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地下水位の調節によるササ地下茎の生長抑制実験

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Academic year: 2022

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(1)

地下水位の調節によるササ地下茎の生長抑制実験

(独)土木研究所寒地土木研究所水環境保全チーム 正会員 ○赤岩 孝志

(独)土木研究所寒地土木研究所水環境保全チーム 正会員 山下 彰司

(独)土木研究所寒地土木研究所水環境保全チーム 正会員 村上 泰啓

1.はじめに

北海道北部に位置するサロベツ湿原は,平野部において国内最大級の高層湿 原を内包する湿原域(図-1)であり,多様な湿生植物の生育地であるほか,渡 り鳥の飛来地としての役割など貴重な自然環境を有している.しかし,近年に おいては降雨量の減少や周辺の農地開発による排水路の整備等を原因として乾 燥化が進み,非湿生植物であるクマイザサが湿原域に侵入し,湿原環境の喪失 が危ぶまれている.

著者らの研究1)において,乾燥化が進んだササ地(元は低層湿原と考えられ る)を対象に,排水路の堰上げによって地下水位を強制的に上昇させた領域の ササ植生の活性度(葉面積指数等)を調査したところ,相対的に地下水位の高 い地点では低い地点に比べてササ植生の生育が抑制されている可能性が示唆さ れた(図-2).

そこで,本研究では,現地のササ地下茎を採取し,地下水位を変化させた 条件下において,ササの生長にどのような影響があるか調査した

2.概要

室内実験として,地下水位を一定に維持できるよう設計した実験模型を作 成し,3 ケースの地下水位条件を設定して,現地で採取したササ地下茎から 根系を取り除いたものを実験模型に埋設し,2007 年 7 月下旬から 2007 年 10 月末までの約 3 ヶ月間にわたり生育させた.

地下水位の条件は,ササ地下茎の設置深さを地下水面の 5cm 上として地下 茎が乾燥状態に置かれるケースA,ササ地下茎の設置深さと地下水面が同じ ケースB,ササ地下茎の設置深さを地下水面から 5cm 下として地下茎が湿潤 状態に置かれるケースCの合計 3 ケースである.ササ地下茎の設置深さは全 て地表面から 5cm として各ケース別に 3 サンプルずつ,合計 9 サンプルを用 いて実験を行った.なお,実験模型(ケースA)の模式図を図-3 に 示す.

生育期間中,二週間に一度(ササの生育がもっとも活発と考えられ る8月中は一週間に一度)の頻度で地上までの発芽数と発芽していた 場合の芽の長さを観測することとした.また、生育期間の終了時には サンプルを模型内から回収し,発芽数と発根数,芽の長さと根系の長 さを測定した.なお,根系の総延長の測定はフリーの画像解析ソフト と木村ら2)が公開している根長測定用マクロ Rootlength 1.80 win を用いて根長を推定する方法で測定を行った.これは,地下茎から切 り離した根系をスキャナーで取り込んだ画像を二値化画像に変換し,

キーワード 湿原,環境保全,ササ,地下水位

連絡先 〒062-8602 札幌市豊平区平岸 1 条 3 丁目 1-34 寒地土木研究所 水環境保全チーム TEL011-841-1696 図-1 サロベツ湿原概要図

パンケ沼 ペンケ沼 兜沼

高層及び低層 湿原域

天塩川 サロベツ川

地下茎の採取地 パンケ沼 ペンケ沼 兜沼

高層及び低層 湿原域

天塩川 サロベツ川

パンケ沼 ペンケ沼 兜沼

高層及び低層 湿原域

天塩川 サロベツ川

パンケ沼 ペンケ沼 兜沼

高層及び低層 湿原域 高層及び低層 湿原域

天塩川 サロベツ川

地下茎の採取地 地下茎の採取地

図-3 実験模型模式図(Aパターン)

地下水面 地下水面

ケイ砂ケイ砂

フィルタフィルタ ササ地下茎

地下水面 地下水面

ケイ砂ケイ砂

フィルタフィルタ 地下水面 地下水面

ケイ砂ケイ砂

フィルタフィルタ 地下水面 地下水面 地下水面 地下水面

ケイ砂ケイ砂

フィルタフィルタフィルタ フィルタ ササ地下茎

図-2 高い地下水位による ササ植生の生育抑制

0 1 2 3 4 5

低地下水位 高地下水位

葉面積指数(LAI)

0 50 100 150

低地下水位 高地下水位

群落高(cm)

7-168 土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)

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(2)

根系の中心線を抽出し細線化した画像から,画素の連結方向別の連結箇所数を算出して根長を推測する手法であり,

こうした植生の活性の調査には有効な手法の一つであるといえる.

3.室内実験結果

生育期間中の観測においては,地上まで発芽したサ ンプルは見られなかった為,生育期間終了後に装置か ら取り出し,生長量を計測した結果を表-1に示した.

数値は採取したサンプル(図-4)の発芽数,発根数 を各ケース別に合計し,芽の長さと根系の長さを測定

した結果である.なお,根系の長さの()内の数値は総延長を示す。

ササ地下茎が地下水面より上の乾燥状態にあるケースAのサンプル ではもっとも多くの発芽が確認された.またこのケースのサンプルで のみ発根も確認された.地下茎設置深さが地下水面と同じケースBと,

地下茎が完全に地下水面下に沈むケースCのサンプルにおいても発芽 は少数確認されたが,サンプルを実験模型から取り出した段階で芽は すでに枯死しており,とくにケースCの芽は腐敗していたことから早 い段階で枯死していたと推察される.

以上の結果から,ケースAとケースB・C間で発芽数において明ら かに差があるなど,ササ地下茎が長期にわたり地下水面下の湿潤状態 に置かれることで,ササの生長が抑制される可能性があると考えられ る.しかし,発根についてはケースAでも 3 サンプル中で 1 つのみし か確認されず,残る 2 ケースと明確な差があるとは言い難い.これは 生育期間の短さやサンプル数も関係あると考えられ,さらなる調査が 必要と考えられる.

5.まとめと今後の課題

室内実験においては地下茎が地下水面より上方に設置され乾燥状態 に置かれたケースAで発芽した芽の生長および発根が確認され,地下 茎が湿潤状態に置かれたケースBでは芽が枯死,ケースCでは芽が枯 死の後に腐敗していたことから,地下水位条件がササの生育に影響を 与えることが示された.

今後は,同様の実験を重ねることでデータの蓄積を行うとともに,

どの程度の期間,地下茎が湿潤状態に置かれることでササが生長抑制 効果を受けるのか等,地下水位がササの生長に与える影響をより詳細 に把握する必要があると考えられる.

参考文献

1)地下水位の調節による湿原植生の保全と復元,河川技術論文集,

第 13 巻,2007 年 6 月,pp255-260

2)Accurate root length and diameter measurement using NIH image : use of Pythagorean distance for diameter estimation,plant and soil,254 巻,2003 年 7 月,pp305-315

表-1 室内実験終了時のササ生育状況

ケース 地下水面に対する

地下茎設置深 発芽数 芽の長さ

(cm) 発根数 根系の長さ

(cm)

A 5cm上 4 8.0,1.5,

2.0,1.8 1 7.8

(289.4)

B ±0cm 1 2.0 0 -

C  5cm下 1 0.9 0 -

図-4 採取したサンプルの写真 (円は発芽していた芽)

ケースA

ケースB

ケースC ケースA ケースA

ケースB ケースB

ケースC ケースC

7-168 土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)

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参照

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