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慢性疾患患児の学校生活に関する家族から学校への相談内容と話し合いに影響した要因

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Academic year: 2021

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(1)西野他:慢性疾患患児の学校生活に関する家族から学校への相談内容と話し合いに影響した要因. 21. 報 告. 慢性疾患患児の学校生活に関する家族から学校への 相談内容と話し合いに影響した要因 西野 郁子,齊藤 千晶,石川 紀子 千葉県立保健医療大学健康科学部看護学科. Consultation Contents about School Life of Children with Chronic Disease and Factors that Influenced Discussions between Schools and Families Ikuko Nishino, Chiaki Saito, Noriko Ishikawa Chiba Prefectural University of Health Sciences. (2015年10月2日受付,2016年1月6日受理). Abstract. The purpose of this study was to clarify concrete consultation contents about school life of children with chronic disease, the factors that influenced discussions between schools and families of children, and discuss the support provided by medical staffs. Semi structured interview were performed for 10 mothers who had children with chronic disease. The mothers answered consultation contents about consideration in the school life of children, and answered opinions at the discussions with the school staffs of normal schools. It was found that mothers consulted school staffs about consideration about lunch, response to the poor physical condition, taking part in school events. And the factors that influenced discussions between schools and families were “ingenuity into the approaches from parents”, “guarantees from parents about ability of their children”, “preparations to acceptance of school staffs”, “use of the support from medical staffs”. The support by medical staffs were discussed, including raising ability for explanation of the parents, making of the explanation documents matched with individual conditions. Key words: Children with Chronic Disease, Family, School Staff, Elementary School and Junior High School, Consultation and Discussion (千葉保医大紀要,Bull CPUHS, Vol. 7, No. 1, 21-27, 2016). 緒 言 これまで我々は,腸管機能不全のため在宅静脈 栄養を必要とする子どもと家族を対象に,学校生 活について実態調査を重ねてきた.対象の子ども は慢性疾患のために特殊な医療的ケアが必要であ り,学校生活を円滑に過ごすために家族と学校関係   ) , 2) , 3) . 者が綿密な連携を取っていく必要があった1 調査では,通常の学校で健康な同級生と同様の経 験ができている事例がある一方で,学校との信頼 関係が構築されなかった事例も確認された.事例 の分析の結果,慢性疾患患児が通常の学校におい て学校生活が円滑に進められるためには,家族が 学校関係者との話し合いをスムーズに進めていけ. ることが重要であると示唆された. 糖尿病や小児がんといった慢性疾患患児につい ては,これまでの研究成果の積み重ねによって, 教育支援に関するガイドラインが発行されるな ど,学校関係者や医療者が行う支援が具体化して   ), 5) いる4 .しかし,担任教諭が通常の学校で慢性 疾患患児に関わる上で困難に感じることは,子ど もの疾患についての理解や配慮だけでなく,親の 疾患についての理解不足や非協力的な態度もある   ) ,子どもの慢性疾患に関連した情 という報告や6 報を学校に伝達していたのは,親の46%にすぎな   ) .これらから,在宅静 かったという報告もある7 脈栄養などの特殊な医療的ケアを必要とする子ど もの事例に限らず,家族が子どもの健康問題を理.

(2) 22. 千葉県立保健医療大学紀要 第7巻 第1号. 解した上で,子どもの学校生活における配慮を学 校関係者に理解してもらうように話し合いを進め. で,プライバシーが確保される状況で行った.同. ていくことが,慢性疾患患児の学校生活のために 必要であると考えた. 以上のことから,今回,母親を対象として,慢. 行った.面接時間は,16分から44分(平均24.3分) であった.調査期間は,2013年3月から2013年6. 性疾患患児の学校生活に関する家族から学校への 具体的な相談内容と,学校関係者の理解を得られ る話し合いが進められた要因を明らかにする目的 で調査を行った.さらに,その結果から家族と学 校関係者との連携に関して,医療者が行う支援を 検討することを目的とした.. 用語の操作的定義 本研究において,「学校生活において配慮が必 要な慢性疾患患児」とは,学校での生活時間に, 慢性疾患のために①服薬や医療的ケアなどの治 療・処置が必要,②授業,食事,排泄,行事など において健康児とは違う対応が必要,③体調の観 察が必要,のいずれかに該当する子どもとした.. 研究方法 1.調査対象 対象者は,学校生活において配慮が必要な慢性 疾患患児の母親で,子どもは通常の学校に通学し ている小学生以上の子どもであることとした.研 究協力への同意が得られた10名が対象者となっ た.なお,通常の学校とは,特別支援学校以外の 一般の学校を指し,通常学級と特別支援学級の在 籍者を含むこととした.対象候補者の選定にあ. 意が得られた場合は IC レコーダーによる録音を. 月であった. 3.分析方法 面接の録音内容から逐語録を作成し,各事例の データから家族から学校への相談内容と相談時期 を抽出し,意味内容を損なわないように全事例の データから,類似性により整理・分類した.ま た,話し合いで理解を得られた理由・理解を得る ために行った相談方法を抽出し,理解を得られる 話し合いが進められた要因を整理・分類した.さ らに,それらの要因を親・子ども・学校関係者・ 医療者に関係した内容で整理・分類した.その 他,学校との連携について述べられたデータにつ いても抽出した.各事例からのデータの抽出,全 事例のデータからの整理・分類の過程では共同研 究者間で一致が見られるまで検討を行い,妥当性 を確保した. 4.倫理的配慮 調査は千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会 の承認を得た後(申請番号第2012-055号),調査 協力施設と患者会の了承を得て行った.対象者 に,研究の趣旨,方法,結果公表,研究参加への 自由意思,プライバシー・匿名性の保護,不利 益からの保護,本研究に限定したデータの使用, データの適切な管理を口頭と文書で説明した.同 意書を用いて調査協力への同意を得られた場合に. たっては,総合病院(1施設)と慢性疾患の患者 会(1団体)に協力を依頼し,その後,対象候補 者に個別に協力を依頼した.. 面接調査を行った.. 2.調査方法 年齢,疾患や治療,子どもが行うセルフケアな. 1.対象者の子どもの概要 調査対象となった母親の慢性疾患をもつ子ども は小学2年生から中学2年生で,男児3名女児 7名,疾患は食物アレルギー(4名),てんかん. どの基本事項についての質問紙調査と,面接ガイ ドを用いた半構成的面接を行った.面接ガイド は,共同研究者間で関連する先行研究を検討し作 成した.面接ガイドの内容は,対象者に学校に相 談した経験の中で印象的だった経験(相談したこ とでよかったこと,または困ったことなど)を挙 げてもらい,学校での配慮についての学校関係者 との相談内容と相談時期,相談する時に考えたこ と,相談内容をうまく伝えることができたかどう かについて回答を求めるものであった. 面接調査は,病院内や対象者の希望した場所. 結 果. (3名),腸管機能不全(2名),排尿障害(1名) であった.それぞれ違う学校で,全員が通常学級 の在籍であった(表1). 慢性疾患のために学校生活で必要な配慮は,中 心静脈栄養ライン(通学時間は点滴はロック中) の保護・腸管機能不全に起因した脱水への対応 (A,B),導尿・人工肛門に関する排泄ケア実 施への配慮(C),アレルゲン除去等の給食への 対応・アレルギー症状出現時の対応(ケースD,.

(3) 西野他:慢性疾患患児の学校生活に関する家族から学校への相談内容と話し合いに影響した要因. 23. 時の経験について述べた.学校との相談において. 表1 対象者の子どもの背景 ケース名. 年齢. 性別. 疾患名. 発症時期. A. 9歳. 女児. 腸管機能不全. 小学校入学以前. B. 10歳. 女児. 腸管機能不全. 小学校入学以前. C. 8歳. 女児. 排尿障害. 小学校入学以前. D. 8歳. 男児 食物アレルギー 小学校入学以前. E. 8歳. 男児 食物アレルギー 小学校入学以前. F. 8歳. 女児 食物アレルギー 小学校入学以前. G. 13歳. 女児 食物アレルギー 小学校入学以前. H. 12歳. 女児. てんかん. 小学校入学後. I. 14歳. 男児. てんかん. 小学校入学以前. J. 14歳. 女児. てんかん. 中学校入学後. E,F,G),てんかん発作に関する体調不良時 の対応(H,I,J)であった.小学校入学以前 に疾患が発症していたのは8名で,2名は小学校 入学時以降の発症であった. 2.家族から学校への相談内容と相談時期 学校に相談した経験の中で,印象的な経験を対 象者に挙げてもらったところ,小学校入学以前に 疾患が発症していた8名のうち7名が小学校入学. 対応した学校関係者は,校長,教頭,担任教諭, 養護教諭,栄養士などであった.面接で挙げられ た対象者の相談内容と相談時期を表2に示した. 1)相談内容 「通常学級への入学」は,腸管機能不全の子ど もの事例の相談であった.子どもの成長発達は年 齢相応であり,家族は通常学級への入学を希望し たが,教育委員会の最初の審査では慢性疾患があ るために特別支援学級に入学するように審査され ていた.その後通常学級への入学が認められ,中 心静脈栄養カテーテルが入っていることに関して 学校と具体的な相談をしていた. 「給食への配慮」は,いずれも食物アレルギー の子どもであったが,アレルゲンとなる食品の除 去,除去食品による症状が出現しない許容範囲量 での給食の提供,代替え食の提供といったよう に,個別の病状によって必要な配慮・相談は異 なっていた. 「排泄への配慮」は,子どもに必要な排泄ケア を母親が実施することに関する相談であった. 「行事への参加」は,宿泊行事に参加する上で 夜間に必要な医療的ケアを子ども自身が実施する こと,行事の一部分について,病状に合わせて参. 表2 家族から学校への相談内容と相談時期 相談内容. 通常学級への入学. 給食への配慮. 排泄への配慮. 行事への参加. 体調不良時の対応. 疾患があることを 知ってもらう. ( )はケース名. 相談時期 (初回の相談とその後を含めた複数回の回答あり). 通常学級へ入学したい(A) 点滴の刺入部がぶつからないようにして ほしい(A). 入学前年の5月 教育委員会の審査. 食品を除去してもらいたい(D). 入学前 就学時健康診断時,転校時. 除去食品の許容範囲量で,給食を出して ほしい(E). 入学前 就学時健康診断時では対応されず,入学後. 代替え食を出してほしい(G). 入学前 教育委員会,その後 学校. 入学前年の夏 校長からの意向で学校での面談. 決まった時間に導尿する (決まった時間にトイレに誘導するため, 入学時の1年前の4月 教育委員会へ連絡 入学時の4月 学校での面談,担任が代わる都度 母親が来校する)(C) 職員トイレを使用させてほしい(C) 林間学校への参加時に,夜間に中心静脈 より持続点滴を行う(B). 1学年前の4月 新たな校長が着任した時. キャンプの際に,登山に参加するかどう か相談したい(J). 中学校の行事の1か月前. 症状発症時に使用する注射薬の管理をし てほしい(F). 入学前. 体調不良時に,保健室で様子を見てほし い(H). 小学校低学年の治療開始後 担任が代わる都度. 内服治療をしているが病状は落ち着いて いると理解してもらいたい(I). 入学時 担任が代わる都度.

(4) 24. 千葉県立保健医療大学紀要 第7巻 第1号. 加を相談したいというもので,同級生との行事に 参加が可能となるための相談であった.. 述べた.そこから理解を得られる話し合いが進め られた要因を分析し,理解を得られた理由・理解. 「体調不良時の対応」は,アレルギー症状発症 時のアドレナリン自己注射薬の管理を学校でして ほしいという相談であった.また,てんかん発作. を得るために行った相談方法とともに表3に示し た. 理解を得られる話し合いが進められた要因に. に関する体調不良時に保健室で様子を見てほしい というものであった. その他,病状は安定しているが,「疾患がある. は,入学や行事の1年前などの「早期から申し入 れを始めて理解を得ていった」,教諭が入学する 子どもを知りたいタイミングであったという「入. ことを知ってもらう」という相談が挙げられた. 2)相談時期 相談した時期は,入学時からの配慮について. 学というタイミングがよかった」,今までの病状 経過やアレルゲンとなる食品に関する資料を親が 作成したり,医師が疾患についての資料を書いた. は,入学前年の早期から就学時健康診断の時期で あり,入学前の早期に話し合いを進めておきた かったという考えが対象者から述べられた.申し 入れに対し,学校からは入学後に対応すると断ら. といった「疾患・必要な配慮を理解してもらうた めの資料を用意した」,症状に関する資料を親が 作成したり,最終的には親の責任と言うといった 「親の責任を示した・親の責任を明言した」,子ど. れた場合もあったが,逆に学校から入学前に面談 の申し出をされた場合もあり,対象者は学校から. もの病状に関して「子どもの病状が安定している ことを伝えた」,親がすでに経験してきた「幼稚. の申し出を好意的に受け取っていた.. 園での話し合いの経験が活かせた」,学校生活に おいて必要なセルフケアに関して「子どもがセル フケアできた・自分の体調を伝えることができ た」,学校に慢性疾患の子どもに対応した経験が あったという「同様の配慮をした経験が学校に. 3.理解を得られる話し合いが進められた要因 すべての対象者が,学校に相談した印象的な経 験の中で,理解を得られてよかったという経験を. 表3 理解を得られる話し合いが進められた要因 要   因 早期から申し入れを始めて理解を得 ていった 入学というタイミングがよかった. 理解を得られた理由・理解を得るために行った相談方法 ( )はケース名 ・早期から繰り返し伝えて,理解を促していった(B) ・入学する1年前に教育委員会に行き,そこから校長先生に伝達されたの で,入学前の話がスムーズだった(C) ・新1年生なので,子どものことを知るためにいいタイミングだった(F). 疾患・必要な配慮を理解してもらう ための資料を用意した. ・医師が,病気についての資料を書いてくれた(A) ・アレルゲンとなる食品についての資料を作った(E) ・症状発症時に使用する注射薬のパンフレットを渡した(F). 親の責任を示した・親の責任を明言 した. ・学校任せではなく,親ができることは親がやらなくてはいけないので,症 状への対応についての資料を作った(G) ・最終的には親の責任と言うと学校も楽になる(B). 子どもの病状が安定していることを 伝えた. ・内服をしているので症状は落ち着いていると伝えた(I). 幼稚園での話し合いの経験が活かせ た. ・幼稚園では前例はなく自分で切り開いた経験から,相談方法がわかってい た(E). 子どもがセルフケアできた・自分の 体調を伝えられた. ・子ども本人が,必要なセルフケアができた(A) ・自分で体調が悪いとはっきり言えた(A). 同様の配慮をした経験が学校にあっ た. ・同様の医療的ケアが必要な子どもが以前いた(A) ・同様の対応が必要な子どもがクラスにいたので,教諭の理解があった(D). 調整役となる教諭がいた. ・担任や養護教諭など,他の教諭に伝える要となる教諭がいた(B) ・栄養士,養護教諭が親身に考えてくれた(E). 医師が調整に入った・支援した. ・通常学級に入学するために医師が教育委員会に申し入れをしてくれた(A) ・医師が,病気についての資料を書いてくれた(A).

(5) 西野他:慢性疾患患児の学校生活に関する家族から学校への相談内容と話し合いに影響した要因. あった」,担任・養護教諭・栄養士といった「調 整役となる教諭がいた」 ,医師による関係機関へ の申し入れや資料の作成といった「医師が調整に 入った・支援した」ということがあった. 調整役となる教諭については,養護教諭が学校 内の他の教諭との調整役になり,家族の意向に 沿って対応していたことが,4名の対象者(ケー スB,E,G,H)から述べられた. 以上の理解を得られる話し合いが進められた要 因を,親・子ども・学校関係者・医療者に関係し た内容で整理・分類すると,①早期からの申し入 れ,申し入れのタイミング,理解を得るための資 料の用意,親の責任の提示,病状の安定の伝達, 幼稚園での話し合いの経験といった《親からのア プローチの工夫》 ,②子どものセルフケア能力・ 体調不良の表現能力といった《子どもの能力に対 する親からの保証》 ,③同様の配慮をした経験, 調整役となる教諭の存在といった《学校側の受け 入れへの態勢》,④医師による関係機関との調整, 資料の作成といった《医療者からの支援の活用》 となった. 4.話し合いを進める中で困ったこと 学校に相談した経験の中で,4ケースからは 困ったことも回答に含まれており,入学の前年 度のうちに相談がさせてもらえなかった(ケー スE) ,学校側の相談窓口になる教諭がわからな かった(E) ,教育委員会の理解が得られなかっ た(A) ,疾患について説明することが難しかっ た(C)ということが述べられた.このように, 入学前の相談の最初の段階では,話し合いを進め ていくことに戸惑った経験をしていた. 5.学校との連携を円滑に進めるために行ったこ と,行っていること 対象者からは,話し合いの時だけでなく,家族 が学校との連携を円滑に進めるために普段から 行っていることとして,以下のことが述べられ た. 全員の対象者が,「子どもの疾患・治療に関す ることで学校に伝えていないことはない」と述 べ,体調不良時の対応のためにもすべてを話す必 要があると述べていた.また,「学年毎に校長・ 養護教諭・担任と面談して,すべての教諭にわ かってもらうように伝えている」「母親もボラン ティアや PTA で学校のことを知り,学校全体の 先生達に子どものことをわかってもらうようにし た」というように,担任以外の教諭からも理解を. 25. 得るように継続的な働き掛けをしていた.また, 「養護教諭には打ち解けて話し,担任と親をうま くつないでもらった」というように,養護教諭を 連携における重要な関係者と認識し支援を受けて いた. さらに,「症状の出た時に先生が対応してくれ, そういうときに話し合いを重ねていった」「対応 が必要な時に活かしてもらうために,家での対応 を先生に伝えていくようにした」「嬉しかったな ど,感謝の気持ちは常に言っていた」というよう に,信頼関係を構築していきながら,慢性疾患に よる個別の症状への対応が適切になされるよう に,学校関係者にフィードバックをしていた.. 考 察 1.家族から学校への相談内容と理解を得られる 話し合いが進められた要因 今回の調査で対象者から述べられた相談内容に は,「給食への配慮」「排泄への配慮」「体調不良 時の対応」といった毎日の学校生活の中での配慮 が含まれており,疾患を持ちながら日常生活を過 ごし成長発達するという慢性疾患患児の特徴が表 れている.また,同じ食物アレルギーという疾患 であっても必要な配慮は個別であることや,成長 発達に伴い子どもができるセルフケアが変化し, 必要な配慮も変化していくことも慢性疾患患児の 特徴である.したがって,学校との相談は子ども の成長発達に合わせて個別に繰り返し行われてい く必要がある. このように個別性の高い対象児ではあるが,今 回,理解を得られる話し合いが進められた要因 として分類された《親からのアプローチの工夫》 《子どもの能力に対する親からの保証》《学校側の 受け入れへの態勢》《医療者からの支援の活用》 は,慢性疾患患児に共通した要因であり,これら は個別の話し合い進めていく際の方向性として活 用ができると考える. 2.入学時における家族と学校との話し合いにお ける医療者の支援 今回の調査では,学校に相談した経験の中で, 印象的な経験を対象者に挙げてもらったが,小学 校入学以前に疾患が発症していた8名のうち7名 が小学校入学時の経験について述べた.本格的な 集団生活が始まる時に,個別な配慮を理解しても らうことの重要性を親が抱いていることがこのこ とからも推察される.教育委員会との相談の時に.

(6) 26. 千葉県立保健医療大学紀要 第7巻 第1号. は親の希望が理解されないこともあったが,その 後の個々の学校関係者との話し合いはうまく進め られた経験が述べられた.結果に示した,《親か らのアプローチの工夫》にあったような,タイミ ング,説明方法,親の積極性や責任を示す姿勢な どは,話し合いの際の具体的な要点として医療者 から家族に伝えていくことができると考える. また,学校に同様の配慮をした経験があったた め話し合いがスムーズであったという結果があっ たが,学校にとって配慮が必要な慢性疾患患児を 受け入れることが初めての経験となった場合,学 校関係者の不安は強いことが推察される.今回の 調査では,《医療者からの支援の活用》により, 医師から資料の提供を受けた対象者もいたが,親 に説明能力が十分に備わっている場合でも,医師 からの個別の情報提供は,学校関係者にとって説 得力のある資料となったと考えられる.特に学校 にとって初めての経験である場合には,学校関係 者の理解を促すために医療者から学校への直接 的・間接的な情報提供が支援として重要になると 考える. 3.担任教諭を中心とした家族と学校との連携 石見らの慢性疾患のある児童生徒の支援に関す   ) ,担任教諭が慢性疾患のある児童生 る調査では8 徒に行っている支援で実施割合が最も高い項目 は,保護者との連携であり,次に高い項目は健康 観察であった.しかし,支援で困難に感じた点に ついての回答では,体調不良時の対応が最も高い 項目であった.このことから,担任教諭は,保護 者と連携を取り,健康観察を行っているが,体調 不良時の対応には困難を感じていることがわか る.また,吉川の調査では,保護者は子どもの慢 性疾患に関連した情報を学校に伝達していない   ) ,今回の対象者 傾向があると報告されていたが7 は,子どもの疾患・治療に関することはすべて学 校に伝え,疾患・必要な配慮を理解してもらうた. 任教諭を中心として学校関係者に幅広く慢性疾患 をもつ子どもを理解してもらうことが円滑な学校 生活には必要であると考える. 4.養護教諭が慢性疾患患児の学校生活において 果たす役割 今回の結果では,話し合いがうまく進められた 要因として,養護教諭が学校内の他の教諭との調 整役になり,家族の意向に沿って対応していた ことが述べられた.前述の石見らの調査でも 8), 75%の養護教諭が担任教諭との連携を行ってお り,養護教諭が行っている支援において実施割合 が最も高い項目であったと報告されている.こ のことから,現状では養護教諭自身が学校内の調 整役となることを認識し,実際に調整役として機 能していることが推察される.しかし,今回の対 象者からは,話し合いを進める中で困ったことと して,「学校側の相談窓口になる教諭がわからな かった」というものがあった.申し入れの最初の 窓口は学校長であっても,その後の学校内の相談 窓口として養護教諭が対応できれば,学校内の連 携もスムーズに進めていけるため,医療者からも 慢性疾患をもつ子どもの親に,養護教諭の役割を 周知していく必要があると考える. 5.慢性疾患患児の家族と学校との連携における 医療者の支援 今回の調査では,親がアプローチの工夫をしな がら,学校関係者へ継続的な働き掛けをしてお り,親が実際に行動していけることが重要である と考えられた.そのために,親の疾患・治療の理 解を促すことで,子どもの学校生活における配慮 についての親の説明能力を高めることや,個別の 病状に合わせた説明資料の作成を支援することな ど,医療者から親への支援が積極的に行われるこ. めの資料を用意して理解を促していた.さらに, 体調不良時の教諭の対応にフィードバックをした. とが課題であると考える. また,これまで慢性疾患患児に関する教育支援 において学校関係者が活用する資料は発行されて いるが5),家族が話し合いを進める際の具体的な. り,さらに親の責任を明言するということもして おり,担任教諭との連携において,担任教諭の不 安を軽減するような方法を実践していたと考えら れる.このような家族の行動は,学校関係者との. 方法については,研究成果の積み重ねとしての資 料はない.今回の結果も含め,今後,家族が活用 できる具体的な資料を医療者間で検討し作成して いくことが必要であると考える.. 連携を促進する具体的な方法として,他の慢性疾 患患児の家族にも活用できると考える.. 調査にご協力いただきました対象者の皆様,協. また対象者は,普段の学校生活の中で学校との 信頼関係を構築したり,担任以外の教諭からも理 解を得るように継続的な働き掛けをしており,担. 力施設・患者会の関係者の皆様に心より感謝申し 上げます. なお,本研究は平成23∼25年度文部科学省科学.

(7) 西野他:慢性疾患患児の学校生活に関する家族から学校への相談内容と話し合いに影響した要因. 27. 研究費助成事業(学術研究助成基金助成金(基盤 研究(C)))(課題番号23593308,研究代表者 . 文 献. 西野郁子)の研究助成を受けて行った研究の一部 である.また,本研究の一部を第60回小児保健協 会学術集会で発表した.. 1)西野郁子,堂前有香,石川紀子.在宅静脈栄養を必要. 利益相反に関する開示事項はありません.. 和文要旨 慢性疾患患児の学校生活に関する家族から学校 への相談内容と,学校関係者の理解を得られる話 し合いが進められた要因を明らかにし,家族と学 校関係者との連携に関して医療者が行う支援を検 討することを目的として調査を行った.対象者 は,慢性疾患のため学校での配慮が必要な小中学 生の子どもの母親10名であった.母親に対し,学 校での配慮についての学校関係者との相談内容と 相談方法,相談についての話し合いの時の考えに ついて半構成的面接を実施した. 調査の結果,家族は給食への配慮,体調不良時 の対応,行事への参加などの相談をしていた.ま た,学校関係者に理解を得るための話し合いに影 響した要因として,《親からのアプローチの工夫》 《子どもの能力に対する親からの保証》《学校側の 受け入れへの態勢》 《医療者からの支援の活用》 が抽出された.親の説明能力を高めることや,個 別の病状に合わせた説明資料の作成など医療者に よる支援が検討された. キーワード:慢性疾患患児,家族,学校関係者, 学校,話し合い. とする子どもの学校生活における家族と学校の連携・ 調 整 の 実 態 と 課 題. 小 児 保 健 研 究.2012,vol. 71,. no.6,p.890-896. 2)西野郁子,石川紀子,堂前有香,他.在宅静脈栄養 を必要とする子どもの幼稚園・学校生活の実態.小 児保健研究.2010,vol.69,no.1,p.91-97.. 3)西野郁子,石川紀子,石川美夏子,他.在宅静脈栄 養を必要とする子どもと家族の食生活の実態と食事 に関する思い.第39回日本看護学会論文集 小児看 護.2009,vol.39,p.44-46.. 4)兼松百合子,天野洋子,平賀ゆかり,他.学校関係 者のための糖尿病児童生徒支援マニュアル.青山社, 2007,116 p. 5)全国特別支援学校病弱教育校長会,独立行政法人国 立特別支援教育総合研究所.病弱教育支援冊子─病 気のこどもの理解のために─.. http://forum.nise.go.jp/health-c2/htdocs/?page_id =158. (2015.9.20閲覧). 6)吉川一枝.慢性的な病気をもつ小・中学生の保護者 への調査─病気に関連した情報把握と情報伝達─ . 小 児保健研究.2009,vol.68,no.3,p.374-379.. 7)吉川一枝.通常の学級に在籍する慢性疾患患児への 学級担任教師の関わり─関わりにおける困難感の有 無 に 焦 点 を あ て て ─ . 日 本 小 児 看 護 学 会 誌 2003,. vol.12,no.1,p.64-70.. 8)石見幸子,鬼頭英明,中村朋子.慢性疾患のある児 童生徒が学校生活を送るための効果的な支援のあり 方.小児保健研究.2014,vol.73,no.6,p.860-868. 著者連絡先: 〒261-0014 千葉市美浜区若葉2-10-1. 千葉県立保健医療大学健康科学部看護学科. TEL/FAX:043-272-2842(研究室直通) E-mail:[email protected] 西野 郁子.

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