専門図書館協議会と6年間
著者 名越 正信
雑誌名 同志社大学図書館学年報
号 37
ページ 82‑85
発行年 2011‑11‑30
権利 同志社大学図書館司書課程
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012574
1.はじめに
私は、2005年度から2010年度の6年間、専門図書館協議会(以下、専図協)事務局長 として携わり、このたび退任しました。企業人として長年勤務し、図書館には全くの素 人で就任しましたが、諸先輩をはじめ会員機関や関連団体企業の皆様のご指導ご協力を いただきながら、無我夢中の毎日でした。図書館界のみならず社会全体が大きな変化を 迎えている中で、専門図書館界も同様に新しい価値観による活動の在り方が問われ、こ のことが専門図書館の存在価値に直結する時代に直面しています。専図協が、官民学各 界の設立母体で構成され社会全体の動きに密着していることもあって、あらゆる分野の 方々に積極的にお会いし、図書館界の先入観に拘らず白紙の状態で意見をお聞きし活動 に反映できたことも、初心者の強みであったと思っています。
専門情報機関や専図協の概要と、思い出に残る事業の一端を紹介します。
2.専門情報機関と専図協
専図協の特徴は、公立・大学・学校などの図書館団体がそれぞれの設立形態により構 成されているのと異なり、特定の専門分野の事業を展開している組織がその組織目的に 則って専門情報の収集・保存を目的として設立された専門情報機関(専門図書館)を網 羅した機能別組織であることです。したがって、設立母体は中央官庁、地方自治体、独 立行政法人、団体、企業、大学など多岐にわたっています。
専図協は、このような専門情報機関すべて対象として組織していますが、日本医学図 書館協会のように特定の専門分野で組織している専門図書館団体もあります。また、特 定の資料(史料)の収集・保存という目的で設立された機関群としては、公文書につい
専門図書館協議会と6年間
名 越 正 信
専門図書館協議会と6年間
な役割をもって活動しています。(詳細は、専図協が3年ごとに発行している『専門情 報機関総覧』を参照)
3.専図協の組織と事業概要
専図協は、あらゆる分野の専門図書館、資料室 、 情報管理部門相互間の連絡と図書館 活動の有機的連携をはかり 、 その向上と発展に資することを目的として、1952年に設立 されました。組織基盤は、全国に7地区協議会を有しており、専図協中央の活動とそれ ぞれの地区協議会の活動を展開しています。各地区協議会は、現地の商工会議所や大学 や調査研究機関に事務局が設置されており、専図協の特色である官民学の交流・相互協 力・相互研鑚が地域ごとに進められています。専図協中央は、専図協全体に関わる事業 を行っており、全国研究集会などの全国規模の諸研修事業、機関誌『専門図書館』や『専 門情報機関総覧』などの出版事業、ホームページ・メルマガ・ブログなどの広報事業、
著作権問題に関わる活動、国際交流活動をはじめ、諸官庁や関連団体との折衝・連携な どを行っています。委員会組織は、事業目的により7委員会と2小委員会で構成してお り、地方議会図書室小委員会・私立図書館小委員会は、特別に設立母体別の対応体制を 敷いています。特に私立図書館小委員会は、2008年6月公布施行の改正図書館法で私立 図書館の新たな位置付けが行われ、私立図書館のほとんどが専門図書館であることから、
重点的に取り組むこととしました。(詳細は、『専門図書館243号』全国研究集会藤田節 子氏講演記録に掲載)
会員は機関会員を主としており、前述のとおり多岐にわたる図書館・資料室・情報管 理部門で構成され、正会員は443機関(2010年度末現在)となっています。
専図協の課題は、基本的には多くの図書館や図書館団体が抱えている課題と同様のも のがありますが、専図協の組織の特殊性に起因した諸課題も多く、2012年度に迎える創 立60周年を機に、あらためて課題の整理と取り組みの方向性を明確にする準備を進めて います。
専図協中央事務局は、従来は国立国会図書館内に置かれていましたが、2002年度から 独立し、現在は日本図書館協会会館6階の一室に事務室を構えています。陣容は、事務 局長とスタッフの2名で頑張っています。また、日本図書館協会専門図書館部会の事務 局も担当しており、中央事務局長は当協会常務理事に就任し、日図協との連携を図って います。
4.印象に残る取り組み
中央事務局長として6年間、会員機関や協力企業団体に的確なサービスを提供するこ とを念頭に、各委員会や地区協議会の皆様とともに文字通り猪突猛進の毎日でした。ま た、4年間は中部地区協議会の事務局長も兼務し、現場の実態を身をもって体験できた ことも中央事務局長として大変有意義でした。日々、印象に残る毎日でしたが、誌面の 関係で、以下の行事を紹介します。
(1)2008年度全国研究集会の京都開催(詳細は、『専門図書館232号』参照)
専図協では、メインイベントとして毎年「全国研究集会」を開催していますが、2008 年度は初めて京都を会場として7月24日・25日の2日間開催しました。1日目は同志社 大学の寒梅館ハーディーホールで全体会を、2日目は国立国会図書館関西館と京都リサー チパークで分科会を開催しました。母校での開催ということで、大変思い出深い行事で した。
1日目は、開会に先立って同志社大学図書館を見学し、オープニングセレモニーでは 古都のイラストを映しながら山口智氏(文学部1986年度卒)によるハンマーダルシマー の演奏が行われました。全体会では、主催者代表と共催の国立国会図書館長尾館長から の開会挨拶、専図協関西地区協議会事務局の大阪商工会議所代表と同志社大学宇治郷教 授から歓迎挨拶がありました。基調講演は、片山善博氏(当時:慶応義塾大学法学部教 授)より「知的立国と図書館のミッション」と題して行われ、続いて「源氏物語千年紀 と香の文化」と題して㈱松栄堂社長畑正高氏(商学部1975年度卒)から文化講演が行わ れました。
2日目は、分科会を6つのセッションで構成し、2会場で開催しました。分科会終了 後は国立国会図書館関西館・京都大学附属図書館・京都伝統産業ふれあい館・京都国際 マンガミュージアムを各グループに分かれて見学しました。
酷暑の2日間でしたが、祇園祭の余韻が残っている京都開催に参加者からは大変好評 を得ました。同志社大学で開催するにあたり、宇治郷教授をはじめ同大学関係者の皆様 に格別のご協力をいただき、あらためて厚くお礼申し上げます。
(2)国際交流~SLAとのジョイント・ミーティングの開催
あらゆる価値観の変化が国際的に進行していく中で、専門情報にかかわる組織や担当
専門図書館協議会と6年間
をテーマにして、日米の専門図書館関係者200名が参加し、SLAとJSLA代表の講演を はじめ、日米の事例報告とディスカッションを行いました。(詳細は、『専門図書館229号』
参照)
また、2011年2月10日~12日には、ジョイント・ミーティングを継承して「第2回ア ジア専門図書館国際会議(主催:SLAアジアン・チャプター、共催:JSLA)」を東京 で開催しました。「ユーザーの信頼獲得をめざして:デジタル時代における専門図書館 革新の重要性」をテーマにして、日米の講演をはじめ、中国・韓国・インドなど急成長 を続けているアジア諸国の専門情報機関や情報専門家の活動報告など、グローバルな視 点から討議・学習・情報交流を行いました。(詳細は、『専門図書館246号』参照)
(3)第96回全国図書館大会専門図書館分科会:日本図書館協会主催
標記分科会では、「専門図書館団体 大集合!」をテーマにして2010年9月17日に奈良 女子大学で開催しました。開催趣旨は「図書館界全体が決して明るい状況にない中で、
専門図書館はそれぞれ専門の主題領域を持ち、独自の持ち味を発揮している、また発揮 できる機関であるといえる。今回の分科会を通じて、それぞれの存在感の強みを再認識 し、関連団体がお互いの交流を深め、専門図書館の底力を問い直す」としました。
発表は、「専門図書館協議会」「日本病院ライブラリー協会」「日本病院患者図書館協会」
「NPO法人日本医学図書館協会」「日本薬学図書館協議会」「日本看護図書館協会」「法 律図書館連絡会」「NPO法人日本農学図書館協議会」(発表順)の8団体から行われま した。今回は初めての試みであり、参加できかった団体も含めて今後もさらに交流を深 めることとしました。
5.おわりに
専門図書館協議会がますます発展し、変化する情報環境の中で日本の図書館界のリー ダーの一員としての役割を果たすことを切願します。また、伝統ある同志社大学図書館 関係の皆様が図書館界全体の発展にリーダーシップを発揮いただきますよう、心からお 祈りいたします。
(なごし まさのぶ。前専門図書館協議会中央事務局長、
法学部法律学科1968年度卒)