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はじめに 日本助産師会の母乳育児の考え方と 10 カ条について 母乳育児成功のための 10 カ条 について 母乳育児成功のための要件としての分娩 第 1 条母乳育児についての基本方針を文書にし 関係するすべての保健医療スタッフに周知徹底しましょう 第 2 条この方針を実践するために必要な技能を すべ

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赤ちゃんとお母さんにやさしい

母乳育児支援

~写真でみる助産師のための

「母乳育児成功のための 10 カ条」の実践~

公益社団法人 日本助産師会

母乳育児支援業務基準検討特別委員会

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はじめに

日本助産師会の母乳育児の考え方と 10 カ条について

「母乳育児成功のための 10 カ条」について

母乳育児成功のための要件としての分娩

第1条 母乳育児についての基本方針を文書にし、関係するすべての保健医療スタッ

フに周知徹底しましょう。

第2条 この方針を実践するために必要な技能を、すべての関係する保健医療スタッ

フにトレーニングしましょう。

第3条 妊娠した女性すべてに母乳育児の利点とその方法に関する情報を提供しま

しょう。

第4条 産後 30 分以内に母乳育児が開始できるよう、母親を援助しましょう。

第5条 母親に母乳育児のやり方を教え、母と子が離れることが避けられない場合で

も母乳分泌を維持できるような方法を教えましょう。

第6条 医学的に必要がない限り、新生児には母乳以外の栄養や水分を与えないよう

にしましょう。

第7条 母親と赤ちゃんが一緒にいられるように、終日、母子同室を実施しましょう。

第8条 赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけの授乳を勧めましょう。

第9条 母乳で育てられている赤ちゃんに、人工乳首やおしゃぶりを与えないように

しましょう。

第 10 条 母乳育児を支援するグループ作りを支援し、産科施設の退院時に母親に紹

介しましょう。

10 カ条のその後

母乳育児を継続する間、そして終了するときも、お母さんと赤ちゃんが適切な支

援が受けられるようにしましょう。

1.「母乳育児を継続するための医療連携」 2.母乳不足・母乳不足感 1)母乳不足の分類 2)不足感の見極めとケア 3)母乳分泌不足の支援 4)正常分娩された事例をもとに補足 の必要性を検討した事例 5)赤ちゃんの成長 3.乳腺炎と乳房トラブル 4.乳頭損傷や咬傷などの乳頭トラブル 5.職場復帰 6.母乳と補完食(離乳食) 7.卒乳・断乳について 「母乳を突然飲まなくなった時」 8.妊娠中の授乳 9.母子感染と児の栄養方法について 10.災害時の乳幼児栄養に関する指針

WHO コード:母乳代用品のマーケティングに関する国際規準

定期的な評価と記録

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はじめに

日本助産師会母乳育児支援業務基準検討特別委員会では、多くの助産師が母乳育児支援を行っている にも関わらず乳房ケアに関しての統一した見解がなかったことから、乳腺炎の統一した支援基準を示す ことを目的として2011 年に母乳育児支援業務基準「乳腺炎」を刊行しました。次いで、2015 年、実践 現場でより活用しやすいように、「乳腺炎2015」改訂版を発刊しました。発刊後、乳腺炎に悩む母親達 に自信をもって乳房ケアが行えるようになったという助産師の声が聞かれるようになりました。その後、 乳腺炎に限らず、母乳育児支援全般に関して、統一した見解が欲しいという意見も耳にするようになり ました。そこで今回は、母乳育児支援の最も要となる、UNICEF/WHO の「母乳育児成功のための 10 カ条」(以下10 カ条とする)に基づき、助産師による実践ガイドを作成しました。 母乳育児成功のためには、妊娠中からの教育と産後早期からの支援が重要です。10 カ条を遂行するこ とで90%以上の方が母乳育児で赤ちゃんを育てることができます。そこで、本書は、支援する側の助産 師だけのガイドに留まらず、支援する助産師と、支援を受けるお母さんが同じ情報を共有しながら母乳 育児成功へ向けて努力できるようなガイドにしたいと考えました。 本書には以下のような特徴があります。 1 点目は、写真を見て、10 カ条の理解が深まるようにしました。 助産院で出産したお母さんや自宅出産したお母さんに関わる助産師が、どのように実践していったら よいか、写真を取り入れながら具体的に解説しました。その内容には、助産院という限られた施設にと どまらず、産科施設に勤務する助産師も施設内で応用できるように工夫し、産後に家庭訪問する助産師 や、保健指導専門で助産院を開業している助産師、そして、保健センターなどでお母さんとかかわる助 産師、母乳外来を担当している助産師にとっても参考にできる内容です。 2 点目は、お母さん向けの資料を付けました。 母乳育児を行いたいと思うお母さんが、支援者向けの 10 か条を理解することで、お母さんご自身の 実践ポイントとして理解して頂くと役に立つであろうと思われる情報を末尾に解説付録として付け加 えました。支援者とお母さんが情報を共有するための資料としてご活用ください。 3 点目は、「10 カ条のその後の支援」として助産師会オリジナルの項目を追記しました。 施設を退院した後から約2 年間に渡る母乳育児継続のための支援として、母乳不足への対応、離乳食 と母乳育児、職場復帰、卒乳や断乳等についての解説を加えました。 本書が、母乳育児の実現と継続に向けて取り組む助産師や母乳育児支援者にとって、実践の場で役に 立つガイドになることを願っています。 公益社団法人日本助産師会 母乳育児支援業務基準検討特別委員会

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日本助産師会としての母乳育児支援に対する考え方

お産をとり扱う助産院における母乳育児支援の具体的な方法

日本助産師会に加入しているお産を取り扱う助産院(出張を含む)においては、母乳育児において得 られる恩恵(利点)を重視し(P.●●参照)、母乳育児を推進しています。そこで、出生直後からの母乳 育児を支援する場合は、「助産業務ガイドライン」に則り「医療安全上留意すべき事項」を考慮して頂 くことを基本姿勢としています。特に、早期母子接触(STS)における留意点、新生児ビタミン K の投 与義務に関しては、以下に記す基準を設けています。また、母乳不足の考え方や補足の基準は、本文中 に記載しました。その他、乳頭の形態学的な分類において、臨床上危惧されている陥没や扁平乳頭のお 母さんへの「乳頭ケア」に関しては、妊娠中の教育とコミュニュケ―ションスキルの項目に含めました (P.●●参照)。 1.「早期母子接触」実施の留意点 (HP アドレス挿入)検索日 1)母子共に実施できる状態であるかを観察し、母親に十分な説明をして本人の希望を確認する。 2)抱き方を十分指導し、常時そばで観察できる体制をとって実施する。それが不可能な場合は、SpO2 モニターを装着し、頻繁な観察を行う。 3)施設内で実施基準を整備して、安全に実施する。 4)早期母子接触を実施した場合には、その状況を必ず記録する。 5)出生後早期に授乳を行う場合には、児が生後胎外生活に適応する時期であることを踏まえ、細心の 注意をはらい、授乳指導するとともに観察し、記録する。 6)早期母子接触を行う助産師は、急変時に備えるために新生児蘇生法を必ず全員が習得する。 日本周産期・新生児医学会、日本助産師会等の 8 団体は、「『早期母子接触』実施の留意点」を2012 年 10 月に発表している。今後実施する上では参考にすることが重要である。 http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=118 2.新生児のビタミンK投与について (HP アドレス挿入)検索日 1)投与の必要性 ビタミンKは肝臓でのビタミンK依存性凝固因子の産生に必要であり、欠乏すると凝固因子の不足 による出血傾向を起こす。乳児とくに新生児期はビタミン K 欠乏症の危険性が高い。その理由とし て、ビタミン K は胎盤移行性が悪い、腸内細菌叢での産生が少ない、母乳中の含有量が少ない、腸 管での吸収能が低い、還元酵素活性が低い、などがある。ビタミンK欠乏性出血は、生後数日以内に 発症し消化管出血を特徴とする新生児ビタミンK欠乏性出血症と、それ以降に発症し頭蓋内出血を特 徴とする乳児ビタミンK欠乏性出血症に分けることができる。これらの出血症はビタミンK製剤(ケ イツーシロップ®)を新生児に予防投与することで発症を防ぐことが可能である。この予防効果の科 学的根拠は高く、全ての新生児にガイドラインに従い必ず実施すべきである 。また、投与の実施に ついて母子健康手帳に記録する必要がある。一方、医療従事者がビタミンK製剤の投与を行わないあ

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るいは家族に投与を指導しなかった場合には、その結果発症したと考えられるビタミンK欠乏性出血 症について責任追及される可能性がある 。 2)投与方法 日本小児科学会のガイドラインに従い予防投与を実施する(図)。なお、このガイドライン は産婦 人科診療ガイドラインにも記載されている 。ただし、早産児および合併症を持つ 正期産新生児の場 合には別の投与方法が必要である 。 図挿入 日本小児科学会「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の改定ガイドライン」

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母乳育児成功のための要件としての出産

「お母さんにやさしいケア」に関する世界共通評価基準

「赤ちゃんにやさしい病院運動」(BFHI)のために世界共通に用いられる最低限度の評価基準として は、「10 カ条」と、「母乳育児代用品のマーケティングに関する国際規準」があります。その他には「お 母さんにやさしいケア」と、「HIV と乳児の栄養法」についての評価基準があります。 この章では「お母さんにやさしいケア」について解説します。助産院で出産するお母さんにとっては、 「お母さんにやさしいケア」は、当然のように保証されている内容ではありますが、施設によって支援 の内容に差が出ないように検討される必要があります。ただし、ハイリスクの出産を取り扱う施設にお いては、合併症のために特別に制限が必要であることもあります。その場合は、理由を本人に説明し、 お母さんが承諾した場合は、ここに記す限りではありません。 <お母さんが希望した場合、施設の方針として配慮して頂きたいこと> 陣痛中や出産時 ‣ 付添人に同伴してもらい、継続して身体的/精神的支援を受けることができるようにします。 ‣ 軽い飲み物や食べ物をとってもらうことができるようにします。 ‣ 合併症のために鎮痛薬や麻酔薬が必要となる場合以外には、個人が好むことを尊重しつつ、薬を用 いないで痛みを緩和する方法を考慮することができるようにします。 ‣ お産の進行中は、歩いたり動いたりすることなどを含め、自分の好みの体位を取ることができるよ うにします。ただし、合併症のために特別に制限が必要である場合は、その理由を説明することが必 要です。 フリースタイルのお産後、家族と共に お産の評価基準引用

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●●助産院の母乳育児に関する考え方と具体的方法(方針) わたしたちは、お産を通じてお母さまと赤ちゃんのきずなが深まるお手伝いをします。そのためには、女性がも つ「産む力」と、赤ちゃんがもつ「生まれる力」を引き出すことが大切です。 また、母乳育児では赤ちゃんはお母さまの乳を吸うことで安心感を得、お母さまもまた赤ちゃんに乳を授けるこ とで母親としての本来の力を目覚めさせていきます。生きる基本となる「食」も、お母さまの乳を吸うことからは じまります。 なによりも、お母さんとなるあなたが、本来の自分の輝きをみつめるきっかけとなることが、わたしたちの一番 の願いです。私たちスタッフ一同、お母さまと赤ちゃんが、当たり前に母乳育児が行える環境を整え、下記のこと を行っています。 1.母乳育児成功のための10 ヵ条に沿って母乳育児が行えるよう支援します。 1)母乳育児の方針を文書にしてスタッフ一同で理解し共有しています。 2)母乳育児支援に必要な知識や技術について、スタッフ一同で定期的に研修を行っています。 3)妊娠中には、ご本人とご家族に母乳育児の利点と方法について具体的にお知らせしています。 4)出産直後からお母さまと赤ちゃんが肌と肌をふれ合せる母子早期接触と、それに続く生まれて初めての 授乳ができるよう支援しています。 5)必要なときにはいつでも、母乳育児の方法を具体的にお知らせしています。もしお母さまと赤ちゃんが 離れることがあるときには、母乳分泌を保つ方法を具体的にお知らせしています。 6)医学的に必要でない限り、赤ちゃんには母乳以外の栄養や水分を不必要に飲ませないように配慮してい ます。補足が必要なときには、哺乳びん以外のカップなどを用います。 7)医学的な理由がない限り、昼も夜もお母さまと赤ちゃんがいつも一緒にいられるように支援しています。 8)赤ちゃんが母乳を欲しがるときに欲しがるだけ授乳できる環境を提供し、必要に応じて支援しています。 9)母乳育児が軌道に乗るまでの間は特に、おしゃぶりや人工乳首を使わないようにしています。 10)退院後の母乳育児について話し合い、お帰りになる地域で利用できる母乳育児支援サービスやサポー トグループについてご紹介しています。 2.人工乳などの母乳代用品や哺乳びん、人工乳首等の販売促進は行っていません。 3.人工乳などの母乳代用品等の商業的な試供品や支給品等、また、それらの製品を販売促進するための資料の入 った無料おみやげセットはお渡ししていません。

第 1 条 母乳育児についての基本方針を文書にし、関係するすべての保健医

療スタッフに周知徹底しましょう。

 あなたの施設の母乳育児と乳児の栄養方法についての方針を作り、お母さんと赤ちゃんに効果的で 一貫性のあるケアを提供することを保障しましょう。  「国際規準」と「10 ヵ条」が明記され、それらに基づく母乳育児の具体的実施方法が理解しやすい 表現で書かれている方針文書を作りましょう。  方針文書は、お母さん、赤ちゃん、家族すべてのケアをするスタッフすべてが読めるよう、玄関や 廊下、どの部屋にも貼っておきましょう。  方針文書は、ホームページに掲載することもできますし、母子訪問する時には、お母さんや家族が みられるようにカードにして持ち歩くなどの工夫もできるでしょう。

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母乳育児相談や出張ケアの場合には、以下のような工夫ができるでしょう。 ■■母乳育児相談 ■■では、母乳育児はお母さまの健康、赤ちゃんの成長発達、母子の交流、家族にとって大切なものと考えています。 お母さまと赤ちゃんがキラキラ輝いて、母乳育児をラクに楽しく行えるよう、母乳育児成功のための10ヵ条とWHOコ ードを尊重してお手伝いしています。 1)母乳育児の方針を文書にして明示しています。 2)母乳育児支援に必要な知識や技術について、定期的に研修しています。 3)妊娠中には、ご本人とご家族に母乳育児の利点と方法について具体的にお知らせしています。 4)出産直後からお母さまと赤ちゃんが肌と肌をふれ合せる母子早期接触と、それに続く生まれて初めての授乳が できるよう、お母さまが産科入院施設と相談できるよう支援しています。 5)必要なときにはいつでも、母乳育児の方法を具体的にお知らせしています。もしお母さまと赤ちゃんが離れる ことがあるときには、母乳分泌を保つ方法を具体的にお知らせしています。 6)医学的に必要でない限り、赤ちゃんには母乳以外の栄養や水分を不必要に飲ませないよう、お母さまが産科入 院施設が相談できるよう支援しています。補足が必要なときには、哺乳びん以外のカップなどを用います。 7)医学的な理由がない限り、昼も夜もお母さまと赤ちゃんがいつも一緒にいられるよう、お母さまが産科入院施 設と相談できるように支援しています。 8)赤ちゃんが母乳を欲しがるときに欲しがるだけ授乳できるよう支援しています。 9)母乳育児が軌道に乗るまでの間は特に、おしゃぶりや人工乳首を使わないよう支援しています。 10)退院後の母乳育児について話し合い、退院後のお母乳育児相談の計画を一緒に立てたり、お帰りになる地域 で利用できる母乳育児支援サービスやサポートグループについてご紹介しています。 2.人工乳などの母乳代用品や哺乳びん、人工乳首等の販売促進は行っていません。 3.人工乳などの母乳代用品等の商業的な試供品や支給品等、また、それらの製品を販売促進するための資料の入った無 料おみやげセットはお渡ししていません。 ホームページの例

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・ 妊娠中の女性、お母さん、および赤ちゃんに少しでも接する機会のあるスタッフ(事務職・調理係・ 掃除係も含む)全員が、母乳育児と乳児の栄養法についての方針に関するオリエンテーション や教育を受けましょう。 ・ 妊娠中の女性、お母さん、および赤ちゃんをケアするスタッフ全員が、母乳育児の重要性を理解す るともに、施設における母乳育児を保護・推進・支援する方針やサービスについて熟知して母乳育 児支援を実践しましょう。 ・ 施設は、スタッフが母乳育児についてのトレーニング(母乳育児支援における知識とスキル向上の ための教育)を受けた経験があるかないかを確認しましょう。もしトレーニングを受けた経験がな ければ、着任して6 カ月以内に母乳育児推進と支援のあり方についてトレーニングを受けられるよ う支援しましょう。

第2条 この方針を実践するために必要な技能を、すべての関係する保健医療

スタッフにトレーニングしましょう。

UNICEF/WHO は、「お母さんと赤ちゃんにやさしい社会」の実現のために、医療従事者の教育コース (20 時間コース)を示し、母乳育児推進活動の一環としています。トレーニング(母乳育児支援におけ る知識とスキル向上のための教育)は、施設に勤務するスタッフの80%が、20 時間以上のトレーニング を受けることが望ましいとされています。 トレーニングの写真 研修の写真

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トレーニング(母乳育児支援における知識とスキル向上のための教育)を受けましょう ・「20 時間コース」トレーニングは、NPO 法人日本ラクテーション・コンサルタント協会が行っていま す。またその他母乳育児支援の研修会は、全国都道府県助産師会、日本母乳の会などが企画・開催し ています。インターネットのWeb サイトやホームページ等で確認してみるのも良いでしょう。 ・トレーニング用のテキストには、「赤ちゃんとお母さんにやさしい母乳育児支援ガイド」、「10 カ条のエ ビデンス.日本母乳の会」があります。いずれも母乳育児成功のための10 カ条の実践のための知識や スキル、具体的な方法が紹介されています。中でも「赤ちゃんとお母さんにやさしい母乳育児支援ガ イドベーシックコース」は、UNICEF/WHO が母乳育児支援に携わるスタッフに向けて、世界規模で 推奨している教材の日本語版です。 ● 長期間でコース運営を行う場合の一例 日赤医療センターでの実践例 日赤医療センターの実践例から 長期間で 20 時間トレーニン グを実施する場合、トレーニン グの骨子ともいえる「コミュニ ケーションスキルトレーニング」 を研修会のたびに短時間実施す るなどの工夫で、学習効果が上 がりました。 毎回はじめの 15 分間 は、コミュニケーショ ンスキルトレーニン グを実施しました。

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助産院や病産院で行うトレーニングの実際 ・トレーニング実施には、短期間集中コース(下記参照)や分割して長期間で実施するなど施設にあう 方法で、スケジュールを計画するとよいでしょう。「赤ちゃんとお母さんにやさしい母乳育児支援ガイ ドベーシックコース」(pp.3~15)が参考になります。 ● 短期間でコース運営をする一例 「赤ちゃんとお母さんにやさしい母乳育児支援ガイドベーシックコース.医学書院」P.16 より抜粋

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母親学級の写真 双方向性の雰囲気がある もの 両親学級の写真 祖父母が一緒の 指導場面の写真

第3条 妊娠した女性すべてに母乳育児の利点とその方法に関する情報を提

供しましょう。

1.お母さんに妊娠中から母乳育児に関する情報を伝えることの意味 お母さんが妊娠中から母乳育児について知っておくことは重要です。母親学級などの妊娠中のクラス には母乳の項目を作り情報提供しましょう。クラスがない場合は、妊婦健診で行うとよいでしょう。 クラスの内容には、母乳育児の様々な利点や正しい情報を伝えましょう。また、産後の授乳をイメー ジできるような工夫のため、人形や乳房モデルを用いるなどの教材の工夫をするとよいでしょう。 乳房モデル 2.お母さんが、わが子の栄養方法について十分な情報に基づいて決定することが出来るために大切な こと  お母さんが自信を持つこと お母さんが、母乳育児をすることに対し自信を持つことが出 来るよう支援しましょう。また、母乳で育てないお母さんの 場合にはできるだけ安全な置換栄養法を見つけることが出 来るという自信が持てるよう支援しましょう。  正しい情報に基づいて選択すること 母乳育児の重要性と置換栄養(母乳代用品)を使うことのリ スクに関する情報など、支援者の個人的な見解ではなく、正 確で事実に基づいた情報を提供しましょう。  理解をうながす工夫 わかりやすい言葉で、お母さんの置かれた状況に応じた情報 を伝え、理解を深められるようにしましょう。  支援を受けられることの保障 お母さんがもっと情報が欲しいときは、これまで以上に話し 合うなどしましょう。 入院中、退院後などその時々にあわせた支援が受けられる先 を知らせましょう。 3.お母さんが自信を持つことができるための、関わり方の工夫  お母さんの、授乳に関する不安や心配事について話し合う際は、一方向の講義形式ではなく、双 方向性にするといいでしょう。  お母さんの思いや希望をよく聞きましょう。もし情報が不足しているようであれば補い、お母さ んの気持ちを強化できるよう支援しましょう。  お母さんと、助産師が信頼関係を築けるよう、コミュニケーション・スキルを使いましょう。 乳房モデルor人形抱っこ の様子

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4.クラス後の調整  お母さんと話し合った内容やお母さんの希望や思いは記録として残すか、書いて提出していただ きましょう。すべてのスタッフが見ることが出来るよう準備し、産後ケアをする際に活用しまし ょう。  中には、HIVなどの血液疾患、特別な薬物の使用、乳がんなどの治療との並走など、特別な支援 を必要とするお母さんもいます。妊娠中から情報を把握し、個別で関わるようにしましょう。 5.出産場所の選択  お母さんが出産場所を選択するとき、母乳育児が選択基準となるよう助言しましょう。また、選 択した出産場所で母乳育児に関する希望を伝えることは大切であり、もし施設の方針が違った場 合、調整していくことができることを伝えましょう。 ~母乳育児の利点~ ~お母さんにとって~ 子宮復古を助け産後出血を減少させる 疾病を予防する ・がんを減少させる(閉経前の乳がんの減 少・卵巣がんの減少・子宮体がんの減少) ・骨粗しょう症を予防する(6 カ月以上の 母乳育児は骨喪失を予防する) ・妊娠糖尿病(母乳育児により、妊娠糖尿 病がその後糖尿病への移行リスク減少) 避妊効果がある 置換栄養を用いることのリスクを赤ちゃん に与えなくてすむ ~赤ちゃんにとって~ 最適の栄養である ・消化が良い、赤ちゃんの必要に合わせて成分が変化する、 赤ちゃんに必要なすべての栄養が含まれている、 免疫力を増強する: 疾病を予防する ・下痢を予防する ・呼吸器感染症を予防する ・中耳炎を予防する乳児死亡減少させる ・慢性疾患のリスクを軽減する ・アレルギーのリスクを軽減する 家族歴にⅠ型糖尿病のような病気がある場合、赤ちゃんが それを発症するリスクを軽減する 大人になってからの血圧調整機構をプログラムする 肥満になるリスクを軽減する 母子のきずな形成に役立つ 発達や IQ に良い結果をもたらす 顔全体の筋肉や顎を発達させる ~社会にとって~ いつでも清潔で安心な母乳が与えられる 医療費を少なくすることにつながる 調乳物品などが不要であり経済的 ゴミが出ず環境にやさしい 児が病気になりにくくお母さんや家族に欠 勤が少なくてすむ 災害時に特別な支援物品がなくてすむ

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第4条 産後30分以内に母乳育児が開始できるよう、母親を援助しましょう。

陣痛時や出産時にお母さんが経験する援助(ケア)は、母乳育児や、赤ちゃんをどう育てるかの姿勢 に影響を与える可能性があります。お母さんとなる女性が主体性を持ち、支援されることで自己効力感 を感じ、その上で、目覚めている赤ちゃんと交流したい気持ちになるように援助することが「第4 条」 の実践につながります。赤ちゃんとお母さんにやさしい実践における具体的な支援においては、お母さ んにやさしいお産の評価基準を(P.●●参照)をご参照ください。 母乳育児成功のためには、産後30 分~1 時間以内に母乳育児が開始できるよう援助しましょう。早 期母子接触の留意点*に努めながら、出産後すぐに赤ちゃんをお母さんに抱いてもらい、産後のルチー ンの流れを優先しない状況で、肌と肌の触れ合いを行います。赤ちゃんが乳房から飲もうとしているタ イミングにお母さんが気づくように促しながら必要なら援助を申し出ます。 *分娩直後の早期接触時の留意点(P.●●参照) (http://www.midwife.or.jp/pdf/h25other/sbsv12_1.pdf#search=2015-9-23 検索) 早期接触時の重要性と注意事項 早期の肌と肌の触れ合いは、赤ちゃんにとって沢山の恩恵があります。実施する場合には、まずは お母さんの希望の意志を確認し、スタッフが必ず付き添い、赤ちゃんが自ら探索反射や吸啜行動を起 こすまでゆったりとした中で継続することが望ましいでしょう。 実施する上での注意事項 ‣ 希望の有無は、妊娠中に確認し、記録に残しておきましょう。 ‣ 母子双方とも実施可能な状態であるか確認します。 ‣ お母さんの上体は、30°前後挙上します。 ‣ お母さんの胸や腹部の汗を拭きとり、羊水や血液を拭きとった後の赤ちゃんの胸がお母さんの胸 に合わさる状態で、お母さんの両手でしっかりと赤ちゃんを支えてもらいます。 ‣ お母さんの胸と胸の間に赤ちゃんの顔が挟まり鼻腔を閉塞しないように注意し、顔は横に向け、 呼吸が楽にできるように配慮します。その上から、温めたタオルをかけます。パルオキシメータ ーのプローブを下肢に装着した上で、スタッフは側に付き添い、観察と記録を行います。もしも、 その場を離れる場合は、中止します。 恩恵と配慮 1.赤ちゃんはお母さんの胸に抱かれることで、心拍と呼吸が安定する助けとなり、激しい啼泣によ るストレスとエネルギーの浪費を減らします。ただし、呼吸状態の観察は怠らないようにします。 赤ちゃん自らが乳首を加える写真

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2.お母さんの体温で赤ちゃんを温めることになり、低体温を予防します。体温が奪われることを予 防するために、計測などの処置は後回しにします。 3.赤ちゃんの代謝の適応と血糖の安定化を助けます。 4.赤ちゃんを最初に抱くのが、助産師や看護師や医師などではなくお母さんであることは、赤ちゃ んの鼻腔や口腔を通してお母さんの細菌叢が移行し、赤ちゃんの腸に定着します。 5.赤ちゃんは最初の 1~2 時間ははっきりと目覚めているので、お母さんと赤ちゃんの絆づくりを促 します。2~3 時間を過ぎると、赤ちゃんは長時間眠ってしまうことが多いので、このタイミング を逸しないようにしましょう。 6.赤ちゃんが乳房を見つけ、自分でお母さんの乳首を吸着できるように待ちます。そのことで、最 初の数時間にお母さんから引き離された赤ちゃんや1 時間以内に吸うことができなかった赤ちゃ んよりも、上手く吸啜できるようになります。 7.肌と肌の最初の触れ合いは、状態が安定しているすべての赤ちゃんとお母さんにとっても利点が あります。 *肌と肌の触れ合いの障壁は、医学的懸念よりも日常の業務と関係していると考えられます。お母さ んと赤ちゃんへの恩恵よりも、日常の業務が優先されていないか見直してみましょう。 ‣ 低体温を懸念する場合:赤ちゃんの肌の水分(羊水や血液)を手早く拭きとって、お母さんの裸 の胸に、できるだけ早く裸の赤ちゃんをのせます。お母さんと赤ちゃんの上には乾いたタオルま たは毛布、さらに赤ちゃんの頭も覆うと熱の喪失を減らせます。 ‣ 赤ちゃんの診察時:大部分の診察は、お母さんの胸に横たわっている状態で行えます。 ‣ お母さんの処置時:会陰の診察や手当が必要な場合でも、赤ちゃんはお母さんの胸に置いておく ことができます。ただし、妊娠中にお母さんの意志を確認しておきましょう。 ‣ 赤ちゃんの沐浴が必要な場合:初回沐浴を遅らせることで、胎脂が赤ちゃんの皮膚にしみこみ肌 を滑らかにして保護し、体温喪失を予防します。出生直後の水分(羊水や血液)は、拭き取りま す。 ‣ お母さんが疲れている場合やお母さんが赤ちゃんを抱きたがらない場合:赤ちゃんを抱きたくな いほど疲れているのはまれであるため、陣痛時の実践を見直しましょう。また、お母さんが精神 的な支援を必要としている場合もあります。そのような場合、触れ合いを促すことで赤ちゃんと のきずなを深める可能性があります。ただし、スタッフが付き添い、お母さんと赤ちゃんの二人 だけにしません。お母さんが傾眠傾向にある場合には、中止します。

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文献から新しい乳房解剖図を入れる

第5条 母親に母乳育児のやり方を教え、母と子が離れることが避けられな

い場合でも母乳分泌を維持できるような方法を教えましょう。

1.乳房の解剖図と母乳分泌の生理 乳房がどのようになっているのか、母乳はどのようにし て作られるのかを、助産師はお母さんにわかりやすく説明 をしましょう。新しい解剖図によれば、乳管は比較的少数 の主乳管で構成され(5~10個の乳管口が開口)、乳管は圧 迫されやすく、大量の乳汁を蓄えてはいないことがわかっ ています。従来乳汁が貯留している場所である乳管洞も見 当たらず、乳管のサイズが授乳時に自由に変化しているこ とが、超音波検査などからわかっています。また乳腺組織 は乳房の前方3分の2にあり、乳輪のすぐ側にまで迫り後方 は脂肪組織で占められています。乳輪にあるモントゴメリ ー腺は、分泌物を産生し、それは機械的刺激と病原体侵入 から母体を保護すると同時に分泌物のにおいがお母さんと 乳児のコミュニケーションの手段として機能しているともいわれます。(文献1.2.) 母乳産生の仕組みは、妊娠中期から始まり、各段階を追って母乳育児は継続されます。 表:母乳分泌の各段階 乳汁生成Ⅰ期 妊娠16週から産後 2日まで プロラクチンの刺激によって、乳腺の分泌上皮細胞が乳汁を産生 する。分娩後はプロゲステロン濃度が急激に低下することにより 乳汁生成が開始される。 乳汁生成Ⅱ期 産後3日~8日 乳汁分泌が増加し、確立する時期。初乳から成乳に変わる。腺房 細胞の密着結合が閉じる内分泌調整(エンドクリン・コントロー ル)から需要と供給の関係による調節(オートクリン・コントロ ール)に変わる。 乳汁生成Ⅲ期 産後9日~退縮期 の始まりまで 乳汁産生が確立し維持される。オートクリン・コントロールで制 御される。授乳回数が多いほど多くの乳汁を産生する。母乳が飲 み取られて乳房がどのくらい「空」になったかが、次回の授乳ま での乳汁産生の目安になるからである。産後6~9か月で乳房の大 きさが減少する。 乳汁生成Ⅳ期 (退縮期) 最終の授乳~約40 日 乳汁分泌が低下し、授乳終了後の乳腺は退行性変化によって、乳 腺上皮は死に、再吸収される(アポトーシス)母乳中のナトリウ ム濃度が高まる。 乳汁産生にはプロラクチンが、分泌にはオキシトシンが重要な役目をしています。 プロラクチン:乳腺房にはたらいで乳汁を産生させます。プロラクチンは分娩後2時間高値を示し、 その後はゆっくり低下していきますが、乳頭が刺激されるごとに上昇します。24時間に8回以上授乳し ていると次の授乳までに濃度が低下するのを防ぐことができます。乳頭への刺激が無い場合は、産後2

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ハンズ・オン ハンズ・オフの写真 週間で非妊時のレベルに戻ってしまいます。プロラクチンは夜間高値となるので、夜間の授乳は大切で す。プロラクチンはお母さんをリラックスさせ眠気をさそう働きがあります。 オキシトシン:赤ちゃんが吸啜する刺激に反応して脳下垂体から放出され、乳腺房の筋上皮細胞に作 用して射乳反射を起こします。赤ちゃんが哺乳を開始すると1分以内に血中濃度は上昇し、哺乳をやめ ると6分以内に基礎値に戻ります。分娩後の早期接触でオキシトシンの血中濃度は著しく増加します。 授乳しなくても、赤ちゃんのことを考えたり、赤ちゃんの泣き声をきいたり匂いを嗅いだりしてもオキ シトシンは分泌され射乳反射を引き起こします。オキシトシンには鎮静作用、愛着行動を促進する、痛 みに対する閾値を上げる作用があるといわれています。

乳汁産生抑制因子(Feedback Inhibitor of Lactation:FIL):乳汁の中には、乳汁産生を減少させる因 子が含まれているのではないかと考えられています。乳汁が外に出されず、乳房が充満すると、この抑 制因子が働いて産生を減少させます。したがって乳汁産生増加維持には、頻繁に授乳することが大切に なります。 2.赤ちゃんが母乳を飲み取る仕組み 赤ちゃんが哺乳することが、プロラクチンの産生、オキシトシンの反射、および乳房内にある抑制因 子の除去を調節しています。したがって赤ちゃんに的確に充分に飲み取ってもらうことが大切です。 適切な吸啜  乳頭と乳輪が赤ちゃんの口の中で伸びること  太い乳管が赤ちゃんの口に入っていること  赤ちゃんの舌が下歯茎よりも前方に出ていること 不適切な吸啜  乳頭と乳輪が伸びていない  乳管のある部分が赤ちゃんの口に入っていない  赤ちゃんの舌が口内の後部に引きこんでおり乳汁を搾れない  吸着が不適切、赤ちゃんは乳頭だけを吸い、お母さんが痛みを感じる。 3.抱き方飲ませ方のいろいろ  ハンズ・オフの【写真】と解説  ハンズ・オンの【写真】と解説 赤ちゃんの抱き方飲ませ方についてお母さんへ支援する時の注意 ① 赤ちゃん主導の授乳を行うときは、支援者は何も手を出さず観 察しながら見守りましょう。 赤ちゃんが乳房に向かって自発的動く様子を見守ります(ハン ズ・オフ)が、赤ちゃんが自分で身動きが取れない状況になった ときも、まずはお母さんが赤ちゃんの位置を調整できるように励 まします。お母さんが難しい場合には、お母さんの手の上から手 を添えて(ハンズ・オン・ハンズ)赤ちゃんが動きやすくなるの を助けます。それでもうまくいかない場合は、支援者が直接赤ち ゃんに触れて、体勢を調整します(ハンズ・オン)。できる限り、 お母さんが自分でできた!という体験の機会を増やして、自信を 持ってもらうことが大切です。

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①横抱き(ゆりかご抱き) ②交差横抱き ③脇抱き(クラッチ抱き、フットボール抱き) ④リクライニングでの授乳 ⑤添え乳の写真 授乳中の写真 ①いろいろな授乳姿勢の【写真】 どのような授乳体勢でも共通して気を付けることがあることをお母さんに説明しましょう。 「赤ちゃんが飲んでいるところ」を観察し、以下を行います。  お母さんと赤ちゃんがうまくできている点を見つけて褒めましょう。  現在母乳育児で困っている点に関する情報を知らせましょう。  後で問題を起こす可能性のあることがらを明らかにしましょう。 4.搾乳について教える(全てのお母さんに手による搾乳方法を教えておくことの意義) ①どんなときに搾乳が必要になるでしょうか? 乳房の張りや痛みを改善する・赤ちゃんが飲みやすい乳房にする・直接 授乳が困難な場合に分泌を維持する・授乳後に搾乳することで分泌増加が 期待できる・赤ちゃんの入院の場合等の母子分離の場合・HIV や HTL な どのとき殺菌して与えるため・職場復帰したとき、卒乳・断乳をしている とき、手による搾乳はとても有用です。すべてのお母さんに搾乳の仕方を 教えましょう。 耳、肩、臀部が一直線にな り、首がねじれたりうつむ いたり、のけぞったりしな い。 乳房を赤ちゃんに近づけ るのではなく、赤ちゃんを 乳房に近づけてお母さん の体に密着させる。 赤ちゃんを乳房に近づ ける時は、赤ちゃんの 鼻と乳頭を向き合わせ る。 頭と肩を支える。新 生児であれば体全体 を支える。 搾乳指導の写真

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②手による搾乳と搾乳器による搾乳があります 手による搾乳の方法 ⅰ)手洗い(乳房を洗ったり拭いたりする必要はありません) ⅱ)親指と人さし指を乳頭の中心からおよそ2~3 ㎝はなれたところに置き、 ⅲ)胸壁に向かってやさしく押す ⅳ)乳頭の後で親指と人さし指の腹が合うように乳管をはさんで圧迫する ⅴ)親指と人さし指の力を抜く ⅵ)ⅳ)とⅴ)を繰り返す。 ⅶ)乳房からまんべんなく搾乳できるように手の位置をずらして搾乳する。 赤ちゃんが母乳を飲むときのようにリズミカルに行いましょう。

×乳頭乳房をつまむ、ねじる、ひねる、しごく、押し込む、引っ張るなど

③搾母乳の取り扱いについて 搾母乳の保存期間と解凍方法について、お母さんやお母さんのいないときに赤ちゃんの世話をする人や 保育園などに説明できるようにしておきましょう。 保存方法 早産児NICU 入院児 健康な正期産児 月齢の大きな子ども 室温 ≦4 時間 ≦6 時間 ≦6 時間 冷蔵庫保存 2~4 日 ≦5 日 ≦8 日 冷凍庫(≦-20℃) 理想:≦1 ヵ月 最適:≦3 ヵ月 可能:≦12 か月 理想:≦3 ヵ月 最適:≦6 ヵ月 可能:≦12 か月 ≦12 か月 解凍母乳 冷蔵:≦24 時間 室温:≦4 時間 冷蔵:≦24 時間 室温:≦4 時間 冷凍:≦24 時間 室温:≦4 時間 *栄養的・免疫的な質は長期冷蔵では損なわれる可能性があります。保存期間は各施設によってきめら れているので、それに従って保存します。 *冷凍母乳の解凍方法について 冷凍母乳は冷蔵庫でゆっくり解凍します。または37℃の流水で解凍します。いったん解凍した搾母乳 の使用可能期間は、上記のとおりです。母乳を温める時は、ぬるま湯で湯せんしますが、40℃以上の加 温はしないよう注意します。母乳を沸騰させたり電子レンジで温めると、母乳中の成分が破壊されたり、 赤ちゃんの口にやけどする危険があるので勧められません。 手による搾乳の写真

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第6条 医学的に必要がない限り、健康な新生児には母乳以外の栄養や水分

を与えないようにしましょう。

正常に出産し、健康な正期産児の場合、お母さんの乳汁分泌も日数の変化とともに亢進し、赤ちゃん の吸着や授乳が問題なく行われているようであれば、黄疸を予防するための人工栄養補足や脱水予防に 糖水を飲ませることは基本的に必要ないと言われています。赤ちゃんの生理的体重減少は、母乳栄養児 では平均5~7%とされています。(人工栄養児では 3~5%)しかし、体重減少が 7%を超えた場合は、母 乳育児が上手くいっているかお母さんと赤ちゃんの双方からアセスメントし、早めの対策を検討します。 授乳方法を見直し効果的に飲めないと判断した場合、第1 選択は、搾乳したものを補足します。さらに 体重減少が10%を超える場合は、お母さんや赤ちゃんに何らかの母乳育児上の問題を抱えている場合が 多く、適切な介入と支援をし、注意深い観察とフォローが必要です。(母乳育児支援スタンダード第 2 版P.175)また、赤ちゃんの体重減少が 7%前後であったとしても正期産で 4 ㎏で生まれた赤ちゃんと 2.5 ㎏の赤ちゃんとでは赤ちゃんへの影響が異なりますので日齢の変化と一般状態などから総合的に判 断しましょう。日齢4 日を過ぎても増加傾向が見られない場合はお母さんの乳汁分泌生成が遅れている か、赤ちゃんが効果的に飲めていないことを強く示唆する所見です。 1.母乳の摂取が十分にできているサイン 表1 母乳の摂取が十分にできているサイン 母乳育児支援スタンダード第2 版 P.177 生後日数 お む つ の 枚数 尿色 尿酸塩 便 便色 粘度 体重増加 0(24時間まで) 1 薄い ありうる 1 黒 タール状 5%減少 1 2~3 薄い ありうる 1~2 緑・黒 移行便 5%減少 2 3~4 薄い ありうる 3~4 緑・黒 柔らか 6~10%減少 3 4~6(紙) 6~8(布) 薄い 無 4(多量) 10(少量) 黄色・粒々 が混じる 柔らか 水様便 15~30g/日 2.補足の判断について 1)補足の判断基準 表2 健康な正期産新生児に補足が適応となる可能性のある状況(母乳育児支援スタンダード第2 版 P.179 一改変) 赤 ち ゃ ん 側 の適応 1)適切で頻繁な授乳の機会が与えられた後にも、検査室レベルで無症候性低血糖が 明らかな場合 2)10%を超える体重減少、哺乳力減弱、無気力など適切な介入の後でも症状が改善 されない場合 3)産後 5 日(120 時間以降まで)乳汁産生Ⅱ期が遅れていて体重減少が 8~10%の 場合 4)排尿回数が少ないか、生後5 日目でも胎便が続く場合 お 母 さ ん 側 の適応 1)乳汁産生2 期が遅れていて(産後 3~5 日)以降、赤ちゃんが適切な量を摂取でき ない場合(その他、胎盤の遺残、原発性乳房発育不全) 2)授乳時の痛みが耐えられないほど強い場合 人工栄養が必要になった場合、補足することで母乳が出なくなってしまうのではないかという不 安を抱くこともあるので、不足な量だけ補足し、過剰に補足しないことで乳汁分泌は維持できるこ とを伝え、安心できるように支援しましょう。

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3.予想より小さく生まれた赤ちゃんの育ち方

1)SGA とは「small-for-gestational age」の略で、お母さんのお腹の中にいる期間(在胎期間)に 相当する標準身長・体重に比べて、小さく生まれることをいいます。身長と体重の両方が10 パ ーセンタイル(100 人中小さいほうから 10 番目)未満であると、SGA です(図 1)。出生時の身 長・体重をみて専門医が判断します。SGA で生まれても、約 90%は 2~3 歳までに身長が標準範 囲に追いつくといわれています。しかし約10%の赤ちゃんでは成長が追いつかず(図 2)、その 場合、SGA 性低身長症が疑われます。(図1http://ghw.pfizer.co.jp/comedical/cause/relation.html) 2) 後期早産児(late preterm)の母乳育児 後期早産児は、在胎34 週 0 日から 36 週 6 日までに出生した新生児を指します。出生体重が 2500g 以上あって「低出生体重児」でなくても、哺乳障害、低血糖、黄疸、呼吸障害などの合併症が正期 産児の2.5 倍~4.5 倍高いことから特別な配慮が必要になります。母乳育児のポイントは、①赤ち ゃんが効果的に母乳を飲むことができるか、②お母さんの乳汁分泌の確立と維持が出来るかの2 つ です。眠りがちのことも多く、赤ちゃんの反応も乏しいこともあるので定期的な観察と24 時間に 8 回以上の授乳が出来るよう支援しましょう。

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第7条 母親と赤ちゃんが一緒にいられるように、終日、母子同室を実施し

ましょう。

 お母さんとご家族に、母子同室の良い点を説明して理解を促しましょう。  お産後にお母さんと赤ちゃんが一緒に過ごすことは、赤ちゃんが母乳を欲しがるサインに合わ せてタイムリーに授乳するためにとても重要です。  一緒にいると赤ちゃんの動きや表情から、何をしてほしいのかも自然に理解できてくるでしょ う。  お母さんと赤ちゃんが同じ睡眠―覚醒、生活リズムで過ごしやすくなるでしょう。  ラクに母子同室出来るさまざまな方法について具体的にお知らせしましょう。  いつも赤ちゃんが見えて、すぐに赤ちゃんに触れたり抱っこできるようベッドや布団の位置を 工夫しましょう。  お母さんのベッドの真横に赤ちゃんベッドを着けるタイプのベッドもあります。  並べてお布団を敷くこともできます。  ずっと赤ちゃんと一緒にいて疲れを感じるお母さんに対して、さまざまな代替案を用意しておきま しょう。  お母さんと赤ちゃんが一緒にいながら、お母さんが休める工夫をお母さんやご家族と一緒に考えま しょう。  生後 4~9 週のすべての赤ちゃんは夜間に授乳され、生後 9~26 週の赤ちゃんの 64%も夜間授乳 され(Hartmann, 2003.)、夜中の平均授乳回数は 1~5 回ですので、夜中の授乳を楽にする方法 を考えましょう。安全に添い寝を行うことも助けになるでしょう。  緊張の強いお母さんには、ひと時リラックスできる足浴やマッサージ、アロマ、赤ちゃんが眠っ ているときに限って少しだけお預かりするなどの方法も助けになるかもしれません。  お母さんには授乳だけ行って頂き、そのほかの赤ちゃんのお世話はご家族やスタッフがお手伝い することもできるでしょう。  添い寝は、母乳を含む育児にはとても良い方法ですが、窒息やSIDS リスクもあります。 施設内スタッフの間でよく話し合いを持ち、その施設の物理的、人的諸条件に合った安全な添い寝 の手順を作成しましょう。両親向け情報として、以下のことが役立つでしょう。 (英国NICE.2014,UNICEF UK2014 参照)。  添い寝は意図して行う場合も意図せず行う場合もあることを認識し、このことを両親や赤ちゃん の世話をする人と話し合い、添い寝は窒息やSIDS に関連があることを伝えましょう。  親と赤ちゃんの世話をする人に、以下のような場合には、添い寝とSIDS の関連がより強くなる ことを伝えましょう。[NICE:new 2014] ①親もしくは世話をする人がアルコールを飲んで間(ま)がない ②親もしくは世話をする人が薬を使用している ③低出生体重児または早産児である。[new 2014] また、親が社会経済的に困難な状況であったり、アルコール中毒や薬物中毒者、若年のお母さ んで子どもが2 人以上いるなどの条件の場合にリスクが高いという報告もあります。これらの

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グループに含まれる方とは、直接会って充分話し合い理解が得られるように話し合う必要性が あります。他の機関と連携して、行動に結びつけられるような実際的な援助が必要かもしれま せん。

 お母さんと赤ちゃんが、安全に一緒のベッドまたは布団で眠るときの留意点をお母さんや家族に知 らせましょう。(UNICEF UK Caring for your baby at night-a guide for parents.2013)

1.お母さんが休めるようにしましょう。 ∗ 部屋は少し暗くしておきましょう。明かりをつけるとみんなが目を覚ましますし、あなたが授乳 したり赤ちゃんをなだめたりするためにいつも必要なことではありません。 ∗ 赤ちゃんを近くに寝かせておきましょう。赤ちゃんにとって最も安全な寝場所は、あなたの布団 の横に敷いた赤ちゃん用布団か、あなたのベッドの側にある赤ちゃん用ベッドの中です。 ∗ 近くで寝ることにより、あなたは赤ちゃんの立てる音を聞くことができますし、赤ちゃんが泣き だしたり、苦しくなったりする前に赤ちゃんのニーズに応えることができ、あなたは起き上がる ことなく赤ちゃんに容易に触れることができます。 2.赤ちゃんを寝かせるとき あなたの赤ちゃんの安全を保ち、SIDS のリスクを減らすにはいつも、以下のことに気をつけて おきましょう。 ∗ 赤ちゃんが眠るときはあおむけに寝かせ、うつ伏せ寝や横向き寝はさせないようにしましょう。 ∗ 少なくとも生後 6 か月間は、赤ちゃんのコットは親のベッドの横に起きましょう。 ∗ マットレスは硬く平たいものにしましょう。ウォーターベッドや、ビーンズクッションやたわ んだマットレスは適切ではありません。 ∗ 赤ちゃんに着せすぎたり掛物を掛けすぎたりしないようにしましょう(あなたが着たり掛けた りしている以上の服や掛物は使わないようにしましょう)。 ∗ 掛物で赤ちゃんの頭を覆わないようにしましょう。 ∗ 室温を高くしすぎないようにしましょう(16-20℃が望ましい)。 ∗ 赤ちゃんの眠る部屋は禁煙ゾーンにしましょう。 3.一緒の布団で寝るとき、大人用ベッドで一緒に寝るとき 親の中には、意図して行っているか否かにかかわらず、授乳したりなだめたりしながら夜中に赤ち ゃんと一緒にベッドで眠ることを選択している人もいます。そのため、以下の点を十分に配慮する ことがとても大切です。 ∗ 赤ちゃんは枕から離しておきましょう。 ∗ 赤ちゃんがベッドから落ちたり、マットレスと壁の隙間に挟まったりしないよう気をつけまし ょう。 ∗ 赤ちゃんの顔や頭が寝具で覆われないように気をつけましょう。 ∗ 赤ちゃんを一人きりでベッドに置きっぱなしで離れることが無いようにしましょう。なぜなら、 月齢のとても小さな赤ちゃんでも自分でもぞもぞ動いて危険な姿勢になることがあるからで す。 ∗ あなたの赤ちゃんがとても小さく生まれたか、早産児だった場合には、生後早期の数ヶ月は一 つの布団や一つのベッドで一緒に寝ることは安全ではありません。 ∗ 注意 ∗ あなたの赤ちゃんにとって最も安全な寝場所は、あなたのベッドの側に置いたコットの中です。 ∗ あなたがお酒や眠気を催す薬(合法・非合法)を飲んでいる時は、赤ちゃんと一緒に寝てはいけま せん。 ∗ あなたであっても他の人であっても、喫煙者は赤ちゃんと一緒に寝てはいけません。 ∗ ソファや肘掛け椅子で赤ちゃんと一緒にうとうと居眠りをするような姿勢をとってはなりません。

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1.母子同室の重要性と利点 母児同室同床をし、お母さんと赤ちゃんが 見詰め合っている【写真】 2.施設での母児同室 ①病院のベッド&コット)の【写真】 ②助産所での母子同床(畳の上で布団&赤ちゃんふとん)の【写真】 ③家庭でも母子同床の川の字の【写真】&赤ちゃんの兄弟も一緒に寝ている【写真】 ④双子の母子同床の【写真】 ⑤検査や沐浴の時間もお母さんが一緒にいる【写真】

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第8条 赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけの授乳を勧めましょう。

1.赤ちゃん主導の授乳方法とは 出生後赤ちゃんが正期産で健康であれば、1 時間以内に自分から乳房を見つけて吸い始めます。最初の 授乳は、お母さんと赤ちゃんがお互いを知り合う時間です。授乳の姿勢やアセスメント云々は抜きにし てリラックスして過ごせる時間になるよう、配慮しましょう。その後赤ちゃんは数時間眠ることが良く あります。 次に赤ちゃんが目覚めたときから、母乳育児の開始です。もし帝王切開などで動けない状況にある場 合は、手助けしますが、助産師が適切な姿勢を取らせるのではなく、まずはお母さんが自分で心地よい 体勢を見つけ授乳に適した姿勢で抱くことができるように見守ります。 いつ授乳したら良いのかを、お母さんと話合いましょう。授乳に適した赤ちゃんの覚醒状態は、表 1. のstate 3~5 の間であると言われています。「泣いたら飲ませる」、つまり号泣している状態から授乳を 開始するのは、「遅めの徴候」と言われ、スムーズに乳房に吸いついてくれないことが多いのです。 表1. 赤ちゃんの覚醒レベルの state1 熟睡(NON REM 睡眠) state2 浅い眠り(REM 睡眠) state3 もうろう状態 state4 目を開けてじっとしてい る・静かな覚醒 state5 目を開けて活発に動く・ 活発な覚醒 state6 泣いている・号泣 State1 の写真 State5 の写真 State3 の写真 State6 の写真

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赤ちゃんが大きな口で乳房をくわえて いる写真 お母さんに赤ちゃんが哺乳したがっている、早めのサインが分かるように説明しましょう。 赤ちゃんが空腹を示す早めのサイン REM 睡眠(目を閉じていて瞼の下眼の動きが増加したとき)、目が開いたとき、口を開け、舌を出し て乳房をさがすように首をうごかしたとき、やさしくささやくような声をだしたとき、手、指、毛布 やシーツ、もしくは口に触れるものを吸ったりしゃぶったりしているとき ※大きな声で泣いてから授乳しようとすると、赤ちゃんが乳房に吸いつけなくなってしまうことがあ ります。これは「遅めのサイン」と言われています。 2.よく泣く赤ちゃんと眠りがちな赤ちゃん よく泣く赤ちゃん お母さんの話しをよく聴き、授乳を観察し、赤ちゃんの状態を観察し、必要があれば医療機関に紹 介します。お母さんも家族も、赤ちゃんが泣くことは母乳が足りないせいだと思いがちです。お母 さんが自信を失くし、家族が人工乳の補足をすすめるきっかけになることがあります。どれくらい 泣くのが“正常”であるかは決められませんし、その赤ちゃんの個性であるともいえます。お母さんが リラックスでき、赤ちゃんが気持ち良くなるような対応や、頻繁に授乳すること、授乳以外の時間 も、肌と肌の触れ合いをつづけること、ベビーマッサージ、おくるみでしっかりと包む、カフェイ ン入りの飲み物を減らす、禁煙することなどお母さんに役立ちそうな情報を提供しましょう。 眠りがちな赤ちゃん 空腹でも静かに授乳を待っていて気づかれないうちに眠ってしまうような赤ちゃんは、3、4 時間眠 っていたら、抱き上げたり、おむつを変えたり、服を脱がせたり、話しかけたり、体をマッサージ したり、立て抱きをしたりして起こしで飲ませるように説明します。 支援者が気を付けること 授乳時間について、スケジュールを決めて与えるのではなく、赤ちゃんの欲求に従って授乳するよ うに促しましょう。 産後日数によって、1 日目は 3 回 3 分以内、2 日目は 4 回で 5 分以内などと、回数や授乳時間を制限 しないようにします。授乳時間や回数を制限することは、乳頭痛や乳頭損傷の予防にはなりません (文献)。反対に制限することによって母乳の分泌開始が遅れたり、乳房緊満が増強する原因になり ます(文献)。赤ちゃん主導の授乳を行うことにより、次第に赤ちゃんは自分で空腹や満腹のサイン が分かるようになります。この自分で食べる量をコントロールする能力は、母乳で育った子どもに は肥満が少ないことと関連していると言われています(文献) 3.授乳がうまくいっているかを、観察し評価しましょう。 観察ポイント  赤ちゃんの口が大きく開いているか  口唇は外向きに開いているか  下顎は乳房に触れているか 直接授乳観察用紙を使って、授乳中のお母さんと赤 ちゃんの様子を評価します。

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直接授乳観察用紙 授乳がうまくいっているサイン 困難がありそうなサイン 全体 お母さん  健康そうにみえる  リラックスしており、居心地がよさそう  お母さんと赤ちゃんとのきずなのサイン 赤ちゃん  健康そうにみえる  穏やかでリラックスしている  空腹時、乳房に向ったり探したりする お母さん  病気またはおちこんでいるようにみえる  緊張しており、不快そうにみえる  母子が目を合わせない 赤ちゃん  眠そう、具合が悪そうにみえる  落ち着きがない、泣いている  乳房に向わない、探さない 乳房  健康そうに見える  痛みや不快感がない  乳輪から離れた位置でしっかり指で支えられてい る  乳頭の突出  発赤、腫脹、あるいは疼痛  乳房や乳頭が痛い  乳輪に指がかかったまま乳房を支えられている  乳頭が扁平で、突出していない 赤ちゃんの体勢  頭と体がまっすぐになっている  お母さんの身体に引き寄せられて抱かれている  体の全体が支えられている  赤ちゃんが乳房に近づくとき、鼻が乳頭の位置にあ る  授乳をするのに、首と頭がねじれている  お母さんの身体に引き寄せられて抱かれていない  頭と首だけで支えられている  乳房に近づくとき、下唇、下顎が乳頭の位置にある 赤ちゃんの吸着  乳輪は赤ちゃんの上唇の上側のほうがよく見える  赤ちゃんの口が大きく開いている  下唇が外向きに開いている  赤ちゃんの下顎が乳房にふれている  下唇の下側のほうが乳輪がよく見える  口が大きく開いていない  唇をすぼめている、もしくは巻き込んでいる  下顎が乳房にふれていない 哺乳  ゆっくり深く、休みのある吸啜  哺乳しているときは頬がふくらんでいる  哺乳を終えるときは、赤ちゃんが乳房をはなす  お母さんがオキシトシン反射のサインに気がつく  速くて浅い吸啜  哺乳しているときに頬が内側にくぼむ  お母さんが赤ちゃんを乳房からはなしてしまう  オキシトシン反射のサインに気がつかない

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赤ちゃんがのけぞって泣いてい る写真 肌と肌の触れ合いをしているまっ たりした母子の写真 その後乳頭をくわえている写真 4.直接授乳が困難なときの援助について ①赤ちゃんが乳房に吸着するのを嫌がっている場合 赤ちゃんが乳房に吸着するのを嫌がっているように見えることがあります。お母さんは赤ちゃんが自 分を拒否しているように感じることがあります。赤ちゃんがこのような行動をするにはさまざまな理由 がありますので、お母さんと赤ちゃんの様子を観察し、考えられる原因に対処をしましょう。 考えられる原因  赤ちゃんが人工乳を与えられているために、授乳しようと するお母さんとのタイミングが合わない。  人工乳での吸い方を覚えてしまい、哺乳びんになれている。  急に乳汁が出過ぎて、赤ちゃんがむせたりする。  小さく生まれた赤ちゃん、病気や障がいを持っている赤ち ゃん、哺乳力が弱い、口腔内に問題を持っている(舌小帯 短縮など)。  赤ちゃんがどこかに痛みを感じている。  抱き方、飲ませ方が適切でない。  乳房が病的に緊満し、乳頭や乳輪が硬くなり引き込まれて 陥没乳頭や扁平乳頭になっている。  乳汁分泌が非常に少ない。 対応 お母さんが適切に抱き、吸着できるように助けましょう。泣いている赤ちゃんを無理に乳房に向か わせたり、押し付けると、赤ちゃんは不快な経験をすることになります。赤ちゃんにとって乳房が安 全で心地よい場所に感じられるような対応が必要です。静かな環境で、肌と肌の触れ合いの時間を取 り、時間を充分とって赤ちゃんが自ら乳房を探索するのを待つ必要があるかもしれません。 その他の対応 授乳前に少量の搾乳を行い、乳頭乳輪をやわらかくしたり、出過ぎる乳汁の調整をしましょう。 吸着してすぐに乳頭をはずすようなら、スポイトやシリンジで搾母乳や人工乳を補うと同時に、分 泌を増進させるためのケアを行います。(母乳分泌促進のケアについてはP.●●参照) 人工乳首やおしゃぶりの使用を避け、カップで授乳する。(カップ授乳についてはP.●●参照) 赤ちゃんに痛みを感じるところがある様なら、治療し、授乳時の抱き方を工夫しましょう。

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不適切な抱き方飲ませ方によっ てできた乳頭損傷の写真 カンジダによってできた乳頭損傷 の写真 ②乳頭痛・乳頭損傷などで直接授乳が困難になっている場合 原因と対応 産後早期に乳頭痛や損傷が起こる原因のほとんどは、不適切な抱き方や浅い吸着によるものです。授 乳姿勢や吸着と乳頭痛、損傷の関係について観察し、より深い吸着や適切な授乳姿勢がとれるよう、 お母さんに伝えましょう。乳頭損傷の治療には、保湿が大切で乳頭に塗るものは赤ちゃんがなめても 大丈夫なものにしますが、第1 に勧められるのは母乳を乳頭に塗ることです。 また赤ちゃんに鵞口瘡があると(ない場合もある)乳頭のひりつく痛みや損傷が出来ることがありま す。お母さんと赤ちゃんが同時に治療する必要があります。 その他、適切な授乳が行えているのに、乳頭痛がある場合は、乳腺炎や乳管閉塞、乳頭上の白斑の形 成があります。

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カップ授乳をしている写真 母乳を飲んでいるときのくちもとの写 真 哺乳びんで飲んでいるときの口もとの 写真

第9条 母乳で育てられている赤ちゃんに、人工乳首やおしゃぶりを与えな

いようにしましょう。

1.人工乳を哺乳びんで補足すること、おしゃぶりをつかうことの危険性 赤ちゃんによっては哺乳びんの人工乳首やおしゃ ぶりを使用しているうちにそれらを好むようになり、 乳房から直接のむことを嫌がる赤ちゃんがいます。 この現象は早いときは生後1週間以内から認められ、 産後3~4ヵ月月で起こることもめずらしくありませ ん。このようなことを予防するために、補足が必要 な場合には、カップ授乳が推奨されます。 直接授乳への影響の他に、人工乳首とおしゃぶり には、次のような弊害があります。  空腹時に哺乳するかわりにおしゃぶりを与え られると授乳回数が減り、体重増加が悪くなる、 または母乳の分泌が減っていく。  哺乳びんや人工乳首、おしゃぶりは感染の原因 になる。  中耳炎や歯科的な問題は人工乳首やおしゃぶ り使用の赤ちゃんに多い。 2.補足が必要な時の方法 補足が必要なときは、カップ、シリンジやスポイト、チューブを使いましょう。 ●カップ授乳の方法 乳汁の入った小さなカップを赤ちゃんの下唇に軽く のせ、カップの縁を上唇に触れるようにします。乳 汁があかちゃんの唇に届くようにカップを傾けます。 早産児では、舌を使って飲み始め、正期産児や大き な赤ちゃんは乳汁を吸啜します。赤ちゃんの口の中 に乳汁を注がないようにします。

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シリンジ又はスポイトで授乳している 写真 チューブでの授乳の写真 ●シリンジ、スポイト授乳の方法 シリンジやスポイトは、初乳などごく少量の母乳を与えるのに用います。 ●チューブで授乳する方法 3.ニップルシールドの適切な使用について ニップルシールドは乳頭痛のためには使わないようにしましょう。乳頭痛の解決にならない上に、 母乳産生量を減らし、問題をますます大きくします。陥没乳頭や扁平乳頭で、赤ちゃんが乳房に直接 吸着できないときに母親にニップルシールドの使用を勧める時は、使用する母子へのメリットデメリ ットを考慮し母親にも充分説明しましょう。一時的に使用する場合は、使用を止めることができるよ うになるまで、継続した支援を行います。 ニップルシールドを使用する場合の注意  乳房と乳頭への刺激が減り、乳汁産生とオキシトシン反射を低下させる。  体重増加不良と脱水のリスクが増す  ニップルシールドなしで赤ちゃんが乳房を直接吸うことができなくなる。  細菌やカンジダの温床となる。  お母さんも医療従事者もニップルシールドに依存するようになり、外すことが難しくなることがあ る。

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