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人間の教育に関する一考察

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Academic year: 2021

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人間の教育に関する一考察

 

関係あるいは f生きることjの観点から

 

学校教育専攻 総合学習開発コース 大 西 友 恵

1 .はじめに

幼い頃の私の夢は f学校の先生jになる ことだった。しかし、小中学校時代に出会 った教師たちの無神経ともとれることばに、

何度も傷つき辛い思いをした。そんな自ら の体験と、教師としての経験から、 f他者J とかかわることについて問題意識を持ち、

本研究を行うこととした。

私たちは他者とかかわるとき、コミュニ ケーションツールとして「ことばJ を用い ることが多い。「ことばjは他者とかかわる 上で大変便利で重要な媒体である。しかし、

ことばによるコミュニケーションには、通 常私たちがよく経験しているように,しば しば誤解や曲解といった危うい事態が常に つきまとっている。このような不安定な要 素を含んだ「ことばJ を媒体として、我々 は他者とかかわっているのである。このよ うな状況のなかで、私たちは、ことばを媒 体として他者を他者の立場に立って、どこ

まで理解できるのだろうか。

このことについて、本論文第 l章におい て、高等学校における生徒とのかかわりに 関する自らの経験と対照させながら、丸山 による二つの論考(r教育において<他者>

とは何か一ヘーゲルとウィトゲンシュタ インの対比からーJf教育学研究l}J及び「教 育・他者・超越一語りえぬものを伝えるこ とをめぐって‑J 

r

教育哲学研究2)J)、さら

指導教官 近森憲助

に、アラン・

・ベック

( A a r o n .

T. 

B e c k )  

の 著 書 『 愛 が す べ て で は な い (LOVE IS  NEVER ENOUGH) 3)J を参考にしながら他者 を理解すること及びことばによるコミュニ ケーションについて考察を加えた。第2章 では、第1章での考察を踏まえ、ことばを 介するコミュニケーションに関する内容、

特に、 「ことばの伝わり難さに対する気づ きJ をねらいとして、高校生および大学生 を対象とした研究授業を実践した。受講生 には授業終了後、ワークシートと感想文の 提出を求め、その記述の分析をもとに研究 授業を評価し、さらに、このようなテーマ による今後の授業のありようについて提案 した。

2.理解する・ことぱ・コミュニケーシ君ン 丸山の二つの論考から得た示唆をもとに、

自らの教育現場における過去の経験につい て考察を加えた。その結果、教育という働 きかけにおいて、生徒という他者を理解す ること、受け入れること、さらに、そのこ とを介して生徒とかかわることの重要性が 再認識された.

次に、理解と受容にとって重要なことば を媒体とするコミュニケーションに関し、

上記ベックの著書を手がかりに人間のこと ばを介する認知について検討した。ベック は会話において相手が言ったことを自分の

‑202‑

(2)

中で解釈するシステムを「コード化システ ム (Codingsys tem)  4) Jと名づけ、その コード化システムの動作は、会話時の肉体 的精神的な状態をはじめとする様々な状況 的な要因によって影響を受けるため、シス テムによる解釈結果は常に不安定で信頼性 の低いものになりがちであると指摘してい る。これは、ことばを介して得られた情報 は,受け取り手の中でそのときの状況に依 存して修飾されたり、異なった意味へと変 換されたりすることにより、相手が言いた いこと、伝えたいことが、そのままの形で 受け取り手に伝えられることが、むしろ稀 なことであることを示すものである@

したがって、ことばを介して他者を理解 し、受容し、他者とかかわるには、少なく とも「他者性j と「不安定で信頼性の低い コード化システムJという二つの大きな障 害があることとなる。このことは、私たち は何らかの学習を通じて、このようなこと ばによるコミュニケーションのありように 気づき、そのことを自覚しなくてはならず、

またそのためには何らかのトレーニングが 必要であることを示している。

3.研究授業の実践とその結果ー結語にかえ て

他者を理解し、受容し、他者としなやか にかかわるために不可欠と思われることば によるコミュニケーションについての気づ きを学生や生徒にもたらすことを目的とし て、これまでの考察や検討の結果を踏まえ、

高等学校3年生及び大学生を対象とした教 材と研究授業を開発し、実践した。

研究授業は大学生(学部1年次3名及び4 年次 2名、計 5名)、高校生 (3年生、 2

クラス、計65名)を対象として、それぞ れ平成15年10月24日、 1 1月6日及 び同月 7日の3回実施した。 1回の研究授 業は高等学校の授業2コマ (10 0分)で 実施した。この授業は、ことばの伝達機能 に関するこつのゲーム、上記ベックの著書 に示されている夫婦の会話やその会話を改 変した親子の会話などをもとに作成したワ ークシートを用いた活動などから構成され ている。

ワークシートや感想文の記述に関する分 析結果は、受講生がこの授業に興味・関心 を示し、会話の読み取りに関しでも、多く の学生や生徒が会話として表現されたこと ばをそのまま話者の言いたいこととして捉 えるのではなく、そのことばの裏側に隠さ れた意味を捉えようとしている姿勢あるい は態度を有していることを示していた骨ま た、ことばの伝わり難さに気づき、さらに、

その気づきをもとに、ことばによるコミュ ニケーションに対して今後とるべき態度や 方策について記述している受講生も少なか らず存在していた。このようなことから、

従来の教科ではない授業、しかし、生きる ために知っておいてもらいたいことを、こ の授業を通して生徒たちに気づいてもらう ことができた.今後対象とする受講生の少 人数化や会話の修正・試行及び受講生間の ディスカッシ語ンなど、授業案の改良によ り、このような学習活動が総合学習やそれ 以外の場でも学校教育に導入され、児童・

生徒が、よりよく生きること (Well‑be i ng)  に何らかの貢献を呆たすことを期待すると ともに、この授業内容が様々な分野の授業 と関連付けられ、実践されることを強く望 みたい。

‑203‑

参照

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