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母集団薬物動態解析およびベイズ推定法を基盤とした

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Academic year: 2021

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母集団薬物動態解析およびベイズ推定法を基盤とした therapeutic drug monitoring

(Bayes-TDM)による敗血症患者における抗菌薬の個別化投与方法の確立 創薬・生命薬科学専攻 ドラッグデリバリーコース 臨床薬物動態学分野 尾田 一貴

敗血症は, 感染症を起因とする極めて重篤な病態であり, その 48 時間死亡

率は 28%, 28 日間死亡率は 69% など極めて高い死亡率が報告されている. 従

って, 救命率を最大化するためにも抗菌薬の適正使用が必須であるが, 循環動 態が不安定な敗血症における抗菌薬の薬物動態は不明な点も多く, 抗菌薬の治 療効果を最大化するための投与方法について, 検討が続けられている. 抗菌薬 の最大治療効果は, pharmacokinetics/pharmacodynamics(PK/PD)に基づいた投与 方法により引き出すことが可能であるために, 実臨床における敗血症の診療に おいて実践可能な, 薬物動態パラメータ値および PK/PD パラメータ値を個別 に推定し, 投与量を個別に決定・最適化する手段が求められている.

敗血症患者における抗菌薬の投与開始時の投与量を個別に決定するためには, 敗血症患者に特有の母集団薬物動態(population pharmacokinetics: PPK)モデル を活用することが有効であると考えられる. また, 維持投与量を個別に最適化 するためには, PPK モデルおよびベイズ推定法を基盤とした therapeutic drug

monitoring(Bayes-TDM)の手段が有効であると考えられる. しかし, 抗菌薬の

投与量を個別に決定するための, 敗血症患者に特有の PPK モデル, ならびに維 持投与量を個別に最適化するための, 敗血症患者における Bayes-TDM の有用 性は明らかではない.

そこで本研究では, 抗菌薬について敗血症患者に特有の薬物動態を明らかに

し, PPK モデルによる投与開始時の投与量を個別に決定する手段, ならびに

Bayes-TDM による維持投与量を個別に最適化する手段を確立することを目的

とした. 特に, 敗血症患者において使用頻度が高い抗菌薬である, テイコプラニ ン(TEIC), バンコマイシン(VCM)について研究を展開した.

以下に, 本研究で得られた知見を要約する.

1) TEIC の個別化投与方法を確立することを目的として, PPK モデルおよび

Bayes-TDM による手段を検討した. 先行研究で報告された PPK モデル

(N-PPK)モデルの中心コンパートメントの分布容積(Vc = 10.4 L)を評価 した結果, Vc は過大評価されていることを明らかにし, 6.8 L の修正値が推 定された. 従って, 簡単なノモグラムの作成と合わせて, 投与開始時の初回 負荷投与量(LD)を個別に決定する手段が実施可能となった. 次に, 投与開 始後 2 - 3 日後の血中トラフ濃度を用いた, Bayes-TDM による定常状態の

(2)

血中トラフ濃度の予測精度を検討した結果, N-PPK モデルによる予測精度 よりも改善した. 従って, 投与開始後早期に維持投与量を個別に最適化する 手段が実施可能となった.(第 2 章)

2) 持続腎代替療法(CRRT)施行患者における VCM の個別化投与方法を確立 することを目的として, PPK モデルおよび Bayes-TDM による手段を検討

した. 新たに PPK モデルを構築した結果, VCM の体クリアランス

(CLBODY)に影響を与える共変量として, 乏尿(尿量 < 0.5 mL/kg/hr: LUO), および CRRT の施行条件の 1 つである efflux rate が新たに見いだされた. 従って, 簡単なノモグラムの作成と合わせて, 投与開始時の投与量を個別に 決定する手段が実施可能となった. 次に Bayes-TDM による血中トラフ濃 度の予測精度を評価した結果, Bayes-TDM は 目標治療域達成率を上昇させ ること, および血中トラフ濃度実測値の分散を低下させることに成功した.

従って, CRRT 施行患者における VCM の維持投与量を個別に最適化する

手段が実施可能となった.(第 3 章)

以上のように, 本研究では, VCM, TEIC に関する敗血症患者に特有の薬物動 態を明らかにし, PPK モデルにより投与開始時の投与量を個別に決定する手段,

ならびに Bayes-TDM により維持投与量を個別に最適化する手段について, そ

の一端を明らかにした. 今後は, この個別化投与方法を普及させる予定である. 本研究では, 従来から血中濃度を測定している抗菌薬を対象としたが, 通常 血中濃度を測定しない抗菌薬においては, 近年では投与量不足も報告されてい る. 従って, 救命率を最大化させるために薬物動態を解明しなければならない 抗菌薬や患者は数多い. ゆえに, まずは敗血症患者において PPK モデルを構築 することで, 投与開始時の投与量を個別に決定することが有効であると考えら

れる. さらに, 構築した PPK モデルを活用して, 薬物動態パラメータ値ならび

に PK/PD パラメータ値を Bayes-TDM によって個別に推定し, 維持投与量を

最適化する必要がある. 本研究の成果は, 今後の敗血症患者における, 抗菌薬を 含めて種々の薬物の投与量を個別に決定, 最適化する手段の確立を目指した研 究において, 有益な情報となると考える.

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