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社会イノベーション研究会ソーシャルキャピタルWG 報告書

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Academic year: 2021

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(1)

付論 韓国の社会イノベーションに関する視察報告

李 嬋娟1 韓 明東2

1.

はじめに

今回の韓国訪問は、活発な創業活動が見られる韓国の新規創業の実情及びその支援団体に対する現地調査を 通じて日本との違いを明確にすることである。 同様の調査が欧米先進国で実施されたことがあるにも拘らず、なぜ今回韓国を訪問先として決めたかについ て予め説明しておきたい。 先進国、特に米国との比較になった場合、社会文化的な側面、つまりベンチャー精神とも呼ぶべき要素にあ まりにも差が大きいことは紛れもない事実である。実際、そのような要素が大きな影響を与えたとしたら、精 神論的な話で結論が出てしまいかねない恐れがある。このような要因を排除する為には似たような社会経済構 造を持っている国家を対象にする方が有効であると考えられる。韓国は日本同様、輸出産業中心の似たような 産業構造である上、戦後の発展の過程が極めて似ている為、容易にその差が観察できることを期待したためで ある。

2.

視察結果概要

2-1

韓国科学技術院 (KAIST)

訪問日時: 3月2日(月) 13:00

ヒアリング対象者: PARK SEON WON (産学協力団団長)

KIM HEE TAE (技術事業化チーム副センター長) 

説明資料: University-Industry Cooperation In Korea:KAIST Experience (Kim Hee Tae、January 2009)

事業紹介 (技術事業化チーム 副センター長 KIM HEE TAE 氏)

産学協力CONFERENCE で発表した資料に基づいて産学協力においての韓国の全般的な状況と KAIST の

事業説明

1大阪大学大学院国際公共政策研究科NPO 研究情報センター研究員 2大阪大学大学院国際公共政策研究科博士課程後期

(2)

表1: R&D Input の国際比較

USA 韓国 日本 中国 ドイツ イギリス

GDP比率でR&D投資規模 100 113.7 127.1 50.8 94.7 67.9

研究員一人当たりのR&D費用 100 56.2 92.3 11.6 94.7 67.9

経済人口の1000人当たりの研究員 100 81.7 114 16.1 73.1 65.6

出所:University-Industry Cooperation In Korea:KAIST Experience

表2: R&D Output の国際比較

USA 韓国 日本 中国 ドイツ イギリス

論文 100 8.6 28.4 22.2 27.3 26.1

研究員一人当たりのR&D費用 100 5.9 40.9 0.7 12.2 4.3

経済人口の1000人当たりの研究員 100 15.4 123.1 — 47.9 86.8

出所:University-Industry Cooperation In Korea:KAIST Experience

(1)韓国の全般的な状況

韓国の国家競争力は「IMD(International Management Development)2007」によると、政治の側面も含め 総合評価では29 位であるものの、技術競争力は世界 6 位、科学競争力は 7 位を占めている。韓国では 85 年 からR&D への投資が増加し、2007 年現在の投資額は 313 億ウォンに当たる (31.3billion USD)。具体的には 企業が76.9%の割合を占め、残りを政府関係の公共機関が 13.2%、9.9%は大学が投資している。75%の博士が 大学にて研究を続けている現状を考えれば、9.9%の金額はその比率を考えれば、少ない金額ではないかと思 われる。1971 年から 2004 年まで R&D 投資が経済に貢献している比率は 30.6%であり、かなり大きいインパ クトを与えている。今の現政権である李明博政権は2013 年までに、R&D による経済開発の寄与度を現在の 30.6%から 50%に引き上げることを選挙公約としてあげている。また、「韓国産業技術振興協会 (KOITA)」の 調査によると、GDP 比率で R&D 投資規模は 2007 年 3.47%(31Bil.USD) であり、現政権はそれを 5%まで引 き上げて世界3 位のレベルにすることを公約としてあげている。GDP 比率で R&D 投資規模や、 個人一の研 究者に当たるR&D 費用、 経済人口の 1000 に当たりの研究者の数という R&D のインプットに関する国際比 較からみると、アメリカや日本に比べ、そこまで差をつけていないが、論文や、特許の数、技術収支均衡とい うOutput に関しては非常に低い。 1970 代から 2000 年頃までは、大学で主なミッションとして教育や人材供給が強調されてきたが、2000 年か らは政策の変更とともに、大学が経済産業発展をサポートする役割から、イノベーションを通じ、未来の成長 をリードする役割を演じるようになった。そのため、各大学では産学協力団を立ち上げ、調査協力, 教育&ト レーニング、知識&技術移転、諮問、ベンチャー企業、人力交換、施設&試作品のテスト支援等を主に行って いる。 「Mansfield」の論文によると、大学の新技術が商業化されるのにかかる時間は 7 年で、その後、その商品 化された製品が社会に対してインパクトを及ぼす期間も7 年であると指摘したことに因んで、KAIST 大学の 場合、特許登録や事業維持のための支援等を7年間だけ制約している。7 年後は、特許費用の制約のため、特 許を放棄し、特許を消滅することがほとんどである。特許をとって技術化に試みてから7 年後にやっと商業及 び製品化できるようになった時点で大学の側が特許を捨てるのは大変大きなミスだと思われる。政府の予算の 制約という理由があり、長期的な目で見るように改善しようとしても難しい状況だ。 2006 年 10 月に産学協力促進法を定めて大学の産学協力団を財団法人化するように義務付け、大学の総長が 理事になり、独立できる形として維持するようになった。以前は、国立大学は法人化できないという限界が あり、商業や研究関係のお金が直接入ってくる事ができなかったが、財団法人化されてからはそれができるよ うになった。また、以前は、特許の所有権は韓国の政府にあったが、今は大学の方が持つようになった。一 方、KAIST は他の大学と違い、韓国科学技術法という特別な法の下にできた大学であり、韓国特許庁が設立さ

(3)

付論 韓国の社会イノベーションに関する視察報告 内閣府経済社会総合研究所委託事業 「イノベーション政策及び政策分析手法に関する国際共同研究」 表3: 産業別構成 分野 IT・電気関係 半導体・材料 エネルギー・環境 バイオ・医療関係 機械 その他 合計 TBI/TIC 40 17 9 10 13 2 90 % 44 19 10 11 14 2 96%

出所:University-Industry Cooperation In Korea:KAIST Experience

表4: KAIST の R&D 生産性 (100 万ドル)

2003 2004 2005 2006 2007 R&D予算 90.1 97.0 106.0 123.6 132.6 R&D収入 0.379 0.397 0.604 0.853 1.453 R&D生産性 0.4% 0.4% 0.6% 0.7% 1.1%

出所:University-Industry Cooperation In Korea:KAIST Experience

れた時点から、最初からKAIST の名の下で特許を所有することができていた。一般の大学の産学協力団は平 均15.4 人のスタッフが産学協力、R&D サポート、R&D 促進、その他、4 つの仕事をまとめて行っているが、 KAIST 産学協力団はスタッフ (約 40 人位) 全員が 産学協力 (業務:特許管理、技術移転、ベンチャーサポート 等) だけに集中して行っている。その他、他の大学と異なる点としては、KAIST は受託研究による特許の場合 もKAIST が所有するように大学の政策として最初から決めている。それに比べ、他の大学、例えばソウル大 学や延世大学の場合、受託研究としてもその特許は企業との共同所有になる。 (2) KAISTの事業紹介

KAIST は政府の援助を受けている S&T(Science & Technology) 大学として、1971 年に設立された。58.6%が 大学院生になっている院生中心の大学で、2007 年までの卒業生は 33,390 に当たる。教員は教授 440 人、 助教 授・客員教授305 人、スタッフ 372 人であり、8 つの KAIST 大学建物と 47 つの研究所がある。学問部門は工 学や、自然科学、ビジネス等、23 つに分けている。

1994 年に産学協力のために TBI/TIC が設立され、2006 年になって UIC(University − Industry Cooperation) に拡大、名称も変更された。今まで、KAIST の卒業生による創業企業は 471 社、教員による創業企業は 32 社 で、その中で7 社が KOSDAQ に上場された。2003 年から 2007 年まで技術移転の数は 116 件で、Royalty は 13.816(Million USD) にのぼる。1997 年に入居している創業企業は、上場した企業や成功した企業が建てた同 門創業館と新技術創業館を合わせ、96 社がある。産業別構成に関しては、IT・電気関係と半導体・材料関連 が約60%を占めている。KAIST が 2007 年に国内で出願した特許の件数は約 742 件ある。2007 年教員一人当 たりの特許の数は1.7 件である (MIT:0.2 件)。しかし、これからは量より質をどう高めるかが課題になって いる。2007 年の KAIST の R&D 生産性 (Royalty Income/R&D Budget) は 1.1%で、これは韓国全体の生産性

の0.42%よりは高いとはいえ、アメリカの 3%よりは非常に低い数値である。 質問応答 Q1: 産学強力団が位置している大田の企業と連携が多いですか? A1: 企業によって、色々なビジネスのモデルがあり、分野によって違います。そして、KAIST は韓国でトッ プレベルの大学ですので、そのトップレベルに合わせて、全国からの要望や問い合わせがあり、それに対応す るためには地域中心ではなく、全国に対して運営しています。 Q2: 一番リターンが大きかった分野はなんですか?

(4)

A2: KAIST には IT 関係の先生が 150 人であって、IT や電気関係が一番大きい部門です。その比率によって 研究成果が違うと思います。技術移転や産学連携はそこまでリターンやインパクトは大きくはありません。し かし、キシリトール材料の回収率を増加させる技術移転料で1 回 5 千万円をもらったケースもあります。ま た、バイオマスを使って石油化学製品を作り、10 億円ぐらいの技術価値評価をもらいましたが、アメリカへの 移転する途中で失敗しました。 Q3: 日本のように環境に関する技術を支援する動きはありますか?これから成功のエンジンとして考えてい る研究分野はなんですか?

A3: 今、産学の団長はEEWS(Energy Environment Water Sustainability) を重要な研究課題として考えてい ます。

歓迎の挨拶 (産学協力団団長  PARK SEON WON 氏)

KAIST 産学協力団を訪問いただきありがとうございます。KAIST 産学協力団は 1992 年に TIC(Technology Innovation Center)/TBI(Technology Business Incubator) センターとして出発し、今まで約 300 ベンチャー企 業を選別支援しております。KAIST が位置している大田の大 研究団地は 1973 年から 5 年間造成された科学

研究団地で、全国の各種研究機関を集積するために推進されました。この大 バレーをアメリカのシリコンバ

レーのように作りたいですが、今の時点では遠い未来のことに思われます。

毎年、KAIST には、アメリカの MIT の学生とほぼ同じ実力を持つ学生が進学しています。その結果、KAIST は韓国で一番トップレベルの理工系大学となっています。今まで、KAIST の卒業生の中で創業した学生の数 は400 人以上です。しかし、経済の状況が悪化するに伴い、優秀な学生たちが独創的なアイディアを持ってい ても、ベンチャー創業をするより、より安定的な仕事をすることに憧れています。つまり、ベンチャーを立ち 上げようとする学生の数が急激に減っています。これから、最も効果的な支援や制度を行うに従い、創業活動 が活発になることを期待しております。 今回の訪問をきっかけにこれからKAIST と大阪大学の交流が増え、お互いの関係が深まることを祈ってい ます。 入居企業訪問 (KAIST 第1号 研究所企業  MPWIZ)

MPWIZ は KAIST の技術を商業化するという事業を行っている「KAIST 研究所企業」の第 1 号である。研

究所企業というのは、大田大 開発特区内の機関が保有している技術や特許に対し、設立資本金(20%以上) を

出資、立ち上げる企業であり、(株)MPWIZ は KAIST が 32.75%を出資して設立された。KAIST の音声認識技 術を移転してもらい、その技術を生かして商業化している。2008 年 7 月 KAIST や、大徳特区支援本部、知識 経済部の厳格な審議や審査を通じて認証された。 保有している技術というと、まず、音声認識技術がある。これはコンピュータで人間の声を分析し、それを 文章として出力する技術である。この技術の応用分野としては、音声ワードプロセサーや、音声を通じるデー タベース検索、音声ダイアーリング、電話線を通じる遠隔地情報入力などがある。また、音声変換という技術 があり、話者の音声の特徴を変え、俳優や有名人等ほしい音声に変換する技術。特殊効果処理や保安用音声変 造、翻訳システムなどの応用分野がある。

MPWIZ の事業内容は IPTV の音声認識リモート、アニメ Dubbing 用システム、携帯電話用音声変換など がある。また、「HUBO」という新しい Character を作りだし、科学文化コンテンツを創出する事業も行って いる。

(5)

付論 韓国の社会イノベーションに関する視察報告 内閣府経済社会総合研究所委託事業 「イノベーション政策及び政策分析手法に関する国際共同研究」 G ` ߤߩᔕ↪ಽ㊁߇޽ࠆޕ ߩ੐ᬺౝኈߪ ߩ㖸ჿ⹺⼂࡝ࡕ࡯࠻ޔࠕ࠾ࡔ ↪ࠪࠬ࠹ࡓޔ៤Ꮺ㔚⹤↪㖸 ჿᄌ឵ߥߤ߇޽ࠆޕ߹ߚޔޟ ޠߣ޿߁ᣂߒ޿ ࠍ૞ࠅߛߒޔ⑼ቇᢥൻࠦࡦ࠹ࡦ ࠷ࠍഃ಴ߔࠆ੐ᬺ߽ⴕߞߡ޿ࠆޕ ಴ᚲ㧦 ߩ࠙ࠚࡉࡍ࡯ࠫ㧦 ޟ⑼ቇᢥൻࠦࡦ࠹ࡦ࠷㧦ฝ߇  ޠ ᢙචᐕ೨߆ࠄᤋ↹߿ࠕ࠾ࡔࠍㅢߓߡ⃻ઍᢥ᣿ࠍઍ⴫ߒޔᧂ᧪ࠍ੍᷹ߔࠆ᭽ޘߥ⑼ቇᢥൻ ߇ࡂ࡝࠙࠶࠼߿ᣣᧄߢഃ಴ߐࠇߡ߈ߚࠃ߁ߦޔ㖧࿖ߢ߽ఝߒߊⷫಾߦੱ㑆ߣઃ߈ว߁ ߇ᔅⷐߛߣ޿߁⠨߃߆ࠄᆎ߹ߞߚޕ



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2-2

創業振興院

訪問日時: 3月2日(月) 15:00

ヒアリング対象者: KIM YOUNG SIK (創業振興院理事長) LEE YOUNG SAM(企画調整部部長)

説明資料: KOREA BUSINESS INCUBATION ASSOCIATION (パンフレット)

事業紹介(創業振興院 理事長 KIM YOUNG SIK 氏)

1 月 13 日から創業保育協会 (Korean Business Incubation Association) から創業振興院に名称が変更され た。創業の中でも技術創業を中心に全般的な支援を行うことを主なミッションとしてあげている。 創業振興 院は韓国全国においての大学や研究所の中にある創業保育センターに対して新技術創業インフラの構築や創業 成功率を引き上げる為の事業を支援している。 資料(韓国創業保育センター現況)の説明 1.創業保育センター支援現況 表5: 地域別支援現況(件数) ソウル 釜山・蔚山 大邱・慶北 光州・全南 大田・忠南 京畿 仁川 江原 忠北 全北 慶南 濟州 計  30 23 37 25 35 45 7 17 11 15 20 4 269

(6)

表6: 保有主体別現況

大学 研究院3 中・小振興公団 市・道 その他

226 18 7 10 8

269 (84.0%) (6.7%) (2.6%) (3.7%) (3.0%)

出所:KOREA BUSINESS INCUBATION ASSOCIATION (パンフレット)

表7: 創業保育センター面積

延べ面積 保育室(全体の51.2%)

総面積 センターごとの平均面積 企業当たり 総面積 センターごとの平均面積 企業当たり

832,061m2 3,093m2 187m2 426,200m2 1,587m2 96m2

出所:KOREA BUSINESS INCUBATION ASSOCIATION (パンフレット)

表8: 創業保育センター保育室(室)

総保育室 センター平均 空室

室数 比率(%) センター平均

6,143 22.8 657 10.7 2.4

出所:KOREA BUSINESS INCUBATION ASSOCIATION (パンフレット)

空室というのは有力な企業がいつでも入れるように、センターに最低10%くらいは待機室として明けておく。 2.創業保育センター支援人材の現況 表9: センター長(人) 常勤 非常勤 区分 教授 役職員 契約職 その他 計 208 61 226 30 3 10 269 (77.3%) (22.7%) (84%) (11.1%) (1.2%) (3.7%)

出所:KOREA BUSINESS INCUBATION ASSOCIATION (パンフレット)

表10: マネージャー級職員(人)

総マネージャー 専属マネージャー 一般マネージャー センター平均

495 269 226 1.84

(54.3%) (45.7%)

出所:KOREA BUSINESS INCUBATION ASSOCIATION (パンフレット)

(7)

付論 韓国の社会イノベーションに関する視察報告 内閣府経済社会総合研究所委託事業 「イノベーション政策及び政策分析手法に関する国際共同研究」 3.入居企業の現況 表11: 入居企業現況(社) 入居企業 センター平均 一般企業 ベンチャー企業 INNO-BIZ企業 4,441 16.5 2,936 1,145 395 (66.1%) (25.8%) (8.1%)

出所:KOREA BUSINESS INCUBATION ASSOCIATION (パンフレット)

INNO-BIZ 企業というのは Innovative Business Company というもので、一般のベンチャーに比べ、より 厳格に選定される。つまり、より革新的な技術を持ち、ベンチャーを強化したもので、よりよい競争力をつけ なければならない。INNO-BIZ に選定された企業は政府が認証を与える。 表12: 入居企業売上 2007年度末 2008年6月末 売上企業 売上額 センター平均 企業平均 売上企業 売上額 センター平均 企業平均 3,410 2,305,422 8,570 519 3,304 1,287,457 4,789 290 (76.8%) 百万ウォン 百万ウォン 百万ウォン (74.4%) 百万ウォン 百万ウォン 百万ウォン

出所:KOREA BUSINESS INCUBATION ASSOCIATION (パンフレット)

表13: 入居企業雇用者数(人)

2007年度末 2008年6月末

総雇用 センター平均 企業平均 総雇用 センター平均 企業平均

22,569 84 5.1 21,674 80.6 4.9

出所:KOREA BUSINESS INCUBATION ASSOCIATION (パンフレット)

表14: 入居企業輸出 2007年度末 2008年6月末 輸出企業 センター平均 輸出額 企業平均 輸出企業 センター平均 輸出額 企業平均 428社 1.6社 199,778 743 198社 0.7社 88,486 329 (9.6%) 百万ウォン 百万ウォン (4.5%) 百万ウォン 百万ウォン

出所:KOREA BUSINESS INCUBATION ASSOCIATION (パンフレット)

表15: 入居企業の知的財産権の現況(件数)

2006 年以前 2006 年 2007 年 2008 年 6 月 累積 出願 登録 計 出願 登録 計 出願 登録 計 出願 登録 計 出願 登録 計 3,594 3,630 7,224 1,945 1,967 3,912 2,253 1,995 4,248 1,297 1,028 2,325 9,449 8,620 18,069

出所:KOREA BUSINESS INCUBATION ASSOCIATION (パンフレット)

表16: 入居企業輸出

韓国証券取引所上場 KOSDAQ上場4

2006年以前 200年6 2007年 2008年予想 2006年以前 2006年 2007年 2008年予想

17社 5社 8社 10社 8社 1社 4社 7社

(8)

質問応答

Q1: KAIST の中に位置していますが、KAIST とどんな関係がありますか?

A1: 創業振興院は政府機関であり、ただKAIST の建物を借りただけで、KAIST とは何の関係もありません。

詳しくいえば創業振興院は中小企業庁に所属しています。さきほどお話したように、大学及び研究所に属して いる創業保育センター(BI) は 296 箇所ありますが、KAIST はその中の一つです。各 BI にはそれなりに関係者 がいますが、こっちでは、その人たちと施設に対する資金の調達や政府の政策の施行を主に担当しています。 Q2: 予算はどのくらいですか? A3: 予算が昨年度までは5 億円でしたが、 新政権に発足して今年度は 90 億円に増加されました。アイディ ア商業化支援プログラムや、予備創業者育成、実験室創業支援事業を主なビジネスとして行っています。予算 は右肩上がりで増加しています。つまり、政府が創業に重点を置いていると言えます。 Q3: INNO-BIZ 企業に選定されたら、どんなメリットがありますか? A3: INNO-BIZ の協会が担当していることですので詳しく知りませんが、政府政策資金を勝ち取る可能性が 高いですし、国家政策や法的事業に参加する時、よりよく評価されたり、競争で優位に占めたりすると思い ます。 Q4: INNO-BIZ 企業は主にどんな業種がありますか? A4: 業種というより、企業の売上や資産に基づき、企業現況を評価して決められています。一般企業、ベン チャー企業、INNO-BIZ 企業、三つがありますが、一般企業よりベンチャーが、ベンチャーより INNO-BIZ の方が、質が高いというふうに認識していただければ。 Q5: 直面している課題をどう解決しますか? A:5 予算が増えてから始まったばかりですので、問題点というより今後の課題というと、税金を使っている のでそれなりの成果を目に見える形で出せるようにすることではないかと思います。 Q6: 日本を視察した時、感じたことを韓国にどう導入しましたか? A6: 視察した時、日本のベンチャーに対する支援策を調べてみましたが、そんなに大きい差はないと思いま す。韓国は、昔は日本の協会やベンチャー支援策を導入しようとしましたが、今となっては韓国の方が優れた 面もあると思います。韓国の方がちょっといいのではないかと思った面は政府がリーダーシップを取って主導 的にしていることと、センターが大学の敷地内に位置しているので、大学のインフラを自由に使ったり、人的 交流を活発にしたりすることができることです。 Q7: 日本ではアイディアを持っている人にアメリカの「ENGEL FUND」のような役割を政府がすべきでは ないかという話が出ていますが、韓国はどうですか?

4KOSDAQ(コスダック、Korean Securities Dealers Automated Quotations)は 1996 年に設立された韓国の証券市場。先端技術株

中心であるナスダック(NASDAQ)市場にならってつくられたもので韓国証券取引所とは別の市場。中小企業やベンチャー企業たちが 市場で事業資金をより円滑に調逹できるようにするためにつくられた。by Wikipedia

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付論 韓国の社会イノベーションに関する視察報告 内閣府経済社会総合研究所委託事業 「イノベーション政策及び政策分析手法に関する国際共同研究」 A7: 私も、初期段階の企業に対しては個人にとってはあまりにもリスクが高いので、政府が主導的に支援す べきではないかと提案しました。ある程度政策に反映されているのではないかと個人的には思っています。 Q8: 創業振興院はFUNDRASING という事業は行っていませんか? A8: ベンチャーキャピタル協会があって、そこが主に担当しています。 Q9: 日本においてはベンチャーや創業というのは地域振興や雇用創出のためにわざとあまり盛んでないとこ ろに建てたりして、事業を広げようとしていますが、韓国の場合は保育センターの分散をみると、大都市中心 になっているようです。地域振興よりは企業の成功を優先しているのですか? A9: 日本の方も資源が豊富な国だとはいえませんが、韓国の場合、資源がないし、頼れるのは技術のみなの で、地域を公平に発展させることが最初の立ち上げの目標ではなかったし、インフラがすでに構築されている 大学が大都市に集中するようになっています。しかし、地域均衡発展のために地域特化ができる産業や商品を 認定される場合、支援する政策も行われています。

2-3

三星経済研究所 (SERI)

訪問日時: 3月3日(火) 10:00

ヒアリング対象者: BOK DUK GYU(技術産業室 主席研究員)

PARK YONG GYU(公共政策室地域開発チーム 主席研究員)

韓国のクラスター政策説明 現在の韓国においてのクラスター政策は大きく三つ位に分けられる。 (1) 5つの広域経済圏を構成して各地域の戦略的な産業を育成 昨年度までは市道別で3 つから 4 つ位の地域 を選択した上で、集中的な育成戦略をたてて行っていたが、今年度に入ってからは、広域経済圏を構成した上 で育成するようになっている。市道別の場合、空間的な範囲が小さくて育成に制約があるので、範囲を広げて 5 つの広域経済圏を構成するようになった。5 つの広域経済圏とは、1) ソウル、京畿、仁川、2) 大田、忠南、 忠北、3) 光州、全南、全北、4) 大邱、慶北、5) 釜山、蔚山、慶南でである。5 つの広域経済圏を個々に合わせ ると人口は平均的に400 万から 500 万人位になる。

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付論 韓国の社会イノベーションに関する視察報告 内閣府経済社会総合研究所委託事業 「イノベーション政策及び政策分析手法に関する国際共同研究」 行っているために、支援が重なっています。また、クラスターの側面から大学を支援する政策とその他の大学 支援が重複することもあります。 Q2: 企業と大学が協議の上で開設している科目やカリキュラムの例を挙げてください。 A2: 二つ位の例を挙げることができます。まず、企業が必要とする専攻を開設する場合です。例えば、成均 館大学大学院と三星電子が協議の上で半導体専攻を開設しまして、三星電子の方は奨学金を出したりして支援 を行い、その専攻で卒業した学生が三星電子に優先採用を通じて就職ができるようにしています。  二つ目の例としては、カリキュラムを開設する場合です。会社が求めている人材の要求事項などを大学に伝 えると、大学の方はそれに答えられるような専攻をカリキュラムの中に組み入れたトラックを開設します。こ のトラックで勉強した学生は卒業した後に、その会社に就職することができるような仕組みになっています。 例えば、半導器械という会社と慶北大学が協議の上で会社が求めている人材を育成するためのカリキュラムを 開設しました。ただ、このような仕組みは幾つかの先頭企業が中心になって選別的に行っていて、一般になっ ているものではありません。 Q3: 現政権のクラスター政策に関して、三星研究所はどう評価していますか? A3: 韓国の場合は、クラスター政策というのはヨーロッパとかアメリカのシリコンバレーのように長期間的 に渡って生まれた自然発生的なものではなく、政策によって最近推進されてきたものですので、評価に当たっ ては時間がちょっと短いのではないかと思います。しかし、その中でもいい面と問題になっている面、両方を 挙げることができます。 <成果>  まず、地域企業の育成することによって地域間の所得格差という問題を解消しなければならないという見方 ができたことです。実際に、企業に対するサーベイを行ってみると、売上高や、人力確保という側面からはプ ラスに働いていると思います。  二つ目は、さきほど、各省庁の重なった支援という問題についてお話しましたが、この問題はクラスター政 策の以前からずっとある問題であって、それにも関わらず、それなりに省庁がネットワークを形成して一つの ミッションに向かって役割分担をしています。ですので、徐々に進化している面からみるとこれもそれなりに 評価できると思います。  三つ目は、前は地域振興のためには科学や産業だけが必要だと思われていましたが、クラスター観点から教 育や生活環境、自然環境、文化施設などの条件が改善していなければならないという視野を地域が持つように なったことではないかと思います。 <問題点>  今からは、問題点をお話したいと思います。まず、クラスター政策の主な目的は、根本的なネットワークの 形成を通じて相互補完をすることによって、シナジー効果を出すことですが、現在、ネットワーク形成より研 究室や施設等のハードウェアにもっと重点を置いているのではないかと思います。  また、クラスター政策に参加している主体間のネットワーク形成が重要ですが、ネットワークに参加するイ ンセンティブが足りないのが問題のではないかと思います。ネットワーク形成を通じてイノベーションを起こ しまして、その結果として企業の売上が上がった時、その成果に通じてまたネットワークに参加するというよ うな経験をしている企業が多くないのが事実です。インセンティブが分からない理由としては、官主導でネッ トワークを形成しているので、動機誘発がうまくできないし、ネットワークに入って得られる利点が明確に見 えてこないからではないか思います。  三つ目の問題点としては、クラスターを推進する時、誰が中心主体として企画や施行するかというのが明確

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に定めてないことです。 このようにはっきり決まっている機関や制度設定がないので、各省庁や自治体、支援 機関など様々な機関が同時に政策を行っていると思います。  第4 に、 韓国においての地域クラスターは地域の差別的な特徴を生かして国際競争力を持つようにするこ とですが、果たして本当にその地域の特性というものが国際競争力を持っているのかが疑問になっていること がもう一つの問題点ではないかと思います。  最後に、創業が活性化されていないという問題もあります。制度的に必要な措置や、専門的に創業に関して 保育するマネージャーの拡充、創業に失敗したときに大学に復帰できやすい大学の柔軟な運営などができれ ば、ベンチャーを活性化することができるのではないかと思います。 Q4: クラスターの評価基準は何ですか?

A4: クラスターを評価する基本的なフォーマットは「IPOO(Input Process Output Outcome)」です。「Input」

というのは財源や施設、装備等がどうのぐらい投入されたかを評価するもので、「Process」というのはネット ワークの数や会員数、集まる頻度などを基づき、ネットワークの形成がどのぐらいうまくできているかをみる 項目です。「Output」というのは生産量や雇用率などの実施な成果が上がっているかを、「Outcome」は該当地 域の経済活性化にどのくらい寄与したかと評価する指数です。現在、インプットやプロセスの方を中心に評価 していますが、評価の比重がOutput や Outcome の方に移さなければならないのではないかと思っています。 Q5: 今後の韓国のクラスター政策の見通しはどうですか? A5: 量の側面からみると多様な政策が行われているし、特に広域経済圏でのクラスター政策は活発に推進さ れていますので、外形的には相当な成果をあげているのではないと思います。質の側面からみると、ネット ワークの完成度をどうやって高めるかが課題になると思いますが、すでに政府や自治体がクラスター政策に高 い関心を持ち、力を入れて推進していますので、それなりに成果を出せるのではないかと思います。

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延世大学

訪問日時: 3月3日(火)13:00

ヒアリング対象者: PARK HOEN JUN(延世大学経営学科教授・社会的企業センター所長)

事業紹介(ソーシャルベンチャー大会の執行代表  PARK HOEN JUN 氏)

社会的起業は二つの側面から分析することができる。まず、 社会的起業をビジネスのモデルの側面からみる と、1) 非営利モデル (Nonprofit)、2) ハイブリッド (Nonprofit+Profit)、3) ソーシャルビジネスモデル (Profit) のように、大きく3 つに分けられる。次に、社会的起業の成長段階としては、 初期段階 (Early Stage) と後期 段階(Later Stage) に二つに分けられる。

社会的起業の動きを活発させるためには優秀な人材の育成とキャピタルマーケットの形成が必要である。ソー シャルエンタープライズのEarly Stage においてはこのような人材の確保及び育成が重要であるが、Later Stage の方に行けば行くほど、スケールの拡張の側面からキャピタルマーケットを形成するのに重点を置くべきだと 考えられる。 まず、人材の育成に関してはビジネスの力量がある人が必要である。ソーシャルセクターにおいてはソー シャルウェルフェアや市民運動、社会運動を行っていた人たちが輸入されたが、この人たちは政治的な性向が 強すぎて、これがソーシャル起業の活動をするには足かせとなってしまう。また、この人たちにはビジネス化 する能力が足りないという欠点もある。そのため、経営的なノウハウや知識を身につけた人が投入されるべき ではないかと思われる。

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付論 韓国の社会イノベーションに関する視察報告 内閣府経済社会総合研究所委託事業 「イノベーション政策及び政策分析手法に関する国際共同研究」 延世大学はMBA でのソーシャルエンタープライズの教育を通じて、社会起業に関心がある学生に社会問題 解決に対する動機や社会起業家の精神を持たせ、この分野に進出させるようにしている。ただ、カリキュラムや 誘引策をどうするかが今の課題になっている。学生の関心を引き起こすためにベンチャーコンペを行い、新し い教育プログラムを開発しようとしている。コロンビア大学では「学費リダクション(Tuition Reduction)」と いうプログラムを行っている。これは、MBA 学生がソーシャルエンタープライズのセクターに行くと、ウォー ルストリートの方に行った時に貰える給料の80%位しか貰えないので、その 20%分を学費から削減してあげ るということ。また、ソーシャルエンタープライズのセクターでインターンをする学生には大学が奨学金とし て給料を払い、学生から興味を引き起こして、より多くの学生がインターンプログラムを通じて学生時代に経 験をするようにしている。 韓国において、ソーシャルキャピタルはそんなに活発にされていない。1,2 つ位が形成されているが、まだ 積極的ではない。今、労働部に認証を受けた初期段階の社会的起業が208 個ある。この企業は 3 年間法人税の 50%を減免されるし、雇用を創出した場合、人件費をもらう。ソーシャルビジネスモデルの方にソーシャルイ ノベーションを起こすためには、善意の競争や革新ができる投資をする必要である。また、ソーシャルキャピ タルが形成されたら成長の可能性があるかどうかを判断できるインベストメントのオフィサーも必要である。

Later Stage にいくと、Early Stage のように税金の恩恵や、グラント、人件費等だけではスケールを拡張す ることが不可能であるので、エクイティーインベストメントのように、キャピタルマーケットを形成しなけれ ばならない。しかし、投資をどうすれば効果的にすることができるかということが今後の課題になっている。 インベストメントの良い例を挙げると、民間がある程度金額を集めた時、政府がそれに対して、掛け10 とか 20 の金額を投資し、メガファンド (Mega Fund) を作る。メガファンドの運営は政府の主導にすると、民間が 依存的になり、そんなに効果を上げることができないので民間の専門家に任せる。投資を受けた企業が5 年後 には元金の返したら、ソーシャルインパクトの側面からの結果を見た上で、再投資をするかどうかを決める。 質問応答 Q1: 韓国では延世大学以外の他大学のMBA コースでもソーシャルベンチャーを重視していますか? A1: 韓国のMBA において、ソーシャルベンチャーを集中的に研究しているのはそんなに普遍的ではありま せん。むろん、地方の大学においても幾つの大学か研究をしていますが、この分野に関しては延世大学が一番 進んでいるのではないかと思います。 Q2: 延世大学のソーシャルプログラム出身の企業でグラントの段階からインベストメントの段階に差し掛かっ ている例を教えてください。 A2: 2,3 つの例があります。  まず、私の’ 社会的起業と革新’ という授業を受けた学生たちが作った「YOENNORI」というベンチャーを 紹介したいと思います。現在、インターネット中毒や激しい競争からのストレスで情緒が不安な小学生がたく さんいます。YOENNORI はその小学生のために、英語で伝統的な遊びを教える企業です。延世大学には年 間海外からの交換学生として4 千人位の留学生が来ているそうです。この学生たちの中で関心がある人を募集 し、ボランティア活動という形でビジネスをする計画を持っています。  二つ目はソーシャルベンチャー大会出身の企業で、運営は1970 年に労働環境の改善のために自殺した JEON

TAE IL という韓国人の家族がしています。「Cham Sinanun Ot(意味:興がわく服)」という名前の社会的起業 です。この企業は女性一人で家庭を持っている人や現在正当な扱いを受けてない縫製勤労者を集めて裁縫技術 を教えています。この人たちが集まって’SuDaGongBang’ という衣服関係の会社を設立しました。今年、35 億ウォン位の売上が予想されています。

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1997 年の金融危機のため、現在でも 700 万から 800 万人位の人が信用不良になっています。この人たちは制度 金融権ではお金を借りることができません。One Click.Com はこの金融疎外階層に対し、P2P(Peer-to-Peer) という逆競売の形式をとって貸し出しをする企業です。お金を借りる人は、どのぐらいのお金がどういう理由 で必要になったか、またどういうふうに返すかという計画をインターネットに載せます。そして、それを見た 人たちが、自分が貰いたい利子(1%− 99%の中で指定可能・ 平均利子は 11%位) と貸せる金額を載せます。す ると、One Click.Com は一番利子が低い人からのお金を順番に貸してあげます。利子とともに元金をちゃん と返した人たちは信用力が回復されて、制度金融圏に戻せます。一般的に会員数が10 万人を突破すると、自 立できるということですが、今、One Click.Com の会員数が 10 万に近づいていますので、見通しがよい企業 だと思います。

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韓国ベンチャー産業協会 (KOVA)

訪問日時: 3月3日(火)16:00

ヒアリング対象者: KIM YOUNG SOO (ベンチャー産業協会 室長) HAN IN BAE (ベンチャー産業協会 チーム長)

LEE MI SOON (ベンチャー産業協会研究院 責任研究員) KANG HYEONG JONG (ベンチャー産業協会研究院 研究員) LIM SOO JIN (ベンチャー産業協会研究院 研究員)

説明資料: 2008年ベンチャー企業精密実態調査

事業紹介(ベンチャー産業協会 室長  KIM YOUNG SOO 氏)

韓国においては、アメリカのシリコンバレーのようにベンチャーの出現が自然発生的ではなく、政府が主導 的に法律を改正し、制度を改善した上で、政策的に推進してきた。つまり、韓国政府はベンチャー産業を国家 の新成長エンジンとして認識し、ベンチャー産業の発展を促進する為に積極的にベンチャー関連政策や各種支 援を行ってきた。KOVA も政府のパートナーとして役割を果たすために特許技術を開発した何人かの若者に よって1995 年に設立された。 質問応答 Q1: ベンチャー産業協会は社団法人ですが、運営資金は各ベンチャー企業の出資金ですか?それとも政府か らの補助金がメインになっていますか? A1: 政府の補助金です。ただ、初期設立した当時は政府の支援はありませんでした。設立してから5 年間は、 ベンチャー1 世代と呼ばれる起業家たちの個人的なお金で運営されました。今過去と違って政府は今ベンチャー が重要な政策のパートナーとして認識しております。今年KOVA は政府から 100 億ウォン位の事業予算を貰 いまして、ベンチャーに対する各種支援サービスに活用しております。 Q2: 具体的に政府支援策を説明してください。 A2: 政府支援策というと、包括的ですので詳しく説明しにくいですが、まず法的の面から言いますと、政府 のベンチャー支援策は1997 年に定められたベンチャー育成のための特別促進法に基づいて行われています。 この促進法には「ベンチャー確認制度」と呼ばれるものとしてベンチャー選定定義が明記されています。政府 はこの定義を満たしたベンチャーを支援しています。

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付論 韓国の社会イノベーションに関する視察報告 内閣府経済社会総合研究所委託事業 「イノベーション政策及び政策分析手法に関する国際共同研究」 のです。一例を挙げると、キャピタル投資を受けた企業とかR&D が 5%以上の企業を確認した上でベンチャー 企業として認めてあげるということです。ベンチャー企業の一般的な定義を法制化したと考えていただければ 理解しやすいと思います。現在、こういうふうにベンチャー企業として確認された企業は15,000 個位があり ます。  企業の成果に関しては、毎年、実態調査行ってみると、中小企業の成長率の2∼3 倍を上回っています。細 部的な数値はKOVA の実態調査報告書を参考してください。 Q3: 大企業や中小企業に比べて、 中小企業の成長率の2∼3 倍であるベンチャー企業が経済危機から受けた ダメージの大きさはどうですか? A3: 2008 年に 2007 年の実態を調査したものがありますが、この調査の結果には緊急危機が反映されてない ですので、実際的にどのぐらいのダメージを受けたのかは正確的にわかりません。しかし、ベンチャーがダ メージを受けていることを示す間接的な資料やKOVA の研究員が毎月行っている動向調査の結果、BSI の結 果などをみると、ベンチャーもかなりダメージを受けているという印象は受けております。 Q4: 業種別分布はどうなっていますか?そして、 韓国の独特なベンチャーの例は? A4: 実態調査の業種別分布をみると50%以上が IT に集中されていることが分かります。 IT というのは BT,NT,CT が融合されて形であって、ここで IT ベンチャー企業というのはハードウェアや、ソフトウェア、コ ンテンツ全部含んでいます。

 現政権が最も重要視している分野は緑色成長という「GREEN VENTURE」です。KOVA も戦略的に GREEN VENTURE を育成しようとしております。そして、今までの韓国の独自的なベンチャーの例を挙げますと、 ポータルサイトや、インターネットゲーム、携帯電話の部品に関連がある企業です。 Q5: どのくらい成長したら、ベンチャーを卒業しますか? A5: 韓国では希望は関係なしに、ベンチャー確認制度という法律でベンチャーとして認証を受けた企業だけ がベンチャーです。そして、法律上ではベンチャーの認証の有効期間(1 − 2 年) が満了しますと、それからは ベンチャーではありません。ただ、ベンチャー企業が延長をしたい場合、ベンチャー企業として維持すること もできます。 また、ベンチャーキャピタルが10%以上投資した企業をベンチャーと認定しています。認証を受けた 15,000 社の中で投資を受けた企業は500 − 600 個位だけです。しかし、実際にベンチャーキャピタルから投資を受け た企業は数千個です。 Q6: 政府からベンチャー企業として認定されるメリットは? A6: 初期段階のベンチャー企業の場合は財政的面においての恩恵のみならず、現在認知度が低いため、公認 機関から認証を受けること自体が認知度の側面からみたらメリットになりますので、多くの初期段階のベン チャーは特に認証を受けようとしています。 Q7: 認証の基準は何ですか?

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A7: 韓国においては、技術保証基金や、ベンチャーキャピタル協会、中小振興公団、3 つの機関がベンチャー 確認を行っています。そして、ベンチャー確認の要件は大きく3 つに分けられますが、1) ベンチャーキャピタ ルからある程度資金を受けた場合、2) 売出対比ある程度 R&D に支出した場合、3) 技術保証基金から技術評価 を受けた場合です。企業の売上や規模はベンチャー確認の要件に入っていません。今、実際に、ベンチャーと して認証と受けた企業73%位が技術保証基金から、技術の独創性や事業になる可能性、マーケットの大きさ基 づいて技術評価を受けたケースです。 Q8: 大学のベンチャーインキュベーターへ訪問した時、受けた印象ですが、Donation ではなく、 入居した 段階から成功払いの形でプロピットの何%の株や持分を出せるという仕組みになっているようです。こういっ たルールは大学発ベンチャーだけではなく一般のインキュベーターにも存在していますか? A8: 一般的に、ベンチャーインキュベーターに入居した企業は自立度が低い状態ですので、ハードウェアや 諮問、経営支援をして、その代価を成長した後に払わせるという仕組みをしていると思います。

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韓国産業団地公団 (KICOX)

訪問日時: 3月4日(水)10:00

ヒアリング対象者: CHOI SOO JUNG (クラスター推進チーム長)

説明資料: Industrial Complex Cluster Policy(2008.08)

Perfection Into Business-friendly New Industrial Complex KICOX Completion of the New Industrial Complex KICOX(パンフレット)

事業説明(クラスター推進チーム長  CHOI SOO JUNG 氏)

韓国産業団地公団(KICOX) は産業団地の開発や入居企業の生産活動を支援するために 1964 年に設立され た。産業団地というのは、国家産業団地、農工産業団地、一般産業団地3 つに分けられるが、KICOX はその 中でも国家産業団地(全国において 35 個) の造成や、企業の誘致、その企業に対してのマーケティング、人力 支援、クラスター業務を主に行っている。KICOX が管理している産業団地は韓国においての製造業の総生産 の約50%、雇用の 40%、輸出の 72%を占めていて、国家経済の成長基盤として重要な役割を演じている。 KICOX は革新クラスターの推進と新産業空間の創出というミッションを果たすために、産・学・研・官間の ネットワークを構築する事業と地域差別化を図って地域の特定の産業を育成する事業を主に行っている。2004 年に革新力量が良好な代表的な7 つの示範産業団地を、2007 年にまた 5 つの産業団地を選抜的に選定して推 進してきた。 質問応答 Q1: クラスター政策の成果に関して説明してください。 A1: 2005 年と 2008 年のモデルプロジェクトがありますが、2008 年の方はまだ行っていませんので、2005 年 の成果を説明させていただきます。2005 年度のモニターリング調査によれば、プロジェクトに参加した企業 は参加する前と比べて、全て平均生産は42.4%、平均 R&D 支出は 18.4%、特許登録数は 216%増加されたこ とが分かります。 Q2: どのような支援を行っているか具体的な例を挙げてください。

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付論 韓国の社会イノベーションに関する視察報告 内閣府経済社会総合研究所委託事業 「イノベーション政策及び政策分析手法に関する国際共同研究」 A2: 企業や大学、研究所、専門機関等は年中政策プレゼンテーションや技術セミナー、定期集会など様々な ネットワーク活動をしています。そこでR&D や経営、マーケティングなどの分野に渡っての問題が発見され た場合、解決するための予算を支援しています。個人的に、年中、現場で課題を発掘し、解決するという事は この支援プログラムの一番いい面ではないかと思います。 Q3: 2008 年度の予算が 828 億ウォンですが、団地別に分けて考えると、そんなに高くない気がします。 A3: 一個一個当たりの金額は高くはありませんが、当協会の主な目的というのはクラスターの形成ですので、 インフラ構築のように長期間に渡って巨大な予算が必要な課題の場合は他の中央省庁や自治体に連携をさせ て、そっちで進めるようにしています。KICOX は短期で解決できる課題に集中していて、実際、一企業当た りの制限金額が2 億ウォンになっています。 表17: 韓国産業団地公団 (KICOX) の主要推進事業 主要推進事業 支援額(億ウォン) 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 計 産学ネットワーク構築事業 246 340 251 370 1,207 特性化事業(共同技術開発、大・中小企業の協力、共同ブランド構築など) 34 101 190 270 595 R&D 力量強化事業 117 150 108 286 共同事業(E-CLUSTER、海外協力など) 17 22 21 80 140 総計 297 463 612 828 2,200 出所:KICOX のウェブページ: http://www.kicox.or.kr/biz/major 01.jsp Q5: 既存の産業団地の政策とはどう違いますか? A5: 韓国においての革新クラスタープログラムは12 つの各地域での特別な業種を中心に施行されています。 つまり、それぞれの推進産業団地で地域の特性、集積業種、革新環境による差別的な事業を行っています。既 存の産業団地は単純集積地であって、入居企業間に連携性が低かったですが、今のクラスター政策はネット ワーク形成を積極的に支援しており、企業同士が相互競争及び協力をする雰囲気を造成することに力を入れて います。これが一番差別化された部分ではないかと思います。  しかし、課題として、これからは革新を創出する専門人力の確保及び教育訓練の実施が必要だと思います。 そして、今までのクラスターは生産中心でありましたが、今後のクラスターはR&D を加えたクラスターを構 成したいと思います。 Q6: ネットワークを通じてどういう活動をしますか?そして、評価はどうされていますか? A6: ネットワークを形成して、 政策プレゼンテーションや技術セミナープレゼンテーションなどを行ってい ます。今、ネットワークの数や参加した人数などを基づいて評価しておりますが、計量化ということはやはり 難しいのが事実です。 表18: ネットワーク活動  (2005 年 4 月―2007 年 12 月) 政策プレゼンテーション 定期集会 サポートユニット カウンシル 技術セミナープレゼン テーション 交換カウンシル 総計 187 ケース 742 ケース 137 ケース 448 ケース 155 ケース 1,669 ケース 7,291 人参加 13,875 人参加 1,799 人参加 15,784 人参加 3,949 人参加 42,678 人参加 出所:KICOX のウェブページ: http://www.kicox.or.kr/biz/major 01.jsp Q7: 韓国においてのクラスタープログラムの特徴はなんでしょうか?

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A7: 地域・業種別に、共同の利益のためにセミナーや競技会など様々なネットワークを通じて現場で課題を発 掘して、解決策を模索するミニクラスターだと思います。持続的に情報を交流し、相互協力をすることによっ て企業同士のみならずその地域の競争力を向上することができると思います。

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3.

視察結果の振り返り

まず、韓国科学技術院(KAIST) では韓国の大学の研究開発に関する投資及び結果に関する概略を伺うこと ができた。しかし目に見える数値はむしろ日本よりも低い数値のみであった。ただ、Input として挙げる研究 開発費用及び研究員の数やOutput として挙げた論文、特許等の質的な側面を考慮していない数値で成果を明 確に表せない問題点を同時に実感した。何故ならば米国に続いてOutput の面で世界 2 位を堅持しているのが 日本であるがその成果がはっきり見えないことを考えると数値の単純比較は無意味かも知れない。 KAIST は大徳研究団地と呼ばれる韓国最大規模の研究都市に位置している。地理的利点を生かしているか と思いきや帰ってきた答えは意外なものであった。この大徳研究団地は日本の筑波をモデルにして約30 年前 に計画されたものであるが、技術に優位性を持っている限り地理的な環境が不便でも相手が自ら来るという答 えたった。日本の筑波をモデルにしたことにも驚いたが、技術で優位に立つ限り外部要因はそこまで問題にな らない認識であった。 そして、特筆すべき点は大学発ベンチャー及び前段階のIncubation に入居している新規起業の産業構成比で ある。日本の場合、一つの大学の中で創業する新規起業の場合、まず数が少ない上、似たような産業分野になっ ている場合が多い。これは情報交換など有意な機会が少ない上、あったとしても逆に潜在的な競合相手になり かねない点がネックになり、お互いの盛んな交流はあまり期待できない。一方、KAIST の場合、Incubation 施 設の規模が90 社以上常時入居中である。日本の Incubation 施設の平均的な入居数を考えると 3 倍以上の数値 であろう。そして、技術系の総合大学のメリットを生かし、入居している企業の産業構成も機械からバイオ・ 医療関係に至るまである程度バランスを成している。もちろん、大学の教育環境上、IT・電気関係が 44%をも 占めているが、他分野との連携、たとえば、医療機械、半導体など、を通じた相乗効果を十分想像することが できる。つまり、Incubation に入居すること自体が潜在的さらなるビジネスチャンスの獲得にもつながるとも 言えるだろう。 もう一点、徹底的な大学の方針を挙げることができる。大企業との共同研究・受託研究の際には結果物の一 つである特許に関してその権利を大学側が確実に保持する点など、どうしても弱い立場になりがちな個々の研 究者を大学が方針としてしっかり保護している点である。その一方、大学が特許を保持しながらそれに基づい て起業し、株式公開(IPO) に至った場合、起業する側は成功報酬として株式の一定割合を大学に提供する条項 を契約書に入れるなど、大学が両者の真ん中で適宜に収益を上げる仕組みを気づいている点も注目に値する。 実際、KAIST で上場を果たした企業は 7 社であるが、日本の累計上場件数が 22 社であることを考えると驚 くほどの数値である。そして、上場企業は成功報酬とは別に同門創業館という名のIncubation 施設を大学側 に寄贈するなど、同じ大学の卒業生として良いロールモデルになってくれることも構内の創業意欲を高める要 因でもある。 個人的な経験とは言え、大学発ベンチャー及び起業に関する大学関係者の間には基礎研究が愚かになる為、 時期尚早だと主張する意見を何回が聞いたことがあることを考えると、このような大学側のPolicy が大きな 影響を与えていると想像ができる。 政府の支援のもとにIncubation 役割を果たすのが創業振興院である。全国に計 269 か所ある創業保育セン ターつまりIncubation を管理するのが主な仕事である。Incubation の配置は地域均衡発展というのが目標で はないため、都市部に集中的に位置しているのが特徴である。入居可能な数は日本のIncubation とさほど差 はないと思ったが、入居企業の雇用人数一人に対する売上高は1 千万円程度であり、低い水準とはいえない。 創業振興院で驚いた点は院長の発言であった。上述したように政府関係機関にありがちな地域に一律的な配 分及び設置がここにはなかった。彼曰く、資源が足りない上、創業振興院の第一の目標は地域発展ではないと

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付論 韓国の社会イノベーションに関する視察報告 内閣府経済社会総合研究所委託事業 「イノベーション政策及び政策分析手法に関する国際共同研究」 断言した点である。地域発展はあくまでOutcome であり、Output ではないと理解した。政府機関に属しな がらこのような発言が出来ることにもびっくりしたが、もう一点は予算の増額の件であった。大統領制である 事情はあるにせよ、現政権の李明博大統領の就任後、創業振興院の予算が前年比18 倍の 90 億円に跳ね上がっ た点である。予算の金額自体よりは1 年前後にこのように劇的に増額が出来る点は創業に対する期待値の高さ の表れかも知れない。 韓国有数の民間経済研究所である三星経済研究所ではクラスター政策に対するコメントを得ることができ た。自然発生的なクラスターとは違い、日韓ともに政策的にクラスターを各地域に形成させようと努力する一 方、意図的に施している分、発生する問題点とその根本的な原因を伺えた。 日韓ともクラスター支援に対する政策・予算が重なったケースが多いが、これは予算編成上の問題というよ りは、クラスターというものの性格によるものである。クラスターは一つの支援策でカバーが出来るものでは ない、いわゆる総合的な政策である為、このような問題は付き物である。この問題を解決する為には政策実施 中心主体を決め、他の部門との連携を広げるしかない。 それ以外の問題点としても、ハード面での施設拡充に傾斜しがちな点である。何故ならソフト面での成果測 定が難しいこともあり、どうしてもハード面での投資が目に見えやすい結果として表れる為である。そして、 KAIST の方でも示したように、Incentive の見えにくい現在の仕組みでお互いの交流を促すことは容易では ない。 また、各地域のどのような要素に国際競争力があるか明確ではない点である。 このように検討の余地の多いクラスター政策ではありが、今まで注目をあまり惹けなかった生活環境、自然 環境、文化施設なども地域振興の上で重要な要因であると認識ができた点はこのクラスター政策の肯定的な評 価だろう。 ベンチャー関係の調査をする上で難しい点の一つはその定義をどのように設定するかでもある。例として日 本の大学発ベンチャーの定義はあまり広範囲に渡っていて一般の新規起業との線引きが難しいときがある。韓 国ベンチャー産業協会では韓国のベンチャーを対象に、毎年実態調査を実施していてその調査内容及び結果に 関する話を伺うことができた。 韓国では「ベンチャー確認制度」という数値を用いた政府によるベンチャー認証制度がある。この目的な創 業初期の企業に対する投融資が円滑に行われるようにする為にであって確認の有効期限は2 年までで延長もで きる。 大学発ベンチャーは大学の名前を、認知度向上の為に有効に使う場合が多いが一般企業にとってはそれすら 難しいケースが多い。米国とは違いベンチャーキャピタルの動きが企業の成長段階で行われている現状を考え ると政府がベンチャーが持っている技術に対する評価・財務面での研究開発比率・他のベンチャーキャピタル からの投資比率などを評価し認証することによって、一般投資家Angel にも分かりやすい評価基準を提示す ることによってマーケットでの自発的成長を促せると考えられる。 韓国産業団地公団では韓国の産業団地を管理、支援を行ってきた機関である。クラスタイーと産業団地の違 いを説明してもらい、いかにして既存の産業団地をクラスターに変えていくかに関するご意見を聞くことがで きた。 まず、既存の産業団地の規模は韓国全土に35 か所あり、韓国製造業の総生産の 50%、雇用の 40%、輸出の 72%を担っている。輸出依存型の韓国経済を考えるとこの数値は産業団地の重要性をわかりやすく伝えてく れる。 では、既存の産業団地とクラスターの違いは何であろうか。物理的な場所等の違いは基本的にない。おもな 違いは、既存のものが単純集積地だとすれば、クラスターはその集積地の内部の企業同士のネットワークに着 目、健全な競争・協力を導き出すことである。 予算が少ない分、短期に解決できる課題に重点を置きながら、該当企業に裁量権を最大に与えていることが Top-down になりがちな政策を有効に活用できる一つの要因と考えられる。

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4.

まとめ

今まで述べたように、ベンチャー及びクラスターの特性上、日韓に共通するいくつかの問題点が存在する。 まず、定量的な評価基準の導入の際の問題点である。三星経済研究所でも指摘したようにInput と Process に焦点を当てがちな評価基準に、如何に質的な内容も含めてOutcome をも含めるかである。ベンチャーとし て創業した以上、成功を目指すのは自然なものではある。但し、今の評価基準は成功のみに焦点を当て過ぎた かもしれない。大学教員等が事業化に失敗した時、はたしてデメリットだけが残るだろうか。成功を目指すべ きであるが、事業化が難しいシーズをもって始めた分、失敗の可能性が高いのは事実であろう。では、失敗の 確率の高いこのチャレンジを生かすのは失敗から得られた経験値であり、次回の誰かの更なるチャレンジの為 にそれを集められる場所が要る。残念ながら現在の大学の内部にはこのような失敗からの経験値が体系的に蓄 積される場所があるか疑問である。このように失敗をも正当に評価できるような評価軸の確立と実行が今後の 活発な革新的な創業活動には必須不可欠であると考える。 そして、クラスターにおける参加メリットを如何に実感させるかである。日本の場合、似たような業種の会 社を同じクラスターに集積させる場合がほとんどであるが、異業種間の交流を通じた新しいアイディアの創出 こそ技術革新の第一歩である可能性が高いはずである。競合相手になり得る同じ分野の企業同士のクラスター にもある一定のメリット、例えば、販促・営業面での規模の経済を追求する可能性はあるものの、自社の発展 において必須不可欠な革新的な技術の創出の可能性は高いと言い難い。 そして、基礎研究を担っている大学側の仕組みも指摘したい。韓国と日本の大学側の取り組みは一見その差 があまり見えてこなかった。その理由の一つとして挙げられるのは韓国の方が日本の仕組みを受け入れてきた 経緯があるだろう。但し、一旦出来上がったその仕組みを如何に徹底的に運用するかで結果に差が出るのでは ないか。今回の訪問では大学側の創業支援に関する熱意を十分感じ取ることができた。 限られた資源の下、如何に効率よく事業化が出来るかを悩み続き、道を探る姿こそがベンチャーの真髄では ないかと思い、受益者側がもっと悩んだ結果としての要請をもっと明確に出す必要性を感じながら、この現地 調査報告を閉めたい。

表 4: KAIST の R&D 生産性 (100 万ドル)
表 10: マネージャー級職員(人)
表 15: 入居企業の知的財産権の現況(件数)

参照

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