う意 味 を含 ん で い る と考 え られ る」 が,「 そ の損 金 とす べ き欠 損 金 を 何 年 間 認 め るか につ いて は,政 策 上 の 判 断 に ゆだ ね られ て い る と い うべ きで あ り,ま た,臨. 時 的 に そ の適 用 を一 部 又 は 全 部 遮 断 す る こ とは」,過 去 の 事. 例 か ら も認 め られ る もの で あ り,欠 損 金 に 関 して も,そ の 性 格 に つ い て は, 「一 つ は,通 常 の事 業 活 動 か ら生 じた欠 損 金 で あ り,も. う一 つ は,本 来 の. 事 業 活 動 か ら離 れ て 行 っ た土 地 や 株 式 等 の 投 機 活 動 に よ り生 じた 欠 損 金 」 が 考 え られ,「 この 場 合,損. 金 と して,必. ず 認 め な け れ ば な らな い の は,. 前 者 の 通 常 の 活 動 か ら生 じた繰 越 欠 損 金 で あ って,後 者 の 投 機 活 動 か ら生 じた繰 越 欠 損 金 は,必 ず しも認 め る必 然 性 はな い」 こ とか ら,欠 損 金 の 概 ね30%程. 度 に お いて は,投 機 活 動 等 に よ る もの と して,こ れ につ いて は控. 除 を認 め な い こ と も可 能 で あ る。 そ して,課 の 繰 越 控 除 額 の 一 定 割 合(30%×. 税 標 準 につ い て は,「 欠 損 金. 法 人 事 業 税 の 分 割 基 準 の 相 当 す る割 合). に相 当す る 当期 利 益 が 課 税 標 準 とな る案 が 考 え られ るが,こ れ を 定 義 す る と,『 各 事 業 年 度 の 法 人 事 業 税 の課 税 標 準 で あ る所 得 に,当 該 所 得 の 計 算 に 当 た って 損 金 に算 入 した繰 越 欠 損 金 に相 当す る額 を 加 算 した 額 に一 定 の. (4)前. 掲 注(2),「 中 間 報 告 書 」19-20頁. 。. 一49一.

(6) 近畿大学法学 割 合(30%×. 第61巻第4号 法 人 事 業 税 の分 割 基 準 の相 当す る割 合)を 乗 じた額 。 た だ し,. 当該 額 が,繰 越 欠 損 金 に相 当す る額 の 一 定 の 割 合 を 上 回 る場 合 は,当 該 繰 越 欠 損 金 に相 当 す る額 を上 限 とす る。』」 と し,こ れ は,「 当期 利 益 が 生 じ た場 合 で,欠 損 金 の 繰 越 控 除 額 を 損 金 に算 入 して も,さ. らに法 人 事 業 税 の. 課 税 所 得 が 生 じる と き,こ の よ うな 限 度 額 を 設 定 す る こ と に よ り,欠 損 金 の 繰 越 控 除 額 相 当分 の み を 課 税 対 象 とな る よ う,仕 組 む た め に設 け る もの で あ り,こ れ に よ り,法 人 事 業 税 との 二 重 課 税 を 避 け る こ とが で き る もの で あ る」 もの の,課 税 標 準 につ いて,分 か りや す い税 制 と い う観 点 か らは 上 記 の よ うな 課 税 標 準 規 定 は適 当で はな い と こ ろ,「 課 税 標 準 に つ い て は, 『各 事 業 年 度 の法 人 事 業 税 の 課 税 標 準 で あ る所 得 に,当 該 所 得 の計 算 に 当 た って 損 金 に算 入 した繰 越 欠 損 金 に相 当す る額 を 加 算 した額 に一 定 の 割 合 (法人 事 業 税 の分 割基 準 の相 当 す る 割合)を 乗 じた額 。 た だ し,当 該 額 が, 繰 越 欠 損 金 に相 当す る額 を 上 回 る場 合 は,当 該 繰 越 欠 損 に相 当す る額 を 上 限 とす る。』 こ とが 適 当 で あ る」 と して,法. 定 外 普 通 税 と して の 臨 時 特 例. 企 業 税 の導 入 を提 案 した 。 これ を受 けて 神 奈 川県 は条 例 案 を議 会 に提案 し, 可 決 成 立 し,対 象 とな る法 人 に対 して 臨 時 特 例 企 業 税 が 課 され た。. (2)臨 時 特 例 企 業 税 条 例 の 内 容 本 件 条 例 に は,課 税 の 対 象 とな る法 人 と して,資 本 金 の 額 又 は 出資 金 の 額 が5億. 円未 満 の 事 業 年 度 及 び清 算 中の 事 業 年 度 を 除 く(条 例3条1号),. 県 内 に事 務 所 又 は事 業 所 を 設 けて 行 う法 人(条 例5条)を 例6条. 挙 げて お り,条. に お いて 規 定 され る非 課 税 法 人 を 除 く,い わ ゆ る大 企 業 に対 して 課. 税 され た もの で あ る。 「臨 時 特 例 企 業 税 の課 税 標 準 は,各 課 税 事 業 年 度 にお け る法 人 の事 業 税 の 所 得 割 の 課 税 標 準 で あ る所 得 の 金 額 の 計 算 上,繰 越 控 除 欠 損 金 額 を 損 金 の 額 に算 入 しな い もの と して 計 算 した場 合 に お け る 当該 各 課 税 事 業 年 度 の 一50一.

(7) 企業税条例の法律適合性 所 得 の 金 額 に相 当す る金 額(当 該 金 額 が 繰 越 控 除 欠 損 金 額 に相 当 す る金 額 を 超 え る場 合 は,当 該 繰 越 控 除 欠 損 金 額 に相 当す る金 額)と す る。」(条 例 7条1項)と. 定 め られ た。. 法 人 税 法 に お いて,法 人 税 課 税 に関 して 要 件 を 満 た す 場 合 に は,各 事 業 年 度 開 始 の 日前9年 以 内 に開 始 した事 業 年 度 に お いて 生 じた 欠 損 金 額 につ いて,当 該 欠 損 金 額 に相 当す る金 額 は,当 該 各 事 業 年 度 の 所 得 の 金 額 の 計 算 上,損. 金 の 額 に算 入 す る こ と,い わ ゆ る欠 損 金 繰 越 控 除 を 認 め て お り. (法人 税 法57条1項),そ. して,法 人 事 業 税 につ いて は,地 方 税 法 の 規 定 に. よ り各 事 業 年 度 の 所 得 は,各 事 業 年 度 の 益 金 の 額 か ら損 金 の 額 を 控 除 した 金 額 に よ る もの と し,各 事 業 年 度 の 法 人 税 の 課 税 標 準 で あ る所 得 の 計 算 の 例 に よ って 算 定 す る こ と と して 法 人 事 業 税 に関 して も欠 損 金 繰 越 控 除 が 認 め られ て い る(地 方 税 法72条 の23,1項,改. 正 前 地 方 税 法72条 の14,1項)。. 臨 時 特 例 企 業 税 の 課 税 標 準 は,実 質 的 に この 欠 損 金 繰 越 控 除 の 額 を 課 税 標 準 とす る法 定 外 普 通 税 で あ り,こ こで の 税 率 は,特 別 法 人 以 外 の 法 人 で 3%(平. 成16年4月1日. 以 降 は2%)と. につ いて は条 例8条1項. に よ り2%)。. され た(条 例8条2項,特. 別法人. 本 件 条 例 に よ り臨 時 特 例 企 業 税 を 課 され た原 告 いす ゴ自動 車 が,平 成16 年3月 期 及 び平 成17年3月. 期 に お いて 臨 時 特 例 企 業 税 の 申告 納 付 を 行 って. い た もの の,そ の 後,本 件 条 例 は無 効 で あ り,税 の 納 付 義 務 はな か った も の で あ る と して,平 成17年6月16日 に対 して,同 年7月20日. 申告 内容 の 更 正 の 請 求 を 行 った 。 これ. 付 で 川 崎 県 税 事 務 所 長 が 更 正 す べ き理 由が な い 旨. の 通 知 処 分 を 行 っ た と こ ろ,こ れ を 不 服 とす る審 査 請 求 を 神 奈 川 県 知 事 に 対 して 行 っ た もの の,神 奈 川 県 知 事 は これ を 棄 却 す る裁 決 を した た め,同 年10月25日 に神 奈 川 県 を 被 告 と して,本 件 条 例 が 無 効 で あ る こ とを 理 由 と して,通 知 処 分 の 取 消 し等 を 求 めて 提 訴 した。. 一51一.

(8) 近畿大学法学. 第61巻第4号. (3)地 裁,高 裁 の 判 断 (a)地 裁 判 決 横 浜 地 裁 判 決 平 成20年3月19日(判 「憲法 は,第8章. 時2020号29頁)に. お いて,裁 判 所 は,. 『地 方 自治 』 に お い て,『 地 方 公 共 団 体 の 組 織 及 び運 営 に. 関 す る事 項 は,地 方 自治 の 本 旨 に基 いて,法 律 で これ を 定 め る。』(92条) と規 定 し,さ らに,『 地 方 公 共 団体 は,そ の財 産 を管 理 し,事 務 を処 理 し, 及 び行 政 を 執 行 す る権 能 を 有 し,法 律 の 範 囲 内で 条 例 を 制 定 す る こ とが で き る。』(94条)と. 規 定 して い る。 そ して,地 方 団 体 が,地 方 自治 の 本 旨 に. 従 い,国 か ら独 立 した地 位 に お いて その 財 産 を 管 理 し,事 務 を 処 理 し,及 び行 政 を 執 行 して い くに は,そ の 財 源 を 自 ら調 達 す る権 能,す な わ ち課 税 権 を有 す る こ とが 必 要 で あ る こ とか らす る と,地 方 団 体 の 課 税 権 は,地 方 自治 の 不 可 欠 の 要 素 で あ り,地 方 団 体 の 自治 権 の 一 環 と して,憲 法 上 保 障 され て い る もの と解 す べ きで あ る」 と して,憲 法 上 地 方 公 共 団 体 に対 して 課 税 権 を保 障 して い る もの とす るが,「 地 方 団体 の 課 税 権 が 憲 法 上 保 障 さ れ た もの で あ る と して も,憲 法 は その 具 体 的 内容 につ いて 規 定 す る もの で はな い こ と,地 方 団 体 は その 組 織 及 び運 営 に関 す る事 項 につ き 『法 律 で こ れ を定 め る』 もの と され(憲 法92条),『 法 律 の 範 囲 内』 で 条 例 を 制 定 す る こ と が で き る もの と され て い る こ と(同94条),及. び,租 税 の賦 課 につ い. て は国 民 の 総 合 的 な 税 負 担 の 程 度 や 国 ・地 方 間 な い し地 方 団 体 相 互 間 の 財 源 の 配 分 等 の 観 点 か ら国 家 的 な 調 整 が 必 要 で あ る こ と に照 らせ ば,地 方 団 体 が 課 す る こ とが で き る租 税 の 税 目,課 税 客 体,課 税 標 準,税 率 その 他 賦 課 徴 収 の あ り方 につ いて は,法 律 に よ って その 準 則 な い し枠 を 定 め る こ と が 予 定 され て い る もの と い うべ きで あ る。 す な わ ち,法 律 は,地 方 団 体 が 課 税 権 を 行 使 す る際 の 具 体 的 準 則 な い し枠 を 設 け る もの で あ り,当 該 法 律 が 地 方 団 体 の 課 税 権 を 実 質 的 に否 定 す る もの と して 地 方 自治 の 本 旨 に反 す る場 合 は格 別,地 方 団 体 の 課 税 権 は,具 体 的 に は,当 該 法 律 の 規 定 に従 っ 一52一.

(9) 企業税条例の法律適合性 て 行 使 され な けれ ば な らな い」 と して,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 に つ い て は, 租 税 法 律 主 義 の 下 に存 在 す る こ とを 原 則 と し,地 方 税 法 上,法 律 は あ くま で も準 則 等 を 定 め る もの で あ る と され,具 体 的 に は地 方 公 共 団 体 の 条 例 に 基 づ き賦 課徴 収 がな され る ものの,こ こでの地 方公 共 団体 の 「課税 権 は,… … 地 方 税 法 上 の 具 体 的 準 則 に従 って 行 使 され な けれ ばな らな い もの と い うべ きで あ る」 と して,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 につ いて の 考 え を 示 した 。 そ の上 で,「 法 定 外 税 の創 設 に よ り法 定 税 に係 る規 定 の 趣 旨 に反 す る課 税 を す る こ と は,道 府 県 に お いて 法 定 税 を 法 定 の 準 則 に従 い課 す べ き もの と した地 方 税 法 の 趣 旨 に反 し許 さ れ ず」,違 法 で あ る と し,本 件 に お いて 「法 人 事 業 税 と企 業 税 と は,租 税 と して の趣 旨 ・目的 及 び課 税 客 体 を 共 通 にす る もの で あ り,企 業 税 の 課 税 に よ り,法 人 事 業 税 の 課 税 標 準 につ き欠 損 金 額 の 繰 越 控 除 を 定 め た規 定 の 目的 及 び効 果 が 阻 害 され る こ と は,既 に 判 断 した と お りで あ るか ら,企 業 税 の 課 税 は,地 方 税 法 上 の 当 該 規 定 の 趣 旨 に反 す る もの と い うべ きで あ る」 と結 論 づ け,本 件 条 例 を 違 法 ・無 効 と し,神 奈 川 県 に対 して 臨 時 特 例 企 業 税 と して 納 付 され た 金 額 につ いて の 返 還 を 命 じた。 (b)高 裁 判 決 東 京 高 裁 判 決 平 成22年2月25日(判. 時2074号32頁)に. お いて,裁 判 所 は,. 地 方 公 共 団体 の 課 税 権 が 憲 法 上 の 保 障 で あ る こ とを 前 提 と した上 で,「 憲 法 は,92条. に お いて も94条 に お いて も,地 方 公 共 団 体 の 権 能 な どを 法 律 を. も って 具 体 化 す る もの と して お り,法 律 を 条 例 の 上 位 に置 き,条 例 は法 律 の 範 囲 内で の み 制 定 す る こ とが で き る もの と して い る。 これ は,地 方 公 共 団 体 に 自治 を 認 め る に して も,そ の 基 本 とな る事 項 につ いて は,国 家 的 な 観 点 か らの 調 整 が 必 要 で あ る との 考 え 方 に基 づ くもの と考 え られ る。 と り わ け,租 税 の賦 課 につ いて は,国 税 を含 む国 民 の 総 合 的 な 税 負 担 の 在 り方, 国,都 道 府 県 及 び市 町 村 間 な い し各 地 方 公 共 団 体 相 互 間 の 財 源 の 配 分 等 の 一53一.

(10) 近畿大学法学. 第61巻第4号. 観 点 か ら,国 家 的 な 調 整 が 不 可 欠 で あ るか ら,租 税 に関 す る条 例 も,憲 法 の 規 定 に直 接 基 づ くの で はな く,法 律 の 定 め る と こ ろ に よ り制 定 され るべ き もの と され て い るの で あ り,条 例 は法 律 の 定 め に反 す る こ と はで きな い と解 す べ きで あ る。即 ち,憲 法 に よ り認 め られ た地 方 公 共 団 体 の 課税 権 は, あ くまで も抽 象 的 な もの に と ど ま り,法 律 の 定 めを 待 って 初 めて 具 体 的 に 行 使 し得 る もの とい うべ きで あ る。 地 方 自治 法14条1項,223条. も,そ の. こ と を重 ね て 明 らか に して い る。 ただ し,地 方 公 共 団 体 の 権 能 等 を 規 律 す る法 律 は,憲 法 の 上 記 各 規 定 を 受 けて,地 方 自治 の 本 旨 に基 づ くよ う に制 定 され な けれ ばな らな いの で あ るか ら,実 定 法 の 解 釈 も,で き る限 り憲 法 の 定 め る地 方 自治 の 本 旨 に か な う よ う に行 う こ とが 求 め られ 」,地 方 税 法 は,「 地 方 公共 団 体 の 課 税 権 を具 体 化 す る た め の準 則 を定 め て お り,地 方 公 共 団 体 は,そ の 枠 の 中 に お いて 条 例 を 定 めて,憲 法 の 保 障 して い る課 税 権 を行 使 す る こ とが で き る もの と され て い る。 したが って,課 税 条 例 が 地 方 税 法 の 規 定 に違 反 す る場 合 に は,当 該 条 例 は違 法 無 効 と いわ な けれ ばな らな い。 しか し,課 税 条 例 が 同法 に違 反 す るか ど うか の 判 断 は,法 律 が 条 例 の 上 位 に位 置 す る こ とを 理 由 に,同 法 の 定 めを 偏 重 す るの で はな く,同 法 の 明 文 の 規 定 に違 反 して い る場 合 を 別 とす れ ば,地 方 公 共 団 体 が 憲 法 上 の 課 税 権 を 有 して い る こ とに かん が み て,慎 重 に行 うべ きで あ る」 と して, 課 税 条 例 が 地 方 税 法 に反 す る よ うな 場 合 で あ って も,こ れ が 租 税 法 律 主 義 等 に よ って 法 律 を 優 先 す る もの と して 直 ち に条 例 が 法 律 に反 して 無 効 とす べ きで はな い こ と と した。 そ して,条 例 に よ る課 税 につ いて は,法 律 と条 例 の 関 係 に お いて 徳 島市 公 安 条 例 事 件 最 高 裁 判 決 との 関 係 か ら,条 例 が 法 律 に違 反 す るか ど うか の 判 断 は,「 両者 の 対 象 事 項 と規 定 文 言 とを 対 比 す る の み で な く,そ れ ぞ れ の 趣 旨,目 的,内 容 及 び効 果 を 比 較 し,両 者(法 律 と条 例)の 間 に矛 盾 抵 触 が あ る か ど うか に よ って これ を決 しな け れ ば な らな い」(5)もの と され, 一54一.

(11) 企業税条例の法律適合性 「『矛 盾 抵 触 』 と い うの は,複 雑 な 現 代 社 会 を 規 律 す る多 様 な 法 制 度 の 下 に お いて は,複 数 の 制 度 の 趣 旨や 効 果 に違 いが あ るた め,互 い に他 方 の 趣 旨 や 効 果 を 一 定 程 度 減 殺 す る結 果 を 生 ず る場 合 が あ る こ と は,避 け られ な い もの で あ る こ とや,地 方 議 会 の 制 定 した条 例 を 法 律 に違 反 す るが ゆえ に無 効 で あ る とす る もの で あ る こ とを 踏 まえ る と,単 に両 者 の 規 定 の 間 に大 き な 差 異 が あ る とか,一 方 の 目的 や 達 成 しよ う とす る効 果 を 他 方 が 部 分 的 に 減 殺 す る結 果 とな る こ とを い うの で はな く,一 方 の 目的 や 効 果 が 他 方 に よ りそ の重 要 な部 分 にお い て否 定 され て しま うこ とを い う もの と理 解 され る。 ま た,地 方 税 につ いて 定 め る法 律 と条 例 の 間 に矛 盾 抵 触 が あ るか ど うか の 判 断 に お いて は,憲 法 … … 規 定 を 踏 まえ て,そ の 趣 旨 にか な う解 釈 を す る こ とが 求 め られ 」,こ の よ うな場 合 に は,「 地 方 税 法 が 明 文 で 禁 じて いな く て も,条 例 に よ る規 制 を 禁 止 して い る趣 旨で あ る場 合 に は,条 例 は 同法 に 違 反 す る こ と にな る一 方 で,条 例 が 同法 と は別 の 目的 に基 づ く規 律 を 意 図 す る もの で あ り,そ の 適 用 に よ って 同法 の 規 定 の 意 図 す る 目的 と効 果 を 何 ら阻 害 す る こ とが な い場 合 や,同 法 が 必 ず しも全 国 一 律 同 内容 の 規 制 を す る趣 旨で はな く,各 地 方 の 実 情 に応 じて 別 段 の 規 制 を 付 加 す る こ とを 容 認 す る趣 旨で あ る場 合 等 に は,条 例 は 同法 に違 反 しな い こ と にな 」 り,本 件 に お いて この 点 を 当て は め た場 合,地 方 税 法 に お け る 「法 人 事 業 税 に関 す る規 定 が,法 人 事 業 税 につ いて 繰 越 控 除 欠 損 金 額 に相 当 す る当 期 利 益 に は 課 税 しな い と して い る に と ど ま らず,条 例 で 他 の 税 を 創 設 して これ に課 税 す る こ と も許 さな い と して い るか ど うか が 問 題 にな る」 もの と され る。 「憲 法 は,法. 律 が 地 方 税 の準 則 を 定 め尽 くす べ き こ とを 求 め て い る もの. で はな く,そ うす るか ど うか は,国 の 立 法 機 関 で あ る国 会 が 自 由 に決 め る こ と が で き る もの で あ 」 り,「 地 方 税 法 は,法. (5)最 高 裁 大 法 廷 判 決 昭 和50年9月10日(刑 一55一. 定 普 通 税 の課 税 要 件 等 につ. 集29巻8号489頁)。.

(12) 近畿大学法学. 第61巻第4号. いて は詳 細な規定 を置 いてい るが,法 定外 普通税 の課 税要件等 につ いては,… … い わ ば 白紙 で 地 方 公 共 団体 に委 ね る とい う立 法 態 度 を採 って」 お り,「 地 方 税 法 は,地 方 税 が,す べ て にわ た って 全 国 一 律 同一 で な けれ ばな らな い と考 え て い る もの で はな く,二 義 的 か つ 付 加 的 で あ る と して も,地 域 ご と に異 な る税 制 が あ って も よ い と考 え て い る もの と い うべ きで あ る。 … … 法 定 外 普 通 税 に も準 則 な い し枠 が 必 要 で あ る と い うの で あれ ば,そ の よ うな 立 法 が され な けれ ばな らな いの で あ り,現 行 法 」 は その よ うな 態 度 を 採 っ て いな い と して,地 方 税 法 につ いて は,そ の 規 定 が 全 国 一 律 に強 行 的 に従 うべ き規 定 を 設 けて い るの で はな い と した。 その うえ で,本 件 臨 時 特 例 企 業 税 につ いて,条 例 の 趣 旨,目 的 を 検 討 す る と,「 『県 の 行 政 サ ー ビスを 享 受 し,か つ,当 該 事 業 年 度 に お いて 利 益 が 発 生 して いな が ら,欠 損 金 の 繰 越 控 除 に よ り相 応 の 税 負 担 を して いな い法 人 に対 し,担 税 力 に見 合 う税 負 担 を 求 め る』 こ とを 趣 旨,目 的 と して 『当 該 事 業 年 度 に お いて 生 じて い る利 益 に対 して 課 税 す る』 もの と して 創 設 さ れ た こ とが 認 め られ 」,「この よ うな 趣 旨,目 的 の 普 通 税 は,理 念 と して は 応 益 性 を 考 慮 しな が ら課 税 標 準 の 選 択 に お いて は応 益 性 を ほ とん ど取 り入 れ て いな い法 人 事 業 税 と は別 個 の,よ. り応 益 性 を 重 視 した性 格 を 有 す る税. 目 と して成 り立 ち得 る もの と解 され る」 こ とか ら,「 企 業 税 は,単. に法 人. 事 業 税 と異 な る外 形 を 整 え ただ けの もの で はな く,法 人 事 業 税 を 補 完 す る 『別 の 税 目』 と して併 存 し得 る実 質 を 有 す る もの とい うべ き で あ る」 と し て,「 本 件 条 例 は,地. 方 税 法 の法 人 事 業 税 に 関 す る規 定 を実 質 的 に 変 更 す. る もの で あ る と い う こ と はで きな いか ら,こ れ と矛 盾 抵 触 す る もの と は解 され ず,こ れ に違 反 す る と い う こ と はで きな い」 と結 論 づ け た。. 一56一.

(13) 企業税条例の法律適合性. 3.最. 高 裁 判 決(破 棄 自判). (1)地 方 公 共 団 体 の 条 例 制 定 と課 税 権 本 件 に お いて 最 高 裁 は,ま ず,地 方 公 共 団 体 の 条 例 制 定 権 につ いて は, 法 律 との 関 係 に お いて,徳. 島市 公 安 条 例 事 件 最 高 裁 判 決 に よ って 示 され た. 基 準 に よ って 判 断 さ れ る もの で あ る と した(6>。この 点 で,条 例 が 文 言 上 法 律 に一 見 抵 触 す る よ うな 場 合 で あ って も,法 律 と条 例 の 趣 旨,目 的 等 につ いて も考 慮 しな けれ ばな らな い と して い る。 そ して,地. 方 公 共 団体 の課 税 権 につ いて,「 普 通 地 方 公 共 団 体 は,地 方. 自治 の 不 可 欠 の 要 素 と して,そ の 区 域 内 に お け る当 該 普 通 地 方 公 共 団 体 の 役 務 の 提 供 等 を 受 け る個 人 又 は法 人 に対 して 国 と は別 途 に課 税 権 の 主 体 と な る こ とが 憲 法 上 予 定 され て い る もの と解 され る」 と して,最 高 裁 と して は初 めて 地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 が 憲 法 上 予 定 され て い る もの で あ る と判 示 した。 しか しな が ら,こ の点 につ い て最 高 裁 は,「 憲 法 は,普. 通地方公共. 団 体 の 課 税 権 の 具 体 的 内容 につ いて 規 定 して お らず,普 通 地 方 公 共 団 体 の 組 織 及 び運 営 に関 す る事 項 は 法 律 で こ れ を定 め る もの と し(92条),普. 通. 地 方 公 共 団 体 は法 律 の 範 囲 内で 条 例 を 制 定 す る こ とが で き る もの と して い る こ と(94条),さ. ら に,租 税 の 賦 課 に つ い て は 国 民 の 税 負 担 全 体 の 程 度. や 国 と地 方 の 間 な い し普 通 地 方 公 共 団 体 相 互 間 の 財 源 の 配 分 等 の 観 点 か ら. (6)「 地 方 自治 法14条1項 同 法2条2項. は,普 通 地 方 公 共 団体 は法 令 に違 反 しな い限 りにお いて. の 事 務 に 関 し条 例 を制 定 す る こ とが で き る と規 定 して い るか ら,. 普 通 地 方 公 共 団 体 の 制 定 す る条 例 が 国 の法 令 に違 反 す る場合 に は 効 力 を 有 しな い こ と は明 らか で あ るが,条 例 が 国 の法 令 に違 反 す る か ど うか は,両 者 の 対 象 事 項 と規 定 文 言 を 対 比 す るの み で な く,そ れ ぞ れ の趣 旨,目 的,内 容 及 び 効 果 を 比 較 し,両 者 の 問 に 矛 盾 抵 触 が あ るか ど うか に よ って これ を 決 しな けれ ば な らな い 」 最 高 裁 大 法 廷 判 決 昭 和50年9月10日(刑 一57一. 集29巻8号489頁)。.

(14) 近畿大学法学. 第61巻第4号. の 調 整 が 必 要 で あ る こ と に照 らせ ば,普 通 地 方 公 共 団 体 が 課 す る こ とが で き る租 税 の 税 目,課 税 客 体,課 税 標 準,税 率 その 他 の 事 項 につ いて は,憲 法 上,租 税 法 律 主 義(84条)の. 原 則 の 下 で,法 律 に お いて 地 方 自治 の 本 旨. を踏 まえ て その 準 則 を 定 め る こ とが 予 定 され て お り,こ れ らの 事 項 につ い て 法 律 にお い て準 則 が 定 め られ た場 合 に は,普 通 地 方 公 共 団 体 の 課 税権 は, これ に従 って そ の 範 囲 内 で 行 使 さ れ な けれ ば な ら」 ず,「 地 方 税 法 が,法 人 事 業 税 を 始 め とす る法 定 普 通 税 につ き,徴 収 に要 す べ き経 費 が 徴 収 す べ き税額 に比 して 多 額 で あ る と認 め られ るな ど特 別 の事 情 が あ る と き以 外 は, 普 通 地 方 公 共 団 体 が 必 ず 課 税 しな けれ ばな らな い租 税 と して これ を 定 めて お り(4条2項,5条2項),税. 目,課 税 客体,課. 法,標 準 税 率 と制 限 税 率,非 課 税 物 件,更. 税 標 準及 び そ の 算 定 方. に は これ らの 特 例 につ いて まで. 詳 細 か つ 具 体 的 な 規 定 を 設 けて い る こ とか らす る と,同 法 の 定 め る法 定 普 通 税 につ いて の 規 定 は,… … 任 意 規 定 で はな く強 行 規 定 で あ る と解 され る か ら,普 通 地 方 公 共 団 体 は,地 方 税 に関 す る条 例 の 制 定 や 改 正 に 当 た って は,同 法 の 定 め る準 則 に拘 束 され,こ れ に従 わ な けれ ばな らな い と い うべ きで あ」 り,「 法 定 普 通 税 に関 す る条 例 にお いて,地. 方 税 法 の定 め る法 定. 普 通 税 につ いて の 強 行 規 定 の 内容 を 変 更 す る こ とが 同法 に違 反 して 許 され な い こ と は も と よ り,法 定 外 普 通 税 に関 す る条 例 に お いて,同 法 の 定 め る 法 定 普 通 税 につ いて の 強 行 規 定 に反 す る 内容 の 定 めを 設 け る こ と に よ って 当該 規 定 の 内容 を 実 質 的 に変 更 す る こ と も,こ れ と 同様 に,同 法 の 規 定 の 趣 旨,目 的 に反 し,そ の 効 果 を 阻 害 す る 内容 の もの と して 許 され な い と解 され る」 と して,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 は法 律 の 範 囲 内 に限 定 して 行 使 さ れ,原 則 と して 法 律 に よ って 示 され る枠 組 み 内で の み の 行 使 しか 認 め られ な い もの と した。. 一58一.

(15) 企業税条例の法律適合性 (2)臨 時 特 例 企 業 税 条 例 に よ る課 税 と法 律 の 規 定 「法 人 税 法 の 規 定 す る欠 損 金 の繰 越 控 除 は,… … 各 事 業 年 度 間 の所 得 の 金 額 と欠 損 金 額 を 平 準 化 す る こ と に よ って その 緩 和 を 図 り,事 業 年 度 ご と の 所 得 の 金 額 の 変 動 の 大 小 にか か わ らず 法 人 の 税 負 担 を で き るだ け均 等 化 して 公 平 な 課 税 を 行 う と い う趣 旨,目 的 か ら設 け られ た 制 度 で あ る と解 さ れ る(最 高 裁 昭 和39年(行 集22巻5号1067頁. ツ)第32号. 同43年5月2日. 第 一・ 小 法 廷 判 決 ・民. 参 照)」 こ とか ら,本 件 に お いて,法. 人 税 法 に定 め る欠. 損 金 繰 越 控 除 を 法 人 事 業 税 に も認 めて い る こ とが,条 例 に よ って も改 変 可 能 な 事 項 に あ た るか ど うか 問 題 とな る と こ ろ,法 人 事 業 税 の 欠 損 金 繰 越 控 除 の規 定 は,必 要 的 に 適 用 す る こ と と され る もの で あ って,「 法 人 税 法 の 規 定 の 例 に よ り欠 損 金 の 繰 越 控 除 を 定 め る地 方 税 法 の 規 定 は,法 人 事 業 税 に関 す る 同法 の 強 行 規 定 で あ る と い うべ きで あ る」 もの と され る。 そ して,「 本 件 条 例 の 規 定 の趣 旨,目 的,内. 容 及 び効 果 に つ い て 検 討 す. る と,本 件 条 例 は,特 例 企 業 税 の 課 税 標 準 を 定 めた7条1項. の規定の文言. を 一 見 した限 りで は,各 課 税 事 業 年 度 に お け る法 人 事 業 税 の 所 得 割 の 課 税 標 準(平 成16年 条 例 改 正 前 は法 人 事 業 税 の 課 税 標 準)で. あ る所 得 の 金 額 の. 計 算 上,原 則 と して 繰 越 控 除 欠 損 金 額 を 損 金 の 額 に算 入 しな い もの と して 計 算 した 場 合 に お け る当 該 各 課 税 事 業 年 度 の 所 得 の 金 額 に相 当 す る金 額 (す な わ ち,欠 損 金 の繰 越 控 除 を しな い場 合 の 所 得 の 金 額)を. そ の課 税 標. 準 とす る よ う に見 え る もの の,同 項 括 弧 書 き に お いて 繰 越 控 除 欠 損 金 額 に 相 当す る金 額 が その 上 限 と され て お り,さ らに,繰 越 控 除 欠 損 金 額 の 上 限 は欠 損 金 の 繰 越 控 除 を しな い場 合 の 所 得 の 金 額 で あ る こ と(法 人 税 法57条 1項 ただ し書)か. らす れ ば,そ の 実 質 は,繰 越 控 除 欠 損 金 額 そ れ 自体 を 課. 税 標 準 とす る もの に ほか な らず,法 人 事 業 税 の 所 得 割 の 課 税 標 準 で あ る各 事 業 年 度 の 所 得 の 金 額 の 計 算 につ き欠 損 金 の 繰 越 控 除 を 一・ 部 排 除 す る効 果 を 有 す る もの 」 で あ って,欠 損 金 の 繰 越 控 除 を 必 要 的 に適 用 す る もの とす 一59一.

(16) 近畿大学法学. 第61巻第4号. る地 方 税 法 の 趣 旨 に反 す る もの で あ る。 この こ とか ら 「特 例 企 業 税 を 定 め る本 件 条 例 の 規 定 は,地 方 税 法 の 定 め る欠 損 金 の 繰 越 控 除 の 適 用 を 一 部 遮 断 す る こ とを その 趣 旨,目 的 とす る も の で,特 例 企 業 税 の 課 税 に よ って 各 事 業 年 度 の 所 得 の 金 額 の 計 算 につ き欠 損 金 の 繰 越 控 除 を 実 質 的 に一 部 排 除 す る効 果 を 生 ず る 内容 の もの で あ り, 各 事 業 年 度 間 の 所 得 の 金 額 と欠 損 金 額 の 平 準 化 を 図 り法 人 の 税 負 担 を で き る だ け均 等 化 して 公 平 な 課 税 を 行 う と い う趣 旨,目 的 か ら欠 損 金 の 繰 越 控 除 の 必 要 的 な 適 用 を 定 め る 同法 の 規 定 との 関 係 に お いて,そ の 趣 旨,目 的 に反 し,そ の 効 果 を 阻 害 す る 内容 の もの で あ って,法 人 事 業 税 に関 す る 同 法 の 強 行 規 定 と矛盾 抵 触 す る もの と して これ に違 反 し,違 法,無 効 で あ る」 と判 示 した。. 4.本. 件 の整 理. (1)地 方 公 共 団 体 の 条 例 制 定 と課 税 権 地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 につ いて は,大 牟 田市 電 気 税 訴 訟(福 昭 和55年6月5日. ・判 時966号3頁)に. 岡地 裁 判 決. お い て,「 憲 法 で 定 め る地 方 自治 の. 保 障 は,国 か ら多 少 と も独 立 した地 位 を 有 し,そ の 地 域 の 公 共 事 務 は その 住 民 の 意 思 に基 づ いて 自主 的 に行 わ れ るべ きで あ る と い う政 治 理 念 を 表 明 した もの と解 せ られ る」,「地 方 税 法 は,地 方 公 共 団 体 の 自治 権 を 保 障 す る もの で な けれ ばな らな い。 そ して 地 方 公 共 団 体 が その 住 民 に対 し,国 か ら 一 応 独 立 の 統 治 権 を 有 す る もの で あ る以 上 ,事 務 の 遂 行 を 実 効 あ ら しめ る た め に は,そ の 財 政 運 営 につ いて の いわ ゆ る 自主 財 政 権 ひ いて は財 源 確 保 の 手 段 と して の 課 税 権 も これ を 憲 法 は認 めて い る もの 」 と して,地 方 公 共 団 体 固 有 の 課 税 権 を 認 め た福 岡地 裁 判 決 と 同様 に,地 裁,高 裁,最 高 裁 と も に地 方 公 共 団体 の課 税 権 につ い て は,憲 法上 認 め られて い る もの と した。 一60一.

(17) 企業税条例の法律適合性 しか しな が ら,憲 法 上 認 め られ る もの と され る地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 に つ いて は,こ れ が 租 税 法 律 主 義,す な わ ち法 律 と条 例 の 関 係 にお いて,条 例 が 法 律 に抵 触 す るか ど うか の 判 断 につ いて 異 な った 判 断 を して い る。 本 件 横 浜 地 裁 判 決 に お い て は,「 地 方 団体 の課 税 権 が 憲 法 上 保 障 され た もの で あ る と して も,憲 法 は その 具 体 的 内容 につ いて 規 定 す る もの で はな い こ と,地 方 団 体 は その 組 織 及 び運 営 に関 す る事 項 につ き 『法 律 で これ を 定 め る』 もの と され(憲 法92条),『 法 律 の 範 囲 内』 で 条 例 を 制 定 す る こ と が で き る もの と され て い る こ と(同94条),及. び,租 税 の 賦 課 に つ い て は. 国 民 の 総 合 的 な 税 負 担 の 程 度 や 国 ・地 方 間 な い し地 方 団 体 相 互 間 の 財 源 の 配 分 等 の 観 点 か ら国 家 的 な 調 整 が 必 要 で あ る こ と に照 らせ ば,地 方 団 体 が 課 す る こ とが で き る租 税 の 税 目,課 税 客 体,課 税 標 準,税 率 そ の 他 賦 課 徴 収 の あ り方 につ いて は,法 律 に よ って その 準 則 な い し枠 を 定 め る こ とが 予 定 され て い る もの と い うべ きで あ る。 す な わ ち,法 律 は,地 方 団 体 が 課 税 権 を 行 使 す る際 の 具 体 的 準 則 な い し枠 を 設 け る もの で あ り,当 該 法 律 が 地 方 団 体 の 課 税 権 を 実 質 的 に否 定 す る もの と して 地 方 自治 の 本 旨 に反 す る場 合 は格 別,地 方 団 体 の 課 税 権 は,具 体 的 に は,当 該 法 律 の 規 定 に従 って 行 使 され な けれ ばな らな い」 と して,地 方 税 法 に よ って 準 則 規 定 を 設 け る こ とを 憲 法 が 予 定 して お り,原 則 と して これ に従 った 条 例,地 方 税 の み が 認 め られ,そ れ 以 外(地 方 税 法 か ら逸 脱 す る 内容 の もの)に つ いて は認 め ら れ な い とす る判 断 を した。 本 件 最 高 裁 に お いて も この 判 断 と 同 じ趣 旨の 判 断 が な され て い る。 他 方,本. 件 東 京 高 裁 判 決 に お い て は,「 租 税 に 関 す る条 例 も,憲 法 の 規. 定 に直 接 基 づ くの で はな く,法 律 の 定 め る と こ ろ に よ り制 定 され るべ き も の と され て い るの で あ り,条 例 は法 律 の 定 め に反 す る こ と はで きな い と解 す べ きで … …,憲 法 に よ り認 め られ た地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 は,あ. くまで. も抽 象 的 な もの に と ど ま り,法 律 の 定 めを 待 って 初 めて 具 体 的 に行 使 し得 一61一.

(18) 近畿大学法学. 第61巻第4号. る もの と い うべ きで 」,地 方 税 法 は,「 地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 を 具 体 化 す る た めの 準 則 を 定 めて お り,地 方 公 共 団 体 は,そ の 枠 の 中 に お いて 条 例 を 定 めて,憲 法 の 保 障 して い る課 税 権 を 行 使 す る こ とが で き る もの と され て い る。 したが って,課 税 条 例 が 地 方 税 法 の 規 定 に違 反 す る場 合 に は,当 該 条 例 は違 法 無 効 と いわ な けれ ばな らな い。 しか し,課 税 条 例 が 同法 に違 反 す るか ど うか の 判 断 は,法 律 が 条 例 の 上 位 に位 置 す る こ とを 理 由 に,同 法 の 定 め を偏 重 す るの で はな く,同 法 の 明 文 の 規 定 に違 反 して い る場 合 を 別 と す れ ば,地 方 公 共 団 体 が 憲 法 上 の 課 税 権 を 有 して い る こ と にか ん が み て, 慎 重 に行 うべ きで あ る」 と判 示 し,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 につ いて は,憲 法 上 認 め られ る も これ は法 律 に よ って 具 体 化 され る こ とを 前 提 と し,法 律 に よ る規 定 に反 す る もの は認 め られ な い とす る も,条 例 が 法 律 に抵 触 す る もの で あ るか ど うか は,地 方 自治 に関 す る法 律 が 地 方 自治 の 本 旨 に沿 う よ う に制 定 され な けれ ばな らな い こ と等 か らも,慎 重 に検 討 す る こ とが 求 め られ る もの と して,地 裁,最 高 裁 と は異 な る判 断 を して い る。 前 出 した大 牟 田 市 電 気 税 訴 訟 に お いて は,「 憲 法 上 地 方 公 共 団体 に認 め られ る課 税 権 は,地 方 公 共 団 体 と され る もの 一 般 に対 し抽 象 的 に認 め られ た租 税 の 賦 課,徴 収 の 機 能 で あ って,憲 法 は特 定 の 地 方 公 共 団 体 に具 体 的 税 目 につ いて の 課 税 権 を 認 め た もの で はな い。 税 源 を ど こ に求 め るか,あ る税 目を 国 税 とす るか 地 方 税 とす るか,地 方 税 と した場 合 に市 町 村 税 とす るか 都 道 府 県 税 とす るか,課 税 客 体,課 税 標 準,税 率 等 の 内容 を いか に し て 定 め るか 等 につ いて は,憲 法 自体 か ら結 論 を 導 き 出す こ と はで きず,そ の 具 体 化 は法 律(な. い しそれ 以 下 の 法 令)の 規 定 に持 た ざ るを え な い」 と. して,本 件 に お け る地 裁,最 高 裁 の よ うな,国 の 広 範 な 立 法 裁 量 に よ って 地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 に関 して 具 体 的 に定 め る もの と して い る。. 一62一.

(19) 企業税条例の法律適合性 (2)地 方 税 法 と条 例 に よ る課 税 憲 法84条 は,「 あ らた に租 税 を課 し,又 は現 行 の 租 税 を変 更 す る に は, 法 律 又 は法 律 の 定 め る条 件 に よ る こ とを 必 要 とす る。」 と規 定 して い る こ とか ら,租 税 法 律 主 義 と,地 方 公 共 団 体 に よ る課 税 につ いて の 条 例 に よ る 課 税 規 定 が 問題 とな る。 地 方 税 法3条1項. は,「 地 方 団体 は,そ. の地 方 税. の 税 目,課 税 客 体,課 税 標 準,税 率 そ の他 賦 課 徴 収 に つ い て定 を す る に は, 当該 地 方 団 体 の 条 例 に よ らな け れ ば な らな い。」 と規 定 して い る一 方 で, 「地 方 団 体 は,こ の 法 律 の定 め る と こ ろ に よ って,地 こ とが で き る。」(同 法 第2条)と. 方 税 を賦 課 徴 収 す る. も規 定 して お り,課 税 条 例 の 根 拠 と して. の 地 方 税 法 を 前 提 と して い る と も解 され う る もの で あ る。 秋 田市 国 民 健康 保 険税 条 例 事 件 第 一 審 判 決(7)にお い て は,「地 方 税 につ き 憲 法84条 に規 定 す る租 税 法 律 主 義 の 原 則 は,憲 法92条,94条,地 10条,14条,223条,地. 方 税 法2条. 方 自治 法. の規 定 に よ り,地 方 公共 団 体 が そ の 有. す る課 税 権 に基 づ き地 方 税 法 の 定 め る範 囲 内で,あ. らた に地 方 税 を 課 し,. ま た は現 行 の 地 方 税 を 変 更 す る に は,条 例 に よ って そ の 租 税 要 件,手 続 規 定 等 を 定 め る こ とを 要 す る趣 旨で その 適 用 が あ る と解 す るべ き」 と して お り,こ の 判 決 で は,租 税(地 方 税)条 例 主 義 を 前 提 と して い る こ とが うか が え る(8)。ま た,旭 川 市 国 民 健 康 保 険 条 例 事 件(9)に つ いて の 最 高 裁 大 法 廷 判 決 に お い て,国 民 健 康 保 険 に関 して は,「 保 険 料 を 徴 収 す る方 式 の もの で あ って も,強 制 加 入 と され,保 険 料 が 強 制 徴 収 され,賦 課 徴 収 の 強 制 の. (7)秋. 田地 裁 判 決 昭 和54年4月27日(行. (8)こ の 判 決 につ いて,控 33巻7号1616頁))で. 集30巻4号891頁)。. 訴 審(仙 台 高 裁 秋 田 支 部 判 決 昭 和57年7月23日(行. 集. は,「 憲 法92条 に 照 らせ ば … … 租 税(地 方 税)条 例 主 義 が. 要 請 され るべ きで あ って,こ. の意 味 で,憲 法84条 にい う 『法 律 」 には 地 方 税 に. つ いて の 条 例 を 含 む もの と解 す べ きで あ り」,「地 方 税 法 は 地 方 税 の 課 税 の 枠 を 定 め た もの と して 理 解 され る」,と して い る。 (9)最 高 裁 大 法 廷 判 決 平 成18年3月1日(民 一63一. 集60巻2号587頁)。.

(20) 近畿大学法学. 第61巻第4号. 度 合 い に お いて は租 税 に類 似 す る性 質 を 有 す る もの で あ るか ら,こ れ につ いて も憲 法84条 の 趣 旨が 及 ぶ と解 す べ きで あ るが,他 方 に お いて,保 険 料 の 使 途 は,国 民 健 康 保 険 事 業 に要 す る費 用 に限 定 され て い るの で あ って, 法81条 の 委 任 に基 づ き条 例 に お いて 賦 課 要 件 が どの 程 度 明 確 に定 め られ る べ きか は,賦 課 徴 収 の 強 制 の 度 合 いの ほか,社 会 保 険 と して の 国 民 健 康 保 険 の 目的,特 質 等 を も総 合 考 慮 して 判 断 す る必 要 が あ る」 と した上 で,国 民 健 康 保 険 の 保 険 料 の 賦 課 徴 収 につ いて は,地 方 公 共 団 体(市 町 村)の 条 例 に よ る と した⑩。 本 件 に お いて は,地 方 税 法 に規 定 され る地 方 税 に係 る準 則 が,地 方 税 法 に定 め られ る法 定 税 に対 して の 効 力 と 同 じ く,地 方 公 共 団 体 が 条 例 に よ っ て 課 税 す る こ と と した法 定 外 税 に も適 用 され るか 問 題 とな っ た。 最 高 裁 は,法 人 税 法 に定 め る欠 損 金 の 繰 越 控 除 を 法 人 事 業 税 に も認 めて い る こ とが,条 例 に よ って も改 変 可 能 な 事 項 に あ た るか ど うか 問 題 とな る と こ ろ,法 人 事 業 税 の 欠 損 金 繰 越 控 除 の 規 定 は,必 要 的 に適 用 す る こ と と され る もの で あ って,「 法 人 税 法 の 規 定 の例 に よ り欠 損 金 の繰 越 控 除 を 定 め る地 方 税 法 の 規 定 は,法 人 事 業 税 に関 す る 同法 の 強 行 規 定 で あ る と い う べ きで あ る」 もの と され,臨 時 特 例 企 業 税 条 例 に よ って,地 方 税 法 上 求 め られ て い る欠 損 金 の 繰 越 控 除 の 適 用 につ いて,実 質 的 に これ を 遮 断 す る こ と は,認. め られ な い と した。 地 裁 も これ と同 じ趣 旨 の判 断 を し,「 地 方 税. 法 は,道 府 県 に お いて,法 定 税 以 外 の 税 目を 起 こ して,法 定 外 税 を 課 す る. ⑩. また,旭. 川 市 国 民 健 康 保 険 条 例 事 件 につ い て そ の 一・ 審(旭 川 地 裁 判 決 平 成10. 年4月21日)に. お いて は,地 方 税 条 例 に関 して,「 地 方 自治 に関 す る憲 法92条 に. 照 らせ ば,地 方 自治 の 本 旨に 基 づ い て 行 わ れ るべ き地 方 公 共 団 体 に よ る地 方 税 の 賦 課 徴 収 につ いて は,住 民 の 代 表 た る議 会 の 制 定 した 条 例 に基 づ か ず に租 税 を 賦 課 徴 収 す る こ と はで き な い と い う租 税(地 方 税)条 例 主 義 が 要 請 され る と い うべ きで あ って,こ. の意 味 で,憲 法84条 にい う 『法 律 」 には 地 方 税 につ いて. の 条 例 を 含 む もの と解 す べ きで あ」 る,と して い る。 一64一.

(21) 企業税条例の法律適合性 こ と が で き る もの と して い る が(同 法4条3項),こ. の法 定 外 税 は,… …. 道 府 県 に お いて 原 則 と して 法 定 税 を 課 す べ き こ とを 前 提 に,こ れ に加 え て 法 定 税 以 外 の 税 目を 課 す る形 で,法 定 税 の 課 税 を 補 充 す る もの と して 課 さ れ る もの で あ る。 そ して,同 条2項. ただ し書 は法 定 外 税 に触 れ る と こ ろ は. な く,法 定 税 を 課 さな い特 別 の 事 情 と法 定 外 税 の 課 税 自体 と に直 接 の 関 係 はな い もの と解 され る ことか らすれ ば,法 定外税 を課 す る場合で あ って も,… … 道 府 県 に お い て法 定 税 を 法 定 の準 則 に従 い課 す べ き こ とに変 わ りはな 」 く, 「道 府 県 にお い て,地 方 税 法 の 規 定 に従 い法 定 税 を 課 す べ き場 合 で あ る に もか か わ らず,法 定 外 税 の 創 設 に よ り,実 質 的 に は地 方 税 法 が 当 該 法 定 税 につ いて 定 め た規 定 の 趣 旨 に反 す る よ うな 課 税 を す る こ と は,道 府 県 にお いて法 定 税 を法 定 の 準則 に従 い課 す べ き もの と した地 方 税 法 の趣 旨 に反 し, 許 さ れ な い もの と い わ な け れ ば な らな い」 もの で あ り,「 法 定 外 税 とい う 形 式 を 採 る こ と に よ り,法 定 税 に係 る法 定 の 準 則 と関 わ りな く課 税 で き る とす れ ば,道 府 県 は,法 定 外 税 の 形 式 を 用 い る こ と に よ り,法 定 税 に係 る 法 定 の 準 則 を 回 避 し,い わ ば これ を 潜 脱 して,実 質 的 に当 該 準 則 に反 す る 課 税 を す る こ と も可 能 にな りか ね な いが,こ の こ とが,法 定 税 の 課 税 の 準 則 と して 詳 細 な 規 定 を 設 け,そ の 定 め る と こ ろ に よ って 地 方 団 体 が 地 方 税 を 賦 課 徴 収 す る こ とが で き る(地 方 税 法2条)こ に反 す る こ と は,明. と と した 地 方 税 法 の 趣 旨. らか と い うべ きで あ る」 と して,法 定 税 が 定 め られ て. い る領 域 につ いて は,法 定 外 税 も法 定 税 と 同 じ く地 方 税 法 の 準 則 に従 わ な けれ ばな らな い もの で あ る と した。 一 方 で ,高 裁 は,「 地 方 税 法 は,法 定 普 通 税 の 課 税 要 件 等 に つ い て は詳 細 な 規 定 を 置 いて い るが,法 定 外 普 通 税 の 課 税 要 件 等 につ いて は,総 務 大 臣の 同意 を 要 す る こ とな どを 規 定 す るの み で,そ の 内容 につ いて は特 段 の 定 め(準 則)を 置 か ず,い わ ば 白紙 で 地 方 公 共 団 体 に委 ね る と い う立 法 態 度 を採 っ て」 お り,「 地 方 税 法 は,地 方 税 が,す べ て に わ た って全 国 一 律 一65一.

(22) 近畿大学法学. 第61巻第4号. 同一 で な けれ ばな らな い と考 え て い る もの で はな く,二 義 的 か つ 付 加 的 で あ る と して も,地 域 ご と に異 な る税 制 が あ って も よ い と考 え て い る もの と い うべ きで あ る。 同法 が 全 国 一 律 で 同一 で あ るべ きで あ る と考 え て い る税 目 は,具 体 的 に限 定 列 挙 され て い る… … の で あ り,こ れ に付 加 して,各 地 方 公 共 団 体 が 課 税 権 に基 づ いて 独 自の 税 目を 創 設 す る こ とが 認 め られ て い る と解 され る。 したが って,こ の よ うな 同法 の 規 定 を 離 れ て,予 見 可 能 性 な い し法 的 安 定 性 や 地 方 税 法 の 枠 法 た る性 質,あ. る い は地 方 税 が 全 国 的 に. 統 一 して 定 め る こ とが 望 ま しい性 質 の もの で あ る と い う こ とな どを 理 由 と して,地 方 税 は全 国 一 律 同一 で あ るべ きで あ る と い う こ とを 過 度 に強 調 し て,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 を 必 要 以 上 に制 約 す る こ と は,実 定 法 を 無 視 す る議 論 と いわ な けれ ばな らな い。 法 定 外 普 通 税 に も準 則 な い し枠 が 必 要 で あ る とい うの で あれ ば,そ の よ うな立 法 が され な け れ ば な らな いの で あ り, 現 行 法 」 は その よ うな 態 度 を 採 って いな い と して,地 方 税 法 につ いて は, その 規 定 が 全 国 一 律 に強 行 的 に従 うべ き規 定 を 設 けて い るの で はな い と し た。 地 方 税 法 が 地 方 税 に関 す る絶 対 的 規 定 と して,す べ て の 地 方 税 が これ に 従 う もの と され るか ど うか は,そ の 状 況 に よ って 検 討 され な けれ ばな らな い もの で あ ろ うが(本 件 地 裁 判 決 に お いて も,法 定 税 の 課 され る領 域 と 同 一 領 域 に関 す る法 定 外 税 につ いて は,法 人 税 法 の 準 則 に従 う もの と され る が,「 本 件 は 法 定 税 が 課 され な い場 合 で はな い の で,そ. の場 合 に法 定 外 税. の 創 設 に よ り当該 法 定 税 に係 る規 定 の 趣 旨 に反 す る課 税 を す る こ とが で き るか と い う問 題 につ いて は,特 に触 れ な い」 と して,地 方 税 法(条 例)一 一 般 と して の 見 解 を 示 して い る もの で はな い。),憲 法 上 の 地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 との 関 係 か らも検 討 す る必 要 が あ る。. 一66一.

(23) 企業税条例の法律適合性. 5.研. 究. (1)憲 法 上 の 地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 憲 法 上 の 課 税 権 につ いて 検 討 す る と,地 方 自治 の 保 障 に関 す る諸 説,つ ま りは,固 有 権 説,伝 来 説,制 度 的 保 障 説 等,ど の 立 場 に立 つ か に よ って 地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 につ いて の 解 釈 は異 な る もの とな る。 固 有 権 説 の 立 場 に お いて は,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 も地 方 公 共 団 体 固 有 の 権 限 で あ る と され,地 方 税 法 は この 権 限 につ いて 確 認 を す るた めの もの で あ って,正. 当な 理 由の な い地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 の 制 約 は認 め られ な い. もの と され る。 そ して,地 方 税 法 で 定 め る こ との で き る事 項 は,地 方 税 制 度 にか か る大 綱 と され る もの と,国 と地 方 公 共 団 体 な い し地 方 公 共 団 体 相 互 間 の 税 源 調 整 にか か る もの に限 定 され る(ll)。 伝 来 説 の 立 場 に お いて は,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 の 行 使 は,国 の 権 限 が 委 任 され る こ と に よ って 行 わ れ る もの で あ り,具 体 的 な 課 税 につ いて は法 律 の 根 拠 が 必 要 とさ れ る⑰。 こ こ で は,法 律 に よ る地 方 税 の 課 税 が 原 則 と され るが,地 方 税 に関 して の 課 税 要 件 等 につ いて の 定 めが 条 例 に委 任 され る こ と は,憲 法 が地 方 自治 を 保 障 して い る こ と に よ る例 外 で あ り,「 地 方 税 法 は,条 例 に よ る課 税 権 の 『枠 』 と して 機 能 す るた め,条 例 に よ って 独 自 に規 律 で き る範 囲 はか な り狭 い もの とな る。 極 端 な 場 合 に は,自 治 体 に 残 され るの は,国 法 の 挙 げ る リス トの 中か ら地 方 税 と して 導 入 す る税 目を. ⑪. 杉原泰雄 「 地 方 自治 の 憲 法 論 一 「充 実 した 地 方 自治 」 を 求 め て 〔 補 訂 版 〕」 (勤草 書 房,2008年)177-179頁 団 体 の 課 税 権 につ い て,地. 。 こ こで 杉 原 泰 雄 先 生 は,こ の よ うな 地 方 公 共 方 自治 の 本 旨の 具 体 的 な 内 容 と して の 「自主 財 源 配. 分 の 原 則 」 と位 置 づ けて い る。 ⑫. 樋 口陽 一 ・佐 藤 幸 治 ・中 村 睦 男 ・浦 部 法 穂 『注 解 法 律 学 全 集 書 院,2004年)183頁. 。 一67一. 憲 法IV」(青 林.

(24) 近畿大学法学. 第61巻第4号. 取 捨 選 択 す るだ けの もの にな りか ね な い。 自治 体 に よ る超 過 税 率 の 設 定 や 税 目の 創 設 は,法 律 中 に これ を 許 容 す る特 段 の 定 めの な い限 り無 効 とな 」 る もの と され る⑱。 制 度 的 保 障 説 の 立 場 に お いて は,地 方 自治 の 核 心 部 分 につ いて は,そ の 本 質 が 侵 害 され る よ うな 法 律 は認 め られ な い もの と され る こ とか ら,こ の 地 方 自治 の 核 心 部 分 に地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 が 含 まれ るか ど うか 問 題 とな るが,こ の 立 場 か らは,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 につ いて は,こ れ が 地 方 自 治 の核 心 部 分 た る もの とさ れ て い る⑭。 しか し一 方 で,地. 方公共団体の税. 収 を完 全 に遮 断 す る こ と に よ って,地 方 公 共 団 体 の 運 営 自体 を 不 可 能 にす る よ うな 法 律 で な い限 りは,地 方 自治 の 核 心 部 分 に 当 た る もの で はな い と して 認 め られ る とす る もの もあ る⑮。 この よ う な制 度 的保 障説 の 立 場 に立 ちつ つ も伝 来 説 に近 い解 釈 に よ り地 方 公 共 団 体 の 課 税 に関 す る国 の 広 範 な 立 法 権 を認 め よ う とす る もの は,大 牟 田市 電 気 税 訴 訟 の 立 場 と 同 旨の もの で あ ろ う が⑯,制 度 的保 障説 の 中 で も これ を 固 有 権 説 に近 い解 釈 を す る も の も あ り,こ こで は,憲 法92条 に お け る地 方 自治 の 本 旨か ら,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 は,地 方 公 共 団 体 の 不 可 欠 の 要 素 と して の 自主 財 政 権 と して 認 め られ,こ れ へ の 介 入 とな る法 律 は認 め られ な い もの と され る⑰。 ⑬. 小 山剛 ・駒 村 圭 吾 編 『論 点 探 究. ω. 前 掲 注 ⑫,樋 口 ほ か 『注 解 法 律 学 全 集. 憲法 〔 第2版 〕』(弘 文 堂,2013年)380頁. 。. 憲 法IV』243頁 。 成 田頼 明 先 生 は,地. 方 自治 制 度 の 本 質 的 内 容 又 は核 心 と され る事 項 につ いて,憲. 法 「93条及 び94条. に具 体 的 に示 され て い る制 度 又 は権 能 の本 質 的 内容 に だ け及 ぶ もの で はな く, これ らの 条 項 に示 され て いな い事 項 に も及 ぶ 」 と して,地. 方公共団体の課税権. が 地 方 自治 制 度 の 核 心 とな る可 能 性 を 示 して い る(成 田頼 明 「地 方 自治 の 保 障 」 宮 沢 俊 義 先 生 還 暦 記 念 論 文 集 「日本 国 憲 法 体 系 第5巻. 統 治 の機 構II」(有 斐. 閣,1964年)289頁)。 ⑮. 前 掲 注 ⑬,小. 山 ほか 編 『論 点 探 究. 憲法 〔 第2版 〕」380頁 。. ⑯. 前 掲 注 ⑬,小. 山 ほか 編 『論 点 探 究. 憲法 〔 第2版 〕」380頁 。. q7)碓 井 光 明 「地 方 税 法 上 の非 課 税 措 置 と自主 財 政 権 」 磯 部 力 ・小 幡 純 子 ・斎 藤 誠編 『 地 方 自治判 例百 選 〔 第3版 〕」(有 斐 閣,2003年)9頁. 。 な お,こ こで は,. 「「地 方 税 法 」 が 地 方 公 共 団 体 の 財 政 的 自立 を 脅 か して い る」 と して,地 一68一. 方 税 法/.

(25) 企業税条例の法律適合性 ま た,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 に関 して,地 方 税 の 課 税 につ いて は これ を 条 例 に基 づ き行 う もの とす る租 税 条 例 主 義 が主 張 され て い る⑱。 そ の 理 論 づ け は様 々で あ る もの の,地 方 税 が 地 方 公 共 団 体 の 定 め る条 例 を 根 拠 と し て 課 税 され る もの で あ る こ とにつ いて は結 論 を 同 じ くす る と ころ で あ る⑲。. (2)地 方 税 法 と地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 地 方 自治 法 は,「 普 通 地 方 公 共 団体 は,法 律 の定 め る と こ ろ に よ り,地 方 税 を賦 課 徴 収 す る こ とが で き る。」(同 法223条)と. して,地 方 公 共 団 体. の 課 税 につ いて は,法 律 の 定 め に従 って 行 な う こ と と し,地 方 税 法 は,地 方 公 共 団 体 の 課 税 に関 して の 基 本 原 則 を 定 め る もの で あ り,そ の2条. にお. いて,「 地 方 団体 は,こ の 法 律 の 定 め る と こ ろ に よ つ て,地 方 税 を 賦 課 徴 収 す る こ とが で き る。」 と し,3条1項. に お い て 「地 方 団体 は,そ. の地 方. 税 の 税 目,課 税 客 体,課 税 標 準,税 率 その 他 賦 課 徴 収 につ いて 定 を す る に は,当 該 地 方 団体 の条 例 に よ らな け れ ば な らな い。」 と定 め て い る。 地 方 税 法 が 判 例 に お いて も認 め られ て きて い る租 税 条 例 主 義⑳ を 採 用 して い る \ の 規 定 が 地 方 公 共 団 体 の 自主 財 政 権(課 税 権)を 侵 害 す る可 能 税 を 示 唆 して い る。 ⑬. 金 子 宏 『租 税 法 〔 第18版 〕」(弘 文 堂,2013年)90頁 共 団 体 の 課 税 権 」立 教 法 学82号(2011年)167頁 説 の 整 理 につ い て,林. 以 下,渋 谷 秀 樹 「地 方 公. 以 下 な ど。 租 税 条 例 主 義 等 の 学. 仲 宣 「地 方 分 権 と地 方 税 シス テ ム. 税 源 移 譲 ・自主 課 税. 権 強 化 を め ぐる地 方 税 務 行 政 の 課 題 』(中 央 経 済 社,2005年)18頁 ⑲. 地 方 税 法3条1項. 。. にお い て も 「地 方 団 体 は,そ の地 方 税 の税 目,課 税 客 体,. 課 税 標 準,税 率 そ の他 賦 課 徴 収 につ い て定 をす る に は,当 該 地 方 団 体 の 条 例 に よ らな けれ ば な らな い 。」 と して,租 税 条 例 主 義 の 確 認 規 定 を 設 けて い る もの と され る。 ⑳. 例 え ば秋 田市 国 保 税 事 件 控 訴 審 判 決(仙 日 ・行 集33巻7号1616頁)で. 台高 裁秋 田支 部 判 決 昭 和57年7月23. は,「憲 法92条 に照 らせ ば … …租 税(地 方 税)条 例. 主 義 が 要 請 され るべ きで あ って,こ. の意 味 で,憲 法84条 にい う 『法 律 』 に は地. 方 税 につ い て の 条 例 を 含 む もの と解 す べ きで あ り」,「地 方 税 法 は 地 方 税 の 課 税 の 枠 を 定 め た もの と して 理 解 され る」 と して,租. 税 条 例 主 義 が 憲 法 上 求 め られ. る もの 度 あ る と 同時 に,地 方 税 法 は 地 方 公 共 団 体 の 課 税 に関 す る枠 組 み 法 とす/ 一69一.

(26) 近畿大学法学. 第61巻第4号. と され る こ と は,3条1項. の 条 文 中の 文 言 か ら,そ の よ う に解 す る こ と は. で き る もの の,地 方 自治 法 に規 定 さ れ る よ うな,「 法 律 の定 め る と こ ろ に よ る地 方 公 共 団 体 の 課 税 」 につ いて,地 方 税 法 は地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 の 根 拠 法 と も解 す こ とが で き る。 しか しな が ら,地 方 税 法 は地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 を 認 め た上 で,そ の 行 使 が 地 方 公 共 団 体 相 互 関 係 上 の 混 乱 等 を 防 ぐ こ と を 目的 と して,法 律 に よ る統 一 的 な 規 定 を 定 め た もの で あ って,地 方 税 の 枠 組 み を 定 め た もの と い うべ き枠 組 法 な い し準 則 法 と され るの が 通 説 的 な 理 解 で あ る⑳。 大 牟 田市 電 気 税 訴 訟 ⑳ に お いて,福. 岡地 裁 は,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 は. 憲 法 上 認 め られ る もの と しな が ら も,(憲 法 上 認 め られ る)課 税 権 の 具 体 的 内容 につ いて は憲 法 に求 め る もの で はな く,個 別 法 に よ って 定 め られ る もの と して お り,こ の 点 で 地 方 公 共 団 体 の 課 税 に関 す る法 律 が 要 請 され て い る もの と解 され,す な わ ち その よ うな 性 質 の もの と して の 地 方 税 法 の 存 在 が あ る もの と考 え られ る。 地 方 税 法 が,地 方 公 共 団 体 の 課 税 に関 す る枠 組 法 と して の 性 質 を 有 す る もの で あ る時 に,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 に関 して,伝 来 説 や 大 牟 田市 電 気 税 訴 訟 が実 質 的 に は 伝 来 説 に近 い立 場 を採 る よ う な判 断 を して い る場 合 ㈱ を除 いて は,結 局 の と こ ろ地 方 税 に関 す る枠 組 法 と して 規 定 され るべ き 内 \ る立 場 を 示 して い る。 ⑳. 宇 賀 克 也 『地 方 自治 法 概 説 〔 第5版 〕」(有 斐 閣,2013年)145頁,前 金 子 『租 税法 〔 第18版 〕」90頁,塩 斐 閣,2012年)190頁 て,地. 野宏 「 行政法 皿. 掲 注qo),. 行政組織法 〔 第4版 〕」(有. な ど。 地 方 税 法 が 枠 組 法 で あ る こ との 性 質 を 現 す もの と し. 方 税 法 上 の標 準 税 率 と超 過 課 税 の 制 度 が あ る と され る(宇 賀,同. 書145. 頁)。 ⑬. 福 岡 地 裁 判 決 昭 和55年6月5日(判. ㈱. 棟居快行 「 租税判例研究 489条1項2項. 時966号3頁)。. い わ ゆ る大 牟 田訴 訟 一 地 方 税 法(昭 和49年 改 正 前). に お け る電 気 ガ ス税 の非 課 税 措 置 によ つ て,憲 法 上 保 障 され た 自. 治 体 固 有 の 課 税 権 を 侵 害 され,そ. の 結 果 損 害 を 蒙 つ た と して 提 起 され た 国 家 賠. 償 請 求 が 棄 却 され た 事 例 」 ジ ュ リス ト755号(1981年)139頁 一70一. 。.

(27) 企業税条例の法律適合性 容 につ いて,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権(の 核 心 部 分)を 侵 害 す る性 質 の もの で あ るか ど うか の 判 断 に委 ね られ る もの で あ って,憲 法 上 の 地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 が 認 め られ る こ と に よ り,そ の 権 限 の 存 在 自体 か ら,枠 組 法 た る 地 方 税 法 自体 を 否 定 す る こ とが 可 能 とな るわ けで はな い。 この こ と は,憲 法92条,94条,地. 方 自治 法223条 の 関 係 に お い て,地 方 公 共 団体 の 課 税 に. 関 して は,法 律 に よ って 一 定 の 規 定 を 置 くこ とを 前 提 と して い る もの と考 え られ る こ とか ら,地 方 税 法 に よ る枠 組,準 則 を 含 む 一 定 の 規 定 につ いて 国 が 定 め る こ とが 前 提 と され るだ ろ う。. (3)本 件 最 高 裁 判 決 の 意 義 (a)地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 本 件 最 高 裁 判 決 は,最 高 裁 と して は初 めて,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 が 憲 法 上 予 定 さ れ た もの で あ る こ とを 示 した⑳。 地 方 公 共 団体 の課 税 権 が 憲 法 上 予 定 され て い る とす れ ば,当 該 地 方 公 共 団 体 の 運 営 に欠 か せ な い財 源 の 確 保 の 一 端 と して の 地 方 公 共 団 体 に よ る あ らゆ る課 税 が 幅 広 く認 め られ る もの で な けれ ばな らな いだ ろ う。 しか しな が ら本 判 決 にお いて は,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 を 認 めな が らも,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 は地 方 税 法 に基 づ く もの で な け れ ば な らず,「 法 律 に よ る準 則 を 定 め る こ とが予 定 され 」 る もの と して,地 方 税 法 を 準 則 法,枠 組 法 と位 置 づ け,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 が 制 限 され る こ とを 容 認 して い る。 この よ う に,地 方 公 共 団 体 の 課 税 権 につ いて,地 方 公 共 団 体 の 課 税,課 税 条 例 制 定 につ いて 法 律 に よ る準 則 等 を 定 め る こ と につ いて は,大 牟 田市 電 気 税 訴 訟 に お いて,地 方 公 共 団 体 の 課 税 につ いて は法 律 に よ って 具 体 的 に規 定 す る もの で あ る とす る立 場 と 同 旨の もの と考 え られ る(本 件 地 裁 も ⑳. 前 掲 注(1),碓 井 「神 奈 川 県 臨 時 特 例 企 業 税 と地 方 税 法 」 磯 部 ほか 編 「地 方 自 治判例百選 〔 第4版 〕』57頁 。 一71一.

参照

関連したドキュメント

[r]

距離の確保 入場時の消毒 マスク着用 定期的換気 記載台の消毒. 投票日 10 月

[r]

[r]

[r]

[r]

[r]

〔追記〕  校正の段階で、山﨑俊恵「刑事訴訟法判例研究」