パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス 研 究 会 論 文 誌 VOL.28(2003.3)
闘 國
JSPE28-5
電力 変換 回路 の並 列 化 トレラ ンス解 析法
加藤 利次(同 志社大学 工学部)
Parallel Tolerance Analysis for a Power Electronic Circuit
Toshiji Kato (Doshisha University)
Abstract
It is necessary to consider variations of circuit element values for a power electronic converter design to satisfy a given specification for a frequency characteristic or a dynamic transient response because the varia-tions of element values generate those of the designed characteristic. This computation is so-called tolerance or worst-case analysis. There are some types of the method for the analysis; Monte Carlo analysis, mesh analysis, interval analysis, etc. However it generally takes a lot of time for them. This paper describes parallel tolerance analysis techniques to reduce their computation times.
1. は じ め に 電 力 変 換 回 路 の設 計 に お い て、 過 渡 応 答 特 性 や 周 波 数 特 性 等 に 対 して の仕 様 を 満 足 させ る た め に は、 回 路 を構 成 す る各 種 の素 子 値 の ば らつ き を 考 慮 す る必 要 が あ る。 な ぜ な ら、素 子 値 の ば らつ き に よ り設 計 回 路 の 特 性 に も ば らつ きが 生 じ るか らで あ る。 そ の た め 設 計 仕 様 と して 許 容 幅 つ ま り トレ ラ ン ス幅 が 与 え られ て お り、素 子値 の と り うる範 囲 の全 体 で 対 象 とす る特 性 が そ の範 囲 内 の 値 を取 る よ うに、 設 計 され な けれ ば な らな い。 こ の際 に素 子 値 の範 囲 を示 すパ ラ メ ー タ領 域 とそれ に 対 応 す る 特 性 の と る領 域 の 関係 を 求 る こ とが 必 要 で あ り、本 報 告 で は こ の 計 算 を トレ ラ ン ス 解 析 も し くは ワー ス トケ ー ス(最 悪 値)解 析 と呼 ん で い る(1)。 一 般 的 に こ の ト レラ ンス 解 析 は、 パ ラ メー タ間 の相 互 依 存 性 や さ ら に そ の非 線 形 性 を も考 慮 し た最 大 最 小 値 問 題 とな る。 この 問 題 は 区 間解 析 法 に よれ ば、 厳 密 に 解 く こ とが で き る(2)-(4)。 し か しな が ら、 そ の と き の計 算 時 間 はパ ラ メー タ数 の 巾乗 に比 例 す る た め、 パ ラ メ ー タ数 の 増 加 と と もに 指 数 関 数 的 に 計 算 の 手 間が 増 大 す る。 そ の た め 実 際 上 は、 様 々な 手 法 に よ り、 よ り解 き や す い 問 題 に近 似 や変 形 して処 理 され る(5)。 例 え ば、 実 用 的 な 手 法 と して モ ン テ カル ロ法 が あ る。 これ は 各 パ ラ メー タの ば らつ き を正 規 分 布 と仮 定 し て、 こ の 分 布 に 基 づ い て 回 路 パ ラ メー タ群 をm(例 え ば1000)個 発 生 させ、 それ ぞ れ に対 して 目的 とす る特 性 を求 め、 そ のm個 の特 性 の 分 布 を 調 べ る も ので あ る。 そ の他 に も、 パ ラ メ ー タ空 間 を格 子 状 に 分 割 して、 す べ て の格 子 点 で の特 性 値 の 最 大 最 小 を 求 め る メ ヅシ ュ分 割 法 もあ る。 ま た 問題 に 区 間 解 析 法 を直 接 適 用 せ ず に、 これ をパ ラ メ ー タ に よ る多 項 式 で近 似 し た の ちに 適 用 し て実 用 的 に 解 く方法 も あ る(6)。 しか しな が ら、 す べ て の 解 析 手 法 に 共 通 す る こ とは、 ト レ ラ ン ス解 析 は 計 算 時 間 が か か る こ とで あ る。 これ を さ らに 解 きや す い 問 題 に近 似 や変 形 した り、高 効 率 な解 析 手 法 を開 発 す る こ と も、 そ の対 処 法 と して 一 方 向 が 考 え られ る。 しか し な が ら本 報 告 で は、 他 の 方 向 の対 処 法 とし て、 計 算機 を複 数 使 用 して 解 析 対 象 を 分 割 して 同 時 に 計 算 す る並 列 処 理 を施 す こ とに よ り計算 に か か る 時 間 の 短 縮 を 図 る。 従 って1V台 の 計 算 機 に よ り並 列 計 算 処 理 を すれ ば、 理 想 的に は1/Nま で 短縮 可 能 性 は あ る が、 実 際 に は 困 難 で、 そ の た め で き るだ け それ に近 い 計 算 時 間 で 処 理 す る こ とを 考 え る。 本 報 告 で は、 解 析 例 と して、Cukコ ンバ ー タ を取 り上 げ る。 ト レ ラ ン ス解 析 手 法 と して モ ンテ カル ロ法、 メ ヅ シ ュ 分 割 法、 パ ラ メ ー タ感 度(7)を 用 い た 区 間 解 析 法 の 3手 法 の 並 列 計算 処 理 の検 討 を行 う。用 い る計 算 機 シ ス テ ム はLinux上 のPVM(仮 想 並 列 計 算 機)で あ る。 以 下 各手 法 に お い て素 子 パ ラ メ ー タ の変 動 に 対 す る 出 力 電 圧 範 囲 の変 動 に 対 して そ の検 討 例 に つ い て述 べ る。 2. ト レ ラ ン ス 解 析 電 力 変 換 器 等 の 回路 設 計 に お いて 使 用 に 許 容 幅 す なわ
ち トレ ラ ン ス幅 が 与 え. られ る。 そ の た め 逆 に 製 造 過 程 に お い て、 それ ら特 性 は仕 様 検 査 にお い て トレ ラ ン ス領 域 内 に収 ま らな け れ ば な らな い。 そ の た め に は、 パ ラ メー タ領 域 よ り特 性 領 域 問 の 関係 を求 め る解 析 法 を トレ ラ ン ス もし くは ワー ス トケ ー ス 解 析 と呼 ぶ。 図1に 示 し た よ うに、 通 常 の 回 路 シ ミュ レー タは 公 称 パ ラ メー タ値 に対 す る回 路 の特 性 を計 算 す るの み で あ る。 しか しな が ら、パ ラ メ ー タ値 に ば らつ きが あ る 回 路 の 出 力 特 性 の範 囲全 体 を 計 算 す る こ とは で き な い。 そ の場 合 に は、 図2に 示 した よ うな 与 え られ た パ ラ メ ー タ領 域 に 対 す る特 性 領 域 の変 動 領 域、す な わ ち特 性 値 の最 大値 と 最 小 値 を計 算 す る ト レ ラ ン ス シ ミュ レー タ を用 い る必 要 が あ る。 例 え ば、 図3に 示 し たCukコ ンバ ー タ回 路 で は5つ の 受動 素 子 が あ る。 製 造 過 程 に お い て そ の 出 力 特 性 を考 え る とき に は、 これ らの 素 子 値 に は ば らつ き が 存 在 す る と と らえ な けれ ば な らな い。 そ の ため 例 え ば、 与 え られ た 回路 素 子 値 のば らつ き の範 囲 と対 応 す る 出 力 電 圧 範 囲 を 求 め る こ とが トレ ラ ン ス 解 析 の例 とな る。 3. PVMシ ス テ ム に よ る 並 列 計 算 <3・1> ク ラ ス タ コ ン ピ ュ ー タ 本 報 告 で は、 計 算 時 間 の か か る ト レ ラ ン ス解 析 手 法 へ 並 列 計 算 処 理 を 適 用 し て そ の 高 速 化 の 検 討 を行 う。並 列 計 算 機 に は、
MPP(Mおsive1y Parallel Processors)と 呼 ば れ る専 用
マ シ ン と図4に 示 し た ク ラス タ コ ン ピ ュ ー タ と呼ば れ る 通 常 の計 算機 を ネ ッ トワ ー ク で接 続 した 仮 想 的 な 並 列 マ シ ン の2種 類 が あ る。 後 者 は 前者 に 比 べ て、 通 常 の計 算 機 に 並 列 ソフ ト ウェ ア を イ ン ス トー ル す る だ け で よ く専 用 マ シ ン を必 要 と しな い ため、 応 用 性 が 広 い と考 え られ る。 そ のた め 本 報 告 で 用 い る並 列 計 算 機 は、 後 者 の1種 で あ るPVM(仮 想 並 列 計 算 機)シ ス テ ム を採 用 した。 こ のPVMシ ス テ ム は、 ネ ッ トワ ー ク に接 続 され た 異 機 種 UNIXコ ン ピュ ー タ群 を、 仮 想 的 に単 一 の 分 散 メモ リ形 並 列 コ ン ピュ ー タ として 利 用 す る こ とを可 能 に す る ソ フ ト ウェ ア シ ス テ ム で あ る。PVMシ ス テ ム は ソ フ トウ ェ ア に よ りタ ス ク を動 作 させ る た め、CPU処 理 速 度 と比 べ、 デ ー タ転 送 に 要 す る 時 間 が 大 き くな る。 そ の た め、 図1 ト レ ラ ン ス シ ミ ュ レ ー タ 図2 ト レラ ン ス解 析 図3 Cukコ ン バ ー タ 回 路 E=10[V] L1=1.0[mH] C1=5.0[uF] L2=1.0[mH] C2=1.0[uF] R=5.0[o] duty=0.333 fs=50[kHz] 図4ク ラ ス タ コ ン ピ ュ ー タ 図5並 列化分割方 向 (a)時 間 方 向 (b)回 路 方 向
な る べ くデ ー タ 転 送 を減 らす こ と、 つ ま りで き る 限 り粒 度 の 粗 い処 理 法 を用 い る こ とが 重 要 とな って くる。 <3・2>並 列 負 荷 分 散 以 上 のPVM3の 性 質 を 考 慮 し て トレ ラ ン ス解 析 に お け る計 算 アル ゴ リズ ム を 考 え る。 並 列 計 算 に お い て計 算 機 の台 数 を増 や せ ば 増 や す ほ ど、 それ に 比 例 して 計 算 速 度 が 向 上 す る場 合 は、 ス ケ ー ラ ビ リテ ィが あ る と言 わ れ、 並 列 処 理 にお け る 理 想 的 な 性 質 で あ る。 この よ うな 性 質 を アル ゴ リズ ム に持 た せ る た め に は 各CPUへ の タ ス ク の 分 割 を、 各 タ ス ク の処 理 に相 互 の依 存 関 係 が 薄 い よ うに、 理 想 的 に は 独 立 に す る こ とが 重 要 で あ る。 す な わ ち各 タ ス ク 問 の並 列 性 の高 い アル ゴ リズ ム に す る必 要 が あ る。 そ の た め に、 トレ ラ ン ス解 析 処 理 を並 列 化 す る ため に は、 ど の方 向 を分 割 す る かが 問題 とな る。 こ の過 程 す な わ ち回 路 解 析 を 繰 り返 し計 算 とい う観 点 か らみ る と き、 図5(a)に 示 し た 回 路 ・反 復 回 数 ・時 間 の3種 の 方 向 か ら成 り立 っ て い る。 まず 反 復 回数 方 向 は 解 の修 正 過 程 で あ って 前 の過 程 の 値 が 決 ま ら な い と先 へ 進 め な い た め、 こ の 方 向 は 分 割 で き な い。 ま た回 路 方 向 も部 分 回 路 問 に 依 存 性 が あ るた め に 困難 で あ る。 そ の た め パ ラ メ ー タ感 度 法 の適 用 に よ り、問 題 を時 間依 存 性 のな い形 に 近 似 し て、 時 間 方 向 を 分 割 す る こ とを考 え る。 しか しな が ら図 5(b)に 示 し た よ うに、 モ ン テ カ ル ロ法 や メ ッ シ ュ解 析 法 で は 回 路 解 析 の際 に、 そ れ ぞ れ のサ ンプ ル 回 路 の 計算 は 互 い に 依 存 性 が な く、完全 に 独 立 で あ る。 そ の た め 各 サ ン プル 回 路 を それ ぞ れ 別 の 計 算 機 に 割 り当 て る こ とに よ りそれ らす べ て の タ ス ク を 完 全 に並 列 処 理 す る こ とが で き る。 以上 の こ とを考 慮 し て、 タス クを 分 割 す れ ば1V台 の 計 算 機 に よ り並 列 計 算 処 理 をす れ ば、1/1>に 近 い計 算 時 間 で の処 理 が 期 待 で き る。 4. モ ン テ カル ロ 法 <4・1>計 算 原 理 モ ン テ カ ル ロ法 は 多 数 の発 生 乱 数 を利 用 して 問 題 の解 を数 値 的 に 評 価 す る 方 法 で 一 般 的 に は 多 次 元 ・非 線 型 の 問題 を 解 く時 に 威 力 を発 揮 す る と 言 わ れ て い る。サ ンプ ル 法 に よ る計算 を行 う時 に 使 われ、 莫 大 な 計 算 が あ る とき、 うま く抽 出 され た サ ン プル で 全 体 の 解 を予 想 す る も ので あ る。 サ ンプ ル 数 は 多 い ほ ど精 度 が よ くな る が、 当然 計算 量 は 多 くな る。 モ ンテ カル ロ法 を トレ ラ ン ス解 析 に適 用 す る こ とを 考 え る。 す な わ ち図6に 示 し た よ うに、 回 路 素 子 パ ラ メー タ値 に は ば らつ きが あ るが、 これ らは ほぼ 正 規 分 布 す る とみ な す こ とが で き る。 従 ってサ ンプ ル 回路 の パ ラ メー タ を こ の正 規 分 布 に 従 っ て乱 数 を発 生 して 決 定 しそ の 場 合 の 目的 とす る特 性 を求 め て い き、 この サ ン プ リング を 十 分 大 き な 数m個 の 回路 に 対 し て 繰 り返 せ ば 全 体 の特 性 の統 計 的 振 る舞 い を把 握 す る こ とが で き る。 しか も回 路 解 析 の際 に、 それ ぞ れ の サ ン プ ル 回 路 の 計 算 は 互 い に依 存 性 が な く、完全 に 独 立 で あ る。 そ の た め 各 サ ンプ ル 回路 を そ れ ぞ れ 別 の計 算 機 に 割 り当 て る こ と に よ りそれ ら す べ て の プ ロセ ス を 完 全 に 並 列 処 理 す る こ とが で き る。 従 って、 モ ンテ カル ロ法 の 計 算 時 間 が 回 路 解 析 で あ る な らば、1V台 の 計算 機 に よ り並 列 計 算 処 理 を す れ ば、1/Nに 近 い計 算 時 間 で の処 理 が 期 待 で き る。 <4・2>正 規 分 布 正 規 乱 数 は まず 一 様 乱 数 を発 生 させ さ らに こ れ を基 に発 生 させ て い る。 これ に よ るサ ン プ ル値 の生 成 の 例 を図7に 示 す。サ ンプ ル数 はm=1000 点 で、 公 称 値R=5Ω の抵 抗 に 関 し て標 準 偏 差 を σ とし て3σ=5%と して 生 成 し、 これ を ヒス トグ ラム で 表 現 し た もの で あ る。 ご く一 部5%か ら は み 出 るが ほ とん ど こ の 中 に収 ま って お り、3σ=5%の 正 規 分 布 が 近 似 で きて い る こ とが 確 認 で き る。 また サ ンプ ル 値 よ り実 際 に 分散 や 標 準 偏 差 を求 め た と こ ろ一 致 して い た。 <4・3>結 果 モ ン テ カ ル ロ法 に よ り、す べ て の 受 動 素 子 の 回 路 パ ラ メ ー タ を3σ=5%の 正 規 分 布 で 生成 してm=1000個 のサ ンプ ル 回 路 を 求 め て 出 力 電 圧 の 時 刻 t=5msま で の過 渡 波 形 の トレ ラ ン ス解 析 を行 っ た。 ま ず 図8は、 サ ンプ ル 回 路 を す べ て 探 索 して それ ら 図6モ ン テ カ ル ロ法 図7正 規分布
の最 大 最 小 値 を プ ロ ッ トした もの で あ る。 グ ラ フ 中 で公 称 値 す な わ ち 中心 値 に よ る も の を実 線 で、 最 大 最 小 値 を それ ぞ れ 細 太 の破 線 で 示 して い る。 基 本 的 に モ ンテ カル ロ法 は 目的特 性 の統 計 的振 る舞 い を み る も ので あ るか ら、 最 大最 小 値 は 厳 密 な最 大最 小 値 とは 当然 異 な るが、 ほぼ 統 計 的 に と り うる値 の最 大 最 小 値 とみ なせ る。 こ の うち特 にt=3.05msか ら3.4msま で の過 渡 波 形 を拡 大 し た もの を 図9に 破 線 で 示 す。 図 で 中 心値 が 振 動 の最 大最 小 を と るt=3.08, 3.37ms付 近 で は、 それ ぞ れ の場 合 にお い て最 大 最 小 値 に近 づ い て い て、 正 規 分 布 し て い な い こ と が わ か る。 こ の こ と を 明 らか に す る た め、 t=3.08, 3.20, 3.37msに お い て のサ ンプ ル 特 性 の 分 布 を 図10に 示 す。t=3.20msで は ほ ぼ左 右 均 等 に 分布 して い るが、 中心値 の振動 が最 大 最 小 値 を とるt=3.08, 3.37ms で は あ ま り均 等 に分 散 して い な い。 す な わ ち 出力 特 性 は パ ラ メ ー タ領 域 と過 渡 波 形 との 対 応 の 非 線 形 性 に よ り、 正 規 分 布 とな って い な い。 モ ンテ カル ロ法 で はお お まか に 目的特 性 の 統計 的振 る舞 い を考 え る とき、 目的 とす る特 性fの 分 散var(f)は 次 式 の 目的特 性 へ の感 度 を 考慮 し たパ ラ メ ー タ の分 散var(Pi) の和 で近 似 す る場 合 が 多 い。 oc
var(f)-avar(R)...(1)
この 式お よび モ ンテ カル ロ法 に よ る出 力電 圧 の結果 を表 1に 示 す が、 今 の場合 に この近 似 の適 用 は適 さな い。 特 に 前述 の 中心値 の振 動が 最 大最 小 値 を とるt=3.08, 3.37ms で は 近 似 度 が ず れ て い る。 従 っ て、 今 の 場 合、 出力 電 圧 特性 の 統 計 的 振 る舞 い を み る ため に は この よ うに実 際 に パ ラ メー タ分 布 に 従 ってサ ンプ ル 回 路 を 生 成 して、 解 析 す る必 要 が あ る。 5. メ ッ シ ュ分 割 法 <5-1>計 算 原 理 メ ッ-シュ分 割 法 は、 図11に 示 す よ うに パ ラ メー タ空 間 内 のパ ラ メー タ値 の と り うるす べ て の 区間 を メ ッシ ュ 状 に 分 割 し、 そ の格 子 点 上 の す べ て パ ラ メ ー タ の組 み 合 わ せ に つ い て 回 路 特 性 の解 析 を行 っ て、 トレ ラ ン ス解 析 す る も ので あ る。 そ し て そ の 後 す べ て の 解 析 結 果 に 対 して 各 時 間 ス テ ップ に お け る最 大 値、 最 小 値 を 求 め、 トレ ラ ン ス の範 囲 を求 め る。 この 場 合 の 欠点 は、 パ ラ メー タ数 の 増 加 に 伴 って、 指 数 関数 的 に 計 算 量 が 増 加 す る こ とで あ る。 変 化 させ る素 子 の パ ラ メ ー タ数 をnP、 分 割 数 を た とす る と、 解 くべ きパ ラ メ ー タ の組 み 合 わ せ は 硫+1)nP個 とな る。 今 回 は パ ラ メー タ領 域 の分 割 数k=10、n=5と して して い る の で、 総 計161051通 りの パ ラ メー タの 組 み 合 わ せ に つ い て解 析 を行 っ て い る。 しか し な が ら回 路 解 析 の 際 に、 モ ンテ カル ロ法 の場 合 と同 じ く、それ ぞれ の サ ン プル 回路 の 計 算 は 互 い に依 存 性 が な く、完 全 に 独立 で あ る。 そ の た め 各 サ ンプ ル 回路 を そ れ ぞ れ 別 の 計 算 機 に 割 り当 て る こ とに よ りそれ ら す べ て の プ ロセ ス を完 全 に並 列処 理 す る こ とが で き、1V台 の 計算 機 に よ り並 列 計 算 処 理 をす れ ば、1/1>に 近 い計 算 時 間 で の処 理 が 期 待 で き る。 <5・2>結 果 こ の計 算 結 果 を図8に モ ンテ カ ル ロ 法 の 結 果 と合 わ せ て 示 す が、 両 者 はか な りず れ て い る。 し か も メ ッ シ ュ解 析 の 結 果 の 方 が 外 側 の値 が 得 られ て い る。 両 者 と も実 際 に対 応 す るパ ラ メ ー タ よ り計 算 さ れ た値 で あ る ため 外 側 に あ るほ ど ワ ー ス トケ ー ス が 計 算 され て い て精 度 が 高 い。 当然 パ ラ メー タ領 域 内 を く まな 図8出 力 電 圧(モ ン テ カ ル ロ法) -center ---maximum ----mmunum 図9 出 力 電圧 拡 大 図 (モ ンテ カル ロ、 メ ッシ ュ分 割 法) -center … …Mosh ----Monte Carlo 表1 出力 電圧 の分散 と標 準偏差く探 索 す る メ ッシ ュ分 割法 の 方が 精 度 が 高 く、今 の場 合、 レ フ ァ レ ンス(基 準)値 と見 な す こ とが で き る。 6. パ ラ メ-タ 感 度 を 用 い た 区 間 解 析 法 <6・1>問 題 の 近 似 に よ る 転 化 パ ラ メー タ変 動 に 伴 う特 性 の ト レラ ンス 幅 を厳 密 に 求 め る方 法 とし て 区 間 解 析 法 が あ る。 これ はパ ラ メ ー タ 空 間 と特 性 の トレラ ン ス幅 との 対 応 を 区 間拡 張 に よ り求 め て い くも の で、 特 性 の ト レラ ン ス 幅 を追 求 して い く段 階 で 必 要 に 応 じて パ ラ メ ー タ空 間 の 分 割 を繰 り返 して、 そ の範 囲 を 縮 め て い く もの で あ る。 こ の 方 法 は厳 密 で は あ る が、 これ で 直 接 ト レラ ン ス問 題 を解 こ う とす る と主 に 次 の よ うな3つ の 欠 点 が あ る。 まず 第1に、 区 間解 析 法 で は 初 期 値 問題 で あ る過 渡 解 析 で 処 理 が 困 難 で あ る。 す な わ ち 問題 が 時 間 的 に 独 立 で は な く複 雑 で あ る。 そ し て 第2に トレ ラ ン ス 幅 を 狭 め て い く際 に 実 用 的 に は 平 均 値 形 式 を 活 用 す るが、 これ に は パ ラ メー タに よ る感 度 が必 要 で あ る。 最 後 に こ の 方法 で は 計 算 の 手 間 は 大 ま か にパ ラ メー タ数 の 巾乗 に 比 例 す る。 そ の た め これ ら の は じ め の2つ の 欠 点 をな く し、 最 後 の 点 を緩 和 す る次 のパ ラ メ ー タ に 関 す る多 項 式 近 似 で 表 現 した ト レ ラ ン ス 問題 に 転 化 し た上 で 区 間 解 析 法 を適 用 す る こ と を考 え る。 〈6・2>パ ラ メー タ 感 度 を 用 い た 形 式 中 心 値 ベ ク トル をPc、 そ の変 動 ベ ク トル を △Pの よ うに表 す と、パ ラ メ ー タ領 域pc+△pに 対 応 す る特 性 領 域f(pc+△p) は 一 般 的 に 次 の よ うな テ ー ラ ー級 数 展 開 に よ り表 す こ と が で き る。
f(p+p)=f()+np
ap 図10 出 力 電 圧 分 布(モ ン テ カ ル ロ法) (a)t=3.08iiis center: 3.65[V] variance: 2.382-10-3 time: 3.08fmsl (b)t=3.20ms center: 4.08[V] variance: 3.366-102 time: 3.2[ms] (c)t=3.37ms center: 4.83[V] variance: 2.805-10-3 time: 3.37[ms] 図11 メ ッシ ュ分 割 法 図12 出 力 電 圧(パ ラ メー タ感 度) ・ ・center ----sccond -mesh ---third -- firstこ こで、Tは 転 置 行 列 とす る。 式 中 の ∂f/∂ pは 特 性 関数f(P)に 対 応 す るノペラ メ嚇 度 ベ ク トル で あ る。(2)式 の 右 辺 第3項 は2次 感 度 に よ る変 動 幅 を表 現 し て お り、パ ラ メ ー タ 問 の 相 互 依 存 性 を 表 して い る。 目的 とす る特 性領 域 を(2)式 の よ うに近 似 した場 合 の ト レラ ン ス解 析 の 大 まか な 計 算 ス テ ップ は次 の よ うに な る。 まず 最 初 に 与 え られ た パ ラ メー タ領 域 の 中心 値Pcと そ
の変動幅△Pを決定する。その後 畑, 論
誌
… を 計 算 す る。 最 後 に、 近 似 特 性 領 域 の 最 大値 と最 小 値 を計 算 す る。 ま た、 上 式 は 時 間 的 に 独立 で あ る ため 並 列 化 に 向 い て い る とい う利 点 が あ る。 ま た(2)式 は 多 項 式 で あ り、パ ラ メー タ で 偏 微 分 す る こ とは 容 易 な た め 一次 法(first order method)を 適 用 しや す い とい う利 点 が
あ る。 <6・3>区 間 解 析 法 の 適 用 結 果 出 力 電 圧 波 形 を上 記 手 法 に て(2)式 の パ ラ メー タ感 度 を用 い た 形式 に て 求 め た。 そ の後、 回 路 パ ラ メ ー タ に 関 す る一 次法 で の 区 間 解 析 を行 い、 最 大 最 小 値 を求 め た。 区 間 解 析 にお い て 区 間 縮 小 のた め の評 価 法 に は 平 均 値 形 式 を用 い た。 そ の 結 果 を 図12に 示 す。 中央 の 一 点 鎖 線 に よ り公 称 パ ラ メー タ す な わ ち 中心 値 に よ る 波 形 を 示 し、 実 線 に よ りメ ッシ ュ 分 割 法 に よ り得 られ た レ フ ァ レン ス 値 を示 す。 パ ラ メー タ感 度 の 一 次 お よび 二 次 打 ち切 りの近 似 で は 中心 値 か ら ずれ る と ころ が あ るが、 高 次 の 感 度 で近 似 す る と ほぼ レ フ ァ レ ンス 値 に 一 致 し て い る。 こ のパ ラ メー タ感 度 を用 い た形 式 は、 計 算 時 点 孟に お いて、 パ ラ メー タ の み に 依 存 す る形 式 で あ る。 そ の た め 出力 電 圧 値 は 各 時 間 ス テ ップ 毎 に 独 立 とな って、 時 間 的 に分 割 して 並 列 処 理 可 能 で あ る。 原 理 的 に1V台 の 計 算 機 に よ り並 列 計 算 処 理 をす れ ば、1/1Vに 近 い 計 算 時 間 で の 処 理 が 期 待 で き る。 7. 並 列 化 に よ る 計 算 時 間 並 列 化 処 理 に よ る 計 算 時 間 の 短 縮 効 果 を調 べ る た め、 モ ン テ カ ル ロ法、 メ ッ シ ュ 分 割 法 で 要 した 処 理 時 間 を 用 い た 計算機 数 と と も に 表2に 示 す。 ま ず、 は じめ の2手 法 間 で 計算 時 間 比 が 約1:160あ るが、 これ は サ ンプ ル 数 の比1000:161051に ほ ぼ 比 例 して い る。 す な わ ち計 算 時 間 は ほぼ 解 析 した 回 路 数 に 比 例 し て い る。 次 に そ れ ぞ れ の 手 法 に お い て、 計 算 機 台 数Nを1台 よ り5台 まで 増 や して い く と き、 処 理 時 間 は相 対 比 で 1/n=1.0, 0.50, 0.33, 0.25, 0.20に 近 い 値 で減 少 し て い る. す な わ ち1V台 で1/1Vに 近 い性 能 が 得 られ て い る。 次 に パ ラ メ ー タ感 度法 で の 処 理 時 間 を表3に 示 す。 図 13上 に 示 し た よ うに、 時 間 をN等 分 してA, B, Cの1頂 に 各 計 算 機 に仕 事 を割 り当 て る と表3左(case1)に 示 す よ うに 処 理 速 度 が うま く向上 しな い。 これ は 割 り当て ら れ た仕 事 量 に 時 間 依 存 性 が あ るた めで、 そ の た め 図12下 に 示 す よ うに 細 か く時 間 分 割 して 各 計 算 機 に 割 り当て る と、 表3右(case2)に 示 す よ うに ス ケ ー ラ ビ リテ ィー の あ る処 理 速 度 の 向上 を 示 す。 以 上 の3手 法 は分 割 し た プ ロセ ス 問で の相 互 依 存性 が な く独 立 して い て 有 効 に 処 理 され て い る た め で、 これ ら は 並 列 化 に 向 い て い る。 8. む す び 電 力 変 換 回 路 の設 計 に お い て、 過 渡 応 答 特 性 や 周 波 数 図13 負 荷 の割 り当 て 方 法 表2並 列 処 理 時 の計 算 時 間: モ ン テ カ ル ロ法 ・ メ ッシ ュ分 割 法 表3 並列処 理時 の計算 時間: 区間解析法
特 性 等 に 対 して の仕 様 を満 足 させ るた め に は、 回路 を構 成 す る 各 種 の 素 子 値 の ば らつ き を 考 慮 す る 必 要 が あ り、 トレラ ンス 解 析 が 有 用 で あ る。 これ に は様 々な 解 析 手 法 が あ る が これ ら に に共 通 す る こ とは、 計算 時 間 が か か る こ とで あ った。 本 報 告 で は、 計 算 機 を複 数 使 用 して 解 析 対 象 を分 割 し て 同時 に計 算 す る並 列 処 理 を施 す こ とに よ り計 算 に かか る 時 間 の短 縮 を図 った。 トレ ラ ン ス 解 析 手 法 とし て、 モ ンテ カル ロ法、 メッシ ュ分割 法、 パ ラ メ ー タ 感 度 を用 い た 区 間 解 析 法 の並 列 計 算 処 理法 の 検 討 を行 っ た。 計 算 機 としてLinux上 のPVMシ ス テ ム に よ り計 算 時 間 の短 縮 を 調査 した とこ ろ、1>台 の計 算 機 に よ り並 列 計算 処 理 を す れ ば、 ほ ぼ1/1>に 近 い 計 算 時 間 で処 理 す る こ とが で きた。 本 報 告 に お け る計 算 を し て い た だ い た新 井 吉 嗣 氏 に深 謝し ます。 な お本 報 告 は 同 志 社 大 学RCAST研 究 助 成 費 に よ っ た。 文 献
(1) R. Spence and R. S. Sion: Tolerance design of electronic circuits, Imperial College Press, 1997.
( 2 ) RE. Moore: Methods and applications of interval ysis, SIAM Studies in Applied Mathematics, 1979. ( 3 ) L. V. Kolev: Interval methods for circuit analysis, World
Scientific, 1993.
( 4 ) A. Cirillo, N. Femia and G. Spabnuolo: "An interval mathematics approach to tolerance analysis of switching converters," IEEE PESC'96 Record, vol. 2, pp. 1349-1355. ( 5 ) N. Femia and G. Spabnuolo: "True worst-case tolerance
analysis using genetic algorithms and affine arithmetic, " IEEE Trans. on Circuits and Systems - I:
tal Theory and Applications, Vol. 47, No. 9, pp. 1285-1296, 2000.
( 6 ) T. Fukuyama and T. Kato: "Tolerance computation of a power electronic circuit by higher order sensitivity analysis method," Trans. IEE of Japan, Vol. 121-D, No. 8, pp.
840, 2001.
( 7 ) D. E. Hocevar P. Yang, TN. Trick, E. D. Epler: "Transient sensitivity computation for MOSFET circuits," IEEE Trans. Computer-Aided Design, vol. CAD-4, no. 4, pp. 609-620, 1985. 質 疑 応 答 質 問 者: 三 菱 電 機(株)藤 井 俊 行 氏 Q1: 図13に つ いてA, B, Cの 分 割 の細 か さの 決 定 は ど うす る のが よ い で す か。 A1: 基 本 的 に で き るだ け 細 か く分 割 す るの が よ く、各 計 算 時 点 毎 の計 算 を各CPUに 割 り当 て れ ば、 す べ て の 負 荷 が ほ ぼ 一 様 とな り、最 も よい 結 果 が 期 待 で き ま す。 Q2: パ ラ メー タ感 度 法 の次 数 増 加 に伴 う計 算 時 間 の増 加 は ど うな ります か。 A2: 次 数 が 増 加 す る と計 算 時 間 が 増 大 し ます。 そ の た め 特 に 低 い次 数 で 近 似 可 能 な 定 常 特 性 の 解 析 に 向 い て い ます。 Q3: パ ラ メー タ感 度 法 で パ ラ メ ー タが 多 い 場 合 や、 大 規 模 な 回 路で も計算 時 間 に1/1>の 効 果 が期 待 で き ますか。 A3: 原 理 的 に、 期 待 で き ま す。 質 問 者: 大 阪 工 業 大 学 木 村 紀 之 氏 Q1: 並 列 計 算 の た め の 手 続 き も し くは 手 順 の と り方、 それ らに か か る手 間、 時 間 につ い て御 教 示 くだ さい。(並 列 化 の た め の 特 殊 な プ ログ ラ ミ ング が必 要 で し ょうか。) A1: 並 列 計算 に は様 々の 方 式が あ り、簡 単 な もの で は コ ンパ イル 時 に 並 列 化 して くれ る もの が あ りま す。 しか し これ は特 殊 な も ので、 本 報 告 で 例 に あ げ た ク ラス タ コ ン ピュー タ を用 い る のが一 般 的 と思め れ ます。 それ がPVM、 MPI方 式等 いず れ の場 合 も、 各CPU問 で デ ー タす なわ ち メ ッセ ージ の 通 信 を行 って、 計算(仕 事)を うま く分 割 して 演 算 を実 行 し ます。 これ に は ラ イブ ラ リ関数 が 用 意 され て い ます の で、 メ ッセ ー ジ の通 信 の概 念 が 理 解 で き れ ば、 十 分 容 易 に並 列 計 算 化 が 可能 で、 特 に特 殊 な プ ロ グ ラ ミ ング が 必 要 で は あ りませ ん。 問 題 な の は ど う計 算 を分 割 す るか で す。 特 に今 回 報 告 し た 例 の よ うに、 メ イ ン の 大 きな ル ープ で 計 算 が 分 割 で き る よ うな 場 合 に は有 効 な手 段 とな りま す。