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Literacy in Science Orientated Co11eae リテ ラ シ ー と して の 大 学 教 育

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Literacy in Science Orientated Co11eae リテ ラ シ ー と して の 大 学 教 育

Masayoshi Kiguchi RIST

and Yasushi Kondo

Department of Physics Kinki University

3-4-1 Kowakae, Higashi Osaka, Osaka, Japan (Received 13 January, 2009)

Almost all students, today, enter an engineering division or a scientific one in college without leaning a scientific way of thinking, called scientific literacy. These students do not know how to actively pursue scientific issues, so that it is hard to give them professional trainings. It should be highly required for them to acquire scientific literacy but we cannot find commonly accepted one. We here propose the literacy that should be attained by the students before graduation.

今 日,大 学 の 工 学 系,科 学 系 の 学 部 の ほ とん どの 学生 は初 等 教 育 で科 学 的 な考 え方(リ テ ラ シー) を 学 ば ず に 入 学 して くる。 学 生 は 科 学 的 に物 ご とを 追 求 す る 方 法 を 知 らず,よ っ て専 門 教 育 に破 綻 を 来 して い る 。 この よ うな学 生 に 最 も重 要 な こ とは,科 学 的 リテ ラ シー を 習 得 させ る こ とで あ る は ず で あ る が,リ テ ラ シー に 関 して 共 通 の意 見 を 見 い だ す こ とが で き な い。 この 小 論 で は リテ ラシ ー と して 理 工 系 の 学 生 が 卒 業 ま で に身 につ け る べ き科 学 的 な 考 え方 につ い て考 察 す る。

KeyWords:scienti丘cUteracy

1序 論

工 学系お よび 自然科学系の学生 には大 学の初年 度 に物理学が必修 として課 され る ことがほ とん ど であ る。 これ は何故 であろ うか?特 に主 として力 学 が取 り上げ られ るの は何故 であろ うか?筆 者 は

基本 的な事 柄か ら論理 と実験 的事実 を 積 み重ねてい くことによ り力学体系 を 学生 自ら(再)構 築 し,その過程 で科 学 的な考え方(リ テラシー)を 身 につ け させ る

こ とを意 図 して い るた め だ と考 え て い る。 こ こで 言 う力学 体系 とは通常 の力学の教科書 にあるよ う な,次 の ような項 目(位 置,速 度 による運 動状態の 記述,運 動の相対性 と慣性,エ ネルギー,運 動量,角

運動量の保 存則,微 分 を使 った物理 法則の記述,質 点系 と剛体の力学)で 閉 じる学 問体系 であ る。 こ

こでは運動 は単純 な原理に したが って理解 でき る との信念 の もとに,運 動 を どのよ うに取 り扱 うか か ら始めて,実 験事実 に基づ いた 推論 に よる概 念 の拡張 によって物理法則を数学化 し,剛体(変 形を 無視で きる物体)の 運 動を取 り扱 う手法 まで扱 わ れてい る。

大学の物 理の学習に戸惑 う学生が 多いのは当然 であろ う。一人の高校 の物理教 員が

高校物理 は暗 記科 目である。 多 くの問 題 を こな して,問 題 と適 用可能 な公式 のパ ター ンを覚 える ことが高校物理 の 学習 である。

(2)

と言 った言葉 か ら分か るよ うに,高 校物理 には少数 の基 本的な法 則か ら学問体系を構成す る(科 学的 な思 考方法を学ぶ)と い う考 え方が存在 しない1。

特 に,本 質的であ りなが ら、高校での受験教育でな おざ りにされ忘れ られてい る点は,物 理学が実験科 学 であることである。物理学 は,入 試問題を解 くよ うな単に仮想 的な状況 に公式を適用す る ことでは ない。物理 学 とは,実 際の現象 か ら操作可能 な2概 念[1]を 構成 して抽象 し,その抽 象化 された概念を 使 って論理 的な推論を行ない,そ の推論の結果得 ら れた結 論を出発 点の現象を越 えて様 々な現象に適 用す る(具 象化)と い う一連 の論理 的な思考を行な うことであ る。 この抽 象化,論 理 的推論 具象化の サイ クル こそが科学的な考え方(リ テラシー)で あ る。簡 単に言 えば 「一を聞い て十 を知る」 こと がで きるための思考パ ター ンが科学 的な考え方で ある。そ して,物 理学では基礎的な学習段階 でもそ のサイ クル は顕著 に表 れべ き ものであ り,大 学 の 初年度 の学 生に物理学が必修 として課 されて きた

のである。

と考 える ことができる。

本稿 では,大 学 にお いて科学 的 リテ ラシーを教 育す るための物理学 ミニマムを見 出す 出発点を探 ることとする。第2節 では,リ テラシーの典 型 とし ての数の取扱 いにつ いて論 じ,リ テ ラシー と して 教 え られてい るものの背後 に重要 な考 え方が ある ことを見る。第3節 では,小 学校 か ら学びなが ら大 学生 になって も理解 が不十分 な量 の取扱い につ い て論 じる。第4節 では,物 理学の根幹 であ る実験 に ついて論 じる。第5節 で は,物理学 を物理学た らし めている測定 について論 じる。第6節 で は物理 と 数学 につ いて論 じる。第7節 で は工学 と科学の 関 係 につ いて論 じる。

2数 の 取扱 い

ここで は小学生低学 年で も知 ってい る数の 中に 潜ん でい る深い考 え方,抽 象化 と具象化,に ついて 考 える。基本的 な こと(一 見,易 しい思 える こと) で あればあ るほ ど,奥深 い ものがある。

しか しな が ら

,近 年 の学 生 は科 学 的 リテ ラシー としての物理学 に大学で始めて遭遇 しとま どって

灘 繋 舗 難 繍 瓢 蹴 姦λ・数えること

育 が 近 年 軽 視 さ れ て き た 。 現 在 の 大 学 で の 初 等 物 数 を 数 え る こ と の 発 見 は

,人 類 史 上 最 大 の 発 見 理 教 育 の 混 迷 は

,科 学 的 リ テ ラ シ ー を 身 に つ け さ の 一 つ で あ る

。 今 で は 誰 で も で き る 数 え る と い う せ る と

い う本 来 の 目 的 を 忘 れ,ま た 科 学 的 リ テ ラ 操 作 に は 非 常 に 深 い 抽 象 化 と 具 象 化 の 思 想 が 隠 れ シ ー と して 何 が 必 要 か の 共 通 認 識 が な く,最 小 限 て い る

。従 っ て,小 学1年 生 が と ま ど う こ とが あ る の 能 力(科 学 的 リ テ ラ シ ー)を 説 得 性 の あ る レベ の も 本 当 は 当 然 で あ る

ル で 提 示 で き て

い な い た め で あ る 。 古 代 の 羊 飼 い も

,羊 が 迷 子 に な っ て い な い か 知 る 大 学 に お け る 科 学 的 リ テ ラ シ ー 軽 視 の 流 れ に 反 必 要 が あ っ た 。 最 初 に 行 わ れ た と 考 え ら れ て い る して,中 央 教 育 審 議 会(文 部 科 学 相 の 諮 問 機 関)の こ と は,牧 場 に 羊 を 出 す と き に 羊 が 一 匹 柵 か ら 出 大 学 分 科 会 小 委 員 会 は2007年 に,大 学 卒 業 ま で に る 度 に 石 を ひ とつ 袋 に 入 れ る こ と で あ る と 考 え ら 学 生 が 最 低 限 身 に 着 け な け れ ば な ら な い 能 力 を 「学 れ て い る 。 牧 場 か ら柵 に 連 れ 戻 す 時 に は,羊 が 柵 に 士 力(仮 称)」 と 定 義 し,国 と して 具 体 的 に 示 す 素 一 匹 入 る 度 に 袋 か ら石 を 取 り 出 して,羊 が 全 部 入 っ 案 を ま と め た 。 そ こ に は 「論 理 的 な 思 考 力 」 が 挙 た と き に 袋 の 中 の 石 が 全 部 な くな れ ば 良 い 。 こ の

げ られ て い る[3]。 ま た,経 済 産 業 省 は 「社 会 人 基 と き,石 で は な く,木 の 棒 は 使 え る だ ろ う か?あ 礎 力[4]」 を 提 唱 し,そ の 中 で 「考 え 抜 く力 」 の 重 要 羊 が 出 る と き に 袋 に 入 れ た 石 を 別 の 羊 が 帰 っ て き 性 を 指 摘 し て い る 。 これ ら 「論 理 的 な 思 考 力 」 と た と き に 出 し て い る が,良 い の か?石 を 使 っ て 羊

「考 え 抜 く力 」 は,「 科 学 的 な 考 え 方 」 の 別 の 表 現 が ち ゃ ん と戻 っ て き て い る か 調 べ る た め だ け で も, 1大学 でも各種資格 の取得 の ために

,高校物 理 と同 じよ うな考 え方 で公式 の使用法の ノウハ ウの伝 授を求め られ る ことが 多 々あ る点 に注意 しておこ う。高校物理 の教科書 には,なん とか物理学 の考 え方を伝 えよ うとす る著者 たちの努力 の跡 が認 め られ るが,現実の教 育現 場 では,その努力 が無視 されてい る。物理 を修得 していない学生 を対象 とせ ざるをえない大学教 育 では,大学受 験予備校教 育で達 成 され る学 力を与 え ようと して,物理 の考 え方 に反す る教 育が なされ よう としてい る。

2実験可能 であ る ことを意味 する

3学生の とま どいの原 因の一つ は,高校 で物理学 を履修 していない こともある。高校物理1も 履修 していない。 しか しな が ら,高校 での物 理学習 の有無 よ りも,暗記ば か りで科学 的な考 え方 に触れ てこなか った ことの方 が問題で ある。

(3)

以上 の ような深い抽象化(一 対 一対応)が 行われ いる。

数 える とい う操作には さらに深い抽象化がある。

1.一 対 一 対 応 は ひ と つ で は な い

石 を 使 っ て も 良 い し,木 の 棒 を 使 って も よ い 。 ま た,羊 で な く て も 牛 に 対 して 行 っ て も 良 い 。 2.そ の働 きをきちん と分析 し抽象化す る範疇化

自然数の体系 を考 え る。

3.そ の上 で壮大な体系をなす操作可能 な具体物 を作 る脱範疇化

自然数 を どの よ うに表 して(シ ンボル化), そのシ ンボル(数 字)に 対 して どのよ うな操 作を行 うか4を 決め る

必 要 が あ る 。

鑑2足 し算 と引 き算

足 し算 と引 き算 も難 しい抽 象化 の成果 であ る。

2007年 に 「エ ジソ ンの母」 とい うTV番 組が あっ た。主人公 は 「素朴 な疑 問を大人に投げかけ る小 学1年 生 の男の子 」であ る。小学校 で

1十1=2

を勉強す るのだが,彼 には何故2に なるのか分か ら ない。教 師はみ かん1個 と1個 で2個 のみかんに な るか ら,1+1=2だ と説 明す るが,彼 はみ かんの 皮を向 いてみかん の房 を数 える と1+1は2よ り も大 きな数にな る と主張 す る。彼の主張の問題点 は どこにあ るか分 かるだ ろうか?

子 供 は小学校 に入学す る前に,す でに,小 さな正 数の足算,引 算を知ってい る。子供 は既 に知 ってい る ことを基礎に して,新 しい こと(計 算)を 学んで い く。子供 が足算,引 算,掛 け算,割 り算の能力を獲 得 す る上 での障害 は,子 供が先生 の言った ことを,

それ までの 自分 の経験 に基づ いて,自 分 な りの解 釈 を行い,実 行す るこ とである。子供は 自分 の確信 (ルール)に 基づ いて間違 えるが,そ れを見てい る 先 生 は 子 供 が 作 りだ した ル ー ル が 分 か らず,子 供 の思 い込 みを指摘で きない ことがあ る。子 供は子 供 で,自 分 の答 えをつね に否定 され るので,絶 望感 を抱 く。先生が間違いを指摘 できなければ,子 供に は先 生 がそのルー ルを認 めてい るのに,× をつ け るよ うに思 われ る。

4数えるという段階では+1と一1の操作だけ

以下 のよ うな例が あった。

1十1=2

は覚 えてい る男 の子 に,

1十1十1;

の 計 算 を さ せ て み る と,5だ と 答 え た 。 よ く話 を 聞 い て み る と,+と い う 記 号 だ け で1を 加 え て い る よ う で あ る 。 す な わ ち,彼 に と っ て

刊 *

・ ﹀ 粥

H

H

H

だ っ た の で あ る 。 大 人 か ら 見 る と 上 の 式 と1+1=2と の 整i合性 は な い が,彼 は 自 分 の ル ー ル を 正 し い と主 張 し た 。

「エ ジソ ンの母 」の例に戻 る と,主人公の男の子は 足 し算におけるルール(抽 象化)と みかんの例(具 象化)の 調整が うまくできていない ことになる。多

くの大 人たちは本来行 うべ き抽象化 と具象化 の調 整 を放棄 しているか ら,彼が持 ったような疑問を持 たないのであ る。大人 は 自ら考 える ことを放棄 し ているわけで,科 学的 な態度 とは言 えない。

しか しなが ら,適 用 範囲 を明確 に理 解 して足 し 算,引 き算 を行 う能 力を養 うことは非 常に重要 で ある。小学校低学年 で学 ぶ算数 は人類が獲得 した 珠玉 の成果であ り,人類に与 え られた恩寵 と言 って もよい。私たちは足算,引 算,掛 け算,割 算な どは何 も考 えずに反射 的に行 えなければな らない。 そ し て,計 算を行 う時にいろいろな方法 で検算すること が重要で ある。そ して,同 じ答えが でない ことき, 何 かがおか しい と思わ ない と行 けない。数 に対 す る感覚 であ る。 この よ うな感覚 を持 つためには暗 算 が有 効であ る。

2.3掛 け算 と足 し算 の 働 き

なぜ 物 理 学 の 公 式 が 因子 の掛 け 算 で表 わ さ れ て いるのだろ うか。 これ には掛 け算 とい う計算の持 つ働 きが関係 してい る。 その働 きが一番 よ く現 れ るのは確率 であ る。以下 にその働 きにつ いて考 え よ う。

独立 な試行 の確 率につい て次 の定理 がある。

(4)

二 つ の 試 行T1,T2が 独 立 で あ る 時,T1 で 事 象Aが 起 こ り,T2で 事 象Bが 起 こ る 確 率 は,そ れ ぞ れ の 事 象 の 起 こ る 確 率P(A)とP(B)の

P(A)・P(B)

で 与 え ら れ る 。

物理学 の公式 が掛 け算で表 されてい るのは,そ れ ぞれ の因子 が互い に無関係で ある こ と,独 立 で あ ることを意味 してい る。無関係な因子 が一つの こ とを決め ている とい う思想 が公式には含 まれてい る。言い替 えれ ば公式 を掛 け算で表 す とい うこ と は現象を分析す る ことを意味 している。

物理学,中 で も力学 は,現 象を時間 の長 さ,空 間 的な距 離 そ して物 質の量 と言 う三つ の独立 な因 子 に支 配 され てい ると見なす。 したが って力学 の 公 式は これ ら三つ の因子 の積 になる

M〈8でIogπ=α 一 δM,δ ニ0.9〜1の 関 係 が あ る(グ ー テ ン ベ ル グ ーリ ヒ ター 則)5。 地 震 の マ グ ニ チ ュ ー ドは 地 震 の エ ネ ル ギ ー(断 層 に 働 く力 × 断 層 の ず れEの 対 数 な の で,罵 法 則 πo(E一 δが 成 り 立 っ て い る 。 経 済 学 で は パ レー トの 法 則 が 知 ら れ て い い る 。 売 り上 げ の80%は20%の 社 員 が 上 げ て い る,80:20の 法 則 で あ る 。 こ れ も グ ー テ ン ベ ル グー

リ ヒ タ ー と 同 じ く逆1乗 則 で あ る 。

幕 乗 は 全 く別 の 場 合 に も 現 れ る 。 例 え ば,も の の 対 応 の 仕 方 を 考 え る 時 で あ る 。N個 の 要 素 θ=

{1,2,̲,1V}か ら な る 集 合 を の 部 分 集 合 の 数 を 考 え て み よ う。N=3の 場 合,部 分 集 合 が 作 る 集 合 は P={{},{1}{2}{3}{1,2}{2,3}{3,1}{1,2,3}}の

8個,つ ま り2N個 あ る 。 これ は3のN個 の 要 素 か ら,X3{含 む,含 ま な い}の2個 の 要 素 へ の 対 応 の 数 で あ る 。 同 様 に し て,N個 の 要 素 を 持 つ 集 合 θ か らM個 の 要 素 を 持 つ 集 合Xの 上 へ の 対 応 の 数 はMNで あ る 。

以 上 ま と め る と,

F=1mα

・和 は2つ の同種の物の間 の関係 は,確 かに時 間,長 さ,質量の3要 素か ら成 り立 って

い る。電気 ・磁気現象では,さ らに電気の量 とい う 因子が入 る。

次 に足 し算の働 きを考 えよ う。物 理の公式 は一 般法則を表 してい る。 も し一般法則が足算 で表 さ れていた ら,全体が どうなっているかが理 解できて い るこ とになる。足算がで きるためには何を全体 と考え るかを 限定する必要があ る。理論が足算 で 表 され る とい うことは,同 じものを積み重ねてい っ

た帰納的考察 の結論が 出たこ とを表す。掛け算は 因子への分析,足 算 は因子 の帰納 と言え る。

Z4幕 乗の働 き

物 の大 きさによらず成立する関係は罵 関数 ♂ で 表 される。 た とえば,物 の長 さが ¢な ら,面積は ♂ で変化 し,体積は ♂ で変化する。これは顕微鏡 で覗 かなければな らない小 さいもので も,望遠鏡 で覗か なければな らな い大 きな もので も同 じであ る。 こ の よ うに,罵 法則 はあ る現象 が起 こるメ カニ ズム (原理)が 広 い値 の範囲 で同 じ場合 に現れ る。

例 と して,地 震の起 こる回数 πと地 震のマ グニ チ ュー ドMの 間 には,マ グニチ ュー ドMが3く

・積 は2つ の独立な ものの間 の関係

●罵 は2つ の ものの 間にあ る色々な関数 間 の 関係

を 表 し て い る 。

2。5比 と 分 数

比を考 える とい うことは二つの変化す るものを 同時 に考 えて一・つの数 に ま とめる,つ ま り一つの 概念 を構成す る ことであ り,非 常 に難 しい。あ る 心理学者が小学校低学年 の児童が天秤 の釣 り合い を どう予測す るか を研究 している。その結 果に よ れば子 供はまず重 りの数だけに注 目して予測す る, 重 りの数が 同 じ時,始 め て天秤 の腕 の長 さに 目を 向け る。重 りの数 と腕 の長さを同時に考 えなけれ ばな らない こ とに思 い至 る子供 はほ とん どいない

ことが明 らか になっている。

二つ の変化す るもの を一つ にま とめる とい うパ ター ンは,力 学のF=mα で も同 じであ る。それ まで,ガ リレオ もホイヘ ンス もニ ュー トンも力学 は知 っていたが,そ れ らは幾 何学の証明 として記述

5M>8で は 例 が 少 な く

,M<3で は 観 測 が 難 しい だ け で,こ の 法 則 は さ らに 広 い範 囲 で な りた っ て い る と考 え られ て い る。

6運 動 方 程 式 を 分 析 す る と

,力 とい う概 念 が 不 明 確 に な り,力 を どの よ う に 測 定 す れ ば 良 い か 分 か ら な くな る。 した が っ

(5)

さ れ て お り,使 い に くい も の で あ っ た 。 そ れ を オ イ ラ ー がF二 鵬 α と 概 念 構 成 し た 後,急 激 に 力 学 の 応 用 範 囲 が 拡 が っ た6。

3量 の取 扱 い

量の取扱いは小学校高学年で詳 しく学んでいる。

と くに速度 は小学校6年 の重要な単元で あるに も 関わ らず,多 くの大学 生が速度 の概念 を理 解 して いない。加速 度 となると,ほ とん どの学生の理解の 限度 を越 えているようだ。また、学生 は単位の変換 に も困難を感 じてい る。物理学 での単位 の変換に は物理 法則の理解 が必要 にな り,物 理 法則 の理 解 が不 十分な ためであ ろ う。

確 か に量の概念 は本質 的に難 しい もので あ る。

小 学校段階で はそ うす るものだ と頭か ら覚 え込む だ けで,水 道方式,か けわ り算 な ど,い ろい ろな教 育方式 が工夫 されてい て も,多 くの生徒 が理解 不 足に陥 ることには仕方がない面があ る。その ため, 初等教育で は量の取 り扱 いのために多 くの時間を 割 いてい る。 中学校 では一次 関数 の取 り扱 いで変 数記号 の使いかたや グラフによって,変化す る量 と い う概念を学ぶ。高校 になれ ば対数や浮 動小数点 表示 を学ぶ ことによって,大 き く変化 する量の表 し 方 を学ぶ。そ して,最 終的に高校の微分学 で量 の測

定 に伴 う誤差を学び,積 分学,確 率論 で偶 然誤差の 取 り扱いか たを学ぶ。適切 な量 の取 り扱 いの ため に は,こ れ らの理解 がすべ て必要 であ りなかなか 難 しい。

3.1単

も の ご と を 数 量 的 に 考 え る 場 合,考 察 対 象 を ま ず 抽 象 化 し,抽 象 化 し た 世 界 で 計 算 を 行 い,最 後 に 計 算 結 果 を 現 実 の 世 界 に 戻 す 。 量 を 数 量 的 に 抽 象 化 す る ば あ い,あ る 量 が 単 位 量 の 何 倍 か と 考 え て, 量 を 数 値 化 す る 。

た と え ば,高 校 の 物 理 で は,質 量 はkgで 測 り,加 速 度 はms‑2で 測 る と決 ま っ て お り,力 はNで

る と 決 ま っ て い る 。 そ こ で,質 量 が2.5kgな ら,そ れ を 抽 象 化 してm=2.5と し て,単 位kgを 使 っ て 抽 象 化 した と い う意 味 で[kg1を 添 え る 。 加 速 度 が3.Oms‑2な ら α=3.0と 抽 象 化 す る 。 そ の 上

で,力 を 単位Nで 抽象 化 した とき,そ の数値 をF とす る と,数 値F,α,鵬 の間 には関係F=鵬 αが 成 り立 っている ことが実験的に知 られているか ら, F=2.5×3.0=7.5と 計算 し,力 は単位Nで 測 る

ものだか ら力 は7.5Nで ある と抽象化 された算数 の世界 か ら物理 の答 えへ戻す。

この考 えかた は間違 ってい るわ け では ないが, 数値化 の段 階で物理 法則の考 察が捨象 されてい る ために,物 理学 と しては好 ま しくない。 ここで は F=糀 αは物理 法則で はな く,たん なる数値的な実 験結果 が示 す現象論 的関係式 と見 なさざるを得 な い。物理法則への考察 を捨象 して しまうと,与え ら れた現象論 的な公式 のたんな る使いか たの習得 に なって しまい,も はや物理学 とは言 えない。物理法 則 は単位 な どによ らずにF=鵬 αである。

量 は単位 を使わ なければ数値 化で きない が,量 は単位に よらない意味を持 ってい る。その意味 の 裏 には体積 は長さの3乗 に比例 す る とい った単位 によ らないスケールの法則やそ の他 の物理 的な法 則 が隠れている。比を計算す る場合に も,そのよ う な量に対す る理解は重要にな る。単 なる数値 では どち らを 分母にす るか,分 子 にす るか はよ く分 か らな くな って しま う。

3.2変 数 記 号 の 使 い方

記号は何かを指す代名詞で ある。記号 が指 す も のが話の途 中で変わ るよ うな ことがあ ってはな ら ない。中で も物理量を表す記号 は単位 が変 わ って も同 じものを指すべ きで ある。記号 は数値 のよ う な単位の選 びかた によって変わ る ものを指 してい てはな らない。た とえば速度 を表す記号 は数値 で はな く単位 も含んだ もの にす るべ きである。 た と

えば

η=60km/h=60×1000m/3600s=16.6m/s

こ れ は 記 号uが 同 じ も の を 指 し て い る か ら等 号 を 用 い る こ とが 許 さ れ る 。 た だ 単 に 数 値 だ け を 見 れ ば,明 ら か に 数 値 自 体 は 異 な っ て い る 。

こ の よ う な 単 位 が 入 っ た 量 に は,数 学 を 適 用 で き な い 。物 理 法 則 は 単 位 な ど に は 依 ら な い か ら,物 理 公 式 に 入 る 量 は 単 位 が な い 量 の は ず で あ る 。 た と

え ば,波 の 伝 搬 を 表 す 式

穿=㌢osin(ω オー た・歪

て,物 理 学 者 はF=mα を そ の ま ま使 う こ とは な い が,Fニmα は物 理 学 者 に と っ て絶 対 に 手 放 せ な い 思 考 の パ ター ン に な っ て い る 。

(6)

にお いて,sinの 括弧 の中(引 数 と言 う)は 単位 の とな る。適切な単位 を選 ぶ必要があ ることに注意 ない量にな ってい る。時 間を表す記 号 亡に は時 間 する こと。横軸 をIog(ψo),縦 軸を10g(γ/%)に と の単位が入 ってお り,角振動数 ωには時間 の逆数の ると,グ ラ フは直線に る。 このよ うに,ス ケールに 単位が入っていて,単 位 は打ち消 しあっている。波 依 らない関係式 は両対数 の グラ フを描 くと直線に 数 κと位 置 γについて も同 じであ る。 こ こでは波 な る。

数 と位置 につ いては内積 によって3次 元空 間内の この よ うに単位 を消 し去 る ことは,も の ごとの 伝搬方 向に依 らない ことまで読み取 る ことができ 法則性を見極め るために不 可欠であ る。三角関数 る。また,加 はsinが 単位を持たない量であ るので,で も,そ の引数は単位を持 った度で はな く,弧度を 現実 の単位 のある量に戻すために使われて いる。 使 うべ きである。弧度 θは 円周の長 さ/円の半径で 距離 と時間の関係 をグラ フにす る場合を考 えよ 定義されてお り,単位に依存 しない ことは明 らかで う。 グラ フの縦軸,横 軸は数値で ある必要 があ る。 あ る。弧度 θは単位の ない,た ん なる数値 だか ら, つ ま り,単位を意識 しない とグラ フは描 けない。横 三角関数を使 ってい ろい ろな法則を表す ことがで 軸を時間 としたとき,数 値化するための基準 の値 オoき る。

を選 ばない といけない。 そ うすれば ψoは たんな る数値にな り,グラフを描 くことができる。縦軸 も 同様である。 この ようにグラフを描 く時,ど のよ う

に して単位 のない数値 に抽 象化す るべ きか判断 し3.4微 分 ない といけない。このためには,法 則を理解 してい

る必要が ある。

3.3対 数 対数関数は

幅 イ 縞)

に よ っ て 定 義 さ れ て い る 。 舐 ココ)はgが ∬の 関 数 で あ る こ と を 意 味 す る 。 ∬ は 単 位 を 持 た な い 単 な る 数 値 で あ り,亜 は 分 子,分 母 が 単 位 を 持 つ 量 で あ っ

て も,単 位 は 打 ち 消 しあ う こ と を 表 して い る 。 ま た 迦 は 〃=0で は 意 味 が な くな り,切>0の 範 囲 で

考 えなければな らない ことが読み取 れ る。対数関 数 は正の量をスケール に関係 な く考察す るための 関数であ る。

よ く経済 関係 のグラフで正の量の変化 を表 す時, 起点0が 必要なので起 点は表 してあるが,縦 軸 の途 中に波線 駕 を入 れて途 中を抜 か した ものがあ る。

これ は人 に間違 った印象 を与 え るグラ フで ある。

正 の 大 き く変 化 す る量 の グ ラ フ は対 数 で 描 くべ き であ る。

スケー ルに依 らない 法則 は罵 関数 で表 され る。

た とえばス ケール に依 らず半 径rの 球 の 体積 は レ=警 丁3で あ る 。 こ の と き,両 辺 の 対 数 を と る と

bg(v/%)‑bg籍+bg誓+3bg価)

古代ギ リシャ,ア テネの繁栄の絶頂期,ア テネの 町にパル メニデス とい う老 人に連 れ られたゼ ノン と呼ばれる青年 が現れて,ど う考 えて も間違ってお り事実 とあわ ないが,ど うして も論駁 で きな い こ とを述べ,ソ クラテ スた ちを驚 かせ た とい う言 い 伝えがあ る。ア リス トテ レスは 自然学 とい う著 書 の第6巻3章 で,ゼ ノ ンの論 法を次の よ うに述べ ている。

いか なる物 体 も,そ れ 自身 と等 しい場 所 を占める時にはつねに静止 している。

飛ぶ矢は今においてつね にそ うである。

然 らば,時 間 にお け るどの今にお いて も,飛ぶ矢 は静止 して いるの だか ら,飛 ぶ矢 は飛ばない。

これは今 とい う時刻 がデ ジタル な値 で表 され る誤 差 のない ものだ とす る と,事 実 と反 した奇妙 な結 論 が導 かれ る ことを表 して いる。

ゼノンのパ ラ ドックスは,物 理量は どのように測 定 するかが定義 されていな けれ ば意味を なさない ことと関係 してい る。この場合,速 度 とい う量が問 題 である。速度 を測 るのに必要 な道具 は時刻 を測 る時計 と位置 を測 る物指 で,測定 はある時刻 むでの 対象物体 の位置 ¢を記録する ことによ り行われ る。

物理 量を数値化す るため に,時 間はsで 距 離はm で測 る ことにす る。 記録は以下の表の よ うに まと められ た。

(7)

ム オ ム 欝 △ 灘/△ 亡 0.Os5,0m

0.5s7.2m

0.75slO5m

0.80s15.3m

0.5s2.2m4.4m!s

0.25s3.3ml3.2m/s

0.05s4.8m96.Om!s

この表 の最後 の欄の時 間の変化 に対す る位 置の変 化 の割合(変 化率)を 速度 と呼ぶ。 この各 々の数 値 は どの時刻 の速度 だ ろ うか?分 か る と言 えばゼ ノ ンのパラ ドックス に陥 って しまう。言 える こと は,隣 り合 う測定 時刻の間 の どこかの時刻 であ り, 測定間隔を小 さ くしていけば誤差が小 さ くなる,と

言 うことだけであ る。測定 間隔を小 さ くす ると誤 差が小 さ くな るこ とは経験事実 であ る。 誤差が制 御 できる とい う経験事実 が速度 の概念 を意 味のあ

る ものに してい る。

物理量は 測定値 圭 誤差 で表 され,誤 差 は測定値 と同 じか,そ れ以上に重要である。誤差の与 えられ ていないデー タは信用 できないデー タであ り,デー タの価値 は,ど れ くらい確かな誤差の評価を してい るかで決 まる。

3.5実 数

物理 学の立 場か らは,実 数 は測定量 を記述す る ための数 と考える ことができる7。加減乗除 は有理 数8の範 囲で閉 じているが,測 定量の記述 には不十 分である。例 えば,直 角二等辺三角形 の斜辺の長さ は他の二辺の長 さが1な ら 轟 だが,こ れは無理数 で有理数 ではない。

実数の性質 を突 き詰 て考 えたのは紀元前200年 頃 にローマ に対抗 した カル タゴの元で活躍 したア ルキ メデ スである。 アルキ メデ スは 自身 の最大 の 業績 は球の体積 や表 面積 はそれ に接す る円筒 の体 積 表面積 の213で ある ことを証明 した ことだ と考 えてい た。 この証 明で アルキ メデスが使 った実数 の性質 は

任 意 の 正 の 実 数 α 〉 わに 対 し て,α<舶 と な る 整i数nが あ る9

7数学 としては数直 線の有理 数 の間を埋 め る数 と捉 える

で,実 数の アルキ メデス性 と呼ばれてい る。

アルキ メデ スは これを次 の よ うに用 いた。AB を放 物 線 の弦,OMをABの 中点Mを 通 る放物 線 の径 放物 線 と弦 で囲 まれ る部 分の面積 を5三 角形MABの 面 積 をTと す る。任意 の πに対 し て,15L書 丁[<垂 丁 ・歩 で あ る こ と は 図 を 描 け ば (幾何 学を使 って)直 ちに示 し得 る。大事な ことは

13一 垂Tl=0を 示 す こ と で あ る 。15一 書Tl=eと す る と,

47「14T1

6<一 π3ηく 一 一34,

で あ る 。 も し ξ=0で な け れ ば 全 て の 正 の 整 数 π

に対 して 慨 く 誓 が成 り立たない とい けない。 そ れ は実数 のアル キ メデス性に矛盾す る。 この矛盾 を解消 するには ξ=0で なければな らない。 アル キ メデスは,こ のよ うな思考法(背 理法)で,て こ の原理や,滑 車 の原理,浮 力 の原理 を考 えていた。

4実 験

物理学教育 ににおけ る実験の 目的 は以下の よ う に整理 され るだろ う。

1.学 習意欲 の向上

お も しろい実験 を行 な って,そ の科 目が好 き にな って勉強 をす るようにな る。

2.測 定器 の取 り扱 い とその使用法の習得 機器 の取 り扱 い方や測定の仕方を学ぶ。

3.科 学 的な考 えかたの習得

論理 の組み立 て,議 論 の行 い方,発 表 の行い 方を学 ぶ。

4.科 学 の知識 ・理 論の検証

机上 の理論 が正 しい ことを納得 させ る。

1の 効用 は疑い ない。 一方,4に 関 しては必ず しも 簡単ではない。ほ とん どの場合,実 験 を行 なっても 理論通 りの結果 が得 られないか らであ る。実験で は理論が捨象 した多 くの事象 が混然 と混 ざ りあっ て い る。実験 を 行 う上 で必 要 な こ とは,何 を測 るべ きか を明確 に し,そ れ以外 の こ とが結果 に影響 し ないよ う工夫す ることである。何 も考 えずに,教 科 書 どお りの答 えが 出るよ うな実験 を教室 で行 って

8有 理 数(rationalnumber)と は 整 数 の 比(ratio)で 書 け る数 の こ と で あ る

。 小 数 も有 理 数 で あ る こ とに 注 意 。 一 方,無 理 数 は 有 限 の整 数 の 比 で は 表 す こ とが で き な い 数 の こ とで あ る。

9簡 単 に言 え ば

,ど ん な に 大 き な プ ー ル で も 小 さな ス プー ンで 水 を 入 れ て 行 く とい つ か は 溢 れ る こ と で あ る

(8)

もあ ま り意味が ない。実験 の結 果が正 しいか どう かは2,3の 裏付 けによ り可能になる。 したがって, 極論 として実験 は教育 には不効率 で不要 であ ると い う論 も出 るこ とになる[7]。

4.1実 験 に 関 わ る リテ ラ シ ー

実験 に関連 して是非 とも身 につ けなけれ ばな ら ない技能 について考 えよ う。

4.Ll測 定器の取 リ扱 い とその使用法

実験を行な う上 でスター トになることは,様 々の 物理量 を測定す るこ とである。以下 に筆者 が必要

と考 える ことを列挙す る。

・基本 的な測定器具 による測定

物差 しによ る長 さの測定,時 計 による時 間の 測定,温 度計 によ る温度 の測定,秤 に よる重 量の測定,な ど。 また,そ の測 定原理 の理解 。

●測定器 の説明書を読み こなす ことができる語 学力

通常 は 日本語,し か しなが ら時 には英語 な ど の説明書 を読み こなす ことが必要 になる。

●科学 的な考 えかた

「タマ ゴが先か?鶏 が先 か?」 の議論 になっ て しまうが,測 定 を行な うにあた って,科 学 的な考えかたがで きる必要がある。実際は比 較的単純 な測定 を行 な うことによって,科 学 的 な考 えかたを習得 し,それを元に よ り複雑 な測定 を行い。̲と協調 して進 んでい く。

4.L2科 学 的な考えかた

こ の 点 に つ い て は す で にSFAA[5]の 翻 訳 と い う 形 で ま と め た[6]。 こ こ で は,そ の エ ッ セ ン ス を

・ 様 々な事 象 に関 して検 証 を 行 な う必要 が あ る とい う認言哉を持つ こと

・ 論理的 な思考

・抽 象 と具象 の間を有機 的に結 びつけ る

とい う言葉で まとめ よ う。

検証 の必要 性は特 に重要で ある。今 日の学生 の 多 くは じっ く りと考 え る時 間がないせ いか,自 ら 導 き出 した結 論の妥 当性を評価す る態度 に全 く欠

けてい る。問題 は与 えられ,解答 に対す る正誤は他 者が判断する とい う受験勉強の弊害 に他な らない。

レポー トな どで散見 され るのは,「結 論は間違 って い るか も分か りませんが,先 生直 して ください。」

とい う態度 である。

典型 的な検証 であ る検算を行 う具体的 な方法 に 関 しては以下 にい くつか挙げ よう。

●単純 に計算 を繰 り返す

●概算 と比較 する

・ 異 な っ た 電 卓,ソ フ トで 計 算 を 行 な う

・異 なった計算方 法で行 な う

4.2論 理 的な思考 の発展例

論理 的な思考 の発展例 と して,電 磁 気の研 究の 歴史 について考 えよ う。

古代 よ り 「號珀」を擦 ると,ものを吸い付 ける力 があ る ことが知 られ ていた。下敷 きを こす って頭 に持 ってい くと髪の毛が吸い付 く,あの静電気現象 であ る。

17世 紀 に入 る と,静 電気 には吸い付 ける力だけ でな く反発す る力 とな る場合 もある ことがわ かっ てきた。また,電気を帯びた物質の側に帯びていな い物質 を置 くと,そ の物質 も電気 を帯 び るとい う,

「静電 誘導」現象が発見 され る。 そ して18世 紀 に は,金 属な どに摩擦電気現象が見 られ ない のは,金 属が電 気を逃 が しやす いか ら,と い うこ とがわか り,「導 体」 と 「絶 縁体」の区分が生 まれ,絶 縁体 には電 気が動 かず に留 まる とい うこ とか ら,こ こ でや っと 「静」電気 とい う概念 が生 まれ る。

フランスのデ ュフ ェー が電気 には2種 類 あって, 同種 の もの同士 は反発す る ことを発 見す る。 フラ

ンクリンは この一方をプラス電気,他 方をマイナス 電気 と名付けた10。電気 がプラス ・マイナスで計算 で きるもので ある とい う発 見は現在 の電気 現象の 理論(可 換ゲー ジ理論)に 直接つ なが ってい る。

18世 紀の初めにはオラ ンダのライデン大学で ラ イデ ン瓶が発 明 され,電 気 の研究が進 む。18世 紀

10引力 の 場 合

,静 電 誘 導 現 象 に よ りプ ラ ス電 気 もマ イ ナ ス電 気 も電 気 を帯 び て い な い物 質 を 引 きつ け る 。 従 っ て引 力 で 電 荷 の 正 負 を 判 定 す る こ とは 困 難 で あ る。 こ の静 電 誘 導 の理 解 は20世 紀 に な って物 質 の 電 子 論 が 発 展 して始 め て理 解 で き た。

(9)

の終 わ りにはイ タ リアの ガル ヴ ァー二 が静電気 に よ る蛙の筋 肉収縮 の研究(1791年,「 筋 肉運動 に よる電気 の力」)に よって異 なった2種 の金属を触 れる ことによって電気が発生する ことを発見する。

もっとも,彼 自身 はこの電気 は蛙(動 物)に 由来 し た電 気である と考えてお り,「動物電気」 とい う名 称 をつけてい る。一方,イ タ リアのボル タ(電 圧 の 単位 ボル トの元)は,こ の 「動物電気」の考 えの定 量性 の面 に疑問を抱 き,動物を使 わない実験装置 で 電気を発生 させる ことによって 「2種の金属 の接触 に よって」電気 が発生す る ことを証 明す る。 ボル タの考えの背景には ドイツのズルツアーが,「異 な る金 属を接触させ て,も う一方で舌を挟む と妙 な味 がす る」 とい う報 告が挙 げ られる。 ボル タの実験 装置 は銅板 と亜鉛板 との間に塩水 を しみ こませ た 紙 を挟んだものを幾つ も積み重 ねた 「電堆」(1899

年)と,そ れを改良 した 「電池」(塩 水の代わ りに 希硫酸を用 いる)で ある。 このボル タの電池 の発 明 によ り動電気 すなわち継続 して流れ る電流が得 られ るよ うにな り,電気 に関す る研究 が進 む。

電流が得 られた ことによ って電気 と磁気の 間の 関係が明 らかになった。 エル ステ ッ ドが電流 が磁 石 に力を及 ぼす ことを発見 したのであ る。 これ に 引 き続い てア ンペー ルが電気 と磁気 の精緻 な数学 理論 を作 り上 げ るが,そ れは実体 が明 らかで ない もの であ った。

ファラデ ィは電場 と磁場(電 気力線 ・磁力線)が 物理的な実体である と考えた。ファラディは,場 の 概念によって電気,磁 気現象の理解を深め ることが 可能 であ る ことを指摘 してい る11。イギ リス のマ クスウ ェル はフ ァラデー の電気 と磁 気の理論 をも とに1864年 にマ クスウェルの方程式を導いて古典 電磁気学を確 立 した。マ クス ウェル の方程式 か ら, 電磁波 の存 在が理論 的に予言 され る。ヘル ツはマ クス ウェルの著書を綿密 に読み,当 時の数学で考え られ ていた電気磁気の遠隔相互作 用にマ クスウ ェ ルの アイ デアを添加 する と近 接相互 作用が導 かれ

る ことか ら,マ クスウェルの理論が本質的に正 しい ことを確信 した。彼 は1888年 に電気火花の実験 に よって電波の存在証 明を行い,マ クス ウェルの理論 を検証 した。 ここに,電磁場がエネルギー ・運動 量 を持 って運動 する物理 的な実体で あるこ とが確立

したのであ る。

5測 定

物 理学 は実験 観測 に よる量 の測定 の うえに成 り立つ学問分野であ る。物理学の概念 はすべ て操 作 的に,つ ま り,ど のよ うに測定す るかで定義 され てい る。物理 学の学習 とは何を どのよ うに測れ ば 何が分か るかを次第 に明 らか に してい くことであ るとい って も過言で はない。 この点 が高校 の物 理 と大 き く異 なっている。高校 の物理では,ど の よう に測定す るかを気 にせず に条件 として様 々な もの (例え ば,作 用 してい る力)が 与 えらた場合,ど の ような ことが起 こるかを考 える。いったい誰が,そ の条件を教 えて くれ るのだろ う12?

物理量の測定 は物理法則 に基づいて行 うので,物 理 法則が分か らな けれ ば何 を測れ ば よいのか も分 か らない。逆 に,何 を どのよ うに測れ ば よい かが 明確 になった ら,その ときには物理法則が分かった と言 える。例 えば,電 流の測定は,エ ルステ ッ ドが 電流の周 りでは針磁 石に トル ク(回 転 を与え る力) が働 く事を発見 した ことか ら始 ま る。それはア ン ペールの法則 その ものである。

5.1時 間 の測 定

現代社会 にお いて は,各 人 が精度 の高い時 計を 持 ってい る。 その時計 はブラ ックボ ックス と化 し て,時 間測 定の基礎 にあ る法則性 が分か りに くく なってい る。精密 な時計 を持 たなか った古代の人 は,「毎 朝太陽が 出て は沈む,一 年で季節が一巡す

11フ ァ ラ デ ィ は 言 う。 「し ば ら く の あ い だ,こ の 種 の 憶 測 が 自 然 哲 学 で は 役 に 立 た な い と か 害 が あ る と 考 え る こ と は や め よ う 。 た し か に,こ れ ま で,そ れ ら は 疑 わ し く 間 違 い や す く,す ぐ変 わ っ て し ま う も の だ と 思 わ れ て き た 。 し か し,実 験 家 や 数 学 者 に と っ て,そ れ ら は 素 晴 ら し い 助 手 な の で あ る 。 あ い ま い な 考 え を 次 第 に 明 晰 な も の と し 、 ア イ デ ア に 確 固 と し た 形 を 与 え て 実 験 や 解 析 が で き る よ う に し て き た だ け で は な い 。 演 繹 や 補 正 に よ っ て 新 し い 物 理 現 象 の 発 見 に 導 き,実 際 の 物 理 的 な 真 理 を 増 や し発 展 さ せ,そ し て,そ れ が,そ れ ら を 導 い て き た 仮 定 と 違 っ て,も は や 変 わ ら な い 基 本 的 な 知 識 と な っ て き た の で あ る 。」 原 文 は 以 下 の 通 り で あ る 。ItisnottobesupPosedforamomentthatspeculationsofthiskindare

uselessornecessarilyhurtfulinnaturalphilosophy.Theyshouldeverbeheldasdoubtfulandliabletoerrorortocharge,butthey arewonderfulaidsinthehandsoftheexpe1imentalistandmathematician;fornotonlyaretheusefuiinrenderingthevagueidea moredearforthetime,givingitsornethinglikeadefiniteshape,thatitmaybesubmittedtoexperimentandcalculation;butthey leadon,bydeductionandcorr㏄tion,tothediscoveryofnewphenomena,andsocauseanincreaseandadvanceofrealphysica】

truth,whichunlikethehypothesisthatIeadtoit,becomesfUndamentalknowledgenotsubjecttochar;ge 12現 代 求 め ら れ て い る 人 材 は

,指 示 に 従 っ て 動 く だ け の 人 間 で は な く,自 ら 問 題 を 設 定 し 考 え 行 動 で き る 人 間 で あ る 。

(10)

る」 といった厳然 とした リズムが 自然 にはあ り,人 はその リズムに従 って生きていか なければ な らな か った。世界の リズムを知 り,その リズムの狂 いが 自分の生活 にどの程度響 くかを知っていた点で,古 代 の人 の方 が時間測定 の本 質につい てよ く理解 し ていた と言 えるか もしれない。

ガ リレオが19歳 の時,ピ サの大聖堂で シャ ンデ リアの揺れ を見て,ガ リレオが それを 自分の脈搏 と較べた とい う伝説が あるB。 ガ リレオは一定 時 間にシャ ンデ リアの揺 れる数 と 自分 の脈搏数 とい う二つ の ものを比較 してr比 』を とった。 この比 は,い つ もおお よそ 一定 だった。

比 が一定 であ るな ら,基 準 とす る振動 を決めて おけば,そ れ が何度 か振動 す る間 に他 の対象物が何 回振動 するかが わか る。 これ こそが,時 間測定である。

二つの振動現 象を 同 じ場所 で測 る限 り,二 つ の 現 象の間 の振 動数 の比 は,二 つ の現 象 に特有 のも ので,い つで も どこでも,同 じである。地球上 であ ろ うと,月面で あろ うと,ブ ラックホール のす ぐ傍 であ ろう と同 じで ある。同 じだか ら,遠 い宇宙 の 果 てで起 こっている現 象で も時間測定が可能 にな る14。

現在 ではr秒 とは,133Cs原 子の基底状態 の二つ の超微細準位の間の遷移 に対す る放射の9192631 770周 期 の継続 時間 であ る』 と定義 され てい る。

注意すべき ことは,こ の定義 は現実の物(時 計)を 使 った定義ではな く,物理法則 を使 った抽象的な定 義 だ とい うことである。現 実に は定義通 りの系 を 実現 する ことはできない。真空 中に浮かん だ唯一 つ静止 した原子な ど,我々には用 意できないのであ る。科学者 は理想 に近 づけ よう と様 々な努力 を し ているが15,ど こまでいって も物理法則 と現実 の物 は異な る。 しか し,それが近づ け るよ うに挑戦 し続 けないか ぎ り,物理 法則 は物 理法則 と しての役割

りを果 たせ ないのである。

さて,実 際 に時 間を測 るには現実 の物 か らで き た測定装置を使 わなければな らない。現実の測定

装置には物理法則 のよ うなスケールか らの独 立性 はないので,測 定 を得意 とす る領 域 もあれば,ま っ た く測定 で きない領域 もある。た とえば,100年 程 度の時間を測定す るには原子 時計 よ りも月の公転 周期を使 う方が精度 が高い とい うことも知 られて い る。測定装置を選定す るときは,そ の 目的にあわ せて,ど れ くらい の精度 で測定 できるかをつね に 考える必要があ る。また,測 定する ことに よって測 定対象の性質を変 えて しまった ら,それ こそ,何 を 測定 してい るのか とい うことに もな りかねない。

5.2距 離(長 さ)の 測 定

日常生活 では物 の広 が りは物差 しがあれば測れ る。しか し,科学 の世界では大は星雲 と星雲 の間の 距離か ら小 は核子 内の素粒子 間の距離 まで測 る必 要があ る。 この よ うな距離 を測 るには,ま ず,適 切 な物差 しを作 る事か ら始 めな くてはな らない。

長 さを測 る上 で重要 な概念 は合 同定理 で あ る。

す なわち,合 同定理 のおか げで三角形 その ものを 持っていかな くて も合同か違 うかの判定がで きる。

合同定理のおかげで,人 間の 日常生活の空間の長 さ を測定す る限 りは法則 ではな く実際の もの(物 差 し)を 基準に して測定を行 って も問題はない。メー

トル原器の活用が その例 と言えよ う。

と ころが,人 間の 日常生 活の範 囲外 に まで測定 を広げ よ うとす る と様 々な困難 が物差 しによ る測 定 には生 じる。例 えば,太 陽の大 きさを測 るため メー トル原器を太陽 に持 って行 くと原器 は融けて しまう。原 子の大 きさを測 ろうとして も,それは原 器の刻印の幅 よ り遥 かに小 さ くて どうに もな らな い。宇宙の大 きさは測定 できるだ ろうか。宇 宙は 膨張 してい る と言われ てい るので,物 差 しだ って 同 じよ うに延びているか もわか らない。従 って,も のには依存 しない法則 を使 って距 離を測 る必要が あ る。

いつ で も,ど こで も使 える法則 は意 外な所 か ら 見つか った。 アメ リカの広大 な土地 で光の速 度を

13振 り子 の 等 時性 の 発 見 と し て 伝 え られ て い る 話 で あ る。 振 り子 の 等 時 性 とは,振 り子 の長 さ を4,重 力 加 速 度 をgと る と 周 期 丁 は 単 位 を 持 た な い 量 で あ る振 幅 θの 単 位 を 持 た な い 関数 ∫(θ)を使 っ てT=∫(θ)〉/妬 で与 え られ る が,関 数

∫(θ)は振 幅1θ1が 小 さい 時 一 定 で あ る こ と で あ る 。

14す ぐ傍 で 測 っ た 時 間 は プ ロパ ー な(固 有 と訳 され て い る)時 間 と呼 ば れ て い る

。 実 は 異 な っ た場 所 に お け る 時 間 測 定 に は 本 質 的 な 困 難 が あ る 。 時 間測 定 を す る 場 合,振 動 数 を な ん らか の 方 法 で 測 らな け れ ば な ら な い 。 原 理 的 に は,波 の 干 渉 を 応 用 す れ ば よ い 。 しか し,離 れ た場 所 ま で波 を 伝 搬 さ せ る と,ド ッ プ ラ ー 効 果 を引 き 起 こす か も しれ な い 。 そ の ドッ プ ラー 効 果 を制 御 で きな い と時 間 測 定 も ま た不 確 か な も の に な ら ざ る を 得 な い 。

15原子 を 重 力 場 中 で 上 に 放 りあ げ

,上 昇 中 の速 度 と落 下 中 の 速 度 を く らべ て速 度 が0の 状 態 を 推 定 した り,レ ー ザ ー を使 っ て 電 波 を誘 導 放 射 さ せ て 原 子 がエ ネ ル ギ ー を失 うよ う試 み て,一 秒 の定 義 が 要 求 す る状 態 に 近 い 状 態 を何 とか 実 現 し よ う と 努 力 して る

(11)

測 った所,東 西 に伝わる光の速度 も南北 に伝わ る光 の速度 も同 じだったのであ る。地球 は 自転 してい るか ら,地 球の 回転速度分,速 度 が変 わるはず なの に,同 じだ ったのであ る。 この事実をつか うと,

メ ー トル は 光 が 真 空 中 で(1/2gg792458)s の 間 に 進 む 距 離 で あ る 。

と定義 できる。つ ま り,光を発 し距 離を測 りたい対 象物か ら光 が反射 して帰 って来 るまでの時間 を測 れば距離が測れ る ことにな る。

5.3宇 宙 を 測 る

宇宙の よ うな大 きな対象の大 きさを どの よ うに 測 るかについて知ってお くべき ことを まとめよ う。

ここでは,様 々な努力によって物理法則に基づ いて 様々な測定が行 なわれてい るかを伺い知 るこ とが で きる。望 遠鏡 に よって,惑 星の まわ りに回 る衛 星,超 新 星の爆発,渦 巻 く銀河,な どな ど,様 々な天 体を見 るこ とが できるよ うにな った。それ らの構 造 性質 を考 え るとき,ど の程 度離れた距離にあ る のか分かれ ば,形,構 造 性質 を決 め る ことがで き る。 また,逆 に,形,構 造,性 質が分かれば距離を推 定 する ことがで きる。

天体 の距 離は地 球,太 陽間の距離を基準 に測 る。

太 陽か ら春分 での地 球 までの距離を1天 文単位,l AUと い う。1AU=1.49597870×1011mで あ る。

地球か ら金 星 までの距離 は レー ザー光 の帰還 時間 か ら測 られてい る。地球太陽間 の距離 は太 陽質 量 M.と 重 力定 数Gと 惑 星 の公 転周期 か ら力学の法 則を使 って求 め られ る。

地 球 は 太 陽 の 回 りを 一 年 か け て 一一周 す る 。 太 陽 の 近 く に あ る 恒 星 が 天 空 に 見 え る 位 置 は,遠 く の 星 々 を 背 景 と し て,一 年 か け て 楕 円 を 描 く。 半 年 間 で の 恒 星 が 見 え る 方 向 の 変 化 か ら,1AUの 距 離 を 基 線 と し た 三 角 測 量 が で き る 。 太 陽H,地 球E, 恒 星Sに 対 し て,HSと1{Eが 垂 直 で あ る と き の 視 差 の 角 を ∠HSE=σ ブ と す る 。 基 線1AUに い し て 視 差 角 石σが1秒 角 に な る と き の 距 離 を1 pcと 書 き,1パ ー セ ク(parallaxsecond,視 差 秒 角)

と 読 む 。1pc=3.26光 年=101a49mで あ る 。 太 陽 に 一 番 近 い 恒 星 ケ ン タ ウ ル ス 座 α 星 に 対 し て ω=0,75秒 角 は で あ り,距 離 は1.3pcで あ る16。

太 陽 は1兆 個 ほ どの 恒 星 か ら な る 私 達 の 銀 河(天 の 川)の 中 の 一 つ の 恒 星 で あ る が,銀 河 の 中 心 ま で の 距 離(8kp)を 測 る の は 難 しい 。 光 で は ほ と ん ど 見 通 せ な い か ら で あ る 。 こ の 銀 河 は 円 盤 状 の 形 を し て い る が,同 時 に 球 状 星 団(106個 ほ ど の 星 団)が 銀 河 中 心 の ま わ り に 球 状 に 分 布 し て い る 。 こ れ の 分 布 を 測 定 し,分 布 の 中 心 位 置 を 銀 河 の 中 心 と し て い る 。 誤 差 は2kpc程 度 に な る 。

私 達 の 銀 河 の 外 に あ る 遠 く の 天 体 ま で の 距 離 は 色 々 な 観 測 を 通 して 決 め られ る 。 そ の 測 定 は,お お よ そ,物 理 法 則 を も と と し た 個 々 の 天 体 に 対 す る絶 対 測 定 と2つ の 距 離 の 異 な っ た 天 体 の 距 離 の 比 を 求 め る 相 対 測 定 に わ け る こ とが で き る 。

あ る 脈 動 変 光 星 ま で の 距 離 は そ の 変 光 星 の 性 質 (放 出 す る 光 エ ネ ル ギ ー の 総 量)と 見 か け の 明 る さ の 比 か ら 絶 対 測 定 す る こ と が で き る17。 残 念 な が ら,脈 動 変 光 星 の 構 造,性 質 は そ れ ほ ど分 か っ て は い な い18。 ど の よ う に 精 密 に 考 え て も 一 桁 程 度 の 誤 差 は 避 け られ な い 。 し か し,宇 宙 に は 距 離 の 絶 対 測 定 が で き る も の が た く さ ん あ る 。 た と え ば,巨 大 16現在 で は 人 工 衛 星 を 使 っ て 明 るい 星 に 対 して10『3秒 角 の 誤 差 で 視 差 π が 測 られ て い る

。 した が っ て 誤 差10%で,100 pcま で の 星 々 の 距 離iが測 られ て い る 。現 在 の 所,こ れ 以 上 の 距 離 で は三 角 測 量 は な さ れ て い な い が10‑5秒 角 の誤 差 で 測 定 す る計 画 が進 め られ て い る 。

17脈動 変 光 星 は恒 星 で あ り

,恒 星 内部 で は 光 と物 質 が 熱 平 衡 状 態 に あ る。 温 度 鴎Hの 熱 平 衡 状 態 に あ る ガ ス 球 の 半 径Rの 球 の 表 面 か ら1秒 あ た り1m2あ た りに 出 るエ ネ ル ギー,つ ま り光 度 五 は 五=4πR2σ 興 仔・で あ る。 こ こ で σは ス テ フ ァ ン ・ ボ ル ツマ ン 定 数 で あ る。 星 の 温 度 興 仔は 星 の色 か ら分 か る 。 星 の 光 度Lは 距 離 の2乗 に 反 比 例 して 小 さ くな るか ら,星 の 見 か け の 光 度 を 測 れ ば,星 の 半 径Rが 分 か れ ば 距 離 が 分 か る こ とに な る。 脈 動 星 は 星 が 膨 張 ・収 縮 を繰 り返 して い る。 も し星 が 球 形 を 保 っ て 振 動 して い る な ら,星 の ス ペ ク トル を 観 測 す る こ とに よ って ,ド ップラー効果 を使 って,星 の振動 の速 さ を観 測 し,星 の 振 動 の振 幅 を 調 べ る こ とが で き る 。 同 時 に 温 度 の 変 化 も測 定 で き る 。振 幅 が 星 の半 径 に 較 べ て無 視 で きな い 大 き さ な ら,星 の 大 き さ と星 の 光 度 の 関 係 か ら,Rを 見 積 も る こ とが で き る 。

18かつ て

,ア ン ドロ メ ダ 星 雲 ま で の 距 離 が2倍 に 評 価 し直 さ れ る こ とが あ っ た。 当 時,脈 動 変 光 星 の理 論 的 に 知 られ て い る光 度 と周 期 の 関 係 を 使 っ て,距 離 を 測 って い た。脈 動 変 光 星 に は2日 か ら50日 の 周 期 で 変 光 す る セ フ ァイ ド型 ,乙女座W

星 と1日 以 下 の 周 期 で変 光 す る琴 座RR型 星 が あ る。 セ フ ァイ ド型 は 炭 素,窒 素,酸 素 な どの 含 有 率 が 大 き い新 しい 星(種 族1),後 ろ2つ は 少 な い 古 い 星 で あ る(種 族II)。 そ の 光 度 と周 期 の 関 係 は 小 マ ゼ ラ ン 雲 の セ フ ァ イ ド型 の 星 を 使 っ て校 正 さ れ て い た。 我 々 の銀 河 の 中,太 陽 の近 くに 三 角 測 量 で距 離 が 決 め られ る セ フ ァイ ド型 の 星 が 無 か っ た た め で あ る。 当 時 , セ フ ァイ ド型 と乙 女 座W型 は 周 期 が 同 じな ら 同 じ光 度 であ る と思 わ れ て い た。 そ うす る と,間 違 っ た光 度 の 校 正 に もか か わ らず

,3つ の型 の 光 度 と周 期 の 関 係 は 同 じ一 つ の 直 線 上 に な り,だ れ もそ の 公 式 を 疑 わ な か っ た 。 しか し,1952年 にBaade が200イ ンチ 望 遠 鏡 で ア ン ドロ メ ダ星 雲 を 覗 い た とき,球 状星 団の中に見 えるはずの琴座RR星 型 星 が 見 え な か った 。 この と き,始 め て,セ フ ァ イ ド型 の 光 度 の 校 正 を 間 違 え て い る こ と に気 付 い た の で あ る。

(12)

な天 体の重 力の レンズ作用 で光が屈折 し,遠 くの 1つ の天体 が3つ に も5つ に も見え ることがあ る。

同 じ光源 か ら出た光で も時間がずれ て到着す る こ とになる。 この時間差か ら距離 を評価す る ことが 可能である。また,遠 くの銀河の集 団の中では高温 度の電離 した電 子が存在す る。 この電子 は宇宙 の 背景か らく3Kの 光を散乱 し,宇宙背景輻射のスペ ク トルを ゆがめる。 もし電子密度が他の方法 で分 かっていれ ば,背 景輻射の スペ ク トルを観測する こ とに よ り,銀河 団までの距離 がわかる。

一つ一つ の絶対測定の精度が悪 くとも

,多 くの測 定を比較す る と,距離測定 の精度 は上 が って くる。

この比較を色 々な距離にあ る2天 体に対 して行 う ことが相対測定で ある。私達 の住む銀河(天 の川) の近 くには大マ ゼラン星雲(距 離約50kpc)や ア ン ドロメダ星雲(距 離約800kpc)と い った大 きな 銀河 があ る。両銀河 ともその中にセフ ァイ ド型変 光 星 とい う,か な り性質の分か った変光星が ある。

これを使 って距離を測 ることができる。 また,両 銀 河 ともその 中にある球状星 団の中の星まで望遠 鏡 で分解 す るこ とが できる。星 の明るさ(光 度)を 縦軸,色(温 度)を 横 軸 に とって散布図(HR図)

を書 くと,そ れぞれの星の質量や年齢が分か り,そ れ か らも距 離が求 まる。 これ らをすべ て総合 して 考 え る と,大 マゼ ラ ン雲 へ の距 離 とア ン ドロメダ 星雲へ の距 離の 「比」を非常 に正確 に求 める こと がで きる。

1Mpcか ら100Mpc程 度の距離の相対測定では 経験則 も使 われ る。た とえば,渦 巻 き銀 河の明 る さは回転速度 の4.5乗 に比例す る。楕 円銀河 の明 るさは銀河 内の星の速度の分散 の4乗 に比例す る。

なぜ こうなっているか理解できず,ど こまで成 り立 つ か もわ か らないが,そ れ らが正 しい距 離の比 を 示せ ば,逆 に経験則 を確 立す ることになる。

100Mpcを 越 え る と,長 さや 角度の意 味が 日常 の経験で知 ってい るもの とは異な るこ とに も注意 す る必要が ある。 同 じ大 きさの物を見込む角度 も 遠 くなるほ ど,日 常経験 と反対 に,大 き くなる,光 が重力 によって曲げ られ るか らであ る。

大 マ ゼ ラ ン星雲 は 我 々 の 銀 河 の 周 りを 回 る衛 星 銀河で ある。ア ン ドロメダ星雲 と我 々の銀河 は同 じよ うな銀河 で,我 々の銀 河 とともに ロー カル な 銀 河の グル ープを作 ってい る。その ような銀河群 が集 団を作 って乙女座銀河団(Virgocluster距 離約 15Mpc)や 髪の毛座銀河 団(Abel1656,ComaClus一

ter距離 約100Mpc)を 作 ってい る。それ らの銀河 団が さ らに超銀 河団を作 って いる。 これ らの階層 間の大 きさの比はかな り正確 である と考えてよい。

この相対測定 を梯子 の ように大 きな方 に積み重ね て行 くと,宇宙 の端 まで測る ことがで きる。

5.4質 量 の測 定

5.4.1慣 性 質 量 と重 力 質 量

速 度uで 動 く質量 飢 の物質の運動量はmuで あ る。ニ ュー トンの運動方程 式に よると運動量の時 間変化率 は力で与 え られ る。運動 量か ら測 られ る 質量 鵬 を慣性質量 とい う。一方,地 上 では,物 体 ご とに決 まる量m'と 重力加速度 とい う物体によ らな い比例 定数gを 使 ってm'gと 重力が働 く。 この よ うに,皿 とm'は まった く由来 の異な る量 であ る。

しか し,ガ リレオが示 したよ うに,物 体 が一定の距 離を落下 す るのに要す る時間 は物質 によ らない。

この事実 は物質 の 鵬 と 飢'は比例す る量 でなけれ ばな らず,gの 値 を うま く選 べばm=m'と す るこ とがで きることを意味 してい る。 これ を等価 原理 とい う。

物体に働 く遠心力は慣性質量 鵬 に依存 している。

エ トベスは地球の 自転による遠心力を使 って,等価 原理 を高 い精度 で検証 した。エ トベ スの実験装 置 では,二 つ の物体 が ガラス糸 でつ り下 げた天秤 に 置かれ てい る19。天秤 の方向を東西 に向ける と,も し等価原理が成 り立たなければ,ガ ラス糸を捻 る力 (トル ク)が 働 く。天秤の作 りが悪 くて釣 り合いの 状態が悪 くて も天 秤を傾 ける方 向に力が働 くだけ で,糸 を捻 る力は働かない。天秤の東西の 向きを逆 にす る と,糸を捻 る力 は逆 になるので,両 方 向で捻 る力を較べ る と,捻 る力の0か らのずれ は精密に測 れ る。 こう してエ トベ スはm'/m=1±2×10曹8 であ る ことを示 してい る。

542地 球の質 量を測る

距 離 γ離 して 置 か れ た 質 量Mとmの 物 体 の 間 GMm の力が働 く(万 有引力 の法則)

。 には 、F=

r2

キ ャ ベ ン デ ィッ シ ュ は2つ の 質 量mの 物 体 を ガ ラ ス 糸 で 吊 る した 天 秤 に 置 き,近 く に2つ の 質 量M の 物 体 を お い て,mとMの 間 に 働 く力 を,糸 の 捻 れ に 対 す る フ ッ ク の 法 則 を 使 っ て 測 っ た 。 こ の 力 互9天秤 は重力質量 が同 じ物 体を用意す るため に使 われてい る

参照

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