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韓国農村の祖先祭祀と資本主義的産業化

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Academic year: 2021

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内里で過ごした。この間、私たちが行ったのは、一つの地域同族集団の祖先 に対する民間宗教的行為と韓国地域社会組織との関わりについての調査だっ た(Janelli and Janelli 1982)。

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背景には、急速な資本主義的な産業化と小売業やサービス業の誕生が、村人 に無数の経済機会と、地位(アイデンティティ)創出の新しい選択肢と、社 会的絆確立の新しい選択肢を提供したことがある。しかし、これらの変化は 個人主義の台頭を表すものなのだろうか。 過去の祖先祭祀を「親孝行や父系的連帯の無私の表現」と単純化するのは、 素朴すぎるだろう。孝行を公然と尽くしてみせることは、その人物の(そし て広く考えれば彼あるいは彼女の親族集団の)評判にたいして実利的な効果 があったのだ。1970 年代に、内里権氏は、祖先の1人が行った親孝行を顕彰 する記念碑を建立した。顕彰碑は、他の多くの場合と同様、通る人たちによ く見えるように村に通じる本道沿いに立てられた。特に一族祭祀(時 シ 祭 ジェ )は、 両班 ヤンバン の地位を享受していたはるか昔の祖先との族譜的つながりを公に示すと いう付加価値を生んだ。両班の公式的な法律上の特権は百年以上も前に消滅 していたにもかかわらず、1970 年代の地域社会では両班の地位は世襲される と考えられていたために、地域では内里権氏の成員は相対的に高い社会的地 位にあると認められていた。家柄は、親族集団の特権と影響力を評価する上 で考慮すべき重要な事柄であり、一族全体が自分たちの属する親族集団の評 判に共通の利害を有していたので、一族の社会的地位を定期的に繰り返して 主張してきたのである。両班の地位にあった祖先の子孫であることを示すこ とは、親孝行と同様に一族祭祀の重要な役割だった。1973 年に、権堢とその 妻の祭祀をやめることが提案された時には、「もし祭祀が中断されれば、権堢 夫妻を祖先に戴く一族全体が両班としての地位を失うだろう」と反対する者 がいた。 内里権氏にとって、権堢とその妻の一族祭祀(時祭)に参列することは、 より高名な祖先につながる社会的ネットワークの成員としての立場を維持し、 再生産するために特に有益だったのである。内里権氏には、権堢を凌ぐ名声 や政治的地位を得た者がいなかったので、自分たちの自律性を主張するより も、権堢とその妻の子孫である地元氏族の一員の立場を維持する方が有利 だったのである(Janelli and Janelli 1978, 283)。

祖先が両班

ヤンバン

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(회)」への参加というように、毎日のようにさまざまな集団活動に参加して いた。対照的に、夫たちが仲間同士でいっしょに時間を過ごすことはほとん どなかった。明らかに、女性よりも男性のほうが、親族や同じ村民との相互 扶助の喪失を経験しており、村外の人たちを巻き込むことで新しく得られた 相互協力や援助よりも、そちらの喪失の方を深刻に感じていたのである。 おそらく、個人主義が台頭しているという男性の認識も、「ある種の社会的 関係は、ほかの関係よりも神聖だ」という観念から生じているにちがいない。 新しい社会的な関係を築いたり、新しい地位(アイデンティティ)を誇示し たりすることは、過去の社会的関係や地位の誇示より自己利益的だというわ けではない。過去の社会的関係や地位の自己利益的な性格が、往々にしてイ デオロギー的な正当性の陰に隠されてきたために、そうした印象を与えるの ではないだろうか。 実利的な目的を志向する新しい社会的関係が公然と容認されなかった(ブル デュー[1977]の用語で言うなら「歓迎される(enchanté)ことがなかった」) のは、儒教が、男系拡大家族とリネージを絶対的に神聖化し、男系拡大家族と リネージのメンバーが手にしてきた物質的政治的な利益を見えにくくし、古い 慣習のうちに隠された女性親族の過小評価を隠蔽してきたためである。(12) 【解説】 1. はじめに

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原注 1.“해체되는 가정 다시 세우자(解体される家庭もう一度立て直そう)”中央日報, 1998 年9 月 14 日参照. 2.“교육#203 논술 문제(教育#203 論述問題)”京郷新聞, 1998 年 7 月 10 日参照. 3.“샐러리맨 불경기 알뜰 작전 무장(サラリーマン 不景気節約作戦武装”中央日報, 1997 年 4 月 1 日参照.

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る。 訳注 1.【解説】で詳しく述べるが、20 世紀までの韓国社会の「族譜」と呼ばれる家系図に は女性の嫁ぐ前の実家の姓は記載されるが、名前は記載されない。これは、「女性は一 度嫁げば、実家との縁が切れ、婚家の一員として死後も夫とともに婚家の祭祀を受け る」ことを強く示すもので、「出家外人」という。昔話の中にも「嫁いだ娘が実家を裏 切る話」が語り継がれ、一度嫁いだ娘は婚家の父母と夫のために生きることが「孝」 あるいは「貞」とされる。しかし数ある昔話のなかには、妻の実父が娘の婚家を訪れ て知恵を授けられる話もあり、朝鮮王朝時代にもすべてが「出家外人」で終わってい たわけでもなさそうである。 参考文献

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図 1   権 堢 の子孫の系譜と祖先ごとの時祭供養の日にち 20 年前には、内里権氏の男性たちは、旧暦 10 月 10 日から 13 日までの4 日間に 30 余りの祖先の墓を巡って、 それぞれ別々に時シ 祭ジェ を執り行っていた。 埋葬された祖先や祖先夫婦の墓ごとに権氏一族が耕作地を用意し、墓の管理 者に耕作地を委ねるのと引き替えに時シ 祭ジェ の供物を準備させた ( 5 ) 。管理者は、 供物を準備して背チ 負子ゲ で近くの山の祖先の墓まで運び、そこで内里権氏の人 びとは厳粛に祭祀を執り行うのが常だっ
図 2   権グンホの一族の系列の名節祭祀( 1974 年) この堂内タ ン ネ の人びとの地理的な分散は決して特別なものではない。韓国の資 本主義的な産業化と近隣する地域や他の地域での営利事業が急増したおかげ で、内里権氏の多くの人びとが村を離れて都市で働くことができるようにな り、同じ堂内の人びとでも、同じコミュニティに住むということが稀になっ た。例えば、 1970 年代には、兄弟とその家族が内里に住んでいる男性を戸主 とする世帯は 18 あったが、 その数は次第に減少し、 1993 年には8世帯にな

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