知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者 の意識
著者 佐分 厚子
雑誌名 評論・社会科学
号 118
ページ 29‑45
発行年 2016‑09‑30
権利 同志社大学社会学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014692
要約:本研究は,地域生活における知的障害者の消費者行動に焦点をあて,消費者行動に おける意思決定支援に対する支援者の意識を明らかにすることを目的とした。平成26年3 月1日から3月31日の期間にA市地域生活支援センター相談員を対象に調査を実施し,
欠損値のない20名のデータを対象にクラスター分析を行った。分析の結果,知的障害者消 費者行動意思決定支援に対する支援者の意識は3つのクラスターを形成した。第1クラス ターは「消費者行動を共有する意識」,2クラスターは「消費者利益を目指す意識」,第3 クラスターは「消費者行動における危機への問題解決に対する意識」と命名した。これら 3つのクラスターが見出されたことは,支援者が利用者の意思決定に対して利用者の状況 に応じた意思決定支援を意識していることが示唆される。
キーワード:知的障害者,消費者行動,意思決定支援,クラスター分析
目次
1.研究の背景と目的
1-1.地域生活における消費者としての問題 1-2.消費者行動における意思決定支援 2.研究方法
2-1.意思決定支援の概念と質問項目 2-2.調査方法
2-3.倫理的配慮 3.研究結果
3-1.対象者の基本属性
3-2.知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識 4.考察
5.本研究の限界と今後の課題
────────────
†同志社大学社会学部嘱託講師
*2016年6月23日受付,2016年6月23日掲載決定
論文
知的障害者消費者行動意思決定支援に対する 支援者の意識
佐分厚子
†29
1.研究の背景と目的
1-1.地域生活における消費者としての問題
2002
年12
月,「新障害者基本計画」及び「新障害者プラン」が発表され,障害の有 無に関わらず,だれもが相互に尊重し合う共生社会の実現を目指すことが示された。2003
年4
月には,障害者自らが必要な福祉サービスを選択する利用者本位の支援費制 度が始まり,さらに,2005年10
月には,障害者の地域生活と就労を進め,自立を支援 することを目的とした障害者自立支援法が成立した。地方自治体では障害福祉計画に基 づき,計画的に障害者の地域生活と就労を進め,自立を支援していくこととなった。同 法は,障害者が入所(院)施設から住み慣れた地域で生活できるよう「地域生活移行」を促進するものである。さらに
2013
年4
月から「障害者自立支援法」は「障害者の日 常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」とされ,共 生社会を実現するために法に基づく日常生活・社会生活の支援が総合的かつ計画的に行 われることが法の基本理念として掲げられている。このように「地域生活移行」が進展する中で,障害者の消費者被害の相談件数が増加 しているという問題がある。独立行政法人国民生活センター「判断力が不十分な消費者 に係る契約トラブル」(2008)によれば,精神障害や知的障害,認知症などの加齢に伴 う疾病等の理由によって十分な判断ができない消費者に係る
PIO-NET(全国消費生活
情報ネットワーク・システム)に寄せられた相談件数は,2005年度には1998
年度の5
倍以上の
12607
件にまで達し,2006年度以降においても,年間1
万件以上の相談が寄せられている。消費者被害は契約が基本にあり,契約締結には本人の判断能力が大きく 影響する。判断能力が不十分である人の場合,成年後見制度や日常生活自立支援事業を 利用することで権利擁護を図ることとされているが,利用者は増加しているものの十分 とはいえない(弁護士会
2008)。さらに,障害があることを知った上で,読み書きや金
銭管理が苦手な人,断れない人に販売したり,同一販売員が何度も契約を強いたりして おり,被害が深刻で被害数も多いが,潜在化している被害が多く,表面化している被害 はごく一部にすぎないと考えられている(独立行政法人国民生活センター2008)。
知的障害者の消費者被害に焦点をあてるならば,名川ら(2005)は,その特徴を次の ようにまとめている。「①購入・契約物品の形態は多様であり,一般の被害と同様に多 くの被害が報告されている。②トラブルには他者からの被害と自らのアクセスによって 生じる被害がある。また,多重債務などのトラブルも少なからず生じている。③被害や トラブルの認識が必ずしも明確ではない場合がある。④障害の軽度な人,一人暮らしの 人などが被害にあう傾向がある。⑤親,支援員と専門機関(弁護士,消費生活センター
知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識 30
など)との連携は必ずしも良好ではない」。また,知的障害者の消費者としての生活に おいては,消費者被害の発生だけでなく,物品・サービス・権利などの購入やそれに伴 う契約に関わり,さまざまな問題が発生するといわれている(名川ら
2003)。知的障害
者の消費者被害や問題への支援は,日本の現状においては,成年後見制度等の利用や消 費者被害に対する法的解決をすることに加え,日頃の生活支援を含め,収入に対する支 出の振り分け,商品やサービスの選択や購入や契約,使用や処分という消費者としての 行動全般,すなわち消費者行動(杉本2012)への支援が必要とされる。
1-2.消費者行動における意思決定支援
従来,消費者行動は経済学の研究対象であったが,1980年代から,経済学だけでな く心理学が融合した行動の経済学が注目されるようになった。消費者は十分に情報を持 ちえないことを前提として,消費者の意思決定が説 明 さ れ る よ う に な っ た(関 川
2008)。消費者としての取引において,ある個人が他者との法律関係を形成するお場面
で,交渉力において大きな格差がある場合は,「ありのままの個人」を「保護」しその 意思決定をなしうる条件を作っていく必要があると指摘されている(吉村1998)。これ
らの「保護」は,消費者としての自立を抑圧するものではなく,意思決定を「支援」す るものでなければならないといわれている。消費者を弱者としてとらえてその利益を保 護することだけが重要なのではなく,自立した人間として決定権を行使し,そのことに よって自らの利益を実現しうるような支援が必要とされるのである。2004
年に制定された消費者基本法では,「消費者と事業者との間の情報の質及び量並 びに交渉力等の格差にかんがみ,消費者の利益の擁護及び増進」に関して,「消費者の 権利の尊重及びその自立の支援」が目指され,第2
条には「消費者の年齢その他の特性 に配慮しなければならない」と明示されている。2005年5
月策定された「消費者基本 計画」では消費者政策の重点目標のひとつに「学校や社会教育施設における消費者教育 の推進」が掲げられ,消費者教育によって,合理的な意思決定を行うことができる「自 立した消費者」の育成が目指されることになった。2006年には,内閣府国民生活局が 作成した「高齢者の消費者トラブル 見守りガイドブック」(財団法人消費者教育支援 センター制作)では,消費者教育だけなく高齢者に対しては「見守り」の視点が明確に 示された。2007年には同ガイドブックをベースに「障がい者の消費者トラブル見守り ガイドブック」(内閣府国民生活局編2007)が作成され,福祉関係者との連携の必要性
が指摘されている。2011
年に改正された障害者基本法第23
条では「国及び地方公共団体は,障害者の意 思決定の支援に配慮しつつ,障害者及びその家族その他の関係者に対する相談業務,成 年後見制度その他の障害者の権利利益の保護等のための施策又は制度が,適切に行われ知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識 31
又は広く利用されるようにしなければならない。」と定められている。2013年
4
月1
日 から,「障害者自立支援法」が「障害者総合支援法」とされ,その第51
条22
項では,指定一般相談支援事業者及び指定特定相談支援事業者の責務として,「第五十一条の二 十二指定一般相談支援事業者及び指定特定相談支援事業者(以下「指定相談支援事業 者」という。)は,障害者等が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう,
意思決定の支援に配慮するとともに,市町村,公共職業安定所その他の職業リハビリテ ーションの措置を実施する機関,教育機関その関機関との緊密な連携を図りつつ,相談 支援を当該障害者等の意向,適性,障害の特性その他の事情に応じ,常に障害者等の立 場に立って効果的に行うように努めなければならない」と明記されている。
近年の海外における本人意思決定支援の動向として,イギリスにおける成年後見制度 の根幹をなす基本法「Mental Capacity act 2005 and Mental Capacity act 2005 Code of
Practice」(2005
年意思決定能力法及び2005
年意思決定能力法行動指針)が注目されている(山口
2015)。山口(2015)によれば,この法律の原則が示していることは,本人
には能力があるという前提に立ち,本人が決定に関与できるよう支援をする姿勢が意思 決定支援であるとしている。また,木口(2015)は,2006年に国連の「障害者の権利 に関する条約」が採択されて以降の国内外の「Supported Decision making」に関する議 論を紹介している。各国では,上記「障害者の権利に関する条約」12条1
項から3
項「1 締結国は,障害者が全ての場において法律の前に人として認められる権利を有する ことを再確認する。2 締結国は,障害者が生活のあらゆる側面において他の者との平 等を基礎として法的能力を共有することを認める。3 締結国は,その法的能力の行使 に当たって必要とする支援を利用する機会を提供するための適当な措置をとる」と矛盾 しない法律や計画を検討していることが報告されている。
知的障害者の消費者行動に対する支援においても,消費者行動における意思決定を実 践の場でどのように支援するかを検討することが求められるといえよう。そこで,本研 究は,地域生活における知的障害者の消費者行動に焦点をあて,消費者行動における意 思決定支援に対する支援者の意識を明らかにすることを目的とした。
2.研究方法
2-1.意思決定支援の概念と質問項目
CiNii
により「障害者」「意思決定」「支援」をキーワードとし,54件の文献が検索された。その文献を中心に関連図書を抽出し,意思決定支援に関する文献として以下の文 献を取り上げ,支援の概念を検討した。これをもとに質問項目を作成し,知的障害者関 係者のエキスパートレビューを受けアンケートを作成した。
知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識 32
菅(2010)の『イギリス成年後見制度にみる自立支援の法理−ベスト・インタレスト を追及する社会へ−』によれば,イギリスの成年後見制度の基本法である「Mental Ca-
pacity act 2005 and Mental Capacity act 2005 Code of Practice」(2005
年意思決定能力法及 び2005
年意思決定能力法行動指針)は,本人自身による決定を実現するような支援を 行うことを目的とした立法であるといわれている。この法律の1
条2
項から6
項におけ る5
原則(1)には,「たとえ本人の判断能力が不十分であっても,あくまで意思決定支援 による自己決定が原則であり,代行決定は例外とされている点である。意思決定支援に よる自己決定が困難な場合つまり原則1〜3
が適用できないときにはじめて原則4, 5
に 基づく代行決定が認められる」(山口2015)ことが示されている。言い換えると,意思
決定支援は本人自身による決定を実質的に保障することを前提として,他者が本人の決 定過程に関与せざるを得ない例外的状況における代行決定の「手続き的正当性」を徹底 的に追及するという構造をとることによって意思決定支援が実現されてい る(菅2012)。
上山ら(2010)の「成年後見制度の理念的再検討−イギリス・ドイツとの比較を踏ま えて−」によれば,ドイツ民法は,本人のための判断の客観性について,イギリス法ほ ど明確な手続的保障があるわけではない。しかし,成年後見の運用において,本人の主 観的価値をできる限り尊重し,その主体性(意思決定への本人の関与可能性)を最大限 に保障していこうとする姿勢については,イギリス法と共通するところが大きい。ここ では,法定後見人である世話人の権限行使に当たって,本人の意思を最大限に反映させ る機能を持つ義務(世話人の職務遂行基準となる義務)が,明文によって詳細に規定さ れていることが重要な意味を持つとされている。
友愛みどり園職員研究集団「重度知的障害のある人の意思決定支援について」によれ ば,次のように示されている。①どんなに(知的)障害の重い人も意思は存在し,個別 的・具体的場面においては意思決定ができる可能性がある。②日常生活における意思決 定場面を支援者が見出し,評価することにより本人が意識化し,意思決定意欲が高ま る。また,意思決定が楽しさ・生活の豊かさにつながるような場面を意識的に設定し,
経験を積んでもらう取り組みを行うことにより,「個別的・具体的場面」は広がり,意 思決定能力は高まる。③支援方法構築のキーワードとして,「分かりやすい情報提供」・
「選びやすい選択肢の提供」・「葛藤」・「間」・「見守る」等がある。「意思決定支援」は,
間違えると「意思決定を迫る」働きかけや「支援者の意図への誘導」となる。
上記文献から,知的障害者が生活のあらゆる場面で自ら意思決定し主体的に生活する ためには,「保護される存在である前に,意思をもった人格として尊重される」ことを 大前提として,支援する側の判断のみで支援を進めるのではなく,当事者の意思決定を 待ち,見守り,主体性を育てる支援や,その考えや価値観を広げていく支援が求められ
知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識 33
ることが導かれた。さらに,交渉力に格差がある消費者としての意思決定を保障するた めには,自らの利益を実現できるような意思決定支援の方法が求められる。その上で,
以下のように支援の概念を構成した。
① 当事者の意思決定意欲を高める支援(当事者の主体性を育てる支援)
② 当事者の新たな意思形成のために考えや価値観を広げていく支援
③ 当事者の意思決定を待ち,見守る支援
④ 当事者が示す行動の裏にある本当の願いをくみ取る支援
⑤ 当事者に被害が及ばないかを当事者と一緒に十分に検討する支援
以上の
5
つの概念を構成する質問項目の作成において,古谷・三谷(2004)による心 理学の知見から知的障害者の意思決定を促進するための要因として以下の点を参照し た。①評価基準(選好)の選択と重みづけへの支援であること,②選択肢の生成と評価 への支援であること,③自己決定に必要なスキル向上のための支援であること。これら の要因の具体的内容として,厚生省大臣官房障害保健福祉部(2000)の「障害者・児施 設のサービス共通評価基準」における「意見を表す機会がある」,「意向が反映されてい る」,「意向を尊重して決めている」といった表現や,嗜好・意向・意見を把握しようと しているかといった表現を取り入れた。さらに,「エンパワーメントの視点」が意思決 定に必要なスキル向上のために必要であること(古屋・三谷2004)を取り入れ,消費
者行動を想定した支援に関する質問項目を作成した。次いで,質問項目に関して知的障 害者関係者にエキスパートレビューを受け40
項目とした。それぞれの質問項目につい て,支援者に対して「とても必要だと思う」「まあ必要だと思う」「あまり必要だと思わ ない」「全く必要だと思わない」という4
件法で回答を求めた。2-2.調査方法
平成
26
年3
月1
日から3
月31
日の期間に,A市内の地域生活支援センターの相談 員を対象にアンケートを実施した。回収されたアンケートは,33名であり,そのうち の欠損値のない20
名のデータを対象にクラスター分析(ウォード法)で検討した。統 計解析ソフトはIBM SPSS Statistics 22
を使用した。共通している選択肢ほど類似度が 高くなり,クラスターを形成する。2-3.倫理的配慮
本調査の倫理的配慮にあたっては,調査票や調査方法,データの扱い方などについて は,同志社大学の倫理審査(申請番号
1373
地域生活における知的障害者消費行動の 意思決定支援に関する研究)により承認を得た。知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識 34
3.研究結果
3-1.対象者の基本属性
分析対象者
20
人の基本属性の分布は以下の表1
に示した。分析対象者20
人の性別 は,男性が8
人で,女性が12
人であった。年齢を見ると,40歳以上が14
人で全体の70% であった。最終学歴は大学が 13
人で全体の65% であった。社会福祉就業年数は,
10
年以上が全体の75% であった。専攻は社会福祉学が 7
人で,全体の35% であった。
有資格者は社会福祉士が
12
人で全体の60% であり,介護福祉士とヘルパー 1
級は8
人で
40% であり,20
人が社会福祉関係の有資格者であった。3-2.知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識
知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識に関する回答分布は表
2
に,クラスター分析の結果は図1
に,クラスター分析による知的障害者消費者行動意思 決定支援に対する支援者の意識は表3
に示した。表1 対象者の基本属性分布 (n=20)
性別 男性
女性
8人 12人
40%
60%
年齢 25歳以上30歳未満 30歳以上40歳未満 40歳以上50歳未満 50歳以上60歳未満 60歳以上65歳未満
1人 5人 10人 2人 2人
5%
25%
50%
10%
10%
最終学歴 高等学校
専門学校 大学 大学院
3人 3人 13人 1人
15%
15%
65%
5%
専攻 社会福祉学
幼児教育 教育学
その他(児童福祉・法学・国際他)
7人 1人 1人 11人
35%
5%
5%
55%
社会福祉就業年数 5年未満
5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
1人 4人 11人 4人
5%
20%
55%
20%
有資格者 社会福祉士
介護福祉士・ヘルパー1級他
12人 8人
60%
40%
知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識 35
表2知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識に関する回答分布単位人()内% 具体的な支援行動全く必要だ と思わないあまり必要だ と思わないまあ必要 だと思うとても必要 だと思う 問1 問2 問3 問4 問5 問6 問7 問8 問9 問10 問11 問12 問13 問14 問15 問16 問17 問18 問19 問20 問21 問22 問23 問24 問25 問26 問27 問28 問29 問30 問31 問32 問33 問34 問35 問36 問37 問38 問39 問40
問題の状況について,利用者に思いや考えを聞く。 問題の状況について,利用者に理解できるように話す。 利用者と,抱えている問題の中で緊急に解決すべきことを話し合う。 利用者と,抱えている問題の背景や原因を話し合う。 問題解決のために,消費者者センター,弁護士会等の関係機関と連携をする。 問題解決のために,利用者を説得する。 問題解決のために,利用者の家庭環境の改善を家族と話し合う。 今後問題が発生しないように利用者に説諭する。 今後問題が発生しないように利用者と対応を話し合う。 家計や小遣い,買い物などについて,利用者が自由に話すことができる場所を作る。 家計や小遣い,買い物などについて,図表を用いて利用者にわかりやすく話す。 利用者が購入したい品物,生活に必要な品物について利用者と一緒に考える。 利用者が購入したい品物,生活に必要な品物について,選択肢を図表等を用いて利用者に分かりやすく話す。 利用者が購入したい品物,生活に必要な品物について,利用者と長所短所を比較する。 利用者が購入したい品物,生活に必要な品物について,利用者のライスステージ(年齢,性別,収入等)に応じた品物や金額を話し合う。 利用者が購入したい品物,生活に必要な品物について,「あなたはどう考えるの」と問いかける。 利用者が購入したい品物,生活に必要な品物について,利用者が決めるプロセスを待つ。 利用者が品物を購入する店舗について,利用者と一緒に考える。 利用者が品物を購入する店舗について,図等を用いて利用者に選択肢を提供する。 利用者が品物を購入する店舗について,利用者と長所と短所を比較する。 利用者が品物を購入する店舗を決めるプロセスを待つ。 利用者が決めた品物や店舗について,他の物(代替案)はないか,利用者と一緒に考える。 利用者が決めた品物や店舗について,他の物(代替案)はないか,図表を用いて利用者にわかりやい情報を提供する。 利用者が決めた品物や店舗について,他の物(代替案)はないか,利用者が考えるプロセスを待つ。 利用者が理解できる範囲に応じて,お金の支払い方法を一緒に考える。 利用者がお金の支払い方法について,利用者が考えるプロセスを待つ。 利用者にお金の支払い方法を図表などを用いてわかりやすく伝える。 利用者に買い物に同行が必要な場合は,関係機関の協力やサービスを依頼する。 利用者の希望に応じて,購入する店舗に同行する。 利用者の思いどおりであったか,願いが表れているかについて利用者と振り返る。 利用者の思いどおりの品物や個数が買えたかを振り返る。 利用者の思いどおりでなかった場合は対応を利用者と一緒に考える。 利用者が小遣いの使い方や買い物に失敗した場合は,一緒に振り返る。 利用者が買い物に自信が深めたかどうかを一緒に話し合う。 利用者にこずかい帳をつけることを提案する。 利用者がつけているこずかい帳について,利用者と一緒に振り返る。 利用者と継続して関わる。 利用者の同意を得て,利用者が利用している機関や施設と利用者が抱えている問題の解決方法を協議する。 利用者の同意を得て,利用者と関係している人々(家族や近隣の人々)と,利用者が抱えている問題の解決方法を協議する。 利用者と消費に関する失敗や被害の予測について利用者が理解できるように話し合う。
0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 3(15.0) 2(10.0) 0(0.0) 4(20.0) 0(0.0) 0(0.0) 2(10.0) 1(5.0) 1(5.0) 1(5.0) 1(5.0) 1(5.0) 0(0.0) 2(10.0) 2(10.0) 2(10.0) 1(5.0) 1(5.0) 1(5.0) 1(5.0) 2(10.0) 2(10.0) 3(15.0) 3(15.0) 6(30.0) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 2(10.0) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0)
0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 1(5.0) 4(20.0) 7(35.0) 5(25.0) 4(20.0) 1(5.0) 1(5.0) 5(25.0) 2(10.0) 3(15.0) 2(10.0) 3(15.0) 4(20.0) 2(10.0) 2(10.0) 4(20.0) 5(25.0) 4(20.0) 4(20.0) 6(30.0) 4(20.0) 1(5.0) 2(10.0) 2(10.0) 1(5.0) 3(15.0) 4(20.0) 5(25.0) 4(20.0) 5(25.0) 4(20.0) 7(35.0) 8(40.0) 0(0.0) 0(0.0) 2(10.0) 2(10.0)
10(50.0) 8(40.0) 10(50.0) 10(50.0) 7(35.0) 10(50.0) 13(65.0) 10(50.0) 14(70.0) 12(60.0) 6(30.0) 11(55.0) 11(55.0) 12(60.0) 10(50.0) 9(45.0) 10(50.0) 13(65.0) 12(60.0) 11(55.0) 9(45.0) 13(65.0) 11(55.0) 10(50.0) 11(55.0) 9(45.0) 12(60.0) 11(55.0) 9(45.0) 13(65.0) 9(45.0) 9(45.0) 9(45.0) 10(50.0) 10(50.0) 9(45.0) 7(35.0) 9(45.0) 9(45.0) 8(40.0)
10(50.0) 12(60.0) 10(50.0) 9(45.0) 6(30.0) 1(5.0) 2(10.0) 2(10.0) 5(25.0) 7(35.0) 7(35.0) 6(30.0) 5(25.0) 5(25.0) 6(30.0) 6(30.0) 8(40.0) 3(15.0) 2(10.0) 2(10.0) 6(30.0) 2(10.0) 2(10.0) 5(25.0) 6(30.0) 7(35.0) 3(15.0) 5(25.0) 2(10.0) 3(15.0) 6(30.0) 7(35.0) 6(30.0) 4(20.0) 3(15.0) 3(15.0) 13(65.0) 11(55.0) 9(45.0) 10(50.0)
知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識 36
表3クラスター分析による知的障害者消費者行動意思決支援に対する支援者の意識 第1クラスター 問25 問26 問27 問29 問32 問33 問34 問35 問36
利用者が理解できる範囲に応じて,お金の支払い方法を一緒に考える。 利用者がお金の支払い方法について,利用者が考えるプロセスを待つ。 利用者にお金の支払い方法を図表などを用いてわかりやすく伝える。 利用者の希望に応じて,購入する店舗に同行する。 利用者の思いどおりでなかった場合は対応を利用者と一緒に考える。 利用者が小遣いの使い方や買い物に失敗した場合は,一緒に振り返る。 利用者が買い物に自信が深めたかどうかを一緒に話し合う。 利用者にこずかい帳をつけることを提案する。 利用者がつけているこづかい帳について,利用者と一緒に振り返る。 第2クラスター 問6 問7 問8 問9 問10 問11 問12 問13 問14 問15 問16 問17 問18 問19 問20 問21 問22 問23 問24 問28 問30 問31
問題解決のために,利用者を説得する。 問題解決のために,利用者の家庭環境の改善を家族と話し合う。 今後問題が発生しないように利用者に説諭する。 今後問題が発生しないように利用者と対応を話し合う。 家計や小遣い,買い物などについて,利用者が自由に話すことができる場所を作る。 家計や小遣い,買い物などについて,図表を用いて利用者にわかりやすく話す。 利用者が購入したい品物,生活に必要な品物について利用者と一緒に考える。 利用者が購入したい品物,生活に必要な品物について,選択肢を図表等を用いて利用者に分かりやすく話す。 利用者が購入したい品物,生活に必要な品物について,利用者と長所短所を比較する。 利用者が購入したい品物,生活に必要な品物について,利用者のライスステージ(年齢,性別,収入等)に応じた品物や金額を話し合う。 利用者が購入したい品物,生活に必要な品物について,「あなたはどう考えるの」と問いかける。 利用者が購入したい品物,生活に必要な品物について,利用者が決めるプロセスを待つ。 利用者が品物を購入する店舗について,利用者と一緒に考える。 利用者が品物を購入する店舗について,図等を用いて利用者に選択肢を提供する。 利用者が品物を購入する店舗について,利用者と長所と短所を比較する。 利用者が品物を購入する店舗を決めるプロセスを待つ。 利用者が決めた品物や店舗について,他の物(代替案)はないか,利用者と一緒に考える。 利用者が決めた品物や店舗について,他の物(代替案)はないか,図表を用いて利用者にわかりやい情報を提供する。 利用者が決めた品物や店舗について,他の物(代替案)はないか,利用者が考えるプロセスを待つ。 利用者に買い物に同行が必要な場合は,関係機関の協力やサービスを依頼する。 利用者の思いどおりであったか,願いが表れているかについて利用者と振り返る。 利用者の思いどおりの品物や個数が買えたかを振り返る。 第3クラスター 問1 問2 問3 問4 問5 問37 問38 問39 問40 問題の状況について,利用者に思いや考えを聞く。 問題の状況について,利用者に理解できるように話す。 利用者と,抱えている問題の中で緊急に解決すべきことを話し合う。 利用者と,抱えている問題の背景や原因を話し合う 問題解決のために,消費者センター,弁護士会等の関係機関と連携をする。 利用者と継続して関わる。 利用者の同意を得て,利用者が利用している機関や施設と利用者が抱えている問題の解決方法を協議する。 利用者の同意を得て,利用者と関係している人々(家族や近隣の人々)と,利用者が抱えている問題の解決方法を協議する。 利用者と消費に関する失敗や被害の予測について利用者が理解できるように話し合う。
知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識 37
4.考 察
本研究は,地域生活における知的障害者の消費者行動に焦点をあて,消費者行動にお ける意思決定支援に対する支援者の意識を明らかにすることを目的として調査を行っ た。クラスター分析により,多くの回答者が共通して回答している選択肢ほど類似度が 高くなり,クラスターに集まる。回答した支援者の意識がクラスターを形成することか ら,その特徴が表れてきた。分析の結果,地域生活支援センター相談員
20
名の知的障 害者消費行動意思決定支援に対する意識は3
つのクラスターに分類されることが適切で あると判断した。集まった選択肢を解釈し,第1
クラスターは,「消費者行動を共有す る意識」,第2
クラスターは,「消費者利益を目指す意識」,第3
クラスターは,「消費者 行動における危機への問題解決に対する意識」と命名した。第
1
クラスターを形成した質問項目は,「利用者が理解できる範囲に応じて,お金の 支払い方法を一緒に考える」「利用者がお金の支払い方法について,利用者が考えるプ ロセスを待つ」「利用者の希望に応じて,購入する店舗に同行する」「利用者が買い物に 自信が深めたかどうかを一緒に話し合う」「利用者にこずかい帳をつけることを提案す る」「利用者がつけているこづかい帳について,利用者と一緒に振り返る」等である。これらの中の「一緒に考える」「考えるプロセスを待つ」「同行する」「一緒に振り返る」
「一緒に話し合う」「提案する」等は,消費者行動意思決定支援において,支援者が利用 者の考え方を理解し共有しようとしていることを示すものであり,「消費者行動を共有 する意識」と命名した。これらは,本研究において先行研究から抽出した概念である
図1 ward法を使用するデンドログラム 知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識 38
「当事者の意思決定を待ち,見守る支援」,「当事者が示す行動の裏にある本当の願いを くみ取る支援」の消費者行動を想定した質問項目に当たる。また,與那嶺ら(2009 a)
による知的障害者の支援環境の因子分析の結果において,「本人の意思の尊重」と命名 された概念は,「本人と話し合いながらの目標・目的の作成」「本人の抱く将来の思いを 基にした計画作成」「新しい入居者の決定に対する意見提示の奨励」という行動が項目 として示されている。與那嶺らの「本人との話し合い」は本研究の「話し合い」に,
「計画作成」は「提案する」に,「意見提示の奨励」は「利用者が考えるプロセスを待 つ」にそれぞれ類似している。
第
2
クラスターを形成した質問項目は,「家計や小遣い,買い物などについて,利用 者が自由に話すことができる場所を作る」「図表を用いて利用者にわかりやすく話す」「利用者が購入したい品物,生活に必要な品物について,選択肢を図表等を用いて利用 者に分かりやすく話す」「利用者が品物を購入する店舗について図等を用いて利用者に 選択肢を提供する」「利用者に買い物に同行が必要な場合は,関係機関の協力やサービ スを依頼する」「利用者の思いどおりであったか,願いが表れているかについて利用者 と振り返る」「問題解決のために,利用者の家庭環境の改善を家族と話し合う」「今後問 題が発生しないように利用者と対応を話し合う」等である。これらの質問項目は,購入 する商品の選択や購入方法,購入後の振り返り,さらに問題が発生した場合を含めて,
消費者行動のプロセス(広瀬
2008)に沿った意思決定支援に関する質問項目がクラス
ターを形成した。穂積ら(2000)による「消費者利益」に関する研究によれば,「安全 性,良品質,適正な価格,多様な選択肢,十分な情報,十分な供給」のような消費者に とって直接的な利益とともに,「環境改善や省資源」のような間接的な利益があると指 摘されている。知的障害者の消費者行動において,支援者らは,利用者にわかりやすい 情報提供や適切な商品購入等の消費者利益を目指す支援をしようとすることを示してい ると解釈され,第2
クラスターは「消費者利益を目指す意識」と命名した。これらの質 問項目は,消費者行動支援を想定して項目を作成したが,先行研究から抽出した5
つの 概念の中の「当事者の意思決定意欲を高める支援(当事者の主体性を育てる支援)」「当 事者の新たな意思形成のために考えや価値観を広げていく支援」にあたる。古谷ら(2004)の研究においても,「選択肢の提供」「情報理解への支援」は「自己決定・自己 選択の尊重」の項目として示されている。
第
3
クラスターを形成した質問項目は,「問題の状況について,利用者に思いや考え を聞く」「問題の状況について,利用者に理解できるように話す」「利用者と,抱えてい る問題の中で緊急に解決すべきことを話し合う」「利用者と,抱えている問題の背景や 原因を話し合う」「問題解決のために,消費者センター,弁護士会等の関係機関と連携 をする」「利用者と継続して関わる」「利用者の同意を得て,利用者が利用している機関知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識 39
や施設と利用者が抱えている問題の解決方法を協議する」「利用者の同意を得て,利用 者と関係している人々(家族や近隣の人々)と,利用者が抱えている問題の解決方法を 協議する」「利用者と消費に関する失敗や被害の予測について利用者が理解できるよう に話し合う」等である。これらの質問項目は,消費者行動における商品の選択から購入 後のプロセスにおいて直面した危機に対して,知的障害者の思いや考えを聞き,問題や 解決方法を話し合い,関係機関と連携し問題解決を目指すことが示され,「消費者行動 における危機への問題解決に対する意識」と命名した。「判断力が不十分な消費者に係 る契約トラブル」(2008)で示されているように,消費者行動において知的障害者が問 題を抱えることがある。その問題に対して,法的対応が求められる場合,消費者センタ ーへの相談で解決する場合,あるいは,今後の対応を考えることで解決する場合など多 様な状況が想定されるが,まず必要とされることは,身近な支援者への相談であると考 えられる。そこでは,この第
3
クラスターに示された質問項目が適切であると考えられ る。また,これらの質問項目は,先行研究から抽出した概念のうち,「当事者が示す行 動の裏にある本当の願いをくみ取る支援」「当事者に被害が及ばないかを当事者と一緒 に十分に検討する支援」にあたる。以上,先行研究から抽出された概念に基づき作成した質問項目は,消費者行動におけ る意思決定支援に焦点を当てて解釈するならば上記
3
つのクラスターが形成された。こ れら「消費者行動を共有する意識」「消費者利益を目指す意識」「消費者行動における危 機への問題解決に対する意識」が見出されたことは,支援者が,実践の場で,利用者の 状況に応じた意思決定支援を意識していることが示唆される。言い換えるならば,支援 者は,利用者の消費者行動における利用者のニーズを見出し,意思決定支援を行ってい ると解釈される。これらの社会的背景には,2006年に国連の「障害者の権利に関する条約」が採択さ れたことや,日本が
2014
年1
月に批准書を国連に寄託したことがあげられる。2013年 から施行された障害者総合支援法は,指定障害者福祉サービス事業所や指定相談事業所 等に対して,障害者等の意思決定の支援に配慮することを責務として定めている。2016 年4
月に施行された障害者差別解消法においても福祉の専門知識および技術をもって福 祉サービスを提供する事業者に対し,高い意識や行動規範をもって差別を解消するため の相談援助を行うことが求められている。実践の場における支援者の意識を構築している要因として,利用者の消費者行動にお ける傾向,実践における支援者の経験知や支援に対する理念,利用者と支援者の関係性 が考えられる。地域において知的障害者が生活するにあたっては,収入に対する支出の 振り分けや商品の購入,使用,家計管理などの日常生活支援が必要となり,利用者と支 援者は日常生活支援を通して,信頼関係を構築し,利用者のニーズを見出し,意思決定
知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識 40
支援を行っていると考えられる。
これらの結果は,山口(2015)「成年後見制度における意思決定支援の理念を基盤に したガイドラインの検討−イギリス
2005
年意思決定支援能力法と社会福祉後見人によ る実践事例を中心に−」によるソーシャルワークの視点から意思決定支援のためのガイ ドラインと矛盾するものではない。山口は以下のガイドラインの項目を作成している。①本人の意思の持続性・不変性(回数・確認方法)を把握する。②本人の性格,生活 史,価値観,生活に係るその他の情報を得る。③本人の回復可能性とその際の意思を想 定する。④本人を交えたカンファレンスで本人の意思を定期的あるいは必要に応じ確認 する。⑤本人とのかかわりのある機関や他の専門職の見解を確認する。⑥本人の意思と 本人の保護が対立する場合には,試行,折衷的選択肢の可能性を検討する。⑦親族を含 む家族,友人,知人等本人に関わっている人物の意向を確認する。但し,本人の意向と 混同しないよう心掛ける。⑧本人の決定に対する生命の危険性,社会通念上の妥当性を 検討する。⑨本人の生命身体に対する危険や重大な不利益が生じる場合はそのことが,
できる限り本人に伝わるよう働きかけ,本人の意思化を促す。⑩最終決定において本人 後見人双方に予測されるリスクを確認し可能な限りその対策をたてる。これらは,山口 による意思決定支援の理念に基づいた成年後見制度における被成年後見人の身上監護に 関するガイドラインである。被成年後見人の意思の確認が困難である場合や被成年後見 人の生命の危険性,社会通念上の妥当性が問題となる場合において,最適な決定を目指 してどのようなプロセスを経ることが必要とされるかが示されている。
本研究においても,利用者の生活支援の実践の場において,利用者の意思の尊重と利 用者の保護が対立する場合も想定される。利用者の生活支援の実践の場においては,利 用者を中心とした話し合いの中で,問題点を検討し,利用者のニーズを見出し,利用者 にとって最善の利益について,情報の共有し,利用者の意思決定を支援するプロセスが 重要である。木口(2015)による報告によれば,カナダ,マニトバ州にある金銭管理や 介助者の選択や雇用を行う事業所における「Supported Decision making」の理念は,「・
本人を決定の中心におく。・(サポートネットワークは)個人を支援するために選ばれ ている。・決定はプロセスであって結果ではない。・決定する権利は障害によって制限 されるものではなく,人権に基づくものである。・(サポートネットワークは)人々が 目標を達成することを助ける義務をもつ。・支援を受けた決定は信頼関係の上になりた つ。・『完全な選択や答え』があるわけではない。・たとえ決定に賛成できなくても,
本人が独自の決定に達するプロセスを支援する」と示されている。さらに,失敗や間違 いに直面し,合理的ではない決定をしたときこそ,支援者は支援を張り巡らし,本人の 学びや成長につなげていくことが重要であり,本人の決める権利が尊重されている方法 で決定に至ったかが問題であるとされている。
知的障害者消費者行動意思決定支援に対する支援者の意識 41
5.本研究の限界と今後の課題
本研究は,知的障害者の消費者行動に焦点を絞り,消費者行動における意思決定支援 にあたって,実践の場で支援者がどのような意識をもっているかについて分析した。分 析の結果,3つのクラスターが見出され,支援者が利用者の消費者行動におけるニーズ に応じた意思決定支援を意識していることが示唆された。本研究の対象は,実践の場に おける支援者であるため,日本の権利擁護の法制度である成年後見制度と意思決定支援 が併存している状況における意識であると考えられる。日本の代行決定を認める成年後 見制度と,自己決定権を認め,意思決定支援を権利として保障する「障害者の権利に関 する条約」の整合性が今後,議論されることによって,意識も変化すると考えられる。
また,意思決定の場面は多様であり,共通理念が提示されている場合でも,さまざまな 場面における実践モデルや事例が示され検討される必要がある。消費者行動の場面にお ける今後の課題として,具体的支援が実施される意思決定支援のプロセスに着目し,利 用者と支援者の信頼関係の構築という質的側面を明らかにし,利用者の意思決定に対す る満足感の向上と生活の安定に貢献することが求められる。
注
⑴ 〈2005年意思決定能力法 5大原則〉
第1に,人は,意思決定能力を喪失しているという確固たる証拠がない限り,意思決定能力があると 推定されなければならない(第1原則:意思決定能力存在の推定の原則)。(Section 1(2)of the Men- tal Capacity Act 2005)。
第2に,人は,自ら意思決定を行うべく可能な限りの支援を受けた上で,それらが功を奏しなかった 場合のみ,意思決定ができないと法的に評価される(第2原則:エンパワーメントの原則)。(Section 1(3)of the Mental Capacity Act 2005)。
第3に,客観的には不合理にみえる意思決定を行ったということだけで,本人には意思決定能力がな いと判断されることはない(第3原則)。(Section 1(4)of the Mental Capacity Act 2005)。
第4に,意思決定能力がないと法的に評価された本人に代わって行為をなし,あるいは,意思決定す るにあたっては,本人のベスト・インタレストに適うように行わなければならない(第4原則:ベス ト・インタレストの原則)(Section 1(5)of the Mental Capacity Act 2005)。
第5に,さらに,そうした行為や意思決定をなすにあたっては,本人の権利や行動の自由を制限する 程度がより少なくてすむような選択肢が他にないか,よく考えなければならない(第5原則:必要最 小限の介入の原則)(Section 1(6)of the Mental Capacity Act 2005)。
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