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地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例

Author(s)

小川, 竹一

Citation

沖大法学 = Okidai Hōgaku(10): 143-200

Issue Date

1990-12-15

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/6538

(2)

第三章宮古島における地下水保護思想の出発占 第二章地下水保全の法制度と宮古島地下水保護管理条例の特色 第一章宮古島における地下水資源保護の必要性と地下水保護管理条例の概要 はじめに 研究ノ 第三節宮古島地下水保護管理条例の研究史 第二節宮古島地下水保護管理条例の特色 第一節地下水保全の法制度 第二節宮古島地下水保護管理条例の誕生 第一節宮古島と地下水

地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例

地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例 卜

小川竹

(3)

第一節ミンク報告書 第二節宮古島水道マスタープラン 第四章アメリカ民政府宮古島用水管理局の設置・廃止と宮古島地下水保護管理条例の制定 第一節宮古島用水管理局の設置 第二節宮古島上水道組合の設立と宮古島地下水保護管理条例の制定 第三節宮古島地下水保護管理条例の内容 第四節宮古島地下水保護管理条例の運用面での特色 第五章本土復帰以降の用水管理体制の転変 第一節宮古島上水道組合の宮古島上水道企業団への組織変更と地下水保護管理条例の管轄移管 第二節地下ダム建設計画 第三節地下ダム問題が条例に与えた影響 第四節地下水管理体制の変貌 第五節小括 第六章現行の宮古島地下水保護管理条例の評価 第一節現行条例の構造 第二節規制権限 第三節問題と課題 沖大法学会創立十周年記念号 一四四

(4)

まとめ 第一節宮古島地下水保護管理条例の適法性 ▲ 第二節「宮古の法」の生成と本土法による浸食 地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例 一四五

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深いことである。 {-} 宮古島に、島全体の地下水を管理する条例が存在する。このことは、あま』り知られていない。この条例の内容は、口u 本の地下水の保護管理をめぐる法制度の中では、特異な存在である。日本には地下水保護管理の一般的な制度は存在し ない。地下水は、土地所有権に属するものとして扱われ、地下水には私的所有権の論理が働くものとされている。地下 水を、公的な管理の下におくことは、私的財産権の侵害になるとして、私的な支配の下に委ねられているわけである。 従って、公的な規制は、行なわれていない。わずかに、地盤沈下などに対処するために、規制法が存在するだけである。 規制法の論理は、私的所有権の行使の結果として、生じる被害を防ぐために、私的所有権には、必要な限度でのみ制約 を課するというものである。近年は、地下水汚染の問題により、汚染防止のための地下水保全の必要が、痛感されてい る。しかし、公的な管理の必要性が認識されながら、今述べたような事情から地下水の管理に国は消極的であり、地下 水の管理、保全の法制度は、未だ誕生していない。 宮古島に存在する条例は、地下水を公的管理の下においている。地下水は公的管理の対象にはしていない国の姿勢の 中で、宮古島の各市町村が、地下水の公的な管理を内容とする条例を誕生させ、それを維持している事は、極めて興味 本稿では、宮古島に何故、公的管理を内容とする条例が、産み出されたのか、それが、どのような変遷をたどってい (2) るのか、さらにこの条例が果たしてきた役割、持ち得る意味について、明らかにすることを目的とする。 これにより、現在必要性が叫ばれている地下水保護管理制度を構想するのに、具体的な手掛りを提供することができ 沖大法学会創立十周年記念号 はじめに ’四六

(6)

第一節宮古島と地下水 (4) 宮古島は、琉球石灰岩と呼ばれる隆起サンゴ礁からなる平坦な島であり、川がない。 このため、水源を地下水に頼っている。地下水源の保護が、島民の生活にとって死活問題となる。全島民は、島の地 下水源しか頼るものはないのである。 近時においては、干ばつに備えて、安定的に農業用水を確保するために、農業用の地下ダムが建設されて、地下水源 確保に、関心がさらに高まっている。また、生活汚水が地下水源に浸透し、生活用水の汚染が問題になっていて、地下 後述するように、宮古島地下水保護管理条例という共通の名称を持つ条例が、三度にわたって、制定されていること に注意されたい。これは、その都度、条例の管理主体の変更があったためである。宮古島上水道組合、宮古島上水道企 業団、宮古地区広域行政組合から、宮古広域圏事務組合へと転変している。これらの条例は、形式上は、管理主体が変 更したことにより別個のものであるが、内容上の継承性があるので、宮古島地下水保護管理条例と呼称したときには、 (3) それらすべての、条例を指す場へロもある。 本稿は、重要な意味を持つが、沖縄においてもあまり知られていない、宮古島地下水保護管理条例の意義を見直し、 さらに地下水に対する可能な法的規制のための施策の考察のための手掛りとするものである。 るであろう。 地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例

第一章宮古島における地下水資源保護の必要性と地下水保護管理条例の概要

一四七

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宮古島地下水保護管理条例がどのようにして生まれてきたものなのか、またどのような内容を備えたものであるのか、 を簡単に紹介するのが、理解に便であろう。 琉球列島米国民政府(以下、アメリカ民政府)は琉球政府に六○万ドルを支出して、宮古島の水源開発、水道整備を 行なうように指示した。この際、アメリカ民政府が望んだのは、住民や農民に水を公平に配分すること、行政機関によ る、適切な配水とその維持、水源の保護管理の配慮、小地域ごとに計画をたてるのではなく、全島にわたって計画をた てること、というものであった。 市町村による計画が、アメリカ民政府の要求を満たしていなかったために、民政府は、直接、宮古島の水源開発、保 護に乗り出すことになり、陸軍工兵隊によるマスタープランが策定きれた。その内容は、飲料用水確保及び水源確保の ために計画を樹立し、水源保護のために、強力な権限を持つ中央管理機関を設置する必要がある、というものである。 アメリカ水法の影響が見られるというこの方針は、高等弁務官布令となり、「宮古島用水管理局」が設置されること により実施きれた。この高等弁務官による布令は、布令五四号として、一九六四年五月一四日に公布された。 管理局の権限は、全水源からの取水に対する使用規則を定め、飲料水、灌概用水等の供給業務を行ない、それらの料 金を定める、等の権限を有するものである。 島民生活にとって決定的に重要な意味を持ってくるのであり、地下水保護管理条例の存在意義が問われる所である。 水源の水質確保が、必要になっている。このように、唯一の水資源が、地下水であるので、地下水源の保護・保全が、 第二節宮古島地下水保護管理条例の誕生 沖大法学会創立十周年記念号 一四八

(8)

第一節地下水保全の法制度 地下水の保全に対して、なんらかの拘束力のある規制措置を講ずる必要のあることは、多くの論者によって叫ばれて いるが、実現していない。日本法における地下水の取扱は消極的なものである。 日本においては、総合的な水管理の法制度は、存在していない。河川水に対しては、治水、利水にわたって、法制度 が整備されているが、地下水に対する一般的な法制度は、存在していない。河川には、農業用水の利水の面では、氷ら く積み重ねられてきて慣行的秩序を形成している水利権による秩序が有る。工業用水、飲料用水などについては、河川 しかし、高等弁務官の強い指導によりアメリカ民政府の組織に島の水資源が管理されることに対する各市町村の強い 抵抗により、管理局は廃止された。替わって宮古島上水道組合が設立されて上水道事業を行なうことになった。アメリ カ民政府側の要求は、地下水資源の統一的管理を行なうことであった。このため、地下水保護管理条例が制定され、こ の条例による管理権限を、上水道組合がもつことになった。 宮古島の地下水保護管理の規定を作る事が、民政府が管理局を廃止する交換条件であった。このために、宮古島地下 水保護管理条例が制定されたわけである。 以下、アメリカ民政府によって、上から与えられた、一元的地下水管理の思想が、宮古の人々によって如何に根づか させられたかに焦点をあてながら、考察しよう。 地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例

第二章地下水保全の法制度と宮古島地下水保護管理条例の特色

一四九

(9)

法による許可によって、利用の秩序が形成されているし、近年、農業用水も、河川法の許可に関わらしめられることに よって、河川法の秩序に組込まれている。

これに対して、地下水には、慣行に拠る利用秩序は存在していない。慣行も存在せず、地下水法も存在しないのであ

るから、法の対象外に在ったといえよう。地下水については、土地所有権の支配秩序の下に、放置されていたのである。

しかし、高度経済成長期以後、地下水が大量に汲み上げられる事態が生じ、地盤沈下、地下水量の減少、という弊害が

生じてきた。利用の無秩序状態が、反省されることになったのである。しかし、国レベルの施策は、差し迫った地盤沈

下対策のための規制を除いては、未だ講じられていない現状である。規制をなしうるかの前提として、地下水は、土地 所有権の一部をなしていて、その一部として扱われるものであり、地下水利用に制限を加えることは、私権に対する制 (5) 限となるのではないかという問題がある。 このような、地下水を土地所有権の一部をなすものと考える説を、地下水私権説としよう。地下水私権説を克服する (6)

試みもいくつかなきれているが、理至輌的にはいまだ未開拓の状況である。このように、地下水の保全管理について法制

度においても理論面においても、規制を行いうるとの根拠は、十分には明らかになっていない。そのような状況の中で、 保全管理のために規制を行っているいくつかの地方自治体の試みが注目されている。 (7) その中でも、宮古島地下水保護管理条例は、地下水の公水化を前提にした先進的な条例として、注目されている。 宮古島地下水保護管理条例の顕著な特質は、地下水採取に対して、許可制をとっていることであり、渇水時には、飲 第二節宮古島地下水保護管理条例の特色 沖大法学会創立十周年記念号 一五○

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料水を優先する、資源配分権限を有していることである。(ただし、具体的に採るべき措置については、規定されてい

ない。考えられるのは、農業用水の取水を禁じることや、農業用水を採取していた水源から、飲料水を採取することな

どであろう。)採取に対する許可権限と、資源配分権限を有していることは、地下水に対する管理権限を自治体が有し

ているという前提にたっていることになろう。

このような意味で、地下水保護管理条例は、地下水について公水である、という立場にたっているということができ

(8) (9)

る。ただし、地下水が公水である、というのもいくつかの意味がありうるが、その検討は、保留しておく。

宮古島地下水保護管理条例が、地下水を公水化できた事情には、米軍統治化にあって、本土法との整合性をそれほど

意識せずにすんだ点があげられよう。しかし、この経験を宮古の特殊な事情に基づくものであり、普遍化できないもの

であるととらえることは、一面的であろう。復帰後も、保護管理条例は受継がれ、日本の法制の下にあっても、なんの

不都合も無く存在しているのであり、この事実を尊重すべきであろう。

地下水源を保護管理しなければならない事情は、本土においても深刻に存在するが、法律においては、地下水の管理

に踏込めないでいる。そのような事情の中で、宮古島の地下水管理の経験は、地下水公水化に反対する論理の合理性を

検証する、有用な素材を提供するであろう。この条例の存在が、不可欠なものとして、島民に支持され、復帰後から今

日に至るまで継承きれていることが、重視されなければならないであろう。

ここでは、法理論的問題については、これ以上立入ることができないが、次のように述べておけばこの条例の理論的

根拠を示すのに十分であろう。地下水について公共的な立場による規制が必要であり、その規制は、地域性に即した内

容が必要に成ってくる、ということになるわけであるから、|体的な地下水資源の管理が必要となる地方自治体のなん

地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例 一 五 一

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ここでは、保護管理条例がどのような点が注目され、どのような評価がされているのか、を見てみよう。 柴崎達男・古川博恭・諸橋毅「水資源と自治I宮古島の地下水保護管理条例について」二九七五年)は、条例の制 〈皿) {正の経緯についての最も詳しい研究である。 この論文は、保護管理条例の特色を次のように挙げている。 ①島内の各種用水についての地下水利用を包含した内容をもつこと、その用途なかでも飲料用水を優先させていること。 (M〉 ②保護管理条例の管理者・施行者が、大臣などではなく、「{呂古島上水道組合管理者」になっていること。 ③地下水利用に対する許可を要する汲み上げ行為が包括的である。許可を必要とする行為が、家庭用の小規模の井戸を 除いた全地下水取水施設を対象にしていること。但し、施行規則による、許可基準があいまいであること。 柴崎らは、条例の内容自体には、以上のような評価を与えているが、運用面を含めた総体的評価としては、「きわめ て先進的な内容をもつ保護管理条例でありながら、その重要さが十分関係者に認識きれていないというところに、この (皿) 保護管理条例の現在の立場がうきぼりにされている」とする。 法律家においても、本条例が注目されてきた。阿部秦隆は、「地下水のみならず、島内のすべての水源について一元 第三節宮古島地下水保護管理条例の研究史 的な報告を行なう。 以下では、なぜ}以下では、なぜこのような先進的な条例が制定されたのか、その後の経緯はどうなっているのか等、について、中間 らかの連合にその規制管理権限がある、との立場にたつことになる。 沖大法学会創立十周年記念号 五

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的に管理し、しかも各種用水のうち飲料水を優先きせるという特色ある条例が存在する。これは水資源が特に限られて {旧) いる特殊性によるものではあるが、我国の水法の将来のあるべき方向を示すものである」とする。 筆者も、研究の現段階においては、条例の制定の背景、その内容の先進性については柴崎らと同様な印象を抱いてい るので、この柴崎らの見解を検証し、その後の展開などを補足する形で、この報告を纏めてみたい。一九八七年に条例 の内容の大きな変更がされているが、これについての研究は、無いようである。 {Ⅱ) また、是非とも強調しておかなければならないのは、『宮古島水道誌』の存在である。これは、宮古島上水道組△口が、 「宮古島上水道事業総合計画」の竣工を記念して、一九六七年に発刊したものである。本書は、とりわけ戦後、アメリ カ軍の指導下の用水計画から、地元側の用水案が生れてきて、上水道組合成立、保護管理条例の制定の経緯を歴史に留 めるために、用意周到に網羅的に資料を収載している。この書の存在がなければ、条例の研究は有り得なかったであろ う。離島においてアメリカ軍政が、庶民生活に及ぼした意義、アメリカ軍政下で、いかに庶民生活を造り上げて行った かを、水道と云う生活に切り離せない分野において具体的に物語らせている資料として出色のものである。このような すばらしい、資料をまとめられた宮古の人々に敬意を表したい。 第一節ミンク報告書 宮古島における地下水保護の在り方に、大きな影響を与えたのが、ミンク報告書である。 地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例

第三章宮古島における地下水保護思想の出発点

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このように、ミンク報告は、地下水資源の状態を明らかにしたと云う点は、もちろんのこと、地下水の利用保全の重 {、」 要性についての思想的啓蒙を行なったという点で画期的なことであった。 制する必要を述べている。 ハワイ州ホノルル市水道局のミンク技師は、宮古製糖会社の招請を受けて、宮古の地下水源の調査を行ない、開発の 可能性、必要な保全管理について提言を行なった。この報告が、現在の宮古の地下水源開発の根幹を築いているといっ

ても良いほど重大な意味を持つものであった。この報告は、「琉球列島宮古島の水資源について」(一九六三年一一一月)

一冊) として、宮古製糖に提出された。 この報告書によって、地区ごとの水源開発可能性とその使用の限界とが、明らかにされ、宮古島全体の水資源と云う 観点をもって、開発計画を建てなければならないことが強調されたことによってはじめて、地下水源の保護と用水計画 の必要性にきずかされたのであった。 「報告」は、結論として、「島が小さいので、開発は四行政区域と協同で行なわなければならない。手あたり次第で やる小区域の開発は、全島に一日|る均衡のとれた水の開発よりは結局は経費が高くなる」。そして、井戸を掘るときには、 直径・高度・水までの深さ・使用、平均の放水量などの資料を揃えておかなければならないとして、無秩序な掘削を抑

このミンク報告が、キャーフウェィ高等弁務官に影響を与えたのであろう。キャラウェイは、宮古島の地下水資源を統

一的計画に基づいて、保全管理し、その上で、水道供給を行なう必要があるとの態度をもっていた。 第二節宮古島水道マスタープラン 沖大法学会創立十周年記念号 一五四

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(旧) {旧) 陸軍工兵隊は、六一一一年一一一月に「宮古島水道マスタープラン」を策定した。(資料1) 水源の保全管理の方針として、「地下水源は、限られているので、その開発には長期的保護を目的とした細心の計画 がたてられなければならない。家庭用配水施設に対する一定の給水を確保するため、それぞれの地区の給水源を保護す とになった。 キャラウエィは、統一的な地下水資源管理を望み、次のような指示を出した。住民や農民に水を公平に配分すること、 (〃) 権威ある行政機関が、正しい配水とその維持につとめること、水源の保護管理に配慮すること、という指示を行なった。 以上の経緯から、高等弁務官は、水源計画を琉球政府、宮古各市町村にまかせるのではなく、アメリカ陸軍工兵隊にマ スタープランの策定を命令した。地元市町村の計画に替え、民政府は、このマスタープランに従った事業を実施するこ 以下、高等弁務官の意を体した、マスタ1プランが策定されるまでの経緯を見てみよう。 深刻な干ばつが生じたことに対して危機感を抱いた、高等弁務官キャラウェイが、一九六三年六月に、宮古島の水源 確保に六○万ドルという多額の資金投資を行なうことを琉球政府行政主席に勧告した。これは、予備費の支出をめぐっ て紛糾していた所を、高等弁務官が一方的に指示を出したものであった。これを受けて、琉球政府は、緊急に、畑地灌 概を中心とし、水道事業を含む開発計画を立てた。宮古島の各市町村も、急に決められた補助金の消化のために、事業 実施のための計画を立てて、|部では、工事着工に至った所もあった。 しかし、六一一一年一一月三○日、高等弁務官から、水利開発事業の中止命令が出された。その理由は、計画は、市町村 ごとのものではなく、総合的な計画でなければならないこと、取水についての制限を行なう規定が必要であることなど であった。 地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例 一五五

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第一節宮古島用水管理局の設置 アメリカ民政府は、’九六四年五月一四日に、高等弁務官布令五四号「宮古島用水管理局の設立」を公布し、即日施 一型) 行した。(資料2)初代局長に、伊志嶺恵典氏を任命した。この用水管理局の任務は、マスタープランを実施し、水源 開発、水道供給を行ない、地下水資源を保護していくことにあった。 布令五四号において、注目すべき点は、その三条に、「水源の保護」の見出しのもとに、「a管理局は・・水の保護、 (、) ●幸△とる。」 そして、具体的な管理機構の提言が為されていることが重要である。「これらの必要な保護を設定及び実施するため、 中央管理機関の設置が必要である。この機関は水利管理理事会の形式とすべきで、理事会は、地下水源の開発について のすべての計画を検討及び認可しまたこれら水源のすべての利用者による運営を指揮監督すべきである。この理事会は、 現在又は予定される施設を危うくする程度にまで、地下水源から採水するいかなる他の施設に対しても必要な保護措置 ればならない。」 れなければならない。これらの境界線の設定後は、水源の通常水量確保を期するため、法律の厳格な施行がなされなけ る必要がある。/それぞれの(泉又は井戸)水脈境界及び水源からの採水に対する他の井戸の影響について決定が下さ 一劃) 以上において、宮古島の水源管理計画の原型が形づくられて行ったのである。

第四章アメリカ民政府宮古島用水管理局の設置・廃止と宮古島地下水保護管理条例の制定

沖大法学会創立十周年記念号 ’五六

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井戸の掘さく、開さく又は再掘、井戸もしくは泉または貯水池からの水の集取及び水の貯蔵、使用、汚染又は濫用に関 する規則を公布する権限を有する。」という全水資源を管理する権限が与えられていて、この権限により定められた規 則に違反する場合には、罰則が置かれている他、違法な行為の差し止めを裁判所に求めることもできたことである。 この布令に基づいて、「宮古島用水管理局定款」が定められた。その第一条には、「(目的)宮古島の水源及び水道施 設を取得、維持、運営し、及び宮古島その他宮古群島中の隣接諸島の住民の使用、便益と家庭用水、かん慨用水の開発 を計って集水、水処理、送水、配水、水販売をするため、並びにその他の目的に資するため、琉球政府の関係機関とし て宮古島用水管理局と称する法人(以下「管理局」という。)を設立する。」とある。管理局は、アメリカ民政府から、 次の権限を与えられていると説明された。 管理局の権限は、公共及び私有の水源ならびに水の使用に関する規則を含む総合水道施設開発計画を実施し、維持す る責任と権限、水を採取して、購入して、宮古島の公共及び個人消費者に給水し、販売する権限、水のコストなどを勘 (幻) 案して、宮古島に同一基準の飲料水料金体系を定める権限、灌慨用水の料金を定める権限、である。 しかし、高等弁務官の強い指導によりアメリカ民政府の組織に島の水資源が管理されること等に対する各市町村の強 い抵抗があった。ことに、平良市議会では、市の水道施設を管理局に引継ぐことに反対があったために、事態は紛糾し た。このため、琉球政府との間で交渉がもたれ、政府の方針として、水道事業は、市町村組合が行なうのが適当であり、 宮子島上水道組合を六五年七月に設立する、それまでの間は、管理局が各市町村から、移管された水道施設を用いて、 一別〉 水道事業を営む、として、妥協を図った。これに、市議〈君も同意し、解決が図られた。 アメリカ民政府側(ワトソン高等弁務官に代っていた)は、上水道組合が設立されたら、布令を廃止するとした。布 地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例 一五七

(17)

民政府は、移管の前提として、水源保護管理規定が、法的根拠を持つことを求め、琉球政府建設運輸局も、「地下水 源の管理権を上水道組合に委譲するように関係市町村の議決がなされ、その議決書が送付されなければ布令第五四号は、 廃止されない」という見解をしめしたという。そのため、条例制定の準備委員会は、管理権限を明確にするために、琉 球政府内務局長に疑義照会を行っている。 (為) たのかを探ることにl」よう。 以上のごとく、管理局の設置が、地方自治を侵すものとして、大きな抵抗に会い、その結果として、一年後には、上 水道組合に移行することになった。しかし、アメリカ民政府のたてた、水源管理計画を引き継いで行う、ということに なった。上水道組合の設立は、保護管理条例の制定と交換条件となっていたということができよう。しかし、アメリカ 民政府の意向が強く働いていたとしても、宮古の人々の意志がまったく介在しなかったわけではない。ここでは、アメ リカ民政府の意向を受けながら、管理権を住民に取戻し、いかに宮古の実状に照らしあわせながら、条例を制定していつ 令五一一号の改正により、六五年六月三○日をもって、廃止され、宮古島上水道組合が、七月一日に設立された。 アメリカ民政府の要求は、地下水資源の統一的管理を行なうことであった。このため、地下水保護管理条例が制定さ れ、この条例による管理権限を、上水道組合がもつことになったわけである。 ここに、宮古住民は、アメリカ民政府による管理ではなく、住民に基礎をおいた組織による一元的地下水管理を行な く泌) う体制を持つことになったわけである。 第二節宮古島上水道組合の設立と宮古島地下水保護管理条例の制定 沖大法学会創立十周年記念号  ̄ 五 八

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それは、「問一市町村は、その行政区域内の地下水源を管理する権限があるか。あればその法的根拠を示せ。」及び 「問二市町村の決議に基づき、水道組合が地下水保護管理条例を公布した場合、法的効力を有するか。」である。内 務局長回答は、次の通り。「答一市町村自治法第二条第二項及び第二条の規定により管理することができるものと 〈幻) 解する。」、「答一一市町村自治法第一九五条の準用により組ヘロは必要な条例を制定することができる。」 市町村自治法の解釈として可能であるのかは、別に考察しなければならないが、琉球政府の解釈、アメリカ民政府の 解釈も、市町村が、地下水管理権限を有しているとの立場をとっているわけである。復帰後は、地方自治法の解釈とし て、可能であるのか、別に検討する必要がある。 一九六五年六月一○日、同時に、平良市、城辺町、上野村、下地町の各議会が召集され、地下水水源の保護管理を宮 {躯) 古島上水道組ムロに移譲する、』曰の決議を行なった。 {豹) これを、受けて、上水道組〈ロの議会は、宮古島地下水保護管理条例を制定した。(なお、以後の、地下水保護管理条 例の制定のときも、同様の方法がとられている。) ここで、特筆されなければならないのは、各市町村を越えて、地下水資源を共有する関係のある島全体で、地下水管 理を行なう体制が作り出されたことである。おそらく、このような自治体間の協議によって統一的管理機関を作り出し た条例は、少なくとも水法関係では、他に存在しないのではなかろうか。地下水資源のように個々の市町村だけで、利 用するのではなく、市町村に跨がって資源を共用しなければならないものについて、適合的な管理形式と言えよう。ア メリカ民政府の指導が有ったとは言え、各市町村の利害を超えて、このような体制を作り出したことは、画期的なこと であった。 地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例 一五九

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第一条において、目的をうたっていて、水源の包括的な管理を行うとしている。(資料3)第一条は、「この条例は、 組合を組織する市町村の区域内の地下水及び水源について、その保護管理を図るとともに、飲料用水、かんがい用水及 び工業用水を合理的に確保し、供給することを目的とする。」とし、さらに、第二条において、「前条の目的を達成する に当たっては、飲料用水の供給を優先するものとする。」としている。さらに、地下水を汲み上げ下ようとするものに ついては、人力などによる場合をを除いて、許可制をとっている。第五条一項は、「前条の地域内において、地下水を 採取しようとするものは、管理者の許可を受けなければならない。」とし、許可をしてはならない場合を定めている。 第六条は、「管理者は、前条第一項の許可の申請に係わる地下水を採取することが、水源の保護及び飲料用水の供給に

支障を来すおそれがないと認める場合でなければ、同項の許可をしてはならない。」とする。一釦一

地下水管理権限を有していることを宣一一一一口し、地下水採取が、原則的に許可に係わらしめられているわけではあるが、 これに対する違反に対する措置も定められていて、効力を担保している。 第一二条は、許可を受けないでした採取行為に対し一年以内の採取行為の停止命令を、許可条件に違反した採取行為 について、許可の取梢および一年以内の採取行為の停止命令を定めている。また、’三条は、地下水資源の緊急の保全 のために、採取者に対して、相当の期間を定めて、採取の禁止を命じることができるとしている。’一一条と一三条の違 反者に対して、一○ドル以下の罰金の規定が置かれている。 第三節宮古島地下水保護管理条例の内容 沖大法学会創立十周年記念号 ’六○

(20)

取水は、許可条項となっているが、この規定のために不許可になった事例は、現在に至るまでないようである。これ は、問題となる事例が、なかったのか、あるいは、あったが、十分な対応をしなかった為なのかは、未調森である。 水量面での水源保護についての問題は、限られた、調査の範囲内では、浮びあがってこなかった。 上水道組合条例、上水道企業団条例の中には、地下水源汚染に対して、汚染を防ぐための措置、規制権限については、 触れられていない。現実にどのような汚染問題が発性し、どのような対応をとったのかも未調査である。 ただし、復帰前の事例であるが、平良市が牧場を計画したことがあり、このため、大野山附近の水源地が、農薬によっ 第四節宮古島地下水保護管理条例の運用面での特色 意識を高める上で、重要な役割を果たす可能性があろう。 しかし、保護管理条例の下で、島民の取水に対し、許可証を発行しているという事は、島民の水源に対する公共的な で保護管理条例の実効性に対する疑問がでてくる余地がある。 条例の場合は、違反者が、取水の取消命令に従わなかった場合、罰金以外のどのような措置を取り得るのか、という点 違反に対する規定は、管理局は、相当重い刑事罰と、罰金を課し、裁判所に訴訟を提起することができる。管理保護 て、灌概用水、工業用水の供給に積極的であるかのようである。 し、保護管理条例の力は、水源保護の中に汚染防止を明確には入れていない。管理局の事業目的は、上水道組合に比べ 管理局の管理権限の方が広範である。水源保護は、水量確保のみならず、汚染防止まで、入れられている。これに対 布令による管理局の地下水管理権限とこの保護管理条例による管理権限とを比較してみよう。 地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例 一一ハ’

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本土復帰に伴う措置として、宮古島上水道組合は、宮古島上水道企業団に改組された。なぜ、復帰にともない、組織

改組が、なされなければならなかったのか。

これは、水道事業に補助などを受けるためには、地方公営企業になる必要があった。地方公営企業法の適用を受ける

ためには、企業団に改組する必要があったとされている。この地方公営企業法の適用を受けることによって、上水道企 業団の業務は、水道事業体としては上水道の供給事業に限定され、地下水管理を行なうことは、業務外になることにな 本土復帰に伴い、宮古島地下水保護管理条例は、いくつかの転変を遂げて、存続している。なぜ、変化を見せなけれ ばならなかったのかの原因、そして当初の基本的な思想がどのように貫かれているのかについて、検討しよう。 組織として水源管理権限をを有していたために、水源保護の面からは、有効な手段をとることができたのであろう。 至らしめたことがあるという。これは、上水道企業団が市町村の一部局として位置づけられていたのではなく、別個の て汚染される可能性がおそれが生じたときに、上水道企業団が反対し、県の環境保健部などと協力して、計画を中止に 水源地附近に農業を営むために農薬が散布されて、地下水の汚染が生じる可能性がある。これに対しては、どのよう 一例) な対応をとってきたのかについても調査を行う必要がある。

第一節宮古島上水道組合の宮古島上水道企業団への組織変更と宮古島地下水保護管理条例の管轄移管

第五章本土復帰以降の用水管理体制の転変

沖大法学会創立十周年記念号 一一ハ一一

(22)

条例の内容面では、 更は無い。(資料4) う問題は残る。 る。後に地下水保護管理条例の管理主体の変更の必要が生じてくることになるのである。 さらに、八七年五月一一一一日、宮古島上水道公団が管理する、宮古島地下水保護管理条例が廃止され、宮古地区広域行

政組合が、宮古島地下水保護管理条例の制定を行なった。広域行政組合は、関係市町村(平良市、城辺町、下地町、上

野村、伊良部町)が参加し八○年九月に伝染病隔離病舎の設置管理等の業務、救急医療センターの設置管理等の業務を 行なうために、設立されていたものであるが、これに、平良市、城辺町、下地町、上野村に関わる、地下水保護管理に 関する事務を付け加えたものである。なぜ、条例の管理主体の変更の必要が生じたのであろうか。 上水道だけを扱う上水道企業団が、上水道供給事業を営むことに限らず、地下水源を管理すること、つまり水資源全 体を管理する権限を預けられていて、農業用水の供給も行ない得るということは、好ましくないというので、地下水の 管理権限を事務組合に移管した。この手続きも、前条例が制定された時と同じような方式がとられた。関係各市町村に おいて、地下水の管理権限を行政組合に移管する決議を行ない、企業団が条例廃止の決議を行なうのと同時に、行政組 合が新条例の制定の決議を行なった。 しかし、上水道企業団が条例管轄権をもつことが以上の理由によって問題が生じたのであれば、上水道企業団に改組 したときに変えなければならなかったはずであるが、八七年にいたって、管掌を変更したのは、なぜであろうか、とい 企業団から行政組合に地下水資源管理主体が替り、この行政組合が地下水保護管理することになったため、新しい宮 地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例 上水道組合から、上水道企業団への移管に際しては、管理主体の変更にかかわる部分の他は、変 ’一ハーーー

(23)

一蛇) ここで、地下ダム建設計画の概要を述べておこう。 これまでに述べた通り、宮古島には、河川がなく、頼るべき水源は、地下水源のみである。宮古島の農業用水の供給 をより確実なものにし、安定的な農業を営むために、より有効に地下水資源を確保する方途が、求められていた。ここ に浮上してきたのが、地下ダム開発であった。 一九七四年より、調査が開始され、七七年より実験的に皆福ダム(貯留量七○万トン)の建設が開始された。七九年 「抑) に完成-し、取水実験等がなぺこれた。 この実験ダムの成果を受けて、八七年から国営宮古土地改良事業が、実施された。その概要は、以下のようなもので ある。平良市他町村の八四○○ヘクタールを畑地瀧慨するため、仲原ダム及び皆福地下ダムの取水施設とパイプライン、 ファームポンド等の末端支配面積五○ヘクタール以上の基幹施設を新設し、付随する公団堂事業において、砂川地下ダ ム(八八○万トン)、福里地下ダム(二○○万トン)を建設し、県営事業と団体営事業で、末端の畑地灌概施設とほ 場整備事業を実施する、というものである。総事業費が、八九○億円見込まれている。建設後の地下ダム施設所有者は 国で、施設管理者は宮古土地改良区の予定である。 めに、管理の方式、範囲、条例の内容変更を行なう必要があったためである。 をいかに位置づけるかという問題が生じたためであった。地下ダムの運営が地下水保護管理に与える問題に対処するた 古島地下水保護管理条例が制定され、大幅に内容が見直された。この見直しは、地下水資源管理の中に、地下ダム管理 第二節地下ダム建設計画 沖大法学会創立十周年記念号 一 六 四

(24)

地下水保護管理条例の思想は、地下ダム開発の影響を受けて変わったのであろうか。行政組合に移管された新たな地 下水保護管理条例の内容を見ることによって考察しよう。 条例管理主体の性質が大きく変わったことに注目しなければならない。この主体の変更の必要性は、次のように説明ざ 地下ダムの水源区域は広大であり、灌概面積も大きい。ここにダムの貯留水の管理権限と宮古島地下水保護管理条例 との関係が、調整を要する課題として浮かび上がってきた。国、土地改良区側からすれば、ダムを灌概用水源として有 効に活用するためには、ダム管理者が、貯留水を自由に使用できる制度が必要であるという思惑があった。このため、 広域行政組合が地下水保護管理条例によって地下水管理権限を有しており、かつ飲料水優先の原則が唱われているので、 ダム用水が制約を被ること無く、「自分の水」として、使用できるかということが、国及び土地改良区の関心事となっ たのである。たとえば、八四年四月二日に宮古地域国営土地改良事業推進協議会理事会に於いて、水利権に関する委員 会が設置された。宮古毎日新聞は、この事情を「現在宮古島地下水保護管理条例が上水道企業団によって制定されてお り、現状では地下ダムの水源についても制約が及ぶことになることからその制定経緯及び運用状況等について調査、分 析、関係法令との関係についても研究し関係機関とも充分調整した上で「自分の水」が自由に使えるための制度化を図 る必要がありそのため設置するもの」(八四年四月一一一旦と報じている。 地下ダムについては、保護管理条例の適用を制限する動きが出てきたことにより、地下水資源を一元的に管理すると 一別) いう条例の田心想は、大きな転機を迎えることになった。 第三節地下ダム問題が条例に与えた影響 地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例 一六五

(25)

{調){拓一

ることが、適当ではないということであった。

れている。条例の管理主体変更の理由として、上水道を扱うにすぎない企業団が、全地下水資源を管理する権限を有す

さらに、条例の内容面についても、変更がなされた。

内容面の変更の理由は、「限られた地下水を住民のためにもっとも有効に利用してゆくには、単に飲料水の保護といっ

た観点にとどまらず、各種用水を含めた総合的な地下水利用施策が急務である.:/このため、現行の宮古島地下水

保護管理条例の内容を大幅に刷新し、今後の地下水利用の多角化に適したものとすることとし、その執行を地方公営企

業である宮古地区広域行政組合に移管する」(宮古広域事務組合規約改正説明資料)とされている。

この内容面の問題が意識されたのは、国の地下ダム計画との関連で農業用水の管理をどのようにするかという問題が

生じたためである。上水道公団が、他種用水の管理権までもつのはおかしいということであり、これらの用水管理権を

持つ組織に機構を変更するか、あるいは、管理権を有する別の組織をつくるかどうか、が検討された。公団を組織替え

すると、地方公営企業法の適用がなくなり、補助が受けられなくなるなどの問題が生じるようである。

しかし、別の組織をつくるためには、新たな予算等も必要となるので、既存の事業組合である、「宮古地区広域行政

組合」(伝染病隔離の患者の治療および事務・救急医療を共同処理していた)を利用して、そこに管理権限を持たせる

ことに落ちついた。さらに、その後共同処理する事務を拡大するために、この一部事務組合も複合事務組合に改組され

ることになった。これが、八九年一一月成立した、「宮古広域圏事務組合」である。宮古島地下水保護管理条例は、現

在広域圏事務組合が管理している。従って、事務組合の組織変更にかかる条例の変更は、今までの条例の管理主体の変

{師)

更に伴う条例の廃止、制定と異なり、条例の改正である。ただ-し、管理地域に伊良部町が加わっているが、この経緯に

沖大法学会創立十周年記念号 一ハーハ

(26)

しかし、そうかと言って、企業団条例が、管理主体Ⅱ事業主体という立場を採りながらも、企業団に管理主体足り得

る組織構成および権限を与えていたかというと不十分な面があったといわなければならないであろう。統一的な地下水

利用計画を策定し、それにそって、許可権限を行使するというものではなく、水質問題に対応する組織構成を有しても

権限を持つのかが重要になってくる。

企業団は、供給事業主体でもあり、実際に水源を管理しているものであった。これに対し、行政組合は、供給事業主

体でなく、条例に定められた権限を行使する水源管理者であり、その権限は、水源掘削・利用の許可であり、渇水時に

は、飲料水優先の原則によって用水間の利用調整を行うものである。現実的には、企業団と地下ダムの一つの供給主体

間の調整機関としての役割が期待されているといえよう。企業団条例が、事業主体Ⅱ規制主体という構造であったのに

対し、行政組合条例は、これを分離しているわけである。地下水資源管理にとってどちらの構成がよいかは、|概に言

えないが、新条例のように分離した場合に、水源に対する管理が間接的になるので、規制主体がどのような規制・調整

を図るとともに、地下水資源の適性利用に関する事務。(多良間村に係るものを除く。)」との規定を置いている。

ついては未調査である。広域圏事務組合規約は、「第一一一条(’一一)項宮古島の地下水の保護管理と地下水質保全対策

さらに、地下ダム開発については、国であっても、水源開発には、保護管理条例の許可が必要であるのかということ

が、でてきた。このため、国にたいする扱いを検討するためにも地下ダムの水源予定地がどこになり、この地域につい

ての許可の扱い等の問題もでてきて、これまでにない条項が入った。 第四節地下水管理体制の変貌 地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例 一 六 七

(27)

宮古毎日新聞の報道によれば、条例の内容の大幅な見直しに至った背景は、次の通りである。しかし、若干の疑問が あるので、記事を紹介した上で、我々の理解を示して、まとめに代えよう。 「宮古島の地下水利用は、宮古島上水企業団が用いる生活用水が主で、ほか干ばつ時の農業用や製糖工場、それに酒 造業などの利用が主な需要となっている。この為、同企業団の地下水保護管理条例は上水道水源の保護を目的とし、い わば実質自由の状態となっていた。ところが宮古地域土地改良事業が推進され、地下ダムから汲み上げた地下水を受益 より高度の調整能力とその前提となる調査能力を備える必要がでてきたのである。 いってもその施設所有者は、国であり、調整に困難がつきまとうことが予測されよう。したがって、管理主体としては、 を選択したのであった。事業主体と管理主体が分離し、なおかつ、農業用水部門は、施設管理者が宮古土地改良区だと で)の農業用水事業部門が宮古島に誕生することによって、条例管理者は、管理主体として完全に供給と分離する方向 部門から管理主体を切り離し、さらに地下ダムという異質(所有主体が地方自治的組織ではなく、国であるという意味 合条例以来、上水道のほか農業用水、工業用水を供給すると条例の目的規定に躯われている事を放棄して、上水道事業 ここでは、如何に事業主体をコントロールする組織的能力と権限とを有しているかが問題となる。繰返すと、上水道組 構成が、直接的管理といい得るならば、管理主体と事業主体とを分離する構成は、間接的管理というのが適当であろう。 あり、広域圏事務組合は管理主体たる実質を、企業団に比べれば備え得る構造といえよう。管理主体Ⅱ事業主体という いなかった。統一的な地下水の利用計画や水質問題への対応などは、現在の条例になって、はじめて実現されたもので 第五節小括 沖大法学会創立十周年記念号 一六八

(28)

⑥農業用水については、農民が井戸を掘ってポンプで汲み上げするときに、許可を受ける必要があり、農業用水につ

いて、無制限であった訳ではない。 ならなくなる。 ⑤企業団が、地方公営企些 格の上からの制約である。 ④したがって、企業団が乢 ③企業団は、地方公営企些 ②ただし、企業団が管理一 ①企業団条例では、上水) なるであろう。

き誤解なので、これを正しながら、保護管理条例の内容が変更されなければならなかった事情をまとめると次のように

公式発表を記事にしたものなのか、どうかは不明であるが、いくつかの点で誤解があるようにおもわれる。有りうべ

が重ねられてきた。」(宮古毎日新聞一九八七年五月一一一日)としている。

てきた。/同協議会では、水利専門委員会を設置、新条例骨子案の検討や条例制定の為の一部事務組合設立案等の検討

全を行う事はできない事から、昭和五九年から宮古地域国営土地改良事業推進協議会で新たな管理制度の検討が行われ

管理が必要になったきたもの。ところが上水道水源の保護を目的としている現行条例では農業用地下ダムの貯留水の保

農家に農業用水として供給する国営土地かんぱい事業が今年度にも着工の運びとなった事から、これに用いる地下水の

企業団が、地方公営企業法の枠からはずれないことにするとしたら、地下水管理のための組織を別に造らなければ

したがって、企業団が地下水源の全体の管理ができないというのはへ地下水保護条例の問題ではなく、企業団の性

企業団は、地方公営企業法のもとの組織であり、この適用を受けるために上水道供給の業務に限定される。

ただし、企業団が管理できないというのは根拠がないことではないP 企業団条例では、上水道企業団は地下水源全体について管理できる権限を有している。 地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例 一 六 九

(29)

第一節現行条例の構造

第一条の目的規定には、企業団条例は、積極的な文言がみられる。他方、現行条例は、宮古島の地下水源の適正利用

に寄与し、もって住民の福祉を増進することを目的とするとなり、文言が相当変更されている。(資料5)一番大きな

変更点は、企業団条例は、飲料用水のみならず、工業用水、農業用水も供給することを目的にしているように、文言が

なっていたものが、供給の目的がはずされ、保護管理のみにとどめられたことである。

⑪つまり、新しい条例の必要性は、企業団条例が管理権限がなかったというのではなく、管理主体が、その権限を行

⑩このためには、宮古島の水源計画をたてた上で、上水、農業用水等の保全を図る必要がでてきた。

使するには、地方公営企業法上の問題が生じたことと、その権限が抽象的であって、より具体的な権限を定める必要

が出てきたこと、などによるのである。

⑨地下ダムの貯溜水にも、管理権限を及ぼすべきであるのかなど、地下水管理者の権限と地下ダムの管理運営権の調

⑧従って、地下ダム建設に伴い農業用水源の保全をいかにするかについては、あらたに意識された課題である。

とがなされていた訳ではない。

⑦しかし、調査計画に基づいた明確な基準に基づいて、許可の決定を行なうという形で農業用水源の保全というこ

(犯) 整が問題とKどれた。

第六章現行の宮古島地下水保護管理条例の評価

沖大法学会創立十周年記念号 ’七○

(30)

地下水保全に対しては、水質の状態に対する調査が不可欠であるが、新条例は、調査・研究のための体制整備を行なっ

ている。調査研究機関として、「宮古島地下水審議会」を設けている。

また、公共的地下水利用施設という概念が現行条例で初めて出てきているが、次の四項の規定と関連して意味を持つ

地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例 一七一 者及び関係市町村長に対し、地一 るが、一定の権限を与えている。 {羽〉 現行条例は、「宮古島地下水利用基本計画」を定めることを義務づけている。

この計画に盛られるのは、六条二項にすると、地下水利用の現況、地下水利用用途ごとの需給見通し及び開発計画、

公共的地下水利用施設(計画中のものを含む。以下同様とする。)及びその取水区域、地下水の利用調整に関する基本

方針、地下水の水質保全対策、である。水質に関する点がここではじめて出てきたことに積極的な意味が有ろう。

第一六条において、「代表理事は、地下水の水質を悪化させる行為又は悪化させるおそれのある行為について、原因

者及び関係市町村長に対し、地下水の水質保全に必要な措置をとるように勧告することができる。」として、勧告に止

せる。

優先権の規定については、現行条例は、干ばつにより地下水が不足した場合は、生活用水の供給を優先する、とされ

た。この文言の変更が以前の条例と比較すると何がどのように違いがでてきたのか、明かではない。干ばつにより、と

いうことで、優先の場合が明らかになったかというとそうではないであろう。干ばつによって不足している事態という

のがどの程度の状態をさすのか、必ずしも、明かではない。

現行条例は、地下水保全のための対策を盛り込んでいる。この点、企業団条例が、理念として、地下水保全を述べて

いたが、汚染の問題には触れておらず、総合的な対策を定めるには至っていなかったことに比べれば、積極面を見いだ

(31)

②許可基準については、明確な基準が置かれていなく、「基本計画の遂行に支障をきたすと認めた場合は」、許可して はならないとするにとどまっている。(九条) ③渇水時には、生活用水を優先する義務が課せられている。(一一条三項) 現行条例の構造を、管理者に与えられている権限、地下水利用者に課せられている義務を中心に見てみよう。 {杣) ①水源の利用については、許可を得て行なうことが原則である。(七条、九条)また、許可には、条件を付する}」 「公共的地下水利用施設」は、「(基本計画)第七章公共的地下水利用施設及びその取水区域」に定められている上 水道企業団が管理する水源地、製糖会社施設の他、宮古島土地改良区が管理する地下ダム施設などが含まれている。注 意すべきは条例管理者が協議すべき相手が、所有者とされていることである。ここで問題は、協議の相手が、所有者で あり管理者ではないことであり、所有者と管理者が異なる場合に問題がでてこないであろうか。地下ダム施設の管理者 は、宮古土地改良区二九九○年設立)になろうが、所有者は、国である。 なってくる。 害しないように配慮されているのである。それでは、公共的施設の所有者とは、具体的にはどのような者かが、問題と に対し、協議しなければならない。」つまり、基本計画を定めるときに、公共的地下水利用施設の所有者の利益を侵 てくる。「管理者は、基本計画を定めようとするときは、第二項第三号に定める公共的地下水利用施設の所有者(略) とができる。二○条) 第二節規制権限 沖大法学会創立十周年記念号 七

(32)

地下水利用者の中でも他に影響の強いものは、企業団と地下ダム(土地改良区)である。企業団については、その既 使用の施設については、企業団の長から管理者に所定の事項を通知することにより、一四条の協議が成立したものとみ 勧告制は、輻 必要であろう。 できる。二六条) ⑥地下水の減少、あるいは汚染のために、緊急に相当の期間を定めて、採取規制を行うことができる。(|五条) ⑦条例の施行、あるいは運用状況の調査のために、施設の立ち入り調査権がある。 ⑧許可条件等に違反した場合は、許可の取消すことができ、又は、採取の停止を命じることができる。(一三条) ⑨許可を受けずに採取した者、’三条の命令に反した者等には、一○万円以下の罰金を課することができる。(一一一一一条) 以上の権限をもって、地下水資源を管理するのに充分な権限を、調整主体としての広域圏事務組合は有している評価 することができるであろうか。許可権限の範囲は、企業団条例と変らないか、むしろ、協議によって、許可をみなすと いう条項が入った点で、後退がみられる。大きく変わったのは、地下水汚染者及び、市町村長に対する勧告制の導入、 基本計画の策定、地下水審議会の設置等など、である。 勧告制は、規制措置としては、弱いものである。汚染の原因物質の排出規制、汚染原因の除去命令を行なえることが ⑤地下水汚染に対しては、原因者及び関係市町村に対し、地下水の水質保全に必要な措置をとるよう勧告を行うこと なされたものとみなされる。二四条) ④国の機関叉は地方公共団体が行う行為については、当該国等の長と管理者との協議が成立することをもって許可が が 地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例 七

(33)

(二地下水源汚染問題

現行条例は、地下水の汚染に対する問題に触れている。宮古島は、下水道の普及もまだあまり進まず、生活排水は、

地下に浸透して地下水源を汚染することが、心配されている。八八年に、「宮子島地下水質保全対策協議会」が、平良市、

城辺町、上野村、下地町および、宮子島上水道企業団によって、結成された。’九八九年四月から、「宮子島地下水水

〈机)

質保全調査」を行なっている。これによって、地下水質に悪影響を及ぼす要因の増加、人口密集地での井戸からのNOl

N値の変動が生じていることや大腸菌が検出きれること、などの問題が明らかになった。

地下水汚染の調査には、かなりの組織的取組みが必要になるが、この保全協議会がそのような組織活動が、できるか

どうか、そして、保全協の調査により、現行条例の範囲内でどのような汚染防止ができるのかが、課題となっている。

地下ダムは、農業用のダムであるが、現行条例には、干ばつの時には、飲料水を優先するという原則が維持されてい

る。また、|つの島の中で、水源を完全に別個のものとするのも、問題があろう。そうすると、地下ダムであっても、 二四条)のかについては、まだ未調査である。

対象になることになろう。何故、管理者が、許可を与えるのではなく、協議を行うことで許可がなされたとみなされる

なされる。(附則一一一号)企業団の新規施設、そしてこれが問題の焦点になるが、地下ダム施設による採水が、協議の

一度許可を受けた者は、取水方法の変更、取水量の増加などを行なわない限り許可は、継続して与えられていること

になるが、許可の更新制度をもりこみ、地下水資源保全計画に照して、許可水量を調整していく必要があろう。

(|) 第三節問題と課題 沖大法学会創立十周年記念号 一七四

(34)

(艇) に注意を要する。」とすZC。

宮古島地下水保護管理条例は、地下水を公水であるかのように扱っている。地下水は、土地所有権に付属するもので

あり、その利用を条例で制限することが、財産権の侵害になり、不適法であるということが理論的には考えられる。た

だし、地下水保護管理条例を巡ってこのようなことが問題にきれたことはないようである。

阿部泰隆は、「宮古島のように地下水が唯一の水源であり、住民の生活と命の基盤であるところでは、地下水公水論

が妥当すべきである。法理論も地域の特殊性に十分配慮した上で適用されるべきで、全国一律の弊を犯さないように特

飲料水に適する水質が維持されることが期待される。地下ダム水源区域は、農業地帯であり、農薬散布が心配される。

水質汚染に対する対策のために、より以上の規制権限が、必要でないのかの見直しが必要である。

(三リゾート施設への水供給 現行条例は、飲料水優先を張っているが、今後リゾート施設の増加が、予測される。

かんばつ時に、リゾート施設への飲料水の供給も優先的に行なわれるのであろうか。島の住民に必要な水と、リゾート

施設利用者に供給する水とに差異を設けるべきではないのかという問題がある。

阿部の言うように、地下水源に全島民の飲料用水、生活用水、農業用水および工業用水が、依存していることを、直

地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例 一七五

第一節宮古島地下水保護管理条例の適法性

まとめ

(35)

保護管理条例の生誕から、その改変の過程をたどることは、沖縄特有の法体系の変転を見ることである。 アメリカ民政府の指導下における用水管理体制の設立により、宮古の人々の中からではないが、宮古島の用水事情に 適合した管理形態が生み出され、その管理権限を宮古地域に取り戻すような自治運動が生み出きれ、アメリカ民政府に よってもたらきれた水管理の思想を受け継ぎながら、宮古全島民が自ら管理し、その用水管理思想を我がものとしていつ 視して保護管理条例が公水論をとっていることの適法性を肯定すべきであろう。 自治体には、飲料用水等を供給すべき責務があり、この責務を果たすためには、地下水を管理しなければならないの

である。宮古島には、他に供給水源が考えられないことからして、この住民生活に不可欠の責務を果たすために土地所

有者の地下水利用権を制限できると考えるのが妥当であろう。 規制の態様は、全面的に採取を禁じるようなものではなく、「水源の保護及び飲料用水の供給に支障を来すおそれが ないと認める場合でなければ」許可してはならない、としているのであり、取水を一律に禁止しているのではない。合 理的に使用させることを前提としての規制であること、を考えるべきであろう。全島民が同一の地下水資源に頼ってい るのであるから、規制を受ける者とそれによって、資源が保全されることによって受益する者が一致していると見るべ きであるから、許可を要件として利用を認める規制は、地下水資源を有効に活用するために必要なものである。仮に、 地下水を利用する権限が土地所有権の一部であるとしても、この規制は、利用を抑制し、財産権を侵害するものではな いであろう。 第二節「宮古の法」の生成と本土法による浸食 沖大法学会創立十周年記念号 七六

(36)

たのであった。ここに、宮古独自の法が生まれたと言ってよいであろう。 (旧) しかしながら、本土復帰に伴って、本土法への適応が求められた。 まず、地下水資源を一元的に管理する可能性を有していた、上水道組合が本土法の地方公営企業法の適用を受ける上 水道企業団に改組され、全般的な地下水管理機能を奪われた。これは、地方公営企業法によって上水道企業団は水道水

供給事業を営む場合に補助を受けることができるのである。企業団が、地下水保護管理条例によって地下水資源全体を

管理するようになると、補助を受けることが出来なくなるという問題を胚胎させたのである。このため後に地下ダム建

設との関連で、地下水保護管理条例の管理が、従来伝染病等を管掌していた広域行政組合に移管されることとなったの

である。ここに統一的組織によって、地下水資源全体を保全から供給(生活用水、工業用水から、かんがい用水まで)

まで含めて管理する可能性が無くなったのであった。 このように、宮古島の自治体の連合とも呼ぶべき組織による管理権能は、縮小を余儀なくされた。

さらに、大きな問題を提起したのが、地下ダム建設問題である。地下ダム建設は、農林水産省の土地改良事業の一環

として行なわれて、施設の所有主体は、農林水産大臣で、管理主体は、宮古土地改良区である。地下ダムの建設によっ て、農業用水源については、新たな管理主体が出来たことを意味する。

問題は、この地下ダム水源の管理権が、条例による地下水管理権限とどのような関係にたつかである。国は地下ダム

(州) については、土地の使用権限等は取得していないから、貯留水の管理権限等に不安があったのであろう。また、上水道

公団条例においては、飲料水優先の原則が掲げられていたことから、どの範囲で、この原則が適用されることになるの

か、という不安が生じたのであろう。このような問題を調整するために、条例の管理主体の移管、条例の内容の見直し

地下水保全思想と宮古島地下水保護管理条例 一七七

(37)

注 いかなる影響を与えるのか、注目して見て行かなければならないであろう。 条例管理主体と、上水道の供給主体、農業用水の供給主体とは、分離されている。現行条例が、地下水の保護管理に 基づいていたものであるとすれば、現行の条例は、その思想に大きな影響を与えるものであろう。 用水の供給までも、|元的に管理することによって、統一的な計画に基づいた水資源保護が可能である、という思想に 宮古の地下水保全思想の出発点は、上水道組合が、地下水資源の一元的な管理を目的とし、飲料水、農業用水、工業 小がみられるといえよう。 しては、条例管理権者に地下水源全体について、許可権限があるという立場に立つものの、実際的には、管理権限の縮 条例の上では、地下ダムについては、その採水についての許可は、協議によって代えられている。この点は、建前と がなされた訳である。  ̄■ヘ ーーヘ

且表且

1- (1)旧宮古島地下水保護管理条例(一九六七年宮古島上水道組合条例)では、地下水を「井戸の水、泉及び泉から 流出する水等で、地表面下のすべての水をいう」としている。現行条例では、「地下を流れ、又は地下に停滞し、 地下水面を形成する水をいい、地下から自然に、又は人為的に地表に流出する水を含むものとする」としている。 (2)宮古における地下水問題の推移をみるのに、宮古島上水道企業団『水道事業統計年報』所収の「宮古島水道年 沖大法学会創立十周年記念号 上水道組合が管理した、保護管理条例によって、許可を得たものは、その保護管理条例が廃止された後も、企 0 は、便利である。  ̄ 七 八

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