• 検索結果がありません。

斜面住宅地における持家世帯の居住指向に関する研究 [ PDF

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "斜面住宅地における持家世帯の居住指向に関する研究 [ PDF"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)斜面住宅地における持家世帯の居住指向に関する研究 金子 晃子. 1. 研究の背景と目的. 事務所以外の 940 世帯とした (有効票回収率 : 71.5%)。. 人口減少と高齢化が進行するわが国において、 高度経. 2-3. 分析の視点. 済成長期に開発された既成住宅地では、世帯の高齢化や. はじめに、アンケート回答世帯の現在の場所における居. 不在住化による住宅ストックの管理停滞が住環境の悪化. 住期間を住宅の所有関係別に示す (図 1)。 地区全体で. を招き、 二次的な人口流出をもたらすことが懸念される。. は持家世帯が 2/3 以上を占めている。 さらに、居住期間も. 一方、 本研究で対象とする斜面住宅地では、 このような. 長く、 なかでも借地持家世帯の約 8 割が現在の場所に 30. 状況下においても、近年は土地や住宅価格の低下や大規. 年以上住み続けている。 一方、民間借家では居住期間が. 模商業施設の新規立地を好感した持家取得世帯が一定. 10 年未満の世帯が 3 割を占めており、 世帯の入れ替わり. 数見られるなど、 住宅 ・ 宅地ストックの継承や更新の動き. が多いことがわかる。. は、 その時期の社会経済情勢や住宅事情を反映して推移. 本研究では、 アンケート回答世帯のうち、 戸建て持家世. している。 しかしながら、 地区で持家を取得した世帯の居. 帯を対象とし、 入居時期ごとの居住指向を明らかにするた. 住指向の変化と、 住宅・宅地ストックの継承や更新の実態. め、 世帯の居住期間を 10 年単位で区分した居住層を設. を経年的に捉える研究は充分にはなされていない。. 定する。 なお、 居住期間が 30 年以上の世帯を 「定住層. 以上より、 本研究では世帯収減期にある斜面住宅地を. 30」、 20 ~ 29 年の世帯を 「定住層 20」、 10 ~ 19 年の世. 対象として、 地区全体の持家世帯の居住指向について、. 帯を 「継住層」、 10 年未満の世帯を 「住替え層」 と呼ぶ. 入居時期ごとの傾向を分析することで、今後の斜面住宅地 の再編の手法に関する知見を得ることを目的とする。 2. 研究の方法 2-1. 調査対象地区の概要 本研究では、 北九州市八幡東区枝光一区 (平成 2011 年人口 : 3,016 人、 高齢化率 : 39.0%). 注 1). を調査対象地. 区とする。地区のグロス面積は約 44.8ha、標高 5m ~ 110m にかけて戸建て住宅を中心に約 1,200 棟の住宅が立地し. 図 1 住宅の所有関係別の居住期間. ている。 当地区は 1901 年の八幡製鉄所の操業以降、 工 場労働者の住宅需要を受けて形成された斜面住宅地であ るが、 1966 年~ 1975 年にかけて製鉄所の再編 ・ 合理化 によって労働人口が流出し、その後もモータリゼーションの 進展や郊外住宅地の拡大に伴い、全国に先んじて居住世 帯の減少や高齢化が進行している。 2-2. 調査方法 本研究では、地区の町内会に加入する全世帯を対象に アンケート調査を行った ( 平成 24 年 9 月 1 日~ 10 日 )。 アンケート票は主に世帯主に対して記入を依頼し、内容は 世帯の基本属性や住まいに関する将来の意向、 まわりの 環境、 地域のまちづくり、 買い物や外出に関する項目など である。 なお、アンケート調査は留置方式で行い、町内会 を通じて配布 ・ 回収を行った。 アンケート票の配布世帯数 は 1,315 世帯、 回収世帯数は 943 世帯であり、 有効票は 40-1. 図 2 居住層の定義.

(2) また、 車輌進入不可の住宅への入居は 「定住層 30 /. こととする。 さらに、 それぞれの住宅の属性をより詳細に把握するた. 更新なし・借地 」 で 50.0% と最も高く、 次いで 「定住層 20. め、 居住期間と建築年数をもとに入居時及び入居以降の. /更新なし」 が 44.8% となっている。 これらの時期は前述. 建物更新の有無を指標に加え、 図 2 で定義する 9 区分の. のように住宅が建て詰まっていたことにより、 車輌アクセス. 居住層について分析を行う。 「定住層 20」 「継住層」 「住. の良い宅地が少なかったことが主な要因として考えられる。. 替え層」 における更新ありの大半は新築入居であり、更新. ここで、 物件情報の取得方法についてみると、 相続や. なしは中古入居にあたる。「定住層 30 /更新あり 」 は入居. 戻り入居が減少しているのに対し、 不動産業者の紹介に. 後の建て替えである。 なお、 「定住層 30 /更新なし 」 に. よる情報取得が全体的に増加傾向にあることがわかる。 ま. ついては借地の割合が高く、 土地の所有関係の違いによ. た、 友人・知人の紹介が一定割合みられることは注目され. る居住指向の差異が反映されることを考慮し、 借地 ・ 持地. る。 特に、 建物更新ありについては、 20 年以上 2 割程度. で細分している。. を保っており、 親族や不動産業者とは別の、 物件情報を. ここで、 居住層区分に沿って当地区の住宅事情を概括. 仲介する主体の可能性が示唆される。 4-2. 現住宅への入居理由と居住層のエリア分布. すると、 30 年前は製鉄所の合理化以降にあたるが、 世帯. 続いて、 現在の住宅への入居理由. 減少は大きく進んでおらず、住宅は建て詰まっていた。 20. 注 2). を図 5、 各居住. 年前頃までは車輌アクセスの良い場所での空宅地はまだ. 層のエリア分布を図 6 に示す。 まず、『現住宅の住居費の. 少なかったと言われる。 しかしながら、 その後は世帯減少. 手頃さ』 を理由に挙げる世帯は、 各層の更新なしにおい. による空家 ・ 空宅地の増加や、 地価の低下が進み、 郊外. て常に見られる。 特に、 地価の低下が起きて以降の増加. 住宅地との価格差も縮まり始めた。 さらに近年、平成 18 年. が著しい。 さらに、 『住宅の狭さや古さの改善』 をみると、. に製鉄所跡地へ大規模商業施設が進出したことで、 地区. 更新なしのなかでも 「 住替え層 」 において半数以上が理. の生活利便性が向上し、 道路沿いの宅地での建替えや新. 由に挙げている。 「 住替え層/更新なし 」 は大半が中古. 築が徐々に進んでいる。. 物件に入居していると考えられるため、 住居水準の改善を. 3. 戸建て持家世帯の居住層別世帯構成. 図る際に、 経済性を重視した世帯が多い層と考えられる。. まず、居住層別の世帯構成を示す ( 図 3)。 「住替え層」 では、高齢者のいない世帯が 8 割以上を占める一方、「定 住層 30 /更新なし 」 では、 高齢単身世帯と高齢夫婦の み世帯が約半数であり、 特に借地持家世帯では後期高齢 期の単身 ・ 夫婦のみ世帯が 52.3% と、 世帯の高齢化が著 しい。 これに対し、「定住層 30 /更新あり 」 では高齢者の み世帯の割合が低い。 ここから、 家族間での居住継承が 進んでいることが読み取れる。 4. 現住宅における入居時の居住指向 4-1. 住宅の車輌アクセス条件と物件の取得情報 図 3 居住層別の世帯構成. 次に、 持家取得時の居住指向を把握するため、 居住層 別に、 住宅の車輌アクセス条件と物件情報の取得方法を 示し ( 図 4)、 分析を行う。 車輌アクセス条件は、 建物更新ありの居住層では良く、 更新なしでは悪いものが多い。 特に、 「住替え層/更新 あり 」 では、 車輌進入不可の宅地への入居は見られない。 一方、 更新なしの居住層においても、 近年の入居ほどア クセス条件が向上する傾向にある。 これらより、 今後は更 新の有無に関わらず、 車輌アクセス条件の良い住宅立地 を指向する世帯が増加していくことが予想される。 他方で、 「住替え層/更新なし 」 には、 依然として 4 割近くが車輌 進入不可の住宅へ入居しており、 サービス車輌の進入路 確保などが課題として挙げられる。. 図 4 現住宅の車輌アクセス条件と物件情報の取得方法. 40-2.

(3) 次に、 居住層のエリア分布をみると、 山手 ・ 中腹 C で は 「定住層 30」 の割合は低く、「定住層 20」 の割合が高 い。 このことからも、 「定住層 20」 の入居時における住宅 需給の状態が、現在の地区の居住構成において重要なポ イントとなっていることがわかる。 「定住層 20」 の入居理由 の内訳をみると、 更新ありとなしともに 『親や子との同居 ・ 近居』 の割合が最も高い。 しかし、 次に割合の高い理由 が、 更新ありでは 『住宅の狭さの改善』、 『生活利便性の 改善』 であるのに対し、更新なしでは 『結婚して新居を持 つため』 であり、 世帯構成をみても更新ありの高齢世帯で 図 5 現住宅への入居理由 (複数回答). より高齢化が進行していることから、子育てを一定期間行っ た後の世帯と、 結婚して間もない世帯というように、 更新の 有無によって入居時の世帯属性が異なることがわかる。 一方、 「住替え層」 では更新ありで 『結婚して新居を持 つため』 が更新なしより高く、 『子育てや入学のため』 が 低くなっていることから、 近年ではその傾向に変化がみら れている。 5. 現住宅における現在の居住指向 5-1. 現住宅における定住 ・ 住替え意向 現住宅における定住 ・ 住替え意向を、 『将来もずっと住 み続けたい』 『できれば住み続けたい』 (定住意向)、 『で きれば住替えたい』 『近いうちに住替える予定だ』 (住替え 意向) の 4 区分で図 7 に示す。 さらに、 定住 ・ 住替え意 向の理由を、 図 8、 図 9 にそれぞれ示す。 定住意向世帯の割合は全居住層で 7 割以上を占め、 戸建て持家世帯では全体的に定住意向が強いことがわか る。 このうち 「 住替え層 」 に着目すると、 定住意向の理由 は、「 住替え層/更新あり 」 では一般的な郊外住宅地と同 様に、 『通勤 ・ 通学や買い物』 などの生活利便性の高さ を評価する傾向にある。 一方、「 住替え層/更新なし 」 で は 『自然環境や眺望の良さ』 など、 斜面住宅地ならでは の魅力を評価する傾向が強い。 このことは、 「住替え層/ 更新なし」 の割合が山手で最も高いことからもうかがえる。 また、 『できれば住み続けたい』 という、 積極的な定住. 図 6 居住層の現住宅立地のエリア区分 (単位 : 世帯). 意向を持たない世帯の割合は 「定住層 20 /更新なし」 で 最も高い。 これらの世帯は、定住意向の理由として 『住宅 が気に入っているから』を挙げる世帯の割合が他の居住層 と比べ最も低く、 前述のように、 住宅の立地条件の悪さが 大きく起因していると考えられる。 続いて、積極的な定住意向を持つ世帯の割合が層内で 大きく異なる 「 定住層 30」 に着目する。 「 定住層 30 /更 新なし ・ 持地 」 の住替え意向の理由をみると、 『日常の買 い物の不便さ』 が 46.5%、 『車の寄り付きの悪さ』 が 44.2% となっている。 高齢者のみ世帯が半数を占めるこの層は、 世帯主の平均年齢が 75 歳を超えており、自家用車やサー. 図 7 現住宅における定住 ・ 住替え意向. 40-3.

(4) ビス車輌のアクセスの悪さが住替え意向の要因となってい. する世帯が多く、それらは郊外住宅地と同様、生活利便性. ることがわかる。. を評価する 「 住替え層/更新あり 」 と、眺望など斜面住宅. 加えて、 この層では身体的負担に関する理由以上に、. 地ならではの魅力を評価する 「 住替え層 / 更新なし 」 の 2. 『住宅の老朽化』が 53.5% と高い割合を占めている。 また、. つに大きく分けられる。 また、 平地以外のエリアでは、 更. 『近所の世帯が減って寂しいから』 や 『近所に空家が増え. 新なしが更新ありを上回っており、 斜面の上方であっても、. て不安だから』 を理由として挙げる世帯が 25.6% みられ、. このような立地の住宅には今後も需要があると考えられる。. 周辺の世帯数の減少や空家の増加が、長期間居住してい. 今後の課題としては、「 住替え層 / 更新なし 」 においても、. る世帯にとって不安要素となっており、 実際に二次的な人. 時間の経過に伴うストック価値の低下を防ぐため、 住宅の. 口流出を引き起こす要因となり得る。. 維持管理を行なっていく必要がある点、 「 定住層/更新な し 」 では住み替え理由の主要因となるほどに老朽化が問. また、 住替え意向が最も高い居住層は 「 定住層 20 /. 題となっている点が挙げられる。. 更新あり 」 である。 この層では、 約 8 割の世帯が車輌アク セス条件の良い立地に居住しているものの、約 1/3 の住宅 が、 地区で最も急峻な地形条件にある中腹 C に位置して おり、 周辺の道の歩きにくさが懸念される。 加えて、 世帯 主の平均年齢が 62.3 歳であることから、 高齢期に差し掛 かるにつれ、 斜面地特有の高低差が身体的に負担となり、 住替えを考えるに至っていると推察される。. 注 1) 住民基本台帳による 2010 年 9 月 30 日時点の人口、 世帯数及び年齢人口の集計結 果による。 また、 この集計は上本町 1,2 丁目及び山王 1 〜 4 丁目での集計であり、 枝 光一区での集計値とは若干異なる。 注 2) 入居理由の内訳 (統合した項目のみ) : 「身辺事情の変化」親や子との同居 ・ 近居の ため、 子育て ・ 入学のため、 介護のため、 結婚して新居を持つため、 就学や就職 ・ 転勤のため、 災害や追い立てにあったため/ 「敷地条件の改善」車庫付きの住宅に住 むため、 眺望のよいところに住むため、 日当たり ・ 風通しのよいところに住むため 謝辞 本研究にあたり、 枝光一区町内会長、 枝光一区地域まちづくり協議会ならびに枝光 一区地域住民の方々に多大なご協力を頂きました。 ここに記して深謝いたします。. 6. まとめ 本研究では、斜面住宅地である北九州市八幡東区枝光 一区において、 居住期間と建物更新の有無の 2 軸で居住 層を分類することで、 各入居時期の居住指向が社会経済 情勢や住宅事情を反映して推移していることを明らかにし た。 特に、 近年では車輌アクセス条件の良い場所に入居. 参考文献 1)住宅利用形態の類型化とその階層構成 ‐ 公的賃貸住宅居住層の多層化現象論 1 ‐ 竹下輝和 ・ 他 日本建築学会論文報告集第 336 号 昭和 59 年 2 月 2) 居住収縮が進行する斜面住宅地における住宅宅地の利用動態 その 1 ~ 3 志賀勉 ・ 他 日本建築学会大会学術講演梗概集 平成 21 年度 3) 斜面住宅地における戸建住宅の居住更新に関する研究 高峰真麻 九州大学大学院修士論文 平成 23 年度. 図 8 定住意向世帯の定住理由 (複数回答). 図 9 住替え意向世帯の住替え理由 (複数回答). 40-4.

(5)

参照

関連したドキュメント

 通常,2 層もしくは 3 層以上の層構成からなり,それぞれ の層は,接着層,バリア層,接合層に分けられる。接着層に は,Ti (チタン),Ta

主として、自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為以外の開

「30 ㎡以上 40 ㎡未満」又は「280 ㎡ 超」の申請住戸がある場合.

居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について 介護保険における居宅介護住宅改修費及び居宅支援住宅改修費の支給に関しては、介護保険法

この分厚い貝層は、ハマグリとマガキの純貝層によって形成されることや、周辺に居住域が未確

 このようなパヤタスゴミ処分場の歴史について説明を受けた後,パヤタスに 住む人の家庭を訪問した。そこでは 3 畳あるかないかほどの部屋に

延床面積 1,000 ㎡以上 2,000 ㎡未満の共同住宅、寄宿舎およびこれらに

台地 洪積層、赤土が厚く堆積、一 戸建て住宅と住宅団地が多 く公園緑地にも恵まれている 低地