2018 年 3 月 2 日号
[
経済・金融市場動向]
◆ 金融市場見通し・内外経済指標
市場は通商政策の不透明感や物価指標を注視し神経
質な展開に。伊総選挙は混戦も、市場への影響は限
定的と予想
[トピックス]
◆ 不安定な動きが続く米国株式相場の見通し
PERの高め水準が許容される環境が当面続くと予
想するが、緩やかながらも金利が上昇しPER低下
圧力が掛かる場面を今年は短期的に挟む可能性
◆ パウエルFRB新議長デビュー
米経済・物価情勢の好転に、2月の財政合意を踏まえ
ると、利上げ加速観測の強まりは避けがたかったが、
議長の個人的見解が「火に油」となったようだ
金融市場ウィークリー
✣[目次]✣
今週の注目チャート ···
1Ⅰ.経済・金融市場動向 ···
3 金融市場見通し ··· 3 金融市場レビュー ··· 4 内外経済指標の解説と予測 ··· 5Ⅱ.トピックス ···
8 不安定な動きが続く米国株式市場の見通し ··· 8 パウエルFRB新議長デビュー ··· 10Ⅲ.参考資料 ···
11 今週・来週の主要経済指標 ··· 11 月次・四半期のスケジュール ··· 13 今週の金融市場の動き ··· 16 最新リポート一覧 ··· 17〰〰
マーケット時流潮流
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デフレ脱却宣言はいつか 調査本部本部長代理 長谷川克之 値上げの動きが相次いでいる。人件費や原材料コスト等の上昇から値上げを志向する動きが徐々に 広がりつつある。確かに基調的な物価の伸びは緩慢だ。所得の伸びが追い付いていない中での物価上 昇は消費者心理を冷やしかねず、持続性には疑問もある。しかし、日本経済が「デフレではない状況」 にあり、「デフレ脱却に向けた局面変化」が見られるとの政府の判断は概ね妥当だろう。 それでは政府はいつデフレ脱却宣言を出すのだろうか。デフレ脱却の目安とされる経済指標、すな わち、GDPデフレーター、GDP(需給)ギャップ、単位労働コスト、消費者物価上昇率は概ねプ ラス圏で推移しており、経済的には脱却宣言は近いかもしれない。他方、脱却宣言には多分に政治的 な側面があり、タイミングを占うことは難しい。一部には、自民党総裁選(9 月)の際に、アベノミ クスの成果を強調する形で宣言が出されるとの観測もある。2019 年 10 月の消費税率引き上げに向け た最終判断を行う際に(年末頃)、脱却宣言を出した上で増税を追認する可能性もある。 しかし、脱却宣言のタイミングは後ずれするのではないか。脱却を宣言するには、デフレへの逆戻 りの懸念が払拭されることが必要だが、国際金融市場の潜在的な不安定性と円高リスクに鑑みれば、 払拭は容易ではないだろう。また、脱却宣言は現状の経済・金融政策の枠組みを変える可能性があり、 単純に宣言すれば良いという話ではない。「デフレ脱却を確実なもの」とするためのものとして位置 づけられている経済政策は少なくない。「政府と日本銀行の政策連携(共同声明)」(2013 年)もデフ レ脱却を目指したものでもある。もちろん脱却宣言が出されても、日本銀行は2%という物価安定目 標を達成するまで金融緩和姿勢を維持することになっているが、脱却宣言が金融緩和の出口への思惑 を惹起すれば金融市場への影響も出てこよう。デフレ脱却宣言には時間がかかりそうだ。〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰
~今週の注目チャート~
【 米国債:イールドカーブ 】
利上げ観測や国債発行増により短期ゾーンの利回りが上昇 (資料)Bloomberg より、みずほ総合研究所作成 【解説】米国債のイールドカーブを見ると短期ゾーンの利回りが上昇している。物価指標の改善による利上 げ観測の高まりに加え、短中期ゾーンを中心とした発行増や減税策成立に伴う保有債券売却など需給要因も 影響している可能性がある。今後、減税に伴う国債発行は短中期ゾーンを中心に行われるとみられるが、10 年国債の発行も増加する見通しだ。物価動向に加え需給要因による金利上昇圧力の高まりにも留意したい。【 ダウ平均株価とFF先物金利(24 カ月後)の推移 】
利上げペース加速への警戒感が根強い米株式市場 【解説】先週の 1 月 FOMC 議事録に続き、今週はパウエルFRB議長の議会証言における質疑応答のコメント を受けて、利上げペース加速の思惑が高まり株価の下押し材料となった。2 月初め以降、パウエル新体制に おける先行きの金融政策の動向に株価は神経質に反応する展開が続いている。来週以降 3 月後半にかけては、 ECB、日銀、FOMC の順で中銀イベントが目白押しであり、当面こうした地合いは続く可能性があろう。 1.5 1.7 1.9 2.1 2.3 2.5 2.7 21,000 22,000 23,000 24,000 25,000 26,000 27,000 17/10 17/11 17/12 18/1 18/2 ダウ平均株価 FF先物金利(24カ月後、右目盛) (ドル) (%) (年/月) (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成 1月雇用統計 1月FOMC議事録 パウエルFRB議長 議会証言 ▲ 20 ▲ 15 ▲ 10 ▲ 5 0 5 10 15 20 25 0.0 0.3 0.6 0.9 1.2 1.5 1.8 2.1 2.4 2.7 3.0 3.3 3M 6M 1年 2年 3年 5年 7年 10年 30年 差(右目盛) 2018/2/1 2018/3/1 (%) (bp)【 ドルの名目実効為替レート 】
2 月頃からドル安地合いが一服 (注)2018 年初を基準日とする。2 月 26 日以降のドルの名目実効レートはみずほ総合研究所試算値。 (資料)Bloomberg より、みずほ総合研究所作成 【解説】ドルの名目実効為替レートの動きをみると 2 月に入りドル安が一服し、足元ややドル高に戻してい る。背景の一つには米国の利上げへの期待の高まりがあるようだ。今週もパウエルFRB新議長の議会証言 (2/27)のタカ派的発言が米金利上昇とともにドル高圧力となった。ただし米金利上昇後の米株下落がドル 高急進の歯止めになっており、2 月以降のドル高のテンポは緩やかに留まっている。【 中国のPMI 】
製造業PMIの低下は春節の影響 (注)点線は 3 カ月移動平均。 (資料)Thomson Reuters より、みずほ総合研究所作成 【解説】中国国家統計局が 2/28 に発表した 2 月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は 50.3 となった。 引き続き景気判断の節目となる 50 を上回っているものの、1 年半ぶりの低水準である。2017 年は 1 月であっ た春節(旧正月)が今年は 2 月であったことが影響している。ただし、環境対策の強化も生産活動を縮小さ せる一因になっており、こうした環境対策の影響は今後も続くとの見方がある。 46 48 50 52 54 56 58 60 10 11 12 13 14 15 16 17 18 製造業PMI 非製造業PMI (ポイント) (年) 95 100 105 17/7 17/8 17/9 17/10 17/11 17/12 18/1 18/2 18/3 ドル名目実効レート ドル名目実効レート(Major、主として先進国通貨) ドル名目実効レート(OITP、主として新興国通貨) (2018/1/1=100) (年/月)Ⅰ.経済・金融市場動向
~金融市場見通し~
市場は通商政策の不透明 感や物価指標を注視し神 経質な展開に 今週、注目を集めていた下院での議会証言(2/27)でパウエルFRB議 長は「12月以降、私の個人的な景気見通しは上向いた」と発言し、市場で はややタカ派寄りと捉えられた。先行きについて強気な見解であることか ら、市場では利上げのペースが速まることが意識されている。物価推移へ の関心も高まっており、今週末以降の市場は平均時給などが発表される米2 月雇用統計(3/9)を意識した、神経質な展開が続いていくだろう。また、 トランプ米大統領が安全保障を名目とした鉄鋼やアルミニウムの輸入制限 措置を発動する方針を表明(3/1)しており、通商政策の不透明感も市場の 重石となるだろう。 伊総選挙は混戦も、市場へ の影響は限定的と予想 今週末から来週にかけての注目イベントは、大連立の是非を問う独社会 民主党(SPD)の党員投票(3/4)と伊総選挙(3/4)である。SPD内 では連立へ慎重な意見もあり、党員投票の結果は予断を許さないが、再選 挙を回避するため連立合意を支持するものとみている。伊総選挙では過半 数を獲得する陣営は出てこない見込みであり混戦だ。但し選挙法改正の影 響からEU懐疑派の五つ星運動には不利な展開となりそうだ。この2つのイ ベントの結果による市場への影響は限定的なものに留まるだろう。 日本では日銀金融政策決定会合(3/8~9)が開催されるが政策変更はな いだろう。黒田総裁の記者会見、副総裁候補の雨宮理事と若田部早大教授 の衆議院での所信聴取(3/5)での発言が注目される。 日米長期金利は横ばい圏、 日米株は不安定な動きを 予想 米10年国債利回りは米雇用統計の発表を週末に控え、横ばい圏での推移 を見込む。日本の10年国債利回りは0.05%近傍で推移していくと見ている。 米国株は金利上昇や通商政策への警戒から不安定な動きを予想する。現在 VIX指数は目安の20を上回っており注意が必要だ。日本株は米国株の動 きに左右される展開を予想するが、円高基調が続き、上値は重いだろう。 為替相場はもみ合う展開となろう。欧州の政治イベントを波乱なく通過す ればユーロは買い戻されるだろう。 (加藤俊亘) 【 来週の予想 】 USD LIBOR 3カ月(%)2.000 ~
2.100
米10年国債(%)2.70 ~
3.05
円 TIBOR 3カ月(%)0.05 ~
0.09
10年国債(%)0.01 ~
0.06
ダウ平均(ドル)23,800 ~
25,800
NASDAQ総合指数(ポイント)6,950 ~
7,400
日経平均(円)20,500 ~
22,000
TOPIX(ポイント)1,640 ~
1,790
円/ドル105.0 ~
109.0
ドル/ユーロ1.205 ~
1.245
円/ユーロ127.5 ~
132.5
為 替 項目 予想レンジ 内外金利 内外株式~金融市場レビュー~
<内外金利動向>
貿易摩擦への警戒から米 国株が下落し、米 10 年国 債利回りは 2.8%近傍ま で低下 先週末以降の米 10 年国債利回りは 2.8%近傍まで低下した。パウエル FRB議長の証言(米下院、2/27)を受けて金融市場では利上げペースの 加速が意識されたものの、2 月の米国債入札を波乱なく消化したことや、月 末の需要などもあり、米 10 年国債利回りは 2.8%台後半を中心とした推移 が続いた。その後、トランプ米大統領が鉄鋼とアルミニウムに輸入制限を 発動する方針を表明(3/1)したことを受け米国株が下落し、リスク回避か ら米国債需要が高まり、利回りは低下した。欧州では、2 月のユーロ圏イン フレ率(2/28)の低下などから、独 10 年国債利回りがやや低下した。日本 の 10 年国債利回りは 0.0%台半ばでの推移が続いている。 (坂中弥生)<内外株式動向>
日米株とも大幅上昇後、 パウエルFRB議長の議 会証言後に下落基調に転 じる展開 先週末以降の米株式相場は、下落した。先週末から今週初は、長期金利 が低下したことが安心材料となり株価は大幅に上昇し、2 月初めの急落の大 部分を一旦取り戻した。しかし、パウエルFRB議長による議会証言が予 想以上にタカ派的であると捉えられたことから株価は下落基調に転じ、週 後半には、トランプ米大統領の保護主義的な通商政策への警戒感も高まり 下落幅を拡大させた。日本株は下落した。米国株とドル円相場をにらんだ 推移となり週前半にかけては上昇したものの、週半ば以降、米株安・円高 進行とともに下落基調を強めた。週末は世界的な貿易摩擦激化への懸念も 加わり、輸出業種主導で大幅安の展開となった。 (大塚理恵子)<為替動向>
ドル円はパウエルFRB 議長のタカ派発言がドル 高圧力も、日銀緩和縮小 期待が円高圧力に 先週末以降のドル円相場はもみ合う展開。パウエルFRB議長の議会証 言でのタカ派的発言を受け、米利上げ期待の高まりからドル高圧力が高ま った。しかし、日銀の超長期国債の買いオペ減額(2/28)を受け、日銀金 融緩和縮小期待が高まり円高に戻した。また週後半にかけ米株下落ととも にVIX指数が再び目安の 20 を上回ったことも、リスクオフの円買い圧力 になった。ユーロドル相場はドル高ユーロ安地合い。米短期金利の上昇が ドル高圧力になったほか、ドラギECB総裁のハト派的発言(2/26)がユ ーロ安圧力になった。イタリア総選挙(3/4)を控え、欧州の政治リスクが やや意識されたこともユーロ売り材料になった。 (有田賢太郎)<新興・資源国動向>
株価は再び軟調、先行き 懸念が続く 新興国市場では、米国株の下落を受け、株式相場が再び軟調な展開とな っている。段階的な利上げを表明したパウエルFRB議長の議会証言や、 鉄鋼とアルミニウムの輸入制限に言及したトランプ米大統領の発言が影響 している。10~12 月期の実質GDP成長率が前期を上回ったインド(2/28) やブラジル(3/1)ですら株価は先週末より下落している。インドでは銀行 の不良債権や不正取引が問題となっており、ブラジルについては年金改革 の先送り懸念を理由にフィッチが格下げしたことも影響している。また内 閣改造を発表した南アフリカでは、次期財務相が格下げのリスクに言及す るなど、財政再建の実行性が懸念材料となっている。 (井上淳)~内外経済指標の解説と予測~
<国
内>
鉱工業生産指数は 4 カ月 ぶりに低下 今週発表の指標は、生産の一時的な落ち込みや消費の弱含みがみられた 一方、雇用関連は引き続き良好な結果となった。1月の鉱工業生産指数 (2/28)は、前月比▲6.6%と4カ月ぶりに低下した。前月に大幅な増産と なっていた輸送機械工業やはん用・生産用・業務用機械を中心に全ての業 種が低下した。1月を10~12月期比でみても▲4.6%と大幅なマイナスとな った。2月の生産計画(補正値)は+4.7%と増産が見込まれており、均し てみれば増産基調にあるが、在庫循環が積み上がり局面に入りつつあるこ とから、増産ペースは今後緩やかになるだろう。 小売業販売額は 2 カ月連 続で前月比マイナス 1月の小売業販売額(みずほ総合研究所による実質季調値、2/28)は、前 月比▲1.4%と2カ月連続で減少した。前月の反動もあって自動車小売業が マイナスに転じたほか、大雪や寒波等の天候要因が衣料品販売等を押し下 げた模様である。10~12月期比でみても▲1.2%と力強さを欠いている。 雇用関連指標は良好 1月の雇用関連指標(3/2)は、完全失業率が2.4%と大幅に低下し、1993 年4月以来の低水準となった。就業者の増加と失業者の減少を伴った良好な 結果と言える。有効求人倍率は、2カ月連続で1.59倍と高水準を維持した。 来週は実質GDP(10~12月期、2次速報)や家計調査が発表される。 実質GDPは 1 次速報か らわずかに上振れ 10~12月期の実質GDP成長率(2次速報、3/8)は、前期比+0.1%(年 率+0.6%)と、1次速報(年率+0.5%)から小幅の上方修正を見込む。法 人企業統計の結果を受けて、設備投資の伸びが高まるとみている。 実質消費支出は 2 カ月連 続で前年比マイナス 1月の実質消費支出(3/9)は、前年比▲2.0%と2カ月連続の減少を予測 する。食品価格の高騰や大雪などの天候要因が押し下げに寄与するだろう。 (平良友祐) 【 実質GDP成長率の推移 】 【 実質消費支出の推移 】 (資料)内閣府「四半期別GDP速報」よりみずほ総合研究所作成 (注)2018 年 1 月の値はみずほ総合研究所による予測値。 (資料)総務省「家計調査」より、みずほ総合研究所作成 ▲ 0.6 ▲ 0.4 ▲ 0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 2015 2016 2017 家計(民間消費+住宅) 民間設備投資 民間在庫投資 公的需要 外需 実質GDP (前期比、%) (期) (年) (予想) ▲ 6 ▲ 5 ▲ 4 ▲ 3 ▲ 2 ▲ 1 0 1 2 3 16/01 16/07 17/01 17/07 18/01 予測値 (前年比、%) (年/月)<海
外(米国)>
企業の設備投資は足元で 拡大一服 今週発表された 2018 年 1 月の耐久財受注(2/27)では、機械関連設備投 資の先行指標となるコア資本財(航空機除く非国防資本財)の受注が 2 カ 月連続で減少した。昨年後半の急回復により、機械投資には足元で一時的 なスピード調整が生じているとみられる。 1 月の個人消費は伸び鈍 化。コアPCEデフレー タは前月比加速 1 月の名目個人消費(3/1)は前月比+0.2%(12 月:同+0.4%)と伸び が鈍化した。昨年末の消費は好調だったが、今年に入り拡大傾向が一服し た。同時に発表された物価指標の個人消費支出(PCE)デフレータでは、 食品とエネルギーを除くコア指数が前月比+0.3%(12 月:同+0.2%)と 加速した。シェアの大きい医療費や住居費が上昇しており、今後、一段の 物価押し上げ圧力となる可能性がある。 株価急落にもかかわらず 消費者マインドは堅調 消費関連では 2 月のカンファレンスボード消費者信頼感指数(2/28)が 2 カ月連続で上昇した。2 月前半の株価急落にもかかわらず、消費者マインド は堅調に推移している。 製造業の業況は堅調 企業関連では、2 月のISM製造業景況指数(3/1)が 2004 年以来の高水 準を記録し、製造業の業況が堅調であることを示した。来週発表される ISM非製造業景況指数(3/5)は小幅低下と予想されるも、高い水準を維 持するとみられ、非製造業の業況改善が続いていることを示そう。 2 月雇用統計では時間当 たり賃金の動向に注目 また、来週末には 2 月の雇用統計(3/9)が発表される。最大の注目点は 時間当たり賃金だ。賃金が高い伸びを維持すれば、インフレ率上昇期待を 通じ、利上げ加速観測の強まりにつながりうる。 パウエルFRB議長が下 院・上院で議会証言を実 施 パウエルFRB議長の下院証言(2/27)では、経済・物価の先行きにつ いて総じて強気な味方が示された。とりわけ、今後の利上げペースに関す る議員からの質問に対して、「私の個人的な経済見通しは、(前回 FOMC 参 加者が政策金利見通しを提示した)12 月から強まった」と回答し、金融市 場では議長自身が利上げペース加速に傾いていると受け止められた。一方、 上院証言(3/1)では、「米国経済が足元で過熱しているわけではない」こ とを強調し、過度な利上げ加速観測の台頭を牽制した格好だ。(服部直樹) 【 コア資本財受注 】 【 ISM製造業景況指数 】 (資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成 (資料)ISMより、みずほ総合研究所作成58
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(年) (50+ = Expand)<海
外(欧州)>
ユーロ圏コア・インフレ 率は小幅上昇。ただし、 今後の上昇ペースは緩慢 とみられる ユーロ圏企業の雇用見通 しは改善 2 月のユーロ圏インフレ率(速報値、2/28)は前年比+1.2%と、1 月(同 +1.3%)から低下した。エネルギー及び食品物価上昇率の低下(1 月同+ 2.0%→2 月同+1.4%)が背景にある。コア・インフレ率(エネルギー及び 食品を除く総合)は同+1.05%と 1 月(同+1.00%)から小幅に上昇した。 コア・インフレ率の内訳では、財(エネルギー及び食品を除く)が同+0.7% (1 月同+0.6%)、サービスが同+1.3%(1 月同+1.2%)と上昇した。 先行きも、コア・インフレ率は上昇傾向となる見通しだ。ただし、ユー ロ高や値上げへの企業の慎重姿勢が重石となり、コア・インフレ率の上昇 ペースは緩慢だろう。2 月の欧州委員会景気調査(2/27)では、コア・イン フレ率に先行性のある企業の値上げ見通しDIが、2 カ月連続で低下した。 また、欧州委景気調査では、ユーロ圏企業の雇用見通しDIが上昇傾向 を維持した。雇用増加の勢いは当面衰えず、それを起点とした消費拡大が 続くことが示唆されている。 今晩以降は、ECB理事 会、独・伊の政治イベン トなどが注目点 今晩以降は、10~12 月期のユーロ圏GDP(3 次推計値、3/7)などの経 済指標に加え、欧州中央銀行(ECB)の政策理事会(3/8)、ドイツの大 連立にかかるSPD(社会民主党)の党員投票の結果発表(3/4)、イタリ ア総選挙(3/4)が予定されている。ユーロ圏GDPでは、10~12 月期の内 訳が初めて公表され、輸出や投資が成長を牽引したことが示されるだろう。 ECBは、金融政策の現状維持を決定すると考えられる。年初以降のユー ロ高が、ECBスタッフの経済・物価見通しに及ぼす影響が注目される。 ドイツについては、SPDの党員投票で大連立が選択され、およそ 5 カ 月に及ぶ政治空白が終了すると期待される。イタリア総選挙に関しては、 世論調査の結果を踏まえると、いずれの政党・政党連合も過半議席には届 かない公算が大きい。なお、かつては反EUを主張していた「五つ星運動」 が票を伸ばせば、金融市場で嫌気される可能性がある。 (松本惇) 【 ユーロ圏インフレ率 】 【 ユーロ圏企業の雇用見通し 】 (資料)Eurostat より、みずほ総合研究所作成 (資料)欧州委員会より、みずほ総合研究所作成 ▲ 1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 0.0 0.3 0.6 0.9 1.2 1.5 1.8 2.1 2017/2 17/5 17/8 17/11 18/2 ユーロ圏インフレ率 コア・インフレ率 エネルギー・食品・アルコール・煙草(右目盛) (前年比、%) (前年比、%) (年/月) ▲ 6 ▲ 4 ▲ 2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 2016/2 16/5 16/8 17/11 17/2 17/5 17/8 17/11 18/2 製造業 サービス業 全産業 (DI、%pt) (年/月)Ⅱ.トピックス
~不安定な動きが続く米国株式相場の見通し~
長期金利上昇を契機とし た株価急落から 1 カ月で 株価は大半を取戻す動き が見られたが、依然不安定 1 月の雇用統計における賃金の伸びの加速を受けて、米 10 年国債利回り が約 4 年ぶりの水準に上昇したことをきっかけとした株価急落からちょう ど 1 カ月が経とうとしている。ダウ平均株価や S&P500 指数、NASDAQ 総合指 数等の主要株価指数は、揃って最高値を更新した 1 月 26 日の終値対比で一 時約 10%下落したが、比較的早期に反発し今週初には大部分を取り戻す動 きが見られた。また、S&P500 指数のボラティリティ指数で投資家の不安心 理の高まりを示すとも言われるVIX指数は、2015 年 8 月以来となる水準 まで急上昇後、一旦低下した(図表 1)。しかし、未だに長期金利が上昇基 調を強める場面では株価が乱高下しVIX指数が不安心理のメルクマール となる 20 を超えて不安定な動きを見せる場面もある他、今週後半には貿易 摩擦への懸念も意識される等、昨年のようにほぼ一本調子で上昇していく 相場に戻ったとは言い難い。 米国株は昨年来のペース の速い上昇で割高感が高 まっていた 昨年来の米国株の上昇をけん引してきたのは米国を含む世界経済の回復 を背景に改善基調を強めた企業業績であるが、S&P500 指数の 12 カ月先予想 EPS(1 株当たり利益)が 2016 年末の 132 ドルから 2017 年末に 145 ドル まで約+10%上昇したのに対し、S&P500 指数は+20%近く上昇しており、 企業業績の改善ペース以上に株価は上昇していた。これにより、12 カ月先 予想PER(株価収益率)は、17.2 倍から 18.5 倍まで上昇し、その水準は 2002 年 5 月以来となっていた。2018 年に入ると、企業決算の発表とともに 2017 年末に成立した法人減税の押し上げ効果を予想EPSに急速に織り込 み始め、EPSの上方修正に沿って株価は上昇した。S&P500 指数の 12 カ月 先予想EPSは、減税法案成立前後の短期間で 9%も上方修正されており、 株価の年初来騰落率が急落前の高値までに+7%超であったことに鑑みる と、2018 年初の株価上昇は企業業績の予想の上方修正に沿ったものであっ たことが分かる。一方で S&P500 指数の 12 カ月先予想PERは上昇すらし なかったものの、18.5 倍で高止まりをした状況であった。 【 図表1 S&P500指数とVIX指数の推移 】 【 図表2 米10年国債利回りと S&P500指数の12カ月先予想PERの関係 】 (注)VIX 指数は S&P500 のオプション・インプライド・ボラティリティ指標 で、20 が不安心理の高まりを示すメルクマール。 (資料)Bloomberg より、みずほ総合研究所作成 (資料)Bloomberg、Datastream より、みずほ総合研究所作成 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 2,200 2,400 2,600 2,800 3,000 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 15/1 15/7 16/1 16/7 17/1 17/7 18/1 VIX指数 S&P500指数(右目盛り) (Index) (Pt.) (年/月) 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 (PER:倍) (10年国債利回り:%)金利上昇のペースが加速 し、PERに低下圧力を掛 けた今回の調整 S&P500 指数の予想PERは、1985 年からの長期平均で 14~15 倍であり、 18 倍台半ばという水準は割高感がある。また、日本やドイツの主要株価指 数の予想PERが 15 倍前後であるのと比較しても高い。歴史的、またグロ ーバルに比較しても割高感を示唆していた予想PERが許容されていた背 景には、緩和的な金融政策の下での長期金利の低位推移が挙げられる。本 来、株価と金利は正の相関が見られ、景気拡大局面では、投資家のリスク 選好が高まり株高・債券安(金利上昇)の動き、反対に景気後退局面では、 投資家がリスク回避的な姿勢となり株安・債券高(金利低下)の動きが見 られる。景気拡大局面における株価上昇は、企業業績、つまり株価の構成 要素のうち、EPSの改善に起因した株価上昇である。一方でPERと金 利の関係は、1985 年以降の米国の 10 年国債利回りと S&P500 指数のPER の関係を見ても、概ね逆相関の関係がある(前頁図表 2)。この関係は、株 式益利回りがPERの逆数であることから、債券と株式の投資価値判断の 理論とも整合的である。こうした関係を踏まえて考えると、景気拡大とと もに緩やかな金利上昇・株高という経路ではなく、ショック的に長期金利 が急上昇した場合、PERの低下を通した株価の調整が起こり得る。今回、 税制改革法案が成立した 2017 年 12 月下旬以降に米 10 年国債利回りは約 1 カ月半で+0.4%pt.という速いスピードで上昇し、更なる金利上昇への警 戒感が高まる中でPERの調整を誘発したと考えられる。 PERを 15 倍程度まで低 下させる程の金利上昇は 見込みづらい。QEのスト ック効果も高めのPER を許容 直近の S&P500 指数の 12 カ月先予想PERは 17 倍程度まで低下している。 長期的な平均である約 15 倍と比較すると依然高い水準であり、仮にこの水 準までPERが調整すると、株価は現在の水準(3 月 1 日終値)から 10% 超下押しされることとなるが、この水準までPERが低下する可能性は低 いと見ている。PERの金利感応度は、FRBが非伝統的な金融政策であ るQE(量的緩和)を開始してから低下しているが 、仮に金利感応度が高 かった時期の関係から試算してもPERを 2 倍低下させるには、短期的に 更に+2%pt.程度の 10 年国債利回りの上昇が起こる必要がある。しかし、 米国の物価や物価を踏まえたFRBによる利上げペースが長期金利を +2%pt.も押し上げる程上振れるシナリオは見込みづらい。また、FRB がバランスシートを拡大し切った 2014 年 11 月以降の直近約 3 年の予想 PERの平均は 17 倍であり、長期平均よりも高い。縮小を始めたといって も、QEのストック効果もある中、現実的にはPER16~17 倍程度が許容 される環境は当面続くと考えられる。 目先は重要イベントによ り長期金利の上昇モンタ ムが強まる可能性。今年は 短い周期で上下に振れる 展開が続き易い 一方で目先に控える 2 月の雇用統計(3/10)をはじめとする経済指標を 受けて、パウエル新体制後初めての FOMC(3/20・21)で FOMC メンバーの先 行きの利上げペースが加速すれば、長期金利の上昇モメンタムが強まり、 上昇幅が 2%pt.には至らずも米 10 年国債利回りが 3%台に乗せる場面は十 分想定される。こうした場合、株価は再び不安定な推移となる可能性があ る。今年は良好な企業業績を背景としたEPSの上方修正圧力と緩やかな がら上昇する長期金利によるPERの低下圧力とが綱引きをし、短い周期 で上下に振れる相場展開が継続する可能性があろう。 (大塚理恵子)