目次
はじめに 第一章 マンション管理 第1節 マンション管理 第2節 管理費・修繕費の使い道 第3節 修繕積立金 第4節 大規模修繕 トピック 建築基準法と「大規模の・・・」 第二章 マンションの市場現況 第1節 マンションとは 第2節 住宅ストック 第3節 東京の老朽化マンション 第4節 東京の新たな動き 第三章 マンションの判断基準 第1節 新耐震基準 第2節 許容応力度等計算と限界耐力計算 第3節 住宅性能表示制度 トピック 日本の建築高層化 第四章 住宅の寿命 第1節 住宅の寿命 第2節 さまざまな指標 第3節 瑕疵 第五章 今後に向けて ①スケルトン&インフィル ②リノベーション 第六章 考察 参考文献、参考WEB2007 年1月 25 日 駒井プロジェクト(1) 慶應義塾大学環境情報学部二年 70543479 木村真紀 ([email protected])
マンションストックとその行方
現在、日本には世帯数を超える戸数の住宅が存 在する。人は空間を移動し、産まれては死ぬ存在 であるが、住宅は空間を移動する事はない。しか し、生まれては死ぬことは同じである。現在、住 宅のストックは増加傾向にある。住宅ストックの 増加は、すなわち家余りを意味し、居室の空室増 加を引き起こす。一般的に考えて、住宅は一世帯 に一戸である。ストックが増え、余剰の住宅が市 場にあふれるという事は、需要と供給の均衡のた めに住宅の購入・賃貸費が下がり、我々一般市民 が住宅を複数戸所有できるといううれしい未来 を到来させるかもしれない。しかし、はたしてそ れは素直にうけいれていいものだろうか。 まず、住宅を持家と賃貸に分けて考えてみる。 持家はまさに個人の財産となり個人が壊さない 限りストックとなりそこに存在する。しかし、そ のために維持管理が個人の責任となり、一戸建 て・マンション共に経年変化とともに補修改修を おこなう費用が後々必要となる。また、購入に際 して各種の税がかかり、さらに固定資産税、都市 計画税が毎年課されることとなる。所有者の変更 には相続税までが負担として後継者に請求され る。特別控除による税金の返還制度があるにせよ、 やはり相当の金額が必要である。では、賃貸では どうであろうか。賃貸住宅は、初期経費の敷金・ 礼金、鍵交換費用等と毎月の賃料、共益費だけで ある。持家購入者が ローンを返済しながら維持 管理し、将来の修繕費積立せねばならない 立場 に比べたら、賃貸居住は費用もかからず気楽なよ うに思える。しかし実際の生涯費用は同規模の住 宅で比べた場合、あまり変わりがないとのことで ある。 では、維持管理に関して、戸建住宅とマンショ ンについて考えてみる。戸建住宅の場合、分譲住 宅として販売されたものでも、補修改修工事は住 戸単独で行う事が可能である。また、一戸で躯体 が成り立っているため、自分単独で家を建替える ことも可能である。では、マンションはどうであ ろうか。各住戸専有部分については、通常、管理 組合への通知により単独で行う事ができる。では、 共用部分はどうであろうか。「建物の区分所有等 に関する法律」によると、『共用部分の変更につ いて「形状または効用の著しい変更を伴わないも の」は区分所有者及び議決権の各過半数の賛成で 行う事ができる。』との事である。すなわち、マ ンションの大規模修繕は過半数の決議により可 決される。さらに建替えとなると、5分の4の多 数決が必要となる。このように、分譲マンション は、 区分所有 という特質から、個人の勝手に はならないという性質をもつ。 そこで今回、持家かつマンションに焦点をあて、 維持補修改修から優良なストックとはなにか、そ してストック増加に対する一世帯住宅所有数の 増加は望ましいかどうかについて検討していく。第一章 マンション管理
第1節 マンション管理
まず、マンションにおける維持補修改修の中心 となる「管理」について考える事とする。 そもそも、マンションにおける「管理」とはい かなるものであるか。「標準管理規約」(国土交通 省作成)における「管理組合の業務」を参考に載 せる事とする(条文1)。このような、多数の管 理業務を行う団体をマンションにおいて組織す ることが区分所有法により義務付けられている (区分所有法「区分所有者は、全員で、建物、敷 地及び付属施設の管理を行うための団体を構成 しなければならない。」)。マンション管理標準規 約は、「マンションの管理又は使用に関する事項 等について定める事により、区分所有者の共同の 利益を増進し、良好な住環境を確保する事を目 的」としたものであり、区分所有者及び議決権の 各 4 分の 3 以上の多数による集会の決議にて設 定・変更・廃止が可能となる。規約はマンション における住民自治を円滑に行うために不可欠な ものである。平成 15 年度マンション総合調査結 果によると、管理規約はほとんどすべての管理組 合(99.6%)において作成され、使用細則や居住の ルールについても 88.9%の管理組合で作成され ているとのことである。 では、これら業務を住民のみで行っているのか。 管理方式として、「自主管理」と「委託管理」を 挙げる事ができる。 自主管理 :管理組合が、管理業務について意思決定、 実際の業務の執行の全てを自ら行う形態。 委託管理 :意思決定は管理組合が行い、業務は一部ま たは全部を管理会社に委託する方式。 委託方式では、管理会社へ管理委託料を支払う必 要がある。マンション総合調査によると、その平 均は、戸当たり月平均額8,610 円であり、各戸に 毎月の金銭的負担がかかることとなる。 【条文1】 (マンション管理標準規約―第6 章 2 節 32 条) 一 管理組合が管理する敷地及び共用部分等 (以下本条及び第48条において「組合管理部 分」という。)の保安、保全、保守、清掃、消毒 及びごみ処理 二 組合管理部分の修繕 三 長期修繕計画の作成又は変更に関する業務 四 建物の建替えに係る合意形成に必要となる 事項の調査に関する業務 五 適正化法第103条に定める、宅地建物取 引業者から交付を受けた設計図書の管理 六 修繕等の履歴情報の整理及び管理等 七 共用部分等に係る火災保険その他の損害保 険に関する業務 八 区分所有者が管理する専用使用部分につい て管理組合が行うことが適当であると認められ る管理行為 九 敷地及び共用部分等の変更及び運営 十 修繕積立金の運用 十一 官公署、町内会等との渉外業務 十二 風紀、秩序及び安全の維持に関する業務 十三 防災に関する業務 十四 広報及び連絡業務 十五 地域コミュニティにも配慮した居住者間 のコミュニティ形成 十六 管理組合の消滅時における残余財産の清 算 十七 その他組合員の共同の利益を増進し、良 好な住環境を確保するために必要な業務マンション組合員はさらに、管理組合に対し、 管理費・修繕積立金納入の義務を負う。平成 15 年度マンション総合調査(国土交通省)によると、 戸当たりの管理費は月平均額 12,565 円であり、 これは前回調査(平成11 年度)11,109 円に比べ 13.1%も上昇している。また、管理費とは別徴収 となる修繕積立金はどうであろうか。戸当たりの 月平均額が9,066 円とのことで、こちらも前回調 査時の7,378 円から 22.9%もの増加を見せている。 このように、管理費・修繕積立金が上昇し、マ ンション管理における金銭負担が増える中、管理 業務は金銭的または過分の仕事として購入者に ふりかかるのである。さらに同調査によると、管 理費等の滞納は、前回調査に比べ「全く滞納が発 生していない」マンションの割合が増え、逆に「滞 納戸数率0%超 10%以下」のマンションの割合は 減少している。しかし、「滞納戸数率10%」を超 えるマンションの割合は、少ないものの微増して いるとのことである。住戸を複数持つということ は、建物自体の価格の他にさまざまな経費、役割 の負担をせまるものとなる。こんな中、一世帯が 複数戸の住宅を所有する事は望ましい事であろ うか。現段階では、一部の富裕層を除き、決して 望ましいとは言えないであろう。
第2節 管理費・修繕費の使い道
前節の通り、マンション入居者には管理費(委 託管理の場合は委託管理料が含まれる)と修繕積 立金が請求される。では、これらの具体的な使途 はどのようになっているのであろうか。『標準管 理規約』より、管理費について表3に、修繕積立 金については表3に示す事とする。 管理費(条文2)については、 通常の管理 の経費として使われ、住民の生活を随時支える即 時的なものだということがわかる。では、修繕積 立金(条文3)はどうであろうか。経費として積 み立てられ、 特別の管理 に充てられるという ことである。この主たる目的が「管理組合の業務」 にて作成・変更される「長期修繕」計画の計画実 施である。長期修繕の内容については4 節でふれ ることとする。 マンションは、不動産である。土地は周囲の経 済・環境的影響があるにせよ、土地それ自体の価 値を落とす事はない。また、なくなることもない。 しかし、マンションは経年によりそれ自体が価値 を落とし、崩れ去りなくなることもある。維持・ 管理を行い、価値の低下を抑える事が必要となっ てくるのである。 【条文2】 (マンション管理標準規約―第5 章 2 節 27 条) (管理費) 第27条 管理費は、次の各号に掲げる通常の 管理に要する経費に充当する。 一 管理員人件費 二 公租公課 三 共用設備の保守維持費及び運転費 四 備品費、通信費その他の事務費 五 共用部分等に係る火災保険料その他の損害 保険料 六 経常的な補修費 七 清掃費、消毒費及びごみ処理費 八 委託業務費 九 専門的知識を有する者の活用に要する費用 十 地域コミュニティにも配慮した居住者間の コミュニティ形成に要する費用 十一 管理組合の運営に要する費用 十二 その他敷地及び共用部分等の通常の管理 に要する費用【条文3】 (マンション管理標準規約―第 5 章 2 節 28 条)
第3節 修繕積立金
設備が古くなれば取り替える必要が出てくる。 その箇所は経年により増え、それと共に必要とな る修繕費も増えることとなる。もし、修繕積立金 が何年経っても一定ならば、経年とともに積立残 金と必要経費が相反し反れていく。そこで、修繕 積立金は年々上がる事となる。 図1に、修繕積立金と修繕工事費用の関係をし めした(実際は個々のマンションにより異なる)。 修繕を円滑に進めるため、管理組合では長期修繕 計画をたて、修繕積立金を徴収することは前述し た。では、物価の変動や思わぬ災害が起きた場合、 入居当初に設定された低額の修繕積立金だけで 十分対応することができるのであろうか。図1に 示すとおり、それでは通常の修繕さえまかなえな い。そこで修繕に伴い、区分所有者個人にさらに 金銭的負担を負わせる修繕一時金の徴収または、 修繕積立金の引き上げが必要となるのである。修 繕のための費用として、居住者にはマンション購 入の際に一括で支払う 修繕積立基金 、管理費 とともに毎月支払う 修繕積立金 、さらには 修 繕一時金 の徴収が課されることもあるのである。 後述するが、大規模修繕実施の可決には区分所 有者の過半数の賛成を要する。居住者それぞれに 家計の状況があり、一時修繕金の負担が大きいた め修繕に賛成できない場合もある。そこで、修繕 費も修繕計画どうよう計画的に値上げしていく 必要がでてくるのである。 住宅金融公庫の定める優良なマンション基準 となる「公庫マンション維持管理基準」によると、 修繕積立金の1 戸あたり平均月額が経過年数 5 年 未満で 6000 円/月・戸、5 年以上 10 年未満で 7000 円/月・戸、10 年以上 17 年未満で 9000 円 /月・戸、17 年以上で 10000 円/月・戸となっ ている。このように、経年による管理費の値上げ (修繕積立金) 第28条 管理組合は、各区分所有者が納入する 修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた修 繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要す る経費に充当する場合に限って取り崩すことが できる。 一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕 二 不測の事故その他特別の事由により必要と なる修繕 三 敷地及び共用部分等の変更 四 建物の建替えに係る合意形成に必要となる 事項の調査 五 その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区 分所有者全体の利益のために特別に必要となる 管理 2 前項にかかわらず、区分所有法第62条第1 項の建替え決議(以下「建替え決議」という。) 又は建替えに関する区分所有者全員の合意の後 であっても、マンションの建替えの円滑化等に関 する法律(以下本項において「円滑化法」という。) 第9条のマンション建替組合(以下「建替組合」 という。)の設立の認可又は円滑化法第45条の マンション建替事業の認可までの間において、建 物の建替えに係る計画又は設計等に必要がある 場合には、その経費に充当するため、管理組合は、 修繕積立金から管理組合の消滅時に建替え不参 加者に帰属する修繕積立金相当額を除いた金額 を限度として、修繕積立金を取り崩すことができ る。 3 管理組合は、第1項各号の経費に充てるため 借入れをしたときは、修繕積立金をもってその償 還に充てることができる。 4 修繕積立金については、管理費とは区分して 経理しなければならない。【図1】修繕積立金と修繕工事費用の関係 は免れる事のできない現実である。 このように修繕積立金が年々上昇すると、各個 人の家計を少しずつではあるが苦しめることに なる。区分所有法第 59 条によると、区分所有者 の全員または管理組合法人は、管理費等滞納者に 対して先取特権に基づき、区分所有権及び敷地利 用権の競売を請求することができる。また、滞納 された管理費等は、その区分所有権を売買・贈 与・競売などにより取得した者(特定承継人)に 債務として承継される(区分所有法第 8 条)。施 設を共有するという事の難しさ、多勢で一つのも のを管理する難しさが、この大金を要する修繕事 業により明らかとなる。
第4節 大規模修繕
建物は、経年により老朽化する。安心して暮ら せる環境を整えるため、良質なストックを市場に 送るため、さまざまな理由で修繕は必要とされる。 長期修繕計画は、おおむね向こう 20∼30 年程度 の間に、いつ頃、何の修繕をするのか、またどの 程度の費用を要するのかを竣工図などに基づき 建物や設備を調査した上で定められるものであ る。また、表1に示すとおり、設備によって寿命 も様々であるため、計画修繕の周期には 4∼6 年 の短期的なもの、10∼15 年の中期的なものも考 慮することとなる。計画は原則として 5∼6 年毎 に見直し行い、大規模な修繕に際しては実施の 1.5 年前の段階で、再度内容(実施の必要性等)を検 討する必要がある。大規模な修繕工事の実施には、 多額の費用が必要とされ、それらは区分所有者に よる共同支出となるため、慎重な検討が必要とな る。
【表1】 (マンション管理センター計画修繕マニュアル) では、まず大規模修繕とはなにを指していうの であろうか。「大規模修繕」について明確な定義 はなく、区分所有法の条文にもその言葉はでてこ ない。ただ、情報をまとめると「分譲マンション の性能を維持し老朽化を防止するために、計画的 に行われる修繕であって、多額の費用を要する修 繕となるため、長期修繕計画にならい、修繕資金 を積み立て、区分所有者の過半数の賛成により可 決し、相当の工事期間を要して行われる事業」と いう事がわかる。また、その内容は具体的には外 壁の補修工事、屋上やベランダの防水工事、給排 水管の更新工事、塗装工事とのことである。修繕 周期のきた設備について、一気に大掛かりに更新 取替しようというのが大規模修繕ということに なる。 では、大規模修繕実施に対する決定機関はどこ であろうか。それはやはり管理組合である。区分 所有法第17 条によると「共用部分の変更は 4 分 の 3 以上の賛成で可決する。ただし、「形状や効 用が著しく変化しない場合」には、過半数の賛成 で可決する。」となっている。大規模修繕は、マ ンションの形状や効用を著しく変化させるもの ではなく、マンションの効用を維持するためのも のであるため、過半数の可決により実行可能とい うことになる。 2002 年の区分所有法改正により、大規模修繕 の実施が過半数により可決される事が明確とな った。しかし、それまでは「4 分の 3 の可決」か 「過半数」か、あいまいにされていた。個々のマ ンションの管理組合の状況に合わせて柔軟な対 応ができるという点では、このあいまいさに賛成 できるが、大規模修繕はマンション内の紛争を巻 き起こすといわれる。改正後、過半数と明確化さ れたことにより大規模修繕は可決されやすくな った事は確かであろう。しかし、修繕には区分所 有者個人の生活がかかっているだけに、過半数の 賛同だけで実施されてしまう法に軽率さを感じ ないでもない。 修繕周期の目安 <建物> 外壁補修・塗装 9∼15 年 鉄部塗装 3∼6 年 屋上防水・取替 10∼30 年 <機械設備> 屋内給水管・更生 10∼15 年(15∼22 年取替) 給水ポンプ補修 6∼9 年(12∼18 年取替) 消化ポンプ補修 6∼9 年(12∼18 年取替) 電気設備照明器具 10∼18 年 制御盤補修 13∼17 年 <外構・工作物> 遊戯施設補修 12∼17 年 機械式駐車場補修 10∼20 年 駐輪場補修 10∼15 年
∼トピック
―建築基準法と「大規模の・・・」∼
ここで、建築基準法では「大規模の修繕」が定 義されていることにふれておく。建築基準法第 2 条一四号では「建築物の主要構造部の一種以上に ついて行う過半の修繕をいう。」と定義されてい る。主要構造部とは壁・柱・床・梁・屋根・階段 であり、その構造部の過半を既存と同様の形状・ 寸法・材料の使用により工事される事をいってい ます。また、その修繕範囲が主要構造部の2 種類 以上にわたった場合でもいずれかが過半に及ば なければ大規模の修繕とはならない。マンション でいう 大規模修繕 のイメージと建築基準法の 定義とは少々かけ離れているようである。建築基 準法にはさらに「大規模の模様替」が定義されて いる。こちらの方が 大規模修繕 に近いと思わ れる。建築基準法第2 章一五号「建物の主要構造 部 の一 種以上 につ いて行 う過 半の模 様替 をい う。」と定義されている。『模様替』は『修繕』と 違い、形状、寸法、材料、構造などが既存と異な る場合を指す。いずれにしても、大規模な修繕や 模様替を行う場合には、建築確認・検査の対象と なる。第二章 マンションの市場現況
前章にみるように、所有住宅戸数増加は個人の 負担を増大させるため、望ましくないという考え に達した。ストックの増加を抑え、世帯数と住宅 戸数との均衡を保つべきであるという結論だ。で は、現在の市場はそのようになっているのであろ うか。第一節 マンションとは
前章まで多数資料を引用してきた財団法人マ ンション管理センターによると、分譲マンション は下記のように定義されている。 居住者数:多数の家族 所有者 :多数 建物 :鉄筋・鉄骨コンクリート造が主で、 高層化し建物自体に各種設備(エレ ベーター等)がついているもの。 隣家とは壁で接している。 さらに国土交通省の定義によると次のようにな る。 「中高層(3階以上)で分譲・共同住宅、鉄筋 コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリートまたは 鉄骨作りの住宅」 若干の違いがあるものの、マンションは上記のよ うな建物を指すこととなる。第2節 住宅ストック
住宅ストックが世帯数を既に上回る現在、しか し住宅建設はやむことはなく続けられている。平 成 17 年をさかのぼりここ3年、新設住宅着工戸 数は連続して増加を続け、マンションについても、 平成17 年度中に 23 万戸が着工され、増加が続いている。平成 17 年度末時点で、マンション総ス トック数は全国520 万戸(首都圏 273 万戸首都圏 以外247 万戸)にのぼり、全国のマンション化率 ははじめて10%を突破した。すなわち、10 世帯 に1世帯以上の割合でマンション購入世帯とな ったのである。(実際、取得されていないマンシ ョンもあるため、一概には言えないが、数字的に 言えることである。) ※マンション化率 :書く行政単位の世帯数に対するマンション ストック数の割合。タンジュンに何世帯に① 世帯の割合でマンションを購入して住んで いる事になるかを示す。 図2の通り、住宅のストックは右肩上がりに増 加している。住宅は、経年とともに躯体・設備と もに老朽化し、やがては取り壊される。しかし、 このように多くの新規供給が行われている現状 では、取り壊される住宅よりも供給数の方が多い ため、ストック戸数は増える一方である。 【図2】全国のマンションストック数 (建築着工統計:ストック戸数は、新規供給戸数)
第3節 東京の老朽化マンション
日本において築年数の古いマンションが集中 するのは東京都である。マンション供給は、東京 を中心として進められたため、東京には築 50 年 を迎えるマンションもいまだに姿をとどめてい る。三大都市圏を対象とした不動産調査を行って いる東京カンテイによると、三大都市圏において 築40 年(2004 年時点)を超えるマンションの割 合は、地域別シェアで東京都が66.3%、神奈川県 が 17.2%、千葉県 4.9%、兵庫県が 3.6%の順と なっている(東京都は 2004 年時点で三大都市圏 全マンションストックの 30.2%を有している。)。 しかし、築 30 年となると、東京都のシェアは 36.4%となり築 40 年マンション戸数の半分とな る。これは、1964 年の東京オリンピックを機に 多くのマンションが供給され、その建設が 10 年 で徐々に郊外へ広がっていったことが理由であ る。それを示すように、70 年代には神奈川県や大 阪府、千葉県、兵庫県で供給が進むこととなった。 そして、80 年代となると、民間のディベロッパー の供給が多くなり、地価高騰の影響を受けてさら に地方へとスプロールが起こり、郊外での竣工戸 数が急増させた。第4節 東京の新たな動き
老朽化マンションの代表が東京都だとすると、 東京都では築年数の浅いマンションは望めない のであろうか。東京カンテイによると、1990 年 代のマンション大量供給時代に、防災性能の高い マンションが都心回帰の流行とともに都心部に 建設され、新耐震基準(次章で説明)マンション ストックを増加させることとなった。都心回帰と ともに、千葉県、埼玉県では新築マンション戸数 シェアは低下し、東京都の新築マンション供給が 増加し、マンションストックを増やす結果となっ た(図3)。 【図3】新築マンション戸数シェアの推移 (東京カンテイ)第三章 マンションの判断基準
マンションのストックは十分である。では、中 古マンションをいざ購入する際には、どのような 事を注意すればよいのであろうか。図2のように マンションを築年数で図る考え方は中古住宅を 購入する上で重要である。躯体や設備の老朽化は、 今後かかるコストを考える上で大切な判断材料 となる。もちろん、管理組合の組織体系や長期修 繕計画の有無等も調べる必要がある。しかし、そ れらソフト面を調べる以前に、建物自体の安全性 を考えるべきであろう。それはやはり築年数の考 慮からである。設備は、更新により新たなものへ と取替可能である。しかし、躯体自体はその場か ら取り外し取り替えるといったことはできない。 では、ただ単に築年数の浅いものなら十分なの であろうか。まず一つ目の基準として、新耐震基 準以降の建物かどうかが問題となる。次に、新耐 震基準以降の建物であるとしたら、その構造設計 様式が問題となる。一般的なマンション(高さ60 m以下)では許容応力度設計と限界耐力設計に分 かれるが、その選択は業者にゆだねられている。 さらに、住宅性能評価を取得しているかどうかが 評価の基準となるであろう。 採用した構造設計法と性能評価については、新 築マンションを購入する上でも考慮に入れるべ き基準となっている。第1節 新耐震基準
昭和 56 年、建築基準法が改正され、新耐震設 計基準が6 月より施行された。それまで採用され ていた耐震規定は、大正 12 年の関東大震災の被 害調査や研究をもとに作成されたものを、以来50 有余年の間で幾度か改正したものであった。日本において、初めて耐震規定が法令に盛り込まれる 事となったのは、大正 13 年の市街地建築物法令 の改正時である。そして、現在の建築基準法が昭 和 25 年、市街地建築物法に代わり制定され、耐 震規定もそのまま建築基準法へ引き継がれるこ ととなった。 なぜ、昭和 56 年の新耐震設計基準が重要なの か。それは、動的設計法が始めて採用されたから である。それまでの耐震規定(以降、旧耐震法と 呼ぶ)では、静的設計法が採用されていた。すな わち、建築物にかかる地震力を静的な力に置き換 え、その力によって建築物の構造耐力上主要な部 分の断面に生じる応力が許容応力度以下である ことを確かめる方法にて設計していたのである。 この設計法(震度法)は、極めて硬い建物を想定 したものとなっており、世界で最初の耐震設計法 である。静的設計法は、自重・積載荷重・風圧力 等の外力には対応できる。しかし、地震力に対し ては、他の外力と違い旧耐震法で設計が困難であ った。昭和 54 年初版の「新しい耐震設計(植村 魁 編)」には、地震力と旧耐震基準の関係につい て次のように述べられている。 このように、旧耐震基準では地震に対する検討が 十分になされていなかった。 そこで、新耐震基準では動的設計法を採用する にいたった。この設計法は、構造物、地盤を動力 学的にモデル化し、振動理論を用いて地震動に対 する構造物の動的応答を求め、変位や応力が許容 値を超えないように設計するものである。すなわ ち、実際の地震時における建物の変形を考慮に入 れ、部材の性質に応じ変形限度を仮定し、ある範 囲の地震に対し、建物に与えておくべき強度をき めたのである。さらに設計において1 次設計 2 次 設計をむけ、2 段階で地震に備える設計方法とな っている。まず、1 次設計では、比較的頻度の高 い中小地震に対して、建築物にほとんど被害が生 じない事を目標にしている。次の 2 次設計では、 関東大地震級の極めてまれにしか起こらない大 地震に対しても、建築物に重大な損傷がなく崩壊 しない事が目標とされている。すなわち、新耐震 基準のより建てられた建築物では、「大地震によ り建物がある程度壊れても仕方がない。しかし、 人は殺さない程度の崩壊におさえなければなら ない。」という事である。旧耐震基準に比べ、大 地震が起きた際の対策が採られている点が、新耐 震基準以降の建築が薦められる理由である。
第2節 許容応力度等計算と限界耐力計算
建築物には、構造計算が義務付けられているも の、義務付けられていないものがある。マンショ ンはもちろん木造以外の建築物であるため、構造 計算は「2 階以上」または「延べ面積 200 ㎡超」 の建築設計に必要とされる。国土交通省の定義よ り、マンションを3 階以上と定義すると、マンシ ョンには構造計算が必要である事になる。 先ごろ、マンションにおける構造計算書偽装が 発覚した。マンションの瑕疵は 10 年間、売主に より保障されることが法により定められている (次章)が、売主(本件ではヒューザー)は保障 誰でもわかるように、地震は繰り返しの地動で あり、そのために建物に加わる慣性力が外力に 相当する。しかもこの慣性力は建物の復元力特 性に見られるその骨組みの抵抗力以上には大き くならない。重力による外力のように建物の復 元力特性とは無関係に外力が決まる場合とは大 変違う。このように、他の外力とは全く違った 地震力を終局強度型とはいえ同じ許容応力度に よって設計しようとするところに無理がある。能力を有さず、住民が住環境への不安と金銭的負 担を背負うこととなった。この時採用されていた 設計法が限界耐力計算であった。 構造計算には、許容応力度等計算、限界耐力計 算、時刻歴応答解析等大臣認定による高度な構造 計算がある。大臣認定については60m超の建築物 が対象となるため、ここでは許容応力度等計算と 限界耐力計算について考える事とする。 まず、許容応力度等計算と限界耐力計算の違い は、仕様規定に沿うかどうかということとなる。 仕様規定とは、構造物の材料や工法、寸法を具体 的に規定するものであり、細かい規定により品質 を一定以上にたもつものである。これに対し、性 能設計という考え方がある。性能設計は構造物に 要求される性能を規定するものであり、全て一様 なわけではない建築物・環境にたいして、柔軟に 対応し性能を得ることが出来るため、注目されて いる考え方である。 許容応力度等計算は、この仕様規定により計算 式とその係数が定められている。限界耐力計算に おいては、係数を決める荷重や外力を、確率や振 動性状により個々に検証する。すなわち、限界耐 力計算については、最終的に目標とする性能にむ けて、個々の状況に応じ値を決定するということ になる。 耐震偽装事件で問題となった物件は、限界耐力 計算で設計されたものであった。限界耐力計算は 地盤と建物の相互作用が考慮されるため、あまり 悪くない地盤地質であれば建物に作用する地震 動の大きさを著しく小さい値であらわす事がで きる。この事が建物内の鉄筋量を軽減させ建設コ ストを下げる事につながるため、限界耐力設計は 魅力的な構造計算手法であると考えられていた。 しかし、今回の事件ではそのことが悪用されてし まったのであった。 仕様規定により細かく法で規制される許容応 力度等計算に比べ、限界耐力計算では構造設計者 の能力・心構えにより左右される構造設計法であ る(そもそも許容応力度等計算においても数字の 改ざんを設計者が行う可能性があるため同様の ことが言えるが)。建設業界は、下請け孫請けへ の丸投げ当たり前の世界である。それは、施工だ けでなく設計においても同様である。信頼できる 構造設計者により設計されたかどうかを見分け るのは困難である。専門でない者が構造計算書を 眺めたところで、数百ページの紙の束にしか見え ない。 平面図とイメージ図をみて、新居に夢を見るこ とはいいことだと思う。しかし、一歩踏み込み建 物の本質である躯体についても目を向けるべき であろう。
第3節 住宅性能表示制度
住宅性能表示制度は、平成12 年 4 月 1 日に施 行された「住宅の品質確保の促進等に関する法 律」に基づく制度である。良質な住宅を安心して 取得できる市場を形成するためにつくられた制 度であり、新築住宅、既存住宅ともに申請により 取得することができる。 この制度は第三者期間が検査認定することに より、専門知識のない者でも住まいの性能をわか りやすく理解できるように配慮されている。結果 は等級や数値で表示される。 評価項目は下記の10 項目となる。 1.構造の安定 2.火災時の安全 3.劣化の軽減 4.維持管理への配慮 5.温熱環境 6.空気環境7.光・視環境 8.音環境 9.高齢者等への配慮 10.防犯対策 既存住宅については、上記のうち 1,2,4,6,7,9,10 について評価項目となる。 <新築住宅> <既存住宅> 認定における利点は、購入者にとって性能の比 較が容易となり、さらに契約書に評価書が添付さ れれば、評価した性能が契約内容となる点をあげ ることができる。また、万一その住宅の請負契約 または売買契約に関するトラブルが起きても「指 定住宅紛争機関」が対応してくれるという利点が ある。既存住宅についても、売買の評価や建物の 現況把握に役立つという利点がある。 第三者機関に認定された建物という評価書が つくことにより、安心を得る事ができる。先の耐 震偽装事件のように、購入後のトラブルについて 対応してくれる機関が保障されることで、住宅性 能表示制度により評価を受けた住宅は、信頼でき るのではないかと考えられる。
∼トピック―
日本の建築高層化∼
日本において超高層建築の建設が可能となっ たのは、昭和 39 年からである。経済成長の中、 都市の再開発による建物の高度制限撤廃が要望 され、さらに昭和 37 年に地震国日本においても 31m を超える建物が実現可能だという事が確認 されたことによる。それまで剛構造とばかり考え ていた高層の設計を、地震の特性をいかして柔構 造にて設計することとなった、31m以上の建設許 可が下りて翌年の昭和 40 年、高さ 147mの霞ヶ 関ビルが着工された。現在は296mの建物(横浜 ランドマークタワー)が建つ時代である。超高層 は、マンションにも採用され、住空間が200m上 空に造られる時代となった(クロスタワー大阪ベ イ)。 住宅性能評価交付状況 (平成12 年 10 月 3 日から平成 18 年 11 月) 設計住宅性能評価 一戸建て 23 万 6626 戸 共同住宅等 59 万 1808 戸(1 万 6959 棟) 戸数合計 82 万 8434 戸 建設住宅性能評価 一戸建て 17 万 1558 戸 共同住宅等 27 万 1619 戸(7961 棟) 戸数合計 44 万 3177 戸第四章 住宅の寿命
第1節 住宅の寿命
住宅には、寿命がある。それは、躯体のコンク リートの寿命、塗装の寿命、防水の寿命、または 設備の寿命様々である。前述したが、塗装や防水、 設備は修繕や更新がおおむね可能である。しかし、 躯体自身については修繕や補強によりある程度 補い引き伸ばす事はできるが、新たにすることは できない。 平成8 年建設白書によると、住宅の「平均寿命」 (過去5 年間に除去された住宅)は日本 26 年、 現存住宅の「平均年齢」は 16 年と推測されると のことである。同白書によると、アメリカでは平 均寿命44 年、平均年齢が 23 年、イギリスでは平 均寿命75 年、平均年齢が 48 年と推測されるとの 事である。イギリスの建築基準法では、「通常の 建築物は60 年以上、ロングライフ建築は 120 年 以上」と耐用年数を設定している。また、中間的 なもの30 年以上、仮設的なもの 10 年以下、短期 的な仕様 10 年以上とも法律で段階的に規定して いる(BS7543,1992)。日本の住宅の寿命の低さ が露呈する結果となっている。 建設白書においては全ての構法を平均した値 が平均寿命として示されている。では、マンショ ンのみではどうであろうか。「集合住宅の長寿命 化を目指す報告書」(国土交通省2002 年)による と、建て替え物件の着工時期は平均で築後37 年、 マンションの平均寿命は 46 年だとの事だ。マン ションは住宅の中でも高耐久のようである。 マンションの躯体で一般的なものにコンクリ ートがある。コンクリートは、骨材とセメント・ 水を混ぜ、硬化させることによりその存在をしめ すものである。コンクリートはセメントの種類、 施工方法によりその強度・耐久性を変化させる。 特にコンクリートの寿命を決めるよう要因がコ ンクリートの中性化である(コンクリートが空気 中の二酸化炭素によって中和され、アルカリ性が 低下していく現象。これにより、RC造では鉄筋 にさびが生じ内部から崩壊していく)。現在、超 高耐久性コンクリートとして耐用年数が100 年か ら500年以上に設定可能なコンクリートも現実に 使用されている(竹中工務店)。コンクリートの 長寿命化への可能性追求は十分に進んでいる。し かし、構造体が超寿命化したところで、利用者に 長く使おうという意識がなければ、超寿命も無意 味なものとなってしまう。「スクラップ&ビルト」 とならないよう、利用者の維持管理意識が大切で ある。第2節 さまざまな指標
日本において、住宅は様々な基準によりその価 値が定められている。その代表例を下に示す。 財務省『法定耐用年数』 (減価償却資産の耐用年数等に関する省令) 住宅用の木造建築22 年 鉄骨造り住宅 34 年 鉄筋コンクリート47 年 住宅金融公庫『償却期間』 耐火建築物 35 年 準耐火建築物 30 年 さらに、住宅ローンに関する減税制度でも、適用 要件として築後経過年数が挙げられている(平成 17 年度の住宅関係税制改正により、耐震性を満た す中古住宅については、築後経過年数要件が撤廃 された)。 『住宅ローン減税制度』 マンション等の耐火建築物 25 年以内 木造等 20 年以内このように、日本では耐用年数といえば経年経 過による年数がまず考えられ、維持管理の差によ る実質築年数は考慮の対象としてうすい。中古市 場の活発なアメリカでは、この実質築年数という 考え方が中心となっている。 維持管理により、個々のマンションの状態は かわる。日本においても、住宅金融公庫等貸付 機関がそのような維持管理をきちんと行って いる管理組合に対し修繕のローン優遇を行う など、実質築年数の考えは広がっている。住宅 の流通耐用年数の実態(国土交通制作研究所) によると、「マンションについては流通耐用年 数が一律ではなく、物件により建物価格の下落 率に差があり、その差は管理により決まる。」 とのことである。実際は、築年数でなく管理が 重要ということとなる。