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育児期のバースレビュー(出産体験想起)に関する文献レビュー

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Academic year: 2021

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抄 録 目的 産褥早期に出産体験を傾聴するバースレビューは,出産の過程での喪失体験に伴う悲嘆の表出を助け,自己肯 定感を高め,母親役割取得の一助となる.しかし,出産体験の評価は時間とともに変化するため,時期や方法をさら に検討する必要がある.育児期のバースレビューの研究の現状を明らかにし,今後の方向性を検討する. 方法 過去16年間の原著論文を対象に検索し,研究テーマに合致した 7 件を,目的および結果の類似性に基づき分類・ 分析した. 結果 量的研究 1 件,質的研究 6 件であり,調査時期は産後 1 か月までが 3 件, 2 〜 3 ヶ月が 1 件, 1 〜 3 年が 3 件 であった.分類した結果は「語りの実際」と「語りの意義」,「語りの効果」であった.特に産後 1 〜 3 年では,ネガティ ブな内容の語りが多く,否定的な体験は強く記憶に残っていた. 考察 育児期のバースレビューも出産体験での悲嘆の表出を助ける効果があり,特にハイリスク妊娠・分娩の事例で は,産褥早期から育児期にかけて複数回の援助が効果的である. キーワード バースレビュー,育児期,文献レビュー

Key Words birth review,child-rearing stage,literature review

中村 美由紀

Miyuki Nakamura

Review of Literature on Birth Review (Childbirth Recall) of Child-rearing Period

育児期のバースレビュー(出産体験想起)に関する文献レビュー

聖泉看護学研究 Seisen J. Nurs. Stud., Vol. 7. pp.29-34, 2018

資   料

聖泉大学 看護学部 看護学科 Faculty of Nursing Seisen University

E-Mail [email protected]

Ⅰ.緒 言

 バースレビューは,「出産体験の振り返り」あ るいは「産後想起」ともいい,母親に自分の出産 体験を自由に語ってもらい,傾聴を基本的姿勢と して受け止めていく援助である.  出産体験は,幸福な一面と共に,期待や予想と 現実の不一致を感じる体験となることがあり,そ の結果,自己への信頼の低下を招いたり,分娩を 契機にこれまでの人生を振り返り,自己へのわだ かまりが表面化することもある(小川 2006)と いわれている.  Rubin(1967)は,母親役割の願望と矛盾する 状態と出会うと,この心理的過程が改善されるま で母親としての活動に移ることができないとし, 出産の想起による悲嘆作業は,母親役割獲得の出 発点であるとの見解を示した.これを受けてわが 国では,和田ら(1986)が,出産過程の経験を共 有した助産師が,産褥早期をはじめ産褥期間中の 母親の喪失感情を表出するのを援助することは意 義のあることと述べており,分娩時の記憶が欠落 したり誤解していたりする部分を補い,事実を再 構成する機会となることから,我が国でも出産に 立ち会った助産師による産褥早期のバースレ ビューが取り入れられるようになった.  一方,我部山ら(2001)の出産体験の評価に関 する縦断的研究では,出産体験の評価は出産直後 の肯定的評価をピークに時間の経過とともに変化 していくとしており,また,大久保(2015)は出 産の振り返りは,語り手と聴き手の間で物語が構 成されていく,ナラティブの機会としての要素が あると述べている.これらより,出産体験の受け 止め方は,出産後の時間の経過や,その後の育児 の経験や次子の妊娠・出産を計画する中で変化す る可能性があると考えられる.  以上のことから,バースレビューを行う時期や 回数,方法について,これまでの産褥早期の分娩 に立ち会った助産師による援助だけでなく,もっ とフレキシブルに対応する必要があるのではない かと考える.さらに,近年子育て世代包括支援セ ンターの全国展開が進む中,産後ケア事業の心理 的ケアの一環としてバースレビューが行われる例

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ど,育児期におけるバースレビューに関心がもた れてきている.  そこで今回,育児期の母親の心理的援助に役立 てるため, 日本国内における育児期のバースレ ビューの研究の現状を明らかにし,母親の心理的 健康への支援の方法を考える上での基礎的な資料 を得ることを目的として文献検討を行うこととした.

Ⅱ.用語の操作的定義

育児期:一般に第 1 子出生から小学校入学までを いうが,本研究で取り上げるバースレビューを, 出産施設に入院中の産褥早期のバースレビューと 区別するため,育児期を出産施設退院後から小学 校入学までと定義した.  また,本研究の中で,出産体験の振り返りにつ いて,「バースレビュー」「妊娠・出産・育児にま つわるナラティヴ・アプローチ」「出産体験の物語」 と,文献により違った表現となっているが,これ らについては全て出産体験についてのインタ ビューを行っているという共通点を以って同義の ものとして定義した.

Ⅲ.方 法

1 .文献検索方法  検索エンジンは医学中央雑誌(医中誌 web 版 ver. 5 )で検索のキーワードを,「バースレビュー or 出産体験 or 分娩体験」,さらに,「(出産 or 分娩) and 語り」,「(出産 or 分娩)and 想起」とし,看 護の文献を検索した.文献の種類は原著論文とし た.さらに,母子保健の向上を目標とした国民運 動計画「健やか親子21」が開始された2001年から 2016年の文献に絞った.その結果,「バースレ ビューor 出産体験 or 分娩体験」にて202件「(出 産 or 分娩)and 語り」にて30件,「(出産 or 分娩) and 想起」にて13件の計245件が検出された.  検出された245件を,抄録または本文を読み込 んだうえで,選定基準を 1 )出産施設を退院後に 出産想起に関する調査を行った文献, 2 )出産に ついてのインタビュー調査を行った文献, 3 )育 児期の女性を対象とした文献, 4 )助産師がイン タビュー調査を行った文献とした.選定基準によ り計238件を除外し, 7 件を分析対象として育児 期のバースレビューに関する看護研究の方向性に  上記の対象となる文献をテーマ,研究目的及び その結果の内容の類似性に基づき分類・分析し, 今後の研究課題について検討した.

Ⅳ.結 果

 量的研究が 1 件,質的研究が 6 件であり,調査 された時期は出産施設退院後〜産後 1 か月までが 3 件,産後 2 〜 3 か月が 1 件,産後 1 〜 3 年が 3 件の 3 つに分けられた.また,各研究で抽出され たカテゴリーおよび結果を分析し,以下の 3 つに 分類した.  質的研究で抽出されたカテゴリーは,母親が実 際に出産時に体験したことである「語りの実際」 と,母親がバースレビューを行ったことの意味づ けを語った「語りの意義」の 2 種類に分類した. また,質的研究のうちの 1 件については,過去に ハイリスク妊娠・分娩を経験した母親を対象とし, 「語り実際」の抽出と,IES − R(改訂出来事イ ンパクト尺度)により心的外傷性ストレス症状を 測定していた.  一方,量的研究の結果は,バースレビューの効 果を既存の尺度で評価したものであり,「語りの 効果」と分類した.(表 1 ).  以下,各研究において抽出されたカテゴリーを 【 】で示す. 1 .語りの実際  國清ら(2004)は,出産体験の物語の内容と意 味づけの変化をとらえることを目的とした,母親 2 名への産褥早期と 1 か月の 2 回のインタビュー を行った.その結果,産褥早期では【何かよくわ からないけど,新鮮で忘れたくはない出産】,【命 をかけた出産】の 2 つの主題が抽出され,事実を 話す,気持ちを言葉に出す内容であったが, 1 か 月後には【夫とともに創った大きなイベント】【こ の子のために色々やってきたことは良かった】の 2 つの主題が抽出され,自己を認める発言が聞か れ,自分なりの意味づけがされた物語へ変化して いたと述べている.  また,村上ら(2001)が,出産の相対評価だけ ではとらえにくい個々の女性の思いを明らかにす ることを目的に,産後 2 〜 3 ヶ月の16名の母親に 調査を行った.その結果,自己の出産に十分満足 していると評価している女性であっても,様々な

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満たされない思いを抱いていることが多く,その 内容から【自分と医療者との認識のズレ】【孤立感】 【忙しさがかもしだす拒絶感】【出産支援方針の不 統一】【バースプランが実施できなかった後悔】【医 師優位お医療者関係に対する憤り】の 9 つのカテ ゴリーが抽出されていた.また,全ての思いが満 たされなかったと感じているのではなく,一つか 二つの印象的な場面において満たされない思いで 調 査 時 期 : 産 後 1 か 月 ま で タイトル (発表年)著者 雑誌名 目的 研究方法 結論 語りの実際 1回目:【何かよくわからないけど,新鮮で忘れたくは ない出産】【命をかけた出産】 2回目:【夫とともに創った大きなイベント】【この子の ためにいろいろやってきたことは良かった】  出産の意味づけの変化として,2例とも1回目より2回目の面 接時の方が出産に対する自己評価が上がり,語りの内容も,1 回目は事実を話す,気持ちを言葉に出すという内容であったの が,2回目は自己を認める発言が聞かれ,自分なりの意味づけ がされた物語となって構成されていた. 語りの意義 「自分でああこういう思いだったんだなってあらためて 自分に返ってくるっていうのがあるんで,感謝していま す」「じっくり話すことはとても大事な事,ちゃんと1つ の物語ができたんで,すごくありがたいなって」「自分 で記憶できてよかったです」「振り返った方がいいと思 います絶対に.」「振り返れたのはよかったですね.」  母親が出産体験を想起して語ることは,バラバラに思い出さ れる事実全体をひとつのまとまりを持った体験としてとらえやす くするといえる.出産体験が「語り直し」されるたびに,母親は 自分なりに物語を生成していく. バースレビューを 受けた褥婦の体験 梅本彰子他 (2011) 日本看護学 会論文集: 母性看護, 41,96-99 バースレビューが 褥婦にどのような 影響を与えている かを分析し,出産 を肯定的な体験と するためのバース レビューにの在り 方を検討する ・産後0~1日にレ ビュー用紙の記入 と回収 ・3日目に分娩担 当者によるバース レビュー(半構成 的面接) ・退院後2週間頃 にレビューに関す る半構成的面接 語りの意義 レビュー記載時:【素直な気持ちの表出】【記載しきれ ない体験】【分娩の再体験】【前向きな気持ちへ変化】 レビュー面接時:【満足感の再確認】【体験をともにす りあわせる】【転換へのステップ】 バースレビューの過程を用紙記載と面接とよる 振り返りを通 して実施することは文章化から言語化へのステップを踏む こと につながり意味があると考えられた.助産師が介入し,振り返り によるレビューを行うことで,記載だけでは表出しきれない褥婦 の潜在的な思いを導き出せた事がわかった. ・産後48時間以内 にバースレビュー (半構成的面接) 語りの実際 (産褥早期)バースレビュー実施時:【満足感の再確認】【体験をと もにすりあわせる】【転換へのステップ】  自身の思いを言葉に出すことで気持ちを整理し,共有によりさ らに満足なものとして体験する. ・産後1か月時に バースレビューを 受けたことについ ての半構成的面接 語りの意義 (1か月時) 1か月後:【満足感の再確認】【体験をともにすりあわ せ】【転換へのステップ】とカテゴリーなし  分娩後48時間以内にバースレビューを受けた褥婦は【言葉 にする】【共有する】ことで1か月後においてもバースレビュー に対する満足感が持続している. タイトル 著者 雑誌名 目的 方法 結論 自己の出産に十分 満足していると評 価した女性が出産 の際に抱いた思い 村上明美 (2001) 日本赤十字 看護大学紀 要,15, 23-33 「自己の出産に十 分満足している」 と出産を総体評価 している女性が出 産の際に抱いた思 いを明らかにする ・出産経過に関す る半構成的面接 語りの実際 満たされなかった思い:【自分と医療者との 認識のズレ】【孤立感】【忙しさがかもしだ す拒絶間】【出産支援方針の不統一】【バー スプランが実施できなかった後悔】【医師優 位の医療者関係に対する憤り】 満たされた思い:【偶然得られた喜び】  多くの場合,対象者は出産時に全ての思いが満た されなかったと感じているのではなく.一つか二つ の印象的な場面において,満たされない思いを抱い ていた.他に満たされる思いがあることで,満たさ れない思いは「相殺」されたり,「合理化」された りする可能性が十分あると考えられた.自己の出産 に十分満足していると評価している女性であっても, 出産の際には予測困難な様々な思いを抱いているこ とが明らかになり,それらは女性にとって満たされ ない思いであることが多かった タイトル 著者 雑誌名 目的 方法 結論 出産体験の心理的 影響 末永芳子他 (2005) 保健科学研 究誌2,51-58 出産後2~3年経過 した母親の出産体 験の語りから,現 在の心理状態を 「改訂出来事イン パクト尺度IES-R」を用いて検討 ・妊娠・分娩の体 験及び次の妊娠に ついての半構成的 面接 ・IES-Rによる質 問紙調査 語りの実際 【行動制限のつらさ】【痛み】【出血の恐 怖】【育児不安】【看護師への嫌悪感と怒 り】  母親は産後2~3年経過しても,出産体験を鮮明に 記憶しており,中でも否定的な体験は強く残る.ハ イリスク妊娠・分娩で否定的な体験をした母親の心 理状態には,ISE-Rの侵入症状や回避症状と関係があ る.過去の何らかのハイリスク妊娠・分娩は,母親 に心理的影響を及ぼしており,次子の妊娠。出産決 定に影響する要因の一つになると推測された. 語りの実際 語りの実際:【自分の特徴】【実母との関 係】【喪失体験】【出産前までの不安な気持 ち】【夫婦関係】【義母との関係】【子ども が病気になった時のこと】【母乳哺育へのこ だわり】【出産・医療への思い】【家族・親 族の協力】【子どもの気質・子どもとの関 係】【友人関係】【幼稚園・保育園の先生と の関係【育児サークルのこと】【しんどい育 児】【母親自身の健康不安】【将来の夢】 「語りの実際」では,negativeな内容の語りが多い 傾向にあった.他者との関係性の語りについては 様々な個人の価値観で捉えられていた. 語りの意義 語りの意味づけ :【信念や行動の変化】 【新たな意味の生成】【秩序立て】【気持ち の刷新】【語りの場の保障】【時間の感覚】  負の側面であるネガティブな出来事や感情が語ら れることで気持ちが解放され,物語が書き換えら れ,再評価され自己へ受け入れられる.助産師との 語りを行うことで【語りの場の保障】がなされ,語 りを通して【秩序立て】が行われ,そこに【新たな 意味が生成】される。さらにこれが進み【信念や行 動の変化】となる。いずれの段階でも【気持ちの刷 新】という効用が得られる.語りの意味づけが【秩 序立て】の段階で【時間の感覚】に影響していると とらえられた. 乳幼児をもつ母親 への助産師による ナラティヴ・アプ ローチの効果研究 川村千恵子 他(2011) 日本保健医 療行動科学 会年報, 26,104-117 育児期の母親に妊 娠以前から,出 産,育児,将来の 展望までについて のナラティブ・ア プローチを行い, 母親の感情やウェ ルビーイング,対 人関係にもたらす 変化や効果を指標 を使って評価する ・ナラティブ・ア プローチの介入の 前後と1か月後に 質問紙調査(短縮 版感情プロファイ ル検査(POMS), TMD得点,乳幼児の 母親のウェルビー イング尺後,関係 性の中での自立尺 度) 語りの効果  ナラティヴアプローチとの効果として,「怒り- 敵意」が低下し,「心理面のウェルビーイング」 「関係性のなかでの自立」尺度の「18項目全体」, 「自信をもって生きる」の3つの得点が有意に高くな ることが明らかになった.しかしながら,1か月後の 値がいずれも介入前程度に戻っており,1回のナラ ティブアプローチの効果の限界も示された. 抽出されたカテゴリーおよび結果 育児期の母親の出 産体験と心理的健 康に関する研究 國清恭子他 (2004) The Kitakanto Medical Journal 54(2). 125-135 産褥早期と産後1 か月までの母親の 出産体験の物語の 内容と意味づけの 変化をとらえ,心 理的健康を高める 援助の在り方を検 討する ・産褥早期に出産 体験についての半 構成的面接 ・産褥1か月以内 に出産体験につい て 半構成的面接 バースレビューが 産後1ヵ月の母親 の感情に与える影 響 桑田久美子 他(2014) 郡上市民病 院年報, 11(1). 110-114 バースレビューが 産後1か月の母親 の感情にどのよう に影響したかを検 証する ・妊娠~出産・育 児についてのナラ ティブアプローチ (半構成的面接) 調 査 時 期 : 産 後 2 ~ 3 ヶ 月 抽出された結果およびカテゴリー 調 査 時 期 : 産 後 1 ~ 3 年 抽出された結果およびカテゴリー 母親の妊娠・出 産・育児にまつわ る体験の『語り』 の意味づけ 育児 経験のある助産師 によるナラティ ヴ・アプローチ 川村千恵子 他(2009) 日本保健医 療行動科学 会年報 24,117-133 育児期(1~3歳) の母親に,子育て 経験のある助産師 が,妊娠・出産・ 育児にまつわるナ ラティブ・アプ ローチを行い, 『語り』の実際 と,母親による 『語り』の意味づ けを明らかにする 表 1  文献の概要 育児期のバースレビュー(出産体験想起)に関する文献レビュー

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娠・出産・育児にまつわる「語り」の実際と意味 づけを明らかにすることを目的に,産後 1 〜 3 年 の母親25名への調査を行っている.この結果とし て,語りの実際ではネガティブな内容が多い傾向 にあり,カテゴリーとして,【自分の特徴】【実母 との関係】【喪失体験】【出産前までの不安な気持 ち】【夫婦関係】【義母との関係】【子どもが病気 になった時のこと】【母乳哺育へのこだわり】【出 産・医療への思い】【家族・親族の協力】【子ども の気質・子どもとの関係】【友人関係】【幼稚園・ 保育園の先生との関係】【育児サークルのこと】【し んどい育児】【母親自身の健康不安】【将来の夢】 の17個が抽出されていた. 2 .語りの意義  語りの意義については, 4 件の調査で抽出され ている.このうち,産後 1 か月までに調査が行わ れた 3 件は,産褥早期と出産施設退院後の 2 回の 面接が行われ, 2 回目の面接で産褥早期のバース レビューの効果を評価することを目的としていた.  國清ら(2004)の調査では褥婦 2 名を対象とし, カテゴリーとしては抽出されていないが,「こういう 思いだったんだなってあらためて自分に返ってく るっていうのがある」「じっくり話すことはとても大 事な事,ちゃんと 1 つの物語ができた」「振り返れ たのはよかったですね.」などの発言から, 2 事 例ともに母親自ら振り返りの必要性を述べている.  また,梅本ら(2010)の調査では褥婦 7 名を対 象とし,面接前のレビュー用紙記載時は【素直な 気持ちの表出】【記載しきれない体験】【分娩の再 体験】【前向きな気持ちへ変化】の 4 つ,その後 のレビュー面接時には【満足感の再確認】【体験 をともにすりあわせる】【転換へのステップ】の 3 つのカテゴリーを抽出している.  更に,桑田ら(2014)の調査は褥婦 5 名を対象 としており,先の梅本ら(2010)の研究を参考に, 【満足感の再確認】【体験をともに摺りあわせる】 【転換へのステップ】の 3 つのカテゴリーに分類 している.  さらにもう 1 件は,前述した川村ら(2009)の 産後 1 〜 3 年の母親25名への調査において,語り の母親の主観的な体験として,【信念や行動の変 化】【新たな意味の生成】【秩序立て】【気持ちの 刷新】【語りの場の保障】【時間の感覚】の 6 つの 関わらずほぼ同様のカテゴリーが抽出されてお り,これらを統合すると,育児期のバースレビュー の意義は,分娩の満足感の再確認と物語としての 秩序立てが行われ,新たな気持ちに転換されてい ることであった. 3 .語りの効果  川村ら(2011)は,産後 1 〜 3 年の母親20名を 対象に,妊娠・分娩・育児に関するナラティヴ・ アプローチを行う前後に POMS(短縮版感情プ ロファイリング検査),乳幼児の母親のウェルビー イング尺度,関係性の中での自立尺度を用いた質 問紙調査を行い,ナラティブアプローチの効果を 検証している.その結果,短縮版感情プロファイ ル検査の「怒り−敵意」,TMD 得点が介入前後 で有意に低下し,介入によって全般的な負の感情 が減少していた.また,乳幼児の母親のウェルビー イング尺度の「心理面でのウェルビーイング」,「関 係性のなかでの自立」尺度の「18項目全体」の総 得点,「自信をもって生きる」が介入前後で有意 に高くなっていた.しかし,上記のいずれもその 一か月後の得点は,介入前程度の値に戻っており, 1 回のナラティヴ・アプローチの効果には限界が あることが示されていた. 4 .ハイリスク妊娠・出産における主観的体験  末永ら(2005)の調査は,出産体験がその後の 心理状態にどのように受け止められているのかを 検討することを目的に,一人目を出産後妊娠して いない産後 2 〜 3 年の母親 3 名を対象としている. その結果「語りの実際」として,【行動制限のつら さ】【痛み】【出血の恐怖】【育児不安】【看護師へ の嫌悪感と怒り】の 5 つを主観的体験として抽出 しており,特に否定的な体験は数年経過しても強 く残るとしていた.また,対象となった 3 名のう ち 2 名に IES − R(改訂出来事インパクト尺度) の侵入症状や回避症状が見られたが,PTSD(心的 外傷後ストレス反応)の高危険者はいなかった.

Ⅴ.考 察

1 .バースレビューの実施時期による語り の内容と効果 1 )産後 1 か月まで  桑田ら(2014)は,自身の思いを言葉に出すこ とで気持ちを整理し,共有によりさらに満足なも

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のとして体験することで,バースレビュー時に 語った満足感が 1 か月後の満足感につながってい ると考えると述べている.また國清ら(2004)も 産褥早期には,出産全体の振り返りを促す援助を 実施することが,その後体験を意味づけしていく 段階への移行をスムーズにするものと考えられた と述べており,産褥早期のバースレビューは産後 1 か月までの母親の心理に良い影響を与えること が示唆されていた.また,國清ら(2004)は,産 褥早期の面接においては,その時の感じたままの 気持ちや分娩経過中の事実をただ言葉にして表現 することが多く,自己評価も低かったが,産褥 1 か月後には,自己評価も高まり,自分自身の言葉 によって再構成された物語が語られていたと述べ ている.鈴木(2015)も,「出産体験を自分のも のにする」ためのバースレビューとは,出産を通 して体験したことを女性が自分の物語の中に入れ て納得のいくような物語にしていくということで あり,分娩後の一度きりのバースレビューで,こ れを成し遂げるのはあまりに困難な作業であると 述べていることから,産褥早期の 1 回のみでなく, 育児期にかけて複数回の援助が効果的であること が考えられた. 2 )産後 2 〜 3 か月  産後 2 〜 3 か月の母親を対象にインタビューを 行った村上(2001)の調査では,総体的には自己 の出産に「十分満足している」と評価していても, インタビューを通して振り返ることにより,満た されないと感じた様々な思いが表出されている. 我部山ら(2001)は,出産体験の評価は出産直後 の肯定的評価をピークに時間の経過とともに変化 していくとしていることから,産後 2 〜 3 か月以 降の「語りの実際」では産後 1 か月までに比べて 否定的な内容が多くなっていたと考える.また, 村上は,多くの施設で一般的に行われている相対 的な出産満足評価は曖昧さを多分に含んでいるこ と,対象者の出産満足度の評価を行う際には,対 象者が自己の出産に対し何を重視していたのかを 明確にし,個々の妊娠,分娩,産褥の経過などを 考慮しながら実施することが望まれると述べてい る.この研究では,母親自身の言葉では「語りの 意義」の表出はされていないが,この時期のイン タビュー調査において,対象となった母親が出産 体験における満たされない思いを表出したこと は,母親が喪失感情を表出できた点から,この時期 のバースレビューにも意義があると考えられる. 3 )産後 1 〜 3 年  産後 1 〜 3 年の母親を対象とした調査で,川村 (2009)は,「語り」は母親の主観的な体験を提示 するだけでなく,新たな意味の生成を行ったり, 気持ちが刷新されたり心理的なプラスの効果が得 られていたとしている.また同じく川村(2011) のナラティヴ・アプローチの効果を心理的な尺度 を使用して評価した研究では,ナラティブ・アプ ローチの効果として,「怒り−敵意」が低下し,「心 理面のウェルビーイング」「関係性の中での自立」 尺度の「18項目全体」「自信をもって生きる」の 3 つの得点が有意に高くなることが明らかになっ ており,この時期のバースビューにも効果がある ことが示唆されていた.  また,バースレビューの方法として,産後 2 〜 3 か月以降の調査においては,分娩に立ち会って いない助産師がバースレビューを行っているが, それぞれにおいてバースレビューの効果が示唆さ れている.東野(2006)は,レビューの実施者に ついて,出産に立ち会わずとも褥婦が話すことを 十分に傾聴できる専門家であればよいことを述べ ており,必ずしも出産に立ち会った助産師でなく ても効果があると考えられた. 2 .ハイリスク妊娠・分娩を経験した事例 に対する育児期のバースレビュー  産後 1 〜 3 年のハイリスク妊娠・分娩を経験し, 次子を妊娠していない母親を対象に末永(2005) らの調査では,妊娠・分娩後数年経過しても特に 否定的な体験は残ることを明らかにし,次子出産 の決定要因への影響があることを示唆している. ハイリスク妊娠・分娩の事例について,鈴木(2015) は,予想外に吸引分娩となった褥婦が産褥早期の バースレビューでは分娩を肯定的に受け止めてい たにも関わらず,その後の次子の出産前には過去 の分娩体験が思い出され不安でたまらなくなると 語った例を報告しており,伊藤(2015)も,出産 による喪失経験や心の傷つき経験は,それを経験 した女性が自分の言葉で語れるようになるまで, 時間を要する可能性があると述べている.以上の ことから,ハイリスク妊娠・分娩を経験した事例 については,産褥早期だけでなく,複数回の援助 が必要であると考えられた. 3 .今後の研究における課題 今回検討した 7 文献のうち,産後 1 か月以内に調 育児期のバースレビュー(出産体験想起)に関する文献レビュー

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時点で 2 度目の面接を行っており,産褥早期に バースレビューを受けていない母親については調 査されていない.一方, 2 〜 3 か月以降の調査で は,産褥早期にバースレビューが行われていたか は不明である.産褥早期にバースレビューを受け ることで,一度は出産体験を統合するという過程 を経験することから,育児期のバースレビューで はよりポジティブな内容が表出される可能性もあ る.そのため今後は産褥早期のバースレビューを 受けたかどうかにより,その後の育児期のバース レビューに違いがあるかどうかを検討する必要が あると考える.  また,國清ら(2004)は,出産体験が「語り直 し」されるたびに母親は自分なりに物語を生成し ていくと述べており,また,川村ら(2011)のナ ラティヴ・アプローチの効果研究では, 1 回の援 助では効果に限界があることが示されていること から,複数回の援助による効果についても検討す る必要がある.さらに,近年増加している高齢初産 婦などに特化した調査や,ハイリスク事例に対す る複数回の援助に関する調査も必要であると考え る.

Ⅵ.結 論

 我が国における育児期のバースレビューに関す る研究の現状を明らかにし,今後の研究の方向性 を明確にするために文献検討を行った.その結果, 先行研究はまだ少ないが,産褥早期と同様に育児 期のバースレビューも出産体験における母親の喪 失感情の表出を助け,事実を再構成する機会とし て有意義であることが示唆された.また,産後時 間が経過するとともに,母親にとって妊娠・出産 体験でのネガティブな記憶が残りやすくなると考 えられたため,特にハイリスク妊娠・分娩を経験 した母親に対しては育児期での援助が有効である と考えられた.また,今後の研究課題として,産 褥早期にバースレビューを行った場合と行わない 場合の育児期の語りの内容の比較や,近年増加し ている高齢初産婦などの特定の背景に焦点を当て た調査も必要であると考える.

付 記

 本研究は平成28年度聖泉大学看護学部研究助成

文 献

東野妙子(2006):バースレビューの方法,ペリネイ タルケア,25( 8 ),15−19 伊藤道子(2015):ナラティブからひも解くバースレ ビュー,助産師雑誌,69(12),994−997. 我部山キヨ子,堀内寛子,脇田満里子,他(2001):出 産体験の評価に関する縦断的研究─産後 6 年迄の出 産体験の評価の推移─,母性衛生,42( 4 ),591−598. 川村千恵子,石原あや,森圭子(2009):母親の妊娠・ 出産・育児にまつわる体験の『語り』の意味づけ  育児経験のある助産師によるナラティヴ・アプロー チ,日本保健医療行動科学会年報,24,117−133. 川村千恵子,森圭子(2011):乳幼児をもつ母親への 助産師によるナラティヴ・アプローチの効果研究, 日本保健医療行動科学会年報,26,104−117. 國清恭子,阿部祥子,土江田奈留美,他(2004):育 児期の母親の出産体験と心理的健康に関する研究, The Kitakanto Medical Journal,54( 2 ),125−135. 桑田久美子,河合幸子,今井七重,他(2014):バー スレビューが産後 1 ヵ月の母親の感情に与える影 響,郡上市民病院年報,11( 1 ),110−114. 村上明美(2001):自己の出産に十分満足していると 評価した女性が出産の際に抱いた思い,日本赤十字 看護大学紀要,15,23−33. 大久保功子(2015):バースレビュー再考 取り組む際に 気を付けたいこと,助産師雑誌,69(12),982−987. 小川朋子(2006):「産んでよかった」と実感できるよ うに バースレビュー徹底研究 総論 バースレ ビューの意義,ペリネイタルケア,25( 8 ),756−750. Rubin, Reva. (1967):Attainment of the maternal role, partl. Processes, Nursing Research, 16( 3 ),237−245. 末永芳子,嶋松陽子,本田千浪(2005):出産体験の 心理的影響,保健科学研究誌, 2 ,51−58. 鈴木由美子(2015):バースレビューにかかわった経験か らみえてきたこと,助産師雑誌,69(12),988−992. 梅本彰子,村山恵美子,高橋直子,他(2011): バース レビューを受けた褥婦の体験,日本看護学会論文集 : 母性看護,41,96−99. 和田サヨ子,近藤潤子(1986):出産後の想起(Review) による産婦の妊娠出産過程における情緒の分析─出 産時の喪失体験を中心として─,日本看護科学学会 誌, 6( 3 ),11−21.

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