産業における共同研究活動と研究開発支出
― オープン・イノベーション政策の視点からの実証分析 ―
馬 場 正 弘
1.はじめに
本稿では大学および公的研究機関と企業との間で行われる共同研究など の連携活動について、近年広く注目されているオープン・イノベーション の形態として捉え、企業自身の手による研究開発活動との間の補完関係を 中心に検討する。すなわち、外部の研究組織との連携など自社内に限定さ れない研究開発体制のオープン化が自身の研究開発体制の強化につながる 可能性を検討することを通じて、近年のオープン・イノベーション政策が 産業という部門に対して及ぼす作用を明らかにすることを試みる。その際、 それらの活動を直接の変数とするだけでなく、売上高の変動で測った企業 の経営状況と連動した効果や、当該分野の技術的な水準とオープン・イノ ベーションに対する企業の態度との間の関係についても、パネルデータを 用いて分析する。2.日本における共同研究活動の推移と現状
2.1.産業政策としての共同研究推進の歴史 (1)技術研究組合を通じた民間の共同研究推進 日本においては、鉱工業技術研究組合法が1961年に制定されるなど、 1960年代初頭から鉱工業分野における技術研究組合の形成を通じて民間企業における共同研究の促進が図られてきた。1970年代以降になると、円高 および原油高がもたらした経済成長率の低下に対処する産業政策の重点の ひとつとして、石油を代替する新エネルギーの開発や自動車や電気機械な ど成長産業における技術革新の推進の必要性が強調されるようになり、 1970年代中期には各種の大型研究開発制度などを背景に技術研究組合の新 設数のピークが生じた。次世代産業基盤技術研究開発制度(1981~1992 年)などが設けられた1980年代には、組合新設数のより大きなピークが生 じ、設置件数は1990年代初めまで高水準で推移した。その後、1990年代に なると共同研究の対象となる新たな制度(産業科学技術研究開発制度な ど)が設けられたが、新設数は伸び悩み、一方解散する組合が増加したこ とで設置件数自体は減少した(図1)。 防衛や宇宙開発などの部門の規模が大きい米国と対照的に、こうした日 本の研究開発投資の特徴として、金額面においては民間部門の役割が大き 図1 技術研究組合・設置件数と新設件数 注)経済産業省技術振興・大学連携推進課「技術研究組合の概要について」平成29年 5 月を基に作成。 45 0 3 1 0 0 0 0 1 2 3 8 3 5 2 1 3 3 5 7 9 11 5 5 12 6 3 7 45 7 2 6 6 4 4 2 2 2 4 10 2 5 2 1 1 3 14 21 9 8 5 5 4 7 3 4 9 911121111111011 1215 2223 282929 323233 39 46 535657 67 70 68 72 70 66 69 67 6564 62 59 54 51 4848 53 50 46 39 343332 39 5556 5960 55 535355 0 5 10 15 20 25 0 10 20 30 40 50 60 70 80 1961 1963 1965 1967 1969 1971 1973 1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 2015 2017 અ਼ʤӊΕʥ ೧ౕૌ਼
く、戦後の研究開発投資の急拡大は主として民生用技術を中心とした民間 部門での増加によるものであったという点や、政府の研究開発投資のほと んどが大学や研究機関での基礎研究であり、産業におけるその成果の利用 が限られていたという点がしばしば強調された。いわゆるハイテク産業に 対する研究開発投資政策においても政府の比重は小さく、その結果、日本 の技術開発は民間を中心とした生産技術の改善や品質の向上など応用・開 発研究の比重が大きいものとなり、基礎的な技術開発に対する政策的関与 は限られたものであった1 )。これは、基盤となる技術の開発や先端研究な ど、リスクの高い分野に対する政府の支援の必要を意味した。このような 状況において民間企業間の協調的な研究開発を助成するという目的から、 技術研究組合に参加する企業に対する優遇税制措置の実施や補助金の交付 などを通じて、先端技術における共同研究活動を促進するという措置がと られた2 ) 。 (2)大学・研究機関との連携と技術移転の推進 一方、1990年代後半になると、大学や公的研究機関と産業部門の研究開 発活動の連携という観点から、特許の保有などの形で大学が有する学術研 究の成果の知的財産化や民間との共同研究の促進によって民間への技術移 転を促し、新産業の育成の手段とするために、大学等技術移転促進法 (TLO法、1998年)に基づく技術移転機関(TLO)の設置などの制度が整 備された。その主な狙いは、大学内に価値ある技術知識や特許が死蔵され ているという認識のもと、大学が持つこれらを産業競争力強化のために いっそう活用することにあった3 ) 。 さらに、近年の動向としては、エレクトロニクス、新素材、バイオテク ノロジー、エネルギーなどの高度技術に対して補助金がシフトしたことが 挙げられる。これらはリスクが大きく、膨大な資金を必要とするという特 徴を持つ、民間だけでは十分な研究努力を行う誘因が小さい分野を含む。
2009年に技術研究組合法が改正・施行され、2010年代に入ると、制度変更 や対象の拡大(「鉱工業の生産技術」から「産業活動において利用される 技術」へと拡大、設立手続きの簡便化など)もあって技術研究組合の件数 は急増しているが、そこでは、リスクの高い研究分野について大学、公的 研究機関、および産業がここを拠点として共同研究を行い、その成果を民 間に転用するという活用方法も増えている4 )。 2.2.産業競争力強化と共同研究 (1)政策目標としての産業競争力強化 一方、現政権が長期的な経済戦略の目玉として掲げるいわゆる「アベノ ミクス」に到るまでの経緯においても、産業競争力強化の手段として共同 研究活動の推進が位置づけられてきた。1990年代以降の経済の長期的な停 滞や数度にわたる急激な円高の進行が製造業の国際競争力低下と産業空洞 化をもたらすと、製造業の技術と知識の集積を活用して得意分野を確保し、 世界と競争することが求められたが、これに関して、高コスト体質や革新 力の弱さが指摘される非製造業における生産性の低さを問題視する声が挙 がった。その結果、産業部門全体の生産性向上や革新的な新サービスを生 み出すための政策が必要とされるという認識が政府や産業界に広まった。 この認識はいわゆる2013年版のアベノミクスにおいて「第三の矢」とさ れた、「民間投資を喚起する成長戦略」に引き継がれている。「日本再興戦 略」(2013年 6 月)における「改革に向けての10の挑戦」では、競争力が 停滞する日本が経済成長率を高めるために欠かせないのは新産業の創出で あるとし、産業の新陳代謝とベンチャーの加速・成長資金の供給促進、イ ノベーションの推進、攻めの農林水産業、健康産業の活性化と質の高いヘ ルスケアサービスなどを重点に産業部門の全要素生産性を向上させ、日本 経済の潜在成長力を高めることが成長に重要であるとされた。そしてここ
に盛り込まれた施策の実行のために2013年に旧「産活法」のスキームを引 き継いだ「産業競争力強化法」が成立し、産業競争力の強化を目指す政策 がとられている5 ) 。 (2)政策手段としてのオープン・イノベーション推進 さらに、今日では2018年の「未来投資戦略」においても、大学等の産学 連携によるオープン・イノベーションの推進が「Society 5.0」の実現に向 けて唱えられている。すなわち、人口減少、少子高齢化、エネルギー・環 境制約など様々な社会課題に直面して、データと革新的技術の活用によっ て課題の解決を図り、新たな価値創造をもたらす大きなチャンスを現実の ものにするために、民間も行政も、過去の成功体験にとらわれた内向き志 向や自前主義から180度転換し、既存の組織や産業の枠を越えて、技術と 人材、データと現場の新たなマッチング等を通じたオープン・イノベー ションと社会変革を飛躍的に進めることが不可欠であると政府は強調して いる6 ) 。こうして今日、従来から行われてきた産官学の共同研究や委託研 究に対しても、産業界の技術革新の新しい形態を実現する方策の一つとい う位置づけがなされている。 このような、企業の経営や技術を取り巻く環境の急速な変化に対応する ためには企業と大学、研究機関が連携するオープン・イノベーションの推 進が重要であるという認識の高まりから、政府は2016年版の日本再興戦略 において、大学・国立研究開発法人に対する企業の投資額を現在の 3 倍と するという目標を設定した。同年に設けられた「イノベーション促進産学 官対話会議」では、このための指針として「産学官連携による共同研究強 化のためのガイドライン」が取りまとめられた7 )。
2.3.共同研究活動の指標としての受入・外部支出研究費などの動向 (1)産業と大学・公的研究機関の間の研究費の流れ 企業や大学、研究機関は自身の組織内での研究開発活動だけでなく、研 究の委託や共同研究などの形でも研究開発活動を行い、そのために自身の 内部使用研究費の他に外部へも研究費を支出し、外部から研究費を受け入 れる。これらについて総務省統計局「科学技術研究調査」では、企業、大 学、研究機関の相互間で委託費や賦課金など名目を問わず外部へ支払った 研究費を「外部支出研究費」として集計している。一方、資金を受け取る 側については受託費、補助金、交付金などの名目を問わず「受入研究費」 が計上される。本稿では、こうした各種研究主体の間での研究資金の動き や連携の状況を産業別に集計することで、産業から見たオープン・イノ ベーションの一側面としての研究費の流動を捉える。ここからは、「日本 再興戦略」以後における大学や公的研究機関と民間企業との間での研究資 金の動きに関して、以下のことが読み取れる。 まず、民間企業が大学および公的研究機関から受け入れた外部資金によ る研究活動の変化を産業別に集計したものを表1に示す。2013年と比較し た2017年の受入研究費の変化を各産業について見ると、以下の様子がわか る。 ①国内の大学(私立大学を含む)、国・地方公共団体、国公営・独立行政 法人研究機関からの研究費の受入額は、全産業計では2013年の1853億円 から2017年には1538億円とおよそ2割減少した。これは製造業について も同様であった。これらはもっぱら国・地方公共団体や公庫からの受入 研究費の減少による。 ②金額自体の大きさは別として、製造業内でも受入額が大きく伸びている 業種がある。食料品製造業では6.5倍の増加だが、出所を見るとこれを
もたらしたのは大部分が国・地方公共団体(当該産業の国内からの受入 額変化全体に占める割合で測った寄与率は9割)である。またパルプ・ 紙・紙加工品製造業では国・地方公共団体と公的研究機関がこれに寄与 した。一方、3倍増となった医薬品製造業では、公的研究機関の寄与が 8割以上を占めることが特徴であった。同様の傾向は2倍近い増加だっ た電子応用・電気計測機器製造業にも見られ、増加の大部分を占めた。 一方、表2に示したように、同時期において企業から大学、公的研究機 関へ支出された外部支出研究費については次の点が読み取れる。 ①これらの大学・機関への外部支出額は、表1と同じ2013年から2017年の 間に、全産業の集計で1202億円から1339億円と10%増加した。製造業全 体では減少したものの、支出額自体は別として、非製造業のいくつかの 産業で増加率が高かった。 表1 産業別受入研究費の変化(対国内公的部門) (単位:100万円) 注)(*)公営企業公庫+その他公的機関+非営利団体 2013年の合計額に対する2017年の合計額の倍率が2倍以上の産業および本文中で言及した産業につ いてのみ記した。 本文中で言及した部分について、ゴシック体で強調してある。 斜字は当該産業計が非公表であるため資本金階級別に公表された値のみを合計したもので、実際よ りも過小である。 出所:総務省「科学技術研究調査」各年版より作成。 国+ 地方公共団体 国公立大学+私立大学 国営・公営・独法研究機関 公庫他(*)公営企業 合計 2013年 2017年 2013年 2017年 2013年 2017年 2013年 2017年 2013年 2017年 2017年/2013年(倍) 全産業 102651 62860 1629 2546 43035 73612 37973 14748 185288 153766 0.8 製造業 86385 52416 906 1027 28479 61436 36021 1470 151791 116349 0.8 食料品製造業 289 2255 1 18 106 266 0 26 396 2565 6.5 パルプ・紙・紙 加工品製造業 12 76 0 4 104 158 0 0 116 238 2.1 医薬品製造業 232 288 1 62 353 2214 518 745 1103 3309 3 電子応用・電気 計測器製造業 651 334 171 88 796 2434 27 314 1645 3170 1.9
②製造業内で増加率が高かったのは、食料品製造業(2.7倍)、金属製品製 造業(2.3倍)、はん用機械器具製造業(2倍)などで、これらではもっ ぱら大学への支出額の伸びが寄与した(国内外部支出額における寄与率 はいずれも8~9割を占める)。パルプ・紙・紙加工品製造業や業務用 機械器具製造業でも約2倍の増加だったが、これらでは主に公的研究機 関への支出が寄与した。情報通信機械器具製造業(1.9倍)では大学お よび公的研究機関からの伸びが寄与した。なお、第3次産業のなかでは 表2 産業別外部支出研究費の変化(対国内公的部門) (単位:100万円) 注)(*)公営企業公庫+その他公的機関+非営利団体 2013年の合計額に対する2017年の合計額の倍率が2倍以上の産業および本文中で言及した産業につ いてのみ記した。 本文中で言及した部分について、ゴシック体で強調してある。 斜字は当該産業計が非公表であるため資本金階級別に公表された値のみを合計したもので、実際よ りも過小である。 出所:総務省「科学技術研究調査」各年版より作成。 国公立大学+ 私立大学 国営・公営・独法研究機関 公営企業公庫他(*) 合計 2013年 2017年 2013年 2017年 2013年 2017年 2013年 2017年 2017年/2013年(倍) 全産業 47122 55317 9639 15118 63446 63487 120207 133922 1.1 農林水産業 8 19 1 0 0 16 9 35 3.9 製造業 40809 34411 7991 13163 24465 17008 73265 64582 0.9 食料品製造業 1349 4440 210 615 449 348 2008 5403 2.7 パルプ・紙・紙 加工品製造業 74 93 9 92 3 2 86 187 2.2 金属製品製造業 75 261 27 81 53 12 155 354 2.3 はん用機械 器具製造業 310 614 9 98 40 21 359 733 2 業務用機械 器具製造業 1162 1885 417 2171 461 784 2040 4840 2.4 情報通信機械 器具製造業 1269 1972 284 1050 242 366 1795 3388 1.9 電気・ガス・熱 供給・水道業 931 1565 399 158 21152 28942 22482 30650 1.4 運輸業, 郵便業 347 550 64 119 11201 15036 11612 15705 1.4 卸売業 667 13447 12 690 293 0 972 14137 14.5
卸売業(14.5倍)、電気・ガス・熱供給・水道業(1.4倍)、運輸・郵便業 (1.4倍)での伸びが顕著であった。 これらを要約すると、2013年以降、産業から見た場合の公的セクターと の間の研究資金の流れにおいて、外部の公的資金の減少と産業側が資金源 となる外部への支出の増加が生じている。ここからは、伝統的な産業政策 として行われてきた公的セクターによる民間への資金配分という形での研 究助成が減少する一方で、産業が外部に支出した資金によって大学や公的 研究機関の持つ知的財産や人材を活用するというタイプの研究活動が増加 するという傾向が読み取れ、政府の補助金などによる資金的支援から民間 のイニシアティブの重視への転換という政策の移行の一端がうかがえる。 (2)共同研究への参加に関する民間企業の態度 次に、他機関との研究活動の連携に関する産業側の取り組みに関して、 文部科学省「民間企業の研究活動に関する調査」における調査結果を概観 する。それによれば、過去3年間に民間を含む他の組織と連携して共同研 究を行ったと回答した企業の割合を業種別に見ると、全産業、製造業とも 平均約75%であり、各産業では表3のようになっている。回答企業数自体 が少ない印刷・同関連業の他には、公益事業としての性格が強い電気・ガ ス・熱供給・水道業および運輸業・郵便業や学術・研究開発機関の他、医 薬品製造業、電子応用・電気計測機器製造業、総合化学工業、建設業、輸 送用機械器具製造業で高率となっている。特に連携先として国内の大学等 を挙げた割合では、全産業、製造業ともおよそ75%であり、民間部門との 連携を含めた場合とほぼ同水準だった。また割合が高い業種の傾向も同様 であった。国内の公的研究機関等との連携を挙げた割合は全体で約50%と これよりも低めだが、やはり同様の傾向が見られた。 このように、民間を含む他の組織との連携全体と大学と公的研究機関に 限った場合のいずれにおいても、共同研究等に積極的な業種は医薬品、化
表3 研究活動の連携の有無に関する回答 (2016年における過去3年間の実績) (単位:件) 民間を含む 他組織との間で 国内の大学等との間で 国内の公的研究機関との間で (参考)研究費/ 売上高 (*) 有効 回答 実施した(%)比率 有効回答 した実施(%)比率 有効回答 実施した(%)比率 全体 1711 1294 75.6 1290 974 75.5 1290 656 50.9 3.33 農林水産業 3 × 3 × 3 × 2.19 鉱業・採石業・砂利採取業 2 × 2 × 2 × 0.36 建設業 92 80 87 80 66 82.5 80 42 52.5 0.28 製造業計 1397 1054 75.4 1051 785 74.7 1051 529 50.3 4.25 食料品製造業 115 88 76.5 88 69 78.4 88 49 55.7 1.02 繊維工業 30 24 80 24 18 75 24 15 62.5 3.12 パルプ・紙・紙加工品製造業 24 14 58.3 14 9 64.3 14 8 57.1 0.87 印刷・同関連業 4 4 100 4 4 100 4 4 100 0.99 医薬品製造業 64 56 87.5 55 44 80 55 32 58.2 10.04 化学工業 207 171 82.6 171 137 80.1 171 97 56.7 4.25 総合化学工業 101 86 85.1 86 74 86 86 50 58.1 3.93 油脂・塗料製造業 37 27 73 27 17 63 27 10 37 4.4 その他の化学工業 69 58 84.1 58 46 79.3 58 37 63.8 4.87 石油製品・石炭製品製造業 16 12 75 12 10 83.3 12 10 83.3 0.31 プラスチック製品製造業 82 59 72 59 36 61 59 25 42.4 2.35 ゴム製品製造業 26 19 73.1 19 12 63.2 19 7 36.8 4.01 窯業・土石製品製造業 51 40 78.4 40 32 80 40 19 47.5 2.59 鉄鋼業 49 41 83.7 41 33 80.5 41 20 48.8 1.59 非鉄金属製造業 30 23 76.7 23 14 60.9 23 12 52.2 1.93 金属製品製造業 64 44 68.8 44 33 75 44 20 45.5 1.4 はん用機械器具製造業 53 33 62.3 33 22 66.7 33 13 39.4 3.73 生産用機械器具製造業 128 88 68.8 88 65 73.9 88 38 43.2 4.07 業務用機械器具製造業 65 45 69.2 45 36 80 45 24 53.3 8.85 電子部品・デバイス・電子回路製造業 65 43 66.2 43 32 74.4 43 19 44.2 5.19 電気機械器具製造業 120 94 78.3 94 75 79.8 94 50 53.2 5.67 電子応用・電気計測機器製造業 30 26 86.7 26 23 88.5 26 17 65.4 7.39 その他の電気機械器具製造業 90 68 75.6 68 52 76.5 68 33 48.5 5.43 情報通信機械器具製造業 55 38 69.1 37 24 64.9 37 15 40.5 6.72 輸送用機械器具製造業 100 85 85 84 55 65.5 84 32 38.1 4.99 自動車・同付属品製造業 81 68 84 67 43 64.2 67 24 35.8 5.11 その他の輸送用機械器具製造業 19 17 89.5 17 12 70.6 17 8 47.1 3.12 その他の製造業 49 33 67.3 33 25 75.8 33 20 60.6 1.53 電気・ガス・熱供給・水道業 16 15 93.8 15 14 93.3 15 10 66.7 0.26 情報通信業 69 × 41 × 41 × 2.53 通信業 5 3 60 3 × 3 × 3.13 放送業 1 × 0 - 0 - 0.08 情報サービス業 61 36 59 36 25 69.4 36 12 33.3 2.33 インターネット付随サービスおよび上記以外の情報通信業 2 × 2 × 2 × 0.62 運輸業・郵便業 13 12 92.3 12 8 66.7 12 4 33.3 0.32 卸売業・小売業 53 34 64.2 34 20 58.8 34 18 52.9 0.36 金融業・保険業 1 × 0 - 0 - × 学術研究, 専門・技術サービス業 56 45 80.4 44 39 88.6 44 31 70.5 14.45 学術・開発研究機関 25 23 92 22 20 90.9 22 16 72.7 76.87 専門サービス業(他に分類されないもの) 8 6 75 6 6 100 6 4 66.7 1.48 技術サービス業(他に分類されないもの) 23 16 69.6 16 13 81.3 16 11 68.8 1.37 サービス業(他に分類されないもの) 7 6 85.7 6 5 83.3 6 2 33.3 0.53
学、エレクトロニクス関連など研究開発集約的なハイテク産業や、公的セ クターとの結びつきが強い公益事業であり、前述の受入、外部支出研究費 の伸びの動向と同様の傾向が見られる8 ) 。
3.オープン・イノベーションという視点から見た産業の研究開
発活動
3.1.オープン・イノベーションの概念と共同研究活動 (1)オープン・イノベーションの概念 平成29年版の「科学技術白書」において政府が強調しているように、今 日では顧客ニーズの多様化、製品ライフサイクルの短期化、グローバル化 による競争構造の変化等に伴い、研究開発をめぐる環境も大きく変化して いる。すなわち、情報通信技術の急速な発展やグローバルな競争の激化の 結果、産業部門の研究開発に対してもより迅速な対応が求められている。 そのような環境の変化に直面して注目を集めているのがオープン・イノ ベーションという概念であり、科学技術面における政府の産業政策におい てもこれを支援する必要性が強調されている。同白書においては、オープ ン・イノベーションの定義としてよく用いられるチェスブロウのそれに 従って、従来のような、製品のアイディアを実現するための基礎研究から 製品開発までを自社内および従来からの関係を有する企業や大学で行う自 前主義での技術革新(クローズド・イノベーション)の限界を指摘し、技 (表3のつづき) 注)(*)社内使用研究費対売上高比率(2016年、%) 産業名斜字の数値は下位の産業分類から作成したもの。 数値欄の×は非公表、-は該当なし。 研究費対売上高比率は総務省「科学技術研究調査」2017年調査による。このうち「全体」には金融 業・保険業を含まず、「卸売業・小売業」の項は卸売業のみの数値。 出所:文部科学省「民間企業の研究活動に関する調査」2018年版より引用、作成。術革新の実現において「自社以外の技術を活用する」ことの重要性を強調 している9 )。チェスブロウによれば、企業が技術革新を続けるためには企 業内部のアイディアと外部のアイディアを用い、企業内部または外部にお いて発展させ商品化を行う必要がある。オープン・イノベーションは企業 内部と外部のアイディアを有機的に結合させ、価値を創造することであり、 既存の企業以外のチャンネルも経由して市場にアクセスしてアイディアを 商品化し、付加価値を創造する10 ) 。 市場での競争のために必要とされる技術水準とそのために企業が自前で 用意することができる研究開発資源の水準との間にギャップが存在する状 況でも、十分な時間がある場合には自身の技術水準の向上を自前の資源を 用いて行う選択肢もとりうる。この場合、研究開発投資の増加が抜本的な 技術上のブレイクスルーを発生させ、これが新製品の登場をもたらし、そ の結果既存のビジネスモデルによる売り上げと利潤の増加が生じ、さらな る研究開発投資へとつながるという好循環が発生しうる。そこでは研究プ ロジェクトはその企業の境界の内側で開発に至り、市場化される11 ) 。しか し、競争のスピードが上がり、また市場が要求する技術水準が高まる一方 で自前でそれに対応する余裕がなくなった現代では、既存の研究開発体制 や企業集団の枠を超えて必要な資源を探し出し、対応する戦略が必要とな る。すなわち研究計画は企業の境界の外側で市場化されることによって実 用化される12 )。 内部の資源と外部の資源を併用するとき、そこには既存の体制の外部に 存在する技術知識や資源を内部での研究開発に際して活用するというケー スと、反対に内部に存在しながら他の資源の不足で活用ができていない知 識や資源を体制外部の活動で活用し、成果を利用するというケースがあり、 いずれにおいても新たな成果の獲得が考えられる。同白書にもあるように、 今日、企業を主体とするオープン・イノベーションについて、大学や公的 研究機関およびこれらを源流とするベンチャー企業の役割に注目して、政
策的支援としてこれらを活用することが試みられている。 (2)企業内部と外部における研究開発活動の補完性 このように、技術革新の速度の増大と対応の迅速化の必要に直面したと き、そこに追いつくために自前の資源の限界を補完する手段として、共同 研究や委託研究による大学および公的研究機関との連携の強化があげられ る。異なったイノベーションのメカニズムの間の補完性と代替性に関して は様々な研究がありその結論も様々だが13 )、企業の内部と外部という異な る場所において行われる異なったタイプの研究活動の間の補完関係につい て、例えばHagedoorn and Wang[2012]は、イノベーションの成果を作 り出すための自社内と外部における研究開発活動の間の選択に関する企業 の戦略という観点から、以下の分析を行っている。その基本的なモデルは、 研究開発投資額およびその2乗、共同研究などによって社外からの資金提 供を受けた場合に1とするダミー変数、このダミー変数と研究開発投資額 に関する変数の積、および企業規模や特性に関するコントロール変数を説 明変数とし、これらによって特許件数で表したイノベーション成果を説明 するものであり、負の二項分布モデルを用いたパネル分析が試みられた14 ) 。 それによれば、製薬会社のバイオテクノロジー関連技術に対してこのモデ ルを適用した結果、社内と外部の研究開発活動は、社内の研究開発投資の 水準が高い場合に補完的な関係を持ち、反対に水準が低い場合にはそれに とって代わる戦略上の選択肢になるということが明らかになった15 ) 。 3.2.知識の探索と利用の間の選択とオープン・イノベーション 本稿ではこのような異なる研究開発戦略の間の関係について、自身の活 動による新たな知識の探索と既存の知識の新たな利用や外部に開かれた研 究成果の利用との間の補完性という観点から検討する。
イノベーションによって企業価値を創造するための方法として、「探索 (exploration)」と「利用(exploitation)」の2点に注目することができる。
Mudambi and Swift[2011]などでの用語の使用法に従えば、利用とは企 業が従来から取り組んできた分野の知識ベースを有効にするための活動、 探索とは企業が有する知識のコアの部分から相対的に隔たった領域におけ る新しい知識にかかわる活動と定義される。そしてこの2つが同時に行わ れている企業ほど企業価値の創造は良好に機能するとされる。「両手利き の(ambidextrous)」企業と呼ばれるこのような企業は、自身の経営資源 を次の大きなチャンスを発見することと、従来からの資産・能力の価値を 最大化する力を保つことの2つに同時に使う16 )。 この利用と探索の関係については、「産業のクロックスピード」と呼ば れる産業の変化の尺度に焦点を当てる見方がある。これは製品や工程の陳 腐化の速さで定義され、このスピードが遅い相対的に安定した産業で活動 する企業では柔軟性よりも効率性に重きが置かれる。反対にこのスピード が大きな産業では大きな変化が続き、そのもとで企業は、より急速、複雑、 あいまい、そして予想困難な新たなチャンスの発生に対応できるように、 柔軟であることを求められる。そして、変化の速度が大きな市場には価値 あるビジネスチャンスそのものが相対的に頻繁に存在し、素早く行動する 企業はこの優れた果実をより多く確保することができる17 ) 。 企業の研究開発の遂行能力と市場が求める技術変化のスピードとの間の 乖離を埋めるためにオープン・イノベーションが有効であるという論理の もとでは、Mudambi and Swift[2011]などが検討した利用と探索の関係 はどのように位置づけることができるだろうか。チェスブロウなどが用い る意味での利用と探索の場合、市場の変化の激しさに対応して、急激な変 化に対して単一の企業では対応できないときに外部資源が利用され、外部 支出研究費や研究活動の連携件数などの増加で測られるオープン・イノ ベーションが進展する。一方、Mudambi and Swift[2011]における利用
と探索を頻繁に切り替える両手利きの企業もまた、技術や環境の変化が急 速な市場への対応のひとつであり、十分な研究資源の投入を行う意思決定 力とそのための体力を持つ。両者で「利用」および「探索」という用語の 使い方は同じではないが、変化に対する内部の探索活動の活発化による対 応と外部資源の利用の活発化による対応が同時に発生しうることから、 オープン・イノベーションは企業自身の活発な研究活動と両立すると考え られる18 ) 。
4.実証分析:共同研究と企業業績の相乗的効果
4.1.検討するモデルと仮説 本稿ではオープン・イノベーションを両手利きの技術革新という観点か ら検討することで、大学や研究機関という研究活動の主体と産業界におけ る研究開発活動との間にある関係を考えてみる。外部との共同研究や研究 の委託・受託に積極的な産業においては、チェスブロウの意味での外部資 源の利用、すなわちMudambi and Swift[2011]の意味での既存の分野以 外での探索活動の活発化を伴うと考えられる。ここから、両者の間には Hagedoorn and Wang[2012]が成果産出との間に見出したものと同様な 補完的な関係があるとの仮説を立てることができる。本稿ではこれについ て、研究活動の連携の有無とその大きさ、自身の研究開発活動の大きさ、 および企業業績の間の相互関係に注目して、以下のいくつかの仮説を検討 する。 (1)売上高変動および共同研究の直接的効果 まず、売上高変動など企業の経営状況や市場規模の変動が彼らの研究開 発活動に関する意思決定に直接影響を及ぼすという点について、次の仮説を想定する。 ●仮説1「売上高が大きい企業ほど研究開発活動に積極的である。」 これは企業業績と研究開発活動に関する古典的なSchmookler[1966] などの仮説に相当するもので、業績が向上している企業ではリスクが高い 事業に対しても支出の余地が高まることから、両者の間に正の相関が予想 される。これは、公的な研究助成や産学連携にかかわる資金の流れによっ てこの関係がどう変わるかを見る各仮説を検証するうえで、比較の対象と する仮説である。しかしこれについては、売上高の成長率が高い好況期に は新しい技術を求めるよりも利潤獲得の機会損失を避けるために設備投資 が優先される、という可能性も指摘されている19 )。その結果、統計上はイ ノベーションへの投資やその実現と景気の動きとの間に正の相関が存在し ながらも、両者の関係が逆サイクル(counter-cyclical)となるような関係 が背後に存在する可能性がある20 ) 。 また、共同研究の直接効果を検討するために、受入研究費や外部支出研 究費など外部との連携を示す要素を説明変数としてその係数に直接注目す る、以下の仮説を検討する。 ●仮説2「外部との共同研究や連携に積極的な企業ほど研究開発活動に積 極的である。」 これらは研究支出に対する国や地方公共団体からの助成であるため、両 者の関係は正であると予想される。また成果産出に関してHagedoorn and Wang[2012]が見出したような補完的関係は、研究への投入についても 成立する可能性がある。 (2)両者の相乗的関係 一方、これらの要因には、単独で研究開発活動に関する意思決定に影響 するだけでなく、Francois and Lloyd-Ellis[2003]やFabrizio and Tsolmon [2014]のモデルが想定したような相乗的な影響も考えられる。そこで、
これについて次の仮説を検討する。 ●仮説3「外部との共同研究や連携に対する企業の積極性は売上高と研究 開発活動の間の関係に影響を及ぼす。」 これは外部との研究活動の連携を示す変数と売上高変動の相乗効果に注 目するもので、共同研究や連携への積極性が研究開発活動の活発さに直接 影響するだけでなく、売上高の伸びが研究開発活動を活発化させるという 仮説1に示した関係にも影響を及ぼすという仮説である。受託研究や研究 費の受け入れが補助金としての性質を持つ場合や、外部での研究活動への 参加が新たな研究活動の機会を増やす場合、売上高の成長によって生まれ た研究開発活動の新たな原資が利用される機会が拡大し、その結果研究開 発活動の促進や特許などで測った産出物の増大に結びつく可能性があり、 このとき売上高成長の効果はいっそう強められると予想される。これに対 して、補助金の交付や産学連携という政策が産業部門における研究開発活 動のリスクやコストを低下させ、収益とのバランスに関する企業の認識が 変化するならば、研究開発活動がリスクや企業業績に左右されにくい継続 的なものとなることもありうる。その場合、仮説1の関係が成立しながら、 同時に売上高自体が持つ正の効果を打ち消す方向の動きが予想される。こ れはBarlevy[2007]などが指摘したような、業績拡大の状況下において はその研究開発促進効果が弱まり、業績悪化の状況下では研究開発抑制効 果が弱まるという、前述の逆サイクルの関係に相当する。このように、こ の仮説には相反する2つの可能性がある。 仮説 3 a「外部との共同研究や連携に積極的な企業ほど、その売上高と 研究開発活動の関係は強まり、同じ売上高の変動で生じる研 究開発支出の変動は大きくなる。」 仮説 3 b「外部との共同研究や連携に積極的な企業ほど、その売上高と 研究開発活動の関係は弱まり、同じ売上高の変動で生じる研 究開発支出の変動は小さくなる。」
(3)外部との研究活動の連携と産業の技術水準の相乗的関係 本稿ではまた、技術の変化のスピードとオープン・イノベーションの相 乗効果に関する次の仮説についても検討する。 ●仮説4「技術革新への積極性が高い産業ほど、外部との共同研究や連携 と自身の研究開発活動の間の関係が強まる。」 これは共同研究・委託研究と革新性に関する変数の相乗的効果に注目す るもので、技術革新が活発でその蓄積が多い産業ほど共同研究などの連携 によって研究開発活動が活発化しやすいという仮説である。産業や社会に おける技術革新が急速に進むことへの対応としてオープン・イノベーショ ンが重要であるという考え方に従えば、変化が急速な産業における共同研 究はそうでない産業に比べて仮説2のような関係をより強く持つと考えら れる。そこで本稿ではこれについて、両者の相乗的な変動に関する項を変 数に加え、その係数が正であれば、技術革新に積極的な産業では共同研究 と産業の研究開発の関係がより強いと解釈する。 4.2.データと定式化 本稿ではこれらの仮説について、企業の経営の状況と研究開発活動に関 する産業別集計量のパネルデータを用いて検討する。このため、特定の産 業における個票データに注目するHagedoorn and Wang[2012]が用いた、 個々の企業が共同研究を行っているか否かというダミー変数ではなく、産 業が受け入れ、支出した金額および外部の機関との連携への積極性に関す る、以下に述べるいくつかの指標に注目する。 (1)利用するデータ 実証分析に際して、本稿では共同研究や委託研究などに伴う企業の研究 費の授受に関する変数として、自前の研究資源だけでなく外部の資源を活
用する企業の研究開発活動を反映する以下のデータを用いる。 ①企業が政府・地方公共団体、(私立を含む)大学、公的研究機関などか ら受け取る「受入研究費」、大学および公的研究機関に支出する「外部 支出研究費」、および両者の合計。 上記においては、両者の合計によって、研究活動が実施される場所を問 わず、企業、大学、公的研究機関における互いの資源を利用した活動その ものの活発さを反映させる。これらについては前述の科学技術研究調査に おける産業ごとの集計値を用い、いずれも各産業の調査対象企業数の違い による差異を修正して1社あたりの金額をデータとすることで検討する。 また、官民の区別はないが、同様のデータは経済産業省「企業活動基本 調査」による次のものも利用可能であり、やはり1社あたりの金額をデー タとして用いる。 ②各産業における外部からの「受託研究費」、外部への「委託研究費」、お よび両者の合計(関連企業との間の授受を除く)21 )。 さらに、共同研究などによる外部機関との連携の活発さの指標として、 前述の民間企業の研究活動に関する調査による次のデータも用いる。 ③最近3年間に他の組織と連携をしたと回答した企業の割合22 ) 。 一方、企業の研究開発に関する意思決定に対して大きな影響を及ぼし、 また仮説において上記の要因が効果を持つ経路とされた企業の経営状況に ついては、企業活動基本調査における当該産業の1社あたり売上高の変化 率を変数とする。 そして、これらが影響を及ぼすと考えられる、産業部門における研究開 発活動の活発さの指標として、研究規模そのものに注目した当該産業の1 社あたり研究開発支出、および企業が支払った費用のうち研究開発活動に 対して支払われる割合に相当する当該産業の研究開発支出対営業費用比率 を用いる23 )。 なお、これらの変数間の関係は当該産業に属する企業の平均規模や収益
性などにも左右されるため、各産業が持つ特性の差異を考慮するコント ロール変数として、後述のような産業の平均的な収益性、企業規模、流動 資産と長期負債の状況を用いる(いずれも企業活動基本調査による)。 (2)定式化 これらの変数を結び付ける定式化として本稿では、Fabrizio and Tsolmon[2014]やAghion et al.[2012]などで用いられているモデルを 利用する。これは注目する変数と売上高成長率に加えて、両者の積の項を 説明変数とすることで両者の相乗的効果を見るもので、この点において共 同研究と特許生産件数の間の関係についてHagedoorn and Wang[2012] が採用したモデルと共通する。ベースとなる計測式は 年の 企業の研究
開発投資の自然対数値の1階階差を変数 、1階の階差をとるコント
ロール変数を 、当該 産業の産出の変化を として、
と書かれる24 )
。Fabrizio and Tsolmon[2014]は当該企業が属する産業の
技術の陳腐化率 や特許件数 を用いて、技術の変化の速度が大 きな市場ほどそこに属する企業は研究開発投資に積極的になるという結果 を得た25 )。本稿ではこれらに相当するものとして共同研究への参加の積極 性に関する指標を用いる26 ) 。計測期間は2012年~ 2016年とし、各年につい て企業活動基本調査の公表値における産業分類からなる5年間のパネル データを用いる27 ) 。 4.3.計測結果 (1)外部との研究費の授受と社内使用研究費 まず、対民間部門を含む外部との研究活動の連携の指標として1社あた りの外部からの受託研究費JUTAKU、1社あたりの外部への委託研究費
ITAKU、委受託の合計額IJUKEI、および外部と連携した活動を行った企 業の比率RRENKEI を用い、これら各要因と1社あたり売上高変化率 GSALES および両者の積を説明変数として、1社あたり社内使用研究開発 支出変化率GRE または対営業費用比率変化率GREC を被説明変数とする モデルを検討した。その際のコントロール変数としては、Greve[2003] における方法を参考にしつつ、1社当たり従業員数変化率GEMPL(企業 規模を反映)、総資産経常利益率変化率GPROF(収益性を反映)、負債比 率(負債/資産)変化率GDEBTと流動比率(流動資産/負債)変化率 GLIQ(長短の資金調達の状況を反映)を用い、いずれも依拠したモデル に従って、当期およびラグ付きのデータを変数とした28 )。計測結果を表4 に示す29 ) 。 まず、後述の表5などに示す結果も含めて、どの計測においても変数 GSALES の係数は有意かそれに近い正の値であり、Barlevy[2007]など の議論はあるにしても仮説1自体は認められた。そこで、研究開発活動の 変動が売上高の変動と同じ方向(順サイクル、Barlevy[2007]の用語で はpro-cyclical)に結び付いていることを前提として、本稿で検討する各要 因がこれをどちらの方向に修正するかを仮説3として検討する。なお仮説 2については、1社あたり受託研究費について有意な正の値が計算され ((4.1)(4.2)式)、外部からの受託研究が多い産業ほど研究開発費の成長率 が高いという関係がみられたが、それ以外の研究連携の指標については有 意ではなかった。 仮説3に関しては、売上高と社外との研究連携に関する変数の積の項の 係数に注目すると次のような関係が見出された。すなわち、変数GSALES ×JUTAKU、GSALES×IJUKEI、およびGSALES×RRENKEI について は1%水準で、GSALES ×ITAKU については研究費対費用比率を被説明 変数に用いた場合に5%水準でいずれも有意な負の関係が観察された。こ の計測結果は、民間どうしのものも含めて水準で測った社外との研究の連
表4 産業による研究費の受託・委託と研究開発支出 (1)対産業部門を含む委託研究および受託研究 (2)対産業部門を含む委託・受託研究合計額および連携状況 注)計測期間は2012年~ 2016年。ただしRRENKEI を変数とした(4.7)(4.8)式については2014年~ 2016 年である。 ( )内は t 値。**は1%水準、*は5%水準、+は10%水準で推定値が有意であることを示す。 Hausman testの欄は変量効果モデルを帰無仮説とした検定のカイ2乗値(かっこ内は自由度)と p値。 帰無仮説が棄却されたものについては固定効果モデルの結果を記し、それ以外については変量効果 モデルの結果を記した。 以下の各表(表5~表7)も同じ。 (4.1) (4.2) (4.3) (4.4)
被説明変数 GRE GREC GRE GREC
説明変数 係数 (t値) 係数 (t値) 係数 (t値) 係数 (t値) 固定効果モデル 固定効果モデル 固定効果モデル GDEBT -0.545 (-0.980 ) -0.555 (-1.003 ) -0.368 (-0.830 ) -0.289 (-1.078 ) GLIQ -0.707 (-1.654 ) -0.671 (-1.623 ) -0.358 (-1.011 ) -0.191 (-0.836 ) GEMPL 0.831 ( 1.695 ) 0.793 ( 1.582 ) -0.521 (-0.994 ) -0.431 (-1.356 ) GPROF 0.015 ( 0.215 ) 0.034 ( 0.523 ) -0.056 (-0.725 )-5.96E-03(-0.122 ) GSALES 1.153 ( 3.291 **) 0.184 ( 0.533 ) 1.790 ( 4.640 **) 0.718 ( 3.515 **)
GSALES×JUTAKU -6.26E-03(-3.489 **)-6.42E-03(-3.532 **) … …
JUTAKU 3.83E-04( 3.092 **) 3.83E-04( 3.139 **) … …
GSALES×ITAKU … … -8.15E-04(-1.374 )-1.03E-03(-2.013 *)
ITAKU … … 1.80E-04( 1.479 ) 2.71E-05( 0.354 )
GDEBTt-1 0.408 ( 0.920 ) 0.409 ( 0.879 ) -0.386 (-1.561 ) -0.458 (-1.730 )
GLIQt-1 0.223 ( 0.411 ) 0.271 ( 0.489 ) -0.116 (-0.426 ) -0.073 (-0.353 )
GEMPLt-1 0.361 ( 2.053 *) 0.361 ( 2.086 *) 0.033 ( 0.304 )-5.75E-03(-0.062 )
GPROFt-1 -2.07E-03(-0.041 )-1.41E-03(-0.028 ) -0.044 (-0.824 ) -0.027 (-0.691 )
定数項 2.25E-03( 0.105 )
自由度修正済み決定係数 0.774 0.164 0.676 0.176
Hausman test 10.794(3)(p=0.0129) 19.966(3)(p=0.000)15.871(6)(p=0.0145) 9.5479(6)(p=0.145)
標本数 59 59 136 136
(4.5) (4.6) (4.7) (4.8)
被説明変数 GRE GREC GRE GREC
説明変数 係数 (t値) 係数 (t値) 係数 (t値) 係数 (t値) GDEBT -0.404 (-1.150 ) -0.411 (-1.171 ) -0.299 (-0.923 ) -0.279 (-0.862 ) GLIQ -0.166 (-0.563 ) -0.159 (-0.539 ) 0.063 ( 0.232 ) 0.095 ( 0.349 ) GEMPL -0.456 (-1.230 ) -0.503 (-1.354 ) -0.273 (-0.803 ) -0.316 (-0.929 ) GPROF -0.076 (-1.344 ) -0.058 (-1.018 ) 0.078 ( 1.346 ) 0.105 ( 1.812 +) GSALES 1.920 ( 8.162 **) 0.938 ( 3.983 **) 7.402 ( 5.687 **) 6.463 ( 4.970 **)
GSALES×IJUKEI -1.28E-03(-2.998 **)-1.26E-03(-2.956 **) … …
IJUKEI -1.43E-05(-0.230 )-2.20E-05(-0.353 ) … …
GSALES×RRENKEI … … -8.333 (-4.450 **) -8.389 (-4.484 **)
RRENKEI … … -0.281 (-1.394 ) -0.271 (-1.347 )
GDEBTt-1 -0.318 (-0.815 ) -0.295 (-0.754 ) -0.072 (-0.174 ) -0.051 (-0.123 )
GLIQt-1 -0.287 (-1.127 ) -0.246 (-0.965 ) 0.377 ( 1.128 ) 0.389 ( 1.164 )
GEMPLt-1 4.56E-03( 0.038 ) 3.17E-03( 0.027 ) 0.170 ( 1.219 ) 0.181 ( 1.300 )
GPROFt-1 -0.036 (-0.822 ) -0.032 (-0.737 ) -0.098 (-1.859 +) -0.096 (-1.838 +)
定数項 0.033 ( 1.109 ) 0.037 ( 1.237 ) 0.225 ( 1.543 ) 0.219 ( 1.501 )
自由度修正済み決定係数 0.797 0.205 0.641 0.188
Hausman test 0.322(2)(p=0.851) 0.365(2)(p=0.833) 0.400(8)(p=0.999) 0.465(8)(p=0.999)
表5 大学および公的研究機関との受入および外部支出研究費と研究開発支出
(1)公的部門からの受入研究費
(2)公的部門への外部支出研究費および授受の合計額
(5.1) (5.2) (5.3) (5.4)
被説明変数 GRE GREC GRE GREC
説明変数 係数 (t値) 係数 (t値) 係数 (t値) 係数 (t値) GDEBT -0.389 (-1.323 ) -0.385 (-1.314 ) -0.394 (-1.336 ) -0.391 (-1.329 ) GLIQ -0.353 (-1.563 ) -0.343 (-1.527 ) -0.367 (-1.615 ) -0.359 (-1.584 ) GEMPL 0.116 ( 0.433 ) 0.103 ( 0.386 ) 0.111 ( 0.416 ) 0.099 ( 0.369 ) GPROF 0.023 ( 0.481 ) 0.056 ( 1.189 ) 0.021 ( 0.432 ) 0.054 ( 1.138 ) GSALES 1.423 ( 7.758 **) 0.439 ( 2.403 *) 1.385 ( 7.654 **) 0.399 ( 2.214 *) GSALES×UKEIRE -0.056 (-2.528 *) -0.059 (-2.675 **) … …
UKEIRE -2.00E-03(-0.494 )-2.01E-03(-0.498 ) … …
GSALES×UKEIRE2 … … -0.075 (-2.366 *) -0.079 (-2.513 *)
UKEIRE2 … … -1.53E-03(-0.248 )-1.65E-03(-0.269 )
GDEBTt-1 -0.787 (-2.539 *) -0.760 (-2.460 *) -0.795 (-2.559 *) -0.769 (-2.481 *)
GLIQt-1 -0.377 (-1.692 +) -0.363 (-1.634 ) -0.389 (-1.748 +) -0.376 (-1.693 +)
GEMPLt-1 0.021 ( 0.227 ) 0.026 ( 0.281 ) 0.026 ( 0.282 ) 0.031 ( 0.337 )
GPROFt-1 -0.032 (-0.779 ) -0.028 (-0.670 ) -0.030 (-0.718 ) -0.025 (-0.604 ) 定数項 4.38E-03( 0.237 ) 4.67E-03( 0.254 ) 2.00E-03( 0.112 ) 2.40E-03( 0.135 )
自由度修正済み決定係数 0.503 0.077 0.501 0.073
Hausman test 1.299(6)(p=0.972) 1.766(6)(p=0.940) 2.595(6)(p=0.858) 2.716(6)(p=0.844)
標本数 254 254 254 254
(5.5) (5.6) (5.7) (5.8)
被説明変数 GRE GREC GRE GREC
説明変数 係数 (t値) 係数 (t値) 係数 (t値) 係数 (t値) GDEBT -0.199 (-0.676 ) -0.188 (-0.639 ) -0.266 (-0.916 ) -0.256 (-0.883 ) GLIQ -0.157 (-0.689 ) -0.142 (-0.625 ) -0.226 (-1.011 ) -0.211 (-0.948 ) GEMPL -0.093 (-0.348 ) -0.113 (-0.425 ) -0.011 (-0.042 ) -0.030 (-0.115 ) GPROF 0.012 ( 0.246 ) 0.044 ( 0.940 ) 0.019 ( 0.393 ) 0.052 ( 1.095 ) GSALES 1.449 ( 7.796 **) 0.461 ( 2.487 *) 1.477 ( 7.938 **) 0.493 ( 2.654 **) GSALES×GAIBU -0.038 (-2.412 *) -0.038 (-2.459 *) … …
GAIBU -7.11E-04(-0.409 )-8.12E-04(-0.470 ) … …
GSALES×GOKEI … … -0.030 (-2.884 **) -0.031 (-2.986 **)
GOKEI … … -7.54E-04(-0.567 )-8.34E-04(-0.630 )
GDEBTt-1 -0.746 (-2.391 *) -0.719 (-2.309 *) -0.736 (-2.373 *) -0.708 (-2.289 *)
GLIQt-1 -0.334 (-1.485 ) -0.323 (-1.436 ) -0.325 (-1.450 ) -0.311 (-1.392 )
GEMPLt-1 0.023 ( 0.244 ) 0.028 ( 0.298 ) 0.020 ( 0.212 ) 0.025 ( 0.263 )
GPROFt-1 -0.062 (-1.476 ) -0.058 (-1.381 ) -0.053 (-1.271 ) -0.049 (-1.178 ) 定数項 3.23E-03( 0.186 ) 3.96E-03( 0.230 ) 3.52E-03( 0.199 ) 4.27E-03( 0.243 )
自由度修正済み決定係数 0.501 0.072 0.506 0.082
Hausman test 5.509(3)(p=0.636) 8.389(6)(p=0.211) 0.881(5)(p=0.972) 0.805(5)(p=0.977)
携が活発な産業ほど、研究開発活動の変動と売上高成長の加減速との結び つきが弱く、研究開発活動が企業業績の短期的な変化の影響を受けにくい という、仮説3b の関係が成立することを示唆している30 ) 。 次に、私立大学を含む公的セクターとの間での連携の指標として1社あ たりの受入研究費UKEIRE、1社あたりの外部支出研究費GAIBU、両者 の合計額GOKEI、および受入研究費のうち特に国および地方公共団体か らの受入額UKEIRE2 を用いて、同様のモデルを計測した結果を表5に示 す。 ここからは、前述のとおり仮説1に関して表4と同じ結果が得られた が、仮説2については有意な関係は見られなかった。仮説3に関しては、 受入研究費に関する変数GSALES×UKEIRE と受入および外部支出研究 費の合計に関する変数GSALES×GOKEI について1%水準で、外部支出 研究費に関する変数GSALES×GAIBU について5%水準で有意な負の関 係が観察され、これは、民間どうしのものを含めた表4の場合と同様で あった31 ) 。これらは大学・公的研究機関とは別に国・地方公共団体から得 た研究費に関する変数GSALES×UKEIRE2 についても同様であった。 これらの計測結果は、受入研究費、外部支出研究費の双方について、公 的セクターとの研究の連携が活発な産業ほど研究開発活動の変動と売上高 成長の加減速との結びつきが弱く、企業業績の短期的な変化の研究開発活 動への影響がわずかながらも緩和されるということ、およびこの関係は民 間部門どうしの研究費の委託や受託を含めた場合にも成立するということ を示している。 (2)売上高減少局面への注目 表4、表5における変数GSALES の正の係数は、他の要因を一定とす れば、売上高が減少している局面では研究費も減少するという関係の成立 を示している。そして、売上高と共同研究活動の積の項の係数が反対の符
号を持つ有意な値であるということは、共同研究にはこのような局面にお いてもある程度民間の研究開発支出の低下を緩和するという方向の作用が 存在する可能性を示している。このような関係は、利用するデータを売上 高などで測った後退局面に限定することによってよりはっきりと観察でき るかもしれない。そこで、表5のうち受入研究費((5.1)(5.2)式)と外部 支出研究費((5.5)(5.6)式)について、標本を変数GSALES が負の場合に 限定して、同じ計測を行った結果を表6に示す。その結果、この有意な負 の関係は売上高変化率が負の場合にいっそう明確であり、またこれによっ て全体のあてはまりも改善している様子が認められた。ここから、外部資 金の受け入れと外部への支出のどちらの形であっても、研究活動に関する 外部との資金的な結びつきは自身の研究開発活動の安定化に資する関係に あるが、それは主に厳しい時期における下支えの形で効果を持つことがう かがえた。 表6 売上高変化率が負の場合に限った計測 (6.1) (6.2) (6.3) (6.4)
被説明変数 GRE GREC GRE GREC
説明変数 係数 (t値) 係数 (t値) 係数 (t値) 係数 (t値) 固定効果モデル GDEBT -1.165 (-3.272 **) -1.156 (-3.241 **) -1.698 (-1.590 ) -0.916 (-2.955 **) GLIQ -0.767 (-2.772 **) -0.782 (-2.820 **) -0.609 (-1.246 ) -0.434 (-1.875 ) GEMPL -0.077 (-0.214 ) -0.067 (-0.185 ) 0.014 ( 0.019 ) -0.385 (-1.327 ) GPROF 0.033 ( 0.600 ) 0.070 ( 1.254 ) -0.081 (-0.755 ) 0.027 ( 0.617 ) GSALES 1.909 ( 7.439 **) 0.919 ( 3.575 **) 1.821 ( 3.142 **) 0.898 ( 4.152 **) GSALES×UKEIRE -0.116 (-2.841 **) -0.124 (-3.041 **) … …
UKEIRE -1.01E-02(-1.308 )-1.12E-02(-1.452 ) … …
GSALES×GAIBU … … -0.149 (-1.880 +) -0.079 (-3.140 **)
GAIBU … … -2.46E-02(-1.063 )-6.61E-03(-1.837 +)
GDEBTt-1 -0.740 (-2.334 *) -0.717 (-2.257 *) -0.303 (-0.756 ) -0.517 (-1.921 +)
GLIQt-1 -0.092 (-0.407 ) -0.079 (-0.351 ) 0.193 ( 0.481 ) 0.030 ( 0.154 )
GEMPLt-1 -0.001 (-0.008 ) -0.001 (-0.010 ) -0.040 (-0.285 ) 0.022 ( 0.272 )
GPROFt-1 0.010 ( 0.225 ) 0.011 ( 0.229 ) 0.083 ( 0.688 ) 0.017 ( 0.420 )
定数項 4.50E-02( 1.783 +) 4.71E-02( 1.859 +) 3.40E-02( 1.315 )
自由度修正済み決定係数 0.643 0.232 0.637 0.190
Hausman test 3.142(6)(p=0.791) 2.824(6)(p=0.831) 456.46(8)(p=0.000) 12.358(9)(p=0.194)
(3)外部との研究費の出入りと産業の技術的活発さ さらに、産業の技術革新の水準と外部との研究活動の連携の活発さが研 究開発活動に対して相乗的にもたらす作用について、仮説4を検討した。 変数として産業分類ごとに集計した研究開発支出対売上高比率RDEI と1 社あたり特許保有件数PAT を用い、前述の公的セクターとの間の受入研 究費および外部支出研究費との積を新たな説明変数として行った計測結果 の一部を表7に示す。 結果を見ると、大学や公的研究機関への外部支出研究費と特許保有件数 を変数として組み合わせた場合に、有意な正の推定値が変数GAIBU × PAT について得られた((7.3)(7.4)式)。すなわち、外部支出研究費が大 きくても社内の研究開発支出の伸びが大きいとは限らないが、特許登録件 数で見た技術革新の蓄積が大きい産業ではそのような関係が有意に認めら 表7 産業の技術的活動と受入および外部支出研究費 (7.1) (7.2) (7.3) (7.4)
被説明変数 GRE GREC GRE GREC
説明変数 係数 (t値) 係数 (t値) 係数 (t値) 係数 (t値) 固定効果モデル 固定効果モデル 固定効果モデル 固定効果モデル GDEBT -0.435 (-1.253 ) -0.417 (-1.211 ) -0.387 (-1.539 ) -0.363 (-1.460 ) GLIQ -0.296 (-0.822 ) -0.283 (-0.785 ) -0.372 (-1.540 ) -0.348 (-1.435 ) GEMPL 0.073 ( 0.177 ) 0.059 ( 0.144 ) -0.154 (-0.390 ) -0.173 (-0.443 ) GPROF -8.87E-03(-0.129 ) 0.025 ( 0.369 ) -0.013 (-0.189 ) 0.020 ( 0.289 ) GSALES 1.458 ( 5.178 **) 0.475 ( 1.710 +) 1.392 ( 4.592 **) 0.405 ( 1.358 ) GSALES×UKEIRE -0.047 (-1.647 ) -0.052 (-1.815 +) … … UKEIRE 0.039 ( 2.761 **) 0.042 ( 2.938 **) … … GSALES×GAIBU … … -0.030 (-3.337 **) -0.032 (-3.509 **)
GAIBU … … 1.51E-04( 0.043 )-1.02E-03(-0.275 )
GDEBTt-1 -0.960 (-1.909 +) -0.921 (-1.837 +) -0.451 (-1.564 ) -0.414 (-1.446 ) GLIQt-1 -0.375 (-1.150 ) -0.364 (-1.122 ) -0.028 (-0.150 ) -0.016 (-0.084 ) GEMPLt-1 0.011 ( 0.095 ) 0.015 ( 0.124 ) -0.056 (-0.462 ) -0.053 (-0.436 ) GPROFt-1 -0.087 (-1.592 ) -0.081 (-1.481 ) -0.097 (-1.863 +) -0.093 (-1.783 +) UKEIRE×REI -0.014 (-2.796 **) -0.014 (-2.636 **) … … REI -0.044 (-0.908 ) -0.046 (-0.966 ) … …
GAIBU×PAT … … 1.75E-05( 2.004 *) 1.87E-05( 2.026 *)
PAT … … 1.85E-04( 2.388 *) 1.80E-04( 2.329 *)
定数項
自由度修正済み決定係数 0.415 -0.087 0.458 -0.054
Hausman test 24.954(7)(p=0.001) 19.422(7)(p=0.007) 31.994(4)(p=0.000) 89.310(4)(p=0.000)
れ、技術革新に積極的な産業では企業が資金を持ち出す公的部門との連携 が企業自身の研究活動の積極化を伴うと解釈できる。また公的セクターか らの1社あたり受入研究費と産業分類平均での研究開発費対売上高比率の 組み合わせにおいては、有意な正の推定値が変数UKEIRE について、有 意な負の推定値が変数UKEIRE×RRDI について得られ((7.1)(7.2)式)、 受入研究費が大きいほど研究開発支出の伸びは大きいが、研究集約的産業 ではこの関係は小さくなると読める結果が得られた32 ) 。 ただし、このモデルに関しては表4、表5で検討した他の共同研究に関 する変数と組み合わせた計測も行ったが、そこでは有意性が高くないケー スも見られた。本稿のデータで見る限り、表7に示したような有意な関係 は変数の選択しだいで、必ずしも明確なものとは言えないとも考えられる。 (3)政策的含意 前述のように、産業においては機会費用を考慮した異時点間の研究開発 投資の平準化の可能性がある一方で、現実の研究開発活動は市場の景気や 企業の売上高など短期的な資金制約にさらされ、経済の停滞期には停滞せ ざるを得ない面もある。企業にとってのこのような制約を和らげることが できれば、それは民間の技術水準の引き上げと非製造業を含めた生産性の 向上を目指すという産業政策の意図と整合する。 このような視点に立って、近年の産学連携や共同研究が産業での研究開 発活動に及ぼす効果に関する、今回の実証分析の結果を解釈すると、次の ように要約することができる。まず、各年の研究開発支出の増減が各年の 売上高の増減に大きく左右されるという事実を前提として、外部との資金 の授受およびその合計のどちらの方法で見ても、公的セクターとの研究活 動の連携の水準が高い時期、産業ほど、売上高の増減が研究開発支出の増 減との間に持つ上記の関係を弱める方向の関係が存在する。一方、外部と の研究費用のやり取りによる連携と自身の研究開発支出との間の直接的な
関係は明白ではなかったが、特許件数で見た技術的活動の水準が高い産業 ほど研究開発活動を活性化するという間接的効果を持つケースが見られた。 このように、オープン・イノベーション政策には、公的セクターの技術成 果と資源の活用という政策上の意図とは別に、企業活動の停滞局面におけ る研究開発費の抑制がもたらすイノベーションへの消極化と進歩のペース の鈍化を避けるとともに、研究活動への資源投入のタイミングを機会費用 が大きい拡大局面からそらすことによる最適化という意味での政策的な意 義が存在すると見ることができる。
6.結びに代えて
オープン・イノベーションがもたらす効果と位置付けられる要素の中に は、研究活動における産学連携が公的研究機関や大学の研究活動の支援に なりうるというものの他、企業の側から見た場合、大学や公的研究機関が 持つ基礎研究の知識や研究資源を事業に活用できるというものもある。本 稿では後者の観点から検討を行った。その際の視点の置き方は、個々の組 織の意思決定やプロジェクトの成否の分析に関してではなく、政策として の連携の推進がもたらす資金の流動が、民間企業の研究開発活動の支援と いう面から産業全般に対してどのような効果を生じさせたかを考察すると いうものであった。 民間企業への支援という点から見ると、大学・公的研究機関との連携に よる技術移転を通じた科学技術の発展および産業における成果の利用とい う政策目標はすでに1990年代にはっきりと掲げられていた。民間の共同研 究の促進による産業界の技術開発の活性化とそこへの公的支援という制度 はさらに1960年代初頭にさかのぼり、1970年代の経済成長率の低下に対処 するための技術開発の推進という産業政策において成果を上げてきた。一 方、これらの政策は今日、非競争的産業も対象に含めた生産性の向上と産業競争力の強化という目的のもとで強く推進され、公的セクターが蓄積し た技術知識と研究資源の民間への移転と活用が図られている。本稿の実証 分析の結果によれば、これらの政策手段は、結果的に民間企業にとって景 気や売上高の変動に左右されにくい研究開発環境を作り出しているという 間接的な点から技術革新の成果の産出に貢献するという意味を持つことが うかがえた。 注 1)伊藤・清野・奥野・鈴村[1988]、pp.27-28における記述に基づく。 2)これらの政策については「超LS I 技術研究組合」などの成功例の一方で、 より一般的な視点からは問題もあるといわれる。すなわち、①組織の硬直性 のため、外部の状況が変化して共同研究の必要性が薄れても続行される、あ るいは反対に時期尚早な共同研究がおこなわれることや、研究自体が個別企 業に持ち帰って行われ、共同研究に適切なマネジメントが行われなかったこ と、②特許件数で見て効率の悪い共同研究組合の存在や、必要な研究は組合 の有無にかかわらずいずれは行われたのではないかという疑問など、共同研 究を行わなかったとした場合と比べて本当に成果があったのか、などが指摘 される。伊藤・清野・奥野・鈴村[1988]、pp.28-29を参照。 3)辻本・露木・渡辺[2008]、p.66に基づく。 4)例えば経済産業省の技術研究組合制度の紹介ページにおいて、活用事例と して「産官学連携の器」としての活用の有効性が強調されている。 (https://www.meti.go.jp/policy/tech_promotion/kenkyuu/04_2.html) 5)これらについては、産業競争力強化に関する経済産業省のPRページにおけ る説明を参照。 (http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/) 6)これらは日本経済再生本部『未来投資戦略2018 ―「Society 5.0」「データ駆 動型社会」への変革 ―』p.2 における表現に基づく。 (https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/miraitousi2018_zentai. pdf) 7)ガイドライン本文については、以下の文部科学省の平成28年度の報道発表 (「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」を策定しました) におけるリンク先を参照。 (http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/12/1380114.htm)