オーストラリアにおける事前開示制度 : ニューサ ウスウェールズ州「二〇〇一年刑事手続改正(事前 開示)法」の紹介
著者 田淵 浩二
雑誌名 静岡大学法政研究
巻 7
号 4
ページ 1‑41
発行年 2003‑03‑31
出版者 静岡大学人文学部
URL http://doi.org/10.14945/00008773
研究レート
︿目次﹀
はじめに一 NSW州の刑事司法制度の概観 一一 従来の証拠閲示制度
一 二
〇 ︲〇一年測薯手続改正
︵事
前開一一不︶法
四 まとめ・ 一は
じめ
︲ に 筆者は︑二・O〇三年二月二一日から二三日にかけて オーストラ柳アにおける事前開示制度
田 淵 浩 二
の処 理と 訴 追過 程
︲ の ︲総 合的 研究
﹂
︵平 成 一四 年度 科学 研究 補費 助 金
︵基 盤 A︶︑ 研 究代 表者 九州 大学 大学 院法 学 研究 院教 授 大出 良知
︶ の海 外 調査 とし て︑ 指 宿信 立命 館大 学 教授 とと も に︑ オー スト ラ リア
●ニ ーュ ウサ スウ ーュ ルズ
︵N SW
︶州 の訴 坦制 度 の 錮査 を行 一 った
︲︒N S︐W 卿 は シド ユー 市 のあ るオ
■ス トラ リア を代 表す る川 のひ と つで ある
︒ こ
︲ の ︲調 査の ︲ 際 に︑ 国 州 では
﹁二
〇〇 一 年刑一写手続改正ス要前闘示︶法﹄公一〇〇二年四月一八日成立ヽ 同準一一月一九目施行︶鳶より︑法律上︑渾前帥示︵り弓o
﹁ き
き
合ム L 3同じ瓢度が導入されたことを知った︒新たな準備一手続の 導入は︑日本においても刑事裁判の充実・迅速化に向けた刑事司
法改革
川一要あり参考までに調査資料を下に同の ︲重項目で︑︑
の ︐証
一
オ ー スト ラリ アに お け る事 前 開 示 制 度
︱ニューサウスウェールズ州﹁二〇〇一年刑事手続改正︵事前開示︶法﹄の紹介︱
刑﹁ 事 事 件
法政 研究
. 巻七 号四 公 一〇〇 三年
︶ 拠開 制示 度σ 要概 を紹 介す る こと に たし
︒ なお 今︑ 回 の調 査 は指 宿氏 が企 画 し︑ これ に日 淵が 参加 たし も︱ ので ある が︑ 本稿 の内 容 は田 淵 が責 任 負を う︒ 一一
I N I WS 州 の刑 事司 法 制度 の 概観 まず 事︑ 前開 示制 度 を紹 介 する 前 にN SW 川の 刑事 司法 度制 を 概観 し てお く︒ オー スト ラリ アは 六 つの 州 Φ撼︵Z osり
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︶か らな る連 邦制 の国 であ る︒ 州 実は 体 刑法 を含 み た刑 事法
. 制を 定す る権 限を 有し てお り︑ 州毎 に 裁判 所法 別︑ 法︑ 刑事 手続 法等 の ︲法 律 があ る︒ また 連︑ 法邦 め上 把罪 に対 てし 調も 件が 追訴 され た法 域 の手 続法 適が
.用 さ
︲ れる
︒ 2
︶裁 判所 の種 類と 管轄 1 地区 裁 判所 S︵F 8﹈
●ヽじ
︲ 略﹁ 手式 続
﹂ c日分 ミロ Ч 貫 8と 目 も の対 象犯 罪
︵交 通犯 罪
︑ 軽窃 盗︑ 暴 行脅 迫等 比の
. 較的 重 くな い犯 罪︶ に つき
︐ 第 一審 とし
二 ての管轄権を有する他︑正式起訴対象犯罪の﹁予備審問﹂︵8日・ 計塁≧テ8■ましが行われるbまた地区裁判所内に︑少年裁判
所︵
一 .八歳未満の犯罪少年が対象︶が設置されている︒ 2・地方裁判所︵2躊言■8日じ
﹂8B8罪式起訴︵甘90要す犯の大半につき第一﹁ ︲正をこ︑
審と
一 し ての管轄権を有する︒刑事公判は陪審制が採用されている︒ また︑地区裁判所からあ上訴事件を取り扱う
︒ ︲ 3 州最高裁判所︵崚●58目98目←
謀殺罪等︑特に重い犯罪の第一審としての管轄権を有する︒ま た︑伺裁判所内には﹁刑事控訴裁判所﹂八一日い37畳
りo8sL
ヽ 9 が設置されており︑正式起訴事件の上訴事件を取り扱う︒ 4 連邦最商裁判所︵巨峰r8電0
連邦最高裁判所は︑オーストラリァ憲法との道合性や州間
︲ の ︲間 題だけではなく︑刑事法の解釈など純粋に州内の問題についても 一最終審としての管轄権を有する︒上訴は︑重要な法律問題ほつき︑ 最高裁判所の特別の許可により認められる︒
︵二
︶ 刑 事 手 続 の流 れ 1 訴 追 捜 査 権 限 は 警 察 の み が 持 つ︒ 訴﹁ 追
﹂
︵3 需ヽ
︶ は
︑ 通 常
︑ 警 察 逮の 捕 に よ り︑ ま た は地 区 裁 判 所 に対 す る
﹁訴 追 請 求
﹂
︵Fざ 甲
︐ 日ま o3 に基 づ き 召﹁ 喚 状
﹂ s分 冒B oa
︶ が発 布 さ れ る こと に よ り︑ 開 始 す る︒ 訴 追請 求 誰は でも でき る︒ 少 年 対に す る訴 追 請 求 は少 年 裁 判 所 に よ り受 理 さ れ る︒ 2
保 釈 保 釈 に は︑ 警 察 によ る保 釈 と裁 判 所 によ る保 釈 の制 度 が あ る︒ 警 察 によ る保 釈 は逮 捕 直 後 か ら 可能 であ る︒ 裁 判 所 によ る保 釈 は︑ 逮 捕 後 ま た は召 喚 状 に基 づ き︑ 最初 に治 安 判 事 の下 へ出 頭 以降 可 能 であ る︒ いず れ の場 合 も︑ 保 釈 の可 否 の決 定 にお い ては
︑ 逃 亡 の お そ れ の他 に︑ 証 人 への 干 渉
︑ 再 犯 の危 険 等 が考 慮 さ れ る︒ 犯 罪 統 計 調 査 局 編 二﹃
〇
〇 一年 N S W州 刑 事 裁 判 所 統 計
﹄
︐ り一一
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︐ ・ ぼ﹀ヨ留3■oメヽo賞︸¨薔汀σ口自
m くo庶B の\soo
︐ ヽおけけ尚︶に よ ばれ
︑ 各 裁 判 所 の終 局 処 理人 員申
︑ 最 終 的 に保 釈 請 求 が認 め ら れ な か たっ 者 の割 合 は︑ 地 区 裁 判 所 では 五 o九
% に過 ぎ な い の に オ ー スト ラリ ア にお け 事る 前 開 示 制 度
対 し︑ 地 方
・州 最高 裁 判 所 では 四
〇 上ハ
% と さ れ る
︒ 3
予 備 審 問 正 式 起 訴 対 象 事 件 は︑ 警 察 か ら公 訴 局 に引 き 継 が れ る
︒ 公 訴局 によ り 証拠 が十 分 あで り︑ か つ訴 追 相 当 と判 断 さ れ た事 件 は︑ 予 備 審
︱ 間に か け られ る︒ 予備 審 間 は︑ 治 安 判事 の主 宰 のも と訴 追者
︑ 被 告 人 お よ 弁び 護人 出が 席 し て行 わ れ る一 予 備 審 間 おに い て︑ 証 人 尋 間 や反 対 尋問 を 行 う こと も きで る が
︑ 警 察 が 作 成 し た 供 述録 取 書 の取 調 べ で済 ま さ れ る とこ が多 よい う であ る︒ 予 備 審
︲間 で有 罪答 弁 が 行 わ れ 場た 合 は︑ 量﹁ 刑 付 託 決 定
﹂
︵8 日目 一↑ξ
¨ど ヽのo 早 け8 oΦ︶ が 行 わ れ る︒ 略 式 手 続 と の選 択 が 可 能 な 正 式 起 訴 対 象 犯 罪 に つい て は︑ 略式 手続 のへ 変 更 が 行 わ れ る事 件 も 多 い︒ 予 備 審 間 の結 果
︑ 治 安 判 事 に よ り証 拠 の十 分 性 が 確 認 さ れ れ ば
︑
﹁公 判 付 託 決 定
﹂ o♂
︐ 日
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﹃♂
■いユ
︶ が行 わ れ
︑ 公 訴 局 によ り 正 式 起 訴 の手 続 が取 ら れ る︒ た だ し
︑ こ の場 合 であ てっ も︑ 公 訴 局長 はな お も事 件 を 起不 訴 にす る 裁量 を 持 つ︒ N S W 州 公 訴 局 の 年 報
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・●熟じ によ れ ば
︑ 二〇
〇二 年七 月
〜 二
〇
〇 二 年 月六 の年 度 にお け る
︑ 予 備 審
︲ 間の 処 理 件 数 六 三 八 一件 あで 三
法 政 研 究 七 巻 四号 舎 一〇
〇 三年
︶ り︑ うち
︑ 公 判 付 託 決 定 二
〇 四七 件
︑ 量 刑 付 託 決 定 一四 六 五件
︑ 略 式 手 続 への 変 更 一〇 二七 件
︑ 不 訴 追 決 定 二 八九 件
︑ 手 続 打 切 り 二九 五件 ヽ そ の他 一 一五 八件 と さ れ る︒ 4
略 式 手 続 略 式 犯 罪 お よび 略 式 手 続 に よ る処 理 が 可 能 な正 式 起 訴 対 象 犯 罪 で略 式 手 続 の選 択 が行 わ れ たも のは
︑ 地 区 裁 判 所 両に 当 事 者 が出 頭 のも と
︑ 単 独 の治 安 判 事
︵日 の一Sぃ け3 に よ り 審 理 が 行 わ れ る︒ 公 訴 局 略は 式 手 続 警も 察 か 引ら き継 ぐ こと が でき る が︑ 通常 は警 察 の訴 追 者 に任 さ れ る そ う だ︒ 略 式 手 続 によ り科 す こと の で き る刑 罰 の上 限 類は 型毎 法に 定 さ れ てお り︑ 高最 でも 自 由 刑 で 二 年︑ 自然 人 に対 す る 罰 金 刑 で 一〇
〇 日単 位 を 超 え る こと は でき な
い︒
5 弁 護 人 依 頼 権 被 訴 追 者 は法 律 家 の援 助 を 受 け る権 利 を 有 す る︒ 被 逮 捕 者 の取 調 べの 際 は弁 護 士 ど の事 前 の相 談
︑ 立会 いを 求 め る こと が でき る︒ し か し︑ 実 際 に捜 査 段 階 で弁 護 人 が 選任 さ れ る こと 少は な いよ う であ る︒
四 公 的 弁 護制 度 と し ては
︑ 州 政 府 によ る公 設弁 護人 制 度 が あ る︒ 二
〇〇 三 年 二 月現 在
︑ N S W 州 の公 設弁 護 人 事 務 所 に 州は 政府 に 雇 わ れ た 二 二 人 の常 勤 の公 設 弁 護 人 と 二 人 の非 常 勤 の公 設 弁 護 人 が 勤 め て い る︒ 公 設 弁 護 人 は
︑ 法 律 扶 助 協 会 の︵︻
≧ 注e や原 住 民 リ ーガ ル サ ービ ス連 合
︵oo
>F じ
︑ 民 間 法 律 事 務 所 の ソリ シタ ー等 から の依 頼 を 受 け て︑ 重 大 な 刑 事 事 件 の弁 護 サ ービ スを 提 供 し て いる
︒ サー ビ スは
︑
① 州 最 高 裁 ま た は地 方 裁 判 所 にお け る公 判 審 理︑ 量 刑
︵ ア イレ メン ン ト の手 続
︑
② 上 訴 手 続
︑
③ 地 区 裁 判 所 にお け る予 備 審 問 や いく つか の刑 事 事 件 お よ び少 年 裁 判所 の刑 事 事 件 の審 理並 び に④ これ ら の手 続 に付 随 す る手 続 に対 し て 行 わ れ る︒ そ の他 に︑ 法 律 扶 助 委 員 会
①︵F
≧
> oO 日日 め一ぃの oじ が
︑ 地 区 裁 判 所 に デ ーュ テ ィ
・ソ リ タシ ーを 待 機 さ せ た り︑ 刑 事 に関 す る法 律 相 談 や援 助 を 行 てっ いる
︒ さ ら に︑ 法 律 扶 助 協 会 の少 年 法 律 サ ー ビ スが
︑ 少 年 裁 判 所 にお け る代 理 や そ の他 の法 的 援 助 を提 供 し て いる
︒ 6
罪 状 認 否手 続 お よ び 訴 追 取 引 正 式 起 訴 後 の罪 状 認 否 手 続
︵暇
﹃ いい 日Φ詳
︶ ぉ ぃ て有 罪 答 弁 が
行 わ れ れ ば︑ 量 刑 手 続 に移 行 す る︒ 有 罪 答 弁 は公 判 審 理 の途 中 か ら でも 可 能 あで る︒ 有 罪 答 弁 後 の量 刑 手 続 には
︑ 合 意 事 実 を 記載 し た書 面 と 量 刑 に関 連 す る証 拠 が提 出 さ れ る︒ 訴 追 側 と の
﹁訴 追 取 引
﹂
︐ ♂ ミ 器 ミぴ
∞ 一い﹂い し は︑ 通 常
︑ ア イレ ン メ ント 時 ま た は そ の前 の段 階 で開 始 され る そ うだ
︒ 当 事 者 と裁 判 官 と の間 で量 刑 の交 渉 が 行 わ れ る こ と は な いが
︑ 裁 判 官 は 早 期 の有 罪 答 弁 を
︑ 刑 の相 場 の 一〇
%〜 二 五
% の範 囲 で量 刑 上 有 利 な事 情 と し て考 慮 でき る︒ 7
公 判 正式 起 訴 事件 は陪 審 公 判 が 原 則 であ るが
︑ 被 告 人 は訴 追 者 の同 意 のも と
︑ 陪 審 公 判 を 選 択 し な い こと が でき る︒ 裁 判 所 は︑ 検 察 官 に よ る
﹁一 応 の立 証
﹂
︵犯罪 成 立 要 件 を立 証可 能 な 証拠 の提 出
︶ が 行 わ れ なけ れ ば
︑ 直 ち に無 罪 と し
︑ ヨ 応 の立 証
﹂ が 行 わ れ れ ば
︑ 被 告 人 に反 証 の機 会 を付 与 し な け れ ば な ら な い︒ 立 証 後
︑ 検 察 官 によ る論 告 と 弁 護 側 によ る最 終 弁 論 が 行 われ る︒ 陪 審 裁 判 の 場 合 は︑ そ の後 で裁 判 官 が 双 方 の主 張 立 証 を 要 約 し︑ 法 律 の説 示 を 行 う
︒ 犯 罪 統 計 調 査 局 編 二﹃
〇〇 年一 N S W 州刑 事 裁 判 所 統計
﹄ によ オ ー スト ラリ ア にお け る事 前 開 示制 度
れ ば︑ 地 方 州・ 最 高 裁 にお け る 第 一審 の結 果 別 処 理 人 員 は︑ 三 七 三 二 人 中
︑ 公 判 審 理 七 九 六 人
︵二 一
・三
%
︶
︵う ち
︑ 全 起 訴 事 実 に つき 無 罪
・棄 却 等 三 九 八 人
︵一
〇
・七
%
︶︑ 有 罪
︵含 む 一部 有 罪
︶ 三 六 七 人
︵九
・八
%︶︑ そ の他 三 一人
︵〇
・八
%︾
︑ 量 刑 の み
︵含 む 審 理 中 の有 罪 答 弁
︶ 二 二 九
〇 人
︵六 四
・〇
%
︶︑ 打 切 り 三六 八 人
︵九
・九
%︶︑ 全 起 訴 事 実 に つき そ の他 の処 理 一九 七 人
︵四
・八
%
︶ と さ れ る︒ 8
証 拠 法 被 告 人 は無 罪 推が 定 さ れ てお り︑ 検 察 官 は 犯罪 事 実 に つき 合 理 的 疑 いを 超 え る 証 明 を行 う 責 任 を 負 う 被︒ 告 人 か ら 抗 弁 事 由 が 主 張 さ れ た場 合
︑ 原 則 と し て検 察 官 は︑ 抗 弁 事 実 の可 能 性 に つき 合 理 的 疑 いを 超 え て否 定 す 責る 任 を 負 う
︒ ただ し︑ 例 外 的 に被 告 人 が 抗 弁 事 実 に つき 立 証 の義 務 を 負 う場 合 が あ る︒ 検 察 官 が自 白 に 依 拠 し よ うと す る場 合 は︑ 自 白 が任 意 に行 わ れ た こと が よ り蓋 然 的 であ る こと を 証 明 し な け れ ば な ら な い︒ 任 意 に得 ら れ た 自白 で あ てっ も︑ 違 法 ま た は 不 公正 に得 ら れ た自 由 は排 除 され る︒ 自 白 の補 強法 則 存は 在 し な い︒ 証 拠 法 に は伝 聞 法 則 に関 す る詳 細 な規 定 が 設 け ら れ て い る︒
五