博 士 ( 農 学 ) ニ ョ マ ン セ マ デ イ ア ン タ ラ
学位論文題名
ISOLATION AND IDENTIFICATION OF INDIGENOUS LACTIC ACID BACTERIA .THEIR ROLE AND APPLICATION IN PRODUCTION OF URUTANABALINESEFERMENTEDSAUSAGE
( 乳 酸菌 の 分離 と 分類 、 およ び 機 能解 析 と バりの伝統的発酵ソーセージ、ウルタンヘの応用)
学位論文内容の要旨
バリ島 の伝統的 な発酵 食品のー っウル タンの発 酵に関与 する乳 酸菌につ いて研 究した。 熱帯の 発酵ソーセージの独特の微生物叢を明らかにした。さらに単離した乳酸菌をスターターとして使用し、
速やかな発酵と品質の良いウルタンを製造する技術へと結びっけた。
発酵ソーセージは、ヨーロッパではサラミを代表として、多数の種類が知られており、その発酵に 伴う微生物についての研究も多数ある。ヨーロッパの発酵ソーセージと比較するとバりの発酵ソーセ ージであるウルタンは、大きく異なった要素がある。第一に、発酵温度、熱帯のしかも日向で発酵が 行われるため、発酵中の品温は、日中は50℃以上、夜間は30℃まで下がる。この発酵条件は、ヨー ロッパのソーセージが、通常25℃以下の環境で、しかも日影で発酵が行われるのとは、極端な相違 である。さらに、ウルタンには、豚肉のほかに、多量のスパイスが使用される。生ショウガ、ターメーリッ ク等、地方色豊かながスパイスが、多量に入れられる。この2つの要因で、発酵に関与する微生物は、
特徴的な種類の存在が、予想された。
乳酸菌 の分類に は、遺 伝学的な 解析が 不可欠で ある。従 来の形 態的およ び生理 学的分類 では、
系統進化学的な変化を反映していないことが、明確になってきた。ここ10年で、かなりの数の乳酸 菌が 再 分 類さ れ た 。本 研 究 にお い て は、 系 統 進化 学 に 基づく 方法で、 最新の 分類を行 った。
1.ウルタン発酵に関与する微生物の同定および単離
バリ島で製造されたソーセージから、5日間の発酵の各時期から微生物を分離して、分類し、発 酵 の 過 程 で ど の 様 な 微 生 物 が 活 動 し て い る の か 、 変 遷 は あ る の か を 調 べ た 。 発酵中のウルタンから71株の微生物を分離した。形態学的にみると77010が桿菌で、23%が球菌 であった。さらに、生理学的性質を加えて、13のグループに分けられ、各グループから任意に代表 株 を 選 択 し て 、16S rRNAに よ る 系 統 進 化 学 的 分 類 法 に よ っ て 、 単 離 株 を 同 定 し た 。 その結果 、特徴 的な微生 物変遷 があるこ とが判明 した。 すなわち 、発酵 の初期においては、
Lactobacillus plantarumに分類される乳酸菌が、急速に生育した。しかし、発酵後半では、減少し た 。 代 わ り にPediococcus acidilacticiが 、 生 育 し て く る こ と が 明 ら か に な っ た 。 この変遷には、実に巧妙なる発酵のメカニズムが、隠されていることがさらなる研究の結果わかっ
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てた(後述)。これらのほかにも、Lb.′ロ′cエmエ門 s、Lb. hilgロrdii、Lb. planta′umなどの乳酸菌の存在 を 明 ら か に し た 。 ウ ル タ ン の 微 生 物 を 調 べ た 研 究 は 過 去 に も 存 在 し た が 、最 新の 系 統進 化学 的方 法を用いて、部生物の変遷を明らかにしたのは、著者が始めてである。
2. Lactobacillus plantarumの性質
単 離 さ れ たLb. plantarumは 、 乳 酸 生 成 カ が 強 く 、 発 酵 の 初 期 に 急 速 に 増 殖 す る と と も に 乳 酸 を 急 速 に 生 成 し た 。 そ れ に よ っ て 肉のpHは 、速 や かに 低下 した 。こ れ は、 重要 な利 点を 生 み出 す。 す な わ ち 、pH低 下 に よ っ て 食 中 毒 を引 き起 こす 微 生物 類の 生育 を抑 制 し、 殺す こと がで き る。 肉類 で 問 題に なる 食中 毒菌 、Clost′idiロmやE.coliあるいは、S.ロH′eロsの生育は、低pHによって抑制さ れた。さらにpHの低下によって豚肉のタン パク質は、凝固して、ソーセ ージとしてのまとまりをっくる。
さ らに 離水 を促 進し て 、そ の水 は、ケーシングを通過して 蒸発して、水分活性を下げ る。これらよって 微生物の成育を 抑制する条件をっくり、保 存に役立っている。
3. Pediococcus acidilacticiの性質と発酵で の役割
P. acidilacticiは 、4つの 球形 の細 胞 が正 方形 に並 ん だよ うな 形態 が見 え る。 ウル タン 発酵 の 後期 に増加する本菌は、 タン′くク性の抗生物質で あるバクテリオシンを生産す ることがわかった。しかも、
本バ ク テリオシンの抗 菌スベクトラムを調べたと ころ、Lb. plantarumの生育 も阻害した。バクテリオシ ンの 生 産と 温度 との 関係 も 興味 深く 、30〜35℃ でバ クテ リオ シ ンは 旺盛 に生 産さ れる。一方、生育は 45℃ が 最も 活発 であ った 。 この ことは、ウルタン が、バリ島の自然条件の中 で発酵されることと深い意 味 が あ る 。 日 中 の 高 温 の 時 に は 、生 育 が旺 盛で 、夜 間 の温 度の 下が った 時 期に バク テリ オシ ン が生 産されていることに なる。
発 酵 初 期 に は 、Lb. plantarumが 主 要 な 微 生 物 と な り 、 そ の 後 減 少 し 、 一 方 、 発 酵 後 半 でP. acidilacticiが 増加 する 独 特の 微生 物変 遷は 、 バク テリ オシ ン の生 産と 関連 して いたに違いない。こ の微 生 物変 遷が 起こ るこ と によ って 、ウ ルタ ン の品 質に も貢献している。Lb. plantarumにの減少によ っ てpHが 低 下 し す ぎ ず 、 よ っ て 離水 も 制御 され 、し っ かり とま とま った ソ ーセ ージ とな って い る。
本バ ク テリ オシ ンを 分配 ク ロマ トな どを 利用 し て精 製・ 純化 し た。 分子 量は 、4611で44個のアミノ酸 で 構 成さ れ たペ プチ ド抗 生 物質 であ り、100℃15分で も 活性 を保 つ耐 熱性 バ クテ リオ シン であ っ た。
そ のN末 端 か ら20個 の ア ミ ノ 酸 配 列 を 分 析 の 結 果 、pediosin PA‑1と90% 類 似 す る が 、2個 の チ ロ シンがシスチンに置 換されており、新規のバク テリオシンといえる。
4.単離乳酸菌をスタータ ーとして用いたウルタン発酵
単 離 株 の う ちLb. plantarumU201とP.acidilactici U318株 をそ れぞ れ純 粋培 養 して 、ス ター ター としてウルタン発酵をお こなった。発酵状態を比較す るとともにE. coliあるい は、S.aureusなど害を生 じ る 可 能 性 の あ る 菌 も 添 加 し て、 殺菌 活性 な ども 調べ た。 発 酵温 度は 、30℃と45℃と12時 間ご とに 入れ替えて5日間行った。
Lb. plantarumU201の み を ス タ ー タ ー と し て 添 加 し た 実 験 区 で は 、 乳 酸 に よ るpH低 下 は 、 速 や か に起 きた 。し か し、 大腸 菌群 の菌数の減 少も緩やかだった。P. acidilactici U318単独の添加 では、1 日 後 のpHが4.8以 上 と 酸 性 化が 遅 れ、 ソー セー ジと し ての 肉の まと まり が 悪か った 。こ れ は、SDS電 気永 動で 調べ た 可溶 性タ ンパ ク質 の 挙動 と. 一致 し ていた。2つの 菌をスターターとして同時に 添加し た 場 合 は 、 発 酵 初 期 に は 、L6.plantarumU201が 旺 盛 に増 殖 して 、pHも急 速に 下 がり 、そ の後 、菌
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数は、定常値から減少に転じ、一方、P . acidilactici U318 の生育が亢進した。自然界で起こる発酵 の再現がなされた。スターターを使用した場合は、いっも安定した発酵を起こせることが利点であり、
自然発酵における不安定性のりスクを回避することができる。
本研究によって熱帯での発酵ソーセージにお いて見られる乳酸菌の役割分担とその仕組みを解 明することができた。
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学位論文審査の要旨
学位論文題名
ISOLATION AND IDENTIFICATION OF INDIGENOUS LACTIC ACID BACTERIA ,THEIR ROLE AND APPLICATION IN PRODUCTION OF URUTAN,ABALINESE FERMENTED SAUSAGE
( 乳 酸 菌 の 分 離 と 分 類 、 お よ び 機 能 解 析 と バ り の 伝 統 的 発 酵 ソ ー セ ー ジ 、 ウ ル タ ン へ の 応 用 )
本 論 文 は 、 5 章 か ら な り 、 図 18 、 表 10 、 文 献 94 を 含 む 総 頁 数 88 の 英 文 論 文 で あ る 。別 に 参 考論 文1 編 が付 され てい る。
バリ 島の 伝統 的な 発 酵食 品の ーっ ウルタンについて研究 し、熱帯の発酵ソ ーセージの独特 の 微生 物叢 を明 らか に した 。さ らに 単離 した 乳酸 菌を スタ ータ ーと して 使用 し 、速 やか な発 酵 と品 質の 良い ウル タ ンを 製造 する 技術 へと 結び っけ た。
発酵 ソー セー ジは 、 ヨー ロッ パで は、 多数 の種 類が 知ら れて 、こ れら と比 較 する とバ りの 発 酵ソ ーセ ージ であ る ウル タン は、 大き く異 なっ た要 素が ある 。第 一に 、発 酵 温度 、熱 帯の し か も 日 向 で 発 酵 が 行 わ れ る た め 、 発 酵 中 の 品 温 は 、 日 中は 50 ℃ 以上 、夜 間は 30 ℃ まで 下 が る。 この 発酵 条件 は 、ヨ ーロ ッパ のソ ーセ ージ が、 通常 25 ℃ 以下 の環 境で 、 しか も日 影で 発 酵が 行わ れる のと は 、極 端な 相違 である。ウルタンには 、豚肉のほかに、多量のスパイス、
生 シ ョ ウ ガ 、 タ ー メ ー リ ッ ク 等が 、入 れら れる 。こ の2 つ の要 因で 、発 酵に 関与 する 微生 物 は 、特 徴的 な種 類の 存 在が 、予 想さ れた 。
1 .ウルタン発酵に関与する微生物の同定および単 離
発 酵 中 の ウ ル タ ン か ら 71 株 の 微 生 物 を 分 離 した 。形 態学 的に みる と77 %が 桿菌 で、 23 % が 球菌 であ った 。さ らに 、生 理学 的性 質を 加 えて 、13 のグ ルー プに 分け られ 、各 グループか ら 代 表 株 を 選 択 し て 、 16SrRNA に よ る 系 統 進 化 学 的 分 類 法 に よ っ て 、 単 離株 を同 定し た 。 そ の 結 果 、 特 徴 的 な 微 生 物 変 遷 を 見 い だ し た 。 す な わ ち 、 発 酵 の 初 期 に お い て は 、 Lactobacillus p ′a ロぬrHm に分類される乳酸菌が、急速に生育したが、発酵 後半では、減少 した。代わりにnd め卯 凹usad 直ぬ¢むイが、生育してきた。
この 変遷 には 、実 に巧 妙な る発 酵の メカ ニ ズム が、 隠さ れて いる こと がさ らな る研究の結 果わかってた(後述) 。これらのほかにも、己6 .ぬ朋fm わお、己6 .由ヰ卵r 弧己6 ,p ムロぬru 閲
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査
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主
副
副
などの乳酸菌の存在を明らかにした。ウルタンの微生物を調べた研究は過去にも存在したが、
最新の系統進化学的方法を用いて、部生物の変遷を明らかにしたのは、著者が始めてである。
2 . Lactobacillus p ぬヵぬ rum の性質
単離された工6 .ルロ細rum は、乳酸生成カが強く、発酵の初期に急速に増殖するとともに 乳酸を急速に生成した。それによって肉の pH は、速やかに低下した。食中毒を引き起こす 微生物類の生育を抑制し、豚肉のタンパク質を凝固させ、ソーセージとしてのまとまりをつ くる。さらに離水を促進して、その水は、ケーシングを通過して蒸発して、水分活性を下げ る 。 こ れ ら よ っ て 微 生 物 の 成 育 を 抑 制 す る 条 件 を っ く り、 保 存に 役 立 って い る。
3 . Pediococcus acidilactici の性質と発酵での役割
Pa cidila ctici は、ウルタン発酵の後期に増加する菌である。単離株のうち2 株は、バクテ リオシンを生産した。抗菌スベクトラムを調べたところ、Lb. p 珀ロぬru 問の生育も阻害した。
バクテリオシンの生産と温度との関係も興味深く、 30 〜35 ℃でバクテリオシンは旺盛に生産 される。一方、生育は45 ℃が最も活発であった。このことは、ウルタンが、バリ島の自然 条件の中で発酵されることと深い意味がある。日中の高温の時には、生育が旺盛で、夜間の 温 度 の 下 が っ た 時 期 に バ ク テ リ オ シ ン が 生 産 さ れ て い る こ と に な る 。 発酵初期には、工6 ,p ムロぬrH 問が主要な微生物となり、その後減少し、一方、発酵後半で Pad 捌 ac むガが増加する独特の微生物変遷は、バクテリオシンの生産と関連していたに違い ない。こ の微生物 変遷が起こることによって、ウルタンの品質にも貢献している。工6 , p ′a ロぬ ru 閲にの減少によって pH が低下しすぎず、よって離水も制御され、しっかりとまと まったソーセージとなっている。
本バクテリオシンは、分子量、4611 で 44 個のアミノ酸で構成されたペプチド抗生物質で あり、 100 ℃ 15 分でも活 性を保つ 耐熱性バ クテリオシンであった。その N 末端から20 個の アミノ酸 配列を分 析の結果 、 pedi08inPA . 1 と 90 %類似するが、 2 個のTyr がCy8 に置換さ れており、新規のバクテリオシンといえる。
4. 単離乳酸菌をスターターとして用いたウルタン発酵
単離株のうちLb. p 幽口ぬru 閲 U201 と Pad めぬc £血 fU318 株をそれぞれ純粋培養して、ス ターターとしてウルタン発酵をおこなった。発酵状態を比較するとともに Ec (小あるいは、
& au 朋u ぢなど害を生じる可能性のある菌も添加して、殺菌活性なども調べた。発酵温度は、
30 ℃と45 ℃と12 時間ごとに入れ替えて5 日聞行った。
工 6 . j ぬロぬ ru 閲U201 単菌を添加した区では、pH 低下が、速やかに起きたが、大腸菌群の 菌 数 の減 少 は 緩や か だっ た 。 Pad 出 艪 c 捌 U318 単独 の添加で は、 1 日後 の pH が 4 . 8 以 上 と酸性化が遅れ、肉のまとまりが悪かった。2 つの菌をスターターとして同時に添加した場 合は、発酵初期には、工6 .p 幽口ぬ ru 皿U201 が旺盛に増殖して、pH も急速に下がり、その後、
菌数は、定常値から減少に転じ、一方、 Pad 鹹ぬ c £血fU318 の生育が亢進した。自然界で起 こる発酵の再現がなされた。スターターを使用した場合は、いっも安定した発酵を起こせる こ と が利 点 で あり 、 自然 発 酵 にお け る 不安 定 性の り ス クを 回 避す る こ とがで きる。
本研究によって熱帯での発酵ソーセージにおいて見られる乳酸菌の役割分担とその仕組み を解明することができた。
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よって審査員一同は、ニヨマンセマヂィアンタラが博士(農学)の学位を受けるのに 十分な資格を有するものと認めた。
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