第 6 回複合構造の活用に関するシンポジウム
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(47)コンクリートの面的補修工法「パーマコ ート工法」による複合構造の活用
野田 健二 1 ・松本 由美子 1 ・和田 直也1
1正会員 株式会社竹中土木 技術本部 (〒136-8570 東京都江東区新砂一丁目1-1)
E-mail: noda-k@ takenaka-doboku.co.jp [email protected] wada-n@ takenaka-doboku.co.jp
コンクリートの補修工法として,紫外線で硬化する樹脂を用いたFRPシートによるコンクリートの面的 補修工法「パーマコート工法」を開発してきた.要素試験として,紫外線硬化型FRPシートを貼り付けた コンクリートの複合材料を用いて,付着試験,押抜き試験,圧縮試験及び曲げ試験を実施した.また,ト ンネル覆工を模擬したコンクリートにおいて紫外線硬化型FRPシートを貼り付け,実験的に押抜き試験を 実施した。その結果,紫外線硬化型FRPシートが,効率良く・品質良くコンクリートの剥落を防止するこ とを確認した.そして,塩害や中性化など劣化因子の侵入防止を目的として,実構造物に紫外線硬化型 FRPシートを活用した.
Key Words : UV-cure FRP sheet , bond strength, punching shear strength,Prevention of exfoliation
1. はじめに
近年,コンクリートの剥落防止工法として様々な繊維 シートを用いた補修技術が開発されている.しかし,ト ンネルなど供用中のコンクリート構造物の補修工事にお いては,短期間での施工が求められており,その施工性 が課題となっている.
そこで筆者らは,短期間での施工が可能な紫外線で硬 化する樹脂を用いたFRPシートによるコンクリートの面 的補修工法「パーマコート工法」を開発してきた.
本報告では,紫外線硬化型FRPシートとコンクリート との複合材料について,各種の試験結果および実構造物 への活用事例を紹介する.
2. 工法の概要 (1) シート材料
パーマコート工法に用いる紫外線硬化型FRPシートの 構成を図-1に示す.FRPシートは,ガラス繊維マットに 紫外線硬化樹脂を含浸させた構成になっており,太陽光 や紫外線ランプ等によって紫外線を照射させることで,
硬化し強度発現する.
専用の紫外線照射装置を用いた場合,直接太陽光が当 たらない場所においても,紫外線硬化型FRPシートを10
〜15m2 /時間の速度で品質良く硬化させることができる
ことを確認している1).試験に用いた紫外線硬化型FRP シートの仕様を表-1に示す.また,紫外線硬化後のFRP シートの物性を表-2に示す.
図-1 紫外線硬化型FRPシートの構成
表-1 紫外線硬化型FRPシートの仕様
項 目 仕 様
樹脂の種類 エポキシアクリレート 繊維量 450g/m2 厚 さ 1〜1.5mm 重 量 平均1.5kg/m2
47−2 (2) 施工手順
パーマコート工法の施工手順を図-2に示す.下地処理 は,コンクリートの接着面を健全にするために行い,デ ィスクサンダー等を用いてケレンする.紫外線で硬化さ せる前のFRPシートは軟らかく,所定の寸法に裁断して 接着させる.紫外線を照射して硬化させた後,保護フィ ルムをはがして完了となる.
(3) パーマコート工法の特徴
パーマコート工法の特徴を以下に示す.
a) 紫外線硬化型シートの特徴
FRPシートの単位重量は約1.6g/cm3と鉄の約1/5であり,
引張強度は100 N/mm2である。FRPシートの厚みは1.5mm 程度であり,補修後の構造物の断面増加がほとんどない.
太陽光など紫外線で硬化するため,硬化に対する外気温 の影響が少ない.FRPシート材料が透明なため,補修後 のひび割れ観察や変状の有無を簡単に確認できる(写 真-1紫外線硬化型FRPシートの外観 参照).
b) 施工性の特徴
接着樹脂を含浸したFRPシートであり,何段階もの接 着工程を省略でき,簡単に施工できる.専用の紫外線照 射機械を用いることにより,紫外線量が少ない場所にお いても短時間に品質良く硬化できる.材料が軽量で可搬 性に優れ,狭い場所での作業にも適する.FRPシートは 自由に切断でき,複雑な構造物形状にも柔軟に対応でき る.施工中,接着樹脂から揮発するVOC飛散量を保護 フィルムにより抑制できる.
c) 耐久性,耐食性
樹脂とガラス繊維で補修し,腐食や劣化に対して安定 している.材料の耐久性は耐候性試験により約10年以上 であり,表面被覆によりコンクリート構造物を保護する.
3. 要素試験 (1) 付着試験 a) 試験方法
コンクリートへの付着強度を確かめるために,コンク リート平板(300×300mm,t=50mm)に紫外線硬化型 FRPシートを貼付し,FRPシートを硬化させた後,JIS
A6909「建築用仕上げ塗り材」に準拠した方法で付着試
験を行った.使用したコンクリート平板の配合を表-3に,
コンクリートの圧縮試験結果を表-4に示す.試験数量は 5箇所とした.試験は,公的機関(建材試験センター)
に依頼し実施した.試験状況を写真-2に示す.
表-3 コンクリートの配合
表-2 紫外線硬化型FRPシートの物性
①下地処理(ケレン、プライマなど)
②シートの粘着面を貼付
③紫外線を照射して硬化
④保護フィルムをはがして完了
図-2 パーマコート工法施工手順
写真-1 紫外線硬化型FRPシートの外観
水セメン
ト比 細骨材率 空気量
% % % セメント 水 細骨材 粗骨材 混和剤
49.3 46.3 4.5 371 183 792 936 3.71 単位量 kg/m3
曲げ強さ ※1 MPa 186 曲げ弾性率 ※1 GPa 7.8 引張強さ ※2 MPa 100 引張弾性率 ※2 GPa 6.2
引張伸び率 ※2 % 1.8
※1 JIS K 7055Aに準拠
※2 JIS K 7054B-1に準拠
項目 単位 代表値物性値
− 写真-2 付着試験状況
b) 試験結果
紫外線硬化型FRPシートの付着試験結果を表-5に,破壊 状況を写真-3に示す.この結果,5箇所全てにおいてコ ンクリート平板の母材破壊であった.
また,実施工を想定して,コンクリート表面に凹凸を つけた供試体に対しての付着試験も実施している2).
(2) 押抜き試験 a) 試験方法
紫外線硬化型FRPシートの耐荷性能と変形性能を確か め る た め に , コ ン ク リ ー ト 平 板 (600×400mm, t=60mm)を用いて押抜き試験を行った.コンクリート
平板は,JIS A 5372(プレキャスト鉄筋コンクリート製
品)に規定する上ぶた式U形側溝(ふた)の1種呼び名 300(以下,U形ふた)を用いた.試験体の作製にあた り,U形ふたの中央部をφ100mmの形状で裏面よりコン クリート用カッタで,5mm残しの深さで削孔した.その 表面にプライマーを塗布した後,紫外線硬化型FRPシー トを貼り付けた.
載荷方法は,まず1mm/minの速度でU形ふたが破壊す るまで載荷し,その後,5 mm/minの速度で行った.押抜 き試験状況を写真-4に示す.
b) 試験結果
押抜き試験結果として,図-3に載荷荷重と変位のグラ フを示す.また,紫外線硬化型FRPシートの変形状況を 写真-5に示す.この結果,紫外線硬化型FRPシートの最 大押抜き荷重は,U形ふたの5mm残しのコンクリート部 分が破壊する初期に現れ,4.5kN以上であった.その後 荷重は,変位10mmを超えてから2.96kNのピーク値を示 し,FRPシートの剥離がコンクリート平板の端部に達し た後,荷重が急激に低下した.
表-5 付着試験結果
写真-3 付着試験状況
写真-4 押抜き試験状況
写真-5 押抜き試験状況
図-3 押抜き試験結果
測定値 平均 測定値 平均
1 42.3 33.3
2 41.9 33.8
3 42.2 39.2
42.1 35.4
圧縮強度 N/mm2
静弾性係数 kN/mm2
番号 試験体番号 最大引張荷重
N
付着強さ
N/mm2 破断状況
1 5,130 3.2 母材破壊
2 6,890 4.3 母材破壊
3 6,020 3.8 母材破壊
4 5,810 3.6 母材破壊
5 6,620 4.1 母材破壊
平均 - 3.8 -
荷 重 ( N)
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000
0 5 10 15 20
変位(mm)
表-4 コンクリートの圧縮強度結果
− (3) 圧縮試験
a) 試験方法
紫外線硬化型FRPシートによる,圧縮強度への補強効 果を確認するために,図-4のように円柱の供試体の表面 にFRPシートを貼った試験体において圧縮強度試験を行 った.FRPシートは供試体側面に全周全面に巻きとした.
供試体の実験水準を表-6に示す.
b) 試験結果
供試体の圧縮試験結果を図-5に示す.この結果,紫外 線硬化型FRPシートを1層貼った場合は,1.15倍程度圧 縮強度が増加し,2層貼った場合は1.5倍以上の強度増 加が確認できた.
圧縮試験終了後の供試体の破壊状態は,円柱形の内部 のコンクリートが,膨張破壊しておりコンクリートのひ び割れに沿った部分でFRPシートが引張破断していた.
また,FRPシートの重ね合せ部では破断しておらず一体 化していた.
(4) 曲げ試験 a) 試験方法
紫外線硬化型FRPシートによる,曲げ強度への補強効 果を確認するために,図-6のように角柱の供試体の表面 にFRPシートを貼った試験体において曲げ強度試験を行 った.FRPシートは下面全面に貼り付け.使用したコン クリート角柱供試体の配合は円柱供試体と同配合である。
供試体の種類を表-7に示す.
b) 試験結果
供試体の曲げ試験結果を図-7に示す.この結果,紫外 線硬化型FRPシートを1層貼った場合は,1.2倍程度曲げ 強度が増加し,2層貼った場合は1.4倍以上の強度増加 を確認できた.
曲げ試験終了後の供試体の破壊状態は,角柱の下部の コンクリートが,引張破壊しておりコンクリートのひび 割れに沿った部分でFRPシートが破断していた.
4. 押抜き模型試験
(1) 模型概要
1999年に礼文浜トンネルで発生した押抜きによる剥落
コンクリート塊を模擬して,円錐形の模型供試体を設置 した模擬トンネルを製作した(写真-6).模擬トンネル の寸法を表-8に,円錐模型供試体の大きさを表-9示す.
供試体は,直径1m程度の円錐形で,厚さは最大20cm 程度である.供試体重量は230kgであり,模擬トンネル のクラウン部に剥落しないよう補強ロッドで固定して設 置している.円錐模型供試体の写真を写真-7に示す.
図-4 圧縮供試体
表-6 圧縮供試体実験水準 供試体
No
供試体寸法 (mm)
貼付
状況 水準 1 φ100×200 全周 シートなし 2 φ100×200 全周 シート1層 3 φ100×200 全周 シート2層
図-5 圧縮試験結果
図-6 曲げ供試体
表-7 曲げ供試体実験水準 供試体
No
供試体寸法 (mm)
貼付
状況 水準 1 100×100×400 下面 シートなし 2 100×100×400 下面 シート1層 3 100×100×400 下面 シート2層
図-7 曲げ試験結果
200
FRPシート
200
FRPシート
15 20 25 30 35 40
シート接着なし シート接着(1層) シート接着(2層)
圧縮強度(N/mm2) 円柱(全面貼り)
0 1 2 3 4 5
シート接着なし シート接着(1層) シート接着(2層)
曲げ強度(N/mm2 )
圧縮強度用供試体 φ100×200mm
− 表-8 模擬トンネル寸法 表-9 模型供試体
(2) 試験方法
試験は,円錐形の模型供試体をパーマコート工法で 補修した後,覆工背面から荷重を加えて,載荷荷重と変 位およびFRPシートの剥離周長を計測して行った.補修 範囲はコンクリート塊の端部よりも250mm以上大きくな るように1500×1500(mm)のFRPシートを貼り付けた.押 抜き実験の供試体断面図を図-8に示す.
(3) 試験結果
押抜き試験の載荷荷重と変位のグラフを図-9に示す.
この結果,コンクリート塊の自重では,FRPシートは剥 離しなかった.自重と載荷荷重を合わせて4.06kNに達し たときに,FRPシートの剥離が始まった.剥離初期の周 長は約3.4mであった.
その後,円錐供試体の自重によって剥離が進行し,垂 直変位が増加するとともに荷重は低下した.更に剥離面 積は増加し,剥離周長が長くなっていき,剥離がFRPシ ート貼り付け端部に達した.押抜き試験後の剥離状況を 写真-8に示す.剥離の進行方向は,トンネル軸方向が周方 向に比較して早かった.この方向性についてはトンネル 周方向の曲率の影響であると考えられ,既往の研究3) と 同様の結果となった.
5. 施工事例
塩害や中性化など劣化因子の侵入防止を目的として,
実構造物に紫外線硬化型FRPシートを適用した.施工場 所は長野県で,道路橋梁のコンクリート床版に施工した.
施工時期は,2004年7月で,施工数量は約160m2であった.
紫外線硬化型FRPシートを施工した箇所の模式図を図-10 に,施工後の外観を写真-9,写真-10に示す.紫外線硬化 型FRPシートの施工後においてもコンクリート表面を観 察できることを確認した.
図-10 施工箇所の模式図
形状 円錐形 直径 1000(mm) 最大厚さ 200(mm)
重量 230(kg) 覆工厚 500(mm)
曲率半径 2500(mm) 延長 9000(mm)
写真-6 模擬トンネル
写真-7 円錐模型供試体
図-8 供試体断面図
図-9 押抜き試験結果
写真-8 剥離状況
ひずみ計 変位計
ジャッキ ロードセル
反力鋼材
紫外線硬化型FRPシート ひずみ計
変位計 ジャッキ ロードセル
反力鋼材
紫外線硬化型FRPシート
0 1 2 3 4 5
0 5 10 15 20
垂直変位(mm)
荷重(kN)
3000 4000 5000
周長(mm)
荷重 周長 4.06kN
3417mm 剥離開始
紫外線硬化型 FRP シート
円錐模型供試体
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6. おわりに
パーマコート工法は,構造物の目的に応じて幅広い用 途が考えられる.例えば,施工事例にも挙げた橋梁床版
(図-11)や押抜き模型試験のようなトンネル覆工コン クリートの剥落防止(図-12)など,第三者災害を防止 できるものと考えている.また,剥落防止のみならず中 性化や塩害など劣化因子の侵入防止など表面被覆による 効果もあり,コンクリート構造物の耐久性の向上にも寄 与する.
図-11 橋梁への活用例
図-12 トンネルへの活用例
参考文献
1) 和田 直也,松本 由美子:紫外線硬化型 FRPシートによ
る補修工法の付着性に関する実験的研究,コンクリート工 学年次論文集,Vol. 27,No.1,pp. 1909-1914,2005.6
2) 白武 寿和 ・ 松本 由美子 ・ 和田 直也:補修工法における紫
外線硬化型FRPシートの付着強度に関する実験 , 土木学会年 次学術講演会講演論文集 , 第60回 , No.6-171 , pp. 341-342 , 2005.9 3) 小島 芳之,吉川 和行 他:繊維シート接着工によるトン
ネル覆工コンクリートの剥落対策設計法,土木学会論文集,
No.756,Ⅵ-62,pp. 101-116,2004.3
4) 井戸 功誠,友清 剛:新材料を用いたコンクリート構造物 の補修方法に関する性能評価試験,コンクリート工学年次 論文集,Vol. 25,No.1,pp. 1571-1576,2003.6
5)トンネル安全対策工法研究会,FRP によるトンネル覆工剥落対 策マニュアル,山海堂
APPLICATION OF UV-CURE FRP SHEET FOR COMPOSITE STRUCTURE Kenji NODA, Yumiko MATSUMOTO, and Naoya WADA
We have been developing a repair method of construction "permanent coat method of construction" of concrete with UV-cure FRP sheet.
As composite material of concrete which is used UV-cure FRP sheet, we experimented on bond strength, punching shear strength, compression strength, and bending strength. In addition, we used UV- cure FRP sheet in tunnel concrete. As a result, we confirmed that UV-cure FRP sheet can prevented exfoliation of concrete. And we applied UV-cure FRP sheet to concrete structure.
写真-9 施工橋梁の遠景
写真-10 橋梁床版の近景