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根の呼吸および吸水に関する環境生理学的研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

根の呼吸および吸水に関する環境生理学的研究

吉田, 敏

https://doi.org/10.11501/3078962

出版情報:Kyushu University, 1994, 博士(農学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)

唱F戸

第5章 根の呼吸への基質の転流およびO2の給送

根の呼吸に は光合成固定炭素が基質として用い られる . したが っ て , 光合成および光合成固定炭

素の根べの転流の特性が根の呼吸に強く関与する ( Huck e t α1., 1962; Osman, 1971; Kouchi et α1., 1985; Meharg and Killham, 1988). まプこ,

根の呼吸に は , 通常根部環境のO2が用いられるが,

特定の娘部環境条件下では , 地上部環境のO2も葉 をとおして根へ輸送されることが考えられている

(Greenwood, 1967, Jensen et α1., 1967; Green- wood and Goodman, 1971; Webb and Armstrong,

工983; Erdmann and Wiedenroth, 1988; Thomson and Armstrong, 1990; Thomson et α1., 1990).

本章では , 安定同位体標識化合物( 1 3 CO 2およ び 1802)を用いて, 光合成固定炭素の根の呼吸へ

の転流の動態および地上部環境のO2の根の呼吸へ

の輸送を解析するとともに , 根の吸水特性との関 連に ついて調べた(Yoshida and Eguchi, 1992,

1994) .

(3)

,.,...-

5 - 1 気密チ ャ ンパにおける空気制御シ ス テ ム

地上 部から根の呼吸への光合成固定炭素の転流 およびO2の輸送を調べるために 気密にした地上 部環境に 13C02および 1�02を加-え 根の呼吸への

輸送を解析する シ ス テ ムを開発した . Fig.29に , 計視IJと制御の シ ス テ ムの模式図を示す . 地上部環 境に は , アクリル製の気密チ ャ ン バ( 20 丸〉 を用 い , チ ャ ンパ内の空気制御をおこな っ た . すなわ ち空気調和機において冷却除湿および再熱を操作 し , 空気の循環流量を0.2見 S-lとして気温およ

び相対湿度を制御した . この場合の空気制御精度 は気温:t20Cおよび相対湿度:t5%RHであ っ た . チ ャ

ンパ内空気のCO2濃度を前述(第2章〉 のポテ ン シ オ メ トリCO2セ ン サで計測し , 葉の光合成によ り吸収されたCO2を補給してCO2濃度を常に300

ppm v/v以上に維持した . 光合成固定炭素の根の 呼吸への転流の動態を調べる場合には, チ ャ ンパ 内に 13C02を加えた . また, 地上部環境のO2の根 の呼吸への輸送を調べる場合には , チ ャ ンパ内に

(4)

m (Q

Rubber stopper

Stainless steel pot

Water temperature controller

Airflow

Controlled water

+ーCOJ,"COJ

|

C P U

S lable Isotope Analyzing System

Figure 29. Schematic diagram 01 instrumentation and environment control system in ai吋ight chamber equipped with the airtight hydroponics 10r analyses 01 respiration and water uptake in the intact root 01 a plant, and gas chromatograph-mass spectrometric system 10r 13C02 and 1802 tracing.

(5)

、v

1802 (混合比1802:N2=1:4)を加えた . さらに

チ ャ ン バ内のO2およびN2の混合比を変化させ , 低 O2濃度 1% v/vおよび高O2濃度 21% v/vを設定し た . この混合力、、 スを加える場合には, 排気弁を開

放してチ-ャ ン パ内の気圧を大気圧レ ベルに維持し た . 根部環境には前述(第2章〉 の気密水耕装置 を用い , 根温を制御した . 本シ ス テ ムにおいて植 物を栽植する場合 ゴム栓およびシ リ コ ン グリ ス を用いて茎の基部を固定することにより , 地上部 環境と根部環境を完全に遮断した . 前述(第2章) と同様に, 根の吸71<.速度, 02吸収速度およびCO2

放出速度を計測した . 本シ ス テ ムを前述(第2章〉

の人工照明グロ ー ス キ ャ ビネ ッ ト (Ma tsui e t α1 . 1971)内に設置した . Fig.30に , その外観 写真を示す. 葉への光照射には白色蛍光灯を用い , 光強度をPPPD 300μmol m-2s-1とした .

地上部環境, 根部環境および植物体における 13Cおよび180の分析には, ガス ク ロ マトグラ フ ー

質量分析計( GCMS-QP1000EX;試料前処理装置 , SUSカ ラ ムおよび充填剤 PORAPAK type R 50-80

(6)

.",...-

Figure 30. Photograph 01 the instrumentation and environment control system (shown in Fig. 29) installed in a growth cabinet.

(7)

..",-

mesh, 島津製作所〉を用いた . 地上部環境( 空気)

および根部環境(培養液)のサ ン プリ ン グは , 空気 制御気密チ ャ ン バおよび水耕ポ ッ トに設けた隔膜 をとおしてマイク ロ シ リ ン ジでおこな っ た . Fig.

31に , 空気(a)および培養液(b) のサ ン プリ ン グ の状況写真を示す .

つU

Fb 13CO:zト レーシ ングによる光合成固定炭

素の根への転流の動態解析

光合成固定炭素の根の呼吸への転流の動態を調 べるために 光照射下において葉に 13C02を与え , 根の呼吸により根部環境(培養液〉 に放出される

13C02を計測した . 植物材料としては, 気温230C および相対湿度70%RHの フ ァ イトト ロ ンガラ ス室 で生育させた3葉期キ ュ ウリ植物を用いた . 地上 部環境は気温250C, 相対湿度50%RHとし, PPPD

200 μmol m-2s-1で葉に光照射をおこな った . 根 部環境は根温250Cとした . ここでは根部環境を好 気的条件とするために, 02ガスを ノマ フ リ ン グした

(8)

.."...

Figure 31. Photographs 01 sampling 01 air (a) and nutrient solution (b) 10r analyses 01 stable isotopes in aerial and root environments by using a microsyringe through the septum.

(9)

培養液を用いて溶存O2濃度の初期値を約0.5 mMと

した. 地上部環境および根部環境の 13C02を調べ

るために , 空気および培養液を1時間間隔で 50 μ丸採取し , ガ ス ク ロ マトグラ フ ー質量分析計を用 いて 12C02および13C02の濃度を経時的に計測し,

13C同位体比( 13C isotopic abundance, [13C02 J j{[12C02J+[13C02J})を求めた. Fig.32に, 気密

チ ャ ン パ内に13C02を加えた場合の地上部環境の 気温, 相対湿度 (a), O2濃度, CO2濃度([12C02J +[13C02J)および13C同位体比 (b) を示す . 地上

部環境の気温は24"'260C , 湿度は45"'55%RHに維持 された( Fig.32a). また, 光照射下では光合成に よりO2濃度は徐々 に増加したが, 13C02の供給に

よりCO2濃度は300"'500 ppm vjvの範囲に維持され,

その 13C同位体比は80"'90%とな っ た( Fi g. 32b).

Fig.33に, 地上部環境における13C同位体比を80

"'90%として葉へ光照射した場合の , 根部環境(培 養液)における溶存CO2濃度, 溶存13C02濃度(a) およびその 13C同位体比(b)を示す . 根部環境の 溶存C02�濃度および溶存13C02濃度は根の呼吸によ

(10)

た'-....

Air temperature

a

100

Relative

hU:

ミテ

250

エ=

ω

ω 30

ρ20

0

包10

E ω

..._

{N ( )コ' 一 工NG O U-}

」一ccニポ)ccz

1 2

{N0 0 門-}

100

A ... ...

... ・・・・・・・…. ... .日.

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l恰sotω仰tぬ切O∞pica油似b臥L川an [ 02汁]

50

['tez ] + ['t� ]

ハU

ハU ハU

ハU

0

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(ぶ〉E己巳)CC一首bcoocoQNOO-同

一』O〈

A A A A

A A A

A A

A

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A

ハu

nu

ハU

3

2

1

(〉\〉ポ)CO一沼」さωOCOUNO一旦」ω〈

。 10

5 Time

、、‘,a'' hH ,,,E1、

Figure 32. Aerial environmental conditions during the time of the 13C02 tracing. a, time course patterns of air temperature and relative humidity; b, time course patterns of aerial 02 concentration [02], aerial C02 concentration ([12C02] + [13C02] ),

13C isotopic abundance ( [13C02] /川町02]+ [13C02]}) of and

aerial C02・

(11)

0.8

可r--

.く C��]+(t02]

a

C 0

� 0.6

C ω 仁JC

8 0.4

0 0

-g 0.2

CJ) O

00

CJ)

b

40

A

nu nU 2

1

cozコ一oωHCO一」]コCC一

{N() コ 〉}+[ NO OU一} ( ポ )OOFX いド 11 3 {NOO L

30

fat- hH 10

5 Time

。 。

Figure 33. Dynamic patterns of

C02 ([12C02J+[13C02])

and

13C02

concentrations (a)

I

and

13C

isotopic abundances (b) of dissolved

C02

in nutrient solution in the case of turning on the with a PPFD of 200μmol m-

2

S-1 in the continuous

13C02

aerial environment in aiパight chamber. The to

light supply

with fitted plotted

are h curves obtained by cubic spline function.

of 1 interval at an

values measured

(12)

り増加した ( Fig.33a). 光照射開始時における 13C同位体比は約1%であり, 天然の 13C同位体比

(natural isotopic abundance; 1.11%, Ehle­

ringer and Rundel, 1988)と同等であ っ たが,

光照射開始後2時間で増-加を始め 13時間で37%

に達した ( Fig.33b). このように, 光合成固定炭 素が根へ転流され 根の呼吸により 13C02として 放出されたことが明瞭に示された . さらに, 光照 射下で地上部環境に 13C02を ス テ ッ プ状に加えて,

根部環境の 13C同位体比を調べた . Fig.34に, 実 験開始3時間後から空気制御気密チ ャ ン バ内に

13C02を3時間加えた場合の地上部環境( a)およ び根部環境(b)の13C同位体比を示す . 気密チ ャ

ン パ内に13C02を加えることにより1時間以内に 地上部環境の13C同位体比が80%以上に増加したが,

3時間後に天然、 の同位体比のCO2を加えることに より1時間で13C同位体比が工2%に減少した( Fig.

34a) . 根部環境の13C同位体比の初期値は約1%で あ ったが, 地上部環境ヘ 13C02を加えた2時間後 から13C同位体比が増加して, 1.3%に達した( Fig.

(13)

13C02 supply

a

100

円F] {NOO c いドl 」一mc二ポ)00←× {N ( )コ〉一+一 O OU-} ぱ

50

。 20

b

A

nu cozコ一Oの】亡。一」】コCC一 { N ()コ 3 ・)+- NOOU-} ( ポ )OOZ

ドドー と

{NOO L

5 10 Time

。 。

Figure 34. Dynamic patterns of 13C isotopic abundance (a) of aerial C02 and 13C isotopic abundance (b) of dissolved C02 in nutrient solution in the case of stepwise 13C02 supply to aerial in aiパight chamber in the continuous light with a PPFD of 200μmol m・2 S・1 The measured values at an interval of 1 h are plotted with fitted curves obtained

、11J』H fet-

environment

spline by cubic

function.

(14)

34b) . 一般に , 光合成固定炭素が根の呼吸基質と

して用いられるまでの転流において約1時間以上 の時間遅れが認められているが , こ の遅れは植物 の種および生育ス テー ジによ っ て異なる ( f\1c dou­

gall, 1970; Minchin and McNaughton, 1984;

Kouchi et α1., 1986). 本実験の結果から, 3葉 期キ ュ ウリ植物においては , 光合成固定炭素が根 に転流されて呼吸に用いられるまでに約2時間が

必要であることが証明された .

5 - 3 O:z欠乏根部環境における根の呼吸および

吸水の動態

植物個体における根の呼吸および吸水の特性を 把握するために, 気密7}<耕装置において根部環境

(培養液) の溶存02ì濃度, 溶存C02ì濃度, 根の呼 吸速度および吸水速度を5日間計測した . 植物材

料としては, 気温230Cおよび相対湿度70%RHの フ ァ イトト ロ ンガラ ス室で生育させた3葉期キ ュ ウ リ植物を用いた . 地上部環境は, 気温250C , 相対

(15)

...-

湿度70%RH (飽差6.9 g m-3 ), 12時間日長( PPFD 300 μmol m-2sーっ とし , 02およびCO2の濃度は大

気レ ベルとした . 根部環境は , 根温250C , 溶存O2 濃度の初期値をo . 24 mM (空気飽和濃度〉とした .

Fig.35に , 根部環境の溶存O2濃度, 溶存CO2濃度 (a) , 根のCO2放出速度(b)および吸水速度(c )の

経時的変化を示す . 根部環境の溶存O2濃度は根の

呼吸により10時間で0.24凶刈から0.003凶刈に減少 したが, 溶存CO2濃度は溶存O2濃度が減少した後 も増加し, 5 日間で4.8凶河に達した(Fig.35a) . 根のCO2放出速度は溶存O2濃度が減少する過程で

一時的に減少したが, その後は根部環境がO2欠乏 条件下にあるにもかかわらずCO2放出速度は初期 値と同レ ベルに増加し, 3日間0.1 μmol g-1s-1

以上に維持され, その後は徐々に減少した ( Fig.

35b). Girton (1979)は, 根部環境の溶存O2濃度

の低下にともない, トウモ ロ コ シ ( 2eα mαys L.) およびイネ ( Oryzα sαt i vα L. ) の単離根におけ るCO2放出速度が減少することを明らかにしてい る. 本実験においては, 植物個体では根部環境が

(16)

(EE}COZE-cmwυcoυ刷00刀ω〉一oωω一口 戸、 Dar1< Llght

.- -

E 0.25

c o

完0.20 F:

C I

ω 1

g 0.15

0 u

δ0.10

てコ

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cf) cf)

。 _0.15

ω 0') 0 ê 0.10

0 ω

包0.05

ω ω

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圃圃 5 圃圃

4

2 3 COz

C

10

RJW

(hbmE-2E22巳コ』@百〉〉

。。 2 3 4 5

(day)

patterns 01 dissolved 02 and C02 (a) in aiパight hydroponics, C02 release rate (b)

root dry weight and water uptake rate (c) per root dry weight in the intact root 01 a plant at an air temperature 01 250C,

a relative humidity 01 70%RH, and a root temperature 01 250C.

was lighted with a PPFO 01 300μmol m・2 S-1 in 01 12 h. The means 01 measured

a values in 3 plants Time

course Time

35.

concentrations per

The plant photoperiod are plotted.

Figure

(17)

O2欠乏条件下であ っ ても根がCO2を放出し続ける ことが明らかとな っ た. また , 根の吸水速度は5

日間にわたり葉への光照射に同調して変動し , 暗 黒においても2 mg g-ls-lの吸水速度が認められ プこ ( Fig. 35c). Everard and Drew (1987, 1989) はト ウモ ロ コ シ ( Zeα mαys L.)およびヒ マ ワ リ

( H e 1 iαηthus αηηuus L.)の単離根系の吸水速度 がO2欠乏条件下で減少することを明らかにしてい る . まプこ, Zhang and Tyerman (1991)は , コ ムギ

( T r i t i c um αestivum L.)の単離根の透7]<.係数 ( hydrauli c conducti vi ty)がO2欠乏条件下で減

少することを明らかにしている. 本実験では , 植 物個体における根の吸水速度に対する根部環境の O2欠乏の作用は明瞭ではなか った . しかし , 光照 射下における吸水速度は溶存CO2濃度の増加にと もな って徐々 に減少し , 5日自には初期値の1/2

とな った . 溶存CO2濃度が増加した場合でも培養 液のpHは5.4"'6.1の範囲にあり, 根の吸水速度の 経時的な減衰は , 高濃度のCO2による根の障害に 由来することも推察される( Chang and Loomi s

(18)

1945; Jacobson et α1., 1968; 北宅ら , 1984;

Nobel and Palt丘, 1989; Palta 日nd Nobel,

1989c). 以上のように , 植物個体では根部環境が

O2欠乏条件下であるにもかかわらず根の呼吸と吸 水における十分な活性が少なくとも4 日間維持さ

れた . このことから, 地上部環境のO2が葉をとお して根へ輸送されることにより根の呼吸が維持さ れたことが推測された .

5 - 4 1602ト レーシ ングによる地上部O2の根の 呼吸への輸送の解析

地上部環境から葉をとおした根の呼吸へのO2の 輸送を調べるために , 空気制御気密チ ャ ンパおよ び気密7}<耕装置を用いて, 根部環境を低溶存O2濃

度条件として地上部環境へ 1602を与え, 根の呼吸 へのト レー シ ングをおこな った . 植物材料として は , 気温230Cおよび相対湿度70%RHの フ ァ イトト

ロ ンガラ ス室で生育させた3葉期キ ュ ウリ植物を 用いた . 地上部環境(空気制御気密チ ャ ンパ〉 に

(19)

1802を加えて , 180同位体比(180 isotopic abun- dance, [1�02]/{[1602J+[1702]+[1802]})を73%

とした空気に葉を15時間暴露した . '--... '--... -r・、- ムヒノレ 之〉、 成によるO2の発生を抑制するために暗黒とし , 気 孔がある程度開いた状態を維持するとともに吸水 および蒸散を抑制するために, 気温を250C 相 対 湿度を約90%RH (飽差 2 . 3 g m-3)とした(Kitano

and Eguchi, 1989, 1992). 根部環境は, 根温25

C 低 溶 存 02ì濃度( 0.01 凶刈以下〉 とした 1802

による根の好気的呼吸は次式のように示される ( Fr i tz e t α1., 1958).

C6H1206+61802+6H20→ 6C02+12H2180 (11)

そ こで, ガス ク ロ マトグラ フ ー質量分析計を用い,

呼吸により生成された水( H2180)の分析をおこ な った . すなわち, 葉を1802に暴露した植物およ

び無処理の植物について, 器官別に組織を破砕し , 蒸留して得られる抽出水の 180同位体比( 180 isotopic abundance, [H2180]/{[H2160]+[H2170]

(20)

+[H21�O]})を計測した . 培養液に ついても同様 に 1�0同位体比を計測した . T乱ble 1に培養液, 根,

茎および葉における 1�0同位体比を示す . 葉を

1802に暴露した植物では, ネ艮, 茎および葉の 180 同位体比はそれぞれ 0.2090%, 0.2233% および

0.3380% であり, 天然、の 180同位体比( 0.2040%,

Ehleringer and Rundel, 1988) より大とな っ た . これに対して , 無処理の植物における根, 茎およ び葉の 180同位体比はそれぞれ0.2040%,0.2033%お よび0.2013%であり, それぞれの器官において

1802に暴露した植物と無処理植物との聞の差は1%

レ ベルで有意であ った . このことから, 葉に与え られた 1802が根, 茎および葉における呼吸に用い られたことが明らかとな った . ここで, 葉を 1802

に暴露した植物の根における 180同位体比は, 茎 および葉と比べて著しく小とな ったが, このこと は, 高湿度および暗-黒においてもわずかな根の吸

水が起こり , 根で生成されたH2180が希釈され,

その一部は蒸散流によ って地上部へ輸送された結 果と考えられる . 一方, 培養液における 180同位

(21)

Table 1. Distribution of 180 isotopic abundances of water in nutrient solution, roots, stem and leaves in 1802-treated and untreated plants. The leaves were exposed to 1802 (73% v/v of aerial 02) for 15 h in darkness at an air temperature of 250C, a relative humidity 01 90%RH and a root temperature of 250C. The means 01 measured values in 3 plants are listed with respective 95% confidence limits (in parentheses).

180 isotopic [H2180])く

abundances [H2160] + [H2170] -+ [H2180]

1802-treated Untreated

plants plants

Nutrient 0.2017 0.2027

solution (土0.0038) (+0.0057)

Roots 0.2090脅合 0.2040

(+0.0025) (+0.0025)

Stem 0.2233合合 0.2033

(+0.0089) (+0.0029)

Leaves 0.3380“ 0.2013

(土0.0456) (+0.0100)

Signi1icant difference (P<0.01) between 1802-treated and untreated plants.

(22)

体比の増加は認められなか っ た .

イネ ( Or y zα sαt i vα L. ) コ ム ヰご (Triticuηl αe s t i v um L.)およびト ウ モ ロ ( Zeα ηlαys L.)

では , 根部環境のO2欠乏条件下において生育させ た根の皮層に通気組織(aerenchyma)が発達する

(Drew et α1., 1979; Webb and Jackson, 1985;

Erdmann et α1., 1986). この通気組織は, 地上 部からO2欠乏条件下の根へのO2拡散の経路と考え

られている(Drew e t α1., 1985; Armstrong and Beckett, 1987). Fig. 36に, 低溶存O2濃度(0.04

"'0.13 mM) において生育させたキ ュ ウリ2次根の 横断面の走査電子顕微鏡写真を示す . キ ュ ウリ植 物では低溶存O2濃度で生育させた場合でも, 根の 皮層に通気組織の発達は認められなか っ た. しか し, 本実験において地上部環境に加えた1802が根

の呼吸に用いられてH2180が生成されたことから,

通気組織を形成しないキ ュ ウリ植物においても,

根部環境のO2欠乏条件下では地上部環境のO2が細 胞間隙をとおして輸送されて根の呼吸に供給され ることが実証された .

(23)

0.5 mm

Figure 36. Scanning electron micrograph of sectional view of the root grown in nonaerated nutrient solution ([02] = 0.04 -0.13 mM) for 18 days at an air temperature of 23uC and a relative humidity of 70%RH, where the samples were prepared from the

zone 15 cm from the root tip in the 2nd order root.

(24)

5 - 5 根の呼吸と吸水との関係

地上部環境の0:.:の輸送と恨の吸水特性との関連 を調べるために , 根部環境を低溶存O2濃度条件と し, 地上部環境を異 な る O2濃度と して植物個 体

根のCO2放出速度および吸水速度を計測した . 植 物材料としては , 気温230Cおよび相対湿度70%RH

の フ ァ イ ト ト ロ ン カ♂ ラ ス.室で生育させた3葉期キ

ュ ウリ植物を用いた. 地上部環境は , 気温250C,

相対湿度90%RH (飽差 2.3 g m-3), 暗黒として,

前述(第5章, 4節)のように, 光合成による葉 のO2放出を抑制するとともに , 暗黒下においても

気孔がある程度開いた状態を維持した . Fig.37に 示すように , 地上部環境にN2ガ スを加えて低O2濃 度1 % v/vとした場合(曲線1 ), 地上部環境に空

気を加えて高O2濃度21% v/vとした場合(曲線II ) および6時間低O2濃度とした後に ス テ ッ プ状に高 O2濃度とした場合(曲線m ) の3 の 条件を設定

した . また , 根部環境条件は, 根温250C, 低溶存 O2濃度(0.01 mM以下)とした .

(25)

L--ι!一一 一

E

---EB- --- ad--- ----E・ ・E・E・- --- --- --- --EE- --- --E--- -EE---

nU

2

(〉 \

〉ポ)CO一芯bcooCOONO一回こω〈

10

24 36 12

Time

,,,.‘‘、 -nH 、、.EE­

Figure 37. Time course patterns 01 aerial 02 concentration during the time 01 aerial 02 treatments at an air temperature

250C and a relative humidity 0190%RH in darkness. 1

[ 02] =1 % v/v; II, 21 % v/v; ITI, stepwise increase 1rom 1 to 21 % v/v at 6 h (arrow). The means 01 measured values in 3 times are plotted.

01 aerial

(26)

Fig.38に , 地上部環境の各O2濃度条件下におけ る根のCO2放出速度(a )および吸水速度(b )の径

時的変化を示す . 低O2濃度条件下では , CO2放出 速度の初期値は 0.11 μmol g-lS-lであ っ たが,

CO2放出速度は指数関数的に減少して24時間後に は0.01μmol g-ls-lとな っ た(Fig.38a, 曲線1 ).

根のCO2放出速度が0.01μmol g-ls-l以下となら ない ことは 根の嫌気的呼吸によるCO2放出(Fit-

ter and Hay, 1987), あるいは植物体からのCO2

拡散( Nobel, 1991) によるものと推測される.

地上部環境が高O2濃度の場合には, 根のCO2放出

速度は約12時間0.08 μmol g-ls-1以上に維持され,

その後は0.02μmol g-ls-lに減少した(Fig.38a,

曲線n ). このことから, 地上部環境のO2により 根の呼吸が維持されるが, 12時間以降は暗黒にお いて植物体内の呼吸基質が消費されたことが示唆 される(Waters et α1., 1989). さらに, 地上部 環境のO2濃度をス テ ッ プ状に増加させた植物では,

30分以内にCO2放出速度が指数関数的減少から増 加に転じて, 12時間ほぼ0.03μmol g-ls-l以上に

(27)

a にd

nU

FO nU

41

nu nu

nu

nu

nu

(Ftのτ。一oEュ)ω何回」ωωωω一ω」N00

b

0.5 (FU--mmE)OME笠mEコ」ωお〉〉

24 36

-HH ,,,.‘、

12 Time

Figure 38. Time course patterns 01 C02 release rate (a) and water uptake rate (b) per root dry weight in the intact root in an 02-de1icient nutrient solution at a root temperature 01 250C where the leaves were exposed to different aerial 02 air temperature 01 25"C and a relative

[ 02 ] = 1 % v/v; II,

to 21 % v/v at 6 h in 3

aerial 1,

1rom an

darkness.

stepwise at

humidity 01 90% in 21% v/v; m,

The concentrations

are plants values

Increase measured 01

円leans (arrow).

plotted.

(28)

維持され, その後は0.02 I1mol g-ls-lに減少した

( Fig.38a, 曲線田). 実験開始後12時間における 高O2濃度条件下および低O2濃度条件下でのCO2放 出速度の差は5%レ ベルで有意であ っ た . 以上のよ

うに, 根のCO2放出速度と地上部環境のO2濃度と の明瞭な関連が認められ, このことから, 前述

(第5章, 4節〉 の結果 すなわち根部環境がO2

欠乏条件下にある場合でも, 地上部環境のO2が葉 をとおして根に供給されることにより根の呼吸が

維持されることをさらに明確にした .

また , 地上部環境の各O2濃度条件下における根

の吸水速度に ついては 低O2濃度条件下において 根の呼吸が抑制された植物では 吸水速度は1時 間で0.3 mg g-ls-lに減少したが( Fig.38b, 曲線

1 ), 高O2濃度条件下において根の呼吸が十分維 持された植物では, 吸水速度は工2時間はほぼ0.6 mg g-ls-l以上であり, その後は減少した ( Fig.

38b, 曲線n ). 実験開始後12時間における , 高O2 濃度条件下および低O2濃度条件下での吸水速度の 差は5%レ ベルで有意であ った . 地上部環境のO2濃

(29)

度を ス テ ッ プ状に増加させた ことにより根の呼吸 が促進された植物では , 02濃度の増加後30分以内 に吸水速度が0.5 mg g-ls-lに増加し , 12時間ほ

ぼ0.4 mg g-ls-l 以上に維持された ( Fig.38b,

曲線皿) . 以上のように , 高湿度( 90%RH) および

条件 境のO2濃度条により の呼吸が維持される場合には根の吸水速度が増加

した . 一方 地上 部 環境の低O2濃度条件および呼 吸基質の消費により根の呼吸が抑制される場合に は根の吸水速度が減少した . このことから, 根の 呼吸と吸水の動態における平行性が明らかとな っ

前述〈第4章〉 のように, 長野 ・ 石田 (工984)

および長野ら (1993)は全根系の通水抵抗に占め る吸収抵抗の割合はダイズ(Glycine mαx L.)お よびヒ マワリ( He l iαnthus αηnuus L.)において 80rv85%であり トウモ ロ コ シ ( Zeα mαys L.)に おいて99%であることを明らかにしている . した

が っ て, 根の吸水の動態は主に根の吸収抵抗に支 配されており, この吸収抵抗は水の膜透過性に密

(30)

接に関連していると考えられる . このことから,

本実験の結果は 根部環境がO2欠乏条件下にある キ ュ ウ リ植物において 暗黒条件下の地上部環境 から葉をとおして根へ輸送されたO2が根の呼吸に 用いられることにより 膜透過性が維持されて根

の吸水が改善されることを示唆している .

(31)

第6章 綜合考察

本研究では , 根の基本的機能である呼吸および 吸水に対する環境の作用を明らかにすることを目 的として, 根の形態に対する溶存02ì濃度の作用,

根の呼吸および吸水に対する根温の作用, 根の呼 吸への基質の転流および地上部環境のO2と根の呼 吸との関連を調べた . すなわち, 根の呼吸および 吸水に対する環境の作用を解析するために, 気密 7]<耕装置において培養液の温度(根温)を制御し,

根のO2吸収速度 CO2放出速度および吸水速度を

オ ン ライ ンで計測した . また, 光合成および蒸散 をとおした根の呼吸および吸水に対する地上部環 境の作用が考えられることから, 人工照明グロ ー ス キ ャ ビネ ッ トおよび空気制御気密チ ャ ン パを用 いて地上部環境を制御した . その結果に基づき環 境生理学的観点から考察をおこなう.

7]<耕においては, 培養液の溶存02�濃度が植物の 生育に作用することが注目されている(Benjamin

and Greenway, 1979; Trought and Drew, 1980;

(32)

Atwell et α1., 1985; Barrett-Lennard et α1 . , 1988; Smit et α1., 1990). そこで, 根系の画像

解析によりキ ュ ウリ植物(Cucumi s sαtivus L.) の分岐根の 長さおよび分岐部位を数値化し , 根の

形態に対する培養液の溶存O2濃度の 作用特性を明 らかにした. すなわち, 高溶存O2濃度(空気飽和

レ ベル〉条件下と比べて, 低溶存O2濃度(0.03rv 0.13凶的条件下では2次根の伸長が抑制される のにもか かわらず, 3次根および4次根の発達に より根長の総和が増加することを明示し得た(第

3章, 3節) . この ことは, 根の表面積を増大さ せ , 低溶存 021濃度条件下での根の呼吸の維持のた めに順応した結果と考えられる.

このような溶存O2濃度の作用は, 言うまでもな

く呼吸に関連しており, 根の呼吸は根温に直接的 に作用されると考えられる . 一般に, 植物組織 (in vitro)の呼吸速度は, 生育温度の範囲では 温度の上昇にともな っ て増加し, その温度係数

(QJ.O)がほぼ2.0であるとされている(Lambers,

1985). さらに, Agata and Takeda (1982)およ

(33)

びAgata et α1. (1989)は, サ ツ マイモ( 1 po­

moeα bαtαtαs Lam.), コ ウ シ ュ ン シ ノぐ(Zoysiα mαtrella Merr.)およびベン ト グラ ス(Agrostis teηu i s S i bth. )の葉の暗呼吸が葉温の上昇にとも な っ て増加することを明らかにしている. 本研究 におけるキ ュ ウリ植物の根のO2吸収速度は根温上 昇にともな っ て増加する傾向にあ っ た(Fig.21).

一方, 根のCO2放出速度は根温120C以下では著し く抑制されたが, 根温240CでCO2放出速度は0.12

I1mol g-1s-1にとどまり, さらに根温が上昇しで

もCO2放出速度の増加は認められなか っ た ( Fig.

23) . このように, 根のCO2放出速度は根温工20C以 下での著しい抑制に特徴づけられるが, 高い根温

域ではCO2放出速度の温度依存性が明確でない.

その原因としては次のように考えられる. すなわ ち, 本研究における気密水耕装置では, 高い根温 域で急速にO2欠乏状態となり(20時間以内に0 .02 凶河), 第5章3節および4節で述べたように地上 部環境から葉をとおしてO2が翰送されるものの,

高い根温における根の呼吸の増加にO2供給が対応

(34)

できず, 結果的に根温が上昇しでもCO2放出速度 の増加が制限されたと考えられる . また , 根の呼 吸 がCO2により抑制されることが知られており

(Nobel and Palta, 1989; Palta and Nobel,

1989c) , 本研究では気密水耕装置内に蓄積された CO2による呼吸の抑制作用が根温上昇( 28 rv320C ) にともな っ て促進されたことも考えられる .

こ の根の呼吸と同様に 根の吸水速度も根温 120C以下では著しく抑制されることが明らかとな

っ た(第4章 2節). すなわち, 根の呼吸およ

び吸水に は平行的な温度依存性が認められた . さ らに, 地上部を切除した単離根系を用いて, 根温 8rv320Cにおける全根系の通水抵抗を計測したとこ ろ, 全根系の通水抵抗は低根温域で著しく大とな っ た(第4章 3節) . すなわち, 全根系の通7)<

抵抗に対する根温の作用が, 根の吸水の温度依存 性に対応した . 根の吸7)<は能動的吸水および受動 的吸水に分けられる . 能動的吸水は細胞膜におけ るイオ ンの能動輸送による浸透ポテ ン シ ャ ル差で 引き起こされ, 受動的吸水は葉の蒸散によ っ て生

(35)

じるサク シ ョ ン で引き起こされる(Kramer, 1983).

受動的吸水における根の通水抵抗は根表面と導管 との聞の吸収抵抗および導管における通導抵抗か ら構成されているものの(Landsberg and Fowkes,

1978), 全根系の通7]<抵抗の大部分が吸収抵抗で 占められることが知られている(長野 ・ 石田,

1984; 長野ら, 1993). この吸収抵抗はシ ン プラ ス トおよびアポプラ ス ト輸送に対する抵抗であり とくにシ ン プラ ス ト輸送では細胞膜における水の

透過性が大きく関与している(Steudle and Jeschke, 1983; Hanson et α1., 1985). しプこが

っ て, 本研究で明らかとな った全根系の通水抵抗 に対する根温の作用は, 根温が膜透過性に作用し ていることを示唆している. また, ク ロダネカボ

チ ャ植物(Cucurbitα ficifoliα B. )における全 根系の通水抵抗は, 低根温(80C )においてもキ ュ

ウリ植物に比較してより小とな った(第4章, 3

節). このことは, ク ロダネカボチ ャ植物がキ ュ ウリ植物に比して低温耐性を有すること(Tachi­

bana, 1982; Eguchi and Koutaki, 1986)に関連

(36)

していると考えられる .

根の呼吸および吸水に対しては , 根部環境とと

もに地上部環境が関連すると考えられる. そこで,

光合成による呼吸基質の供給に ついて調べるため に 13C02のト レ ー シ ン グをおこな った . その結果,

3葉期キ ュ ウリ植物においては 光合成固定炭素 が約2時間で根の呼吸に用いられることが明らか とな った(第5章 2節) . また, 暗黒条件下の

キ ュ ウリ植物においては , 12時間以後に呼吸基質 が消費されてしまうことにより根のCO2放出速度 が減少することが明らかとな った(第5章, 5節) . これらの結果から, 光合成による呼吸基質の転流 が根の呼吸に密接に関連していることが明らかと な った.

前述のように根の呼吸に対するO2の供給が重要 であるが, 根部環境のO2欠乏条件下では , 地上部 環境のO2が植物体をとおして根の呼吸へ輸送され ることが考えられる. とくに, 根に通気組織を形 成するイネ(Oryzα sαti vα L. ), コ ムギ(Triticum

αestivum L.) およびトウモ ロ コ シ(Zeα mαys L.)

(37)

などでは , 根部環境のO2欠乏条件下において地上 部環境のO2が拡散により葉からj�気組織をとおし て輸送されることが知られている(Jensen et

α1., 1967; Greenwood, 1967; Drew et α1 .

1985; Erdmann and Wiedenroth, 1988). 一方,

通気組織を形成しない エ ン ドウ(Pisum sαtivum

L. ) においても細胞間際をとおしてO2が拡散する ことが報告されている(Armstrong et α1., 1982,

1983; Armstrong and Healy, 1984). しかし, 根 の呼吸と地上部環境のO2との関係に ついては十分 には調べられていない . 本研究では, 根部環境が O2欠乏条件とな っ ても, キ ュ ウリ植物の根のCO2

放出速度および吸水速度でみた根の活性が少なく とも4 日間維持されることが認められた(第5章,

3節) . このことから, 通気組織を形成しないキ ュ ウリ植物においても, 地上部環境のO2が葉をと おして根に輸送され, 根の十分な生理的活性が維

持されることが推測された . そこで, 根部環境を O2欠乏条件として, 高湿度( 90%RH)および暗黒下 で地上部環境に 1802を加え, 呼吸により生成され

(38)

る7]<の150同位体比を計測した . 葉に 1502を与え た植物では , 葉および茎だけでなく根におい ても 水の 150同位体比が増加し 1502を与えなか った 植物との差は1%レ ベルで有意であ った(第 5章,

4節) . したが って, 地上部環境の1502が葉およ

び茎における呼吸だけでなく 根の呼吸にも用い られ, H2 1 50が生成されることが明らかとな った .

ここで, 葉および茎と比較して, 根における水の 180同位体比が小とな ったことは , 地上部環境を

高湿度および暗黒とした条件下でも蒸散による根 の吸水が生じ(第 5章, 5節), 根の呼吸により

生成されたH2180が希釈されるとともに, その一 部が蒸散流により葉へ輸送された結果であると考

えられる . 以上のように, 地上部環境に加えた 1802が根の呼吸に用いられてH2180が生成された ことから, 通気組織を形成しないキ ュ ウリ植物に

おいても, 根部環境のO2欠乏条件下では, 地上部 環境のO2が細胞間隙をとおして輸送され, 根の呼 吸に供給されることが実証された .

さらに, 地上部環境からのO2輸送による根の呼

(39)

吸と, 根の吸水との関連を調べた. 根部環境のO2 欠乏条件において地上-部環境を低O2濃度条件(1%

vjv)とした場合, 根の呼吸速度および吸水速度 がともに著しく抑制され, また, 地上部環境を高 O2濃度条件(大気レ ベル〉とした場合には根の

CO2放出速度および吸水速度 が増加した(第5章,

5節). このことから, 根部環境のO2欠乏条件下 では地上部環境から葉をとおして根に輸送された O2により根の呼吸が維持され, 根の吸7]<.が改善さ れることが示唆された. ここで, 根部環境および 地上部環境がともにO2欠乏条件とした場合, 根の CO2放出速度は24時間後には著しく低下したもの

の(0.01 μmol g-1 S -1 ) , 0μmol g-ls-lとはなら なか っ た( Fig.38a, 曲線1 ). このことは根の嫌

気的呼吸によるCO2放出(Barta, 1986) , あるいは 植物体からのCO2拡散(Nobel, 1991)によるもの と推測される . とくに, 根の嫌気的呼吸は

v i t roにおいて認められている(Johnson et α1 , 1989; Thomson and Greenway, 1991; Hole et

α1., 1992). しかし, 嫌気的呼吸により得られる

(40)

ATPは好気的呼吸の1/19とみなされており(Fitter and Hay, 1987), 根の生理的活性の維持にはほと んど寄与し得ないと考えられる . また 植物体か らの拡散によ っ て根からの微量なCO2放出がある としても, 根の呼吸に関連していない ことは明白 である .

根の能動的吸水はイオ ン の能動輸送のためのエ ネルギーを必要とするとされているが(Kramer,

1983), 根の呼吸と受動的吸水との関連の機作に ついては明確な知見は得られていない . 前述のよ うに , 全根系の通71<抵抗は, 根の表面から導管に

至る細胞膜における水の透過性に支配されると考 えられる O2欠乏条件下では根の細胞膜の正常な 機能が失われること(Hiatt and Lowe, 1967), ま た , 呼吸が抑制されると細胞膜の正常な機能が失 われること(Leopold and Musgrave, 1979)などの 報告を参照すると, 細胞膜の生理的機能を維持す るためには, 十分な呼吸活性が必要であると考え られる(Zemlianukhin and Ivanov, 1978; Drew,

1991). このような観点から, 根の呼吸が膜透過

(41)

性に関連することによ っ て根の受動的吸水の特性 に作用しており , この生理的過程に環境要素, す

なわち根温およびO2濃度が作用していることが示 唆された .

(42)

摘 要

本研究では , 気密7]<.耕装置を用い , 根部環境お よび地上部環境の制御下において , 根の基本的な 機能である呼吸および吸水に対する環境-の作用を 解析 した.

まず, 7]<.耕におけるキ ュ ウリ植物(Cucumi s

sαtivus L. 品種長田落合2号〉 の根の形態に対

する溶存O2濃度の作用を根系の画像解析により定 量的に明らかにした . すなわち , 培養液の高溶存 O2濃度(空気飽和レ ベル)条件下に比べて , 低溶 存O2濃度(0.03rvO.13凶可)条件下では2次根の伸

長が抑制されるにもかかわらず, 3次根および4 次根の発達により根長の総和が増加することを明

示し得た .

根の呼吸および吸水に対する根温の作用 を調べ るために , 根温を8, 12, 16, 20, 24, 28および 3 20Cに制御 し, 根のO2吸収速度, CO2放出速度お よ び吸水速度のオ ン ライ ン , 非破壊計測をおこな

った . その結果, 根温120C以下では根の呼吸およ

(43)

び吸水がともに著しく抑制されることが 明らかと

な っ た . すなわち, 根の呼吸および吸水には平行 的な温度依存性が認められた . この根の受動的吸 水の温度依存性は , 全根系の通水抵抗に対する根 温の作用に対応-してい た . 全根系のjm 7]<抵抗の大­

部分が吸収抵抗によることから 根の吸水の温度 依存性は吸収抵抗を支配する膜透過性に対する根 温の作用によるものと考えられ た . さらに, ヰ ュ

ウリ植物に比べて, 低温耐性を有するク ロ ダネカ

ボチ ャ植物(Cucurbi tα ficifoliα B. ) の全根系 の通水抵抗は , 根温80Cにおいてもキ ュ ウリ植物 に比較して小とな っ た . このことが, ク ロ ダネカ

ボチ ャ植物の低温耐性に関連していると考えられ た

次に, 地上部から根の呼吸への光合成固定炭素 の転流およびO2の輸送を調べるために, 地上部環 境として空気制御気密チ ャ ンパを用い, 13C02お よび l.802のト レ ー シ ングをおこな っ た . まず, 光

照射下で地上部環境に l.3C02を加え, 光合成固定 炭素が転流により根の呼吸基質として用いられる

(44)

までの時間遅れを調べた . その結果, 3葉期ヰ ュ ウリ植物においては, 光合成固定炭素が転流され て根の呼吸に用いられるまでに約2時聞が必要で

あることが明らかとな っ た .

一方, 気密7}<.耕装置において5日間根の呼吸お よび吸水を連続計測した結果, 根部環境がO2欠乏

条件とな っても, 根のCO2放出速度および吸水速 度からみた活性が少なくとも4 日間は維持された .

このことは 地上部環境のO2が葉をとおして根へ 輸送されることにより根の呼吸が維持されること を示唆している . そこで, 地上部環境に1802を加

え, 根の呼吸で生成された水の180同位対比を計 測した . その結果, 地上部環境に加えた1802が根 の呼吸に用いられてH2180が生成されることが明 らかとな った . このことから, 通気組織を形成し ないキ ュ ウリ植物においても, 根部環境のO2欠乏

条件下では , 地上部環境のO2が細胞間隙をとおし て輸送され, 根の呼吸に供給されることが実証さ れた . この地上部環境のO2輸送による根の呼吸と 根の受動的吸水の特性との関連を調べるために,

(45)

地上部環境を異なる02ì濃度として根のCO2放出速 度および吸水速度を計測した . 地上部環境が低O2 濃度(1% vjv)条件下では根の呼吸および吸水が

ともに抑制されたのに対して , 高O2濃度(大気レ ベル)条件下では根のCO2放出速度および吸水速 度がともに増加した . すなわち, 根部環境がO2欠

乏条件であ っ ても, 地上部環境から葉をとおして 根に輸送されたO2により根の呼吸が維持され, 根 の吸水が改善されることが示唆された .

以上のように , 根温およびO2濃度がともに呼吸 および吸水に平行的に作用することから, 根の呼 吸が膜透過性と関連して根の受動的吸水に影響し

ており, この生理的過程に根温およびO2 ì濃度が作 用していることが示唆された .

(46)

謝辞

本研究の遂行および本論文の作成にあたり , 終 始懇切なる御指導および御鞭援を頂いた九州大学 生物環境調節研究セ ン ター教授江口弘美博士に謹

んで感謝の意を表する . 論文のとりまとめに際し , 九州大学農学部教授豚和一博士および九州大学農 学部教授筏島豊博士には御校閲の労および数々 の 貴重な御助言を頂いた . こ こに深謝の意を表する . また, 終始懇切な御力添えおよび御校関を頂いた 九州大学九州大学生物環境調節研究セ ン タ一助教 授北野雅治博士に心より感謝の意を表する .

さらに, 本研究の遂行にあたり, 絶えず多大な 御協力および有益な御助言を頂いた九州大学生物 環境調節研究セ ン ター教職員各位に対し感謝の意 を表する .

(47)

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参照

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