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特 集 画像診断の治療への貢献 CT/MRI を中心に 4.MRI による乳癌の画像診断 : 術前薬物療法における治療効果予測 サブタイプ別における検討 久保田一徳, 藤岡友之, 齋田幸久, 立石宇貴秀 東京医科歯科大学医学部附属病院放射線診断科 Breast MRI: Evaluation of

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画像診断の治療への貢献 —CT/MRIを中心に—

Breast MRI: Evaluation of the Response to Neoadjuvant Therapy

–The Features of Each Intrinsic Subtype–

Kazunori Kubota, M.D., Ph.D., Tomoyuki Fujioka, M.D., Ph.D., Yukihisa Saida, M.D., Ph.D., Ukihide Tateishi, M.D., Ph.D. Summary

Breast cancer is known to be a heterogeneous group of genetically distinct disease entities, and the treatment approach is sophisticated based on each intrinsic subtypes. Luminal A-like, Luminal B-like, HER 2 positive, and triple negative breast cancers (TNBCs) are defined by clinico-pathologic surrogate markers with the estrogen receptor (ER), progesterone receptor (PgR), ERBB2 (HER2 or HER2/neu) and Ki-67 index. Neoadjuvant chemotherapy and hor-mone therapies can be pharmaceutical sensitivity tests performed in vivo, and they have been used before surgery to reduce the tumor size and make breast-conserving surgery possible. To achieve the optimal therapeutic effect, it is important to establish the appropriate methods for evaluating the tumor response. Although not perfect, MR imaging is the best imaging method to predict a pathologic complete response. Through the use of the BI-RADS lexicon terms, interpretation of the focus, mass, and non-mass lesions has been clarified, and a more accurate evaluation of the extent of tumors can be determined. Imaging characteristics of the molecular subtypes differ, and the response to the adjuvant therapy also differs within the subtypes. TNBCs have some distinctive features such as an oval or round shapes and a high signal on T2 weighted images through tumoral necrosis, and the shrinking pattern is also typical. The pathologic complete response rate is higher for TNBCs and HER2 positive cancers, and lower for luminal A or B cancers. Through the use of breast MRI, the negative predictive value for residual tumors is also higher for triple negative breast can-cers and HER2 positive cancan-cers, whereas it is lower for luminal A or B cancan-cers. By taking the characteristics of each intrinsic subtyp-einto account, breast MRI is more clinically useful in the prediction of tumor response after neoadjuvant therapy.

4.MRIによる乳癌の画像診断:術前薬物療法における治療効果予測

─サブタイプ別における検討─

久保田一徳,藤岡 友之,齋田 幸久,立石宇貴秀

東京医科歯科大学医学部附属病院 放射線診断科

Department of Diagnostic Radiology, Medical Hospital, Tokyo Medical and Dental University NICHIDOKU-IHO Vol.60 No.1 54-63 (2015)

はじめに

現在本邦では、乳房MRIは術前の広がり診断として用 いられることが多い1)。乳房造影MRIは最も乳癌病変の 検出感度が高いことから、乳癌の画像診断において重要 な役割を担っている。近年、MRI装置や撮像技術の向上 によって画質が向上し、さらに各種ガイドラインも導入 されて読影方法も確立されつつある。また、乳癌治療の 進歩も目覚ましい。特に細胞毒性抗癌剤による化学療法、 内分泌療法、抗HER2療法を中心とした分子標的薬とい った薬物療法の個別化が進んでいる分野でもある。ここ では現在の乳癌治療をふまえ、術前薬物療法における MRI診断について解説する。

サブタイプ別の治療方法と効果判定の意義

乳癌は単一の疾患ではなく、病理組織学的にも遺伝学 的にも異なる疾患の集合であると考えられている。いま

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合わせ、手術前の化学療法に分子標的治療薬を用いるこ とも多く、またホルモン陽性乳癌に対して内分泌療法も 行われることがある。 術前薬物療法における画像診断の役割は、治療効果を 確認し、広がり診断することである4)。治療効果が得ら れていない場合や腫瘍増大(progressive disease: PD)の 際には、薬物変更や手術先行に切り替えることがある。 手術前には、最終的な病変の広がりを知ることで、温存 術での手術範囲の設定を行うことになる。造影増強効果 を用いて微細な病変をとらえ、かつ客観的な判定ができ るMRIは効果判定に適していると考えられている。現時 点で画像からpCR(注:定義によって乳管内病変の遺残 を含める場合と含めない場合がある)を予測する試みも あるが、画像上CR(clinical complete response: cCR) と判定されても病理学的には微細な病変が遺残すること があり、現時点では手術は必須と考えられている。しか し、広がり診断に用いて病変を確実にとりきるためには、 十分にpCR予測ができる精度を目指すべきであり、適切 なMRI診断方法とサブタイプ別の画像診断を考慮すべき であろう。

BI-RADSに基づいた造影MRIの読み方

ACR (American college of Radiology)に よ る BI-RADS (Breast Imaging Reporting and Data System) の第5版(MRIに関しては第2版に相当)が2014年2月に 発行された5)。本邦の乳房MRIのガイドラインでも BI-RADSに基づく読影が推奨されており6)、ここでは BI-RADSに基づいた読影方法の一部を紹介する7、8) では、各々の遺伝的に異なるintrinsic subtypeごとに、 異なった薬物治療が行われている。2013年のザンクト ガレン国際乳癌会議にて決定されたこれらのサブタイプ を近似する基準では、エストロゲン受容体(estrogen receptor: ER)、プロゲステロン受容体(progesteron re-ceptor: PgR)、ERBB2(HER2またはHER2 / neu)受 容体、およびKi-67 indexの免疫組織化学的な定義を使 用することにより腫瘍を5つの臨床病理学的サブタイプ に分類している。これらのサブタイプそれぞれに対して 個別に、効果のある薬物療法が行われる(表1)2) 再発リスクの高い乳癌に対する薬物療法は、全身の微 小転移を抑える目的で行われる。NSABP(National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project)B-18 試

験など大規模ランダム化比較試験によって、術前と術後

のどちらで化学療法を行っても無病生存期間(disease free survival)および全生存期間(overall survival: OS) に差は認めないことが明らかとなり3)1990年代後半頃 から化学療法を術前に行うことが広まってきた。術前に 補助化学療法を行うことはNAC (neoadjuvant chemo-therapy)あるいは、まず全身療法を先行するという意味 でPST(primary systemic therapy)と表現される。術 前に薬物療法を行うことで, ①腫瘍の縮小効果が得られた場合に、温存可能となる 症例が増えることや切除範囲の縮小が望める ②in vivoでの薬物療法の反応性を確認することができ、 効果のない薬物療法の継続を避けることができる といった大きなメリットがある。また、病理学的完全奏 功(pathological complete response: pCR)が得られた

症例においては、予後(OS)が期待できることが知られ ている。最近はそれぞれのサブタイプの薬物治療方法に 表1 乳癌intrinsic subtypeの代替定義と推奨される治療方針 Intrinsic subtype(代替定義) 臨床病理学的な特徴 推奨される治療方針 Luminal A (Luminal A-like) ERおよびPgR陽性 HER2陰性 Ki-67低値 内分泌療法単独 Luminal B

(Luminal B-like, HER2陰性)

ER陽性 HER2陰性

Ki-67高値あるいはPgR低値〜陰性

内分泌療法±化学療法

Luminal B

(Luminal B-like, HER2陽性)

ER陽性 HER2過剰発現・増幅あり 内分泌療法+抗HER2療法+化学療法 Erb-B2 overexpression (HER2陽性, non-luminal) HER2過剰発現・増幅あり ERおよびPgR陰性 抗HER2療法+化学療法 Basal-like

(Triple negative, ductal)

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1.BPE (background parenchymal enhancement) の概念の導入

MRIでは正常の乳腺組織がホルモン・サイクルの影響

を受けて増強効果を呈することが知られている。そこで、

読影のまず初めにBPE(背景乳腺実質の増強効果)を

「minimal」、「mild」、「moderate」、「marked」といった

4段階で評価し、左右対称/非対称の評価とあわせて記載 を行う。BPEが強い場合は、小病変が埋もれる可能性が あることが前提となる。BI-RADS-MRI初版では stip-pledという表現がなされていたが、BPEの概念を導入す ることでBI-RADS-MRI第2版ではその用語は削除され た。「染まっているものは全て異常の可能性がある」とい った読影を避けることができ、MRIでどこまでの病変評 価が可能かを適切に明示することになる。 2.BI-RADS lexiconに基づいた病変記載とカテゴリー 判定 BI-RADSのカテゴリー分類(表2)および用語の一部 (表3)を表に示す。前述のBPEと区別されるものが病変 であり、「focus」、「腫瘤(mass)」、「非腫瘤性病変(non-mass lesion)」のどれかに分類し、それぞれの評価を行い、個々 の病変ごとのカテゴリー判定を行う。 表2 BI-RADSのカテゴリー分類(参考文献1)より一部訳を改変) カテゴリー0:追加の画像検査や過去画像との比較読影が必要. カテゴリー1:陰性. カテゴリー2:良性. カテゴリー3:おそらく良性.悪性の可能性は2%以下. カテゴリー4:異常疑い. カテゴリー5:悪性を強く疑う.癌の可能性は95%以上. カテゴリー6:悪性の証明があるもの. 表3 BI-RADS-MRI 第2版(参考文献5)より一部抜粋して転載) Focus Mass

 Shape Round, Oval, Irregular

 Margin Circumscribed, Not circumscribed (Irregular, Spiculated)  Internal Enhancement Homogeneous, Heterogeneous,

Rim enhancement, Dark internal septation

Non-Mass Enhancement

 Distribution Focal area, Linear / Linear branching, Segmental Regional, Multiple regions, Diffuse

 Internal Enhancement Homogeneous, Heterogeneous

Clumped, Clustered ring

Non-enhancing findings

  Ductal precontrast high signal on T1W, Cyst, Postoperative collections (hematoma/seroma), Post-therapy skin thickening and trabecular thickening, Non-enhancing mass, Architectural distortion, Signal void from foreign bodies, clips, etc.

Associated features

  Nipple retraction, Nipple invasion, Skin retraction, Skin thickening, Skin invasion (Direct invasion/ Inflammatory cancer), Pectoralis muscle invasion, Chest wall invasion, Architectural distortion

Kinetic cruve assessement

 Initial phase Slow, Medium, Fast

 Delayed phase Persistent, Plateau, Washout         太字はより悪性を示唆するとされている所見.

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Focusは通常5mm未満の点状の増強効果であり、非特

異的な所見のみを指しカテゴリー3として経過観察の対

称となる。特別な特徴がある場合は、massに準じた評

価を行うことになる。

腫瘤(mass)については、形態評価(morphology)とし て「shape」、「margin」、「enhancement」の評価を行い、 さらに造影パターン解析(kinetic curve assessment)を

行う。それぞれの所見用語ごとに「良性より」、「悪性より」

であることが示唆されるが、総合的な判定基準として明

確なものはMRIには用意されておらず、潜在的なリスク

によっても判定が異なるとされている。基本的な判定ル ールとしては、形状評価でirregular shapeやirregular marginといった悪性を疑う際は造影パターンよりも形状 を優先し、形状評価で良性を疑う楕円形や境界明瞭であ っても造影パターンがwashoutといった悪性の可能性を 示唆する場合は造影パターンの所見を優先して判定す る。 非腫瘤性病変(non-mass lesion)では、病変の分布と 内部性状をあわせての判定となる。Clumped enhance-mentやclustered ring enhancementは非浸潤性乳管癌 (ductal carcinoma in situ: DCIS)の特徴的な所見とさ

れており、その画像的特徴を理解しておきたい9) この他、副次的な所見についての評価を行い、記載す る。 3.広がり診断とBI-RADS-MRI 本邦での乳房MRIは、多くが術前の広がり診断として 行われている。したがって、すでに悪性と確定済みの BI-RADS「カテゴリー6」の病変をMRIで見ていること になる。しかし、すでに指摘された病変と近接していた としても、未確定の乳管内病変の描出などがある場合に はそれを別病変としての判定を行い、個々のマネージメ ントを考えることが可能である。また、MRIの広がり診 断の目的の1つが、多発病変(multifocal、multicentric) の検出である。別の病変(副病変)が見られれば各々に対 して評価を行い、再度超音波検査での検索(second look ultrasoundあるいはtarget ultrasound)や、必要に応じ

て生検(超音波ガイド下、あるいは見えなければMRIガ イド下で)を追加するということが考えられる。 現在、乳房温存手術だけでなく、乳房再建術をふまえ た皮膚温存あるいは乳頭温存乳房切除術も行われるよう になってきている。乳頭や乳頭下への広がり、皮下への 近接など、手術方法と密に関係する所見についても注意 した読影が必要であろう。

効果判定方法

乳癌の術前薬物療法が実施される場合には、治療効果 のモニタリングが必要である。治療中にPDとなってい ないかを早期に検出することが重要であり、PDとなっ た場合には薬剤を変更することや、手術療法先行に切り 替えることとなる。視触診での判定の他、乳癌の術前薬 物療法の画像評価に使用されるモダリティとして現在の ところ超音波検査、マンモグラフィ、MRI、CT、そし て18F-FDG-PET/CTが 代 表 的 で あ る10)。 こ の 中 で、 MRIは現在最も正確な治療効果判定が可能なモダリティ とされており、造影剤は必要ではあるが被曝もなく繰り 返し施行することが可能であり、病変描出能が高いだけ でなく、客観性に富むことや径計測の正確性が高いこと から汎用されている。MRIでの効果判定の際には

RE-CIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)

ガイドラインに従う計測での判定が一般的である。 RE-CISTは固形がんの臨床試験の際に用いられるガイドラ インであるが、一般的に通常臨床の上でも計測・判定方 法を用いていることが多い。その際、腫瘍の長径計測を 行い、ベースラインからの変化率を計測する(1臓器につ き2か所までを計測し、径の和を使用する)。画像上、病 変が消失していれば完全奏効(complete response: CR)、 ベースラインから径が30%以上減少していれば部分奏効 (partial response: PR)、経過中の最小径20%以上増加(か つ5mm以上増加)していれば進行(progressive disease: PD)、PRにもPDにも相当しない場合には安定(stable disease: SD)と判定される11)。造影MRIでの計測の際に は、造影のどのフェーズで計測を行うかの問題がある。 一般に乳癌が最も造影増強効果を呈するのは造影後1~2 分の間とされており、この時間の間に撮像された早期相 の画像での評価が重要視されることが多い。しかし、薬 物療法に反応した場合、腫瘍が線維化に置き換わってく ることによって増強効果のピークが遅くなり、遅延相の 方が残存腫瘍の範囲を正確に表す場合もある。一方で、 腫瘍細胞が完全に脱落して線維化や瘢痕のみとなった場 合でも、その線維化・瘢痕の領域が遅延性に増強効果を 呈することがあり、画像で完全に区別することが困難な 場合がある。

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このような評価方法の他に、造影MRIでの血流動態評 価を行うことや、拡散強調像の評価や見かけの拡散係数 (apparent diffusion coefficient)の算出を行うこと12)MR

spectroscopyでコリンピークの減少を検出すること13)など で、治療開始後早期に治療効果を検出する試みもなされ ている。治療後早期での効果判定を行い、効かない薬剤 は早期にスイッチするということである。RECISTで用 いられる腫瘍径での評価では、変化が出現するまでは治 療後しばらく時間経過が必要であるが、その前に血流動 態の変化や細胞密度の低下を検出することができれば、 その後治療を継続させた場合に最終的な奏効の予測がで きるであろうという考え方である。化学療法の1あるい は2サイクル後にMRIを撮像してベースラインのMRIと の比較を行い、その結果で以後の治療効果予測ができれ ば、効果の高い薬剤は継続し、効果の低い薬剤を早期に 変更するといったことが可能となる。 薬物療法終了後の最終状態でのMRIにおいては現在、 ①最終的な効果(response)がどう判定されるかを RE-CISTに準拠して客観的に判定すること、②術前の最終 MRIとして病変の広がりを知ること(手術法の選択や、 温存術での手術範囲の設定)といった意義がある。一定 の条件下ではpCRを予測することができるケースもある が、現状ではpCRを考える場合でも必ず手術が行われる。 MRIの評価においては、前述したものも含めて以下の ようなポイントが問題となりうる。 ・微細な病変がMRIで描出されない場合がある。特に、

乳管内病変(中でもlow grade DCIS成分)のみの場合 や、浸潤性小葉癌では広がりがあっても見えない場合 がある。したがって、病理組織像をふまえてどこまで 画像評価・判定が可能かを考えておく必要がある。 ・病変が造影早期相では同定できず、遅延性の増強効果 を呈することがある。 一方で、線維化・肉芽腫など瘢痕の領域が遅延性に増 強効果を呈することがあるため、客観的な判定が難しい ことがある14) ・ BPEが治療に伴って減ることがある。背景乳腺のホル モン環境の変化によるものが考えられるが、画像上消 失・減少したものが正常乳腺間質を見ていたものか、 病変自体が減少したのか判別しがたい場合もある。 ・壊死や嚢胞変性によって、計測での評価が難しい場合 がある。 ・病理学的な効果判定(組織学的効果判定基準)と一致し ないことも多い。 これらを解決するためにも、サブタイプ別の画像の特 徴や薬物療法での変化の特徴を知っておくことが有用と 思われ、次項にて詳述する。

サブタイプ別の画像診断方法

乳癌治療がintrinsic subtypeごとに行われるようにな ってきたとともに、画像評価についてもサブタイプ別の 特徴が報告されてきている15~22)。術前薬物療法における 画像評価でも、サブタイプごとに縮小パターンや、遺残 傾向などがわかってきており23~26)、それらの情報をふま えた画像判定を行うことが有用と思われる。

1.Triple negative breast cancer (TNBC)

まずは特徴的な画像所見を呈することの多いTNBCに ついて解説する。 Triple negativeを呈する乳癌の約80%が遺伝子発現解 析上はbasal-like型乳癌であり、家族性乳癌の原因遺伝 子の1つとして知られているBRCA1との関連があると されている16)。この他、triple negativeの中には髄様癌 や腺様嚢胞癌など遠隔転移リスクが低く予後が良い特殊 型の一部も含まれており、これらは区別して考える必要 がある。 TNBCの特徴としては、増殖速度が速いために中間期 癌(検診と検診のインターバルの間に発見される)が多い といわれている17)。病理学的には組織学的グレードが高 いことが多く、本邦の乳癌取り扱い規約分類での病理組 織学的分類における充実腺管癌の像を呈することが多い といわれている18~20)。この他、扁平上皮癌や、紡錘細胞 癌(化生癌)もTNBCとして見られることがある。他のサ ブタイプと比較して単発の腫瘤を呈することが多く、画 像上は円形あるいは楕円形で明瞭な境界を呈することが 多い(round or oval shape、smooth margin)。形態上は このようなおとなしい形状を呈するため、マンモグラ フィ、超音波検査、MRIなど含めて線維腺腫との鑑別が 問題となることがある。造影dynamic studyによる造影 kineticsの解析にてwashoutを呈するものが多いことが、 診断の一助になる。また、浸潤癌に特徴的なサインの1 つであるrim enhancementを伴うことが多いとされる。 T2強調像では内部壊死を反映して高信号部を伴うことが 特徴の1つとされている15、21)(図1)。

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2.Luminal type Luminal typeの乳癌はホルモン依存性の乳癌であり、 増殖活性が低く予後が良いと考えられるluminal A type と、増殖活性が比較的高いと考えられるluminal B type に分けられている。Luminal Aとluminal Bは前述の ER、PgR、HER2といった既存の病理学的因子のみなら ず、増殖能のマーカーであるki-67の発現の程度を合わ せて判定される。ケースによっては多遺伝子解析ツール (Oncotype DXやMammaPrint)による再発リスクから 判定される場合もある。 病理学的には、luminal Aおよびluminal Bともに核グ レードや組織学的グレードが低いことが多く、浸潤性乳 管癌のうち硬癌や乳頭腺管癌の像を呈することが多いと されている。特殊型の中では粘液癌や浸潤性小葉癌の多 くや、やや稀な管状癌がluminal Aサブタイプを呈する ことが多い18~20)Luminal typeの特徴として、 ①多発することがあるとされている。

②Massのことが多い(67%)が、non-mass lesionのこ とも比較的多い(33%)とされている。

これは、乳管内病変を伴うことによるものと思われ、 報告によって頻度は異なっている。

③Irregular shapeで、spiculatedあ る い はirregular margin。 などが挙げられる。浸潤性発育が主体の硬癌や小葉癌、 乳管内主体に発育し不整形に広がる乳頭腺管癌といった 病理学的な特徴を反映しているものと思われる21)(図2)。 3.HER2陽性乳癌 HER2とは細胞表面に存在する受容体タンパクであり、 図1 術前化学療法にてpCRが得られたtriple negative乳癌 右乳癌(ER陰性,PgR陰性,HER2陰性) A 化学療法前のMRI(造影早期相MIP像) B 化学療法前のMRI(造影早期相軸位断) C 化学療法前のMRI(T2強調像) 右乳房内下(乳頭腫瘤距離40mm)に不整形,辺縁不整な腫瘤,径23mmを認める(A;→).Rim enhancementを伴う.内部にT2強調像で高信号, 増強効果の乏しい部分があり,壊死と考えられる. D 化学療法後のMRI(造影早期相MIP像) E 化学療法後のMRI(造影早期相軸位断) MRI上,病変は消失しており,CRと判定した.温存術が施行され,病理学的にも病変の遺残はなく,pCR(grade 3の組織学的治療効果判定)であっ た. A B C D E

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細胞の増殖、分化などの調節に関与している。HER2が 過剰発現している乳癌は増殖能が高く予後不良な病態と 考えられるが、2001年に登場したハーセプチン®(トラ スツズマブ)をはじめとした分子標的治療薬の登場によ り、薬物治療の効果が望める乳癌となっている。 HER2陽性乳癌では、多発(multifocal)することがし ばしばあり、乳管内病変を伴うこともしばしばある。病 理学的には、核グレードや組織学的グレードが高いこと が多く、発見時のサイズも大きいことが多い。マンモグ ラフィでは石灰化を伴うことが多いとされている。MRI

上 はirregular shapeで、spiculatedあ る い はirregular marginのことが多いとされるが、この他、際立った形態 的な特徴の報告は乏しい22)(図3)。 4.サブタイプ別の化学療法の効果とpCR予測 サブタイプによって形状や画像上の性状が異なること が知られ、さらに化学療法に対しての効果や画像上の縮 小・遺残パターンも異なることが報告されている23~26) TNBCおよびHER2陽性乳癌は術前化学療法への反応が 高く、報告によって多少異なるがそれぞれ34%、39%と A B C D E F 図2 術前化学療法後に病変が遺残していた例 左乳癌 Luminal B type(ER陽性,PgR陽性,HER2陰性,Ki-67:20%),

A 化学療法前のMRI(造影早期相MIP像) B 化学療法前のMRI(造影早期相軸位断)

左乳房12時方向に不整形,spiculaを伴う腫瘤(径40mm)を認め,内部不均一な増強効果を認めた.腫瘤の尾側に乳管内病変を疑うnon-mass enhancement(clumped pattern)が連なっている.

C 化学療法途中のMRI(造影早期相軸位断) 3ヶ月目のMRIでは腫瘤は縮小(径16mm)し,PRと効果判定された. D 化学療法後のMRI(造影早期相MIP像) E 化学療法後のMRI(造影早期相軸位断) F 化学療法後のMRI(造影遅延相軸位断) 造影早期相では病変は消失しており,CRと判定した.手術病理では,浸潤癌・乳管内癌ともに遺残しており,grade 1aの組織学的治療効果判定であっ た.遅延相ではもとの病変の範囲に粒状・索状の増強効果が見られており,後の考察にて線維化とともに乳癌病変の遺残を見ていた可能性が考えら れた.

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いった高い確率でのpCRが得られることが知られてい る。一方、luminal typeでは術前化学療法でpCRを得ら れるのは7%程度という低い値での報告がなされてい る24) TNBCにおいては典型的な腫瘤縮小パターンを呈し、 画像上腫瘍消失の際にはpCRを高い精度で予測すること が可能といわれている(図1)。また、HER2陰性乳癌で も画像上腫瘍消失の際にはPCRであることが多いといわ れている(図3)。一方で、luminal typeでは多発あるい は広がりのある病変の遺残が多く、樹枝状に広がってい た病変が縮小してもサイズに変化がない場合や軽度の縮 小にとどまり、島状や索状に浸潤癌や乳管内癌が残存す ることが多いとされる14)(図2)。術前化学療法後のMRI にて病変が消失(cCR)していた場合でも、luminal type での陰性的中率(pCRを予測できる一致率)は47%と低 く、TNBCにて60%、HER2陽性乳癌にて63%と高い数 値での報告がある25)。また、cCRpCR割合については、 全体でcCR38%であったものに対して実際のpCRは25 %と乖離があり、内訳としてはluminal typeではcCR32 % に 対 し てpCRが11% と 違 い が 大 き く、TNBCで は cCR43% に 対 し てpCRが45%、HER2陽 性 乳 癌 で は cCR52%に対してpCRが41%とも報告されている26) 現状では、luminal typeについてのpCR予測は慎重に行 うべきであり、病変が遺残している可能性を十分に考慮 した術前広がり診断を行う必要があるだろう。 図3 術前化学療法にてpCRが得られたHER2陽性乳癌 左乳癌(ER陰性,PgR陰性,HER2 3+), A 化学療法前のMRI(造影早期相MIP像) B 化学療法前のMRI(造影早期相軸位断) C 化学療法前のMRI(造影遅延相矢状断)

左乳房下部に不整形・境界不明瞭な腫瘤24×19×16mmがあり,内部不均一,rim enhancementを伴う(BI-RADS 6: 生検確定済み).

乳頭方向に腫瘤より25mmの範囲にnon-mass enhancement (clumped pattern)を伴い,乳管内進展の随伴と思われる(BI-RADS 5).乳頭とは

25mm程度離れている. D 化学療法後のMRI(造影早期相MIP像) E 化学療法後のMRI(造影早期相軸位断) MRI上,病変は消失しており,CRと判定した.温存術が施行され,病理学的にも病変の遺残はなく,pCR(grade 3の組織学的治療効果判定)であっ た. A B C D E

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おわりに

以上のように、サブタイプごとの画像の特徴と術前薬 物療法における画像評価方法、読影方法について解説を 行った。個別化治療が行われるようになったのに伴い、 画像診断でも単に「広がり」を診断するだけでなく、それ ぞれにあわせた適切な「判定」を行うことが求められてい る。乳癌診療の進歩のスピードは早いが、基本的な読影 方法を理解して適切な判定・診断を行っていけるように していきたい。 【参考文献】 1) 日本乳癌学会編:科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライ ン2.疫学・診断 編2013年版(第2版).東 京:金原出版, 2013 2) Goldhirsch A, Winer EP, Coates AS, et al: Personaliz-ing the treatment of women with early breast cancer: highlights of the St Gallen International Expert Con- sensus on the Primary Therapy of Early Breast Can-cer 2013. Ann of Oncol 24: 2206-2223, 2013 3) Wolmark N, Wang J, Mamounas E, et al: Preoperative chemotherapy in patients with operable breast cancer: nine-year results from National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project B-18. J Natl Cancer Inst Monogr 30: 96-102, 2001 4) 本田 聡,角田博子,菊池真理,他:乳癌術前薬物療法の 効果判定 ─局所評価を中心に─.画像診断 33: 1052-1063, 2013 5) Morris EA, Comstock CE, Lee CH, et al: ACR BI-RADS® Magnetic Resonance Imaging. In ACR BI-RADS® Atlas, Breast Imaging Reporting and Data System. Reston; American College of Radiology, 2013 6) 日本乳癌検診学会,乳癌MRI検診検討委員会:乳がん発症 ハイリスクグループに対する乳房MRIスクリーニングに関す るガイドライン ver.1.2. http://www.jabcs.jp/images/ mri_guideline_fix.pdf 7) 久保田一徳,町田洋一,片山 貴,他:乳房MRIの読影方法: BI-RADS-MRI. 臨床放射線 58: 517-528, 2013 8) 久保田一徳,町田洋一,片山 貴,他:乳房MRI ─BI-RADS-MRIに基づいた画像評価方法─.画像診断 33: 1005-1017, 2013 9) Tozaki M: BI-RADS-MRI terminology and evaluation of intraductal carcinoma and ductal carcinoma in situ. Breast Cancer 20: 13-20, 2013 10) 立石宇貴秀:乳癌術前化学療法の画像診断による効果予測 ─18F-FDG-PET/CTと他のモダリティ─.臨床放 射線 59: 1277-1283, 2014 11) Eisenhauer EA, Therasse P, Bogaerts J, et al: New re-sponse evaluation criteria in solid tumours: revised RECIST guideline (version 1.1). Eur J Cancer 45: 228-247, 2009 12) Woodhams R, Kakita S, Hata H, et al: Identification of residual breast carcinoma following neoadjuvant che-motherapy: diffusion-weighted imaging-comparison with contrast-enhanced MR imaging and pathologic findings. Radiology 254: 357-366, 2010 13) Tozaki M, Sakamoto M, Oyama Y, et al: Predicting pathological response to neoadjuvant chemotherapy in breast cancer with quantitative 1H MR spectroscopy using the external standard method. J Magn Reson Imaging 31: 895-902, 2010 14) 五味直哉:乳腺 MRIの臨床 ─ 術前化学療法の効果判 定─.日独医報 54: 43-51, 2009 15) Miyake KK, Nakamoto Y, Kanao S, et al: Journal Club: Diagnostic value of (18)F-FDG PET/CT and MRI in predicting the clinicopathologic subtypes of invasive breast cancer. AJR Am J Roentgenol 203: 272-279, 2014 16) 波多野久美,廣瀬正典,扇谷芳光,他:Triple negative乳 癌のMRI.臨床放射線 58: 529-537, 2013 17) Collett K, Stefansson IM, Eide J, et al: A basal epitheli- al phenotype is more frequent in interval breast can-cers compared with screen detected tumors. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 14: 1108-1112, 2005 18) Tamaki M, Kamio T, Kameoka S, et al: The relevance of the intrinsic subtype to the clinicopathological fea- tures and biomarkers in Japanese breast cancer pa-tients. World J Surg Oncol 11: 293, 2013 19) Caldarella A, Buzzoni C, Crocetti E, et al: Invasive breast cancer: a significant correlation between histo-logical types and molecular subgroups. J Cancer Res Clin Oncol 139: 617-623, 2013 20) Shibuta K, Ueo H, Furusawa H, et al: The relevance of intrinsic subtype to clinicopathological features and prognosis in 4,266 Japanese women with breast can-cer. Breast Cancer 18: 292-298, 2011 21) Uematsu T: MR imaging of triple-negative breast can-cer. Breast Cancer 18: 161-164, 2011 22) Youk JH, Son EJ, Chung J, et al: Triple-negative inva-sive breast cancer on dynamic contrast-enhanced and diffusion-weighted MR imaging: comparison with oth-er breast cancer subtypes. Eur Radiol 22: 1724-1734, 2012 23) Trop I, LeBlanc SM, David J, et al: Molecular classifi- cation of infiltrating breast cancer: toward personal-ized therapy. Radiographics 34: 1178-1195, 2014 24) Loo CE, Straver ME, Rodenhuis S, et al: Magnetic res-onance imaging response monitoring of breast cancer during neoadjuvant chemotherapy: relevance of breast

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参照

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