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街なみ

著者 政木 洋子

雑誌名 金沢大学文化人類学研究室調査実習報告書

29

ページ 117‑128

発行年 2014‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/2297/40138

(2)

116 117

11

.街なみ

政 木 祥 子

1.はじめに 2.蛸島の街なみ 3.街なみ環境整備事業 4.観光資源としての街なみ 5.おわりに

1.はじめに

調査地域である蛸島の町を歩いていると、板張りの壁の住宅が多く目に入ってくる。そしてそ れらの住宅は、ほぼ例外なく黒瓦の屋根だった。また、よく見ると住宅の板壁には古く色あせた ものと、真新しくきれいなものが混在していた。気になったので聞き取り調査を行う中でうかが ってみると、「市から補助が出るので最近よく直している」「遠くから街なみを見に来る人がいる」

といったお話を聞くことが出来た。

そこで本章の前半では、市役所や住民の方のお話をもとに、蛸島の街なみの特徴と、珠洲市が 行っている街なみを守る事業・制度について述べる。後半では、守られている街なみが観光の中 でどのように利用されているか、どのような状況であるかを述べる。

2.蛸島の街なみ

本節では、蛸島の街なみ・住宅の特徴や問題点を述べる。次の節から述べる制度の内容の導入 として、ここで整理しておきたい。

蛸島町は、能登半島北東端の飯田湾北岸に位置し、古くから漁業を生業として栄えた漁師町で ある。自動車がすれ違えないほどの細い街路が多く、漁村集落独特の間口が狭く奥行きの深い切 妻造りの住宅が立ち並んでいる。住宅には下見板張りの壁、白漆喰、黒瓦があしらわれ、美しい 街なみを作り出している。1996年には、「第3回いしかわ景観大賞」の景観賞も受賞している。

(3)

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その一方で、未舗装の道路・公園などの緑の不足・雪処理施設の不備など、住環境の面で多く の課題を抱えてもいる。現在も珠洲市により、公共下水道事業が2010年度から2014年度まで行 われており、生活環境の改善に向けた総合的な取り組みが求められている地区である。

3.街なみ環境整備事業

前節で述べたような街なみを保存し、課題を改善するために、珠洲市が街なみ環境整備事業を 開始した。本節では、街なみ環境整備事業について、聞き取り調査やいただいた資料から、取り 組みや実績、住民の声をまとめていく。

3.1 概要

事業の主体は珠洲市建設課であり、事業期間は2011年度から2020年度までの10年間という長 期計画である。事業の対象地域は街なみ整備環境促進地域及び街なみ環境整備地区の合計80.8ha に設定されている。整備の内容は、小公園の整備・住宅の修景・道路美装化・消雪施設の整備・

道路排水路の整備・地区防災施設の整備等である。事業開始に当たって、2010年度に街なみ整備 事業推進委員会が発足した。構成員は蛸島地区の住民から市議会議員・蛸島区長会長・公民館長・

婦人会長・鉢ヶ崎リゾート振興協会理事長など、各団体の代表者10名、市役所職員から土木事務 所長・企画財政課長・生活環境課長・建設課長ら4名の計14名である。ここにアドバイザーとし て株式会社日本海コンサルタント職員が2名、事務局として市役所建設課職員3名が加わる。

この推進委員の協議の中で、蛸島地区の街なみを整備するために、補助金が出るのなら住宅の 改修を行いたいという声が出て、住民への補助金の助成が決定した。総事業費は約5億円であり、

半分は珠洲市が、もう半分は国が負担している。国からの予算補助の獲得は、珠洲市がまとめた 企画を一度石川県に提出してから、県が国へ予算を申請しているそうだ。予算は事業開始当初、

住宅の修景など住民への補助金として約5千万円、その他の公共施設の整備などに約45千万 円が配分されていた。しかし、住民からの補助金の申請が想定より多く、それぞれ約1億円と約4 億円に改められた。10年という長期計画のため、さらに申請件数が増えれば、予算を増額するこ とも検討されているという。

3.2 公共事業

公共設備の整備では、消雪施設や防火水槽の設置、排水路、街路灯整備の工事などが2011年度 から随時行われている。2011年から2012年にかけて蛸島公民館の改修工事が行われた。公民館の スロープの新設、外壁の塗り替え、屋根瓦の葺き替えなど、外見の改修に加えて、内部の床や壁、

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その一方で、未舗装の道路・公園などの緑の不足・雪処理施設の不備など、住環境の面で多く の課題を抱えてもいる。現在も珠洲市により、公共下水道事業が2010年度から2014年度まで行 われており、生活環境の改善に向けた総合的な取り組みが求められている地区である。

3.街なみ環境整備事業

前節で述べたような街なみを保存し、課題を改善するために、珠洲市が街なみ環境整備事業を 開始した。本節では、街なみ環境整備事業について、聞き取り調査やいただいた資料から、取り 組みや実績、住民の声をまとめていく。

3.1 概要

事業の主体は珠洲市建設課であり、事業期間は2011年度から2020年度までの10年間という長 期計画である。事業の対象地域は街なみ整備環境促進地域及び街なみ環境整備地区の合計80.8ha に設定されている。整備の内容は、小公園の整備・住宅の修景・道路美装化・消雪施設の整備・

道路排水路の整備・地区防災施設の整備等である。事業開始に当たって、2010年度に街なみ整備 事業推進委員会が発足した。構成員は蛸島地区の住民から市議会議員・蛸島区長会長・公民館長・

婦人会長・鉢ヶ崎リゾート振興協会理事長など、各団体の代表者10名、市役所職員から土木事務 所長・企画財政課長・生活環境課長・建設課長ら4名の計14名である。ここにアドバイザーとし て株式会社日本海コンサルタント職員が2名、事務局として市役所建設課職員3名が加わる。

この推進委員の協議の中で、蛸島地区の街なみを整備するために、補助金が出るのなら住宅の 改修を行いたいという声が出て、住民への補助金の助成が決定した。総事業費は約5億円であり、

半分は珠洲市が、もう半分は国が負担している。国からの予算補助の獲得は、珠洲市がまとめた 企画を一度石川県に提出してから、県が国へ予算を申請しているそうだ。予算は事業開始当初、

住宅の修景など住民への補助金として約5千万円、その他の公共施設の整備などに約45千万 円が配分されていた。しかし、住民からの補助金の申請が想定より多く、それぞれ約1億円と約4 億円に改められた。10年という長期計画のため、さらに申請件数が増えれば、予算を増額するこ とも検討されているという。

3.2 公共事業

公共設備の整備では、消雪施設や防火水槽の設置、排水路、街路灯整備の工事などが2011年度 から随時行われている。2011年から2012年にかけて蛸島公民館の改修工事が行われた。公民館の スロープの新設、外壁の塗り替え、屋根瓦の葺き替えなど、外見の改修に加えて、内部の床や壁、

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便所も改修され、長寿命化とともに、より住民が使いやすいようになった。また、屋根は赤瓦か ら能登らしい黒瓦へと葺き替えられた。2012年度には蛸島の消防分団の待機所が改築された。黒 瓦、白漆喰、格子状の下見板張りの外壁の意匠がこらされ、蛸島の街なみによくなじんでいる。

蛸島分団の拠点、蛸島地区の防災の拠点であるとともに、住民の人々が多目的室を集会の場とし ても利用できるようになっているそうだ。この他にも、山王の森の避難路整備工事として、階段 や手すりの整備も行われている。このことから、街なみの整備や生活の向上に加えて、住民の安 全を守る事業が展開されていることが分かる。

3.3 補助金交付制度 3.3.1 概要

街なみ環境整備事業は蛸島地区がより魅力的な街なみになるよう、住環境の改善を目的とした 街づくりを進めている。その一環として、地区内の住宅などの外観に係る整備・改善費用を補助 する「蛸島地区街なみ整備助成事業補助金交付制度」が創設された。補助の対象地区は、珠洲市 が定めている街なみ環境整備方針に規定する街なみ環境整備促進地域(80.8ha)で、補助の対象と なるのは街なみ景観が向上すると認められる建築物や工作物などの修景整備、街なみ景観を妨げ る建築物など解体・撤去などである。第2節で挙げたような、黒瓦や下見板張りなどの伝統的な 意匠が施された木造住宅の街なみ景観を修景施設整備により守り生かしながら、住民の生活の場 と一体となった街なみを形成することが制度の目的である。事業期間は2011年度から2020年度 12月までである。具体的な補助金交付基準・修景基準は次ページの表1・表2のようになる。

3.3.2 補助金申請手続き

補助金の申請は毎年12月までで、その年度内に工事を終わらせることが要件である。申請手続 きの流れは、まず、申請者が補助金交付申請書を市役所に提出する。このとき、工事請負書や実 施設計図書などが添付物として必要となる。市役所職員が改修前の建築物などを確認し、申請書 が受理されると、補助金交付決定通知書により申請者に通知される。申請件数が多い場合には抽 選が行われることもあるそうだ。通知書が届いた後に、申請者は工事に着工し始める。工事が完 了した申請者は、完了実績報告書を建築物などの全景写真などとともに提出する。市から補助金 交付の額確定通知書により通知があった後、申請者が補助金交付請求書を提出すると、申請者の 口座に補助金の振り込みがされる。

実施設計図書には、平面図、立面図などが必要になるが、知識がない人が描くのは困難である ため、多くの場合は申請者自身ではなく、設計士に頼んで描いてもらうことが多いようだ。また、

写真は改修前、解体中、改修中、改修後すべての写真が必要になるため、基本的に改修に手を付

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120 け始めてからの申請は出来ない。

1 補助金交付基準

対象施設 交付基準

補助 対象経

補助率 補助 限度額

建築物

建物修景費 建物の新築、増築、改築、大規模な修繕等に 係わる工事費のうち、外観に係る経費

15万円

以上 2/3

50万円

建築設備等 修景費

建物の屋外に露出し、街なみ景観を妨げてい る給排水設備、空調設備、電気設備、広告物 等の除去、遮蔽または改善に係る工事費 工作物 門・塀 公道に面した門または塀の築造、増築、修繕

に係る工事費

その他 生け垣 公道に面した生け垣設置について、その工事 に要する経費

建築物

工作物 解体費 街なみ景観を妨げている建築物及び工作物の 解体・撤去・処分に係る費用

20万円

以上 1/2

(出所:「蛸島地区街なみ整備助成事業-補助金交付制度のご案内-

2 修景基準

項目 修景基準

建築物

屋根・下屋・庇

・屋根は、切妻式を基本とする。

・葺き材は、瓦を使用し、黒を基調とする。

・下屋、庇等は、黒瓦もしくは、銅またはこれに類する金属板とする。

妻壁(破風)

・妻壁は、漆喰調塗り壁、下見板張りを基本とする。

・漆喰は白系色とし、下見板は茶・黒系色を基調とする。

・木製格子を組み合わせることが望ましい。

外壁 ・仕上げ材は、下見板張り及び漆喰調塗り壁を基本とする。

・下見板張り部分は茶・黒系色とし、漆喰調塗り壁部分は白系とする。

開口 ・開口部は木製の格子引き戸を基本とする。

・サッシを利用する場合は、茶・黒系色または木目調の色とする。

意匠 ・屋根、妻壁(破風)、外壁等の外観は、街なみと調和するよう意匠に 統一性 をもたせることを基本とする。

設備等 ・エアコンや電気メーター等の機器類は、木製格子で目隠しすることを 基本と する。

門・塀 ・高さを低く抑えた、茶・黒系色を基調とした板柵を基本とする。

生け垣 ・生け垣は、常緑性樹木を植栽することを基本とする。

解体 ・解体後の跡地は、景観を損なわないように維持管理を行うこと。

(出所:「蛸島地区街なみ整備助成事業-補助金交付制度のご案内-

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120 け始めてからの申請は出来ない。

1 補助金交付基準

対象施設 交付基準

補助 対象経

補助率 補助 限度額

建築物

建物修景費 建物の新築、増築、改築、大規模な修繕等に 係わる工事費のうち、外観に係る経費

15万円

以上 2/3

50万円

建築設備等 修景費

建物の屋外に露出し、街なみ景観を妨げてい る給排水設備、空調設備、電気設備、広告物 等の除去、遮蔽または改善に係る工事費 工作物 門・塀 公道に面した門または塀の築造、増築、修繕

に係る工事費

その他 生け垣 公道に面した生け垣設置について、その工事 に要する経費

建築物

工作物 解体費 街なみ景観を妨げている建築物及び工作物の 解体・撤去・処分に係る費用

20万円

以上 1/2

(出所:「蛸島地区街なみ整備助成事業-補助金交付制度のご案内-

2 修景基準

項目 修景基準

建築物

屋根・下屋・庇

・屋根は、切妻式を基本とする。

・葺き材は、瓦を使用し、黒を基調とする。

・下屋、庇等は、黒瓦もしくは、銅またはこれに類する金属板とする。

妻壁(破風)

・妻壁は、漆喰調塗り壁、下見板張りを基本とする。

・漆喰は白系色とし、下見板は茶・黒系色を基調とする。

・木製格子を組み合わせることが望ましい。

外壁 ・仕上げ材は、下見板張り及び漆喰調塗り壁を基本とする。

・下見板張り部分は茶・黒系色とし、漆喰調塗り壁部分は白系とする。

開口 ・開口部は木製の格子引き戸を基本とする。

・サッシを利用する場合は、茶・黒系色または木目調の色とする。

意匠 ・屋根、妻壁(破風)、外壁等の外観は、街なみと調和するよう意匠に 統一性 をもたせることを基本とする。

設備等 ・エアコンや電気メーター等の機器類は、木製格子で目隠しすることを 基本と する。

門・塀 ・高さを低く抑えた、茶・黒系色を基調とした板柵を基本とする。

生け垣 ・生け垣は、常緑性樹木を植栽することを基本とする。

解体 ・解体後の跡地は、景観を損なわないように維持管理を行うこと。

(出所:「蛸島地区街なみ整備助成事業-補助金交付制度のご案内-

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3.3.3 金沢市の取り組みとの比較

金沢は戦火を免れ、今日でも伝統的な街なみが多く残る土地である。そのため、蛸島での補助 金交付制度のような、街なみを守るための修繕に係る費用を補助する条例や制度が、様々な地 区や規模で設定されている。その中から「金沢市伝統的建造物群保存地区保存整備事業」を取り 挙げ、蛸島の「蛸島地区街なみ整備助成事業補助金交付制度」との比較をしたい。

2001年に、「金沢市伝統的建造物群保存地区保存整備事業費補助金交付要綱」が告示された。金 沢市には市が定めた伝統的建造物群保存地区が4つあり、これらそれぞれに保存計画が定められ ている。この要綱は、19773月に公布された「金沢市伝統的建造物群保存地区保存条例」の第 9条(経費の補助等)に基づいて定められた。4つの保存地区内における建築物などや伝統的建造 物と一体をなす環境を保存するために、特に必要があると認められる物件として保存計画に定め られた物件や、これに類する物件の管理、修理、修景または復旧その他保存地区の環境の整備に 要する費用に対する補助金の交付に関し、必要な事項を定めるものである。金沢市にある東山ひ がし、主計町など、4つの保存地区は、いずれも文化庁の重要伝統的建造物群保存地区にも選定さ れている。面積はそれぞれ0.6haから23.5haまでの間で、4地区の合計は45.5haである。補助金交 付についての条件と補助額などの一部を表3に示す。

この金沢市の例と蛸島の助成事業との違いにまず挙げられるのは、対象地域である。蛸島の助 成対象地区が80.8haであるのに対して、金沢市の保存地区は4地区を合わせても45.5haで蛸島の 半分ほどである。主計町にいたっては、保存地区は0.6haであり、助成の対象地区がごくわずかな 地域に限られていることが分かる。次に挙げられるのは補助金の違いである。まず、補助の割合 を見ると、蛸島の事業の場合は修景の種類によって2/31/2と定められている。それに対して金 沢市の補助割合は70%から90%で、蛸島のものより高い割合を補助するように定められている。

また、補助金の上限についても、蛸島の場合は最高でも50万円である一方、金沢市では上限は700 万円から1500万円、比較的低額と考えられる費用のものは上限が定められていない。

蛸島地区の助成金について珠洲市役所建設課、管理係長のAさんと主任技師のBさん(ともに 男性)にお話をうかがうことが出来た。蛸島地区の建築物などへの補助金額が金沢市の例より低 い理由は、対象地区の広さと、自由性のある修景基準にあるそうだ。事業開始前に、市長、副市 長、建設課長、総務課長、産業振興課、企画財政課の会議で助成金の対象地区を蛸島風の建物が 多く並ぶ通り一本のみにするか、現在の形である蛸島地区全域にするか話し合われた。10年とい う長い目で見て、蛸島地区全体をきれいな街なみにしたい、という思いから対象地区を蛸島町全 体に定めたのだという。

また、金沢市など他地域の似たような事業に比べると修景基準に自由性があり、申請の手続き

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3 保存整備事業の種類、当該対象となる経費及び補助金の額 保存整備事業の

種類 対象経費 補助金の額

伝統的建造物で ある建築物の修 理の事業

外観、屋根及び構造耐力上主要な部分の修理 の工事(これらに伴う老朽電気配線の更新の 工事を含む。)に要する経費

対象経費の80パーセントに相当す る額以内の額とし、その額は、1,500 万円を超えないものとする。

構造耐力上主要な部分の補強の工事に要す る経費

対象経費の90パーセントに相当す る額以内の額とし、その額は、500 万円を超えないものとする。

格子の修理の工事に要する経 対象経費の90パーセントに相当す る額以内の額とする。

防災上必要な設備の整備に要する経費 対象経費の90パーセントに相当す る額以内の額とする。

伝統的建造物で ある工作物の修 理の事業

修理の工事に要する経費 対象経費の80パーセントに相当す る額以内の額とする。

伝統建造物以外 の建築物の修景 の事業

外観及び屋根の修景の工事に要する経費

対象経費の70パーセントに相当す る額以内の額とし、その額は、700 万円を超えないものとする。

格子の修景の工事に要する経費 対象経費の90パーセントに相当す る額以内の額とする。

防災上必要な設備の整備に要する経費 対象経費の90パーセントに相当す る額以内の額とする。

伝統的建造物以 外の工作物の修 景の事業

修景の工事に要する経費 対象経費の70パーセントに相当す る額以内の額とする。

(出所:金沢市HP

も簡単だそうだ。例えば金沢市の伝統的建造物群保存地区の場合、対象となっている建築物は、

伝統的な様式を保存されることが求められ、基本的には、伝統的建造物群保存地区の建築物の改 修を行う際には、所有者は建築物の様式を選択することが出来ない。金沢市伝統的建造物群保存 地区保存条例には、建造物の新築、改築、増築、移転、除去や修繕などによる外観の変更などを 行おうとするときには、市長及び教育委員会の許可が必要であることも記されている。蛸島の場 合、新築・改築をしようとしている人に、洋風の造りにするのではなく、蛸島風の外観にするよ うに少し我慢をしてもらい、街なみづくりに協力してもらうというスタンスであるのだという。

伝統的な建築物の改修に限らず、新築であっても伝統的意匠を用いれば補助金が出るということ も、金沢市の場合との大きな違いである。

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3 保存整備事業の種類、当該対象となる経費及び補助金の額 保存整備事業の

種類 対象経費 補助金の額

伝統的建造物で ある建築物の修 理の事業

外観、屋根及び構造耐力上主要な部分の修理 の工事(これらに伴う老朽電気配線の更新の 工事を含む。)に要する経費

対象経費の80パーセントに相当す る額以内の額とし、その額は、1,500 万円を超えないものとする。

構造耐力上主要な部分の補強の工事に要す る経費

対象経費の90パーセントに相当す る額以内の額とし、その額は、500 万円を超えないものとする。

格子の修理の工事に要する経 対象経費の90パーセントに相当す る額以内の額とする。

防災上必要な設備の整備に要する経費 対象経費の90パーセントに相当す る額以内の額とする。

伝統的建造物で ある工作物の修 理の事業

修理の工事に要する経費 対象経費の80パーセントに相当す る額以内の額とする。

伝統建造物以外 の建築物の修景 の事業

外観及び屋根の修景の工事に要する経費

対象経費の70パーセントに相当す る額以内の額とし、その額は、700 万円を超えないものとする。

格子の修景の工事に要する経費 対象経費の90パーセントに相当す る額以内の額とする。

防災上必要な設備の整備に要する経費 対象経費の90パーセントに相当す る額以内の額とする。

伝統的建造物以 外の工作物の修 景の事業

修景の工事に要する経費 対象経費の70パーセントに相当す る額以内の額とする。

(出所:金沢市HP

も簡単だそうだ。例えば金沢市の伝統的建造物群保存地区の場合、対象となっている建築物は、

伝統的な様式を保存されることが求められ、基本的には、伝統的建造物群保存地区の建築物の改 修を行う際には、所有者は建築物の様式を選択することが出来ない。金沢市伝統的建造物群保存 地区保存条例には、建造物の新築、改築、増築、移転、除去や修繕などによる外観の変更などを 行おうとするときには、市長及び教育委員会の許可が必要であることも記されている。蛸島の場 合、新築・改築をしようとしている人に、洋風の造りにするのではなく、蛸島風の外観にするよ うに少し我慢をしてもらい、街なみづくりに協力してもらうというスタンスであるのだという。

伝統的な建築物の改修に限らず、新築であっても伝統的意匠を用いれば補助金が出るということ も、金沢市の場合との大きな違いである。

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このように蛸島地区では、金沢市に比べると補助金額は小さいが、地区全体の出来るだけ多く の住宅などが改修できる制度が行われているのである。10年間の計画終了時、町のどこを訪れて も伝統的な住宅を目にすることが出来るかもしれない。

3.3.4 実施例と利用者の声

蛸島地区街なみ整備助成事業の申請受付件数は、初年度である2011年度で10件(解体2件、

修景8件)2012年度は26件(解体7件、修景19件)である。2013年度は8月時点で30件ほど 受付があり、12月までに最大62件受け入れられる予定である。

実際に、事業の補助金を使って住宅の修景をした方数人にお話を聞くことが出来た。

Cさん(栄町 男性 60歳代) 写真1 2013年度6月に申請し、7月には許可 がでて着工したそうだ。Cさんは建具店 を営んでおり、工事の一部もご自身で行 っている。その為、人件費などを含めた 正確な見積もりが出来ず、見積書を出さ ずに許可を得て工事を進めている。改修 箇所は住宅の壁と屋根である。壁は木の 板の壁に張直し、屋根はトタン屋根から 黒瓦屋根へ葺き替えるそうだ。写真1 らも改修前の壁には、トタン材が使われ ていることが分かる。また、私が訪れた

際にはCさんが足場に上り、庇の改修を行っていた。費用は約200万円で補助金額は50万円の予 定である。小泊の設計士に申請手続きなどを依頼している。また、補助金交付制度の対象にはな らないが、トイレなどの改修も同時に行っている。せっかくの機会なので家の内部も外部もきれ いにしようということで、修理に踏み出したそうだ。

Dさん(本仲町 女性 60歳代)

2013年度に申請。5月に申請し、5月中に許可が下りて7月に工事を行った。改修内容は住宅の 板壁の塗り直しである。壁の張替えは行わず、塗料の塗り直しのみおこなったそうだ。費用は73 万円ほどで、聞き取りを行った時点ではまだ補助金は受け取っていなかったが、約50万円の予定

写真1 Cさん宅2013年、筆者撮影)

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ということだった。申請の手続きなどは野々江町の工務店に依頼した。1989年に住宅のリフォー ムを行って以来壁を塗り直しておらず、ちょうど塗り直したいと思っていたころに市からの情報 を得て申請を決意したそうだ。

Eさん(西脇 男性 60歳代)

20124月ごろに申請し、8月に工事を行った。改修内容は住宅の板壁の塗り直しで、珠洲市 内の有限会社石川産業に申請の手続きを依頼した。壁の塗り直しは前々からしたいと思っていた が、我慢していたそうだ。補助金が出るという話を聞いて、せっかくなので、と塗り直しを行っ た。E さん自身は娘さん家族と暮らしているが、お年寄りの夫婦だけの家にもこのような補助は うれしいのではないか、と話されていた。また、昭和40年代に住宅の壁にトタンの波板を用いる ことが流行したが、海からの潮風の影響や歳月が経ったことで、さびがつくなど老朽化が進んで いる。そこへ、補助制度の話が出たので、板壁に替えようと思う人が増えているという背景があ る、とのことである。

Fさん(女性 脇浜本町 70歳代) 写真2 2012年度に申請したそうだ。手続きの流れに 沿っていないが、12月にすでに工事を終えた後 に申請している。板壁の塗り直しと屋根瓦の葺 き替えを行っており、工事費は約150万円で補 助額は50万円である。事業のことや申請に関わ る手続きを依頼する工務店は親戚であるEさん に紹介してもらったそうだ。壁の色が薄くなっ てしまったな、と思っていたところに補助金の 話を聞いて、せっかくなら直してもらおうと思 った、とお話してくださった。

聞き取りから、修理をしたいと以前から思っていたところに補助が出ることを知り、せっかく なら、と申請に乗り出す人が多いこと、申請の手続きは工務店や設計士に頼むことがほとんどで あることが分かった。また、申請に必要な図面などを描くには資格などは必要としないものの、

国が予算を補助していることもあり正確な図面を提出しなければならず、ほとんどの場合、設計 士や工務店に依頼するという。手続きに関しても、書類や市役所との打ち合わせなどが煩雑であ るため、まとめて任せてしまうことが多いそうだ。これに関しては市役所のAさんも予想してい 写真2 Fさん宅(2013年、筆者撮影)

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ということだった。申請の手続きなどは野々江町の工務店に依頼した。1989年に住宅のリフォー ムを行って以来壁を塗り直しておらず、ちょうど塗り直したいと思っていたころに市からの情報 を得て申請を決意したそうだ。

Eさん(西脇 男性 60歳代)

20124月ごろに申請し、8月に工事を行った。改修内容は住宅の板壁の塗り直しで、珠洲市 内の有限会社石川産業に申請の手続きを依頼した。壁の塗り直しは前々からしたいと思っていた が、我慢していたそうだ。補助金が出るという話を聞いて、せっかくなので、と塗り直しを行っ た。E さん自身は娘さん家族と暮らしているが、お年寄りの夫婦だけの家にもこのような補助は うれしいのではないか、と話されていた。また、昭和40年代に住宅の壁にトタンの波板を用いる ことが流行したが、海からの潮風の影響や歳月が経ったことで、さびがつくなど老朽化が進んで いる。そこへ、補助制度の話が出たので、板壁に替えようと思う人が増えているという背景があ る、とのことである。

Fさん(女性 脇浜本町 70歳代) 写真2 2012年度に申請したそうだ。手続きの流れに 沿っていないが、12月にすでに工事を終えた後 に申請している。板壁の塗り直しと屋根瓦の葺 き替えを行っており、工事費は約150万円で補 助額は50万円である。事業のことや申請に関わ る手続きを依頼する工務店は親戚であるEさん に紹介してもらったそうだ。壁の色が薄くなっ てしまったな、と思っていたところに補助金の 話を聞いて、せっかくなら直してもらおうと思 った、とお話してくださった。

聞き取りから、修理をしたいと以前から思っていたところに補助が出ることを知り、せっかく なら、と申請に乗り出す人が多いこと、申請の手続きは工務店や設計士に頼むことがほとんどで あることが分かった。また、申請に必要な図面などを描くには資格などは必要としないものの、

国が予算を補助していることもあり正確な図面を提出しなければならず、ほとんどの場合、設計 士や工務店に依頼するという。手続きに関しても、書類や市役所との打ち合わせなどが煩雑であ るため、まとめて任せてしまうことが多いそうだ。これに関しては市役所のAさんも予想してい 写真2 Fさん宅(2013年、筆者撮影)

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たようで、事業によって街なみが整うだけではなく、地元の工務店にもいい影響が出るのではな いかと思っていた、と話されていた。

なお、聞き取り調査を行ったお宅を含め、蛸島地区内で2012年度終了時の補助実績36件を図1 で地図上に示した。丸印の部分は、蛸島風の建物が特に多く並ぶ通りである。改修などを行った 住宅は、丸印の周囲に集中することなく、補助対象地域内に広く分布していることが分かる。こ のことから、古い街なみを為す住宅ではなくとも、伝統的な建築様式を残そうと住民が配慮して いることがうかがえる。

1 平成242012)年度終了時点での補助実績

(出所:珠洲市役所から頂いた資料を筆者が加工。黒塗り部分が改修・解体を行った住宅など)

3.3.5 補助金交付制度の問題点

聞き取り調査で聞いたり、感じたりした補助金交付制度の問題点が4つある。まず、申請の手 続きが住民にとってやや煩雑であることである。様々な書類や図面の提出、市役所を訪問しての 打ち合わせなどが必要であり、手軽に申請できるようなものではない。しかし、この問題は上で 述べたように、設計士や工務店に依頼することで概ね解決していると言えるのではないだろうか。

次に、修景の規模についてである。助成金の限度額50万円を受け取るには、修景の費用が75 万円以上である必要がある。その為、上限までの助成金が受け取れる最低額である修繕費75万円 前後の修景を行うことが多いようだ。これでは修景を行う件数は増えるが、その一つ一つの規模 は小さくなり、同時に街なみの変化も小さくなるのではないだろうか。また、上限額を負担する

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件数が増え、予算もより多く必要になることも問題である。市としてはより多くの修景・助成を 行いたい考えだが、予算が足りるかどうかが懸念される。

3つ目は、伝統的な意匠を維持しなければならないことである。一般の住宅に比べて、木の板壁 などは劣化が早く、維持するのが難しくお金がかかる。補助金の申請は一家につき一回であるた め、補助制度を利用した改修後の維持管理は住民に任せられることになる。美しい街なみ景観を 守り続けていくには、住民が街なみを守り生かそうという意志をもつことが必要なのである。

4つ目は、改修が難しい住宅も数多くあるという問題である。蛸島には、伝統的な建築様式を残 した大きな古い住宅も見られる。その住人の方のお話を聞くと、家が大きく、費用が掛かるので 改修が難しいのだそうだ。実際町を歩いた際、大きく古い住宅や蔵を複数目にすることがあった。

そのような住宅は、50万円という補助金ではなかなか改修へ踏み出せないのが現状のようである。

たとえ直したとしてもほんの一部分だけの改修を行うことになってしまうだろう。ただ私は、本 当に昔からある伝統建築が姿を消してしまうのは惜しいので、改修や解体をすることなく古い住 宅が街なみを彩っている現状が、よい面とも捉えられるのではないかと考える。

4.観光資源としての街なみ

「自分たちにとっては何の変哲もない景色を、遠くの人が大勢バスで見に来ている」と住人の 方が話されていた。このように、美しく昔懐かしい漁師町の景観が残る蛸島の街なみを、観光事 業として利用する取り組みも見られる。県外の人が蛸島を訪れガイドに導かれながら、蛸島町内 を散策しているのだという。本節では、そのような蛸島町散策を軸として、街なみを舞台とした 環境事業について述べる。

4.1 蛸島町散策

蛸島町散策について、珠洲ビーチホテルに勤めている蛸島の住民で、何度も蛸島町散策のガイ ド役をしているGさん(脇浜本町 男性 50 歳代)にお話をうかがった。蛸島町散策は、2011 5月のバスツアーの中で初めて行われた。このバスツアーはJTB大阪が担当した、珠洲ビーチ ホテルを宿泊地とした能登観光ツアーである。2011年には33本のツアーが行われ、約1300人の 観光客が蛸島町散策に参加した。2013年春には、JTB名古屋が行ったミステリーツアーの行程中 に蛸島町散策が組み込まれ、20本ほど行われた。2012年度にはGさんのガイドによる散策はなか ったが、東京発のツアーの中で、添乗員がGさんと同じルートで散策を行ったこともあるそうだ。

蛸島町散策では、蛸島町の街なみ・高倉彦神社・弁天島の3カ所を主なスポットとして、ガイ ドの説明を聞きながら、実際に蛸島の町を800mほど歩く。街なみを歩きながらGさんらガイド

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件数が増え、予算もより多く必要になることも問題である。市としてはより多くの修景・助成を 行いたい考えだが、予算が足りるかどうかが懸念される。

3つ目は、伝統的な意匠を維持しなければならないことである。一般の住宅に比べて、木の板壁 などは劣化が早く、維持するのが難しくお金がかかる。補助金の申請は一家につき一回であるた め、補助制度を利用した改修後の維持管理は住民に任せられることになる。美しい街なみ景観を 守り続けていくには、住民が街なみを守り生かそうという意志をもつことが必要なのである。

4つ目は、改修が難しい住宅も数多くあるという問題である。蛸島には、伝統的な建築様式を残 した大きな古い住宅も見られる。その住人の方のお話を聞くと、家が大きく、費用が掛かるので 改修が難しいのだそうだ。実際町を歩いた際、大きく古い住宅や蔵を複数目にすることがあった。

そのような住宅は、50万円という補助金ではなかなか改修へ踏み出せないのが現状のようである。

たとえ直したとしてもほんの一部分だけの改修を行うことになってしまうだろう。ただ私は、本 当に昔からある伝統建築が姿を消してしまうのは惜しいので、改修や解体をすることなく古い住 宅が街なみを彩っている現状が、よい面とも捉えられるのではないかと考える。

4.観光資源としての街なみ

「自分たちにとっては何の変哲もない景色を、遠くの人が大勢バスで見に来ている」と住人の 方が話されていた。このように、美しく昔懐かしい漁師町の景観が残る蛸島の街なみを、観光事 業として利用する取り組みも見られる。県外の人が蛸島を訪れガイドに導かれながら、蛸島町内 を散策しているのだという。本節では、そのような蛸島町散策を軸として、街なみを舞台とした 環境事業について述べる。

4.1 蛸島町散策

蛸島町散策について、珠洲ビーチホテルに勤めている蛸島の住民で、何度も蛸島町散策のガイ ド役をしているGさん(脇浜本町 男性 50 歳代)にお話をうかがった。蛸島町散策は、2011 5月のバスツアーの中で初めて行われた。このバスツアーはJTB大阪が担当した、珠洲ビーチ ホテルを宿泊地とした能登観光ツアーである。2011年には33本のツアーが行われ、約1300人の 観光客が蛸島町散策に参加した。2013年春には、JTB名古屋が行ったミステリーツアーの行程中 に蛸島町散策が組み込まれ、20本ほど行われた。2012年度にはGさんのガイドによる散策はなか ったが、東京発のツアーの中で、添乗員がGさんと同じルートで散策を行ったこともあるそうだ。

蛸島町散策では、蛸島町の街なみ・高倉彦神社・弁天島の3カ所を主なスポットとして、ガイ ドの説明を聞きながら、実際に蛸島の町を800mほど歩く。街なみを歩きながらGさんらガイド

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が蛸島の街なみ・住宅の特徴の説明や補助金制度で改修された家の紹介などを行う。また、蛸島 町自体についても現在と過去の話も交えながら紹介しているようだ。キリコ倉庫や高倉彦神社前 では、秋祭りや早船狂言の解説もあり、街なみ以外の蛸島の魅力も伝えられる。

4.2 おらかた案内人

珠洲市の観光協会であるNPO法人能登すずなりで、「おらかた案内人」と呼ばれるボランティ アガイドスタッフが活動している。「おらかた」とは「私たち」といった意味の方言である。設立 20135月で、40代から70代までの19名(この内蛸島の住民は3名)所属している。おらか た案内人は、蛸島に限らず珠洲市内の名所を観光客に案内するガイドスタッフである。設立前の 2012年からスタッフの養成が月に一度行われており、蛸島や宝立、狼煙などで研修が行われてい る。蛸島での研修にはGさんが講師として参加したそうだ。201312月からは、各所のガイド ブックのようなものをスタッフが作成する予定だという。しかし、ガイドとしては満足に研修や 活動が行えていないのが現状で、現在ガイドとして観光客を案内しているスタッフは会長さん一 人のみであるという。

また、加賀百万石ウォークという取り組みが、公益社団法人石川県観光連盟と地域住民によっ て行われている。これは、金沢・加賀・白山・能登の各地域に複数のコースが用意されており、

観光客がコースを選んで街歩きや伝統文化の体験を行うというものである。2013年秋・冬編の能 登コースの一つに「珠洲焼・珪藻土資料館見学と蛸島町散策」というコースが設けられており、

資料館の見学と蛸島町散策を行うことになっている。2012年度までは珠洲市役所の交流観光化が 企画をしていたが、2013年度はおらかた案内人の会長さんが企画をしているそうだ。このコース の案内をおらかた案内人が担当することになっているのである。20139月から20143月まで の間に、8回実施日があるが201311月現在、参加者はいないそうだ。

このようにおらかた案内人には、活動自体も活躍する場もまだ不十分な点があることが分かる。

案内する観光客が集まらないにもかかわらず、本格的な研修を進めていくのは困難だろう。蛸島 町は、観光地として成り立つには困難な状況にあると私は思う。伝統的な街なみを残しても、蛸 島の街なみを見に来ようと思い立つ人はほとんどいないだろう。蛸島の街なみの観光地としての 側面を強め、おらかた案内人の活動を活発にするためには、観光客が訪れる見込みのある秋祭り と組み合わせたPRなどをしていく必要があるのではないだろうか。

5.おわりに

蛸島町に足を踏み入れると、私が普段目にする街なみとは全く異なる景色を目にすることが出

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来る。それは、蛸島町の歴史や、これまでに述べてきたように、街なみを守ろうとする市の取り 組み、住民たちの意識とが形になったものである。第3節では、市からの補助金を利用して住宅 の改修を行った例を挙げた。しかし、聞き取り調査の中では、補助金制度が出来る前から伝統的 な街なみに配慮した改修を行った、と話してくださった住民の方もいた。こうしたことからも、

補助金制度が出来る以前から蛸島の住民が自分たちの街なみを守ってきたことが分かる。今後は 補助金制度の助けもあり、より良い街づくりが進んでいくことと思う。補助金制度が終了する2020 年、改めて蛸島町を訪ねてみたい。また、第4節では街なみと観光について、現在の状況を述べ た。現在はまだ、積極的に蛸島町を訪れる人はほとんどいないだろう。私は調査実習で初めて蛸 島町に行ったが、街なみも人も文化もとても魅力的だと感じた。多くの人に珠洲市や蛸島町を訪 れてもらい、魅力を知ってもらえるよう、おらかた案内人を始めとした観光面の取り組みの発展 を願う。

一週間の調査実習は、初めてのことばかりで、多くの不安を抱えて始まりました。初めて訪れ る町で、初めてお会いする方々とお話するのは緊張しました。しかし、住民の方々はとても温か い笑顔で、私たちを迎えてくださいました。毎日の聞き取り調査で、自分にとって新鮮なお話を 聞くのは楽しく、終わってみるとあっという間で、充実した一週間でした。最後になりますが、

今回の調査中、お話を聞かせてくださった蛸島地区、珠洲市役所、NPO法人能登すずなりの皆様 に感謝申し上げます。皆様のおかげで、拙い文章ではありますが、報告書を書き上げることが出 来ました。ありがとうございました。

参照

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