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ドイツにおける製品に関する販売業者の義務(2・完)

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(1)

ドイツにおける製品に関する販売業者の義務(2・完)

鈴木 美弥子

はじめに

1.

販売業者の責任と義務の関係

1.1. 製造物責任法による責任 1.2. 契約責任

1.3. 不法行為責任 2.

販売業者の義務

2.1. 明らかに不適切な製品を引き渡さない義務

2.2. 製品の適性についての助言義務 (以上 79

号)

2.3. 製造者の指示を伝達する義務 2.4. 製造者の販売制限を遵守する義務 2.5. 不適当な者へ販売しない義務 2.6. 製品を適切に貯蔵する義務 2.7. 賞味期限と磨耗に注意する義務

おわりに (以上本号)

2. 販売業者の義務

2.3. 製造者の指示を伝達する義務

販売業者自身の助言義務、警告義務とは別に、販売した商品とは別個に添付されている1)製 造者の警告指示を購入者に転送する、あるいは、その他適切な形で(例えば、売場に掲示にする 等)知らせることを、販売業者には、常に期待しうる。この義務は、契約法の根拠や社会生活上 の義務にもかかわらず、購入者に対してのみならず、指示が伝達され、使用者がそれを遵守し た結果、保護されることになる第三者に対しても存在する。2)

そのような場合、製造者は、そのような者に対して警告が到達することに務めなければならな い。製造者は、一般に、最終購入者が、製品に添えられた商品の指示を、最終購入者から、さら に購入した者、賃貸した者、リースした者などに転送することを信頼することはできず、転送し てくれることを信頼してよいのは、せいぜい、専門小売商、一手販売業者の場合である。3)

(2)

販売業者に警告・指示義務が認められた幼児茶事件を見たい。

[

幼児茶事件 ]

1984

3

月に生まれた原告は、生後

3

週目から、幼児用茶や果汁を、被告

M

が販売した小 さなお茶用容器やほ乳瓶で飲んだ結果、乳歯に齲蝕が生じたとし、その賠償を請求した。4)

M

は(後に他の企業も)、1970年代初頭から、容量

120ml

240ml

のプラスチック製ほ乳瓶を 販売していた。このプラスチック製のほ乳瓶には、お茶や果汁といった飲料用の現代的な歯列 矯正のための乳首がついていた。唾液は、その洗浄力により、歯を保護するが、この乳首は、

飲料が、唾液がほとんど流れない上顎の前歯にかかるようになっている。特にごく軽量の小さ なプラスチック製ほ乳瓶が、入眠前と夜に起きている時に持続的に吸わせるために用いられる 場合に、この効果が強くなる。

1981

9

月に、

W

博士が、歯学専門誌に、プラスチック製ほ乳瓶を持続的に吸うことに原因

があるとする乳歯の齲蝕の新しい症候(ほ乳瓶シンドローム)について執筆した。1970年代中頃 から

M、H

などが糖分をベースとして製造する乳幼児用のインスタント茶がまず注目され、そ の後その種の飲料が多様となった。ドイツ小児歯科医学会によれば、この新しい形の乳歯齲蝕 は、生後

1

年を超えるほ乳瓶の使用により生ずるとされ、特殊な乳首のほ乳瓶からの糖分と酸 を含む飲料(幼児用茶、果汁、レモネード、ココア等)の摂取により、歯のエナメル質が壊され た。

80

年代の初めから、幼児用茶の製造をしていた

M

は、そのインスタント製品に、徐々に明 確な警告指示を備え始めた5)。ほ乳瓶と、H が製造していた幼児用果汁は、警告指示がないま ま引き続き市場に出されていた。科学的研究によると、ドイツの生後

1

年の小児の約

6~7%に

この症状がみられた。かつての東ドイツの地域では、1990年まで、このほ乳瓶シンドロームは 知られておらず、病症の発生がしばしば記録されていた。

1984

年から

1987

年まで、原告は、Mの幼児用茶、Hのジュースをほ乳瓶から持続的に吸う 形で消費した。

[判旨]

幼児用飲料を製造した被告

H、M

の製造者としての義務に関し、Hの幼児用果汁には、遅く とも

1984

年までに齲蝕の危険を認識する製造物監視義務が認められ、それに基づき、警告指示 がなされねばならなかったが、

1988

年まで一切警告指示はなく、

M

の幼児用茶の入った容器上 の警告指示については、1982年

12

月からは、十分なものであると判断した6)

当裁判所は、すでに、継続的に吸うことと結びついた著しい危険に対する警告義務が、飲料 製造者だけではなく、飲料の噴出を特に危殆化される歯の位置に導くほ乳瓶とその乳首の製造 者にもあることを判示した。控訴裁判所が認定したように、

M

がほ乳瓶を販売していた過ぎず、

(3)

自身が製造していなかったとしても、

M

は、ほ乳瓶を流通に置いたことから、製造者と同じく 指示義務がある。当時、Mは、明らかに一手販売業者である。いずれの販売業者も、小売商で あっても、購入者が正しい使用説明書や必要な警告指示が得られるよう配慮しなければならな い。特定の製品の一手販売業者は、広範な安全確保義務を負う。一手販売業者は製造者のよう に、警告指示により、製品の使用により製品の使用者に危険が生じないことを目指さなければ ならない。Mは、その名前やマークにより、ほ乳瓶の製造者と称していなかったとしても、こ の義務がある(このような理論の形成として、VersR 1994, 319 ねじ切断剤事件)。7)

本判決では、一見、販売業者である被告に製造者と同じ指示・警告義務があるように読める が、このような義務が認められるのは、被告が単なる販売業者ではなく、一手販売業者である からこそである。

幼児茶判決における理論を明らかにするため、この判決で示されている、ねじ切断剤判決を 続いて見ていく。

[

ねじ切断剤事件 ]8)

配管業を営んでいる原告は、水道管を新築家屋に取り付けた。その際、管接続用ねじの切断 のため、ねじ切断剤を使用したが、その切断剤には味と臭いがあり、作業された管にほとんど 水に溶けない滓が残った。配管網の操業開始後に水は不快な臭いと味を呈し、費用をかけ配管 を薬剤で洗浄後、ようやくこれらが消えた。建築主から瑕疵担保責任を追及された原告は、被 告に対し洗浄費用等について賠償請求した。使用された薬剤については、被告の訴訟補佐人の ベルギーの企業が製造したものであり、被告はそれを輸入し、「R合成ねじ切断剤」という自分 の会社名と同じ商標の下、さらにドイツガス水道組合の検査証をつけ、国内の卸売業者に販売 していた。

[

判旨 ]

控訴裁判所が、商品製造者自身は、原則として、自己の行動と認識の領域で生ずる製品の欠 陥に対し広範な(包括的な)責任を負うことから出発することは、法的に正しい。しかし、当裁 判所は、不法行為の注意義務を、もっぱら「製造者」の性質に結びつけてはいない。むしろ、

商品販売に介入した他の企業も、製造物に欠陥がある、あるいは、消費者へ不十分な指示しか しなかった場合には、安全保安義務の違反により、損害賠償義務を負いうることから出発する。

その際、当裁判所は、商品分配における危険防除義務について関与者ごとに区別し、関与者が その際にいかなる機能を果たしたかにより、関与者ごとに異なる義務定立をなす。

もっとも販売業者は、本件の被告のように、製造者のように現れ、自己の名前を模した自己 の商標を付け販売した製品を流通に置いたことによっては、製品製造者に認められる危険防除 義務は課しえない。当裁判所が繰り返し判示してきたように、このような事情には、原則とし

(4)

て決定的な責任法上の意義はない。商品製造者と責任法上完全に等置することは法的に認めら れない。現行の不法行為法によれば、無制限の準製造者責任は、製造物責任が拠る安全保安義 務の違反によっては、根拠づけられない。そのような企業に製造物の欠陥に対する責任の答責 が認められるのは、独自の危険防除義務の違反がある場合である。

控訴裁判所が、被告が、製品の輸入者で、かつ、ドイツの国内市場のため自己の商標をつけ た国内で最も上の段階の販売業者として重要な地位を占めていたことにより、被告に独自の製 造物監視義務を認めたことには、法的に異議はない。なるほど、輸入者は、その本質により販 売業者にすぎず、原則として、販売者特有の危険防除義務しかない。被告の訴訟補佐人の本国 であるベルギーが属する、もとからのヨーロッパ経済共同体の加盟国からの商品の輸入者には、

当裁判所は、従来いずれにしてもドイツの製造所からの製品を販売する卸売業者の義務を超え る商品に関する安全義務を認めない。本件では、そのような輸入者が通常、消費者、使用者、

第三者が国内で脅かされる製品の危険に関する製造物監視義務を有するか判断しない。いずれ にしても、そのような義務が生ずるのは、輸入者が当該商品を国内で唯一販売する場合である。

この義務は、商品の分配者として、そして、ドイツの消費者と海外の製造者との媒介者として、

国内での独占的地位から生ずる。

もっとも、控訴裁判所の認定によれば、本件では、被告が商品の分配においてそのような地 位を占めているのか疑わしい。控訴裁判所は、被告は、国内市場では、最上位の販売業者であ る、あるいは、商品分配において重要な地位を有することをもっぱら認定している。しかしな がら、被告については、ドイツでのねじ切断剤の販売について重要な地位にあることのほか、

会社名からとられた自己の商品名をつけた製品を流通に置いたという特別な態様で、この製品 と同一視されることから、すでに製造物監視義務が認められていた。したがって、被告は、大 口顧客と販路を知っているだけではなく、苦情や異議の行き先という印象をドイツ市場に生じ させた。被告について、そこからすでに、実地での使用の際の証明と評価についての情報を入 手する事業組織を構築するという、いわゆる積極的な製造物監視義務が生ずるかは、確定され ないままである。しかし、被告の立場からは、被告については、少なくとも、被告に伝えられ た苦情を検討するという、いわゆる消極的な製造物監視義務が生ずる。9)

幼児茶事件では、指示・警告義務が、ねじ切断剤事件では、製造物監視義務を取り上げてい るが、その根底にあるのは、被告が製造者と同様の義務を負うのかということである。幼児茶 判決は、ねじ切断剤判決を挙げているものの、両判決は、ポイントとなるような点で、一見相 違がある。まず被告についてであるが、幼児茶事件では、販売業者であるのに対して、ねじ切 断剤事件では、輸入し、販売した者である。また、ねじ切断剤事件では、輸入・販売をした被 告の社名からとった商標を製品に付けていたのに対して、幼児茶事件では、そのような事情は

(5)

なく、「その名前やマークにより、ほ乳瓶の製造者と称していなかったとしても、この義務(警 告・指示義務)がある」とするのである。

前者の点については、ねじ切断剤事件の判旨で、輸入者は、本質的には、販売業者であり、

原則として、販売者特有の危険防除義務しか負わず、もとからのヨーロッパ経済共同体の加盟 国からの商品の輸入者には、ドイツの製造所からの製品を販売する卸売業者の義務を超える商 品に関する安全義務を認めなかったということで、「販売業者」

(この場合は卸売業者)の義務に

関するものとして、幼児茶事件の判断に用いることが可能であるといえる。

しかし、特に後者の点、すなわち、販売業者が自己の商標等を付けていたか否かについては、

製造物責任法においても、また、不法行為法上の製造物責任により形成された準製造者の責任 においても、決して看過できない重要な事情である。

ドイツの製造物責任法10)では、完成品、原材料、あるいは、構成部品を製造した者を、製造・

加工を通じて、直接欠陥創出に関与した者として、製造者とし(4条

1

1

文)、これ以外の責 任主体として、欠陥ある製造物を市場に供給し、危険を持ち込んだとして、輸入者が挙げられ ている(4条

2

項)。さらに、自己の名称、自己の商標、あるいは他のものと識別しうる表記に よって製造者として表示を行っている者も、その表示を通じ、消費者に製造物に対する信頼を 与えていることから、製造者として認められている(4条

1

2

文)が11)、このような者について は、従来から準製造者として論じられてきた。

製造物責任法で、このように準製造者についての規定が設けられ、その概念と責任が明確に なったが12)、それ以前は、準製造者に関する直接的な規定は存在せず、不法行為に基づく製造 物責任として、判例・学説を通じてその理論形成が図られてきた。

製造物責任法では、準製造者を製造者と扱うのに対し、従来の不法行為による製造物責任に おいては、準製造者は、販売の鎖の一部をなすものであり、また、製品と、その危険に対して、

製造と匹敵するほどの関係はないとし、準製造者は、製造者と同様の責任を負うことはないと されてきた。そのため、準製造者は、むしろ、原則として、販売者にすぎず、販売者の義務が 結びつけられ、製造者の責任は例外とされてきた。13)

例外として製造者と同様の責任を負うかについて、例えば、ねじ溶解剤判決でも参照が指示 されている準製造者の責任に関する代表的な判決である自走クレーン判決では14)、危険防除義 務は、一般には、企業がその名前を外部者が製造した工業製品に付けたことよっては生ぜず、

このことが、せいぜいのところ考慮されるのは、企業が、利用者がこの付けられた名前への信 頼により、信頼がなければ遵守したであろう予防措置を怠ったことを考慮しなければならない 場合であるとする。また、同様に準製造者の責任を扱う折りたたみ自転車判決では15)、製造者 として現れ、製品に自己の製造物として商標を付けた事業者が、商品製造者に認められる危険

(6)

防除義務を事業者にも課しうるかというように、商品と同視されうるか、さらに、事業者は、

それゆえ、製品による被害者の保護のため、責任法上、もはや、単なる販売業者のように扱わ ないようにするか検討すべきとする。また、ねじ切断剤判決では、一手販売業者である場合に は製造者と同様の義務を、そして、国内販売について重要な地位を有し、自己の商標を付け、

製品と同一視される場合には、前者の場合よりレベルが下がるものの、単なる販売業者には要 求されないような義務を負うとする。

このような準製造者に関する理論は、他者の製品に自己の商標等を付けていた販売者につい て形成されたものである。しかし、これについて、ねじ切断剤判決、自走クレーン判決、折り たたみ自転車判決においても、他者が製造した製品のうえに、製造者であるかのように、自己 の商標等を付け販売したという事情には、原則として決定的な責任法上の意義はなく、製造者 の義務は認められないということで一致している。このため、幼児茶事件において、販売業者 である被告が自己の商標等を製品に付けていなかったという事情に意味を認めず、その判決に あたり、ねじ溶解剤判決が示されているのであろう。

準製造者の責任に関わる

3

判決とも、製造者と同様に責任を認めるにあたっては、販売者が 自己の商標等を製品に付けたことのほか、それにより、製造者特有の義務の引受けが示さねば ならないとされている。つまり、商標等をつけたことそれ自体が、重要なのではなく、むしろ、

折りたたみ自転車事件、ねじ切断剤事件で示されているように、製品に関与した者が、いかな る機能を果たしたかにより、いかなる危険防除義務を負うのか、関与者ごとに決定すべきであ るという視点があり、その関与として、商標等をつけた意味が問題とされるにすぎないといえ る。だからこそ、他者が製造したほ乳瓶に、製造者であるかのような自己の商標等をつけてい なかった幼児茶事件において、自己の商標をつけていたねじ切断剤事件を示し、一手販売業者 であることをもって、製造者と同様の義務を認めたのであろう。

それでは、一手販売業者であることは、義務を考えるにあたり、いかなる意義があるのか。

ねじ切断剤事件では、商品の分配者としての独占的地位のほか、また、この事件は、輸入し、

販売したケースであるため、ドイツの消費者と海外の製造者との媒介者である点が挙げられて いる。さらに、この事件では、実際には、一手販売業者と認められなかったが、販売において 重要な地位にあったとされ、ここから、大口顧客や販路を知っているだけではなく、苦情など の行き先であるとの印象を生じさせていたことが挙げられている。幼児茶判決では、一手販売 業者であることのみ示されており、これに関し具体的説明はない。しかし、この他にも、この 事件の特有の事情が存在する。すなわち、Mが販売した商品である、ほ乳瓶の性質(機能)とし て、飲料とそもそも密接な関係があり、瓶の中身である飲料は、ほ乳瓶の必要的従物ともいう べきものであり、ほ乳瓶それ自体では、ほぼ機能を果たさず、さらに、ほ乳瓶と飲料は、相ま

(7)

ってはじめて、乳歯の齲蝕を発生させる。また、

M

は、ほ乳瓶の製造者ではないが、幼児用茶 の製造者として、深い関与が認められるとし、これらの事情を考慮した結果、ほ乳瓶の製造者 と同様の警告義務が課されたとするのである16)

2.4. 製造者の販売制限を遵守する義務

製造者による購入者の範囲の制限は、直接的なリスク制御に役立つことが多い。「18歳未満 の者には販売してはならない」、「専門的な購入者に限る」という命令・指示により、未熟な使 用者の誤用が排除されることになる。販売業者には、そのような製造者の指示を遵守し、その 指示に示されている許された購入者にのみ販売する義務が存在する。17)

[

塩素酸ナトリウム事件 ]18)

16

歳の原告は、自作の火薬を扱った際に、右手の重い切断を受けた。被告はドラッグストア の店主として、使用された化学薬品を違法に販売したとして、その損害の賠償が請求された。

当時

15

歳の

D

は、両親が顧客である、被告のドラッグストアで、300gの硫黄と

1kg

容器の その

4

分の

3

が塩素酸ナトリウムから成る除草剤の

UNKRAUTE-EX

を購入した。

15

歳の

D

と、

その同行者の

13

歳の

S

は、2つの物質を混ぜ、花火の実験をしようと思った。

2

日後、原告も この実験に加わった。混合物を自転車用エアポンプに、一部他の物質を追加して充たした。少 年たちは、このポンプを地中に埋めた場合、点火した混合物の爆発力によりずたずたになるこ とを確かめた。

原告は、花火を作るため、一方が開いたポンプの筒に混合物を充たして、ひとりで実験を行 った。原告は点火し、その際閃光が生じ、燃焼している間、手にした筒があちこち向きを変え た。閃光が消えた後、筒が爆発し、原告は右手に重傷を負った。

[

判旨 ]

販売された除草剤

UNKRAUTE-EX

のパックが、その販売について、植物保護剤令が適用さ れない要件を充足したならば、被告が単にパックの上に書かれた警告(「21 歳未満の者に譲渡 してはならない。子供の手に届かないよう保管すること。他の物質と混ぜてはならない。水に のみ溶かし、混ぜないで散布すること。」)を遵守しなかった場合には、たしかに、法規の直接 的な違反はないといえよう。それにもかかわらず、被告は、法規範が必要とする警告を遵守し なかった場合には、行為義務に違反したことになる。被告はドラッグストアの店主として、除 草剤のパックの上に備えられた警告を見逃してはならず、警告が間接的に拠る法規範を知らね ばならない。したがって、民法

823

1

項の枠内で、その違反は有責である。

それに対し、販売されたパックが、その販売が植物保護剤令の規定を免れる要件を充たさな い場合、被告は、8 条で課される検討の不作為により、原告をも保護する法規範に違反したこ

(8)

とになる。

しかし、被告が法で規定された法規範に違反していない場合に、要件化された、特に職業慣 行に関する特に重要な一般的な行為規範に違反し、それにより、損害事件が発生したならば、

民法

823

1

項、2項による被告の責任が否定されるのは、生じた損害が法規範か行為規範の 保護範囲の外にある場合のみである。

ラントの植物保護剤令も毒物売買令も、その保護目的を、その題名の文言のみから導き出し てはならない。人間の組織への有害な化学的影響(毒作用)を超えて、それは、むしろいずれに しても、立法者がその規定を理由づける衡量範囲に入れた、被害物質のその他の典型的な危険 を含む。このことは、植物保護剤の広い概念に、文言に反して除草剤を入れたことについて述 べられたことが、根本において妥当する。

このような考え方をとるならば、有毒な植物保護剤の取引規定が、いずれにしても、塩素酸 塩と、ほとんど塩素酸塩から構成される化合物を扱う点で、誤って生じた炎と爆発の反応に立 ち向かう目的をも持つことに対する疑念は生じない。他の物質(すなわち、一緒になると酸素担 体の爆発の効果を得る可燃物質)との混合の禁止について、他の説明は、ほとんど理解できない。

いずれにしても、少年への譲渡が問題である限り、軽率な爆発実験を防止することは、保護目 的の外にはない。それは、成年(18歳)の境界までの期間の経過中に出される少年への譲渡に対 する警告を示す。この警告は、そのような者が、なによりもロケット製作のため、純粋な、あ るいは調合品に含まれる酸素担体についてなした濫用が増加していることによってのみ、十分 に説明できる。このことは、問題の塩の元来の毒性が比較的少なく、何よりも少年への譲渡の 際に特別の危険がもたらされないほど、一層妥当する。

本判決では、当該植物保護剤に関し、要件を欠き、法規命令の適用がないとされても、製造 者の販売制限を遵守しなかったことについて、民法

823

条に基づく行為義務の違反が認められ るとする。さらに、法規命令であれ、民法

823

条に基づく行為規範であれ、これらの保護目的 の解釈を通じ、本来の毒物としての毒性の危険のみならず、本件のようなその濫用による危険 からの保護までも含むとしている。

2.5. 不適当な者へ販売しない義務

製造者が販売について指示をなしていても、販売業者は、一定の範囲で、製造物が不適切な 使用を通じて危険とならないことを配慮しなければならない。

著しい危険の可能性を有する商品が、その安全な使用について明らかに不適格な者、若く未 経験な者、酩酊者、障がい者に望まれた場合は、販売が差し止められねばならない。その例と して、子供への花火の販売に関する

2

つの判決を検討する。

(9)

[

火の輪花火事件 ]19)

1990

11

月に、原告は、左のズボンのポケットに入れていた、いわゆる火の輪花火が点火 し、左大腿部に火傷を負った。原告のこの負傷について、店の経営者である被告は、当時

6

9

ヶ月の原告に少なくともポケットに入れていた花火の一部を販売したことにより、過失によ り惹起したとされた。

[

判旨 ]

被告が認めた火の輪花火のパックの販売が、原告の負傷を惹起したことに疑いはない。民法 分野で判例により認められている相当性理論によれば、作為または不作為に相当因果関係が認 められるのは、それが、一般的な事情の下で、しかも、まったく特異で、ありえないような、

さらに、通常の事物の経過から無視される事情の下に限ってということではなく、結果が発生 したといえる場合である。18歳未満の者に販売してもよい花火玉であっても、6歳から

8

歳ま での子供の手による不適切な使用で負傷に至ることは、通常の事物の経過に合致する。6 歳か ら

8

歳までの子供が、点火後すぐに燃え尽きず、一見その導火線の火が消えた花火玉を、再び 取り上げ、ポケットの残りの花火玉へ突っ込むことは、花火玉の扱いの未経験さと、

6

歳から

8

歳までの子供の無思慮により、決して、全くありえない、事物の通常の経過によれば無視され る事情ではない。

被告が花火玉を原告に販売した場合、被告の行為には過失があった。原告については、6 歳 から

8

歳までの子供であることが問題であり、したがって、花火玉の扱いの未経験さと、子供 の年相応の無思慮により、監視されない花火玉の燃焼の際に、ここで問題となっている負傷に 至ったということを、被告は認識しなければならなかった。一見導火線が消え、それにより、

遅れて花火玉に点火することは、経験上少なからず発生する現象であり、成人でさえ、あらゆ る場合に注意しているわけではなく、繰り返し事故が起こっている。原告により当該花火が燃 えた際に、そのような突発事故が生じ、原告が差し迫った危険を知らず、もはや導火線が燃え ていることが見えない花火玉を再び取り上げ、これが、取り上げた後もなお点火し、被告が負 傷したことを、これらの事情の下に考慮しなければならない。被告が損害事件の具体的経過を 詳細に予見できることは必要ではない。本件で存在するような、損害発生の結果の一般的な予 見可能性で充分である。被告の責任については、誰が原告のズボンのポケットで燃えた当該花 火を点火したのかについては、問題にならない。

18

歳未満の者に販売してよい花火玉が問題であることは、被告を免責しない。この指示は、

基礎学校の子供への販売も疑いなく許されていたことを意味しない。判例によれば、火遊びか ら生ずる著しい危険により、すでに、両親が負う監督義務の違反となるのは、両親がその

6

歳 から

8

歳までの子供が点火薬類について許されていない所持をしていないことについて強く注

(10)

意していない場合である。たしかに、この判決は、両親の監督義務がないとした。しかしなが ら、判決からは、監督義務を負わない第三者もまた、基礎学校の子供には、点火薬類を監督の ないまま使用させてはならないことが導き出される。このことは、不適切な使用の際に少なく とも点火薬類と同様に大きな危険が生ずる、ここで問題とされている火の輪花火のような花火 玉の譲渡についてまさに妥当する。

[

ミツバチ花火事件 ] BGH JZ 1999 48 ff.

原告は、文房具店を営む被告に対して、原告が

1993

12

月に

8

6

ヶ月で被告から購入し た、「大騒ぎのミツバチ」という商品名の花火により受けた事故による損害賠償請求をなした。

中国から輸入されたミツバチ花火は、以前、第一被告であった

Y

によりドイツで販売され、

Y

は、第二被告である

X

にも供給した。

1984

年からの原料検査についての行政庁の許可決定に より、この花火は、1類の「花火遊戯具」とされ、通年販売と、18歳未満の者への販売につい て、爆発物法上は禁止されなかった。許可決定の要件として、花火のパッケージに、「ミツバチ 花火 地面において、一番外側の導火線に点火し、すぐに離れること。広場でのみ使用するこ と。」という文言を含むことになっている。

事故当日、原告は同い年の友人

F、H

一緒に遊んでおり、原告の提案により、Xから

F

が購 入した当該花火に

F

が点火し、それを空中に投げた。花火は原告の襟ぐりに入り、重傷を負っ た。原告は、

X

に対しては、特に、

F

が花火と結びついた危険を制御できるか十分に確認せず

F

に販売したことを理由として、責任があると主張した。

[

判旨 ]

もっとも、Xの有責な不法行為は、争いの対象である子供への花火の販売が爆発物法の領域 での法的禁止により妨げられないことによっては、排除されない。

しかし、製品がこのように公法上、負担や制限なく許可されていることにより、最初から、

安全保安義務を免責することはできない。なぜなら、安全確保義務は、他の法的観点から調整 され、脅かされる法益の保護のため、公法の規定により定められているよりも、厳しい要件が 立てられ、高い注意が求められるからである。

爆発物法の規定から、基礎学校の子供が

1

類の花火の購入を望む場合に、販売者がいかに行 為すべきかという問題について決定的なことは何も明らかにならない。公法の規定は、その点 について、抽象的な危険検査に基づき、18歳未満の者への販売の一般的な禁止を免じているに すぎない。したがって、1 類の花火は、多種に渡る多数の「普通の」製品と同等に置かれ、そ れについて、立法者は、その危険性に基づき、購入者の年齢に合わせた一般的制限が必要であ ると考えなかった。しかし、それゆえ、その他の点で一般的に自由に販売できる製品にも、そ の時々に具体的に認識可能な危険状況の観点から適用が求められる安全保安義務の原則がまた

(11)

用いられるのである。

子供がこの製品と関わることに基づく危険を命ぜられた方法で制御できず、自身や第三者に ついてその保護法益が侵害されうるという容易に予想しうる危険が考慮される場合に、それ自 体自由に販売できる商品を子供へ譲渡することを断念するよう、不法行為法上の根拠から命ず ることができる。それは、販売者が、当該行為規定が明文で定められることなしに、販売する 製品を、最初から典型的で著しい危険状況が認められている購入者の手に渡さない、すなわち、

そのような場合、販売者は自身で、この危険源に対応するために必要なことを為すことに対し 責任を負うという衡量に基づく。

花火もまた、原則として、その使用者の法益と、また、無関係な第三者の法益に対して著し い危険の可能性を呈しうる製品であり、しかも、それが行政の許可の下販売され、添えられて いる製造者の使用説明書に従い使用された場合でも同様である。この事件だけではなく、諸判 決の別のケースでも示されるように、爆発物法上、許可について

1

類に入れられるそのような 花火は、この意味において客観的に危険をもたらすものである。特に子供と青少年の手にある ときは、年少であるほど、危険状況は高まり、特に、この利用者の範囲で危険の意識が低いこ とと、遊技本能を鑑みるならば、軽率な取扱いが考慮されるべきである。

客観的に

1

類の花火についてもあり得るそのような危険状況が認識される場合に、そして、

その限りで、販売者は、安全確保義務の観点から、この製品の子供、特にようやく基礎学校の 年齢にある子供への譲渡を予想する義務がある。この意味において、爆発物上無制限に販売さ れている花火類の危険が、販売者にとって認識可能なのか、そしてそれがどの程度かについて は、個々の事件の全事情、特に、当該製品が製造者によりいかに記述され宣伝されているか、

さらに、販売者が、そのような花火についての取扱いと、その点で購入者の基準となる行為に ついてどのような実際の認識を入手できるかによる。

控訴裁判所の見解と異なり、上告でも当然指摘されているところであるが、花火はそれ自体 危険なものではなく、子供がマッチを手に入れ、これを監督なしに使用することを阻止するこ とが優先的に親権者の責任領域にあることが、決定的に注目されるべきではない。子供に花火 を販売する者は、子供自身が、購入した物の使用に必要なマッチを調達することを知っている ことを、常に考慮しなければならない。

他方で、控訴裁判所は、花火の販売者が、第三者として、マッチやその他同様の物について 監督義務がある両親の子供に対するものと同様の義務定立を負わないことから出発する。した がって、そのような義務状況からは、自由に販売される

1

類の花火を基礎学校の年齢の子供に 自由に譲渡することの一般的禁止も導きだすこともできない。むしろ、具体的事件において客 観的に存在する義務状況の認識可能性が重要である。

(12)

その点で重要なのは、Xが、なによりも、その供給者である

Y

と同様に、当該花火を取引に 提供したことに鑑み、まさに子供について生ずる閃光の強さと燃焼の継続の点で花火から生ず る危険状況を充分に認識できず、認識しなければならなかったことである。

パッケージの上書きにおいても、Yの提供品リストにも、製品の性質が、未成年者にも許さ れていることが強調されている。提供された品は、花火玩具とはっきりと名前が付いている。

記載の形態は、明らかに基礎学校の年齢から離れていない子供に、遊びの印象を生じさせる表 現を呈している。提供された商品のこの記述と宣伝から、Xは、これらの花火は、ミツバチ花 火も、少なくとも、その年齢では使用説明を正当に評価することができない子供の手にあって 是認できない危険を呈しないという結論を引き出す。何か他のものから、Xは、上告の見解に 反して、対象物を広場で使用すること、点火後、すぐに離れるという指示を引き出さなくても よい。Yが、実際に手元にある火力から生ずるそのような花火の取扱いに伴う危険を、使用者 として子供が問題となる限りで、ここで行われたように無視した場合に、このことは、花火製 造術分野で特別な専門知識が使用できず、したがって、まず、行政の許可と製造者の製品の指 示を信頼しなければならない

X

の負担にはならない。

X

は、他の理由から、ミツバチ花火が一般に基礎学校の年齢の子供とって重大な危険の可能 性を呈することを認める契機を有していなかった。実際上がった火力は、外見からも、個々の 製品の大きさからも推測されないことは、控訴判決で、異議無く確定されている。Xが、ミツ バチ花火が他の場所で実際の取扱では危険ではないことが証明されていないことについて何ら かの認識を入手したことは、何も確定されてもおらず、明らかでもない。

X

は、Fやその友人たちを通じて、その下で原告が知った、あるいは知らねばならなかった ことに鑑みるならば、当該花火の子供への販売をやめる義務はなかった。

もっとも、爆発物法の

1

類の花火も適切に取扱うことができる不可欠な前提は、取得者が、

書かれていた使用説明を警告の指示とともに読み、理解し、それに合わせられることである。

それゆえ、この前提を充たすことから出発しえない者(例えば、未就学児童や基礎学校

1

年生)

へ、そのような製品を譲渡することは考慮されない。しかし、本件では、Xの状況がそのよう に判明しているが、進歩した基礎学校の年齢の子供が問題であり、子供について、手引きを読 み理解することについてなんらかの困難があることは何も明らかではない。

なされた認定からは、Xが、Fやその友人の、軽率な、それどころか攻撃的な行為、あるい は、火遊びなどの特別の傾向を認識していた、あるいは認識しなければならない端緒は読み取 れない。仮にこのような事情があてはまるのであれば、ミツバチ花火の

F

への販売を拒否する 安全確保義務が要求される。しかしながら、この場合、Xは、子供の行為の特異さ、花火を投 擲弾とするように使用することを考慮する必要はない。

(13)

上記の

2

判決については、それぞれ、6歳

9

ヶ月(火の輪花火事件)、8歳

6

ヶ月(ミツバチ花 火事件)の子供が、18 歳未満の者に販売してもよいとされる花火により、やけどを負い、花火 の販売者に対してその賠償を請求したものである。

18

歳未満の者に販売してよい花火であっても、そのことをもって、直ちに販売者は免責され ず、その責任の検討がなされること、そして、親の監督義務とは、また別に販売者の責任が問 題となることは、両判決で一致している。

しかし、販売者の責任の検討について、そのアプローチが大きく異なる。

火の輪花火事件においては、原告も該当する、6歳から

8

歳までの子供一般をとりあげ、そ の花火玉の使用の危険性を問題にしたうえで、被告の責任を検討している。そして、その考慮 要素として、特定の年齢層の子供一般の状況をとりあげ、また、危険の予見性についても、具 体的経過を詳細に予見することは不要とし、損害発生の結果の一般的な予見可能性で充分とす る。そして、判決は、子供は無思慮であり、それにより、突発事故も生じえ、そこまで含めた ものを、花火による危険ととらえている。

これに対し、ミツバチ花火事件では、花火の危険について認識可能性がある場合に、販売の 差止めの義務が認められるとするが、その判断にあたっては、当該事件の具体的な諸事情を問 題にする。

さらに、ミツバチ花火事件では、火の輪花火事件とは異なり、販売者である被告が、花火製 造術分野で特別な専門知識が使用できず、したがって、まず、行政の許可と製造者の製品の指 示を信頼しなければならないとし、そのうえで、販売者である被告は、花火についての危険を 認識する契機があったか検討するという判断枠組みを提示する。また、子供の突発事故まで含 めて判断する火の輪花火事件に対し、具体的な購入者、使用者の行状等の認識、あるいは、そ の端緒が認められない限り、子供の行為の特異さ、花火を投擲弾のように使用することを考慮 しなくてよいとする。さらに、花火の使用説明について、基礎学校の生徒であっても、入学後、

被告くらい年数を経ていれば、原則として、すでにそれを読んで理解できることを前提にして いる。

同種の判決を扱う両判決であるが、判断枠組み、また、それを認定する際の判決が基礎とす る事実の認識を含め比較したが、結果、ミツバチ花火判決のほうが、販売者の責任・義務を認 めるにあたり、厳格であるといえる。20)

2.6. 製品を適切に貯蔵する義務

製造業者が製品を貯蔵する際には、販売業者の領域において、詰替えなどを新たな損害の原 因を設定しないように予防する義務がある。問題のない商品は、販売業者の管轄領域で、損害

(14)

を惹起する製品にしてはならない。21)

販売業者は、自己を通過する商品について、製品の安全性を(追加的であっても)損なうよう な取扱いがなされないよう配慮しなければならない。したがって、販売業者は、商品を、腐敗 させたり、傷つけないように貯蔵しなければならない。例えば、食品は衛生上、適切な温度で 保管し、輸送されなければならず、冷凍食品は、温度上昇を受けないようにしなればならない。

その他の損傷や汚染についても、販売業者は、従業員や顧客の不注意を阻止することで、予防 しなければならない。まず、不適格な者が、従業員や顧客とならないようにしなければならな い。また、報復や恐喝のための破壊活動が、実行者がその正体を明かさず、製品の製造全体に 対して、あるいは、個々の商品の毀損を目指して行われることがある22)。破壊活動の危険、特 に、嫌われている製造者の商品への侵害の危険は、販売業者の限界を示す。というのは、例え ば、食品についての(破壊活動に関する)操作は、あらゆる命ぜられた注意にもかかわらず、万 引きと同様に防止されていない。そのような対処の範囲は、第一に、危険の可能性による。し たがって、食品、医薬品、むき出しの化学物質の売買には、高度の注意義務が認められる。23)

2.7. 賞味期限と磨耗に注意する義務

消費者は、賞味期限の日付の提示により、製造者が、食品の固有の性質の保持が、適切な、

場合によっては、製造者が詳細に提示した保存条件の下、保証されると考える時点を知らされ る。しかしながら、賞味期限が、健康上の疑念、あるいは食品としてなんら問題がない性質の 意味を必ずしも含むものではない。それは、保証ではなく、情報である。24)

販売業者は、明白に危険な商品を市場・流通にもたらしてはならないため、販売業者は、製 品の使用の安全性を時間的に制限する品質保持期限に注意しなければならないだけではない。

消費者は、品質保持期限に達した商品が消費者に提供されないことを期待する。品質保持期限 を経過した商品、薬品、消毒薬を排除するか、商品としての適格性と耐久性について、独自の 許容された検査を行う義務がある。このことは、特に、食品(冷凍食品)に妥当する。これらは、

製造者によっても販売者によっても、規定に従った標記をして市場にもたらされる、すなわち、

賞味期限を備えていなければならない。しかしながら、賞味期限は、品質保持期限、最終消費 期限、あるいは、最終販売期限と等置できない。したがって、期限が経過した商品も販売され てもよいが、特に、規定にしたがった、詳細な品質コントロールを経てからである。25)

食品以外で、製品について製造時からの時間の経過で問題になるのものとして、製品の摩耗 がある。販売業者は、認識可能な、あるいは、予想される磨耗に、注意しなければならない。

これは、特に、中古品の場合に問題となる26)

[

タイヤ(8年経過) ]27)

(15)

原告は、被保険者

V

の車両保険者である。1989年

5

月に、Vは、新車のステーションワゴン を被告から購入した。同年

7

月に、Vは被告から、新品のリムを含め、タイヤを購入し、それ は、自動車に組み込まれた。その

8

日後、トレッドがはげ、アウトバーンを走行中、自動車の 右の後ろタイヤが破裂した。自動車は、横にそれ、防護板に何度も衝突し、この事故による損 害の賠償が請求された。

[

判旨 ]

被告が、立証されその内容を争わない私的な鑑定によれば、ほとんど走行していない、年数 を経たタイヤの破裂原因は、自動車に備え付けられる前に長く貯蔵していたか、自動車がほと んど使用されていなかったことによる。

被告が、タイヤが卸売業者からの納入の際に、製造されて間もないものではなく、それとは 逆に、タイヤがすでに

8

年経過していることを確信していた点で、被告は有責に行為をしたと いえる。被告は、年数を経たタイヤが非常に早期に摩耗することを認識していたので、被告は、

専門小売店として、タイヤの経年を検査することは可能であり、その義務を負う。それゆえ、

被告は、このタイヤを返品し、流通に置いてはならなかった。その点で、顧客、この場合、被 保険者

V

には課されず、専門の事業者としての被告に委ねられる製造物監視義務が問題となる。

また、提携している製造者の製造所から中古品を買う指定商人は、それが許可規定に適合す るか、それに違反し、不実なタイヤをつけることで改造されているか、検査されねばならない とされている28)

[

後輪タイヤ事件 ]29)

原告は、

1975

1

月に、被告から中古のスポーツカーを購入した。被告のその自動車で、

1975

3

月に事故に遭ったが、その事故は、取り付けられていた後輪ダイヤが規定に違反する状態 にあったことに帰される。以前の保有者は、もともとあった、車検証で規定されている

185 HR 13

タイプの後輪タイヤに代えて、

165 SR 13

タイプのタイヤを取り付けた。

1975

9

月にタイ ヤの製造者の照会で、タイヤが自動車のリムとの関係で認められないものであることに気づき、

その後、事故による損害の賠償を被告に請求した。

[

判旨 ]

被告の有責性は肯定されうる。というのは、原告は、R自動車の指定商人として、少なくと も、中古車を、許可規定に適合し、特に、個々の部分において、走行許可が失効するように改 造されていないか、検査する義務を負うからである。しかし、被告は、そのような表面的にす ぎない検査によっても、文字によりに明確に記号がつけられている後輪タイヤが車検証の指示 と合致するか気づくはずである。

そもそも、指定商人は、その専門知識と、製造者との関係から危険制御に寄与することが可

(16)

能なことから、単なる販売業者より高い義務が認められる30)

おわりに

製造物責任法において、販売業者が責任主体とされるのは、自己の名称や商標等を製品につ けているなど、一定の場合に限られ、法制定後も、契約責任や不法行為責任による追及も可能 である。その際には、製品についていかなる関与をなすのかに応じて、責任の前提となる、販 売業者の義務が定立される。製造により直接的に欠陥を創出した製造者に対し、販売業者は、

一般的なケースでは、欠陥を自ら創出し、自己の意思を持って市場に供給したとはいえない。

また、販売業者は、製造者と異なり、通常、製品の危険を認識し、排除するために必要な知識 も設備もなく、さらに、広範な品目の商品を扱う。製造者と同等の責任を期待することはでき ず、原則として、販売業者は、製造業者と同様の義務は負わないとされる31)

とはいえ、例えば、本連載(1)で扱った電動草刈り機事件では32)、販売業者であっても、その 製品について専門知識を持つ者として、製品を用い、自ら実演し、その操作を信頼させた場合 には、販売業者であっても、積極的な情報提供義務があるとされ、幼児茶事件(本稿

2.2.3)、ね

じ切断剤判決(自己の商標を付け準製造者ともされるケースであるが) (本稿

2.2.3)で示されてい

るように、一手販売業者である場合には製造者と同様の義務が、そして、その製品の販売につ いて国内で主要な地位を有しているといった事情がある場合には、レベルは下がるものの、単 なる販売業者には要求されない義務がありうることが認められている。販売業者については、

実際には、その形態も、販売実態まで考慮すれば、非常に多様であり、さらに、義務について バリエーション(レベルの高低も含め)が考えられるため、実際には、製造者と同様の、ある いは、単なる販売業者を超える義務を負うケースは、少なからず存在するように思われる。

また、販売業者は、塩素酸ナトリウム事件(本稿

2.2.4)、花火に関する 2

判決(本稿

2.2.5)に示

されているように、公法上の規定の遵守や、許可の存在により直ちに免責されず、それを超え る、あるいは、それとは独立して義務を負いうる。これを考慮し、販売業者がその責任を確実 に回避することを目指すならば、製品に対し受動的に関与するのみでは、実際には不十分であ るといえよう33)

1) Friedrich Graf von Westphalen, Produkthaftungshandbuch Band1 2.Auflage, 1997, §26 Fn. 15. 警告指示が、

販売した商品とは別に添付されていること自体、製造者の指示の欠陥となりうる。

2) Westphalen, a. a. O., §24 Rz. 205. 製造者は、商品の最終購入者だけではなく、監督者が阻止する、ある いは、事前に教示されることなく、製品のリスク領域に入ったと認められる者すべてに対して、指示義務を 負う。本稿で検討する、幼児茶事件BGH NJW 1995, 1286 ff. 、火の輪花火事件 OLG Düsseldorf VersR 1996, 118 f. 、ミツバチ花火事件 BGH JZ 1999, 48 ff. も、製品の購入者と、被害者である原告が異なる。

3) Westphalen, a. a. O., §24 Rz. 206. また、本稿で扱う、幼児茶事件BGH NJW 1995, 1286 ff. 、ねじ切断剤

(17)

事件 BGH 1994, 517 ff. でも、一手販売業者であることで、製造者と同様の義務を認めることが示されて いる。

4) 幼児茶事件BGH NJW 1995, 1286 ff. 本件では、幼児用飲料を製造・販売したHも被告であるが、本稿では、

ほ乳瓶の販売についての責任が判断されたMに関する責任の部分を中心に見る。

5) BGH NJW 1995, 1286, 1286. M19819月に歯学専門誌にほ乳瓶シンドロームについて執筆したW 士と連絡をとり、198111月から、インスタント茶の紙容器に帯封に「準備」の見出しの下、「瓶自体を 支え、子供にほ乳瓶として委ねないで下さい。例えば入眠前に、頻繁あるいは継続的に歯に飲料がかかると、

虫歯が発生する可能性があります」との指示を取り入れた。198112月から使用された帯封では、上記の 文を取り除き、それ以降、例えば、容器の中心に、「準備」の指示のもと、まず、「このお茶は十分に甘味が つけられています。甘味の追加は不要です。」との文が印刷され、直接その後に、「重要な指示 瓶自体を支 え、子供にほ乳瓶として委ねないで下さい。例えば入眠前に、頻繁あるいは継続的に歯に飲料がかかると、

虫歯が発生する可能性があります。晩の歯の手入れ後は、原則として、甘い物の飲食をさせないでください。 という文が印刷された。

6) BGH NJW 1995, 1286, 1287 f. 本稿注4参照のこと 7) BGH NJW 1995, 1286, 1288.

8) BGH NJW 1994, 517 ff.

9) BGH NJW 1994, 517, 519.

10) Gesetz über die Haftung für fehlhafte Produkte (Produkthaftungsgesetz, BGBl. 1989 Ⅰ S. 2198) 条 文の日本語訳として、吉野正三郎「EC 製造物責任指令 ドイツ製造物責任法」判例タイムズ 760 号 46 頁以 下参照。責任主体として製造者については以下の規定が置かれている。

第 4 条

(1) 本法の意味における製造者とは、完成品、原材料、あるいは部品を製造した者という。自己の名称、自己の 商標、あるいは他の者と識別しうる表記によって製造者と表示する者も製造者とする。

(2) 第 1 項にかかわりなく、経済的目的をもって、売却、賃貸、リースあるいは、その他の販売方法で自己の事 業活動の枠内で製造物をヨーロッパ経済共同体設立に関する諸条約の適用領域内に輸入する者も製造者と する。

(3) 製造物の製造者が特定できない場合には、製造物の各供給者も製造者とする。ただし、供給者が、請求の到 着後1ヶ月以内に製造者あるいは供給者に製造物を被害者に供給した者を明らかにした場合には、この限り ではない。輸入された製造物について、製造種の名前は明らかであって、第 2 項に掲げる者が特定されない 場合にも同様とする。

11) これに該当するものとして、日本の製造物責任法においては、232号で、自ら製造業者として当該製

造物の上にその氏名、商号、商標その他の表示をした者のほか、当該製造物の製造業者と誤認させるような 氏名等の表示をした者も製造業者等とし、責任主体とする。さらに、233号で、当該製造物の製造・

加工・輸入・販売に係る形態その他の事情からみて実質的な製造業者として認めることができる氏名等を表 示した者に該当する場合にも製造業者等とし、責任主体とされる。実質的製造業者は、販売者等の肩書きで 自己の名前を付しているものの、当該表示者が当該製造物の製造業者として社会的に認知されていたり、当 該製造物を一手販売している場合など、欠陥を有する製造物の製造・流通等に深く関与していたことに基づ き責任が認められるものであり、その範囲は不明確である。

通商産業省産業政策局消費経済課編『製造物責任法の解説』115頁以下(通商産業調査会 1994年)、経済 企画庁国民生活局消費行政第一課編『逐条解説 製造物責任法』83頁以下(商事法務研究会 1994年)

12) BT-Drucks. 11/2447 S. 19. 以前は、他の者の製品にその氏名や商標を備えた者が製造者とならんで責任を負

うのは、例えば、当該行為が、独自の製品の安全性の検査義務の(少なくともそう推論できる)引受けを暗に 示すような場合に限られたのに対し、製造物責任法412文により、自己の名称、自己の商標、あるい は他の者と識別しうる表記によって製造者と表示する者すべてに一般に責任が拡張される。

Hans Claudius Taschner / Edwin Frietsch, Produkthaftungsgesetz und EG-Produkthaftungsrechtlinie:

Kommentar, 1990, §4 Rn. 87 ff.; Friedrich Graf von Westphalen, Produkthaftungshandbuch Band2 2.Auflage, 1999, §75 Rz. 39 ff.; Hans Josef Kullmann, ProdHaftG Gesetz über die Haftung für fehlhafte

(18)

Produkte Kommentar 5., neuarbeitete Auflage, §4 Rn. 34 ff.; Walter Rolland, Produkthaftungsrecht, 1990, Teil Ⅰ §4 Rn. 23 ff.

13) Joachim Schmidt-Salzer, Die Bedeutung der Entsorgung- und der Schwimmerschalter-Entscheidung des Bundesgerichtshof für das Produkthaftungsrecht, BB 1979, 1, 6 ff.; Friedrich Graf von Westphalen, Subjektive Zurechnungsprobleme bei deliktischen Produzenten Haftung , Jura 1983, 133, 135 f.; Gert Brüggemeier, Produzemtehaftung nach §823 Abs. 1 BGB, WM 1982, 1294, 1308; Hans Josef Kullmann, Die neuere höchstrichterliche Rechtsprechung zur deliktischen Warenherstellerhaftung, WM 1981, 1322, 1326.; Gert

Brüggemeier, Deliktrecht, 1986, S.373 f.; Joachim Schmidt-Salzer, Produkthaftung Band Ⅲ/1: Deliktrecht 1. Teil 2. Auflage, 1990, 4.384, 4.387, 4.390.; Westphalen,a. a. O. [Fn. 1], § 26 Rn. 47 ff.; Rolland, a. a. O. [Fn. 12], Teil Ⅱ Rn. 75 f.

判決については、以下の注14)の自走クレーン事件、注15)の折りたたみ自転車事件、本文中のねじ切断剤

事件以外には、NJW 1981, 1609, NJW 1987, 372などがある。

14) [ 自走クレーン事件 ]BGH VersR 1977 839 f.

原告である保険会社は、1962年に被告から自走クレーンを購入したW社の責任保険者であった。W社はこ のクレーンを196712月に姉妹工場の土地で組み立てた。クレーンの腕にぶら下がっている28トンの金 属の煙突の組立ての最中に、調整装置の首のジャッキにある中間軸の回転軸がクレーンの腕の部分で損壊し た。クレーンが煙突とともに姉妹工場のボイラー室に上へ倒れ、それにより約50万マルクの損害が生じた。

原告は1970年の終わりにW社の保険者として姉妹工場に和解により10万マルクを支払い、原告は被告に3 万マルクの支払いを求めた。

クレーンの上部構造は、その種の車両について国際的に有名な専門企業である被告のイギリスの親会社によ り開発され、被告は、中間軸の回転軸が組み込まれた、すでに完成したクレーンのボディーを多くの部品と ともにイギリスの姉妹企業から購入し、その際、なお少なくとも一部を完成させた。中間軸の回転軸の破壊、

それによる損害発生の原因は、控訴裁判所における専門家の援助の下に行われた認定によれば、小歯車の直 前の断面のわたりの形成の欠陥であり、中間軸の回転軸の形成の欠陥は設計の欠陥によるものであった。さ らに、回転軸は重大な領域で付加的な張力のピークが生ずるほど角張って仕上げられていた。

判旨

被告が買主に対してクレーンの製造者として現れたという事情だけでは、責任法上決定的な意義はないとい う、控訴裁判所の出発点に法的に異議はない。企業がすでに商標あるいはその他の表記を付けることにより、

商品の製造者であるという印象を呼び起こしたにすぎないことで、すでにドイツ法でいわゆる準製造者とな るのかは、疑わしい。民法8231項基づくそのような無制限な準製造者は安全確保義務の侵害により根拠 づけられない。危険防除義務は、一般には、企業がその名前を外部者が製造した工業製品に付けたことよっ ては生じない。このことが、せいぜいのところ考慮されるのは、企業が、利用者がこの名前によってもたら される信頼の点で、さもなくば遵守したであろう予防措置の規定を怠ったことを考慮しなければならない場 合である。そのような方法で、販売業者をにより生じさせた外観はいずれにしても、不法行為法上、意義が 認められないのは、本件のように、それが、製品の利用者と被害者らとって意義がない場合である。

15) [ おりたたみ自転車事件 ]BGH NJW 1980, 1219 ff.

第一原告は、19706月に自転車販売業者から、折りたたみ式自転車を購入した。それは、自転車業者が 第二被告(以下、被告とする)である二輪車の卸売業者から仕入れたものであった。自転車は、以前の第一被 告のところで製造されたものである。第一被告は、それを被告に供給して、被告は自転車に商標「P」を付 けた。第一原告は、19708月に、急勾配の通りをペダルに立って登って行ったところ、足を乗せていた シャフトが折れ、第一原告は転倒し、重傷を負った。第一原告と法的保険者である第二原告は、被告に損害 賠償を請求した。

判旨

被告が、自転車に商標「P」を付けたことにより、「製造物責任の意味における製造者と同様に」見なされ、

責任法上、そのような者として扱われるとする控訴裁判所の見解は、過誤がある。「製造者」の性質は、そ れ自体、現行の不法行為法によれば、製品の欠陥により損害が惹起された場合に、損害賠償義務の根拠には ならない。

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