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特集にあたって (特集 キューバ政治・経済の現状)

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Academic year: 2021

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特集にあたって (特集 キューバ政治・経済の現状)

著者

山岡 加奈子

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

121

ページ

2-3

発行年

2005-10

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00005608

(2)

特集/キューバ政治・経済の現状

日 本 に お け る キ ュ ー バ に 対 す る イ メ ー ジ は 、 極 端 に 分 か れ る よ う に 思 う 。 ソ 連 や 東 欧 の 民 主 化 後 も 社 会 主 義 体 制 を 守 る 世 界 で も 数 少 な い 国 。 カ ス ト ロ の 独 裁 や 北 朝 鮮 な ど と 同 じ よ う な 閉 鎖 的 な 国 。 危 険 で 簡 単 に は 行 け な い 秘 境 。 有 機 農 業 や ス ロ ー ラ イ フ を 実 践 す る 国 。 平 等 で 社 会 的 な 亀 裂 が な く 、 公 正 な 社 会 を 確 立 し た 国 。 あ る い は 、 ル ン バ や チ ャ チ ャ チ ャ 、 マ ン ボ な ど を 生 ん だ 芸 術 の 国 。 フ ィ デ ル ・ カ ス ト ロ や ゲ バ ラ が か っ こ い い 、 な ど な ど 。 お そ ら く キ ュ ー バ の 実 像 は こ れ ら の 毀 誉 褒 貶 の 間 の ど こ か に あ る 。 キ ュ ー バ は 楽 園 で は な い し 、 大 多 数 の 国 民 は 明 日 の 食 事 を 心 配 し な が ら 暮 ら し て い る 。﹁ キ ュ ー バ 人 は 顔 で 笑 っ て 心 で 泣 く ﹂ と 言 わ れ る よ う に 、 深 刻 な 顔 は 友 人 に す ら め っ た に 見 せ な い が 、 明 る く 陽 気 に 振 る 舞 っ て い る か ら と い っ て 悩 み が な い わ け で は 決 し て な い 。 革 命 後 ソ 連 崩 壊 ま で 、 外 国 人 と い え ば ソ 連 ・ 東 欧 の 人 々 し か 知 ら な か っ た キ ュ ー バ 国 民 は 、 確 か に 資 本 主 義 的 な す れ た と こ ろ が な い 。 外 国 人 慣 れ し た ホ テ ル や 航 空 会 社 の 職 員 で も 、 誠 意 の こ も っ た 親 切 さ を 示 す の で 、 そ の 応 対 が 心 に 残 る 。 他 方 融 通 の 利 か な い 官 僚 的 な 部 分 も し ば し ば 目 に す る 。 国 家 の 独 占 体 で あ る が 故 に 、 無 競 争 の 状 態 に ど っ ぷ り つ か っ て お り 、 客 を 何 日 、 何 カ 月 も 待 た せ て も 平 気 、 と い う 役 人 が い る の は 事 実 で あ る 。 現 地 在 住 の 外 国 人 は 、 頭 に き て も 他 の 選 択 肢 が な い 。 本 特 集 は 、 ソ 連 崩 壊 後 一 四 年 が 経 過 し た キ ュ ー バ の 政 治 ・ 経 済 の 現 状 に つ い て 、 日 本 と キ ュ ー バ 両 国 の 識 者 を 集 め て 、 最 新 の 情 報 や 資 料 を 基 に 書 い て い た だ く と い う 試 み で あ る 。﹁ 特 集 に あ た っ て ﹂ で は 、 今 キ ュ ー バ 国 内 で も っ と も 議 論 の 的 と な っ て い る ﹁ 社 会 的 公 正 と 平 等 ﹂ の 問 題 を 取 り 上 げ る 。 こ れ は 冷 戦 後 キ ュ ー バ の 経 済 運 営 を 左 右 す る も っ と も 大 き な 要 因 の 一 つ で あ り 、 経 済 開 放 に よ る 所 得 格 差 の 拡 大 に 伴 い 、 政 府 の 最 大 の 課 題 に な り つ つ あ る か ら で あ る 。

キ ュ ー バ は 今 日 ま で 、 政 治 的 に は 旧 ソ 連 型 に 近 い 、 共 産 党 一 党 独 裁 の 制 度 を 維 持 し て い る 。 か つ て の 同 盟 国 で あ っ た ソ 連 ・ 東 欧 諸 国 が 複 数 政 党 制 導 入 を 伴 う 民 主 化 と 市 場 経 済 の 導 入 を 行 い 、 ま た 中 国 や ベ ト ナ ム が 、 政 治 的 に は 共 産 党 一 党 独 裁 体 制 を 維 持 し な が ら 、 市 場 メ カ ニ ズ ム の 導 入 を 断 行 し て 高 い 経 済 成 長 を 遂 げ 、 全 世 界 の 目 を 見 張 ら せ て い る の を 尻 目 に 、 今 も 基 本 的 に は ソ 連 崩 壊 前 と 大 き く 変 わ ら な い 体 制 を 維 持 し て い る 。 し か し な が ら キ ュ ー バ の 場 合 、 ソ 連 崩 壊 後 、 一 九 五 九 年 の 革 命 以 来 最 悪 の 経 済 危 機 に 陥 っ た に も か か わ ら ず 、 体 制 が 崩 壊 す る こ と は な か っ た 。 公 共 交 通 機 関 が 麻 痺 し た た め 、 広 い 通 り で は 子 ど も た ち が 野 球 を す る ほ ど 車 の 往 来 が 途 絶 え た 。 配 給 物 資 の 遅 配 ・ 欠 配 が 相 次 ぎ 、 人 々 は 闇 で 月 給 の 何 倍 も の 価 格 で コ メ を 購 入 し 、 停 電 は 一 日 の 半 分 以 上 、 と い っ た 、 革 命 前 も 含 め て そ れ ま で の キ ュ ー バ に は な か っ た よ う な 物 質 的 な 欠 乏 状 態 が 起 こ っ た に も か か わ ら ず 、 で あ る 。 不 満 は 一 九 九 四 年 に 一 度 暴 動 と し て 爆 発 し た 以 外 は 、 目 立 っ た 反 発 も な く 、 政 権 は 安 定 し た 体 制 を 維 持 し て い る 。 経 済 面 で は 最 低 限 の 経 済 開 放 政 策 を 実 施 し た の み で 、 あ く ま で 結 果 の 平 等 を 目 指 す 姿 勢 を 明 確 に し て い る 。 ソ 連 崩 壊 後 の 所 得

特集/キューバ政治・経済の現状

特集にあたって

特集/キューバ政治・経済の現状

アジ研ワールド・トレンド No.121(2005.10)─2 3─アジ研ワールド・トレンド No.121(2005.10)

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特集/キューバ政治・経済の現状

格 差 の 拡 大 要 因 は 、 ① 自 営 業 者 と 公 務 員 の 収 入 格 差 、 ② 海 外 在 住 親 族 か ら の 外 貨 送 金 の 有 無 が 主 な も の で あ る 。 ① は 、 ソ 連 崩 壊 後 の 経 済 危 機 に 対 応 し 、 国 民 の 不 満 を 鎮 め る た め に 導 入 さ れ た 自 営 業 認 可 や 米 ド ル を は じ め と し た 外 貨 所 持 解 禁 な ど に 伴 っ て 生 じ た 。 ② に つ い て は 、 米 国 か ら の 親 族 訪 問 を 積 極 的 に 認 め る こ と で 、 親 族 が 持 ち 込 む 衣 類 や 履 き 物 、 医 薬 品 な ど の 必 需 品 、 米 ド ル 現 金 な ど が 、 政 府 の 財 政 負 担 な し に も た ら さ れ 、 少 な く と も そ う い う 親 族 が い る 国 民 の 物 質 的 な 欠 乏 状 態 を 緩 和 す る こ と が で き る 。 し か し こ れ ら に よ っ て 、 そ れ ま で は 比 較 的 平 等 で あ っ た 国 民 の 間 に 、 大 き な 所 得 格 差 が 生 じ た 。 ま ず 一 九 九 三 年 に 政 府 が 認 め た 自 営 業 は 、 徴 税 制 度 、 市 場 が 未 整 備 で 、 所 得 に 応 じ た 課 税 が で き な い た め に 、 大 き な 所 得 格 差 を 生 む 主 要 因 と な っ て い る 。 一 カ 月 に 日 本 円 に し て 数 十 万 円 以 上 を 稼 ぐ 自 営 業 者 が い る 一 方 で 、 年 金 生 活 者 な ど は 月 に 五 ○ ○ 円 に も 満 た な い 老 齢 年 金 で の 生 活 を 余 儀 な く さ れ て き た 。 こ の 所 得 格 差 の 拡 大 は 、 社 会 主 義 を 掲 げ る 現 政 権 に は 容 認 し が た く 、 一 九 九 ○ 年 代 後 半 か ら ま ず 、 原 材 料 の 仕 入 れ 先 を 監 視 す る こ と で 引 き 締 め を 図 っ た 。 自 営 業 者 の 多 く が 、 材 料 を 国 家 が 統 制 す る 限 定 的 で あ る が 合 法 的 な 市 場 以 外 の 経 路 で 仕 入 れ て い た か ら で あ る 。 一 九 九 三 年 の ド ル 所 持 合 法 化 以 来 、 キ ュ ー バ で は 経 済 の ド ル 化 が 進 み 、 海 外 の 親 族 か ら の 送 金 な ど で ド ル 収 入 が あ る 者 と そ う で な い 者 と の 差 が 拡 大 し て き た 。 が 、 二 ○ ○ 四 年 一 ○ 月 か ら 始 ま っ た ド ル 流 通 禁 止 に よ り 、 国 内 の 外 貨 店 で は 兌 換 ペ ソ の み が 流 通 す る こ と に な り 、 さ ら に 今 年 二 ○ ○ 五 年 四 月 か ら 、 兌 換 ペ ソ の 交 換 レ ー ト は 公 定 レ ー ト で あ る 一 ド ル = 一 兌 換 ペ ソ で は な く 、 米 ド ル に つ い て は 二 ○ % 減 価 し て 八 ○ セ ン ト = 一 ペ ソ 、 そ れ 以 外 の 外 貨 に つ い て は 、 八 % 減 価 と な っ た 。 後 者 は 一 ド ル = 一 ペ ソ の レ ー ト と そ れ ぞ れ の 通 貨 の 対 ド ル レ ー ト を 組 み 合 わ せ 、 た と え ば 日 本 円 は 一 ド ル = 一 一 ○ 円 と い う 交 換 レ ー ト で あ れ ば 、 一 兌 換 ペ ソ = 一 ○ 一 ・ 二 円 の レ ー ト で 交 換 さ れ る 。 逆 に 交 換 し た 兌 換 ペ ソ を 米 ド ル に 交 換 す る 場 合 は 一 兌 換 ペ ソ = 一 ・ ○ 四 ド ル に し か な ら ず 、 大 幅 な 手 数 料 収 入 が 国 庫 に 納 め ら れ る こ と に な る 。 こ の 政 策 は 政 府 の 財 政 赤 字 、 累 積 債 務 問 題 を 解 決 す る 一 助 に な る と 考 え ら れ る 。 キ ュ ー バ 政 府 は ソ 連 崩 壊 以 来 、 外 貨 不 足 に 苦 し ん で お り 、 こ と に 対 外 債 務 問 題 が 深 刻 で あ る 。 ロ シ ア や 日 本 な ど 、 ソ 連 崩 壊 前 か ら 多 額 の 債 務 を 抱 え て い た 国 々 か ら の 債 務 は も と よ り 、 冷 戦 後 に 新 た に 借 り 入 れ た 西 欧 諸 国 か ら の 債 務 も 累 積 し て お り 、 ど の 国 も キ ュ ー バ へ の 新 規 借 款 に は 慎 重 で あ る 。 加 え て 経 済 制 裁 を 実 施 す る 米 国 は 、 米 国 自 身 の 借 款 そ の 他 の 経 済 協 力 の み な ら ず 、 世 界 銀 行 や I M F へ の キ ュ ー バ の 加 入 も 認 め て い な い 。 海 外 か ら の 資 金 調 達 に 頼 れ な い た め 、 キ ュ ー バ は 国 内 に 目 を 向 け た と 思 わ れ る 。 こ の ド ル 流 通 禁 止 政 策 、 と り わ け 兌 換 ペ ソ の 増 加 を 図 る こ と で 、 継 続 的 に よ り 多 く の 外 貨 を 国 内 か ら 吸 収 す る こ と が で き る か ら で あ る 。 こ れ に よ り 、 キ ュ ー バ は 今 の と こ ろ 、 国 民 間 の 平 等 に よ り 重 点 を 置 い た 政 策 運 営 を 行 っ て い く 姿 勢 を 明 確 に し て い る 。 今 年 四 月 か ら 公 務 員 の 最 低 賃 金 や 年 金 生 活 者 の 給 付 を 、 給 付 額 に 応 じ て 最 高 二 七 三 % 引 き 上 げ る 一 方 で 、 収 入 の 高 い 自 営 業 に 対 す る 制 限 を 強 化 し 、 海 外 か ら の 外 貨 送 金 を 受 け ら れ る 層 か ら 前 述 し た 八 ∼ 二 ○ % の 事 実 上 の 税 金 を 取 る こ と に な っ た 。 政 府 は こ う し て 吸 い 上 げ た 外 貨 収 入 を 、 対 外 債 務 の 支 払 い や 、 低 所 得 層 へ の 社 会 福 祉 、 公 務 員 の 最 低 賃 金 や 年 金 給 付 額 の 引 き 上 げ に 伴 う 支 出 増 に あ て る と 説 明 す る つ も り と 思 わ れ る 。 端 的 に 述 べ れ ば 、 ソ 連 崩 壊 後 の 経 済 危 機 を 乗 り 切 れ る 程 度 の 経 済 開 放 は 行 う が 、 そ れ に 伴 う 所 得 格 差 の 拡 大 は 最 小 限 度 に 食 い 止 め る 、 と い う 姿 勢 を 政 府 は と っ て い る の で あ る 。 政 策 と し て は 中 途 半 端 な 感 は 否 め な い が 、 社 会 主 義 の 原 則 を 堅 持 し つ つ 、 な お か つ 国 民 の 生 活 水 準 の 向 上 の た め 、 限 定 的 な 開 放 政 策 を と る と い う 、 世 界 で も あ ま り 成 功 例 の な い 課 題 に 挑 ん で い る 以 上 、 矛 盾 を は ら む の は 避 け ら れ な い と 思 わ れ る 。 ︵ や ま お か  か な こ / 在 ケ ン ブ リ ッ ジ 海 外 調 査 員 ︶ アジ研ワールド・トレンド No.121(2005.10)─2 3─アジ研ワールド・トレンド No.121(2005.10)

参照

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︽参考文献︾ ①  Ellis ,  S tephen  2 0 0 9 .  W est  A

アフリカ政治の現状と課題 ‑‑ 紛争とガバナンスの 視点から (特集 TICAD VI の機会にアフリカ開発を 考える).

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出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所/Institute of Developing Economies (IDE‑JETRO) .

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア 経済研究所 / Institute of Developing.

国際図書館連盟の障害者の情報アクセスに関する取

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア 経済研究所 / Institute of Developing.

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