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白山・山村住居の近代的動向 : 住空間の史的展開過程に関する研究 (その6)

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Academic year: 2021

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Kobe Shoin Women’s University Repository

Title

白山・山村住居の近代的動向

―住空間の史的展開過程に関する研究(その6)―

Modernization of The Haku-Mountains' Dwellings

Author(s)

島村 昇(Noboru Shimamura)

Citation

生活科学論叢(Review of Living Science)

No.24:1-83

Issue Date

1993

Resource Type

Bulletin Paper / 紀要論文

Resource Version

URL

Right

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白 山 ・山 村 住 居 の 近 代 的 動 向

住 空 間 の 史 的 展 開 過 程 に 関 す る研 究(そ の6)

1.近 代 ・山 村 住 居 の 典 型 的 事 例 1.1ク ズ ヤ ・ヒ ロ マ 単 室 型 住 居 1.2ク ズ ヤ ・ヒ ロ マ1列2段 型 住 居 1.3ク ズ ヤ ・ヒ ロ マ2列 増 築 型 住 居 1.4イ タ ヤ ・ヒ ロ マ2列1段 型 住 居 1.5イ タ ヤ ・ヒ ロ マ 全2列 型 住 居 1.6山 村 住 居 の 近 代 的 特 質 2.モ ヤ 主 体 空 間 の 構 成 2.1モ ヤ 主 体 空 間 の 確 立 2.2モ ヤ の 進 入 方 向 2.3モ ヤ の 平 面 形 状 2.4モ ヤ の 空 間 規 模 2.5モ ヤ の 列 構 成 2.6モ ヤ の 段 構 成 3,近 代 の 住 空 間 構 成 3.1住 空 間 の 全 体 構 成 3.2サ シ カ ケ の 恒 設 状 況 3.3フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス の 設 置 状 況 3.4モ ヤ 主 要 部 の 室 配 置 状 況 3.5背 面 ツ ケ タ シ の 付 設 状 況 3.6側 面 ツ ケ タ シ の 付 加 状 況 4.近 代 の 住 空 間 諸 量 4.1間 口 ・奥 行 とモ ヤ 主 体 空 間規 模 4.2モ ヤ 主 体 空 間 内 の 諸 量 4.3サ シ カ ケ付 加 空 間 内 の 諸 量 4.4背 面 ツ ケ タ シ付 加 空 間 内 の諸 量 4.5側 面 ツ ケ タ シ付 加 空 間 内 の諸 量 4.6住 空 間諸 量 の 相 関 性 5.近 代 ・山村 住 居 の現 代 的 改 造 状 況 5.1住 空 間 の 規模 拡 大 5.2S系 空 間 の 拡 充 5.3L系 空 間 の 拡 充 5.4改 造 住 居 のS系 空 間 5.5改 造 住 居 のL系 空 間 5.62階 ・ア マ の 居 室 化 6.山 村 住 居 の 近 代 的 多 様 性 6.1デ ツ ク リゴヤ ・無 ドマ 単 室 住 居 6.2長 屋 ・山 村 集 合 住 居 6.3ヒ ル クイ ゴヤ ・有 ドマ 単 室 住 居 6.4半 山村 住 居 ・有 ドマ住 居 6,5山 村 の職 人 住 居 ・採光 型 山村 住 居 6,6山 村 の商 人 住 居 ・平 入 り山村 住 居

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前 章 で は 白山 ・山村 住 居 の近 世 的 様 相 に つ い て み た。 近 世 文 書 に しば しば 現 わ れ る コヤ(小 屋) あ る い は コヤ ヤ(小 屋 家)な ど が 示 す ネ ブ キ構 造 の 屋 根 だ け の 原 始 的 ・古 代 的 住 居 が 存 在 す る一一 方 、 他 方 で は イ エ(家)と よ ば れ る柱 建 て の 住 居 が建 設 さ れ 、 た とえ ば 庄 屋 ・権 兵 衛 宅 は2階 建 で あ っ た(弘 化3年 ・1846)。庄 屋 よ り もさ らに 上 層 の 取 次 元 ・小 倉 家(江 戸 中期)は 柱 建 て2階 屋 ・板 葺 き屋 根 で規 模 も大 きか っ た。 同 じ く取 次 元 の杉 原 家(元 治 元 年 ・1864>は 当 山村 に お け る最 大 級 の住 居 で あ り総3階 建 で 、 や は り板 葺 きで あ っ た 。 以 上 の よ うに 、近 世 に お け る当 山村 の階 層差 は 住 居 面 に お い て もい ち じ る しい格 差 を示 して い た 。 この 傾 向 は近 代 に入 っ て も と うぜ ん 受 け継 が れ て い くが 、こ の よ うな 封 建 的 状 況 に対 して 新 た な近 代 化 が ゆ るや か に 進 行 す る。 しか し実 の と こ ろ、 この 近 代 化 は す で に近 世 にお け る上 層 住 居 が 先 取 的 に 内 包 して い た諸 要 素 が 一 般 化 し、通 階 層 的 に普 及 して い く過 程 で も あ っ た の だ が 、 本 章 で は そ の あ た りの近 代 化 の動 向 を究 明 して お きた い とお も うの で あ る。 ま た 、資 料 の 関係 も あ っ て、 こ れ ら近 代 ・山 村 住 居 が 戦 後 の現 代 にお い て どの よ うに 改 造 され た か に つ い て もふ れ て お き た い 。 さ ら に、 山村 に お け る一 般 的住 居外 の い くつ か の 住 居 種 に ふ れ 、 近 代 ・山村 住 居 の ヴ ァ リエ ー シ ョン ・多様 性 とい っ た こ とにつ い て も通 観 して お きた い。 1.近 代 ・山村 住 居 の 典 型 的 事 例 白 山 ・山村 住 居 の 近 代 的事 例 に つ い て は 、 戦 前 ・戦 後 の調 査 記 録 が あ り、 ま た移 転 保 存 され て い る物 件 も あ る。本 節 で は 、 まず そ れ らの 中 か ら近代 化 を考 え る に 必 要 とお もわ れ る もの5例 を 挙 げ 、 近 代 化 の あ ら ま しを概 観 して お き た い。 そ の 後 、 筆 者 研 究 室 の 調 査 に な る70例 の近 代 ・山 村 住 居 に つ いて さ ら に詳 し くみ て お こ う とお も う。 近 代 に お け る 山村 住 居 の典 型 例5例 は 図6-1に 示 す とお りで あ るが 、一 見 して あ き らか な よ う に、屋 根 構 造 は クズ ヤ と イ タヤ が あ り、両 者 が 共 存 して い る。 クズ ヤ は 間 口長 さ3.0∼3.5間 で 奥 行 長 さは5,0∼9.0間 で 、細 長 い 平 面 形 状 を も っ て い る。これ に 反 し て 、イ タ ヤ の 間 口長 さは4.0 間 で 奥 行 長 さ は5.0間 程 度 で 平 面 形 状 も方 形 に近 い 。平 面 構 成 も ヨ コ割 か らタ テ 割 に な って くる。 い う まで もな く、 クズ ヤ は イ タヤ に先 行 す る古 い 形 式 を と どめ る もの で あ り、 クズ ヤ とイ タ ヤ の 差 異 は た ん に屋 根 構 造 の相 異 に と ど ま らず 、 平 面 形 式 ・住 空 間 構 成 の 進 展 を も含 ん で い る もの で あ る 。以 下 、近 代 典 型 例5例 を順 次 検 討 す る こ とに よ っ て 、当 山村 住 居 の 近 代 化 の 様 相 を あ ら か た把 握 し、 次 節 以 降 の 足 が か り と して お きた い。 2

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近 代 ・山村 住 居 の 典 型 的 事 例 図6-1 N{祠(イ タヤ ・ヒ ロマ2列1段 型 住 居) Nα1(ク ズヤ ・ヒ ロマ 単 室 型 住 居) (凡例) 数 字 は居 室 の 畳数 を示 す 。 図 ジ ロ(イ ロ リ)二 二 酵 ドマ [:コ 床 張 り部 分 、B仏 壇 入 、C押 入 ・物 置 ・戸 棚 、Eエ ン、 T床 の 間 、W便 所 資料)Nα1:前 出 『尾 口村 史 ・第2巻 ・資 料 篇2』(P.669、 土 井lll与太 郎 家)、 季 節 出 作 りの 家 。出 入 ロ前 に は 必 要 に 応 じて 仮 設 の サ シ カ ケ をつ け る。 Nα2:前 出 『石lll県 の 民 家 』(P23、 図版10、 織 田 善 一 家)。 Nα3、4、5:前 出 『日本 農 民 建 築 ・第5輯 』(P.36、 38)ロ 以 上 に よ り筆 者 作 図(記 号 と も)。

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1,1ク ズ ヤ ・ヒ ロマ 単 室 型 住 居 Nα1は 一 見 して あ き らか な よ うに 単 室 住 居 で あ る。住 空 間 的 に み る と、か つ て例 示 した ネ ブ キ ゴヤ と異 動 が な い。 ネ ブ キ ゴヤ と異 な る点 は 、柱建 て構 法 によって1階 の空間 がつ くられ、4周 に垂 直 な 壁 面 が 生 ず る こ とで あ る。 した が っ て 、1階 で は 原 則 的 に どの 位 置 に 開 口部 を設 け る こ と も可 能 と な る。 ネ ブ キ か ら柱 建 て構 法 へ の 移 行 の 大 き な動 因 は 、 この 自由 な 開 口部 を と る た め で あ っ た 。 その 結 果 と して 、 住 空 間 へ の 採 光 ・換 気 ・動 線 の 自由度 が い ち じ る し く高 め られ た。 か つ て の ネ ブ キ に相 当 す る 断面3角 形 の サ ス 組 カヤ 葺 きの 部 分 は 、小 屋 組 と して 屋 根 を形 づ く り、 屋 根 裏 空 間 ・ア マ を生 成 す る。 土 座 で あ っ た ネ ブ キ ゴヤ の1階 床 面 が2階 に 上 っ た こ とに な る。 新 た な1階 床 面 は板 張 りの揚 床 とされ 、 床 仕 上 の面 で も一 段 の 進 歩 を み せ る。 こ の よ う な構 法 に よ って 確 保 され た住 空 間 は、 間 口3.0間 ・奥 行5.0間 で 、 こ の 規 模 は か つ て の ネ ブ キ ゴ ヤ(間 口3,5間 ・奥 行5,0間)の 規 模 に ほ とん ど等 しい 。 間 口 は屋 根 の サ ス 組 の制 約 に よ って こ の程 度 の 寸 法 に 押 え られ 、奥 行 は単 室 住 居 の伝 統 的 な 必 要 空 間 量 か ら決 定 され て い るで あ ろ う。 しか し、単 室 住 居 とい っ て もそ の 規 模 は 、畳 数 に して 約30畳 の 広 さ を もち 、か な りの 余 裕 を も っ て い る。 ま た 、ネ ブ キ ゴヤ は 断面 が3角 形 と な り、側 面 に 近 い と こ ろ で は 立 脚 不 能 とな る が 、こ の 柱 建 て で は室 内 は す べ て立 脚 可 能 で あ り、そ の 分 住 空 間 量 の 増 加 を招 来 した と い え る。 これ も柱 建 て 構 法 の メ リッ トで あ る。 い ま ひ とつ 重 要 な こ とは、平 面 が ま っ た く凹 凸 の な い整 形 の 長 方 形 で あ る とい うこ とで あ る 。 す な わ ち 、モヤ 周辺 にサ シカ ケ や ツ ケ タ シ が ま っ た くな くモ ヤ の み の 住 空 間 で あ る 。 も っ と も、 出 入 口の 前 に 仮 設 的 な サ シ カ ケ を季 節 的 に架 構 して い た よ うで あ るが 、そ れ は あ くま で恒 設 的 な もの で は な い 。 ま た 、ブ ツ ダ ン もモ ヤ の奥 部 に 置 か れ て い るだ け で、 と くに ブ ツ マ を ツケ タ シ に して い る わ け で もな い 。 か くて 、モヤ 内部 は すべ て 上 足 スペ ー ス とな り、農 家 に 普 遍 的 に み られ る下 足 ス ペ ー ス と して の ドマ が 皆 無 で あ る 。ち な み に、 わが 国 の 民 家 に お け る南 方 系 住 居 の 無 ドマ 住 居 と同 じ様 相 を呈 し、初 源 的段 階 に お け る両 者 の 共 通 性 を示 して い る もの と考 え られ る。 な お 、本 例 で は 水 ま わ り 台所 や 便 所 が な いが 、こ れ らは モヤ とは 別 の 場 所 に 設 け られ て い るの で あ り、 この よ う な住 空 間 の分 散 配 置 も初 源 性 を示 す もの と い え る。 1,2ク ズヤ ・ヒ ロマ1列2段 型 住 居 Nα2は 先 例 と 同 じ く柱建 て の クズ ヤ で あ る が 、間 口に 比 して奥 行 の 長 い タ テ1列 の3室 配 置 を もつ住 居 で あ る。屋 根 はや は りサ ス組 カヤ 葺 きで あ るた め 、間 口は3.5間 に 制 約 さ れ 、か つ て の ネ ブ キ ゴヤ と同 等 の 値 を とっ て い る。 と りあ えず は架 構 技 術 か ら くる 間 口制約 で あ るが 、 こ の制 約 下 に 形 成 さ れ た 間 口 寸 法 は後 の住 空 間 に ま で 尾 を ひ い て い く。 奥 行 方 向 は 長 く9.0間 に 及 び 、 オ ミヤ ・ザ シキ ・ブ ツ マ の3室 が 縦 列 す る。 上 記 の 間 口制 約3.5 4

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間 の も とで は 、住 空 間 の 拡 大 は い きお い奥 行 方 行 の延 伸 とい う形 で 実 現 せ ざ る を え な か っ た。 そ れ を も っ と も如 実 に 示 して い るの が こ の例 で あ る。先 例 で み た単 室 住 居 は 炉 の あ る オ ミヤ1室 で あ った が 、 こ れ に諸 室 を追 加 す る場 合 、オ ミヤ の 背後 に順 次 諸 室 を付 加 す る方 式 を と る。 この 縦 列 付 加 方 式 は 当 山 村 住 居 の ひ とつ の 特 色 で あ るば か りで は な く、一 般 に 間 口制 約 下 に お け る住 空 間拡 大 の もっ と も シ ンプ ル な 方 式 とい え よ う。 い ます こ し複 雑 な架 構 方 式 と して は 、L型 やT型 の 「曲 り屋 」や 「中 門造 」 な ど も考 え られ るか ら、 そ の 意 味 で は シ ン プ ル な拡 大 方 式 とい わ ね ば な らな い。 次 に2階 に 目 を転 じ よ う。 こ の2階 の 重 要 な 点 は、1階 全 面 に2階 が 乗 っ て い る こ とで あ る。 す な わ ち、住 空 間 を構 成 す る各 空 間部 分 が す べ て ひ とつ の モ ヤ の 中 に組 込 ま れ て い る とい うこ と で あ る。 し たが っ て 、 この 住 居 で は サ シ カ ケや ツ ケ タ シ な どモ ヤ に付 加 さ れ た 空 間 は一 切 な い。 1階 前 面 の2畳 の 小 部 屋 ・物 置 ・ウ チ ゲ ン カ ン ・便 所 部 分 もモ ヤ に組 込 ま れ て い る。 後 に この 部 分 を フ ロ ン ト ・スペ ー ス と名 づ け て論 述 す る が 、 これ らの部 分 が サ シ カケ と され て い な い の も当 山村 住 居 の 近 代 化 の 一 徴 候 で あ る。 ま た 、背 後 の ブ ツマ が ツ ケ タ シ と され ず モ ヤ に組 込 まれ て い る の も 同様 で あ る。近世 に お い て は 、上 層 住 居 で あ る小 倉 家 や 杉 原 家 で もサ シ カ ケ とツ ケ タ シ が み られ たか ら、 これ らの 点 で 当住 居 の 近 代 的 性 格 を うか が い しる こ とが で き る。 2階 の 上 に サ ス 組 カヤ 葺 きの 屋 根 が 乗 る。この 屋 根 は 、かつ て の ネ ブ キ ゴヤ そ の もの で あ るが 、 こ こに 屋 裏 空 間 が 生 じ、そ こ もア マ と して利 用 され るの で 結 局 こ の 住 居 は3層 の 床 面 を もつ こ と に な る。 この よ う な3階 建 住 居 の 一 般 化 も近 代 の 特 色 で あ る。2・3階 の 空 間 は、 前 に もふ れ た 養 蚕 の ため の 生 産 的 空 間 で あ り、 山村 の 経 済 的 支 柱 で あ っ た。 また 、 この 住 居 も先 例 と同 じ くモ ヤ 内 部 に ドマ の な い無 土 間 住 居 で あ る。水 稲 農 耕 の営 まれ な い 山村 で は モ ヤ 内 の ドマ が 発 達 しな か っ た 。 この こ とは 平 野 部 の 農 村 住 居 と比 較 して 明瞭 で あ る。 1.3ク ズ ヤ ・ヒ ロマ2列 増築 型 住 居 Nα3は 先 の2例 に比 べ る と、 と くに1階 平 面 の 凹 凸 が 目立 つ 。柱 建 て の 場 合 、本 来 モヤ は整 形 の長 方 形 で あ る が 、 この 例 に み られ る よ うな平 面 の 凹 凸 は 、サ シ カ ケや ツ ケ タ シ に よ る増 築 の 結 果 生 じ る不 整 形 で あ る。 本 例 の モ ヤ は 、2階 平 面 に よ く現 わ れ て い る よ うに(前 面1間 分 、 背 後 突 出 し分 を除 く)、間 口3.0間 ・奥 行6.0間 の 整 形 の 長 方 形 で あ る 。Nα2は 増 築 が な くモ ヤ の み の 住 居 で あ っ たか ら、1階 平 面 に も ま っ た く凹 凸 が な く整 形 で あ っ た 。こ の 場合 の 間 口は3.5間 、奥 行 は9.0間 で あ っ たか ら細 長 比 は2.57と な り、 間 口 に比 して奥 行 の深 い 形 状 で あ っ た。 本 例 は 間 口 3.0間 ・奥 行6.0間 で あ るか ら、 細 長 比 は2.00で や は り奥 深 い 平 面 形 状 を も っ て い る。 こ の よ うな タ テ 長 の 空 間構 成 につ いて は 、再 三 ふ れ て い る よ うにサ ス 組 架 構 に よ る 間 口制 約 が 大 きな 原 因 で あ る。 さて 、主 体 的 な構 造 体 で あ り、ま た主 体 的 な住 空 間 で あ る モヤ の 内 部 を み る と、前 面1.5間 分 に

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は ヘ ッ ト リ ・イ タマ ・物 置 ・階段 が 並 列 して い る。 ヘ ッ ト リはヘ リ ト リ(縁 取 り)の 転 誰 で ウ ス ベ リ(薄 縁 、縁の あ るゴザ)を 敷 く室の所謂 で あ り、小 寝室で あ る。 イ タマ はその前 のゲ ンカン ドマ か ら踏 込 ん だ ウ チ ゲ ン カ ンで あ る。先 のNα2で は ゲ ン カ ン ドマ が な く板 張 りの ウ チ ゲ ン カ ン の み で あ っ た。 こ れ ら につ い て は サ シ カ ケ の と こ ろで ふ れ る。 物 置 ・階 段 部 分 で 注 意 して お くべ き こ とは 、物 置 の 左 寄 りに小 便 所 が 設 け られ て い る こ とで あ る。便 所 の モヤ へ の 内化 過 程 を示 す もの と して 注 目 して お きた い。 上 記 の前 面1.5間 分 の後 に オ ミヤ が あ る。 こ の オ ミヤ につ い て は か つ て 詳 論 した よ うに 、 ま た Nα1が 示 して い た よ う に住 空 間 の もっ と も中 心 的 な場 で あ る。 オ ミヤ の 背 後 に は ネ マ ・ザ シ キ が くる。 こ こ で ヨ コ2分 割 の 室 構 成 が お こ な わ れ て い る。先 のNα2で は 広 い1室 で あ っ た と こ ろで あ る。 オ ミヤ 後 方 の 空 間 分 割 、す な わ ち 諸 室 の 形 成 手 法 と して 注 目 して お きた い。ザ シ キ奥 の ブ ツ マ は ツ ケ タ シ の と こ ろで ふ れ る。以 上 が モ ヤ 内部 の 空 間構 成 で あ り、モ ヤ の み に つ い てみ る と、 そ の 平 面 構 成 は ウ チ ゲ ン カ ンつ き ヒロマ 型3間 取 り とで も い うべ き もの で あ る。 次 に サ シ カ ケ、 ツ ケ タ シ部 分 に移 る。 まず 、 サ シ カケ 部 分 は正 面1間 分 の 物 置 ・ゲ ン カ ン ドマ (ソ トゲ ン カ ン)・ 大 便 所 の 部 分 とそ れ に乗 る2階 部 分 で あ る。 こ の 例 の サ シ カ ケ は 近 世 上 層 住 居 で あ っ た 小 倉 家 や 杉 原 家 の サ シ カ ケ と同 様 に2階 建 に立 体 化 され て い る。も と も と仮 設 的 なサ シ カ ケ か ら発 展 して き た経 過 か らみ る と、こ の恒 設 的 な2階 建 の サ シ カ ケ も 当 山村 住 居 の 近 代 化 の1指 標 と な り う る。 と くに ゲ ン カ ン に つ いて み る と、 サ シカ ケ部 分 の ゲ ン カ ン ドマ(ソ トゲ ン カ ン)と モ ヤ 前 面 の ウチ ゲ ン カ ン とい わ ば ゲ ン カ ンが2重 構 造 に な り、 防 雪 効 果 を高 め て い る。 ツ ケ タ シは モヤ 左 側 面 の物 入 とモ ヤ 背 後 の ブ ツ マ の2ケ 処 で あ る 。左 側 面 の 物 入 は 食 器 棚 等 炊 事 関 係 の収 納 スペ ー ス で あ り、オ ミヤ の 炊 事 機 能 を補 佐 す る もの で あ る。背 後 の ブ ツ マ は 祭 祀 機 能 の た め の 増 殖 スペ ー ス で あ る。日常 的 な生 活部 分 とは別 個 に新 た な空 間 を増 築 に よ って 確 保 し て い るの で あ る。 こ の よ うな増 築 が 一 般 化 す るの も近 代 の 特 色 で あ り、な お か つ 本 例 の よ うに ブ ツ マ 上 部 に2階 を 設 け、モ ヤ の2階 と連 続 させ て ア マ を拡 大 す る傾 向 も近 代 的特 色 で あ る。本 例 で は、 先 の サ シ カケ 、 この ブ ツ マ の ツ ケ タ シ両 者 と も2階 建 の 立体 化 を行 っ て い る。 な お 、本 例 で は モ ヤ2階 上 部 に 屋 根 裏 空 間 と して の3階 が あ り、 モ ヤ の 立 体 化 は3層 に及 ん で い る。 1.4イ タ ヤ ・ヒ ロ マ2列1段 型 住 居 以 上 に例 示 した3例 は 、す べ て ク ズヤ で あ っ た。 カ ヤ 葺 き屋 根 を もつ ク ズヤ は 、屋 根 構 造 と し て は も っ と も古 い構 法 で あ る。 しか し、す で に 近 世 の 上 層 住 居 にお い て は 板 葺 きの イ タヤ が 現 わ れ て い た 。 当地 に お け る屋 根 構 造 は 、 した が って カ ヤ 葺 き→ 板 葺 きの 方 向 を た ど る。 この 傾 向 は 近 代 に お い て 加 速 化 され た と考 え られ るが 、屋 根 構 造 の変 化 は小 屋 組 の 変 化 を意 味 し、サ ス構 造 か ら束 立 て 構 造 へ の 変 化 、 ひ い て は 屋 根 裏 空 間(ア マ)の あ り方 、 さ ら に1階 平 面 に も影 響 を及 ぼ す 。 一6一

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Nα4は イ タヤ で あ る が 、まず 間 口 を み る と4.0間 で あ る。クズ ヤ の 間 口 は3.0∼3.5間 で あ っ た か ら、 束 立 て 構 法 に よ る場 合 は 間 口4.0間 以 上 が 可 能 とな る。 もっ と も、 ク ズヤ で も間 口4.0間 の も の が な い わ け で は な い(た とえ ば1日長 坂 家 、石 川 県 立 白山 ろ く民俗 資 料 館 に移 転 保 存 、図6-16)。 しか し、ク ズヤ の 間 ロ寸 法 か ら推 して4.0間 が ク ズ ヤ と イ タヤ の転 換 点 と考 え られ る。梁 の 上 に 束 立 て とす る 束 立 て 構 法 の 方 が 、 間 口 を大 き く と る こ とが 可 能 とな る か らで あ る。 間 口4.0間 を もつ この 住 居 で は 、 オ ミヤ の 左 寄 りに チ ョ ウ ダ(帳 台)と 称 す る小 寝 室 を2室 と っ て お り、ま た オ ミヤ 奥 の ブ ツ マ 、チ ョウ ダ2室 と も8畳 で 、そ れ ぞ れ2.0間 幅 を とる こ とが 可 能 と な っ て い る。先 のNα3は ク ズ ヤ で 間 口 が3.0間 で あ っ た か ら、この 部 分 の2室 は1.0間 幅 と2.0間 幅 で あ っ た。間 口3.5間 の場 合 の2室 は1.5間 幅 と2.0間 幅 とな る。こ の よ う に、間 口幅 は1階 諸 室 の 室 幅 に決 定 的 な 影 響 を及 ぼ す 。 これ は屋 根 構 造 が1階 平 面 に及 ぼ す 影 響 と して重 視 さ れ る 。 また 逆 に、1階 の2室 を2.0間 幅 以 上 に し よ う とす る と、間 口 は4.0問 以上 と しな けれ ば な らず 、 した が って 屋 根 構 造 は 束 立 て の イ タヤ に な ら ざる を え な い とい う こ とに な る。この よ うな 住 空 間 の 志 向 性(住 要 求)と 構 法 の 一体 的 な 推移 も近 代 的現 象 とい え よ う。 なお 、 ブ ツ マ に 付 属 す る仏 壇 入(1畳 分)が 側 面 に ツ ケ タ シ とさ れ て い るの もや や 変 則 的 で あ る。仏 壇 入 が ツ ケ タ シ と な る の は 、 い ま ま で に 例 示 した諸 例 が 示 す よ うに 当 地 の 一 般 的 傾 向 で あ り、 これ を 当地 で は ブ ツ ダ ン ダ シ(仏 壇 出 し)と 呼 ん で い るが 、 そ れ は一 般 に は背 後 に付 属 させ るの で あ り、 こ の例 の よ うに側 面 に付 属 させ る の で は な い。 こ の仏 壇 入 の 側 面 へ の ツ ケ タ シ は 結 局 この 住 居 が 平 入 りへ の 志 向 性 を も って い る と こ ろか ら くる もの と考 え られ る。当 地 で は伝 統 的 に 妻 入 り住 居 が支 配 的 で あ っ た が 、 この 例 で は 戸 外(図 の 右 側)か らブ ツ マ に至 る祭 祀 動 線 も考 え られ(チ ョウ ダ を通 過 す る場 合 と ま わ り込 ん で ブ ツ マ 背 後 の 引 戸 か ら入 る場 合 の2様 が 考 え ら れ るが 〉、この 動 線 は あ き らか に平 入 りの 進 路 を示 して い る。こ こ に も旧来 の 慣 習 とは 異 な る近 代 的要 素 を認 め る こ とが で き る。 い ま ひ とつ 特 筆 す べ き こ とは、 オ ミヤ右 側 面 に 張 出 さ れ た エ ン で あ る。柱 建 て構 法 の 普 及 に よ っ て 垂 直 な壁 面 が 四 周 を と りか こ み 、開 口部 が 自由 に とれ る よ う に な っ た こ とに つ い て は先 に も ふ れ た が 、 この 開 口部 の 積 極 的 利 用 の 一 つ と して エ ンの 付 設 が 挙 げ られ る。本 例 に み え るエ ン は モ ヤ か ら突 出 した 小 さ な ヌ レエ ン(濡 縁)で あ る が、 住 空 間 の外 部 空 間へ の 開 放 を象 徴 的 に 示 す 事 例 と して 注 目 され る。雪 深 い 当地 で は 初 源 的 な 住 居 とみ な さ れ た ネ ブ キ ゴヤ 以 来 、永 ら く外 界 か らの 遮 断 を 目的 と した 閉鎖 的 な 住 空 間 が支 配 的 で あ っ た し、ま た それ が 当 然 で もあ った 。 しか し、柱 建 て構 法 の 一 般 化 は 、 つ い に住 空 間 の外 部 へ の 開放 に ま で 到 達 した。 もっ と も、 これ に対 して積 雪 時 に は新 た に雪 囲 い等 の 防 雪 対 策 が 必 要 と され たが 。 次 に 、前 面 の サ シ カ ケ につ い て み て お き た い 。ま ずサ シカ ケ 部 分 は幅1.25間 でNα3の1.0間 よ り や や 広 くと っ て い る。 また 、 そ の 内 容 は便 所 ・ゲ ン カ ン で あ り、 他 の 住 居 に み られ るサ シ カケ と 類 似 で あ るが 、 と くに ゲ ン カ ン は ドマ 部 分 と板 張 り部 分 に分 け ら れ 、 ソ トゲ ン カ ン ・ウチ ゲ ン カ

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ンの 関 係 が サ シ カ ケ の な か につ くられ て い る。 さ らに 重要 な こ とは 、外 部 か らの進 入経 路が平入 りに な っ て い る こ とで あ る。当 地 の 住 居 は す べ て 妻 入 りで あ っ た が 本 例 で は平 入 りで あ り、 これ も住 空 間 の発 展 過 程 か らみ る と一 つ の 発 展 段 階 へ の 萌 芽 とみ られ る。 な お 、先 の エ ン と平 入 りの 出 入 口が 同一 側 面 で あ る こ と も見 逃 せ な い。 一 般 に 平 入 りの 農 家 で は オ モ テ(表)の 方 に エ ンや 出 入 口 を と り、オ モ テ とウ ラ の 関 係 が 生 じ るが 、本 例 は お そ ら く妻 入 りか ら平 入 りへ の 転 換 期 に 生 じ る進 入経 路 を示 して い る もの で あ ろ う。永 ら く妻 入 り を伝 統 と して き た 当 地 に も平 入 りへ の 胎 動 が 始 まっ て い る とい う こ とで あ る。 最 後 に2階 に つ いて み て お き た い が 、2階 前 面 の1.25間 分 はサ シカ ケ の2階 で あ り、モ ヤ の2 階 で は な い。 この 例 もサ シカ ケ の2階 化 ・立 体 化 が お こ な わ れ て い る 。 した が っ て 、モヤ は間 口 4間 ・奥 行5間 で 先 の クズ ヤ に比 べ る と、 間 口 は少 し広 い が奥 行 は 浅 く細 長 比 も1.25と な り正 方 形 に近 づ く。 細 長 比 の 大 小 は い わ ば クズ ヤ とイ タ ヤ の 相 違 に通 じる もの で あ る 。 1.5イ タヤ ・ヒ ロ マ全2列 型 住 居 Nα5は 先 例 と同 じ くイ タ ヤ で あ る。 モ ヤ の 間 口4.0間 は先 例 と同 様 で あ る が 、奥 行 は5.5間 で や や 長 い 。細 長 比 は1.375で 類 似 的 で あ るが 、最 大 の 特 色 は2列 型 の 平 面 構 成 で あ る 。左 列 に はヘ ッ トリ ・ネ マ ・ブ ツ マ が 縦 列 し、 従 来 小 空 間 で あ った ネ マ が か な りの スペ ー ス に 増 強 され て い る 。 8畳 の ネ マ は タ タ ミ5畳 、板 間3畳 で まだ 畳 の敷 つ め は お こ な わ れ て い な い 。 ま た 、ブ ツマ に付 属 す る仏 壇 入 は モヤ 内 に組 込 まれ ツ ケ タ シ と な っ て い な い。 さ らに 、ブ ツマ 右 寄 りに 床 の 間 が 設 け られ 座 敷 構 えの 動 向 が うか が え る。 しか し、 注 意 す べ き点 は 、床 の 間 は仏 壇 入 よ り従 属 的 な位 置 に設 け られ て お り、 室 名 が 示 す よ うに ブ ツ マ と して の 機 能 が 優 先 す る。 も っ と も、ブ ツマ に床 の 間 を設 け て 、 旧来 の ブ ツマ(祭 祀 機 能)と 座 敷(儀 礼 機 能)を 併 存 させ る 手 法 は新 し い近 代 的 傾 向 とみ るべ きで あ ろ う。 右 列 は オ ミヤ とナ ン ドの2室 で あ る。 旧 来 の オ ミヤ は モヤ の幅(間 口)い っ ぱ い に と る ヨコ長 の広 間 で あ る が 、本 例 で は2.0間 幅 の タ テ長 の 広 間 に な って い る。この よ う な オ ミヤ の と り方 は め ず ら し く、 これ も新 しい 傾 向 と して と ら えて お く必 要 が あ ろ う。 ま た この 場 合 、オ ミヤ か ら各 室 へ 通 り抜 け をせ ず 直 接 出 入 りで き る合 理 性 を もっ た 平 面 計 画 に な っ て い るの も近 代 的 で あ る。オ ミヤ の 背 後 に4.5畳 の ナ ン ドが くる。 オ ミヤ の 背後 にナ ン ドの く る配 置 は 旧 来 の 手 法 を踏 襲 して い るが 、 右 側 面 に ツ ケ タ シ と さ れ た エ ン に通 じて い る こ とに 注 意 して お きた い 先 例 にみ え た エ ン は モ ヤ か ら張 出 した小 さ な ヌ レエ ンで あ っ た が 、本 例 の エ ン は 柱 を建 て た ツ ケ タ シの ウ チ エ ンで あ る。 しか もこ の ウチ エ ン は モヤ 右 側 面 の ほ とん ど全 面 に わ た っ て お り、近 代 に お け るエ ン の 導 入 、 その 一 般 化 を示 す もの と評 価 され る 。 こ こ に お い て 、住 空 間 の外 へ の 開 放 志 向 が つ よ く感 じられ るの で あ る。 さ ら に 、こ の エ ンが オ ミヤ や ナ ン ドと直 結 す る形 で 設 け ら れ て い る こ と も 目 を惹 く。 いわ ゆ る書 院 風 の 空 間構 成 で あれ ば 、 座 敷 ・エ ン ・庭 園 が 一 連 の 連 続 8

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的 関 係 を もつ が 、 その よ うな格 式 的 空 間構 成 は こ こ に は み られ な い 。 オ ミヤ(ナ ン ド)・エ ン ・庭 の 関 係 は、 い わ ば 生 活 的 空 間 構 成 で あ り、 その 意 味 で は 武 家 住 宅 の 系 譜 をひ く書 院 造 の影 響 を ス トレー トに 反 映 して い る とは い え な い。 先 の 床 の 間 の 扱 い につ い て も同 様 の こ とが い え よ う。 い ま ひ とつ は エ ンの 端 部 に 設 け られ たナ ガ シで あ る。ナ ガ シは い う ま で も な く水 まわ り台所 で あ り、従 来 戸外 や サ シ カケ の ドマ に 設 け られ て い た もの で あ るが 、 これ が オ ミヤ と接 す る位 置 に 置 か れ て い る こ とは 重 要 で あ る。す な わ ち、水 ま わ り台 所 が 火 ま わ り台 所 で も あ るオ ミヤ の1部 と して位 置 づ け られ 、台 所 機 能 を モ ヤ 内 で 処 理 し よ う と志 向 して い る か らで あ る。 これ も新 た な 動 向 と して 注 目 され ね ば な らな い で あ ろ う。 ま た、 サ シ カケ の2階 化 も先 例 と同様 で あ り、 モ ヤ の2階 も全 面 柱 建 て の ア マ とな って い る。 1.6山 村 住 居 の 近 代 的 特 質 以 上5例 に よ っ て 当 山 村 住 居 の近 代 化 傾 向 をみ た。本 項 で は そ れ ら をふ ま えて 近 代 化 の 傾 向 を 要 約 的 に把 握 して お きた い。 1)柱 建 て 構 法 の 普 及 と高 層 化 す で に近 世 に お い て も上 層 住 居 で は 柱 建 て の住 居 が み られ た が 、近 代 に入 る とそ の傾 向 は さ ら に促 進 さ れ る 。つ ま り全 階 層 を通 じて 柱 建 て構 法 が 普 及 して い く。柱 建 て構 法 は、今 日で は 住 居 建 築 に とっ て 当 然 の 構 法 とみ られ るか も知 れ な いが 、ネ ブ キ ゴヤ に み られ た 断 面3角 形 の 屋 根 だ け の住 居 建 築 と比 較 す る と き、 柱 建 て の 住 居 建 築 が い か に 進 歩 的 な もの で あ っ た か が わ か る。 柱 建 て 構 法 は住 空 間 の 四 周 に垂 直 な壁 面 を 生 じ、 柱 間 に 自由 に 開 口部 を と る こ と を可 能 に し た。 この こ とは 、 採 光 ・通 風 ・換 気 ・開 放 性 等 の 面 で 居 住 条 件 を い ち じる し く高 め た し、 また ネ ブ キ ゴヤ に み られ た 住 空 間周 辺 の 立 脚 不 能 の 空 間 を解 消 した 。こ れ は 住 空 間 の全 面 的 均 等利 用 と で もい い うる もの で あ る。 柱 建 て 構 法 の 普 及 は1階 部 分 だ け に と ど ま ちず2階 建 や3階 建 を 出来 させ た 。 近 世 に お い て も、文 書 にみ え た 庄 屋 権 兵 衛 の 家 は2階 建 で あ っ た し、上 層 住 居 の小 倉 家 は 同 じ く2階 建 、杉 原 家 は3階 建 で あ っ た 。 こ う した 高 層 化 は近 代 に入 る と さ らに一 般 化 し、住 空 間 の 立 体 化 が 進 行 す る。 2)屋 根 構 造 の移 行 ネ プ キ ゴヤ 以 来 、屋 根 構 造 はサ ス 組 カヤ 葺 き を伝 統 と し、近 代 に お いて も まだ その 伝 統 は 受 け つ が れ て い るが 、一 方 で 束 立 て 板 葺 きが 現 わ れ て くる 。当 地 で は前 者 を ク ズ ヤ 、後 者 をイ タヤ と 呼 ん で い るが 、 イ タ ヤ は 近 世 の上 層 住 居(小 倉 家 、 杉 原 家)に す で に み られ た が 、 こ れ の 一 般 へ の 普 及 も近 代 化 の一 つ の 傾 向 で あ る。 カヤ 葺 き はサ ス構 造 を骨 組 と し、そのため梁 間は3.0∼3.5 間程 度 に制 約 され て い た の に対 し、板 葺 き は梁 の 上 に束 立 て とす る た め 梁 を支 え る柱 さ え あ れ ば 梁 間 は サ ス構 造 よ りさ ら に大 き くす る こ とが で き、4.0聞 以 上 が 可 能 とな る 。

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間 口長 さ は こ の 梁 間 に よ っ て 決 定 され る が 、 間 口長 さの 大 小 は1階 の 室 割 りに も影 響 を 与 え る。Nα4、Nα5に 例 示 した近 代 ・山村 住 居 は 、 い ず れ も イ タ ヤ で あ1)間 口4.0間 で あ る ため 、1階 の 室 幅 は 左 列 、右 列 と も2,0間 とす る こ とが で き た。屋 根 構 造 は住 空 間 の シ ェ ル タ ー と して の 役 割 を担 う もの で あ り、こ れ の 住 空 間へ の 影 響 は 多 大 で あ る とい わ ね ば な ら な い 。 クズ ヤ か ら イ タ ヤ へ の近 代 化 は た ん に屋 根 構 造 だ けの 変 化 を意 味 す る の で は な く、住 空 間 の 近 代 化 と軌 を一 にす る もの と考 ね ば な らな い。 3)モ ヤ 主 体 空 間 の 確 立 柱 建 て 構 法 の 普 及 は モ ヤ 主 体 空 間 を確 立 させ た 。 モ ヤ の 四 周 に 柱 を建 て た長 方 形 平 面 の モ ヤ は、 それ の み で あ る と ま っ た く凹 凸 の な い 整 形 の 直 屋 とな る 。幡1、Nα2は そ の例 証 で あ る 。本 来 的 に は 、 この モ ヤ の み の 住 居 で 基 本 的 な住 機 能 は 充 足 す るの で あ るが 、新 た な 住 要 求 に よ りサ シ カ ケ ・ツ ケ タ シ の付 加 空 間が 追 加 され 、 住 空 間 が 補 強 され る。 こ う した増 築 ・改 装 に よ る付 加 空 間 が 一 般 に行 わ れ る よ うに な るの も近 代 化 の 一 つ の 特 色 で あ るが 、それ を可 能 に して い るの は や は り確 固 と した柱 建 て の モ ヤ が 主 体 空 間 と して確 立 した か らで あ る。 しか もそ の モ ヤ 主体 空 間 は 、旧来 の サ シ カ ケ部 分 や ツ ケ タ シ部 分 で処 理 して い た 空 間 を組 込 む 場 合 もあ り(Nα2の ブ ツ マ 、 前 面 の フ ロ ン ト・ス ペ ー ス ー 小 間 ・ウ チ ゲ ン カ ン ・便 所 等)、 住 空 間 の 一 体 化 ・1棟 化 の 徴 候 もみ られ る。 これ も近 代 化 の 一 傾 向 とい え る。 ま た モ ヤ 主 体 空 間 は 、 例 示 した5例 で はす べ て 全 面 が2階 建 と され 、住 空 間 の 立体 化 が 計 られ て い る。い うま で も な く柱 建 て 構 法 に よ る2階 は、四 周 が 垂 直 壁 面 とな り、断 面3角 形 の カヤ 葺 きの 屋 根 裏 空 間 に 比べ て 空 間 効 率 が よ い。 長 方 形 平 面 を もつ モヤ は お の ず か ら間 口 と奥 行 の 長 さ を も ち、両 者 の 寸 法 が 全 住 空 間 の 大 き さ を決 定 す る。 こ の モ ヤ の 間 口 ・奥 行 寸 法 は先 に述 べ た屋 根 構 造 と関係 し、 クズ ヤ で は 間 口 に比 し て 奥 行 の 深 い タ テ長 の 形 状 を と り、 イ タ ヤ で は 間 口 と奥 行 の 差 が ク ズヤ ほ どで は な い 。Nα2の ク ズヤ は 間 口3.5間 、奥 行9.0間 で 細 長 比 は2.57で あ るが 、 イ タヤ のNα4で は 間 口4.0間 、奥 行5.0間 で 細 長 比 は1,25で 、 細 長 比 を比 較 す る と その 差 が あ き らか で あ る 。 な お、 当 地 で は妻 入 りが支 配 的 で あ る こ と もあ って 、 住 居 の 間 口長 さ は 身分 ・階 層(ひ い て は 租 税 の 多 少)と も関 連 して お り、 梁 間(間 口)長 さ を3。0間も っ て 自立 した 家 とみ な した 。 す な わ ち、 間 口長 さ は一 種 の ス テ ー タ ス ・シ ン ボル で も あ っ た 。 近 代 に お い て は まだ 封 建 的 な 間 口観 念 は払 拭 され て い な か っ た で あ ろ う。 しか しい ず れ に し て も、 そ の よ うな観 念 が 発 生 す る背後 に建 築 的 な技 術 ・構 法 が 存 在 して い た こ とは 忘 れ られ な い。 4)平 面 形 式 の分 化 ・定 型 化 平 面 形 式 につ い て考 え る場 合 、Nα1の ヒロ マ 単 室 型 住 居 は 当 山 村 住 居 の 原 点 に位 置 す る好 例 で あ る。す で に例 示 した ネ ブ キ ゴヤ も単 室 で あ っ た が 、柱 建 て の近 代 住 居 に お いて も この 流 れ を く む 単 室 住 居 が つ くられ て い る。 炉(ジ ロ)の あ る ヒ ロマ は住 空 間 の 核 心 をな す 空 間 で あ り、 この 一10一

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空 間(オ ミヤ)に 諸 室 が 追 加 さ れ 多 室 住 居 に 発 展 す る 。 単 室 住 居 が 多 室 住 居 に 発 展 す る 第1の 方 向 は 、オ ミヤ の 背 後 に 順 次 室 を 付 加 し て い く タ テ 縦 列 型 の 手 法 で あ る 。 間 口 が3.0間 程 度 の ク ズ ヤ に こ の 手 法 が み ら れ 、 タ テ1列 型 の 平 面 形 式 と な る 。 Nα2が そ の 例 で あ る 。 第2は オ ミヤ の 背 後 に2列 の 室 を 付 加 し た 方 法 で あ る 。Nα3、Nα4が そ の 例 で あ る 。 こ れ は ヒ ロ マ2列 多 段 型 に 発 展 す る も の で あ る 。 こ の 場 合2列 の 室 幅 は 、 ブ ツ マ の あ る 方 の 列 雌2.嚇 さ れ4也列 が 競 余.と一さ ‡しる†た 一と鍵r`壽 間 口{LO悶 の 場 合 一は 丁払 』間 一と高Lro間 の 配 分.と な り 、1.5間 と1.5間 に 配 分 さ れ る と い っ た こ と は な い 。 間 口 が3.5間 の 場 合 は 、 ブ ツ マ の あ る 列 が2.0間 で 他 列 が1.5間 で あ る 。 第3はNα5に 示 し た 例 の よ う に 、 全 体 が2列 に 分 割 さ れ る 場 合 で あ る 。 こ の 手 法 で は 、 ゲ ン カ ン か ら 入 っ た と こ ろ に 間 口 い っ ぱ い の オ ミヤ が な く、そ の 意 味 で は ヒ ロ マ 型 と は い い に く い 平 面 と な っ て い る が 、時 代 が 進 む に 従 っ て オ ミヤ 部 分 が2列 に 分 割 さ れ2室 化 し て い く傾 向 か ら み る と 、NQ5は そ れ を 先 取 り し た 平 面 形 式 で あ る と い え る 。 た だ し こ の 例 で は オ ミヤ を タ テ に2室 分 と り、 広 さ の 面 で は 旧 態 を 温 存 し て い る か ら 、 い わ ば 新 旧 混 合 の 平 面 形 式 と い え よ う 。 以 上 に み た 平 面 形 式 の 型 を 模 式 的 に 図 化 す る と、 図6-2の よ う に な ろ う。 図6-2近 代 ・山村 住 居 の モ ヤ平 面 型 と増 殖 過 程 (ヒ ロマ1列 多段 型) (ヒ ロマ2列 多 段 型) な お 、 次 に述 べ る付 加 空 間 の機 能 を モ ヤ の 中 に組 込 ん で い る も の もあ り(た とえ ばNα5の 仏壇

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入)、 こ れ は近 代 ・山村 住 居 の 中 で も発 展 した形 態 と考 え られ る。 5)付 加 空 間 に よ る住 機 能 の 補 強 上 記 の モヤ に対 して サ シ カケ や ツ ケ タ シ を付 加 して住 空 間 の 拡 大 や 開放 を お こ な う傾 向 は 、近 代 に お いて い っ そ う加 速 化 され た よ うで あ る。Nα1、Nα2は モヤ の み の住 居 で あ るが 、Nα3∼Nα5 は何 らか の 形 で 空 間 が 付 加 され て い る。Nα3に お い て は 、 前 面 ・左 側 面 ・背 面 、Nα4で は 前 面 ・ 左 側 面 ・右 側 面 、Nα5で は 前 面 ・右 側 面 に付 加 が お こ なわ れ て い る。 モ ヤ は長 方 形 の 直屋 で あ る か ら、 四 辺 へ の付 加 が 可 能 で あ り、 結 果 と して 四 方 向へ の 拡 大 ・開 放 が 住 機 能 を補 強 す る こ とに な る。 住 機 能 の補 強 は 、モ ヤ 内 の 部 分 機 能 と関 連 して お こ な わ れ るの で 、付 加 空 間 の 内容 をみ る こ と に よ っ て 住機 能 の補 強 状 況 、 ひ い て は 近 代 に お け る住 要 求 の 方 向 性 を把 え る こ とが で きる。た と え ば、Nα3の 背 面 の ブ ツマ は祭 祀 機 能 の要 請 、 左 側 面 の収 納(食 器 棚 等 〉ス ペ ー ス は 食事 機 能 の 合 理 化 を意 味 して い る し、 ま たNα5の 右 側 面 の エ ン は住 空 間 の 開 放 を、ナ ガ シ は 台 所 機 能 の 向 上 を示 して い よ う。 ま た 、Nα3∼Nα5に み られ る前 面 の サ シ カ ケ は 出入 口の 防 雪 機 能 強 化 と同 時 に 2階 化 され 立体 的 な 空 間 拡 大 で もあ る。 ま た さ ら に、Nα4の サ シ カ ケ で は ソ トゲ ン カ ン の 扱 い に よ っ て伝 統 的 な 当地 の 妻 入 りが 平 入 り に 転 換 さ れ て い る こ とが わか る。総 じて 近 代 に お け る 当 山村 住 居 は 、付 加 空 間 の 増 設 に よ る住 機 能 の 増 強 をひ とつ の特 色 と して い る。以上 の 付 加 空 間 の 増 設 状 況 を概 念 図 と して 示 す と図6-3 の よ うに な ろ う。 図6-3近 代 ・山 村 住 居 に お け る付 加 空 間 の 状 況 ↓_1 iI 背 面 ツ ケ タ シ モ ヤ 前 面 サシカケ

左 側 面 モ ヤ 右 側 面 ツ ケ タ シ ツ ケ タ シ 注)付 加 空 間 は1階 の み の 場 合 と、2階 建 の 場 合 が あ る 。 一12一

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1.モ ヤ 主 体 空 間 の 構 成 前 節 で は、近 代 にお け る 当 山 村 住 居 の典 型 例 を み 、 その 諸 特 性 を抽 出 した が 、本 節 以 降 で は そ の辺 の 事 情 を い ます こ し詳 し くみ る た め に 筆 者 研 究 室 の 調 査 事 例 を資 料 と し て考 察 を し て お き た い 。調 査 は 昭 和48年(1973)、 白峰 村 桑 島 地 区 の 山村 住 居122戸 で あ るが 、この地 区 は手取 川ダ ム の建 設 に と もな い水 没 した。 調 査 事 例122戸 は 当 地 区 の 全 戸数 の 約 半 数 に 当 り、い ず れ も居 住 の み の 用 途 に使 用 さ れ て い る もの で 店 舗 ・事 務 所 ・医 院 ・工 場 等 は 除 い て い る。122戸 の建 設 時 期 別 内 訳 は 、 戦 前(昭 和20年 ・ 1945以 前)の もの70戸(57.4%)、 戦 後 の もの52戸(42,6%)で 、 戦 前 の70戸 が 近 代 の 建 設 に か か わ る もの 、戦 後 の52戸 が現 代 の 建 設 に か か わ る もの とな る。 ち な み に昭 和48年 の住 宅 統 計 調 査 報 告(第3巻 ・そ の17、 石 川 県)を み る と、全 県 の 農 林 漁 業 併 用 住 宅 は 、 戦 前 の 建 設 にか か わ る も の3,400戸(54.0%)、 戦 後 の 建 設 に か か わ る もの2 ,900戸(46.0%)、 で 上 記 桑 島地 区 の 比 率 とほ ぼ 等 しい。 す な わ ち 、昭 和48年 時 点 に お い て は 、 当 山村 住 居 も県 レベ ル の平 均 的 な新 旧配 分 を示 し、 と くに 山 深 い 山村 の停 滞 性 が み とめ られ るわ けで は な い。 なお 、 本 論 で は 上 記70戸 を近 代 ・山村 住 居 の 事 例 と し、 残 り52戸 は現 代 ・山 村 住 居 の 事 例 と し て 次 章 で 扱 う。 近 代 ・山村 住 居70例 は 図6-4に 図 示(Nα1∼70)し て い るが 、 よ り厳密 にい え ば 、こ れ らの 事 例 の 中 に は近 世 末 の 建 設 に か か わ る住 居 が僅 小 例 含 ま れ て い る か も知 れ な い 。誤 差 の範 囲 と考 え て処 理 して い る。 以下 、 図6-4に よ っ て考 察 をす す め る。

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近 代 ・山村 住 居 の 平 面例(四73年)

図6-4

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No32

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α5

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Nα61 寸 O づ 2 ▲ Nα65 Nα63 く ▲

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No68 畠 d 三 Nα69 一24一

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《 {凡 例 〕▲ 出 入 口、 ε数 字 は 居 垂 の 畳 数 を 示 す 。 図 ジ ロ(イ ロ リ}、 回 吹 抜 け.麗 置 圖 ドマ 、[=コ オ ェ 〔床 張 り郁 分)お よ び ロー カ ・式 台 を 示 す 。 且ア マ 、 日仏 岨 入 、O押 入 ・勒 椴 ・芦棚 、O脱 衣 ・洗 面 ・手 洗 描 、Eエ ン 〔内 縁,、F7ロ 、K台 所 、O洗 場(洗 タ ク場)、S階 段 ・梯 子 段.丁 床 の 間 、U床 脇 ・飾 り棚 、W便 所 注)1.隅 は1階 床 面 積 の 規 模(小 か ら大)の 順 に配 列Lて い る。 2.各 画 は 左 よ,,1階 、2階 、3階 の 順 に 配 列 して い る。 資 料)筆 者 研 究 室 調 査(白 峰 村 薬 島 地 区 、 昭 和45年 ・1973〕

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2.1モ ヤ 主 体 空 間 の確 立 前 節 で も述 べ た よ うに、当 山 村 住 居 を構 造 的 に み る とモ ヤ 主 体 空 間 の ま わ りにサ シ カケ や ツ ケ タ シの付 加 空 間 が つ けた さ れ て 全 住 空 間 が 構 成 さ れ て い る。す なわ ち 、モ ヤ は全 住 空 間 の 主 体 を な す部 分 で あ り、 オ ミヤ と呼 ば れ る炉 を もつ ヒロマ とネ マ(チ ョウ ダ ・ヘ ッ トリ ・ナ ン ドな ど と も呼 ば れ る)、ブ ツ マ な どの 諸 室 か らな るL系 の 空 間 で あ り、住 空 間 の 主 要 な起 居 の スペ ー ス を受 け もっ て い る。 また 、 モ ヤ の2階 は ほ とん どす べ て ア マ と して 活 用 さ れ た。 まず は こ の よ うな住 空 間 の 主体 とな る モ ヤ か らみ て い くこ と とす る。 モヤ 主 体 空 間 の大 き な特 色 は 、前 節 の典 型 例 で もわ か る よ うに 間 口 ×奥 行 の 長 方 形 平 面 を もっ て い る こ とで あ る(立 体 的 にみ る と直 方体 とい え る)。図6-4の 諸 平 面 は か な り凹 凸 の は げ しい 不 整 形 な 平 面 形 状 を示 して い るが 、これ は サ シ カ ケ や ツケ タ シの付 加 空 間 が 任 意 に モ ヤ の まわ り に追 加 され て い る か らで あ る。 そ して 、本 来 の モ ヤ は2階 平 面 に か な り明確 に 残 っ て い る。近 代 にお い て 当 山村 住 居 は 、ほ とん どが モ ヤ を2階 建 と して い るか ら、生 活 の 主 要 部 分 を受 け もつ1 階 が 増 改築 され て も2階 は建 設 当時 の 形状 を温 存 す るの で あ る。か りにNα2を 例 とす る と、図6 -5の よ うで あ る 図6-5モ ヤ 主 体 空 間 とサ シ カ ケ ・ツ ケ タ シ付 加 空 間 (2階) (1階)

左 側 面 ツ ケ タ シ(2階 建) 一26一

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図6-5に お い て 下 図 の斜 線 部 分 が 付 加 空 間 で あ る が 、上 図2階 のA(ア マ)の 部 分 に モ ヤ の 形状 が よ く残 っ て い る。 モヤ は 間 口(梁 間)2.5間 、奥 行(桁 行)3.5間 の 長 方 形 で 小 規 模 な 山 村 住 居 で あ るが 、モ ヤ 周 辺 へ の 空 間 付 加 の状 況 は あ き らか で あ る。 まず 、前 面 の サ シ カ ケ は平 屋 で ゲ ンカ ン、 便 所(W)が あ り、 こ れ は建 設 当 初 か ら付 加 され て い た もの と考 え られ る。 次 に 背 面 の ツ ケ タ シ は2階 建 と な り1階 、2階 と も押 入 ・物 置(C)の 収 納 ス ペ ー ス とな って い る が 、 近 代 に お いて は1階 奥 の ブ ツマ(こ の 例 で は4.5畳 の 室)か ら仏 壇 入 を突 き出 す もの が 多 く、 こ の 住 居 もか つ て は 押 入(C)部 分 が ブ ツ ダ ン ダ シ に な っ て い た 。 背 面 ツ ケ タ シの2階 化 も近 代 以 降 の 改 造 で あ る。 左 側 面 ツケ タ シ も2階 建 で1階 部 分 で は 台 所(K)の 新 設 とネ マ の 拡 大 が お こな われ て い る。 台所(K)を オ ミヤ の 横 に新 設 す るの は、 戦 後(現 代)の 風 潮 で あ り、 同 時 に ネマ(も と3畳) を拡 張 した 。2階 部 分 は 物 置 と し、従 来 の ア マ とは別 に収 納 スペ ー ス を増 設 して い る。 こ れ も戦 後 の 風 潮 で あ る。1階 ネ マ に付 属 す る押 入(1.75畳 分)も 現 代 生 活 に対 応 す る た め の 新 しい収 納 スペ ー ス の確 保 で あ る 。 右 側 面 ツ ケ タ シ は 平 屋 で エ ン(E)を 近 代 にお い て 張 り出 し た もの で あ る。前 節 の 近 代 典 型 例Nα5に も こ れ と同 様 の エ ンが み られ た が 、側 面 に エ ン を ツ ケ タ シ とす る例 は 他 に も多 く、 これ は近 代 化 の1指 標 とな る もの で あ る。 以 上 の よ う に、 当地 の 近 代 ・山村 住 居 は モヤ 主 体 空 間 とそ の ま わ りの サ シ カ ケ ・ツケ タ シ付 加 空 間 か らな るが 、 モヤ は伝 統 的 な炉 の あ る ヒ ロマ(オ ミヤ)を 中 心 と して 、 ブ ツ マ ・ネ マ な ど諸 室 を伴 っ て住 空 間 の 主 体 を な し、 サ シ カ ケ ・ツ ケ タ シ付 加 空 間 は モ ヤ の 住 機 能 を補 足 な い し強 化 す る ため に追 加 され た もの で あ る 。付 加 空 間 の うち前 面 の サ シ カ ケ はか つ て ネ ブ キ ゴヤ に も仮 設 的 な もの と して 現 れ て い た し、背 面 の 仏 壇 入 や ブ ツマ の ツ ケ タ シ も近 世 以 降 の もの で あ るが 、側 面 へ の エ ン の ツ ケ タ シ は近 代 に そ の 例 を み る こ とが で きた 。 サ シ カ ケや ツ ケ タ シ の付 加 空 間 に つ い て は 後 に詳 論 す るが 、い ず れ に して も当地 にお け る近 代 住 居 の 大 きな特 色 は 、 ク ズ ヤ に し ろ イ タヤ に しろ柱 建 て の2階 建(と き に は3階 建)の モヤ が 一 般 的 に確 立 した こ とで あ る。構 造 的 に い え ば 、 クズヤ は 柱 サ ス構 造 で あ り、 イ タヤ は 柱 梁 構 造 で あ る。 そ して 、 これ らの 構 造 体 に よ っ て 囲 わ れ た 空 間 が モヤ で あ り、住 空 間 の 主 体 を なす 部 分 で あ る 。 以上 の 観 点 お よ び 調 査 時 の 聴 取 りか ら先 の 調 査 事 例70例 の モ ヤ の 平 面 構 成 を 図 化 す る と図6 -6の よ うに な る

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' 近 代 ・山村 住 居 の モヤ 平 面 構 成

図6-6

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2,2モ ヤ へ の 進 入 方 向 モ ヤ 主 体 空 間 の 確 立 は 、 す な わ ち 内 部 空 間(住 空 間)の 定 立 を 意 味 す る と 同 時 に 外 部 空 間 と の 対 社 会 的 関 係 を 発 生 さ せ る 。 内 部 空 間 の 問 題 は 後 に ゆ ず る と し て 、 こ こ で は 外 部 空 間 と の 関 係 に か か わ る 問 題 と し て 、 進 入 方 向(妻 入 り か 平 入 り か)を と り あ げ る 。 一 般 に 今 日み る 農 山 村 住 居 の ほ と ん ど は 平 入 り で あ る が 、当 地 の 山 村 住 居 は い ま ま で の 事 例 に よ っ て も あ き ら か な よ う に 妻 入 りで あ る 。 妻 入 りで あ る理 由 に つ い て は す で に 述 べ て い る の で こ こ で は く り返 さ な い が 、 そ の 慣 行 は 近 代 に お い て も 受 け つ が れ て い る 。 し か し 、近 代 典 型 例 のNα4で は か な り不 自 然 な か た ち で は あ る が 平 入 りへ の 転 換 が お こ な わ れ て お り 、平 入 り へ の 志 向 性 が 皆 無 と い う わ け で は な い 。 こ の 場 合 の 平 入 り は モ ヤ 前 面 の サ シ カ ケ 部 分 で お こ な わ れ て い る だ け で 、 モ ヤ そ の も の へ の 進 入 方 向 は 妻 入 りで あ る 。 つ ま り、 こ の 例 で は 妻 入 り と平 入 りが 同 居 し て い る の で あ り、 こ れ は 妻 入 りか ら 平 入 りへ の 移 向 期 の 過 渡 的 現 象 と レ、え よ う カ}。 こ の 平 入 り へ の 志 向 性 が 近 代 以 降 ど の よ う に 進 展 し た か に つ い て は 、70例 の 進 入 方 向 を み る と よ くわ か る 。 形 式 的 に 平 入 り と な っ て い る 住 居 は 、70戸 中30戸(42.9%)を 占 め 約4割 が 平 入 り に 移 行 し て い る 。 し か し、 い ま す こ し 詳 細 に み る と 、先 のNα2に も み え た よ う に サ シ カ ケ 部 分(ま た は 側 面 の ツ ケ タ シ 部 分)の と こ ろ だ け 平 入 り に な っ て い る も の が19戸(27.1%)あ り(Nα2、 3、16、21、22、26、28、34、41、42、43、48、51、56、60、61、65、68、69)、 こ れ ら は モ ヤ に 対 し て は 平 入 り に な っ て い な い の で あ る 。モ ヤ に 対 し て 平 入 り に な っ て い る本 来 的 な 平 入 り は11 戸(15.7%)で(Nα1、18、35、36、37、38、40、45、47、53、70)、1.5割 程 度 で あ る 。 以 上 の 結 果 を 図 化 す る と 、 図6-7の よ う に な ろ う。 図6-7モ ヤ へ の 進 入 方 向(妻 入 り ・平 入 り)形 式 (妻 入 り形 式) (擬似 平 入 り形 式) 19戸 (27、1%) (平 入 り形 式) 11戸 (15.7%) 図 に よ って あ き らか な よ う に 、旧来 の伝 統 を墨 守 す る妻 入 りの もの約6割 、擬 似 的 な平 入 り(擬 似 的 な近 代 化)に 移 行 して い る もの 約3割 、 本 来 的 な 平 入 りに移 行 して い る もの 約1割 で あ る。

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こ の 割 合 は 、 資料 の 調 査 時 点 、 昭 和48年(1973)現 在 の 値 で あ るか ら、 も ち ろん こ れ を もっ て近 代 住 居 の 妻 入 り ・平 入 りの 割 合 とす る こ とは で きな いが 、近 代 に 端 を発 した平 入 りへ の移 行 が 徐 々 に で は あ るが 進 行 した こ とは事 実 で あ る。 そ れ に して も、本 来 的 な平 入 り形 式 を と る もの が1割 程 度 で あ る とい う こ とは 、当 地 が い か に 妻 入 り地 帯 で あ り、平 入 りへ の移 行 が ス ム ー ズ に お こ な わ れ な か っ た か を物 語 る もの で あ ろ う。 そ して 、当 地 の モ ヤ へ の 進 入 方 向 は つ い に妻 入 り形 式 の 優 勢 の う ち に 今 日 まで の 歴 史 を終 え るの で あ る。 2.3モ ヤ の 平 面 形 状 以 上 は モ ヤ 主体 空 間 の 外 部 との対 社 会 的 関 係 と して 進 入 方 向 を と りあ げ た の で あ った が 、今 度 は モ ヤ 主 体 空 間 その もの に 目を 向 け る。 まず は モ ヤ 全 体 の形 状 ・寸 法 か らみ て い くこ とに す る。 先 に もふ れ た よ う に 、 モ ヤ は 間 口(梁 間)× 奥 行(桁 行 〉の 長 方 形 平 面 を な す 。 そ こで まず70例 の モ ヤ 間 口長 さか らみ て い く。 そ れ は 次 の よ うで あ る。 (間 口 長 さ) 2.0間 2.5間 3.0間 3.5間 4.0間 4.5間 5.0間 (戸 数) 1戸 12戸 34戸 13戸 3戸 4戸 3戸 (戸 数 比) (1.4%)

繕憐 瓶

(4.3%) (5,7%) (4.3%) 注) Nα15の 間 口長 さ は3.25 間 で あ る が 、3.0間 と し て 集 計 し て い る (以 下 同 様)。 上 に み る よ う に 、 間 口 長 さ は2.0間 か ら5.0間 に ま た が っ て い る が 、 大 半(84.3%)は2.5間 か ら 3.5間 に 集 中 し て い る 。 か つ て の ネ ブ キ ゴ ヤ の 間 口長 さ は3.5間 で あ っ た し 、近 代 典 型 例 に お い て も サ ス 組 を屋 根 に 乗 せ る ク ズ ヤ は3.0間 か3.5間 で あ っ た 。 こ の あ た りの 間 口長 さ が ク ズ ヤ の 標 準 的 寸 法 で あ ろ う。4.0間 以 上 は 近 代 以 降 に 一 般 化 す る 梁 束 立 て の イ タ ヤ と み な し う る 。平 均 間 ロ 長 さ は3.2間 で 、近 代 住 居 に お い て も3.0∼3.5間 の 伝 統 的 間 口 長 さ が 温 存 さ れ 、一 部 に4.0∼5.0間 の も の が 現 わ れ て い る 様 子 が う か が え る 。 次 に 奥 行 長 さ に つ い て み る と 以 下 の よ う で あ る 。 (奥 行 長 さ) 3.5間 4.0間 4.5間 5.0間 (戸 数) 2戸 2戸 6戸 21戸 (戸 数 比) (2、9%〉 (2.9%) (8.6%) (30。0%) 一30一

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5.5間 6。0間 6.5間 7.0間 7.5間 8.0間 13戸 13戸 8戸 2戸 2戸 1戸

1辮熱

(2.9%) (2.9%) (1.4%) 注) Nα38の4.75間 は4.5間 Nα39の6.75間 は6.5間 Nα57の6.25間 は6.0間 と し て 集 計 し て い る (以 下 同 様)。 上 に み る よ う に 、奥 行 長 さ は3.5間 か ら8.0間 に ま た が り、 聞 口 長 さ の2.0∼5.0間 に 比 べ て 振 幅 が 大 き い 。 も と も と タ テ ヤ 造 は 間 口 よ り も 奥 行 方 向 の 延 伸 に よ っ て 住 空 間 の 拡 大 を 計 る た め 、奥 行 長 さ に 大 き な 差 が 現 わ れ る の で あ る 。 奥 行 長 さ は5.0∼6.5間 の 間 に 大 半(78.6%)の 住 居 が 集 中 し 、 こ の あ た り が 標 準 的 な 寸 法 と い え よ う 。 平 均 奥 行 長 さ は5.6問 で あ る 。 以 上 、 間 口 と奥 行 の 寸 法 を そ れ ぞ れ 別 個 に み て き た が 、70例 を統 一 的 な 間 口 ・奥 行 の 観 点 か ら グ ラ フ 化 し た の が 図6-8で あ る 。 平 面 形 状 を わ か りや す くす る た め 、 本 論 で は 細 長 比(奥 行 長 さ/間 口 長 さ)な る 概 念 を 導 入 し て い る が 、 こ こ で 扱 っ て い る モ ヤ 主 体 空 間 は 間 口 × 奥 行 の 単 純 な 長 方 形 平 面 を な す の で 細 長 比 も 求 め や す い 。 サ ス 組 の 屋 根 を 乗 せ る ク ズ ヤ で は 間 口 が3.5間 程 度 に 制 約 さ れ る の で 、 床 面 積 を大 と す る た め に は い き お い 奥 行 を 長 く し な け れ ば な ら な い 。 そ の 結 果 と し て 細 長 比 は 必 然 的 に 大 き く な る 。 図6-7に あ き ら か な よ う に 、 細 長 比 の 最 大 はNα29、 55で2,50を 超 え て い る 。 実 際 に こ れ ら は 、 間 口2.5間 、 奥 行6.5間 で 細 長 比 は2.60と な る 。 間 口 に 比 し て 奥 行 の 深 い タ テ ヤ 造 で あ る 。 一 方、カ ヤ 葺 き の サ ス 構 造 か ら板 葺 き の 梁 束 立 て 構 造 に 移 行 す る と 、間 口 が4.0間 以 上 に 拡 大 さ れ 間 口 と奥 行 の 差 が 少 な くな り、 そ の 結 果 細 長 比 は 小 さ く な る 。 か り に 、上 記 の 間 口2.5間 、奥 行 6.5間(細 長 比2.60)の 住 居 を 、 間 口4.0間 と す る と奥 行 は4.06間 と な り細 長 比 は1.02と な る 。 こ れ は ほ と ん ど 正 方 形 と い う こ とで あ る 。事 実 、 図 に お い て も 細 長 比1.00に 近 い もの が 存 在 す る 。 Nα66が そ れ で あ り、 こ の 場 合 は 間 口4.5間 、 奥 行5.0間 で 、 そ の 結 果 と し て 細 長 比 は1.11と な る 。

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モ ヤ 主 体 空 間 の 間 ロ(梁 間)・ 奥 行(桁 行)長 さ 図6-6 8,0 7.0 6.0 奥 行 ( 桁 行 ) 長 さ ( 間 ) 5.0 4.0 5.0 4.0 3,0 3.0 2.0 間 ロ(梁 間)長 さ(間) 32

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こ の よ うに細 長 比 の大 小 は 平 面 の 形 状 を示 す だ け で な く、構 造 や 時代 性 、ひ い て は 内 部 の 空 間 構 成 や 住 様 式 な ど と も関連 して くる要 素 を もっ て い るが 、い ま概 略 的 に い えば 細 長 比 の 大 き い住 居 は伝 統 的 な ク ズヤ で あ り、細 長 比 の 小 さ い住 居 は 新 しい イ タ ヤ とい え る。 た だ し、伝 統 的 な ク ズ ヤ で も、小 住 居 で は 間 口 、奥 行 と も に小 さ い の で そ の 結 果 と して 細 長 比 も小 さ くな りイ タヤ と ま ぎ らわ しい が 、そ の 場 合 は建 設 時 期 、住 居 規 模 等 を考 慮 に 入 れ ね ば な らな い だ ろ う。ち な み に 、 前 に例 示 した 近世 文 書 「尾 添 村 村 民 八年 季 奉 公 請 状 」(文 政6年 ・1823)に み え た住 居 は、 「は り 三 間 行 間五 間 」 で あ っ た か ら、 こ の場 合 の 細 長 比 は1.67で あ る。 2.4モ ヤ の 空 間規 模 前 項 で は モ ヤ の 間 口長 さ ・奥 行 長 さが どの 程 度 の もの で あ るか 、 ま た 両 者 に よ っ て決 定 され る 細 長 比 は ど の範 囲 に ま た が るか を み た 。 本 項 で は 間 口 ・奥 行 に よ って 囲 まれ る面 積 、 す な わ ち モ ヤ の 規 模(床 面 積)に つ い て 検 討 す る。 しか し、 この 場 合 も規 模 は一 定 の 形(い まの 場 合 、 細 長 比)を もっ て い るの で両 者 を統 一 的 に み な け れ ば な らな い。 い わ ば 規 模 は 量 に属 す る こ とが ら で あ り、 形 は質 に属 す る。 そ の た め 、 モ ヤ 主 体 空 間 の 規 模(量)と 細 長 比(質)の 両 者 を組 合 わ せ た の が 図6-9で あ る(主 要 な 数 値 は 表61に 示 して い る)。 図 に よ っ て あ き らか な よ うに 、全 体 的 な傾 向 は 間 口長 さが 大 き くな る に つ れ て モ ヤ 床 面 積 も大 き くな り、 そ して 細 長 比 が小 さ くな る と い う事 実 で あ る。 間 口長 さが 小 さ くて も、奥 行 を延 伸 す れ ば モ ヤ 床 面 積 を大 き くす る こ とが で き るは ず で あ るの に 、その 傾 向 は み られ な い。 こ の事 実 は 何 を 意 味 す る の で あ ろ うか 。結 論 的 に い え ば 、そ れ は 当地 の近 代 化 を 象徴 す る住 居 の 変 革 で あ っ た とい え よ う。 間 口が 小 さ く(3.5間 以 下)奥 行 の 深 い 細 長 の ク ズヤ は 、 当 地 の 伝 統 的 な住 居 で あ り最 大 細 長 比 は、間 口2,5間 の場 合 は2.60、 間 口3.0間 の場 合 は2.50、 間 口3.5間 の場 合 は2.14と い うよ うに 、 いず れ も奥 行 が 間 口の2倍 を超 え て い る。 に もか か わ らず 、モ ヤ 床 面 積 は26.3坪 ど ま りで あ る。 他 方 、間 口長 さ4.0問 以 上 で は 細 長 比 が 極 端 に小 さ くな り、最 大 細 長 比 をみ て も、 間 口4.0間 の 場 合1.65、 間 口4.5間 の 場 合1.33、 間 口5.0間 の場 合1.60と い うよ うに伝 統 的 な クズ ヤ の 細 長 比 に は は る か に 及 ば な い 。 しか も モ ヤ床 面 積 は クズ ヤ の そ れ を上 ま わ る。 これ は イ タ ヤ に代 表 され る 近 代 住 居 の 新 し い傾 向 とみ な け れ ば な らな い。要 約 的 に い え ば、細 長 い クズ ヤ か ら方 形 に近 い イ タヤ へ の移 行 とい う こ とで あ り、 そ の 際 モ ヤ 床 面 積 の拡 大 を も と もな っ て い る と い う こ とで あ る。 も ち ろん 、 こ う した傾 向 は 当地 の 階 層 性 と もか らん で い よ う。Nα70の間 口5.0間 、奥 行8.0間 、 モ ヤ 床 面 積40.0坪 は70例 中の 最 大 住 居 で あ り、Nα1の 間 口2.0間 、奥 行4.0間 、モ ヤ 床 面 積8.0坪 の 最 小 住 居 との 間 に は い ち じる しい 規 模 差 が 存 在 す る。 上 記 の モ ヤ 床 面 積 は 、 と りあ え ず は1階 の 規模 を 示 す 指 標 で あ るが 、当 地 の 近 代 住 居 は ほ とん どが2階 建 で あ り、2階 部 分 の モ ヤ 床 面 積 も忘 れ られ な い。 モヤ 主 体 空 間 は柱 建 て で2階 まで 通

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す の で 、い わ ゆ る総2階 建 の か た ち とな り、1階 と同 じ床 面 積 が2階 部 分 に も生 じる こ と に な る。 した が っ て、 モ ヤ の 規 模 を 床 面積 で 考 え る場 合 は1階 ・2階 合 せ た 面 積 と考 え ね ば な らな い 。 ち な み に70例 の 階数 につ い て は 、2階 建66戸 、3階 建4戸 で あ る。 この よ うな モヤ 主体 空 間 の 立 体 化 も近 代 化 の あ らわ れ とい え る。 モヤ主体 空間の規模 と細長比 図6-9 3.0 2.5 細 長2.0 比 1.5 40.0 5.0 ● ■ ■ モヤ の床面積(坪) , . 1.0 ■ 一34一

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表6-1 モ ヤ 主 体 空 間 の 規 模 と細 長 比 間 口 (間) 戸 数 (比 、%) 最 大 モヤ 床 面 積 (坪) 最 小 モヤ 床 面 積 (坪) 平均 モ ヤ 床 面 積 (坪) 最 大 細 長 比 最 小 細 長 比 一 平 均 細 長 比 2.0 1 (1.4) 8.0 8.0 8.0 2.00 2.00 2.00 2.5 12 (17.1) 16.3 8.8 12.2 2.60 1.40 1.95 3.0 34 (48.6) 21.0 13.5 一 16.7 2.50 1.50 1.84 3.5 13 (18.6) 26.3 16.6 20.2 2.14 1.36 1.65 4.0 3 (4.3) 26.0 20.0 23.3 1.65 1.25 1.46 4.5 4 (5.7) 27.0 22.5 24.8 Il .33 1.11 1.22 一 5.0 3 (4.3) 40.0 30.0 34.2 1.60 1.20 一 1.37 計 、平 均 (100.0)70 123 .5 17.1 17.9 1.95 1.40 1.75 一 一 2.5モ ヤ の 列 構 成 以 上 、 モ ヤ 主 体 空 間 は 間 口(2.0∼5.0間)、 奥 行(3.5∼8.0間)の 長 方 形 平 面 を な す こ と を み た が 、 こ こ で は こ の 空 間 が ど の よ う に 室 構 成 さ れ て い る か を み て お く。 第1節 で もみ た よ う に 、 当 地 の 山 村 住 居 は 基 本 的 に 列 段 構 成 の 手 法 を と っ て い る が 、 こ の う ち 列 は 間 口 長 さ と 、 段 は 奥 行 長 さ と 相 関 す る 。 調 査 資 料70例 を み て も わ か る よ う に 、現 代 的 改 造 を へ た 平 面 構 成 に も 近 代 に お け る 平 面 形 式 が 色 濃 く残 っ て い る 。 そ れ ら か ら判 断 し て 、 ま ず は 間 口 長 さ と 関 連 す る 列 構 成 か ら み て い く。 間 口 長 さ2.0∼2.5間 の 小 間 口 で は 、列 構 成 を と る余 祐 が な く タ テ1列 の1列 型 と な ら ざ る を え な い 。 入 口 を は い っ て ヒ ロ マ ・ネ マ ・ブ ツ マ 等 が タ テ1列 に 並 ぶ タ イ プ で あ る 。 近 代 典 型 例Nα2 は 間 口 長 さ3.5間 で あ る に も か か わ ら ず1列 型 で あ る 。お も う に 、当 地 の も っ と も伝 統 的 な タ イ プ は こ の1列 型 で あ っ た で あ ろ う 。近 代 典 型 例Nα1は ヒ ロ マ の み の 単 室 住 居 で あ る が 、 こ の ヒ ロ マ の 背 後 に 順 次 室 を つ け た し て い っ た と考 え れ ば よ い 。 次 に 間 口 長 さ3.0間 の 場 合 、 ヒ ロ マ は 間 口 い っ ぱ い に と ら れ る が 、 そ の 背 後 で2列 構 成 と な る 。 3.0間 の 分 割 方 法 は2.0間 と1.0間 で 、1.5間 と1.5間 な ど の 分 割 は お こ な わ れ な い 。そ れ は ブ ツ マ を 2.0間 幅 と す る た め で あ り 、 こ れ は 当 地 の 普 遍 的 な 空 間 構 成 原 理 と な っ て い る 。1.0間 幅 の 方 は ネ マ と な る 小 室 で あ る 。 こ の 分 割 手 法 は 近 代 典 型 例Nα3に も み ら れ た も の で あ り 、 当 地 に お け る 浄 土 信 仰 の 篤 さ が しの ば れ る ブ ツ マ 優 先 の 思 想 で あ る 。 次 に 、間 口 長 さ3.5間 の 場 合 、ヒ ロ マ は 間 口 い っ ぱ い に と ら れ 、そ の 背 後 の 室 は2列 に な り ブ ッ マ 側2.0間 、他 方1.5間 に 分 割 さ れ る 。こ の 場 合 、 プ ツ マ を さ ら に 立 派 に す る た め に2.5間 と し他 を 1.0間 と す る こ と も な い 。 つ ま り 、 ブ ツ マ の 間 口 長 さ2.0間 は い わ ば 当 地 の 不 分 律 と し て 固 定 さ れ

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計 画 原 理 と して 定 着 し て い る の で あ る 。 次 に 間 口 長 さ4.0間 の 場 合 、 ブ ツ マ は や は り2,0間 幅 と な り 、 し た が っ て 他 方 の 室 の 幅 は ブ ツ マ と 同 じ く2.0間 と な る 。 つ ま り2.0間 が2列 と ら れ る こ と に な る 。近 代 典 型 例Nα4が そ の 典 型 例 で あ る が 、 こ こ に い ま ひ とつ の タ イ プ が あ る 。 そ れ は 近 代 典 型 例Nα5に み られ る タ イ プ で 、 ブ ツ マ の 列 を ヒ ロ マ の 方 ま で 延 長 し 、 室 を つ く る タ イ プ で あ る 。 こ の 場 合 は ヒ ロ マ を 囲 ん で 室 がL型 に 配 列 さ れ る こ と に な る 。 そ の た め 、結 果 的 に こ の タ イ プ は ヒ ロ マ 部 分 も2列 に な り モ ヤ 内 部 が す べ て2列 に な る 全2列 型 が 生 れ る こ と に な る 。こ の 全2列 型 は い ま ま で に な い 近 代 的 な タ イ プ と み な す こ とが で き る 。 本 論 で は こ の タ イ プ を ヒ ロ マ 全2列 型 と称 し 、 注 目 し て お き た い 。 次 に 間 口 長 さ4.5間 、5.0間 の 場 合 は 、や は りブ ツ マ の2.0間 幅 を と る と 、残 りは2.5間 な い し3.0 間 と な る 。 ブ ツ マ の 列 を 伸 ば す ヒ ロ マ 全2列 型 は 、 こ の あ た りの 間 口長 さ に な る と い っ そ う容 易 に な り定 式 化 す る 。他 列 の2.5間 な い し3.0間 は1.0間 か ら2.5間 の 幅 を も っ て 分 割 さ れ1室 な い し 2室 が つ く られ る 。 し た が っ て 、 こ の 場 合 は 横 に3室 が 並 ぶ 場 合 も で て く る 。 図6-10プ ツ マ と ネ マ の 位 置 関 係 モ ヤ 奥 行

以 上 に よ っ て 間 口長 さ と列 構 成 の 関 係 に つ いて は お わ るが 、最 後 に2列 の 場 合 ブ ツ マ が 左 右 い ず れ の列 に くる か につ い て 述 べ て お きた い。 こ れ もモ ヤ の 空 間構 成 原 理 に属 す る こ とが ら で あ る。 こ れ につ い て は、 ヒ ロマ に お け る炉(ジ ロ)の 位 置 、 さ ら に は ミズ ブ ネ(水 舟)、 水 利 系 統 の 問題 に まで 戻 らね ば な ら な い。 第2章 、 図2-6「K、 とタ ナ マ エ の位 置 関 係 」に 示 して い る よ う に、 ミズ ブ ネ に象 徴 され る水 ま わ り台 所 の 側 に ヒ ロマ の 炉 を偏 心 させ る 。炉 の寄 って い る 方 が 生 活 系 の 空 間 で あ り、反 対 側 が祭 祀 系 あ る い は儀 礼 系 の 空 間 と され る の で 、炉 の寄 って い る方 にネ マ を と り、 反 対 側 に ブ ツ マ を置 く。 こ れが 構 成 原 理 で あ る。近 代 典 型 例Nα3、4、5は こ の こ と 一 一36一

参照

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