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最新の義足の動向

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(1)日 本 野坂:最新の義足の動向 義 肢 装 具 学 会 誌. 特. 集. Vol. 36. No. 2. 2020. 義肢装具のネクストステージ. 最新の義足の動向 野 キーワード. 坂. 也1). 利. 大義足,膝継手,下義足,ソケット. 抄録 義足の重要な構成要素の中でもソケットおよび膝継手に着目すると目覚ましい進歩がみられる.大 義足ソケットでは,四辺形ソケットから坐骨収納型,MAS ソケット,NU-Flex SIV などの選択肢が増え ている.膝継手に関しては,立脚相制御に優れた機構が開発されており,転倒の危険を回避できるもの が多く使用されている.遊脚相制御では,空圧,油圧などの流体制御機構が多くみられ,歩行速度に対 応可能な膝継手が使用されている.また電子制御の膝継手には,信頼性の向上,個々の継手のモード変 更など,選択する膝継手によって特徴が異なる機構となっており,どの膝継手を選択するかは試し履き などを行い,慎重に選択する必要があるといえる.. 1. 義足ソケットについて. 体感のあるソケットを製作することができる.さらに高い. 1-1. 吸着を求める場合には,義足に荷重を掛けることで積極的. 下義足ソケットについて. PTB 式下義足は,1959 年カリフォルニア大学の生体. に陰圧をかける Unity システムやバキューム装置使用に. 力学研究所で開発された優れたもので,臨床での使用比率. より効果が高まる.バキューム装置に関しては,そのシス. は少なくなってきているが,適合技術が良いことと価格的. テムを使用するために 30 万円以上掛かることが唯一の問. にそれほど高価でないことから,現在でも使用されている. 題であるといえる.. ものである.基本的には,PE ライトなどの軟ソケットと 1-2. 外ソケットを有し,膝カフなどの懸垂装置を用いるもので 1). ある .. 1-2-1. 大義足ソケット デザインおよび形状. TSB ソケットは,Kristinsson2)による Iceross Silicone. ソケット形状による分類では,四辺形ソケット,坐骨収. liner with pin suspension といったシリコーンライナーの. 納型ソケット,MAS ソケット,NU-Flex SIV ソケットな. 開発による.従来のソケットに見られなかった高い懸垂能. どがある.坐骨収納型ソケットは,四辺形ソケット装着時. 3). 力が得られることができたことで,1987 年 Staats が. での側方の不安定を改善するために考案されたソケット形. Total Surface Bearing Suction Below-Knee Prosthesis を紹. 状で,坐骨肢をソケット内に収納している.オリジナルの. 介したことにより現在に至っている.糖尿病などの末梢循. 坐骨収納型ソケットでは,回旋に対する制御が十分でない. 環障害などの切断で知覚鈍麻が見られる場合などには,積. ため,最近では長内転筋のチャンネルを作り,前壁形状を. 極的にシリコーンライナーを用いる義足の使用率が高まっ. 四辺形ソケットのようにデザインすることで問題が解決さ. てきている.新規切断例や透析患者などでは,軟部組織が. せている.しかし一般的にはトリミングラインが深いため. 痩せるなどの変化があるため,PTB バーを少し押し込み,. 安定性,安心感が高い反面,股関節の可動域が制限される. 脛骨稜を少し逃がすなどの工夫を外ソケットに施し,ピン. ことが欠点となっている.股関節の可動域という面で優れ. 式ライナーとの組み合わせものが有効である.断端が成熟. ているのが MAS ソケットである.このソケットは坐骨肢. 後あまり断端形状の変化がない場合やピン式ライナーと. を収納するが,前壁が低く,後壁も臀部を抜くような浅い. いった遠位での懸垂に不快感を訴える場合には,シールイ. トリミングとなっており,これにより切断側の股関節の可. ンライナーやピン無しライナーと外ソケットの上からス. 動域制限がかなり改善されている.また臀部を覆わないこ. リーブを用い,吸着バルプを併用することにより,より一. とにより,ヒップラインが健側に類似して外観上も向上し. The current state of lower limb prostheses 1)北海道科学大学保健医療学部義肢装具学科 〒006-8585 北海道札幌市手稲区前田 7 条 15-4-1 Department of Prosthetics and Orthotics, Faculty of Health Sciences, Hokkaido University of Science 15-4-1, 7-Jo Maeda, Teine-ku, Sapporo-shi, Hokkaido, 006-8585 Japan Toshiya NOSAKA(義肢装具士) ─. 103 ─.

(2) 日 本 義 肢 装 具 学 会 誌. Vol. 36 No. 2. 2020. の計測とソケットへの再現を重要視した6) .. ている.臀部を覆わないことにより側方の安定性,支持性 に不安を訴える人や坐骨肢の押さえに違和感を訴える人も. その後,多くのデザインや形状が考案されたが,1987 年. いる.近年坐骨で支持をしない新たな概念の NU-Flex SIV. に AAPO と ISPO 米国支部で協議され,Ischial-Ramal-. ソケットが日本でも多くの講習会受講により広められてき. Containment Socket と統一名称が使われるようになった.. ている.. 1985 年には,UCLA の Staats は,Long と Sabolich の 2. 一番の長所は,坐骨を支持しないため,長時間座位をとっ. 人の理論の優れている点を受け継ぎ,臨床および教育的に. ても坐骨付近の不快感がないこと,最も近位部のトリミン. 洗練した UCLA CAT-CAM ABOVE KNEE PROSTHESIS. グが浅いことにより股関節可動域の制限が少ないことが挙. を作りだし,初めて UCLA の教育プログラムに取り入れ. げられる.このソケットは特に両側の大切断者にとって. 普及に努めた.以後,世界各国で伝達講習会が行われ,普. 利点があり,これを使用することにより,歩隔が狭まり,. 及の一途をたどった.. 立位姿勢が直立姿勢をとりやすく,座位での不快感がない. 日本では 1991 年 3 月,UCLA の講師 Christopher Hoyt. など従来の坐骨支持ソケットでは得られないものとなって. 氏によって初めてその理論と製作適合技術が紹介され,そ. いる.しかし唯一の問題としては,このタイプのソケット. れ以降,日本義肢装具士協会では毎年技術講習会を開催し. ではバキューム装置を使用することが必要で,電子制御で. ている.. 35 万円程度,荷重を掛けてバキュームさせるものでも 30. 坐骨収納型ソケットは,歩行中に大骨がソケット内で. 万以上が一般的であるので,このバキューム装置の価格が. 外転位となる四辺形ソケットの問題点を解決するため,い. 高価であることが問題といえる.. くつかの特徴を持っている.① 坐骨が内側にずれないよ. ⑴. うに坐骨結節内側から大転子直下の距離をソケットに再現. 四辺形ソケット 1950 年代以降に確立された吸着式四辺形ソケットは,大. している.これを骨 ML と称し,計測値に 10 mm 程度の. 部の坐骨結節直下の骨や筋組織の解剖学的な位置を重要. 加算値を加えてソケットを製作している.② 坐骨結節か. 視し,ソケットの前内側,前外側,後外側,後内側のコー. ら 40 mm 遠位の内外側径を計測し,軟部組織 ML として. ナーには歩行中に働く筋の活動を束縛しないように凹状の. ソケットを製作している.③ 外側の形状は大転子上方と. チャンネルが配置され,前壁は長内転筋,スカルパ三角,. 大骨骨幹部の形状を再現し,大骨の内転位保持を可能. 大直筋に適度に圧迫を加える役割を持ち,内側面では長. としている(腸骨-大骨角度).坐骨収納型ソケットの問. 内転筋,薄筋,大内転筋,ハムストリングスを収納し,進. 題点として指摘されていた回旋制御の問題を解決すべく,. 行方向に平行な面を作っている.後壁は,大殿筋,ハムス. 現在,日本義肢装具士協会主催の伝達講習会では,前内方. トリングスを収納し,坐骨結節が支持するための棚が作ら. の長内転筋のチャンネルを作り,前壁形状を四辺形ソケッ. れている.外側壁は側方の安定性を得るために他の壁より. トのごとく製作することにより,以前の坐骨収納型ソケッ. も高く,標準的な断端では大転子中央までの高さとなる.. トよりも回旋制御の問題もなく良好なソケットとなってい. 収納される筋は,大胆筋膜張筋,外側広筋,大殿筋となる.. る.このソケットは歩行中だけでなく,座位時での坐骨の. 坐骨収納型ソケットが登場するまで長い期間大義足ソ. 突き上げも少なく,四辺形ソケット使用から坐骨収納型ソ. ケットの主流を成してきたが,歩行中の安定性の向上,座. ケットに変更した際に座位時の快適性を指摘する方が多. 位時の坐骨部の突き上げ感の減少を求め,坐骨収納型ソ. い.断端の収納部分が多いことにより,使用者が安心感,. ケットの使用率が増えている.. 安定性を感じることが多い反面,股関節の可動域の制限が. ⑵. 四辺形ソケット同様にあることが問題であるといえる.. 坐骨収納型ソケット 以前は IRC ソケットと呼んでいたが,JIS 用語の改訂に. ⑶. MAS ソケット. 合わせて現在では坐骨収納型ソケットと用語が統一されて. Ortiz が坐骨収納型ソケットに改良を加え考案したもの. いる.歴史的には,1975 年 Long4)は,多くの大切断者. である.従来の坐骨収納型ソケットに比べ,前壁,後壁の. の歩行が体幹を側屈させていることに疑問をもち,X 線上. トリミングラインを低くし,股関節可動域が格段に向上し. で大骨が健側と同様に内転位を保持する重要性(Long’s. ている点と,大殿筋部分がソケットに収納されないため,. Line)とそのためのソケット形状を示した.その後 1985 年,. 臀部のシルエットが健側に近く特に女性には喜ばれる点で. Normal Shape-Normal Alignment という概念を発表し,100. あるといえる.このソケットは,骨 ML, 内側 AP, 外側 AP. 名の大切断者の断端を計測し,91 から 92 人に大骨の. に加えて,坐骨肢から前外側へ向かう Diagonal ML をソ. 外転が見られ,その原因は四辺形ソケットのトップ面の形. .また坐骨収納型ソ ケットに再現することが求められる7). 状が,A-P 方向に狭く M-L 方向に広いことにあると指摘. ケットでは坐骨結節を内側から後方にかけて収納する形状. した.彼は“義足歩行において側方への安定性は健側と同. を作っていたが,MAS ソケットでは耳たぶのような形状. 5). じように大骨に内転位を与える”ことを提唱した .. で坐骨結節部の後方は覆わず,内側からカウンターを効か. 次に Sabolich は 900 を超える数の非四辺形ソケットを. せるような特徴的なデザインとなっている.本来の坐骨収. 製作し,CAT-CAM ソケットを考案した.大骨の内転位. 納型ソケットを IC(Ischial Containment)と呼び,MAS. 保持のために骨性ロックを重要視し,骨 ML, 軟部組織 ML. ソケットを IRC(Ichial Ramal Containment)と呼ぶ論文も. ─. 104 ─.

(3) 野坂:最新の義足の動向. 散見されている.. 削り,全体の周径を 3∼5%小さくする調整は主に後壁で行. ⑷. う.バキューム装置と決まられたライナーを用いるものを. NU-Flex SIV ソケット Fatone によって開発考案された新しい概念のソケット. NU-Flex SIV ソケット(Northwestern University Flexible. である8) .最も革新的なことは,坐骨支持を全くせずに歩. Sub-Ischial Vacuum Socket)と称している.新規切断者で. 行可能にしている点であるといえる.彼女らは坐骨下支持. 大きなボリューム変化が見込まれる場合,低活動で吸引の. ソケットと呼んでいる.従来の坐骨収納型ソケットでは関. 適合の利益が乏しい場合,吸引装置が高価で利用できない. 節可動域の制限と快適性の問題があり,この坐骨下支持ソ. 場合などでは,吸着式のものを推奨しているがそれらを NU-. ケットを使用することにより股関節可動域の拡大と快適性. Flex SIS ソケット(Northwestern University Sub-Ischial. の向上があること,また吸引式懸垂により断端とソケット. Suction Socket)と呼び,明確に区別している.この場合に. の接点を確実に維持することができることを挙げている.. 用いられるライナーはメーカー推奨のサイズのものを使. それを可能にするために内側の坐骨結節部部分では坐骨結. 用するが,やはり円筒形のものだけで,Medi Relax 4seal. 節よりも 25 mm 低いトリミング,外側では大転子よりも. Liner か Össur Seal-In XTF(追加 Seal を使用)を推奨し. 50 mm 低いトリミングを基本としており,ライナーは円錐. ている.. 状のものは禁忌で,円筒状のライナーを使用する.ライ ナーの優先順位では Medi Relax 3C Cushion Liner, 次に. 1-2-2. 懸垂方法. Össur Seal-In XTF を推奨している.ライナー選択は断端. 差込式ソケットでは,通常ソケット以外に懸垂帯が必要. 末から 5 cm 近位の周径を計測し,計測よりも 1 サイズ小. となる.吸着式ソケットでは断端近位部にコンプレッショ. さいライナーを選択する.座位時でライナーを近位部で折. ンがかかるようにソケット近位部の周径を 3∼5%程度小. り返しし,その上から採型することが特徴である.ライ 表 1. ナーを装着するときつく感じるがソケットとライナーの間. 前額面での 1 歩行周期での移動範囲17). にバキューム装置で陰圧を掛けるため,実際には吸引後は それほどきつく感じないということが特徴である.陽性モ. 坐骨収納型. MAS. 5.5 4.5. 5.6 4.4. 4.7 4.1. 左右方向(cm) 上下方向(cm). デル修正は,近位部の軟部組織 ML に合わせるよう外側を. 図 1. 四辺形. 平地歩行における前額面の重心の軌跡17) ─. 105 ─.

(4) 日 本 義 肢 装 具 学 会 誌. Vol. 36 No. 2. 2020. さく製作し,ソケット遠位部に吸着バルプを使用しソケッ. ケット装着時で前額面の左右方向での重心の移動距離など. ト内に外部から空気が入らないようにすることで,懸垂機. に差があるものの最大でも 1 cm 未満とわずかな差であっ. 能を持たせている.ライナー式では,下義足同様にピン. た(図 1).歩行中の体幹の側屈角度変化はわずかな差で. 式ライナーとピン無しライナーとに分かれる.ピン式ライ. あった.平地での歩行分析後,被験者に平地での歩きやす. ナーは,遠位部にピンを接続するためのアタッチメントが. さについて坐骨収納型ソケット装着時を 10 段階評価で 8. 必要となる.ピン無しでは,シールインライナーを用いる. の評価とした場合の他の 2 種類のソケット評価について聞. か,または NU-Flex SIV ソケットなどで用いられるソケッ. き取り調査を行った.その結果,四辺形ソケットが 6 程度,. ト近位部でライナーを外ソケットに折り返して他のスリー. MAS ソケットは 8 程度であった.現在使用しているソケッ. ブで空気の流れを抑え,ソケット遠位部にバキューム装置. トが坐骨収納型ソケットであることが原因とも考えられる. を用いて陰圧状態を保持する方法等がある.. が,四辺形ソケットが少し歩きづらかったようであるが, 平らな歩行路ではわずかな差であるとの感想であった.. 2. 大)義足ソケットの機能評価 ソケットの形状は,前述したように四辺形ソケット,坐. 2-2. 横方向斜面での歩行分析12). 骨収納型ソケットへ変化している.MAS ソケットは他の. 義足側が高い斜面ではソケットの違いで前額面での重心. ソケットに比べ,外観・股関節の可動域に大きな利点があ. の軌跡および胸腰部の側屈角度変化に特徴的な変化は見受. るが,四辺形ソケットと坐骨収納型ソケットの間での運動. けられなかった.ここでは,義足側が低い状態での左右方. .筆者は,通常行われて 学的分析結果の報告は少ない9-16). 向斜面での結果についてのみ報告する.. いる平地での歩行分析以外に,ソケットの内外側の安定性. 義足側が低い左右方向の斜面路で歩行分析を行ってみる. をより明らかにするために左右方向に傾斜がついた斜面で. と,表 2 に見られるように前額面での重心の移動距離が,. . の歩行分析を行い,若干の差異を報告した17) 2-1. 表 2. 前額面での 1 歩行周期での移動範囲17). 平地での歩行分析17). 平地においてケーデンス steps/min に規定して歩行分. 左右方向(cm) 上下方向(cm). 析を行った.複数歩の平均は表 1 に示すように 3 種類のソ. 図 2. 四辺形. 坐骨収納型. MAS. 7.8 6.1. 7.1 3.4. 7 3. 義足側が低い左右方向斜面における前額面の重心の軌跡17) ─. 106 ─.

(5) 野坂:最新の義足の動向. 坐骨収納型ソケット,MAS ソケットに比べ四辺形ソケッ. 者を対象に歩行分析を行い,同様の結果が得られるか分析. ト装着時に上下方向の移動距離が 3 cm 程度大きくなって. が必要である.さらに MAS ソケットについては,多くの. いた(図 2).今回 1 被験者で各ソケット 5 回の歩行計測. 股関節周りの可動域を許すため,坐骨収納型ソケットより. 結果での評価であったため統計処理は行っていないが,重. も義足側が低い左右方向の斜面での歩行実験では優れてい. 心移動が 3 cm も異なっていたことは興味深いと考えてい. るように感じるとの感想があった.ただ坐骨収納型ソケッ. る.また図 3 に見られるように胸腰部の側屈では,四辺形. トよりも MAS ソケットの方が坐骨結節部分の体重支持が. ソケットが他の 2 種類のソケット装着時よりも義足側の立. 少ないため,長時間での歩行に関しては,多少心配である. 脚相前半での義足側への側屈が早く行われており,上下移. との意見があった.. 動が大きくなっている要因であると考えている.. また Klotz らは 4 名の大切断者に義足無し,四辺形ソ. 左右方向斜面での歩行分析後,被験者に歩きやすさにつ. ケット,坐骨収納型ソケット,MAS ソケット装着時にお. いて坐骨収納型ソケット装着時を 10 段階評価で 8 の評価. ける股関節の屈曲伸展,内転外転の可動域の総和について. とした場合の他の 2 種類のソケット評価について聞き取り. 比較検討しており,ソケット無しとは,すべてのソケット. 調査を行った.その結果,四辺形ソケットが 5 程度,MAS. が有意に可動域が少なかったが,ソケット装着時では,. ソケットは 9 程度であった.現在使用しているソケットが. MAS ソケットが他の 2 つに比べ可動域が有意に大きい結. 坐骨収納型ソケットであることが原因とも考えられるが,. .我々も同様に 2 名の大切断者に四辺形, 果となった18). 四辺形ソケットがかなり歩きづらかったようである.. 坐骨収納型,MAS, NU-Flex SIV ソケットを製作した.林. 左右方向に傾斜のついた斜面での歩行分析を行った結. が股関節の可動域を検査した結果が表 3,4 のごとくであ. 果,臨床で大切断者の方々から四辺形ソケットがでこぼ. り,四辺形および坐骨収納型ソケットに比べ,MAS が優. こ道では歩きづらいとの意見が多いことと一致する結果に. れており,それらを上回る可動域を確保できているのが,. なったのではと考えている.今後はさらにより多くの被験. . NU-Flex SIV ソケットであるということがいえる19). 3. 義足膝継手について 膝継手は立脚相と遊脚相に分けて機能の分類がされてい る.立脚相制御装置は,大きく分けて static stabilizing と dynamic stabilizing に分けることができる.static stabilizing には,マニュアルロック,荷重ブレーキなどがこれ にあたる.dynamic stabilizing には,低∼中活動者向けの バウンシング機構と中∼高活動者向けのイールディング機 構があり,平地だけでなく下り斜面などに安全性の高いも 図 3. 義足側が低い左右方向斜面における前額面の 17) 胸腰部の側屈角度変化(一部改変) 表 3. 悪い場合には,立脚相において軽度屈曲位でロックするバ. 被験者 A における 4 種類のソケット装着時における股関節可動域について. 屈曲 伸展 内転 外転 屈伸可動域 内外転可動域. 表 4. のが多い.一般的には,健足の筋力,体幹バランスなどが. 四辺形. 坐骨収納型. MAS. NU-Flex SIV. 75 ,10 35 7 65 42. 80 ,9 35 15 71 50. 89 ,9 40 15 80 55. 110 ,7 46 15 103 61. 被験者 B における 4 種類のソケット装着時における股関節の可動域について. 屈曲 伸展 内転 外転 屈伸可動域 内外転可動域. 四辺形. 坐骨収納型. MAS. NU-Flex SIV. 70 ,10 19 15 60 34. 70 ,9 23 12 61 35. 80 ,10 25 15 70 40. 106 ,6 47 25 100 72. ─. 107 ─.

(6) 日 本 義 肢 装 具 学 会 誌. Vol. 36 No. 2. 2020. ウンシング機構が適している.この機構では,低活動の切 断者が下り坂,でこぼこ道などを歩行する場合にも高い安 定性を発揮する.しかし階段を左右別々に 1 歩ずつ下る動 作をすることはできない.活動レベルが中程度以上で健足 の筋力,体幹バランスが良い場合には,下り坂や階段下り の際に荷重を掛けながら膝をゆるやかに屈曲させることが できるイールディング機構が適している. 遊脚相制御として歩行速度への追従性のある可変摩擦機 構や流体制御装置などがある.流体制御装置には空圧・油. 図 4. 圧の抵抗を利用するものが数多く製品化されている.コン. 異なる膝継手使用時におけるケーデンス 100 での 膝継手角度変化. ピュータ制御膝としては,遊脚相のみをコンピュータ制御 するものとしてインテリジェント膝継手がある.また立脚 相,遊脚相ともにコンピュータ制御するものとしてオッ トーボックの C-Leg, Genium, Össur の Rheo-Knee, ナブテ スコの Allux などがあり,立脚相では高い信頼性のある イールディング機構を有している.オットーボックの Kenevo は低活動者向けのもので,ロック,セミロック,バウンシ ング機構,イールディング機構に設定変更することができ, 立位から座位,座位から立位へのアシストモードが働き, 転倒のリスクを軽減する機能がある.昨年の ISPO の発表 で電子制御膝継手の価値について,転倒のリスク回避がで きることで,経済効果が高いとの評価をしており,今後電. 図 5. 子制御の膝継手に関する評価については,単なる歩行評価. 異なる膝継手使用時におけるケーデンス 100 での 膝継手角度変化(電子制御中心). ではなく,さまざまな観点での評価と適応に関する議論が 者の歩行例を示している.C-Leg では,平地での歩行では. 必要であると感じている. またオットーボック Genium に関しては,他の電子制御. 立脚相後半までほぼ膝伸展位となっているが,Genium で. 膝継手と異なり,初期接地において 4 度の膝屈曲角が付い. は膝 4 度屈曲位で初期接地するため,立脚相での健常者の. た状態で接地する機構となっており,歩行中の膝継手角度. 膝角度変化同様に軽度膝軽度屈曲パターンを示している.. 変化だけを着目すると健常者の歩行にかなり類似した波形. C-Leg, Genium ともにケーデンス 100 steps/min では油圧. を示している.しかし,図には示していないが,義足側の. シリンダを電子制御しており,遊脚中期での膝最大屈曲角. 股関節角度変化を注目すると足部など他の要因の問題なの. 度が 65 度になるよう(設定で変更可能)になっている.こ. か,健常者が初期接地直後に股関節屈曲位を保持するよう. れらの膝継手では健常者の通常の歩調よりも速い状態でも. な同じ波形パターンを示すことはない.. 対応可能であることが確認できている.. 図 4 には機械的摩擦装置+伸展補助装置のものとして, オットーボック 3R15+21B30 を 3R15 とした大切断者の. 文. 献. 1 歩行周期の膝継手角度変化を示しており,遊脚相制御に. 1 )澤村誠志.切断と義肢.第 2 版.医歯薬出版,274-312, 2016.. 空圧を用いた 3R106 とバウンシング機構と遊脚相制御に 油圧を用いた 3R60 の大切断者の歩行例を示している.. 2 )Kristinsson, Ö. The ICEROSS concept : A discussion of a philosophy, Prosthet. Orthot. Int. 17, 49-55 (1993).. ケーデンス 100 steps/min 程度の通常歩行よりも若干遅め. 3 )Staats, T.B. Advanced prosthetic techniques for below-. の歩行において,3R15 では摩擦抵抗を調整しても遊脚中. knee amputations, Orthot. Prosthet. 41, 46-57 (1987).. 期に踵の跳ね上げが生じ,歩調の速さが限界を超えている のが伺える.3R60 では,初期接地後に膝軽度の屈曲でロッ. 4 )Long, I.A. Techinical notes, allowing normal adduction. クがかかり,立脚相の後半で膝が膝屈曲角が減少後,前遊. of femur in the above-knee amputations. Orthot. Prosthet.. 脚期に膝屈曲になっていっている.3R106 と 3R60 ともに. 29, 53-54 (1975). 5 )Long, I.A. Normal Shape-Normal Alignment (NSNA). ケーデンス 100 steps/min 程度であれば適切な遊脚相制御. above-knee prosthesis. Clin. Prosthet. Orthot. 9, 9-14 (1985).. が行われているのが伺える. 図 5 には機械的摩擦装置+伸展補助装置のものとして,. 6 )Sabolich, J. Contoured Adducted Trochanteric-Controlled Alignment Method (CAT-CAM) ; introduction and basic. オットーボック 3R15+21B30 を 3R15 とした大切断者の. principles. Clin. Prosthet. Orthot. 9, 15-26 (1985).. 1 歩行周期の膝継手角度変化を示しており,立脚相・遊脚 相ともに電子制御の C-Leg と Genium を用いた大切断 ─. 7 )Ortiz, M. New evolution in transfemoral socket design 108 ─.

(7) 野坂:最新の義足の動向. 14)野坂利也. M.A.S. socket. IPSO 2006 Asian Prosthetics and Orthotics. 他.工学的観点から見た最近の義足ソケッ. ト,義装会誌 14,187-192(1998).. Workshop in Korea, 55-67, 2006. 8 ) Fatone, S. et al. Northwestern University Flexible. 15)Hachisuka, K. et al. Subjective evaluations and objective. Subischial Vacuum Socket for persons with transfemoral. measurements of the ischial-ramal containment prosthesis.. amputation-Part 1 : Description of technique. Prosthet.. J. UOEH, 21, 107-118 (1999).. Orthot. Int. 41, 237-245 (2017).. 16)Traballesi, M. et al. Energy cost of walking in trans-. 9 )野坂利也.坐骨収納型ソケットと四辺形ソケットの比. femoral amputees : Comparison between Marlo Anatomical. 較評価 第 1 報─歩容による分析─.日本義肢装具学会. Socket and Ischial Containment Socket. Gait & Posture,. 第 7 回大会講演集.41-42,1991.. 34, 270-274 (2011).. 10)東江由起夫. 17)野坂利也.大義足ソケットと日常生活動作.義装会. 他.坐骨収納型ソケットの適合評価 第. 誌 26,15-20(2010).. 2 報─ X 線及び筋電による分析─.日本義肢装具学会第. 18)Klotz, R. et al. Influence of different types of sockets on. 7 回大会講演集.43-44,1991.. the range of motion of the hip joint by the transfemoral. 11)野坂利也.四辺形ソケット,坐骨収納型ソケット,断. amputee. Ann. Phys. Rehabil. Med. 54, 399-410 (2011).. 端形状ソケット装着時の歩容の分析について,義装会誌. 19)林諒一郎.Northwestern University Flexible Subischial. 6,309-323(1990). 12)東江由起夫. 他.坐骨収納型ソケットの適合評価─ X. Vacuum Socket と他ソケット装着時における大義足. 線及び筋電による分析─.義装会誌 9,222-227(1993). 13)東江由起夫.最近の大義足のソケット.総合リハ. 44,2020.. 26,23-30(1998).. ─. 歩行の運動学的比較.北海道科学大学大学院修士論文,. 109 ─.

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図 4 異なる膝継手使用時におけるケーデンス 100 での 膝継手角度変化

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