代 表 訴 訟 の 対 象 と な る 取 締 役 の 責 任 の 範 囲 と 提 訴 段 階 に お け る 会 社 の 裁 量
顧
丹 丹
一 序 二 日 米 の 比較 か ら み た日 本 の 代 表 訴訟 の 特 殊 性 1 米 国 にお け る 代 表訴 訟 の 法 構 造お よ び 提 訴段 階 の 手 続 2 日 本 にお け る 代 表 訴訟 の 法 構 造お よ び 提 訴段 階 の 手 続 3 ま と め 三 学 説 お よび 下 級 審 判 決か ら み た
「取 締 役 の 責任 の 範 囲
」 1 学 説 2 裁 判 例 四 最 高 裁 判決 に 基 づ く
「取 締 役 の 責任 の 範 囲
」に 対 す る 理 解 1 最 高 裁判 決 の 射 程 範囲 に 関 す る学 説 の 見 解 2
「 取 締 役の 地 位 に 基 づく 責 任
」 につ い て 代 表 訴 訟 の 対 象 と な る 取 締 役 の 責 任 の 範 囲 と 提 訴 段 階 に お け る 会 社 の 裁 量
( 都 法 五 十 二
―
二
) 二 七 五
3
「 取 締 役の 会 社 に 対す る 取 引 債 務に つ い て の責 任
」 に つ いて 4 最 高 裁判 決 の 残 す 問題 点 五 提 訴 段 階に お け る 会 社の 裁 量 に つい て 1 会 社 の裁 量 を 認 め る必 要 性 2 現 行 法の 問 題 点 六 結 び に かえ て
一 序
日 本 の 株 主代 表 訴 訟
(以 下
、「 代 表訴 訟
」 と い う。
) は
、 昭和 二 五 年 の 商法 改 正 の 際に G H Q の 圧力 を う け て導 入 され た も の であ り
、 ア メ リカ の 同 制 度を モ デ ル にし て い る に もか か わ ら ず、 G H Q 側 の要 請 と 日 本側 立 法 者 の要 望 との 妥 協 に より ア メ リ カ の株 主 代 表 訴訟 に 異 な る制 度 に な っ てい る
。 制 度の 導 入 か ら 最初 の 四
〇 年の 間
、 積 極的 な 利用 に よ る 制度 の 濫 用 が 危惧 さ れ
、 提訴 件 数 は 僅か 二
〇 件 未 満で あ っ た
( 1 )
。し か し
、 平成 五 年 の 商 法改 正 に よ る訴 訟 手数 料 の 引 き下 げ を き っか け に
、 バ ブル 経 済 の 崩壊 に と も な って 多 数 発 覚さ れ た 大 手 企業 の 不 祥 事も あ い ま って
、 代表 訴 訟 は 多発 の 時 代 を 迎え た
。 そ れを う け
、 経済 界 も 学 界 も代 表 訴 訟 の「 行 き 過 ぎ
」を 懸 念 す るよ う に な り、 と くに 賠 償 金 額の 多 額 化 に 一定 の 歯 止 めを か け る ため に
、 平 成 一三 年 改 正 にお い て
、 取 締役 等 役 員 の責 任 減 免 の範 囲 と手 続 に 関 する 立 法 が 行 われ た 同 時 に、 代 表 訴 訟に 関 し て は 監査 役 の 考 慮期 間 の 延 長
、一 般 株 主 に対 す る 訴 訟 提起 の公 告
・ 通 知、 訴 訟 上 の 和解 お よ び 会社 の 被 告 側 取締 役 へ の 補助 参 加 に 関す る 改 正 が 盛り 込 ま れ た。 さ ら に
、 平成
二 七 六
一七 年 会 社 法制 定 に 際 して
、 濫 用 訴 訟を 防 止 す る た め の 訴 え 却 下 制 度
(会 社 法 八 四 七 条 一 項
)、 不 提 訴 理 由 書 の 通 知制 度
( 同 法同 条 四 項
)、 組 織 再 編 の際 の 原 告 適 格 維 持 の 制 度
( 同 法 八 五 一 条
) が 設 け ら れ た
。 代 表 訴 訟 制 度 の 導 入当 初 か ら 議論 さ れ 続 け てき た 問 題 の一 つ と し て、 代 表 訴 訟 に よ っ て 追 及 し う る 取 締 役 の 責 任 の 範 囲
( 以 下
、「 取 締役 の 責 任 の範 囲
」 と い う) の 問 題 があ る
。 本 稿 は、 ま ず
、 日 米 の 代 表 訴 訟 の 比 較 を 通 し て 日 本 の 代 表 訴 訟 の 法 構 造 お よ び 制 度 設 計 に お け る 特 殊 性 を 分 析 し、
「 取 締 役 の責 任 の 範 囲」 が 議 論 され 続 け て き た 背 景 と 理 由 を 明 ら か に す る
。 さ ら に ア メ リ カ の デ マ ン ド 制 度 と 日本 の 事 前 の提 訴 請 求 制 度の 相 違 を 踏ま え た う え で、 日 米 の 株主 の 代 表 訴訟 提 起 権 を 制限 す る た めの 制 度 設 計 の相 違を 示 す
。 次に
、 日 本 法 にお い て
、「 取締 役 の 責 任 の 範 囲
」を 定 め る こ と に よ っ て 事 前 の 提 訴 請 求 制 度 の 実 効 性 を 欠く こ と を 補う こ と が で きる か と い う問 題 意 識 か ら
、「 取 締 役 の 責 任 の 範 囲
」 に 関 す る 学 説 お よ び 下 級 審 判 決 に お ける 見 解 の 対 立を 踏 ま え て、 平 成 二 一年 最 高 裁 判 決に よ っ て 明か に な っ た
「取 締 役 の 責任 の 範 囲
」に 関 す る 最 高裁 とし て の 立 場 を如 何 に 理 解す べ き か を検 討 し た う え で
、「 取 締 役 の 責 任 の 範 囲」 に 一 定 の 制 限 を か け る べ き で は あ るが
、 右 の 問 題の 解 決 と して 不 十 分 であ る こ と を 指摘 す る
。 最後 に
、 株 主 の代 表 訴 訟 によ る 会 社 へ の介 入 と 会 社の 経営 上 の 裁 量 との 均 衡 を 図る と い う 目 的で 代 表 訴 訟 提 起 権 に 如 何 な る 制 限 を 課 す べ き か の 問 題 に 関 し て は
、「 取 締 役の 責 任 の 範 囲」 の 議 論 とパ ラ レ ル に、 事 前 の 提 訴請 求 制 度 を実 効 性 の あ るも の と す るた め に 会 社 に一 定 の 裁 量を 認め る 必 要 性 があ る こ と
、お よ び そ れ に関 連 す る 現行 法 の 問 題点 を 指 摘 し たい
。 代
表 訴 訟 の 対 象 と な る 取 締 役 の 責 任 の 範 囲 と 提 訴 段 階 に お け る 会 社 の 裁 量
( 都 法 五 十 二
―
二
) 二 七 七
二 日 米 の 比 較 か ら み た 日 本 の 代 表 訴 訟 の 特 殊 性
1 米 国 に お け る 代 表 訴 訟 の 法 構 造 お よ び 提 訴 段 階 の 手 続
︵ 1 ︶ 法 構 造
日 本 の 代 表訴 訟 制 度 の 母国 法 ア メ リカ 法 に お いて は
、 代 表 訴訟 と は
、 株主 が 会 社 の 第三 者 に 対 して 有 す る 請求 権 に基 づ き
、会 社の た め に 提起 す る 訴 訟 形態 で あ る
。会 社 の 権 利 から 派 生 し た 訴訟 で あ る ため
、株 主 派生 訴 訟(
share-
holder derivative a ctions
) と も よ ば れる
( 2 )
。 ア メ リカ で は
、 代 表訴 訟 は 会 社に 対 し て 債 務を 有 す る 全て の 者 に 対し て 提起 で き る もの で は あ る が、 特 に 取 締役 の 信 認 義務
(
fiduciary dutie s
) をエ ン フ ォ ー スす る た め のガ バ ナ ン スの メ カニ ズ ム と して そ の 役 割が 期 待 さ れ てい る
( 3 )
。 し かし
、 日 本 と 異な り
、 ア メリ カ に お い ては
、 代 表 訴訟 に よ っ て追 及 でき る 取 締 役の 責 任 の 範 囲に 関 す る 議論 が 見 当 たら な い
( 4 )
。 そ れは ア メ リ カに お け る 代 表訴 訟 の 法 的構 造 に よ るも の と思 わ れ る
。 ア メ リ カ の代 表 訴 訟 は 判例 法 と し て発 展 し て きた
( 5 )
。 初 期 の 判例 は 主 に 会社 の 取 締 役 を訴 え る も ので あ る
。 アメ リ カの 代 表 訴 訟の 起 源
(
paternity
) と され た 重 要 な判 例 の 一 つ であ る
Robinson v. Smith ( 6 )
( 7
に
)
お い て
、 裁判 所 は
、 もと も と公 益 法 人
(
charitable corporations
)に 正 式 的 に 適用 さ れ る 信託 の 法 理 は、 そ の 外 形 を除 き パ ー トナ ー シ ッ プ にす ぎな い ジ ョ イン ト
・ ス ト ック
・ カ ン パニ ー
(
joint stock company
) に も 適用 で き る と し、 当 該 会 社の 取 締 役 は株 主 を信 託 受 益 者(
cestuis q ue trusts
( 8 )
) と す る 受託 者
(
truste e s
) な いし は 業 務 執行 組 合 員
(
managing partners
)で あ
二 七 八
り、 取 締 役 がこ の 関 係 に基 づ く 義 務 違反 の 責 任 を負 担 し う る と判 断 し た
( 9 )
。か か る 責 任の 具 体 的 な 追及 に つ い ては
、 裁判 所 は 次 のよ う に 判 断し た
。 会 社 資産 の 浪 費 また は 不 正 使 用(
a w aste or misapplication o f the corporate funds
) をし た 会 社 の役 員 ま た はエ ー ジ ェ ン トの 責 任 の 追及 は 本 来 会 社の 名 に お いて な さ れ る べき で あ る が、 責 任 の ある 取 締役 が 結 託 して 責 任 追 及 を拒 絶 し
(
refused to p rosecute b y c ollusion with those w ho had made themselves answer-
able
)、 また は 会 社 が 被告 取 締 役 の支 配 下 に あ る(
the c orporation was still under the control o f the defendants in
the suit
)場 合は
、真 の 利害 関 係 者 で ある 株 主 は 自分 の 名 に い て取 締 役 を 被告 と し て 訴 状を 提 出 す るこ と が で きる
。 そし て
、 も し株 主 が 多 数 いる た め 全 員が 当 事 者 とな る こ と が 不可 能 ま た は不 便 で あ れ ば、 一 部 の 株主 が 自 己 およ び 同じ 地 位 に 立つ 他 の 全 て の株 主 の た めに
(
in behalf of themselves and all o thers standing in the same situation
)、 訴状 を 提 出 する こ と が でき る
1 ( ) 0
。 こ の 判決 は 取 締 役と 株 主 の 関 係を 一 種 の 信託 関 係 と し
、株 主 が 自 己に 属 す る 権利 に 基づ き 取 締 役に 対 し て 直 接に そ の 義 務の 履 行 を 求め る こ と を 認め て い る
1 ( ) 1
。一 九 世 紀 前半 に 発 生 し た初 期 の こ の判 例 にお い て は
、会 社 の 法 人性 が 重 視 さ れて お ら ず
、も っ ぱ ら 株 主と 取 締 役 との 信 託 関 係 に基 づ き
、 株主 に よ る 取締 役 の責 任 の 追 及を 認 め て い た
( 1 2
。
)
後 に
、 会 社の 部 外 者 を相 手 と す る 重要 な 代 表 訴訟 の 事 案 で ある
Dodg e v . W oolse y 1 ( 3
が
)
あ っ た
。 こ の事 案 に お いて
、 原告 株 主 は 取締 役 会 に 対し て 事 前 の 提訴 請 求 を した が
、 取 締 役会 は 当 該 請求 を 拒 絶 し た。 連 邦 最 高裁 判 所 は
、会 社 の取 締 役 に 対し て
、 ま た は会 社 の 部 外者 に 対 す る権 利 の 行 使 は会 社 自 身 によ る べ き で ある
1 ( ) 4
が、 株 主が 会 社 に 対し て 当該 権 利 の 行使 を 請 求 し、 当 該 請 求 が不 当 に 拒 絶さ れ た 場 合
、当 該 提 訴 拒絶 が た だ の 経営 判 断 の 誤り
(
an “e rror o f
judgment merely”
)で は な く
、 信託 違 反(
breach of trust
)で ある た め
、 株主 が 訴 権 を 有す る よ う にな る と 判 断し
1 ( ) 5
、 本件 に お い ては
、 裁 判 所は 当 該 商 業 銀行 の 取 締 役ら は 原 告 株 主の 主 張 し た権 利 の 行 使 が自 分 の 義 務で あ る こ とを 認 代 表 訴 訟 の 対 象 と な る 取 締 役 の 責 任 の 範 囲 と 提 訴 段 階 に お け る 会 社 の 裁 量
( 都 法 五 十 二
―
二
) 二 七 九
めな が ら 何 も行 動 し な かっ た た め
、 原告 株 主 は 自ら 訴 訟 を 提 起で き る と 判断 し た
1 ( ) 6
。 株主 が 会 社 の 部外 者 に 対 して 提 起し た こ の 代表 訴 訟 に おい て は
、 株 主と 会 社 と は別 個 の 存 在 であ る こ と が特 に 意 識 さ れて お り
、 個々 の 株 主 は当 然 に会 社 の 訴 えの 権 利 を 有 する の で は なく
、 株 主 の会 社 へ の 提 訴請 求 に 対 する 会 社 の 不 当拒 絶 は 株 主訴 権 の 根 拠を 与 えた
1 ( ) 7
。 一 九 六 六 年 改 正 連 邦 民 事 訴 訟 規 則 に お い て
、代 表 訴 訟 は 独 立 し た 明 文 の 規 定 に よ っ て 定 め ら れ る よ う に な っ た
1 ( ) 8
が、 そ の 歴 史的 展 開 か らみ れ ば、 当 該制 度 は 取 締役 が 株 主 を 受益 者 と す る信 託 受 託 者 であ る と い う信 託 関 係 に基 づ き判 例 法 と して 発 展 し て きた こ と が わか る
1 ( ) 9
。 信 託 関 係 は最 も 中 心 的な 特 徴 が 二 つあ る と さ れて い る
。 一 つは 受 託 者 が受 益 者 の 利 益の た め に
、受 益 者 の 代わ り に行 動 す る こと
、 も う 一 つは 受 託 者 の効 率 的 な 行動 の た め に
、受 託 者 が 受益 者 か ら 広 範な 権 限 を 付与 さ れ る こと で ある
2 ( ) 0
。 こ の 二つ の 特 徴 のた め に
、 信 託関 係 に お ける 基 本 的 な 問題 が 生 じ る。 す な わ ち
、受 託 者 は 受益 者 か ら 広範 な 権限 を 付 与 され た た め
、 当該 権 限 を 悪用
(
misuse
) し 受益 者 を 害 す る行 動 に は しる 危 険 が あ る
( 2 1
。
)
信 託 関 係を 維 持 す るた め に
、受 益者 を こ の 危険 か ら 保 護 する た め の 信託 の 法 的 規 制(
judicial regulation of fiduciaries
)が 必 要 と なる
2 ( ) 2
。 そ れ ら の 法 的 規 制 の う ち
、 受 託 者 の 信 託 義 務 違 反 に よ っ て 受 益 者 が 被 っ た 損 害 に 対 す る 受 託 者 の 責 任 を 認 め る こ と
( 2 3
、
)
ま た は 受託 者 が 自 分の 付 与 さ れ た権 利 を 悪 用し
、 受 益 者 に対 し て 信 託違 反 の 責 任 を負 う 場 合 には
、 受 託 者の 有 する 財 産 管 理権 を 受 益 者 に移 転 す る こと に よ っ て( 受 益 者 の た めの
)強 力 な 救済 を 図 る こと
(
creating strong reme-
dies through shifting p roperty rights
) を 認め る 法 理 が ある
2 ( ) 4
。 ア メ リ カ の会 社 に 関 する 判 例 は 当 初株 主 を 信 託受 益 者
、 取 締役 を 受 託 者と し て い た が、 後
、 法 人の 概 念 が 重視 さ れて き て
、 取締 役 は 誰 に 対し て 受 託 者と し て の 責任 を 負 う か
、す な わ ち 信託 受 益 者 は 株主 で あ る か、 そ れ と も会 社
二 八
〇
であ る か に つい て 学 者 の間 に 議 論 が あっ た
2 ( ) 5
。 結 論は 会 社 を 単 なる 財 産 的 な概 念
(
a p roperty c onception
) と して 捉 える か
、 そ れと も 公 的 目的
(
a p ublic purpose
)を 有 す る一 つ の 社 会的 主 体(
a social e ntity
)と し て捉 え る か によ っ て異 な り う るよ う で あ る
2 ( ) 6
。 会 社 に 関 する 判 例 に は、 株 主 を 信 託受 益 者 と し、 会 社 を 受 託者 と す る もの も あ る
2 ( ) 7
が、 代 表訴 訟 に 関 して は、 初 期の 判 例 は 株 主と 取 締 役 との 信 託 関 係
、す な わ ち
、受 益 者 で あ る株 主 が 会 社資 産 の 運 営に 関 する 広 範 な 権限 を 受 託 者 であ る 取 締 役に 託 し た とい う 関 係 に 依拠 し て き た
( 2 8
。
)
そ の 後
、会 社 の 所 有 と経 営 の 分 離の 進 展に 伴 い
、 独立 し た 法 人と し て の 権 利主 体 性 が 強調 さ れ る よ うに な り
、 会社 の 権 利 と 株主 の 権 能 との 関 係 か ら代 表 訴訟 の
「 派 生性
」( 代 位 性) が 発 見 され て き た
2 ( ) 9
。 もっ と も
、 信託 の 概 念 は信 託 法 に そ の起 源
(
orig in
) を有 す る も の であ る
3 ( ) 0
も の の、 刑 事 や 労働、 証 券 や 会社
、 契 約 や組 合 等 に 関 する 幅 広 い 法律 の 分 野 に おい て 多 く 利用 さ て お り、 と り わ け ビ ジ ネ ス の 領 域 に お い て は
、会 社 の 取 締 役
(
corporate d ire c tors
)の 他
、 組 合 員
(
partners
)、 組 合 と 会 社 の 発起 人 で あ る役 員
(
officers originated with the formation of partnership and corporations
) また は 大 株 主(
majority
shareholders
) で も受 託 者 と して 受 益 者 に対 し て 責 任 を負 う こ と があ る
3 ( ) 1
。 信 託 の 法 理を 代 表 訴 訟 に 類 推 す れ ば
、 す な わ ち
、 株 主
( 受 益 者
)は 取 締 役( 会
)( 受 託 者
) に 対 し て 提 訴 請 求 を し、 か か る 請求 の 不 当 な 拒絶 が
( 受 託者 の
) 信 託義 務 違 反 を 構成 し た 場 合に
、 そ し て
、そ の 場 合 に限 っ て
、 受託 者 の取 締 役
( 会) の 有 し て いる 会 社 の 財産 管 理 権 が制 限 さ れ
、 株主
( 受 益 者) は 訴 権 を 取得 す る
3 ( ) 2
。 この 信 託 の 法理 に 基づ き 株 主 が会 社 の 有 する 訴 権 を 取 得し た 場 合
、当 該 訴 権 の 行使 で き る 対象 に な る 者 の範 囲
、 ま たは 追 求 で きる 責 任の 範 囲 に つい て は
、 特 別な 制 限 が かか っ て い ない
。 す な わ ち、 会 社 の 有す る 債 権 で ある 以 上
、 会社 の 取 締 役に 対 して も
、 ま たは 会 社 の 第 三の 債 務 者 に対 し て も
、原 則 と し て 追及 で き
、 その 責 任 の 範 囲に つ い て は特 に 制 限 が設 け られ て い な い
( 3 3
。
)
し た が って
、 ア メ リ カの 代 表 訴 訟の 多 数 を 占 める の は 会 社の 取 締 役 に 対す る も の では あ る に もか か 代 表 訴 訟 の 対 象 と な る 取 締 役 の 責 任 の 範 囲 と 提 訴 段 階 に お け る 会 社 の 裁 量
( 都 法 五 十 二
―
二
) 二 八 一
わら ず
3 ( ) 4
、 代 表訴 訟 に よ って 追 及 し う る取 締 役 の 責任 の 範 囲 に 関す る 議 論 は生 じ な か っ た。 し か し
、次 に 検 討 する よ うに
、 株 主 の代 表 訴 訟 を 提起 す る 権 能は 株 主 固 有の 権 限 で は なく
、 会 社 の訴 訟 提 起 権 に派 生 し た もの で あ る と捉 え られ て い る ため
、 そ の 権 能の 行 使 に は一 定 の 制 限が か か っ て いる
。
︵ 2 ︶ デ マ ン ド 制 度
Dodg e v . W oolse y
判 決に お い て 示 され た よ う に、 株 主 は い つで も 当 然 に会 社 の 有 す る訴 権 を 取 得で き る わ けで は ない
。 代 表 訴訟 を 提 起 し よう と す る 場合
、 株 主 はま ず 会 社 の 取締 役 会 に 対し て デ マ ン ドを し な け れば な ら な い。 そ の理 由 は
、 会社 が 訴 訟 を 提起 す る か 否か に つ い ての 決 定 が 取 締役 会 の 権 限に 属 し
、 原 則と し て 経 営判 断 原
則(
busi-
ness judgment rule
) に服 し そ の 保 護を 受 け る べき も の で あ るた め
、 取 締役 ら が 信 認 義務 を 果 た して お ら ず
、訴 訟 提起 の 可 否 の正 当 な 決 定 が取 締 役 会 に期 待 で き ない こ と が 明 かに な っ て はじ め て
、 代 表訴 訟 の 必 要性 が 認 め られ る と解 さ れ て いる
3 ( ) 5
。 ア メ リ カ 法律 協 会 の
「コ ー ポ レ ー ト・ ガ バ ナ ンス の 原 理
:
分析 と 勧 告」に よ れ ば
、 この デ マ ン ド制 度 の 趣 旨は 主 に四 つ あ る
。す な わ ち
、 デマ ン ド を 要求 す る 目 的は
、 裁 判 所 を判 決 に 熟 して い な い 事 案ま た は 後 の取 締 役 会 の行 動 によ っ て 処 理し う る 事 案 に対 す る 不 必要 な 審 理 から 守 る こ と
、取 締 役 会 に他 の 救 済 を 求め た り
、 他の 是 正 措 置( 免 職や 降 格 の よう な 社 内 の 制裁 手 段 を 含む
) を 取 った り す る 機 会を 与 え る こと
、 会 社 に
(株 主 か ら
)訴 訟 を 引 き継 が せ、 訴 訟 追 行を 支 配 さ せ るこ と
、 お よび 会 社 に 求め ら れ た 訴 訟の 提 起 を 拒絶 し
、 そ の 訴訟 が 既 に 提起 さ れ た 場 合に は当 該 訴 訟 の早 期 の 却 下 を求 め る 機 会を 与 え る こ とで あ る
3 ( ) 6
。 デ マ ン ド の 要 求
(
demand requirement
) は 州 法 に よ っ て 規 律 さ れ る
3 ( ) 7
た め、 州 に よ っ て デ マ ン ド の 制 度 の 内 容 も
二 八 二
異な る
。 大 きく 分 け れ ば、 す な わ ち
、デ マ ン ド の無 益 性 の 主 張を 認 め る もの と 認 め な いも の の 二 つに 分 類 で きる
。 デラ ウ ェ ア 州は 明 文
3 ( ) 8
に よっ て 原 告 に よる デ マ ン ドの 無 益 性(
de mand fu tility
) の 主 張 を 認め
、 デ マ ンド が 無 益
(
fu-
tile
) で あ る と判 断 さ れ た場 合 に 免 除 さ れ る と い う 前 者 の 制 度 を 採 用 し て お り
、 ま た ニ ュ ー ヨ ー ク 州 や カ リ フ ォ ル ニア 州 は 異 なる よ う な 基準 を 採 用 し たも の の
、 デマ ン ド の 無 益性 の 主 張 を認 め て い る
。そ れ に 対 し、 一 部 の 州( ア リゾ ナ
、 コ ネテ ィ カ ッ ト
、フ ロ リ ダ
、ジ ョ ー ジ ア、 ハ ワ イ
、 ミシ ガ ン
、 ノー ス
・ カ ロ ライ ナ
、 テ キサ ス
、 バ ージ ニ ア等
) は 提 訴前 の デ マ ン ドを 常 に 義 務付 け て お り、 後 者
、 い わゆ る ユ ニ バサ ル
・ デ マ ンド
(
uni v er sal d emand re -
qui rement
) の 制度 を 採 用 して い る
3 ( ) 9
。 デ マ ン ド の無 益 性 の 主張 を 認 め る 制度 に つ い ては
、 特 に デ ラウ ェ ア 州 では 派 生 訴 訟 が提 起 さ れ るま で の 流 れは 次 のよ う で あ る。 デ ラ ウ ェ ア州 で は デ マン ド は 常 に要 求 さ れ る わけ で は な く、 デ マ ン ド が無 益 な 場 合に は デ マ ンド が 免除 さ れ
、 株主 は 直 ち に 裁判 所 に 対 して 代 表 訴 訟を 提 起 す る こと が で き る
( 4 0
。
)
株 主 は デマ ン ド を せ ずに 代 表 訴 訟を 提 起し た 場 合
、会 社 は こ れに 対 し て デ マン ド が な いこ と を 理 由 に訴 え 却 下 の申 立 て を 行 うこ と が で きる
。 株 主 はデ マ ンド が 無 益 であ る た め 免 除さ れ る べ きと い う 抗 弁を 行 い
、 裁 判所 は そ の 無益 性 に つ き 判断 し
、 無 益性 が あ る と判 断 した 場 合 に はデ マ ン ド が 免除 さ れ
、 逆の 場 合 に は原 告 に 対 し てデ マ ン ド を行 う よ う 要 求す る
。 デ マン ド が 免 除さ れ た場 合
4 ( ) 1
は、 本案 の 審 理 に入 り
、 裁 判 所は 原 告 の 主張 し た 訴 訟 原因 に つ き 判断 す る
。 一 方、 デ マ ン ドが 必 要 と 判断 さ れた 場 合 に は、 株 主 は ま ず取 締 役 会 に対 し デ マ ンド を 行 わ な けれ ば な ら ない
。 取 締 役 会が 株 主 の デマ ン ド を 拒絶 し た 場 合
、株 主 は 裁 判 所 に 対 し て 当 該 拒 絶 が 不 適 切 で あ る と 主 張 す る こ と が で き る が
、 提 訴 の デ マ ン ド を 承 認 す る か、 拒 絶 す るか の 取 締 役会 の 決 定 は 経営 判 断 で ある
4 ( ) 2
た め、 特 段の 事 由 が ない 限 り 経 営 判断 原 則 に より 保 護 さ れ裁 判 所に 尊 重 さ れる
。 代 表 訴 訟 の 対 象 と な る 取 締 役 の 責 任 の 範 囲 と 提 訴 段 階 に お け る 会 社 の 裁 量
( 都 法 五 十 二
―
二
) 二 八 三
そ れ に 対 し、 ユ ニ バ サル
・ デ マ ン ドの 制 度 を 採用 し た 州 で は、 株 主 は 代表 訴 訟 を 提 起す る 前 に
、必 ず 取 締 役会 に 対し て 会 社 自ら に よ る 訴 訟の 提 起 を デマ ン ド す るこ と が 義 務 付け ら れ る
。取 締 役 会 が 当該 デ マ ン ドを 拒 絶 す る場 合 には
、 当 該 デマ ン ド を 拒 絶す る 旨 の 取締 役 会 の 判断 は 一 種 の 経営 判 断 で ある た め
、 原 則と し て 会 社の 裁 量 権 に基 づ くも の と し て裁 判 所 に よ って 尊 重 さ れる
。 ま た
、デ マ ン ド が 拒絶 さ れ た 株主 は 当 該 拒 絶の 判 断 が 信認 義 務 違 反 とな り、 経 営 判 断原 則 に よ り 保護 さ れ な いと 裁 判 所 に 対し 争 う こ とが で き る が、 株 主 側 が 厳格 な 立 証 責任 を 負 う た め容 易で は な い
。 こ の よ う に
、デ マ ン ド を 要 求 す る 効 果 は 株 主 の 提 起 し た 代 表 訴 訟 を 却 下(
dismiss
)す る 権 限 を 取 締 役 会 に 与 え るこ と で あ る
( 4 3
。
)
デ マン ド の 要 求 によ っ て 株 主の 代 表 訴 訟提 起 権 は 制 限さ れ る
。こ の よ うな 制 限 を か ける 理 由 は
、「 メ リッ ト の な いま た は 害 の ある 訴 訟 や 嫌が ら せ 訴 訟が 排 除 し な けれ ば
、 会 社の 利 益 の た めに 作 ら れ た派 生 訴 訟 は逆 の 不本 意 の 結 果を も た ら す
4 ( ) 4
」 と い う 懸 念が あ る か らと 解 さ れ て いる
。 株 主 が代 表 訴 訟 を 提起 す る 前 に当 該 訴 訟 を遂 行 すべ き か 否 かの 判 断 を 原 則と し て 会 社の 経 営 者 に委 ね る こ と によ っ て
、 会社 に と っ て 有益 な 訴 訟 を促 進 し
、 会社 の 最善 の 利 益 にそ ぐ わ な い 訴訟
、 ま た は会 社 の 利 益を 害 す る 訴 訟や 嫌 が ら せ訴 訟 を ス ク リー ン ア ウ トす る こ と は、 デ マン ド の 機 能と し て 期 待 され て い る
4 ( ) 5
。
2 日 本 に お け る 代 表 訴 訟 の 法 構 造 お よ び 提 訴 段 階 の 手 続
︵ 1 ︶ 法 構 造 お よ び 訴 訟 技 術 の 特 徴
日 本 の 代 表訴 訟 は そ の 導入 過 程 か らみ れ ば
、 当初 主 に 政 治 的要 因 に よ り一 種 の 政 策 判断 と し て 日本 法 に 導 入し た
二 八 四
もの で あ る
4 ( ) 6
。立 法 当 時
、ア メ リ カ 法 の代 表 訴 訟 を参 考 に 設 け られ た 制 度 では あ る も の の、 ア メ リ カ側 か ら 提 出さ れ た原 案 を 日 本の 法 体 系 に 合致 さ せ る よう に
、 訴 訟技 術 の 点 に おい て 修 正 して 受 け 入 れ たも の で あ る
( 4 7
た
)
め
、 特 に法 構 造ま た は 条 文の 構 成 に おい て は
、 ア メリ カ の 当 該制 度 と の 差 異が 顕 著 で ある
。 日 本 に お ける 代 表 訴 訟 はそ の 法 構 造に つ い て は、 従 来
、 代 位訴 訟 性 を 有す る か
、 代 表訴 訟 性 を 有す る か
、 また は 両方 の 性 質 を有 す る か に 関す る 議 論 があ っ た が
、ま だ 定 説 を みて い な い
4 ( ) 8
。こ の 他
、 民事 訴 訟 法 の 観点 か ら
、 株主 代 表訴 訟 を 一 種の 法 定 訴 訟担 当
4 ( ) 9
、 す な わち 訴 訟 担 当者 た る 株 主 によ る 会 社 の権 利 に 基 づ く訴 訟 追 行 とし て 理 解 する い わば 訴 訟 担 当論 を 唱 え る 説も あ る
5 ( ) 0
。 大 雑 把 に いう と
、 代 位訴 訟 性 と 代 表訴 訟 性 と の根 本 的 な 違 いは
、 原 告 株主 の 訴 訟 追 行権 が 元 々 会社 の 有 し たも の か、 そ れ と も 原 告 株 主 の 固 有 の 権 利 か に あ る。 代 位 訴 訟 性 は、 即 ち 会 社 の 権 利 を 株 主 が 代 位 行 使 す る こ と を 意 味 し、 そ れ に 対し
、 代 表 訴 訟性 は
、 原 告株 主 が 自 分が 含 ま れ た 全株 主
( ま たは 会 社
) を 代表 し て
、 自己 の 有 す る 権利 を行 使 す る こと を 意 味 す る
( 5 1
。
)
ま た
、 議論 の 性 格 とし て は
、 代 位訴 訟 性 は 原告 株 主 と 会 社と の 関 係 に注 目 す る のに 対 し、 代 表 訴 訟性 は 原 告 株 主と 他 の 株 主と の 関 係 に注 目 し て い る。 両 者 は 議論 の 角 度 が 異な る も の の、 両 立 し えな い わけ で は な い
( 5 2
。
)
代 位 訴 訟 性を 強 調 す る学 説 の う ち
、代 表 訴 訟 提起 権 を 株 主 の自 益 権 に 基づ く 債 権 者 代位 権 と す る説 と 株 主 の共 益 権に 基 づ く 債権 者 代 位 権 とす る も の があ る
5 ( ) 3
。 前 者( 松 田 説
5 ( ) 4
) は、 民 法 の 債権 者 代 位 権 の規 定
( 民 法四 二 三 条
)を 類 推適 用 し て
、代 表 訴 訟 が 株主 の 利 益 配当 請 求 権
(自 益 権
) を 保全 す る た めに
、 会 社 資 本の 充 実 を 図る 意 味 で 会社 の 有す る 損 害 賠償 請 求 権 を 株主 が 代 位 行 使 す る も の で あ る と 解 釈 し て い る
。 そ れ に 対 し
、 後 者 は
(臨 時 機 関 説
5 ( ) 5
)、 実 質的 に み れ ば、 株 主 が 会社 の 代 表 機 関的 地 位 に 立ち
、 自 ら の 有す る 取 締 役の 責 任 を 追 及す る 共 益 権に 基 づ き
、会 社 代 表 訴 訟 の 対 象 と な る 取 締 役 の 責 任 の 範 囲 と 提 訴 段 階 に お け る 会 社 の 裁 量
( 都 法 五 十 二
―
二
) 二 八 五
の権 利 を 代 位行 使 す る とい う 構 造 で ある
。 ま た
、会 社 と 取 締 役と の 委 任 関係 に 基 づ き
、受 任 者 た る取 締 役 の 任務 懈 怠に よ る 会 社に 損 害 を も たら し た 時
、株 主 は 当 然当 該 取 締 役 に対 し て 責 任を 追 及 す る 権利 を 代 位 的に 行 使 で きる と いう 考 え が ある
5 ( ) 6
。 も っ とも
、 前 述 し たよ う に 代 位訴 訟 性 の 議 論は 原 告 株 主と 会 社 と の 関係 に 注 目 して お り
、 原告 株 主の 有 す る 訴訟 追 行 の 権 限と 会 社 の それ と を 一 定の 程 度 調 整 でき る こ と は否 定 で き な い。 し か し
、代 表 訴 訟 を代 位 訴訟 と し て 捉え た 場 合
、 株主 に 提 訴 権( 代 位
) を認 め る 根 拠 は会 社 の
「 提訴 懈 怠
」 の 要件 に あ り
、た と え ば 会社 の 当事 者 訴 訟 参加 が あ っ た 場合 に は
、 その 要 件 が 欠け る こ と に なり
、 一 度 提訴 権 限 を 獲 得し た 後 で も、 株 主 の 訴 訟追 行の 権 限 が 制限 を 受 け ざ るを え な い とい う 帰 結 に なる 可 能 性 があ る
5 ( ) 7
。 そ れは 現 行 法 の 会社 の 訴 訟 参加 に 関 す る制 度 の実 態 に 矛 盾し て い る
。 一 方
、 代 表訴 訟 の ア メ リカ 法 か ら の沿 革 を 重 視し
、 代 表 訴 訟性 を 強 調 する 説 も あ る
。こ の 説 は
、代 表 訴 訟 は会 社 の権 利 を 代 位行 使 す る
、 いわ ゆ る 代 位訴 訟 と し ての 構 造 を 有 する が
、 経 済的
・ 実 質 的 には
、 株 主 全員 を 代 表 して 訴 訟を 提 起 す る、 い わ ゆ る 代表 訴 訟
( また は ク ラ ス・ ア ク シ ョ ン) と し て の性 質 の あ る 訴訟 手 続 で ある と 主 張 する
5 ( ) 8
。 こ の 代 表 関 係 を 認 め る 前 提 に 立 て ば
、と り わ け 代 表 訴 訟 の 判 決 効 の 及 ぶ 範 囲 に つ き
、 会 社 の 存 在 を 介 す る こ と な く、 原 告 株 主と そ の 他 の株 主 と の 関 係を 一 定 の 程度 に お い て 整理 で き る
。す な わ ち
、 他の 株 主 に はそ の 代 表 関係 を 基礎 に 判 決 効が 生 じ
、 代 表訴 訟 を 提 起す る こ と がで き な く な る一 方
、 適 切な 代 表 の 要 件が 満 た さ れな い 限 り
、他 の 株主 は 自 ら によ る 訴 訟 追 行権 を 失 わ ない
5 ( ) 9
。 し か し、 こ の 原 告 株主 の
「 適 切な 代 表
」 の 要件 は 現 行 法に お い て 認め ら れて い な い
6 ( ) 0
。 ま た
、 訴 訟 担 当 論 を 唱 え る 説 は
、 代 表 訴 訟 を 訴 訟 担 当 者 た る 株 主 に よ る 会 社 の 権 利 の 訴 訟 追 行 と 解 し て い る た め、 原 告 株 主と 会 社 お よ びそ の 他 の 株主 と の 権 限の 調 整 が 必 要で あ る
6 ( ) 1
と 主張 す る。 と りわ け
、 原 告株 主 と 会 社と の
二 八 六
関係 に つ い ては
、 訴 訟 担当 者 で あ る 代表 訴 訟 の 原告 株 主 が 行 使で き る 権 利の 範 囲 は 法 律に よ り 権 利が 授 与 さ れた 趣 旨に よ っ て 定ま る た め
、 訴訟 担 当 者 の原 告 株 主 は本 人 で あ る 会社 を 超 え る権 利 を 有 せ ず、 ま た 会 社の 行 使 で きる す べて の 権 利 を行 使 で き る わけ で も な い
( 6 2
が
)
、 民 事 訴訟 法 四
〇 条 の限 度 で 制 限を 受 け る 独 立し た 訴 訟 追行 権 を 有 し
( 6 3
、
)
株 主は 一 度 代 表訴 訟 を 提 起し た 後
、 会 社の 当 事 者 訴訟 参 加 が あ って も 訴 訟 追行 権 を 有 す ると 解 し て いる
。 ま た
、原 告 株主 と そ の 他の 株 主 と の 関係 に つ い ては
、 他 の 株主 に 判 決 効 が及 ぶ こ と の意 義 は
、 代 表訴 訟 の 相 手方 が 二 重 の応 訴 を負 担 す る こと を 防 ぐ た めに
、 被 担 当者
(
=
原 告株 主 以 外 の 株主) は 既 に提 起 さ れ た 代表 訴 訟 に おい て 自 己 の権 利 の実 現 を 図 るこ と を 強 制 され る と い うこ と で あ り、 訴 訟 参 加 をし な い 場 合に は
、 そ の 権利 行 使 の 機会 を 失 う こと に なる と 解 し てい る
6 ( ) 4
。 三 つ の 説 のう ち
、 訴 訟担 当 論 を 主 張す る 説 は 現行 の 代 表 訴 訟制 度 の 実 態を も っ と も うま く 説 明 でき て い る と思 わ れる
。 し か し、 こ の 説 を とる と し て も、 法 は 訴 訟担 当 者 と し て原 告 株 主 にい か な る 範 囲の 権 限 を 付与 し た か につ い ては 必 ず し も明 か で は な い。 実 際
、 現行 会 社 法 にお け る 代 表 訴訟 を 定 め る条 文 を み れ ば、 そ の 法 構造 が 曖 昧 であ る こと の ほ か
、別 の 特 徴 も ある こ と が 明か で あ る
。 会 社 法 は 六カ 月 前 か ら 引き 続 き 株 式( 会 社 法 一八 九 条 二 項 の定 款 の 定 めに よ り 権 利 行使 が で き ない 単 元 未 満 株主 を除 く
) を 有す る 株 主 に
、会 社 の た めに 取 締 役 等 の役 員 の 責 任追 及 等 の 訴え
、 い わ ゆ る株 主 代 表 訴訟 を 提 起 す るこ とを 認 め る
。株 主 は 当 該 代 表 訴 訟 提 起 権 に 基 づ き
、( イ
)発 起 人、 設 立 時 取 締 役、 設 立 時 監 査 役
、役 員 等( 会 社 法 四二 三 条 一 項に 規 定 す る 取締 役
、 会 計参 与
、 監 査 役、 執 行 役 また は 会 計 監査 人
) も し くは 清 算 人 の責 任 を 追 及 する 訴え
、( ロ
) 一二
〇 条 三 項所 定 の 利 益 供与 を 受 け た者 か ら 利 益の 返 還 を 求 める 訴 え
、( ハ) 二 一 二 条一 項
、 二 八五 条 一項 所 定 の 不公 正 な 価 額 で株 式
・ 新 株予 約 権 を 引 き受 け た 者 に公 正 な 価 額 との 差 額 の 支払 い を 求 める 訴 え の 提 起を 代 表 訴 訟 の 対 象 と な る 取 締 役 の 責 任 の 範 囲 と 提 訴 段 階 に お け る 会 社 の 裁 量
( 都 法 五 十 二
―
二
) 二 八 七
会社 に 対 し て請 求 す る こと が で き る こと が 定 め ら れ て い る
( 会 社 法 八 四 七 条 一 項 本 文
6 ( ) 5
)。 当 該 提 訴 請 求 の 日 か ら 六
〇日 以 内 に 会社 が 責 任 追及 等 の 訴 え を提 起 し な いと き
、 提 訴 請求 を し た 株主 は 自 ら 代表 訴 訟 を 提 起す る こ と がで き る( 同 法 同 条三 項
)。 こ の よ う に、 日 本 法 に おけ る 代 表 訴訟 に 関 す る規 定 は
、 代 表訴 訟 提 起 権を 行 使 し う る対 象 と な る者 お よ び 追及 し うる 責 任 の 範囲 を 定 型 的 に定 め て お り
( 6 6
、
)
日 本 の 代表 訴 訟 は 会 社が 限 定 さ れた 者 に 対 し て有 す る
、 限定 さ れ た 一部 の 権利 の 行 使 を単 独 株 主 に 認め る と い う形 式 を 有 する
6 ( ) 7
。 も っ と も、 代 表 訴 訟は 取 締 役 等 の役 員 お よ び会 社 の 一 部の 債 務者 た る 者 を限 定 列 挙 し
、そ れ ら の 者の み に 対 して 提 起 で き ると さ れ て おり
、 そ の う ち、 会 社 の 限定 さ れ た 一部 の 債務 者
( 利 益供 与 を 受 け た株 主
、 不 公正 な 価 格 で株 式
・ 新 株 予約 権 を 引 き受 け た 者
) につ い て は
、代 表 訴 訟 によ っ て追 及 で き る責 任 の 範 囲 が特 定 の 条 文を あ げ る こと に よ り 定 めら れ て い るの に 対 し
、 取締 役 等 の 役員 の 責 任 の範 囲
(本 稿 は 主 に
「取 締 役 の 責任 の 範 囲
」に つ い て 議 論 を す る こ と と す る
)に つ い て は、 特 定 の 条 文 を 挙 げ て い な い た め、 取 締 役 等の 役 員 が 会 社に 対 し て 負う 責 任 の う ち、 株 主 代 表訴 訟 の 対 象と な り う る もの の 範 囲 は明 ら か で な い
( 6 8
。
)
そ れ ゆ え
、ア メ リ カ で ほ と ん ど 議 論 さ れ て い な い 代 表 訴 訟 に よ っ て 追 及 し う る 取 締 役 の 責 任 の 範 囲 に 関 す る 議 論 は、 日 本 に おい て 従 来 か ら、 そ し て 今な お 議 論 され 続 い て い る。 代 表 訴 訟 の対 象 と な り うる 取 締 役 の責 任 の 範 囲に 関 す る 詳 細の 議 論 は 本稿 三 の 検 討 に譲 る が
、 そも そ も 取 締 役の 責任 の 範 囲 を定 め る 目 的 は何 で あ ろ うか を 考 え る べき と 思 わ れる
。 こ れ につ い て は
、 後に 紹 介 す る学 説 や 裁 判 例に あげ た 論 拠 から み れ ば
、 主に 代 表 訴 訟に よ る 株 主 の会 社 経 営 への 介 入 と 会社 の 裁 量 と 均衡 関 係 か ら代 表 訴 訟 に よっ て追 及 で き る取 締 役 の 責 任を 限 定 す べき こ と
、 お よび 代 表 訴 訟を 無 限 定 に認 め れ ば 会 社荒 ら し の 好餌 化 に な り かね ない と い う 懸念 が あ る こ とは 強 調 さ れて き た
。 こ の意 味 で は
、日 本 に お い ても
、 ア メ リカ に お い ても
、 株 主 の 代表
二 八 八
訴訟 提 起 権 の行 使 に 一 定の 制 限 を か ける べ き と いう 基 本 的 な スタ ン ス に 関し て は 一 致 して い る と 言え よ う
。
︵ 2 ︶ 事 前 の 提 訴 請 求 制 度
前 述 し た よう に
、 日 本 の代 表 訴 訟 の法 構 造 の 曖昧 さ と 当 該 制度 の 導 入 の歴 史 的 経 緯 によ る 制 度 設計 の 特 殊 性が あ るた め
、 ア メリ カ に お い てそ も そ も 議論 に な ら ない 代 表 訴 訟 によ っ て 追 及し う る 取 締 役の 責 任 の 範囲 の 問 題 が長 く 議論 さ れ て きた
。 ま た
、「 取 締 役 の 責任 の 範 囲
」 の 限 定 と 同 じ よ う に
、 株 主 の 代 表 訴 訟 提 起 権 の 行 使 に 一 定 の 制 限 をか け る 効 果を 有 す る 制 度と し て
、 日本 の 代 表 訴 訟に お い て はア メ リ カ のデ マ ン ド 制 度に あ た る 事前 の 提 訴 請 求制 度が あ る
。 こ の 事 前 の提 訴 請 求 制 度は
、 具 体 的に
、 株 主 が 代表 訴 訟 を 提起 す る に は事 前 に 書 面 によ り 会 社 に対 し て 訴 訟 を提 起す る よ う 請求 し な け れ ばな ら ず
( 会社 法 八 四 七 条 一 項
)、 請 求 日 か ら 六
〇 日 内 に 会 社 が 取 締 役 に 対 す る 訴 え を 提 起し な い 場 合に 初 め て 株 主自 ら 会 社 のた め に 代 表 訴訟 を 提 起 する こ と が で きる
( 会 社 法八 四 七 条 三項
) と い う よう な内 容 を 有 す る。 訴 訟 を 提起 す る か 否か に 関 し 会 社( 取 締 役 会ま た は 特 別 訴訟 委 員 会
)に 一 定 の 裁量 の 余 地 を 認め るア メ リ カ の デマ ン ド 制 度と 異 な り
、日 本 の 事 前 の提 訴 請 求 制度 に お い て は、 会 社 に は原 則 と し て取 締 役 の 責 任の 処理 に つ い て 裁量 の 余 地 がな く
、 株 主は 会 社
( 監 査役
) に 提 訴請 求 を し て から
、 会 社
(監 査 役
) の 判断 に 左 右 され るこ と な く
、 一定 の 期 間 を待 て ば 自 ら 代表 訴 訟 を 提起 で き る
。 な お
、 株 主 が事 前 に 適 法な 提 訴 請 求 をす る こ と なく 代 表 訴 訟を 提 起 し た 場合 に は
、 その 瑕 疵 の 治 癒に つ い て 下級 審裁 判 例 は
、 会社 の 訴 訟 参加 に よ っ て その 瑕 疵 が 治癒 さ れ る こと
6 ( ) 9
、 代 表 訴訟 提 起 後 に 改め て 会 社 に対 し て 提 訴請 求 を請 求 し
、 会社 が 請 求 日 から 法 定 の 期間 内 に 訴 えを 提 起 し な かっ た 場 合 にそ の 瑕 疵 が 治癒 さ れ る こと
7 ( ) 0
を 示 し たも の 代 表 訴 訟 の 対 象 と な る 取 締 役 の 責 任 の 範 囲 と 提 訴 段 階 に お け る 会 社 の 裁 量( 都 法 五 十 二
―
二
) 二 八 九
があ る
。 一 方、 株 主 が 訴訟 提 起 前 に 会社 の 代 表 取締 役 に 対 し て提 訴 請 求 をし た 後
、 訴 訟提 起 後 に 改め て 監 査 役に 対 して 提 訴 請 求を し た と い う事 実 関 係 のも と に お いて
、 法 定 の 期間 を 経 過 して も 当 該 訴 訟は 適 法 な もの と な る に至 っ たと 認 め る こと は で き な いと 判 断 し
、却 下 判 決 を下 し た 裁 判 例
( 7 1
も
)
あ る
。 も っ と も
、ア メ リ カ のデ マ ン ド 制 度は 会 社 に 訴訟 以 外 の 救 済や 是 正 措 置を 選 択 す る 機会 を 与 え るこ と や 不 必要 な 訴 訟 の 阻 止 を 目 的 と し て い る の に 対 し
、 日 本 の 事 前 の 提 訴 請 求 制 度 は そ の 趣 旨 が 曖 昧 で あ る こ と が 指 摘 さ れ て い る
( 7 2
。
)
株 主 に 提訴 請 求 を 要求 す る 理 由 には 一 般 的 に権 利 主 体 で ある 会 社
( 監査 役
) に 訴 訟提 起 す る か否 か の 判 断の 機 会を 与 え る こと
7 ( ) 3
、 お よ び株 主 と 取 締 役の 馴 れ 合 い訴 訟 や 濫 訴 の弊 害 を 防 止す る た め
7 ( ) 4
であ る こ と が 挙げ ら れ て いる。 しか し
、 現 行法 に お け る事 前 の 提 訴 請求 制 度 に はア メ リ カ の よう に 会 社 の不 提 訴 判 断 を会 社 の 経 営判 断 と し て一 定 の程 度 で 尊 重す る た め の 手続 が な く
、監 査 役
( 委員 会 設 置 会 社の 場 合 は 監査 委 員
) に 対し て
7 ( ) 5
行 わ れる 提 訴 請 求が 形 式的 な も の にと ど ま り、監 査 役 の 提 訴請 求 に 対 する 考 慮 期 間 が形 骸 化 す る問 題 が 指 摘 され て い る
7 ( ) 6
。ア メ リ カ のデ マ ンド 制 度 の 機能
、 す な わち
、 会 社 の 最善 の 利 益 にそ ぐ わ な い 訴訟
、 ま た は会 社 の 利 益 を害 す る 訴 訟や 嫌 が ら せ訴 訟 をス ク リ ー ンア ウ ト す る こと は 日 本 の事 前 の 提 訴請 求 制 度 に は期 待 で き ない こ と は 明 かで あ る
。
3 ま と め
上 記 の よ うに
、 日 米 の 代表 訴 訟 の 法構 造 お よ び提 訴 段 階 の 提訴 請 求 の 手続 の 相 違 は 明か で あ る
。ア メ リ カ にお い ては
、 代 表 訴訟 の 対 象 と なる 取 締 役 の責 任 の 範 囲に つ い て 特 に制 限 を 設 けて い な い が
、デ マ ン ド 制度 は 株 主 に よる 代表 訴 訟 の 提起 を ス ク リ ーニ ン グ す るこ と に よ っ て、 訴 訟 提 起の 段 階 に おけ る 株 主 の 代表 訴 訟 に よる 会 社 へ の 介入
二 九
〇
と 会 社 の 経 営 上 の 裁 量 と の 均 衡 を 調 整 し て い る
。 そ れ に 対 し
、 日 本 の 代 表 訴 訟 制 度 は い わ ば 定 型 化 さ れ た 制 度 と なっ て お り
、明 文 の 規 定 とい う 形 で 代表 訴 訟 提 起権 を 行 使 し うる 対 象 と なる 者 お よ び 追及 し う る 取締 役 等 の 責任 の 範囲 を 限 定 しよ う と し て いる
。 そ し て、 提 訴 段 階に お け る 会 社の 裁 量 を 認め ず
、 原 告 株主 が 会 社 に対 し て 事 前の 提 訴請 求 を し て会 社 が 訴 訟 を提 起 し な い限 り
、 株 主が 自 ら 代 表 訴訟 を 提 起 する こ と が で きる 制 度 に なっ て い る
7 ( ) 7
。 株 主 の 代 表訴 訟 提 起 権の 行 使 に 一 定の 制 限 を かけ る と い う 共通 の 目 的 を達 す た め に
、代 表 訴 訟 によ っ て 追 及し う る取 締 役 の 責任 の 範 囲 を 限定 す る こ とに よ っ て
、事 前 の 提 訴 請求 制 度 の 実効 性 を 欠 く こと を 補 う こと は
、 一 見一 定 の合 理 性 が ある よ う で あ るが
、 次 の 検討 か ら 明 かに な る よ う に結 論 は 必 ずし も 肯 定 的 なも の で な いと 思 わ れ る。 次 に
、 日 本法 に お け る
「取 締 役 の 責任 の 範 囲
」に 関 す る 議 論を 踏 ま え たう え で
、 代 表訴 訟 の 提 訴段 階 に お いて 会 社に 株 主 の 提訴 請 求 に 対 する 一 定 の 裁量 を 認 め る必 要 性 を 検 討し
、 現 行 法の 問 題 点 を 指摘 す る
。
三 学 説 お よ び 下 級 審 判 決 か ら み た ﹁ 取 締 役 の 責 任 の 範 囲 ﹂
1 学 説
株 主 代 表 訴訟 の 対 象 とな る 取 締 役 の責 任 の 範 囲に つ き
、 従 来学 説 は 大 きく 二 つ に 分 かれ て い る
7 ( ) 8
。
︵ 1 ︶ 全 債 務 説
従 来 の 多 数説 は 全 債 務説 で あ る
。 すな わ ち
、 取締 役 の 会 社 に対 し て 負 担す る 一 切 の 債務 が 代 表 訴訟 の 対 象 とな る 代 表 訴 訟 の 対 象 と な る 取 締 役 の 責 任 の 範 囲 と 提 訴 段 階 に お け る 会 社 の 裁 量
( 都 法 五 十 二
―
二
) 二 九 一
とい う 説 で ある
。 全 債 務 説 はそ の 主 張 の根 拠 と し て
、 漓平 成 一 七年 改 正 前 商 法( 以 下、
「 改 正 前商 法
」と い う
)二 六 七 条 は単 に「 取 締役 ノ 責 任
」と あ り
、 な んら 制 限 的 な文 言 が な いこ と
7 ( ) 9
、 滷制 度趣 旨 と し て、 責 任 を 追 及さ れ る べ き取 締 役 間 の特 殊 関係 に 基 づ く会 社 の 提 訴 の懈 怠 を 防 止す る た め のも の で あ り
、提 訴 懈 怠 の可 能 性 は 取 締役 が 会 社 に対 し て 負 担す る 一切 の 債 務 につ い て 存 在 する こ と
8 ( ) 0
、 澆改 正 前 商 法で は 全 債 務 説を 取 ら な けれ ば
、 会 社 から の 金 銭 の貸 付 を 受 けた 取 締役 は 弁 済 を怠 っ た 場 合 には
、 会 社 を代 表 し て その 貸 付 を し た代 表 取 締 役及 び 貸 付 に 賛成 し た 取 締役 の 未 弁 済額 の 弁済 責 任( 改 正 前 商法 二 六 六 条 一項 三 号〔 会 社 法 に規 定 な し
〕) に つ い て は代 表 訴 訟 が 認め ら れ る にも か か わ らず
、 貸付 を 受 け た取 締 役 自 体 の弁 済 義 務 につ い て は これ が 認 め ら れな い こ と にな っ て
、 著 しく 均 衡 を 失す る こ と
8 ( ) 1
、お よ び 潺取 締 役 が会 社 に 対 して 負 担 す る 取引 上 の 債 務を 履 行 す る こと も
、 そ の忠 実 義 務 に 基づ く 責 任 であ る と い え、 改 正前 商 法 二 五四 条 の 三 は 二六 六 条 一 項五 号
( 会 社法 四 二 三 条 一項
) の
「 法令
」 に 当 然 含ま れ る の で、 責 任 の 範囲 を 限定 す る 理 由が な い こ と
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を 挙 げ る。 し か し
、 全債 務 説 に 対す る 反 論 は 多い
。 ま ず
、 論 拠 滷に つ い て、 会 社 の 提 訴懈 怠 の 可 能と い う 点 だ けを 見 れ ば
、会 社 の 支 配 株主 ま た は 取締 役 と 特 殊関 係 にあ る 特 殊 株主 の 場 合 に も同 様 で あ るこ と が 指 摘さ れ た
。 支 配株 主 や こ のよ う な 特 殊 株主 は 取 締 役で な い た め、 そ もそ も 代 表 訴訟 の 適 用 が ない し
、 ま たた と え そ の適 用 を 認 め ても
、 支 配 的地 位 や 特 殊 関係 の 有 無 の判 定 基 準 の設 定 は非 常 に 困 難で あ る
。 ま た
、 論 拠 澆に 対 し て
、取 締 役 が 会社 か ら 金 銭の 貸 付 を 受 けた 場 合 で は、 取 締 役 会 の承 認 が な かっ た 場 合 は もち ろん
、 た と え取 締 役 会 の 承認 を 得 た 場合 で も
、 返 済義 務 の 不 履行 等 に よ って 会 社 が 損 害を 被 っ た とき
、 当 該 取 締役
二 九 二
には 損 害 賠 償責 任 が 生 じる と 解 す る こと が で き るし
、 さ ら に
、当 該 金 銭 返済 義 務 が 免 除さ れ た と して も
、 当 該免 除 その も の が 利益 相 反 取 引 とな り
、 責 任が 免 れ な いと い う 反 論 があ り う る
。す な わ ち
、 会社 か ら 貸 付を 受 け た 取締 役 の返 済 義 務 につ き
、 代 表 訴訟 の 対 象 とな ら な く ても
、 必 ず し も不 都 合 が ない と い う 主 張で あ る
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。 最 後 に
、 論拠 潺に 関 して は
、 取 締 役の 会 社 に 対す る 取 引 上 の債 務 は そ の不 履 行 が 当 然改 正 前 商 法二 六 六 条 所定 の 責任 を 発 生 させ る わ け で はな い と の 批判 が あ る
。た と え ば
、 取締 役 が 会 社に 対 し て な んら 負 担 の ない 無 償 贈 与を な す場 合
、 当 該取 締 役 に 取 引上 の 債 務 は発 生 し て も、 改 正 前 商 法二 六 六 条 によ る 取 締 役 の責 任 は 一 般発 生 せ ず
、こ の よう な 贈 与 上の 債 務 は 代 表訴 訟 の 対 象と す べ き でな い と い う 説が あ る
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。
︵ 2 ︶ 限 定 債 務 説
一 方
、 有 力説 と し て
、全 債 務 説 と 対立 す る 限 定債 務 説 が あ る。 限 定 債 務説 に よ れ ば
、会 社 法 上 の取 締 役 の 地位 に 基づ く 責 任
、か つ そ の 発 生原 因 に お いて 特 に 重 要な
、 し た が って 免 除 の 困難 な 責 任 と 免除 不 可 能 な責 任
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に 限 って 代 表訴 訟 を 認 める べ き で ある。 限 定 債 務 説は そ の 根 拠に
、 漓日 本 の制 度 は
、 代表 訴 訟 の 提 起に つ い て 会社 の 裁 量 を 認め な い 点 にお い て 柔 軟性 を 欠く も の で あり
、 全 債 務 説は 会 社 の 経営 上 の 判 断の 余 地 を 制 約し す ぎ る こと
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、 滷第 三者 的 債 務 等 は株 主 総 会 や取 締 役会 の 多 数 決で で も 免 除で き る 性 質 のも の で あ り、 代 表 訴 訟 が追 及 で き る取 締 役 の 責 任範 囲 の 中 から
、 そ れ らの も のを 除 外 し ても
、 特 別 な 支障 は 起 こ らな く
、 代 表訴 訟 制 度 の 立法 趣 旨 に つい て 限 定 債 務説 に よ っ て初 め て 説 明可 能 とな る こ と
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、 澆代 表 訴 訟を 非 限 定 的 に認 め る こ とは
、 会 社 荒 らし の 好 餌 化と な る と い う弊 害 の ほ うが 多 く
、 また 一 株の 株 主 に とっ て ど れ だ けの 意 義 が ある か と い う疑 問 が あ る こと
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を 挙 げ てい る。 代 表 訴 訟 の 対 象 と な る 取 締 役 の 責 任 の 範 囲 と 提 訴 段 階 に お け る 会 社 の 裁 量
( 都 法 五 十 二
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二
) 二 九 三