Title
日米関係のパースペクテイブ
Author(s)
狩俣, 真彦
Citation
沖大経済論叢 = OKIDAI KEIZAI RONSO, 17(1): 1-54
Issue Date
1992-09-30
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/6844
日米関係のパースペクティブ
狩俣真彦
米国が希望を失ったことへの不安は人一倍強い。 でも、僕はそれをユーモアで描く。怒りよりも笑 いの力を信じているんです。アイバン・ライトマン (天声人語より) 目次 イントロダクション 第1章日米経済のクロスオーバー 第2章世界システムのアリーナ 120世紀の第4四半世紀 219世紀末イギリスの国際収支 第3章日米経済の対外不均衡 1日米のマクロ・バランス 2曰米の貿易構造 終章パックス・パシイフイカ 1日米間のハイテク摩擦 2新しい貿易秩序 イントロダクション 冷戦の終焉によって資本主義と社会主義の間の体制間競争は終ったと言われ ている。これが、はやりの「歴史の終焉」あるいは「エンディズム」の視点で -1-ある。しかしながら、例えば曰米間の摩擦にみられるように、体制間競争が終 ったが故に、かえって対立が際立ってきた問題も少なくない。このような視点 を体制内競争への回帰または「エンド・オブ・エンディズム」と呼ぶことにし よう。 本稿では後者の視点に立って、曰米経済の対外不均衡とその行方について検 討する。その際に曰米の不均衡を資本主義世界システムのサイクルの中で位置 づけることにする。世界システムのサイクルの中で考えるとき、20世紀の第 3四半世紀はアメリカの覇権の最盛期に当り、第4四半世紀はその衰退期にあ たる難しい時代である。 ところで、アメリカ経済が衰退に悩んでいる第4四半世紀に、ハイテクを中 心とする曰本の製造業がアメリカにクロスオーバー(逆転)することになって きた。これが慢性化した日米摩擦の背景である。衰退期のアメリカの心理を、 コロンビア大学のジャグディッシュ・パグワティは「縮んだ巨人症候群」(デ イミィニッシド.ジャイアント・シンドローム)と名づけた。次の文章は、バ グワティの『危機に立つ世界貿易体制』からの引用である。 多分、最も重要な要因、とくに、この戦線での米国のノイロゼーヘの転換の 原因は、世界経済の中で米国の相対的地位が低下してきており、私が数年前に 初めて使ったように権威を喪失した巨人シンドロームに向かいつつあることで ある。 権威喪失という米国の巨人シンドロームは19世紀末の英国のそれと同じで ある。それは、米国やドイツが国際舞台に到達したときであった。つまり、ど の事例でも、新しい貿易の成功の諸関係がその時代の秩序となった。その時代 には「公正貿易」と「相互性」が英国内で騒がれた言葉であった。今の米国内 におけるものと同様である。 しかし、パニックとライバルに対する短気が今曰の米国ではとくに激しい。 「ナンバーワン」であることの心理的欲求は明らかに、組織、企業、見かけの エレガントさ、一番の富者の絶え間ないランキング競争が存在する国では、も っとも強い。そして、ここでも再び、その台頭が挑戦に発展する国こそが、つ -2-
まり日本であるが、とくに不公正貿易の責めを受けやすい国となる。実際、そ のような曰本への申し立ては、少なくとも過去半世紀の間は、ごく当たり前で あった。(注') 以下の第1章では、日米の地位が逆転した側面のいくつかをとりあげる。ま ず世界の製造業に占める曰米の比重はいづれも27%で対等にならんでいる。 ハイテク産業の重要な部分である世界の半導体市場では、1985年に日本が アメリカを追い越しその格差は開いたままである。日本の貿易の対米黒字、ア メリカの対日赤字は、ハイテク製品分野で起っている面が大きいのである。 第2章では、19世紀後半から20世紀の今曰に至る150年間の世界シス テムの作動と、19世紀末のイギリスの経常収支黒字・対外直接投資を通して のデクライン・マネジメントを検討する。第2章は20世紀末の、日米にとっ ての「難しい時代」に「歴史の教訓」を示すのがねらいである。 第3章は日米経済の対外不均衡の性格を理解するために、曰米のマクロ・バ ランスとそれぞれの貿易構造について説明する。曰本の経常収支についてみる と、その黒字は当分続くことが予想される。大事なことは、その黒字を直接投 資・途上国の開発資金需要・累積債務のリスケジュール等に効果的に配分する ソフト・パワーに磨きをかけることである。アメリカについて言えば、経常収 支の赤字は財政赤字に根ざした「双子の赤字」であり、財政赤字は社会保障の 負債によるところが大きい。また貿易赤字はハイテク産業の再生にかかってい る。アメリカのデクライン・マネジメントは大変難しいようだ。プリンストン のロバート・ギルピンは次のように述べる。 米国が直面している基本的な問題は、米国自身が経済的、政治的な衰退の意 味するものを積極的に直視しようとしないことである。この誤りは、経済政策、 とくに、連邦赤字の解消をめぐる政治的手づまり状況をみれば明白である。… ……財政赤字はドルの過大評価、巨大な貿易赤字、雇用の減少の主要な要因と なっている。にもかかわらず、議会も行政府も、増税か連邦政府支出の削減を 通じてこの問題に真剣に取り組もうとしていない。………民主党が支配する議 -3-
会も共和党の政府も、増税や人気の高い連邦の施策を廃止することによって米 国大衆に非難されることを望んでいない。………米国人にとっては、腹立たし い貿易赤字を日本人のせいにし、曰本人の行動の根本的な変革を求めつつ、管 理貿易制度へ向かうほうが自分達自身で困難な選択を行うより容易なのである。 一言でいえば、米国は自分が経済的、政治的に衰退していることをまだ認識し ておらず、それに順応していないのだ。米国はもはや、すべてを自分の思うま まにすることはできない。米国はその国内的、国際的野心を抑制しなければな らない。米国は自らの資源と行動のバランスを改善する必要があり、そのため の困難な選択を行わなければならない。かって何事も可能と考えていた国にと って、こうした急激な変化はもちろん本当に革命的な事態である。(注2) 終章では、第1にローラ・タイソンのアクティビズムをとりあげる。第2に 21世紀の世界システムの行く方について占う。ローラ・タイソンはクリント ン政権の大統領経済諮問委員会の委員長である。タイソンはハイテク産業にお ける「規模の経済」と「外部性」の存在を重視し、このような分野では政府の 育成策や通商の管理が欠かせない、と主張している。GATTの多国間主義・ 無差別主義の自由貿易は、アメリカ覇権の成熟期には整合したが、覇権の衰退 する第4四半世紀には「戦略的通商政策」が拡がりそうである。ここでもタイ ソン自身に語らせよう。 アメリカ企業が並ぶもののない技術の優位を持っていた頃に役立った通商政 策や国内政策が、もはや有効ではなくなったということだろう。特に、自前の ハイテク製造業を育てようという日本やヨーロッパの努力に、目をつぶっては いられない。さらにGATTのウルグワイ・ラウンドが最近暗礁に乗り上げた ことから分かるように、わが国独自の思想を反映した国際ルールを貿易相手国 側が受け入れるなどと期待するのは、現実的ではない。こうした現実を前にし て、われわれは、通商システムの自由化拡大に向けて運動を続ける一方で、わ が国のハイテク産業を応援するマクロの通商・産業政策を考案すべきだ。もち ろんこれは、困難な仕事である。(注3) -4-
21世紀の世界システムについては、ECスタンダードになるというのがレ スター・サローの考えである。(注4)終章では、曰米の補完によるパイゲモニ ー、アリーナは太平洋、したがって名づけてパックス・パシィフイカが21世 紀の世界システムを牽引する、と主張する。 注1ジャグディシュ・バグワティ箸『危機に立つ世界貿易体制」勁草書房 19頁 注2小宮隆太郎・横堀恵一・中田哲雄編『世界貿易体制』東洋経済報社 36頁 注3ローラ・タイソン『惟が惟を叩いているのか』ダイヤモンド社3頁 注4レスター・サロー『大接戦』講談社
第1章日米経済のクロスオーバー
「イントロダクション」において、今日のアメリカが衰退期に入っているこ と、その際に日米のハイテク産業に地位の逆転が起り、そのために日米経済の 不均衡が生じ、両国間の摩擦が慢性化する傾向にあること等について説明した。 本章では、日米の経済的地位の接近あるいは逆転に関する幾つかの指標を検討 していきたい。平成5年の『通商白書』は、日米経済の詳しい分析をしている が、結語の最終ページを次のように締め括っている。 曰・米のGNPが逆転する、いわゆる「クロス・オーバー・ポイント」は、 今後10年以内に実現する可能性が高い。クロス・オーバー・ポイントになる -5-と、よりいっそう日本の構想力が求められることになる。横ならび意識で同じ 製品を大量に生産する企業行動が、低成長への移行、円高の定着、途上国の追 い上げ等により行き詰まり、その意味でも、創造性の発揮が要求されている企 業経営と併せて、曰本は、いよいよ既成の価値観や考え方が通用しなくなる 「創業の時代」を迎えた。世界は、世界経済が持続的成長のもと、自由貿易秩 序に基づく拡大均衡を実現するための「知恵」を産み出すために許される準備 期間は、それ程長くはない。(注') 本稿も、同様な関心で、日米経済の検討を進めている。第1-1図表は、 OECD諸国の付加価値額の合計のなかに占める曰本、アメリカ、ドイツのシ ェアの推移を示したものである。1970年における三国の地位は、アメリカ 44%、日本13%、ドイツ12%であった。1988年におけるシェアは、 アメリカと曰本が27%で、ほぼ等しく、ドイツが12%でほとんど変ってい ない。1985年から88年に起った円・ドル相場の変化($1=221円か ら128円へ)が曰本の地位の激変をもたらしたのである。(注z) 第1-1図表日本の製造業の規模 (%) 50 通産省産業政策局編 『二十一世紀経済システム』 43.9 40 30 20 10 □:日本 国:米国 、ドイツ 四五頁 0 19701975198019851988(年) 注)付加価値額のOECD25ケ国の合計に対する比率。 為替レート換算により計算。 -6-
第1-2図表は、世界市場に占める日米の半導体とDRAMのシェアの推移 を示したものである。1978年には、米国に本社のある企業の半導体シェア は世界の55%に及んだ。同年の、日本の企業の半導体シェアは28%であっ た。1985年に、半導体市場における曰米の地位逆転が起こった。(図表①) 半導体関連のあらゆる製品で、アメリカは日本にシェアを奪われたが、逆転が 最も顕著だったのはDRAM市場である。(図表②)81年に逆転が起きて から5年とたたないうちに、アメリカの地位は支配者から脇役に転落してしま っている。(注3〉 第1-2図表(ローラ・タイソン) ①米国、日本、ヨーロッパの 世界半導体市場における60 シェア、 1982年-91年(百分率)50 40 30 20 10 0 1982198コ19841985198619871988198919901991年 一一・-米国一日本…-…その他 ②米国、日本、ヨーロッパの 世界DRAM市場における シェア、80 1978-91年(百分率)70 60 50 40 30 20 10 0 I978I979I980198II982I983I984I985I986I9871988I989I990I99I竿 ---米国.-日本一一一ヨーロッパ---回国/台湾 -7-
第1-3図は、曰米独の経常収支を対GNP比で示したものである。197 0年代は石油ショックの時代であり、むしろ日本の経常収支が米独に比べて悪 化しがちであった。ところがレーガン大統領の登場する81年から、アメリカ の赤字は急速に悪化し、日独の収支は急速に黒字を拡げるようになった。87 年をボトムにアメリカの収支が改善にむかっているのは、プラザ合意の影響が あったと考えられる。90年代末のドイツの赤字化は、東西ドイツの統一に根 ざしている。 第1-3図表経常収支(対GNP比) (%)5432101234 一一一一 6
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6-ノ〔/
4 70758085、90(年) 資料:IMF「InternationalFinancialStatistics」,日本銀行「国際比較統計」 『21世紀経済システム』256頁 第1-4図表は、日米の対外純資産残高を対照して示したものである。19 90年における曰本の対外純資産残高は3,281億ドルに達している。逆に、 アメリカは対外純負債残高が4,122億ドル(マイナス)に及んでいる。そ こで、日米関係は、世界最大の純資産国(日本)と世界最大の純負債国(アメ リカ)の関係という逆転した関係に変ったことになる。 -8- の』 八 。、、、ニグク ロー■曰0夕●● 。 Q ノ{  ̄①~ 、 ̄ ̄' 句 q C O 0 ~.。-グ ● ● 夕 、ノ 、' ノ  ̄ ロ、 G 、 ′、00 0 60 0 00 0 0●~ ■■、 ● Q Q D C 、ロ ①Sc  ̄ ロC クク 、---.米 タ グ グ ● タ グ 0 ● ● タグ 、 、 ) D , 0 -ノー1.1 lIIInII1nIlOnIIIIOIOII表②にそって説明すると、日本の民間部門の純資産残高は82年間から恒常 的なプラスに転じている。そのなかでも証券投資、直接投資などの長期純資産 残高の増加が著しい。民間部門の金融勘定は外国為替銀行の短期資金取引きで あるが、その純負債残高は80年代に大きく増大している。「短期借り.長期 貸し」という国際金融仲介をともなった資産蓄積であった。アメリカについて みると、民間部門の準資産残高の減少分(1980-90年)が65%、政府 部門の減少分が35%を占めている。民間部門の減少は、証券投資、直接投資、 銀行投資、銀行部門で著しかった。(注4) 第1-4図表 ①日本とアメリカの 対外純資産残高 (ストック統計) の推移 (IOU@ドル) 印加閃叩0m伽閃的 4321 1234 』一一』 アメリカの対外純yY願ノ...~.・・・. ~令,.】 ノ$
一二二二二三二三三二三二一一岸
ロ本の対外純資歯 0 ℃●● 1960196519701975198019851990 ②日本とアメリカの項目別対外純資産残高の推移(単位:101hドル)j801l98111182119831198イ’'985119861987198811891990
I11I犯則M〃ⅢⅡ 563518 1467019683910 505993 12- 643982 ■■ 702274 407634 -1121l ’[lIlil
863432 ■■■■ 819429 -92550 21221陰霞
529364 ■■ I90155 036662 - 37.374.31298180.42407291.7293.2328」 Ⅱ届198611987198819891990
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-472|毛一11 079763 66-885 21毛||刊 709526728182 039966嶬
-741|-'350
安保・柴垣・河合編『曰米関係の構図』31,36頁 -9- 11木 1971 1975 1980 1981 1982 1983 198イ 1985 1986 1987 1988 1989 1990 lEWW冊「'1 irrlg投済 iliML投涜 金触Kll寵 その他 政111郎門 055569 ●●●●●■ 703126 一一-1 326553 ●■●●●● 063307 |刊- - 一 733812 ●●◆●●● 668288 11-32 564595 ,●●●●● 802929 12-312 000016 ●●●□●● 257932 2’322 988223 ●●●●●● I73535 121332 155563 0●●■■● 730257 431552 529364 ●●●0●● I90155 036662 |a■■■ の 563518 犯則M〃伽Ⅲ I11I 505993 ●●●●●● 683944 467019 112I Iイ7.6 100.4 172.3 -262.9 137.8 M4.2 828874 ●●●00● 詔佃閲価加別 I1121I 863432 ●●●●●G 819429 192550 21221 〈FiI 9.8 7.0 11.5 10.9 24.7 37.3 74.3 129.8 1804 2イ0.7 291.7 293.2 328」 アメリカ 1971 1975 ]980 1981 1982 1983 198イ 1985 1986 1987 1988 1989 1990 民、部門 耐隆投Vi :il券投in 洲7部i'1 非馴7冊111 政1W部「11 088445 ●■●●●● 686600 46‐一 248060 ●●●●●■ 朋卵川114 1 095476 ●CD●●● 201297 9615’8 22一 869437 ●●●●●● 231106 241013 32-1- 987681 ■00●●● Ⅳ叩Ⅳ別冊相 32’1’ 364657 ●●●●●● ”、釦伽割Ⅳ 195.7 M2.8 -39.6 107.イ -14.9 -31.7 536132 ●●●●●● 725653 059614 1’一 一一 -10.6 M7.6 -179.1 27.8 -6.8 -63.5 225178 ●●●●●● 7 .6 99337 69216 14-一一 -158.8 132.4 -238.8 -37.2 -15.2 -M7.1 -277.0 102.3 -298.9 -51.9 -28.6 -162.6 -2206 1321 -252.8 -72.3 -27.7 -】91.6 合H1 イ5.5 74.2 379.6 359.4 36I.0 285.0 164.0 6イ.3 -74.1 -135.0 -306.0 -439.7 -412.2第1-5図表は、通産省がハイテク産業の諸分野について日米の地位を比較 評価したものである。1988年の技術水準についてみると、アメリカがリー ドしているのはデータベース・システムと航空機エンジンの二分野である。曰 本が優位な部門は半導体メモリー、ビデオテープ・レコーダー、光電池、ファ イン・セラミックス分野である。その他のすべての分野で曰米は同等になって いる。 第1-5図表通商産業省による主要技術における米国・日本の地位比較、 1983年および88年 83年 88年 技術 技術水準技術開発能力技術水準技術開発能力 国等国本国等国等等国国本国国国等 米同米日米同米同同米米日米米米同 米同同日米同同同日同同同米米米日 国等等本国等等等本等等等国国国本 データベース・システム 半導体メモリー コンピュータ ビデオテープ・レコーダー D-PBX マイクロプロセッサ レーザー・プリンター 複写機 組立てロボット CAD/CAM 通1日衛星 光電池 航空機エンジン 超高層建築 先端複合材料 ファイン・セラミックス 国本等本等等等等等等等本国等等本 米日同日同同同同同同同日米同同日 P 6 国本等木本本本木本本尊本等等等本 米日同日日日日日日日同日同同同日 CAD/CAM=コンピュータ利用自動設計・自動製造システム。D-PBX=デジタル構内交換設 備。 資料:日本の通産省「エ業技術における傾向と将来の課題」、1988年。 ローラ・タイソン(注3)65頁 技術開発能力についてみると、アメリカが優位な分野はデータベース・シス テムのみである。曰米の同等の分野は、コンピューター、通信衛星、航空機エ ンジン、先端複合材料である。その他の分野では、すべて日本が優位にたって いることになる。 以上、曰米の製造業の付加価値、日本の半導体とDRAM、曰米の経常収支、 -10-
曰米の対外純資産、通産省の曰米ハイテク産業の地位評価の5つの点にまたが って、両国のクロスオーバーの様相を検討した。アメリカの地位の低下、曰本 の地位の上昇という相対的関係が明らかになった、と考えてよかろう。 注1.通商白書(平成5年)357頁 注2.通産省産業政策局編『21世紀型経済システム』第1-1図表は245頁、 第1-3図表は256頁 注3.ローラ・タイソン箸前掲書第1-2図表は150,151頁、第1-5図表 は65頁。なお、日米摩擦、ハイテク産業等、本稿の全面にまたがり、伊東光晴 著「技術革命時代の日本』岩波書店、を座右の書とした。 注4.安保哲夫・柴垣和夫・河合正弘編著、『日米間の構図』ミネルヴァ書房の「第 3章日米純資産ポジションの逆転」-河合正弘論文を参考にした。引用の第 1-4図表は同著、同論文の31頁及び41頁。 -11-
第2章世界システムのアリーナ
本章では、日米経済に逆転が生じ、日米摩擦が慢性化している20世紀の第 4四半世紀を、世界システム論の手法にしたがって、国家間抗争の覇権サイク ル(100年周期)と世界経済の50年サイクル(コンドラチェフ波)のなか で位置づける。そして第4四半世紀が、覇権サイクルのなかでアメリカの衰退 期に当り、かつコンドラチェフ波動の下降期に当ることを確認する。 第2節では、19世紀の第4四半世紀一イギリス覇権の衰退期一のドイツ問 題とイギリスの経常収支について検討する。当時のドイツ問題は今日のジャパ ン.バッシングとアナロジカルな問題であり、当時のイギリスの対外収支の動 態はイギリスのソフト・パワーを表わしており、今曰のアメリカの衰退の管理 に「歴史の教訓」を与えると考えるからである。 第1節20世紀の第4四半世紀 フェルナン・ブローデルが主張したように、資本主義は世界システムである。 世界システムは世界経済と国家間体系という相互関連する2つのサブシステム によって構成されている。世界経済は、そもそもの始まり(長い16世紀に誕 生した)からヒト・モノ・カネの交流によって1体化の傾向にあった。そのた めに経済には、世界的な成長と停滞の循環が初めから記録されている。 ロシアの経済学者ニコライ・コンドラチェフは、1920-1945年にま たがる停滞期に直面するなかで、50年を周期とする世界経済のサイクルに気 づくことになった。 世界システムのもう一方のサブシステムである政治システムは、ウェストフ ァリア会議(1644-48年)で形を整えた後、軒余曲折の国家間抗争を経 て、今日180余の主権国家の誕生をみるに至っている。主権国家のそれぞれ の間には国力の格差があり、ウオーラステインは力の差に応じて中核国家群、 準周辺国家群、周辺国家群の3グループに国家を分類している。 中核国家のなかの最強国は覇権国(ヘゲモン)と呼ばれている。覇権国は国 -12-家間関係のリーダーシップを握り、国際政治の方向を左右する。覇権とは諸国 のパワーを統治するメタ・パワーである、と言うことができる。覇権(ヘゲモ ニー)をめぐる中核国家間抗争は100年の周期でくり返されてきた。したが って覇権サイクルは、コンドラチェフ波動の二周期と一致することになる。 いま、コンドラチェフ波動の上昇期をA、下降期をB、コンドラチェフ波動 の第1波をI、次の波動を2と名づけると、19世紀の第3四半世紀から20 世紀の第4四半世紀にまたがる世界システムの動態の概念図は、第2-1図表 のように示すことができる。(注') 第2-1図表覇権波(上)とコンドラチェフ波(下)の概念図 ●■● ̄●●。●●●●b●●。●●●●●●●●P●●●●●●●●C●●●●●。●の●P●●□●●●●● ̄●●●●●●●●⑤●●●・守●●、の● ̄巴●●●●●●■ ̄●●●■●●●●。●●●●●●●●●■ (国力)
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ウオーラステイン箸『世界システム2」31頁(注1) また、1850年から2,000年にいたる150年を四半世紀毎に区切っ て命名すると次のようになる。 19世紀の第3四半世紀(A2)-イギリス覇権の成熟期 19世紀の第4四半世紀(B2)-イギリス覇権の衰退期 -13-20世紀の第1四半世紀(A1)-アメリカの覇権への躍進・イギリス覇権 の終焉期 20世紀の第2四半世紀(B1)-アメリカの覇権獲得期 20世紀の第3四半世紀(A2)-アメリカ覇権の成熟期 20世紀の第4四半世紀(B2)-アメリカ覇権の衰退期 この構図によって20世紀の第1及び第2四半世紀を見なおすと、最初の2 5年はイギリス覇権の終焉期、次の25年はアメリカ覇権の幼稚期に当たる。
総じて、覇権の不安定ないし空白期(インタ・レグナム)に当たる。20世紀
の前半は危機の時代であった。 20世紀の第3四半世紀(A2)は、コンドラチェフ・サイクルの拡大期か つアメリカ覇権の成熟期に当たる。きわめて「幸運な時代」、あるいは「ロン グ・ピース=ガディス」の時代だった、と後世から回顧されることになろう。 そして20世紀の第4四半世紀(B2)は、コンドラチェフ波の下降期かつア メリカ覇権の衰退期であるから「極めて困難な時代」と覚悟すべきであろう。 通産省の産業構造審議会でも世界の政治と経済の動態を1体化して説明する モデルを提出している。経済を市場経済、政治を民主主義という2つの発展軸 によって類型すると、第2-2図表に示される構図がえられる。(注z) 第2-2図表 機能 図表234頁 図表の説明20-21頁 『21世紀型世界システム」 機能不全 低 一一 局 -14-この構図によると諸国家は次の3つの地域に分類される。1)民主主義と市 場経済が共に機能している地域(「平和の同盟」地域、ポストモダン)、2)民社主 義又は市場経済のいづれかが機能していない地域(不安定地域、モダン)、3)民 主主義も市場経済も共に機能していない地域(無秩序地域、プレモダン)。第1 地域はセキュリティロンミューニティ、第2地域はパワーのビリアド,ゲーム が成り立つリアリズムの世界、第3地域は周辺地域と表わすことができる。 次に世界経済にもどって、3つの図表を加えて本節をとじることにする。第 2-3図表は、18世紀から今日に至る世界経済の動態をGNPの成長率と輸 出の成長率によって示している。両図表に違いがあるが、①にもとづきトレン ドをみると、一貫して輸出の成長率がGNPの成長率を上まわっていることが 分かる。つまり経済は単一の世界経済に向う力(輸出)にけん引されることに よって発展してきたのである。例外は、20世紀の前半であり、後に詳しく検 討するようにこの期間は自由貿易を疎外する力が働いたが故に、発展もまた疎 外されたのである。 ②のロストウの推計は、なお一層本稿の趣旨に合致する。つまり、生産と貿 易は覇権の成熟期(1860-70年、1948-71年)に伸びが大きく、 しかも貿易の伸びが工業の伸びをリードしているからである。(注3) 第2-3図表①GDPと輸出の成長のトレンド1920-1990 歴史的に、GDPの成長と輸出の成長は、相互補強する関係にあっ た。一般的に、貿易は産出より速いスピードで増加してきた。 年間平均成長率(%) 注:1番目の期間のGDP に関する数値は、1700-1820 年のデータを使用している。 データは、フランス、ドイ ツ、イタリア、日本、イギ リス、アメリカ等に関する ものである。1番目と2番 目の期間には、すべての国 々のデータが表示されてい るのではない。 (出所)労働省、IMF、 世界銀行、lUaddison PhasesofCapitalist Development 18 10 図GDP■輸出五
ⅢⅢ
1720-1820~1870-182018701913 「アメリカ大統領教書」 1913-1950. 19501973 (1992) 1973-1990 227頁 -15-②生産と貿易の成長率比較 (1720~1971年)
篁籔業世界期⑧
B/A 1720-80 1780-1830 1820-40 1840二60 1860-70 1870-1900 1900-13 1913-29 1929-38 1938-48 1948-71 1.10 1.37 2.81 4.84 5.53 324 375 0.72 -1.15 0.00 7.27 ■ 貝)RUnコ貝)o〉勺lワ』勺JnU1LEU ●●●●■巴●●00白 1▲⑤色。』@J①』のJ4缶の二ワ&刈珀EJ 3781897800 593988253 ●●●●●●●■ ● 001100001 - 森田他 『近代国際経済要覧』 11頁 注:a、1705~1785年ご 出所:RosIow,W,W、、0,.c〃..p67. 第2-4図表は、世界のGDP、貿易、対外直接投資の伸び率を示したもの である。図によると1970年を100とした指数で、1990年の指数はG DPが614、貿易が954、直接投資(フロー)が1,856となっている。 世界経済は大きな流れとして見る限りでは、1体化の傾向は否定できない。 いくらかの景気の循環を伴いながら。 第2-4図表世界の貿易、直接投資、GDPの伸び(1970年=100とした数値) 2,500 2,000 1.500 1,000 500 0 19701975198019851990 注)「貿易」はl1t界輸入(CIF)と111s界輸lIl(FOB)の合計額。なお、fir易の頑は1989年の数値。 「面接投狂(フロー)」は世界対外晦接投資と世界対内iii[接投溢の合iIf額。 「世界GDP」の1990年の数M[は推計値。 『21世紀型経済システム』226頁 -16- 1856 世界直接投資(フロー)’ ’’ ’’ ’ ’ ’  ̄ グ タ ’ 〃 954 276 世界 表二壺気兎一一=Z--面●●●●●●● ̄ ̄ ̄。C● ̄CD●■ ̄●●U■ ̄ 382 ●、 ̄ 世界GDP UQOlO第2-5図表は、20世紀の覇権の安定期(第3四半世紀)と覇権の衰退期 (第4四半世紀)における中核諸国の経済パフォーマンスを較べたものである。 為替相場についてみろと、70年代初めに固定相場が崩れ変動相場に移行した。 その後、円とマルクは異なる軌跡を歩みながら、急上昇した。平均の産出の成 長率でみると、1950-70年が5.4%、70-91年で2.9%である。長率でみると、1950-70年が5.4%、70-91年 インフレ率も同年で、それぞれ3.5と7.4を示している。 第2-5図表①ドル建ての主要工業国為替相場 指数(1948年=100) 250 ドイツダ...● ● .・・も! ●●● 3%i ● 200 ●●●●●● ●● 150 100 50 イタリア 0 194852566064687276808488 (出所)国際通貨基金 ②G7諸国における産出の成長とインフレ 。 這出の成長は.各国国内通貨の1985年不割 】P。 年平均成長率である。インフレは消費者物価指数(CPI)の年平均上昇率である (出所)国際通貨基金 『アメリカ大統領教書」(1993年)2283頁 -17-
第2節19世紀末イギリスの国際収支 これまで、何回か触れたように19世紀の覇権国家はイギリスであった。そし て19世紀の第3四半世紀はイギリスの覇権の成熟期に当り、第4四半世紀は イギリス覇権の衰退期に当る。現在進行中の20世紀の第4四半世紀へのアナ ロジーと教訓を求めて、本節では19世紀末イギリスの国際収支を中心にデク ライン・マネジメントを考えてみたい。 第2-6図表世界工業生産(1870-1913年) 800 。‐ ’五 合衆国 岳める各国 」工厘=10m 700
ブリ;!;l/Z;/影,ノー;
ドイツ二/ZZ;
’寒=;
600〃Zjiiミ1N、E:
DII【 世界 500 」IIP 400 ランス 300 ギリス 200 100 187075808590951900051013 注:a,bとも生産111政は1913年=ICOを1870年=ICOに直して作成.aの1870,1913年以外Iエ5ヵ年平均. 111所:a,bとtLea8ueolNaIions,ハ1,0s〈rjqlizq(io川口加dForeig'0Trade,1945,pp、13,132-137. 『近代国際経済要覧』(注5)88頁 第2-6図表は、19世紀末の中核諸国の工業生産を比較したものである。 覇権国イギリスが、アメリカとドイツに追いあげられている様子がくっきりし -18-ている。ただし、当時のアメリカは地勢的に恵まれており、国内市場が大きく 貿易でイギリスと競合する必要が少なかったので、いまだにアイソレイショニ ズムに耽るゆとりがあった。したがって覇権への挑戦者はドイツである、とイ ギリス国民の目に映るようになった。有名なウイリアムズの『メイド・イン・ ジャーマニー」から、いくらかを抜粋してみよう。 寛大な読者諸君、身の回りを見て欲しい。………諸君の服の何着かの生地は 恐らくドイツで織られたものだということに気づくだろう。まして、諸君の妻 の上衣の何着かは、十中八九ドイツからの輸入品だ。そして、彼女の娘達が曰 曜日毎に着飾る立派な外套やジャケットもドイツ製で、………諸君の子供達が 子供部屋で虐待しているおもちゃ、人形、そして童話の本もドイツ製だ。それ どころか、諸君が愛読している新聞の材質も同じ生まれ故郷を持っている。家 の中を歩き回って見て欲しい。応接間のピアノから台所の食器棚の上のコップ に至るまで、………不吉な商標が至る所で諸君を迎えてくれることだろう。縁 下にもぐって見給え。まさしくドイツ製の排水管を見つけるはづだ。壁炉から ちょっと離れて、委託販売で送られた本の包装紙をほどくと、それもまた「メ イド・イン・ジャーマニー」だ。諸君はそれを火にくく、そして自分が手にし た火かき棒はドイツで鍛えられたものであると考える。………そして、諸君の 憂うつな感想をドイツ製の鉛筆でちょっと書き留めておくがいい。真夜中、諸 君の妻は、ドイツ製の楽器や楽譜の助けを借りた、ドイツ製の歌手や指揮者や 演奏者によって上演されたドイツ製のオペラから帰宅する。(注5) ウイリアムズがドイツについて当時書いたことが、今日のアメリカの日本バ ッシングと同じムードであることに驚くばかりである。1969年にアメリカ の歴史家ディヴット・ランデスも当時の「ドイツ問題」を次のように描いてい る。(注6) 1870年以降になって、イギリス人もその新敵主ドイツの存在に気づきだ したのである。………諸々の新興工業の分野では、ドイツの優位が顕著になっ -19-
た。………たが、とりわけ強調されたのはドイツの輩が公明正大でない方法を 駆使しているのだという主張である。………こうした苦情が最高潮に達したの は、ロス・ホフマン名付けたところの『1896年の狂喜沙汰』の間のことで あった。議会の演壇からは、政府がバイエルン製鉛筆を購入していることとか、
ドイツの囚人労働で作られたブラシが輸入されていることなどの論難に雄弁が
揮われた。……… 他方、ドイツの体制は技術革新を制度化していた。すなわち変革が自動化さ れたのである。………その上、技術革新に対する感受性に見られるコントラストが、企業経営面での合理性の違いによって強化されたのであった。イギリス
の製造業者は、あいかわらず古典的計算式に忠実であった。すなわち、彼らは、
費用・危険・売上げをあらかじめ測定し、それを前提として既存設備との収益
差が最大となるような投資の仕方を選び、これによって収益極大化を試みたの
である。………彼らは住々にして、将来の期待値よりも目下の操業と収益にその投資を結びつけるという過ちを犯した。………ドイツ人の算術は全く異種の
もので、収益ではなく、技術的効率を極大化した。………今や手段はドイツ人にとって目的と化した。事後的に考察する経済学者は、………二つの損得計算
を次のように区別するだろう。すなわち、ドイツの企業経営者たちの方が一段
と長期的展望の上に立ち、競争相手のイギリス側が定数をおいた技術の変革と
いう外生の変数をその中に組み入れたのだと。 第2-7図表イギリスの初期貿易(17-18世紀) 商品貿易構造推計(1640年頃~1750年代) (1000ポソド) 国産品輪出 awiii出|輪@入
d-a+b+c粗総貿ル 純購入一c-b 純総iYルトa+e 成長累9(の平均年 9Ⅲ別別順〃州加川
46925 66677 11111 伽剛棚川棚 ,リ0?‘ 23458 剛ⅢⅢ川棚 I19 223 川棚剛細川 24568 ?↑909 釧捌測剛川 57240 112 刎川剛川川 I1190 23344 4,500 6,100 8200 9,100 13,100 1.2 0.9 0.5 1.3 『近代国際経済要覧』52頁 -20-ドイツ人を曰本人に、イギリス人をアメリカ人に置きかえれば、ランディス の19世紀末の抗争の描写は、そのままで20世紀末の曰米の確執に読みかえ が可能である。次にイギリスの国際収支に目を転じてみよう。ケインズは「重 商主義は重工業主義だ」と述べたが、19世紀以前のイギリスの貿易収支は大 幅な黒字で、それはイギリス内での低金利につながり、低金利は投資を活発化 し、工業化の進展につながっていった。イギリスの輸出の主要な内容は、羊毛 ・毛織物・雑製品であった。しかし19世紀に入ると綿工業の発展の結果、綿 製品が増加し第3四半世紀(イギリス覇権の成熟期)においては、輸出の7割 が綿製品、2割が毛製品という構成になった。また、イギリスが世界貿易のセ ンターとなったことから、貿易業務、保険料~海運収入等の貿易外収入によっ て経常収支が黒字化し、それに伴ってイギリスは世界のアブソーバーとなり 「パックス・ブリタニカ」の演出を続けるようになった。その結果貿易収支は 赤字化したが、経常収支は黒字を続け、海外投資が累積されることになった。 第2-8図表は19世紀末から20世紀はじめにかけての国際収支を示してい る。 第2-8図表イギリスの国際収支(1870-1914年、5ヵ年平均) (100万ポソド) 1875-791880-841885-891890-941895-991900-N
Ⅲ-0911911
俎出及び'11W 間且UV寺r=』 IF伽外〃I 9131長IMIタト投圖 IF回の月 lIi掴外没5 注:9lDjlM5jM1に1899-1902年蝋いて,lmlah剛の剛19鯛パラソスと鮒値で甲しくなっている. I)l910-I3fFのイカ年平均. 「近代国際経済要覧」95頁 -21-オプン・マクロ経済学の公式にしたがえば、経常収支の黒字は国内の貯蓄超 過(貯蓄マイナス投資)に等しく、貯蓄超過は資本流出(資本収支)に対応す る。第2-9図表は、イギリスの経常収支(CB)、貯蓄(S)、国内投資 (1)の対GNP比率を示し、貯蓄率と投資率の開きが、経常収支率に対応す る、と考えることができる。 第2-9図表経常収支(CB),貯蓄(S),投資(1)の対GNP比 0 0. 0. 『対外不均衡の経済学』(注7)44頁 1871-1913年間の国内投資率は年平均で6.9%、経常収支率は4.
2%であった。19世紀の60年頃まで経常収支率は1ないし2%であった。
60年代から増加がはじまり、図で示されているように、20世紀に入って急
増していることが分かる。次のように説明するのが妥当であろう。(注8)
長期資本の流出は、投資機会が相対的に減少した英国からその他の工業国に資
金を移転させ、これらの国々が順調な経済成長を持続することに貢献した。そ
して、これらの諸国が順調な経済成長を続け、英国への資金需要が継続したか
らこそ、英国からの活発な資本流出が続いたのである。その意味では、英国か
らの長期資本の流出にはそれ自身を継続させるメカニズムが組み込まれていた -22-と言えないこともない。だとすれば、経常収支の黒字が長期にわたって継続し た「理由」をこのような長期資本の流出に求めてもよいようにみえる。 ただし、この経過をへて、イギリスは相対的に衰退することになったのであ る。イギリスが衰退する直接の要因は、第1次大戦の戦費にあったが、世界経 済の中で眺めると、ドイツやアメリカ、その他のヨーロッパ諸国が工業化によ って発展をとげた、という相対的な比較の問題である。(注,) イマニュエル・ウォーラステン編集『世界システム2-長期波動』 藤原書店31頁の図を参考にした。なお、 通産省産業政策局編前掲書の20,21,234頁 大統領経済報告(92年)毎日新聞社227頁 宮崎・奥村・森田桐郎編『近代国際経済要覧」東京大学出版会11頁 大統領経済報告(93年)毎日新聞社283頁 宮崎、奥村、森田編前掲書92頁 村上泰亮「反古典の政治経済学下巻」 中央公論社302-4頁 なお、本稿のすべてについて参考にしたが、同著書の内容を消化しきっていない ため、極力、同著書に触れることをひかえた。 須田美矢子編「対外不均衡の経済学」日本経済新聞社44頁 本著書にはイギリスの1880-1913までの経済収支、貯蓄・投資バランス ・海外投資が理論的、かつ詳細に検討されている。また、アメリカについては過 去・現在にまたがって分析されている。その他、西ドイツ、デンマーク、カナダ、 アイルランドにまたがって対外不均衡が検討されているので、日米不均衡の理解 に必読書である。 同書55頁 ジョセフ・ナイ箸『不滅の大国アメリカ(BoundtoLeadM読売新聞社第2 章でイギリス衰退が論じられている。 注1 23 注注 456 注注注 注7 89 注注 -23-
第3章日米経済の対外不均衡
今日のオープン・エコノミーにおいては、国内生産のみで国内の需要に応え ることはできないので、総供給は国内生産(Y)と輸入(M)によって構成さ れている。また国内生産をすべて国内需要で吸収することはできないので、総 需要は国内需要(C+I+G)と輸出(X)によって構成される。つまり、マ クロ・バランスはY+M=C+I+G+Xと書くことができる。本章の第1節では、日米のオプン・マクロ・バランスを検討する。第2節では曰米の貿易構
造を検討する。 第1節日米のマクロ・バランス 上記のマクロ式Y+M=C+I+G+Xを変形することによって、次の式が えられる。 経常収支=貯蓄一投資=資本収支 この式にそって、1991年度の日本の経常収支、貯蓄・投資バランス、資 本収支をみると、経常収支黒字902億ドルは国内貯蓄1兆1千905億ドル と国内投資1兆1千3億ドルの差902億ドルに等しく、経常収支902億ド ルの黒字は資本収支の赤字(資本流出)の902億ドルに対応する。 最初に経常収支について考えることにする。第3-1図表は経常収支の体系を示した図である。いま移転収支も貿易外収支
に含めると、経常収支は貿易収支と貿易外収支(サービス収支ともいう)から構成される。ここではサービス収支のみをとりあげ、貿易収支は次節で検討す
る。世界経済の一体化が進むなかで、経常収支に占めるサービス取引きの比率
は高くなる傾向にある。GATTにおいても、設立当初に想定した財中心のル
ールをサービス取引き拡大に対応して修正する必要にせまられて、ウルグアイ ・ラウンドにおいてはサービス分野に新しい交渉分野(TRIP,TRIM) を設けている。 -24-第3-1図表貿易収支と経常収支 貿易収支 Z 経常収支 海外 サーヒス提供。 貿易外収支 海外からの利子・ 配当の受け取り゛。 移転収支 (・) (..) サービスとは.西0白.保険,埴iOi使囹例.著作1日など.海外からのFII子・配当の受n敗0)は,二の問に淘外に輪出され'二資本サービスの鯛を あらわすと解釈すれば,二れし海外へのサービスの12供とIWlRでさる。 伊藤元重著ゼミナール『国際経済入Pq』 138頁 第3-2図表 ①財貿易とサービス貿易の 規模の推移 ②輸出のサービス集約度の推移 42086420 ●00●●□■ロ I1100000 (充ドル) 050505030 ●●6●●ロロ●● 4J1221100 ロ■■サービス蘭扮 ■●●●■●●●●●●●●● ̄●■●●●●●●■巴■ [二コ81貿易 I9BOIO8Il982I98]l984198SI986I987I988I989I990I”I (年) (備考)輸出のサービス集約度=(X10/ID)/(XI/D X10=i国のサービス受取 1,=i国を含む工業国全体のサービス受取 ~「-- ̄--T ̄ ̄ ̄U 91,(I: 858687888990 X,=i国の財輸出十サービス受取 I=i図を含む工業国全体の財輪出十サー ビス受取 通商白書(平成5年)253,255頁 (備考)規模は、全世界の輸出額。 第3-2図表に示されているように、世界のサービス取引きとその経常収支 -25-
に占める比率は高まる傾向にある。各国別にみると、曰本とドイツのサービス 集約度は低く、アメリカ、フランスは高い。日米の貿易収支と、財・サービス 貿易収支を較べると、第3-3図のようになる。 第3-3図表3図表①アメリカの財サービス貿易収支、貿易収支 (10億ドル) 0 ▲20 ▲40 ▲60 ▲80 ● ▲10() の ▲120 ▲140 ▲160 J の 198519861987I988I989I990199Il992 ②日本の財・サービス貿易収支、貿易収支 (IC億ドル) 00000000000000 3210987654321 111I ‘房,11V毛 刀匝昌 19851986198719881989199019911992 通商白書(平成5年)256頁 -26-
92年についてみると、アメリカの貿易収支は963億ドルの赤字であるが、 サービス貿易収支は590億ドルの黒字であるため、差し引きでは、373億 ドルの赤字にとどまっている。日本の場合、サービス収支は赤字であるから、 経常収支の黒字幅を下げることになる。 第3-4図表アメリカの対日民間サービス取引における比較優位指数 (91年) 通商白書 (平成5年) 260頁 (備考)比較優位指数=(輸出一輸入)/(輸出+輸入) (資料).アメリカ商務省「SCB」 第3-4図表は、サービス取引きについて、曰米の比較優位指数を示したも のである。曰本の比較優位分野は、金融サービス、通信・広告、コンピュータ ー情報処理サービス、建築・エンジニアリング分野である。その他の分野では アメリカが優位をしめ、したがってサービス分野の自由化について、アメリカ は熱心である。 -27- 業種 指数 教育 0.94 金融サービス ▲0.12 保険 0.73 通信 ▲0.14 広告 ▲0.41 コンビユ一夕・データ処理サービス 0.95 データベース・その他情報サービス 0.78 研究・開発・試験サービス 0.68 マネジメント・コンサルティング・広報サービス 0.63 法律サービス 0.85 建設・エンジニアリング・建築・採鉱サービス ▲0.11 産業エンジニアリング 0.91 設備の設置・保守・修理 0.91 フィルム・テープ賃貸 1.00
次に貯蓄・投資バランスについて検討する。第3-5図表は曰米のセクター 別の貯蓄・投資バランスを示じている。日本についてみると家計の純貯蓄は横 ばいであるが、政府の純貯蓄がプラスの増加傾向にある。これが経常収支の黒 字につながっているとすれば、曰本経済は「双子の黒字」だ、ということにな る。(注') 第3-5図表 ①日本の貯蓄率と投資率 および部門別貯蓄超過 ②アメリカの貯蓄率と投資率 および部門別貯蓄超過(GDP比) (%) 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 ▲5 ▲10 ▲15 (%) 20 15 10 5 0 ▲5 7075808590(年) (NII)|オ朋鯛W6l 7075808590(鞭) (NII)鰍百斤|瀧鯛llHI 通商白書(平成5年)266頁 他方でアメリカは、政府部門の赤字がめだち、これが貯蓄・投資バランスの -28-
赤字、すなわち経常収支の赤字につながり、アメリカの「双子の赤字」と呼ば れているのは周知の通りである。アメリカの経常収支の赤字を正すには、財政 赤字をなくす必要があるが、すでに検討したように、ロバート・ギルピンが指 摘した「政治の失敗」がからみ、急速な転換は不可能である。 第3-6図表 ①社会福祉支出の対GNP比と対全政府支出比の推移(1890-1973) (0M位:%) 対GNP 2.4
:量
9.5 9.2堂ilfi
対CNP 吋全政府支出 32.7 38.0 42.4 47.8 51.8 53.4 55.2 0395050 9123445 8999999 1111111 111I99、】9章、667777]。OPD0123 8.6 10.6 118 15.3 17.0 17.5 17.5 4.4 8.9 出所:第2-1図と同じ。 須田美矢子編『対外不均衡の経済学』118頁 ②アメリカ連邦政府赤字の推移 (IolQiドル) IOOU- 0000 8612aMliWIIMil
lljUIX文uljlIij澱|A1 鰻IMIⅡA1)  ̄イリイハい111  ̄杣公1V`MlIW, ■■lIillljj1i 蛾人撰lA1) 皿、社会(jIⅡlIililll 画ヨリ《人悦 匝、(1A1人リリilリ脱 1M ▲2 ▲'10 ▲(iO ▲80 ▲I()O ▲120 H28IlMlMill(iH7HHH1l1)()11111Z(イI《1座) 808 (備考)1.社会福祉等Ii,教育・社会サービス・医療・保 健社会保障・所御保障・恩給からなる。 2.図中の梯グツフは,各要因の前年達を喪わす。通商白書(平成5年)102頁 第3-6図表は、アメリカの財政のいくつかの側面を示したものである。ア メリカの社会福祉支出は、戦前のニュー・デール以後転換をとげ、特に196 -29-0年代以降に大きく増加するようになった。19世紀の「小さな政府から今日
の「大きな政府」へと変化をとげた。今後、国防費の減少があるとしても、社
会福祉支出の負担を補完することは期待できそうもない。次に経常収支=資本収支について検討する。第3-7図表は、日本の国際収
支の概要を示したものである。1992年度についてみると経常収支の黒字が
1,259億ドル、資本収支がマイナス1,259億ドル、したがって経常収支 と資本収支の合計はゼロになる。80年代の資本収支は、「短期資本が流入して、長期資本が大幅に流出する」という「短期借り・長期貸し」から、91-
92年には「短期資本が流出に転じ、長期資本の流出が小幅にとどまる」姿に
変化した。直接投資の減少を受け入れ国からみると、直接投資には債務性がな
い上、直接投資による技術移転、雇用創出等の効果も大きいため、経済発展に
支障が生ずることになる。 第3-7図表国際収支の概要 ドル) 2.捉廟資本取引等の合31及びその内脈において.-印は天竃の湘加またはfi仮の蔵少を示す.した力`って、全匹掘 定及びその内駅においても、-mが交廠の輸加またはfMVYの減少を示すように、頒飼とは符号を転じて変牢して ある。このため.外PWmlW商の揃加はマイナズ〈減少はプラスでgf上されている. 。.翻伽溢水収支には現先取ワIを念み、金融勘定に属するものを除く. 4.()内は季姉廟臨(仇. 経済白書(平成5年)参考資料28頁 -30- (、リ汀ノ」.Ⅱ不HtイrII珂廠収支既RfJ】報」守により作成. 〃■■■ ̄_-- 90年度 91年度 92年度 92年 4~8月 7~9月 10~】2月 93年 、~3月 年度間阻域 沌承収支 合Df序
■収文 ロコ | ̄'、 穴アブンPⅡ又。足 |ワユ戸矼工=聾ユ 鯵 転収支 33.7,8 69.884 289.892 220.028 -22.511 22.854 -13.637 90.222 013.883 312.004 198.3ZI -10.386 26.909 0.075 125.900 136.109 335.476 U99.367 5.OUB  ̄ 00.053 5.IDI  ̄ 28.787 (29.337) 31 (33521ISB) 78 (81 TOD282) 47 (68094)188 -1 (-2982】3s) 、560 - 822 (-1.895) 28.ZS4 (2T、789) 33 (32926820) 85 (85087)U44 51 (52218281) -0 (-3398538) 8 2B4 -8 (-1 276499) 32.929 (31.438) 35 (34 533017) 88 (82 572480) 51 (48039463) -1 (-1 158202) 9 272 -1 (-1 d4B379) 35.930 (38.034) 35 (05538)129 85 (8B051292) 40 (50922750) 2 (1 488BBZ) 】2 957 -1 (-1 BOT316) 35.BT8 22.426 2a47Z 10048 M‘368 13.104 - 1.118 白木収支 艮園戸士m91寺の合81 正工戸T只乍円兵。足  ̄巴丙一コ戸・ ̄Nn70U夕已■「 | ̄、Zへ■又エし 。区面五PJDこ1-〃  ̄ 田 |~回、、「~】L丘ii亜苣Iz三
92晩餌 -33.716 -16.793 372 】、333 981 -04 022 13 081 3 602 -17 295 -90222 30756 -130 849 -U5 876 -110 773 -121 309 6 536 864 BTI -125 -47 -64 9 -54 -55 I I -13 900 SBT ql8 726 B92 993 301 BIS 905 -28.787 -03 599 -04 052 2 037 -02 315 -23 399 11 084 TB6 T3B -28.254 8 569 -12 401 - 1 522 -10 BT9 2 549 8 330 1 760 7 284 -32.929 -U9 BBT 3 080 ■■U■ 【 285 - 1 875 -4929 3 054 519 -10.072 -35.930 -5702 -34 405 -4 782 -29 B23 -25 IIB - 4 507 I 360 4 ITT -35.678 -87 323 GB 23】 8 150 60 081 65 318 - 5 235 3 479 -04SBG 89 89 ロョ 894 68.230 70 045 07.444 ・69 204 68.885 70 045 1 815以下では、曰米を中心にした直接投資に限って検討する。第3-8図表は主 要国の対外直接投資と対内直接投資を比較したものである。表によると、アメ リカの直接投資残高は3,760億ドルで、世界の27%をしめている。それ はEC全体の直接投資を上廻ろ額である。曰本の対外投資残高は1,560億 ドルで世界の11%をしめている。日本と他の諸国との著しい違いは、対内投 資(外資の受入れ)が少いことである。後で検討するように、その理由は、非 製造業における曰本の規制が大きいからである。 第3-8図表対外および対内直接投資の国際比較1989年 (iji)ECに1Nける繩`11.にはECWQh((仮I船は鰍Iしない。11本にⅡlける銃,11はオーストラ リア、カナダ、EC、ノルウェー、スイスおよびアノ11力のklIll(I:恢投淡からlIIi1IIしたもの である。 (11Mリi)UnitedNations.〃l)Wノ"uEMソ"2"(ノマePo〃ノ`ノ`12.1992 中北・浦田・原田泰箸『なぜ市場開放が必要か』101頁(注2) 次にアメリカの対外直接投資を検討する。1992年のアメリカ大統領教書 によると、1990年末のアメリカの対外直接投資残高は5,300億ドルで、 近年の伸びは年率18%に達している。第3-9表は、受け入れ国のGDP比 でアメリカの直接投資と、各国のアメリカへの直接投資を示したものである。 -31- 日本 アメリカ EC イギリス ドイツ フランス 対外直接投資 残高(億ドル) 世界に占める割合(%) 1560 11 3760 27 3700 26 2130 16 1220 9 750 5 対内直接投資 残高(億ドル) 世界に占める割合(%) 280 2 3740 27 2490 18 1350 '0 740 5 510 4 対外直接投資残高/ 対内直接投資残高比率(%) 5.6 |、0 1.5 1.6 1.6 1.5 対内直接投資残高/ GDP比率(%) 0.01 0.07 0.05 0.17 0.06 0.05
第3-9図表 ①対外直接投資1990 大部分の先進諸国において、直接投資におけるアメリカの持ち分は、それぞれの外国のア メリカでの持ち分より、受け入れ国のGDP比率で格段の大きさを示している。 受け入れ国のGDPに占める比率(%) 14 12 10 8 6 4 2 0 イギリス日本オランダカナダドイツフランススイスオーストラリアイタリア 鰯米国での外国の持ち分1N圏外国での米国の持ち分 ①アメリカ大統領教書(1992)235頁 米国製造業の対外投資ポジション (単位:百万ドル) ② 00000000000 0000000000 0000000000 0000900000 0000000000 0987654321 1
iii識lfl
三
1979198119831985198719891991 198019821984198619881990ロ日本ロカナダ圏フランス圀ドイツ図イギリス
②若杉隆平論文50頁(注3) -32-なお、②図は製造業についての、アメリカの対外投資を示している。いづれの 場合も、日本の対内投資のおくれが目だっている。 次に曰本の対外投資を検討する。第3-10図表によると、非製造業・製造 業の比較でみれば、非製造業が製造業の2-3倍になる。また製造業のなかで は、輸送機械、電気機械、一般機械が主要部門をしめている。 第3-10図表
iiA繍鰯
(l・他ドル)麟鬮
70 鰯J|;製造災 []製造染 0jlv
ml-5011
40雛,'1
081828384858687 Ⅱ864208 .11111 30 L]その他製地雌蕊mM1MlllllIil
8586878889909192*6111, 20 00 6420 K’
8 8 8 通商白書(平成5年)210頁 次に日本の外国投資受入れについて検討する。日本の対内投資が実質的に自 由化されたのは1980年代に入ってからである。したがってアメリカ及びE Cと比べて、対外投資と対内投資間にいちじるしい格差が目だっていることは、 すでに検討した通りである。第3-11図表によると、対曰直接投資の約半分 -33-がアメリカ、4分の1がヨーロッパでしめられており、日本でのこれらの諸国 による再投資と合わせて、対白直接投資の全体を構成している。 第3-11図表 国別の対曰直接投資 3,000 2,500 21000
ili
1,500 1,000;
500痢閤開田開閉開閉陽
0 WU19/Z19ノ419/61g7B198019821984198619881ggC 1971197319751977197919811983198519871989図アメリカ因ヨーロッパ図日本での再投資
若杉隆平論文より(注3) 第3-12図は製造業、非製造業別の対日投資を示している。第3-10図 表で検討したところでは、曰本の対外投資にあっては、非製造業が製造業の約 3倍に達していた。対曰直接投資にあっては、非製造業の比率が小さくなって いる。先進国のGNP構成にあっては、製造業はGNPの3割しかしめないの がノーマルである。日本も例外でない。したがって対曰投資がおくれている理 由の第1は、日本の非製造業、金融・保険、不動産、運輸・通信流通、公益事 業等における国内規制の故だと判断される。 -34-第3-12図表業種別の対日直接投資 (単位:百万ドル) 4,000
…蛎湯舅舅鍵
3,000 2,000 1,000 0 1978198019821984198619881990 197919811983198519871989 図製造業 因非製造業 若杉隆平論文(注3) 次に製造業においても、対日投資が少ないのは、日本企業が比較優位をしめ る分野での対日投資はむつかしいからである。曰本が比較優位にある分野は電 気機械、エレクトロニックス、輸送機械等である。この分野で曰本企業より競 争力のある外国企業は少なく、曰本IBM、テキサスインスツルメント等、ご く少数である。第3-13図をみると貿易特化指数の高い分野の企業が、海外 投資においてもシェアーが大きいことが示されている。 第3-13図表我が国の産業別貿易特化指数と直接投資の産業別割合 (91年度)lljlillilllmRm
864202468- 00000000 ▲▲▲▲▲ Ⅳ易特化術数 ・肌機械 0 繊胤ド O 鉄・」I;鉄o - ̄ 化`79/
木材・紙 0 0246810121’116182()22(06) 製造業海外直接投資に占めるシェア 通商白書(平成5年)220頁 -35-これまで、日本の対外マクロバランスについて検討してきたことを要約する ことにしたい。近年の世界経済において経常収支が長期的に黒字の国は、日本、 台湾、西ドイツであった。西ドイツは、東西ドイツの統一の結果、赤字国に転 落し当面回復の可能性はない。主要国中、曰本は唯一の黒字国であり、当面黒 字が続くものと予想されている。第3-14図表に示された通りである。 第3-14図表世界の経常収支(10億ドル)