生活支援コーディネーターの位置づけおよび養成プ ログラムに関する現状と課題
著者 飛田 和樹
雑誌名 人間関係学研究 : 社会学社会心理学人間福祉学 : 大妻女子大学人間関係学部紀要
巻 22
ページ 113‑121
発行年 2021‑02‑12
URL http://id.nii.ac.jp/1114/00006964/
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja
生活支援コーディネーターの位置づけおよび 養成プログラムに関する現状と課題
Current Status and Issues of the Position and Training Program for Living Support Coordinators
飛田 和樹 * Kazuki HIDA
<キーワード>
生活支援体制整備事業,生活支援コーディネーター,位置づけ,養成プログラム
<要 約>
本研究では,生活支援体制整備事業における生活支援コーディネーター(以下,生活支援 CO)の位置づけおよび養成プログラムについて,X県下の状況をもとに検討した。X県下の 市町村や事業委託先のWeb情報および県下から選定した5市の状況から,自治体により生活 支援COの位置づけや,生活支援COに関する情報公開状況が異なること,県も含めた養成 プログラムが重層的に機能していない可能性等が明らかとなった。それらを検討した結果,
自治体がより主体的に事業を加工する必要性とその可能性,情報公開・広報啓発に関する課題,
都道府県と市町村における重層的な養成プログラム構築に向けた示唆を得た。つまり,事業 推進にあたっては,①市町村が生活支援COを当該自治体における体制整備や地域福祉推進 のアクターとして積極的に位置づけるとともに,②事業実施主体である市町村による十分な 情報公開と多様な手法による広報啓発を行い,③市町村域では当該事業の総論から各論まで,
都道府県では事業推進に資する専門的な知識や手法,先進事例を一般化するような養成プロ グラムを実施することが必要だと考える。
*大妻女子大学 人間福祉学科 助教(実習担当)
114 大 妻 女 子 大 学
人間関係学部紀要 人間関係学研究 22 2020
1.はじめに
住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるため に,各分野の制度福祉による地域福祉との協働,
人的資源の投入が進められている。介護保険制度 による地域支援事業の枠組みからは,2015年に生 活支援体制整備事業が創設され,生活支援コー ディネーター(地域支え合い推進員)(以下,生 活支援CO)の配置が進められた。地域住民に身 近な存在である市町村が中心となって,NPO法人,
民間企業,協同組合,ボランティア,社会福祉法人,
社会福祉協議会,地縁組織,介護サービス事業所,
シルバー人材センター,老人クラブ,家政婦紹介 所,商工会,民生委員等の生活支援サービスを担 う事業主体と連携しながら,多様な日常生活課題 を支援する体制の充実・強化及び高齢者の社会参 加の推進を一体的に図って行くことを目的とする 事業である1)。これは当該事業によって生活支援 COと協議体を全国の市町村全域と日常生活圏域 に設置し,地域資源開発やネットワーク構築をす ることにより,重層的な生活支援や介護予防の取 り組みを強力に推進しようとするものである2)。 いわゆる「団塊の世代」が後期高齢者となる2025 年に向けた地域包括ケアシステムの基盤整備を目 的として,従来から進められてきた地域づくりに 対して,生活支援・介護予防という側面からの追 い風となるものである。
生活支援体制整備事業は,大きく2つの軸で展 開されている。1つは生活支援COであり,もう1 つは協議体である。生活支援COは市町村区域(第 1層)及び日常生活圏域(中学校区域等)(第2層)
に配置され,資源開発,ネットワーク構築,ニー ズと取り組みのマッチングを行い,多様な主体に よる多様な取組をコーディネートすることによっ て地域における生活支援等サービスの提供体制整 備を推進する役割を担う。協議体は,生活支援 COと多様な提供主体が参画する定期的な情報の 共有・連携強化の場として設置され,地域ニーズ や地域資源の把握,情報の見える化,企画・立案・
方針策定,生活支援等サービスの担い手養成,地 域づくりにおける意識統一等を行う場として期待
され,生活支援CO機能を補完するものとされて いる。いずれも各市町村の地域の実情に合わせて 柔軟な運用が認められており,自治体によって取 り組みは様々である。なお,本稿では特に生活支 援COに焦点を当てる。
生活支援体制整備事業を「これまでも取り組ま れてきた地域づくりの追い風」として考えてみる と,素地であるこれまでの地域づくり・地域支援 に関する先行研究は多いものの,当該事業開始
(2015年)以降の生活支援コーディネーターに主 眼を置いた研究は少ない。生活支援体制整備事業 に関する文献研究3)でも,先行研究群としては6 本の文献が提示されているだけで,「コーディネー ターのみに着目した研究というのは現段階では希 少である」こと,「①自治体の生活支援体制整備 に関する調査研究,②協議体の体制構築に関する 研究,③コーディネーター(第1層・第2層それ ぞれ)の実践に関するもの」だったと結論づけら れている。なお,当該文献研究に含まれていない 2019年度後期~2020年度の先行研究について,
国立情報学研究所CiNii articlesを用い「生活支援 コーディネーター OR 生活支援体制整備事業」を キーワードに全文検索を行った(2020.09.30現在)。
結果は3件(講演記録を除く)で,上記の結論か ら外れるものではなかった4・5・6)。
文献研究の詳細は前出7)を参照されたいが,先 行研究には例えば,横浜市西区のコーディネー ター活動記録分析による地域支援プロセスや構成 要素の検討8)や,相模原市第2層生活支援COに 対する質問紙調査による取り組み分析9),千葉県 新地域支援事業推進協議会(事務局:千葉県社会 福祉協議会)による生活支援体制整備事業実施状 況報告をもとに状況を整理したもの10)などがあ る。これらの先行研究に加えて,新規事業である がゆえの各種実態調査や,自治体によって取り組 み方が異なることによる事例集の類が散見され る。また,実践レベルでは,生活支援CO機能の 見える化という意味での事例集作成にも取り組ま れている11)。各種調査報告書によると,生活支援 CO配置については第1層も第2層も「社会福祉 協 議 会 」 へ の 業 務 委 託 が 最 も 多 い( そ れ ぞ れ
42.7%・28.5%)12)。今回研究対象としたX県の 社会福祉協議会現況報告書によれば,30市町村中 20市町社協が当該事業を受託,第1層生活支援 COは14市町社協が,第2層生活支援COも14市 町社協が配置をしている(政令指定都市除く)13)。 これは,社会福祉協議会が長年地域福祉推進に取 り組んできた実績や,地域支援のノウハウに期待 されてのことである。また,政令指定都市では第 2層である日常生活圏域の数が多くなることで,
生活支援COの確保や質の担保にも課題があると 指摘されている14)。
前述したように,地域支援事業実施要綱や各自 治体要綱等による生活支援COの役割規定,ある いは厚労省中央研修テキストや調査報告書15)等 による研修プログラムの提案は行われている。し かし,事業実施主体である市町村によって,事業 の運用,生活支援COの位置づけや活動が大きく 異なっていることにより,その養成プログラムも 異なっている現状がある。地域福祉を推進する人 材のひとりとして公的財源を投入して全国に導入 された生活支援COの位置づけやその養成プログ ラムについて整理することは,地域福祉人材の養 成や小地域福祉活動の推進に寄与すると考える。
よって本稿では,生活支援体制整備事業のうち 生活支援COに焦点を当て,X県内各市町村にお ける位置づけや養成プログラムを比較整理し,そ の共通項や相違点から今後の課題を検討する。ま た,市町村支援をすべき立場である県による生活 支援COの位置づけや養成プログラムも合わせて 概観する。それにより,都道府県と市町村の役割 遂行における課題を検討する。
2.研究方法
(1)生活支援 CO の位置づけ
生活支援体制整備事業が地域づくりのベクトル から取り組むべき事業16)であること,積極的に 地域住民や多様な主体の参加を促していくことが 重要であるという意味合いを考慮すると,様々な ツールを活用して一般市民に広く周知すべき事業 であると言える。そのため本研究では,一般市民 が自分の居住する自治体の生活支援体制整備事
業,生活支援COの情報を適切に取得できるかと いう観点から,Web検索エンジンであるGoogle を活用し「自治体名 AND (生活支援体制整備事業 OR 生活支援コーディネーター)」で検索,情報の 蒐集を試みた。各自治体の生活支援COの位置づ けについて,蒐集した情報をもとに概観する。な お,事業実施主体である市町村のWebサイト,事 業委託している場合にはその委託先Webサイトは 必ず確認し,必要に応じて関連するWebサイトを 確認した。
(2)生活支援 CO 養成プログラム
一般市民がアクセスしやすい情報を整備する必 要がある反面,その詳細な位置づけや養成プログ ラムまではWebサイトに明記されている市町村は 少ない。より具体的に比較検討するため,X県内 から取り組み状況が異なる5つの自治体を選定す る。選定した市町村において生活支援体制整備事 業に関わる機関・関係者から生活支援COに関連 する情報提供を受け,それをもとに生活支援CO の任用者,採用している養成プログラム等につい て整理する。
3.倫理的配慮
本稿では匿名性を担保するために固有名詞やイ ニシャルを用いず,県市町村名には関連のないア ルファベットを付与している。
4.結果
(1)生活支援 CO の位置づけおよび情報公開の 状況【表1】
Web上でX県内全33市町村(政令指定都市含む)
のホームページ,および第1層ないし第2層のい ずれかでも事業委託が確認できた場合には委託先 機関・団体のホームページを閲覧した(2020年9 月26日~同年10月11日)。結果,33市町村中,
市町村のホームページに事業情報等が掲載されて いたのは13市町(39.4%)であった。当該事業を 委託しているかどうかの情報が取得できなかっ た,もしくは行政直営と確認できた自治体は計9 市町であり,委託が確認できたのは24市町であっ
116 大 妻 女 子 大 学
人間関係学部紀要 人間関係学研究 22 2020
た。そのうち,委託先機関・団体のホームページ に 事 業 情 報 等 が 掲 載 さ れ て い た の は15市 町
(62.5%)であった。
事業主体である自治体による情報公開をみる と,情報の掲載が確認できた自治体でも,その情 報量についてはかなりばらつきが大きかった。例 えば,生活支援体制整備事業実施要綱や条例が参 照できるようになっているだけで,具体的な取組 内容の記述はないもの。生活支援CO設置規程に 加えて「生活支援コーディネーターと協議体のて びき」として活動者向けの参考資料を公開してい るもの。「イラストで見る生活支援体制整備事業」
として,一般向けに分かりやすさを意図した資料 を公開しているもの。行政広報課のYouTubeに生 活支援COのインタビューや活動紹介を含む動画 を公開しているものなど,多様であった。Web上 の情報公開に積極的な自治体については,必ずし も自治体規模が大きければ積極的というものでは なかったが,自治体規模の小さい町村部において Web上の情報が確認できないところが多かった。
また,委託先機関・団体による情報公開をみる と,統一された情報掲載はなく,委託先による情 報量のばらつきが多かった。例えば,日常生活圏 域が複数ある自治体において,第2層生活支援 COを地域包括支援センター等に委託しておりそ の運営主体が異なる場合,運営主体である法人,
あるいは運営施設ごとの判断によって情報が掲載 されていた。内容は,生活支援COの説明,活動 内容の紹介,地域資源の情報等が主である。広報 の方法も,委託先機関・団体のWebサイト,広報 紙のPDFデータ,Twitter,Facebook,ブログと様々 であった。一部のWebサイトでは一方的な情報発 信だけではなく,地域住民に対して地域資源の情 報投稿を呼びかけるもの,他自治体の生活支援
COに情報交換を持ちかけるものもあった。
各市町村で公開されている情報における生活支 援COの位置づけをみると,規程や要綱レベルで は,①厚生労働省の地域支援事業実施要綱による 分類に準じているもの,②それを解釈して自治体 独自の表現で分類を設定しているものがあった。
また,地域住民向けの情報という観点で見ると,
①規程等に準じた大まかな役割表現に留めている もの,②より具体的な活動内容を例示しているも のがあった。以下,一部を紹介する。
規程や要綱,委託事業としての仕様書等をみる と,例えば,A町では,生活支援COの業務として,
(1)地域資源開発に関すること,(2)ネットワー ク構築に関すること,(3)ニーズと取組のマッチ ングに関することの3点を規定している。これは 前述した地域支援事業実施要綱17)に準じた内容 である。
一方,B市では,(1)生活支援に係る地域資源 及び地域ニーズの把握に関すること,(2)地域に 不足する生活支援等サービスの創出に関するこ と,(3)生活支援等サービスの担い手の養成に関 すること,(4)生活支援等サービスの担い手が活 動する場の確保に関すること,(5)事業主体間の 情報共有に関すること,(6)生活支援等サービス 提供主体間の連携の体制づくりに関すること,(7)
地域の支援ニーズと生活支援等サービス提供主体 の活動の照合に関すること,と7つに分類している。
さらに,C市では,(1)対象エリアにおける社 会資源(住民の交流,活動場所の状況)の把握,(2)
生活支援や閉じこもり予防等を必要とする対象者 の把握・支援,(3)対象者(家族含む)の生活状況・
生活支援ニーズ等の把握・支援,(4)対象者(家 族含む)と地域の関係者等による支援・サービス のマッチング,(5)1から4を実践するために必
有 確認不可
市町村Webサイトでの情報掲載 13(39.4%) 20(60.6%)
委託先Webサイトでの情報掲載※ 15(62.5%) 9(37.5%)
※Web上の情報で事業委託か否かが確認できなかった9市町村を除く
【表1】生活支援体制整備事業に係るWebサイトでの情報掲載状況
要な地域の関係者との関係づくり,(6)地域の関 係者等との協働による生活支援サービスの検討を 行い可能な場合は実践を試みる,(7)1から6の 実践で得た経験を活かした行政が実施する地域診 断・地域分析等への協力,という7つに分類して いる。B市との比較でみると,C市は「資源およ びニーズの把握」をより細分化し,地域関係者と の関係づくりにも言及,「閉じこもり予防」を明 記する等,より具体的な役割規定をしていること がわかる。
これら規定の内容をそのまま地域住民向けとし てWeb上に掲載している自治体もあれば,D市で は「域支え合い推進員とも呼ばれている生活支援 コーディネーターは,高齢者が日常生活を送るう えで『あったらいいな』と思うことや,『どんな ことなら出来るかな』などを地域住民や高齢者の 専門機関である地域包括支援センターと一緒にア イデアを出しあいながら,一つずつ地域の支え合 いを形にしていく役割があります」とより平易な 表現に工夫している自治体もある。
なお,X県のWebサイトでも生活支援COの記 載がある。X県では,地域において課題やニーズ を発見し,受け止め,地域資源(サービス等の情報・
人・場所)をつなぎ,具体的な解決へ導くことが できる人材を「地域福祉コーディネーター」とし て位置付け,2003年以降その養成に取り組んでい る。県Webサイトではこの地域福祉コーディネー ターになりうる人材を「専門人材」と「地域福祉 を支える人材(地域キーパーソン)」に区分し,「専 門人材」に「生活支援コーディネーター(主に第 1層)」,「地域福祉を支える人材」に「生活支援コー ディネーター(主に第2層)」が類型されている。
(2)生活支援 CO の任用者,養成プログラムの 比較【表2】
X県内市町村から,自治体規模や前項で得た情報 を踏まえ,事業運用状況の異なる自治体を5か所選 定し情報を蒐集した。以下,E~I市とする。あわ せて,X県による生活支援コーディネーターの位 置づけと主な養成プログラムについても記述する。
E市は政令指定都市であり,複数の行政区,そ
の中に複数の日常生活圏域を持つ。第1層生活支 援COを各区の社会福祉協議会に,第2層生活支 援COを各圏域の地域包括支援センター等に委託 配置している。市域,区域それぞれで研修を開催 しており,独自の養成に取り組んでいることがわ かる。
F市も政令指定都市であるが,A市よりは規模 が小さい。第1層生活支援COは行政直営,第2 層生活支援COを市社会福祉協議会に委託配置し ている。地区担当業務やコミュニティソーシャル ワーカーを兼務している常勤職員がほとんどだ が,F市では市社協が配置している地区担当職員 の所管地域と日常生活圏域に差異がある。そのた め,その差異分は非常勤職員を雇用して生活支援 COに充てている。養成プログラムは主にその非 常勤職員を対象に内部研修として行われている。
G市はF市と同じく,第1層生活支援COは行 政直営,第2層生活支援COを市社会福祉協議会 に委託配置している。後述するX県主催(X県社 協委託)研修への参加が推奨されており,自治体 独自の研修は行われていない。
H市では,第1層生活支援COを社会福祉協議 会に委託配置し,第2層生活支援COは住民型で(協 議体の設置を先行し,協議の過程で地域住民から 第2層生活支援COを発掘・選出する)取り組み を進めている。協議体形成過程や協議体の運用に あたって,地域住民向けの勉強会が行われている。
I市は第1層生活支援COが行政直営,第2層 については地域住民へ委託されている。研修につ いては市から市社協へ委託。I市でも協議体設置 が念頭に置かれており,研修内容は先行している 協議体構成員による事例報告である。
X県では前述したとおり,地域福祉コーディネー ターになりうる人材のひとりとして生活支援CO を位置づけている。県内の生活支援CO対象研修 として,初級研修から現任研修・フォローアップ 研修を開催しているほか,フォローアップ研修の 代替として複数市町村へのアドバイザー派遣事業 も行われている。なお,今回は生活支援COが専 任か兼任か,外部有識者が事業運営に関与してい るかといった点までは言及していない。
118 大 妻 女 子 大 学
人間関係学部紀要 人間関係学研究 22 2020
生活支援 CO 任用者(行政直営を除く) 主な養成プログラム
E 市
【第1層】
社会福祉協議会
【第2層】
地域包括支援 センター等
【第1層】
区社会福祉協議会職員から,当該 事業担当者を第1層生活支援コー ディネーターとする。
【第2層】
委託されている地域包括支援セン ター等において,委託先法人が雇 用。(資格・経験等の要件なし)
A.市域研修
対象:第2層および第1層,行政関係者
内容:体制整備事業推進に係る介護予防の考え方や事例検 討
B.区域研修(状況は行政区による)
対象:第2層および地域包括支援センターや社会福祉協議 会,行政等関係者
内容:区域での体制整備事業推進に係る職種間連携や個と 地域の一体的な支援について等
C.市域研修(新任向け)
対象:新任第2層
内容:体制整備事業の概要,体制整備事業のてびき解説,
先輩職員からの実践紹介等
F 市
【第1層】
行政
【第2層】
社会福祉協議会
【第2層】
市内各地区に配置している市社協 職員(地区担当職員)が地区担当 業務およびコミュニティソーシャ ルワーカーと兼務。
上記地区と日常生活圏域の差分に ついては,非常勤職員を雇用。
A.委託法人内部研修 対象:主に非常勤第2層
内容:他都市の視察,地域への働きかけ方,他都市の実践 報告,統計手法等
G 市
【第1層】
行政
【第2層】
社会福祉協議会
【第2層】
市内各地区を担当している市社協 職員(地区担当職員)が地区担当 業務(地区社協や地区ボランティ アセンターの支援等)と兼務。
A.県主催(県社協委託)研修への参加
※下記X県研修参照
H 市
【第1層】
社会福祉協議会
【第2層】
地域住民
(協議体から選出)
【第1層】
市社協職員が兼務。特に本事業に ついては「生活支援体制整備事業 プロジェクトチーム」(行政,市内 包括,市社協で構成)が市内各地 区を対象に勉強会を開催し,第2 層協議体設置を進めた。
【第2層】
第2層協議体設置後,協議の過程 で選出していく。
A.協議体立ち上げに向けた体制整備事業勉強会 対象:地区社協構成員や民生委員等の地域福祉活動の担い
手が中心
内容:体制整備事業に関する解説,先行地区の事例紹介 B.協議体運営に係る合同勉強会や視察研修
対象:協議体構成員である地域住民
内容:体制整備事業について類似する取り組み手法で先行 している都市の視察,地区同士の意見交換会
I 市
【第1層】
行政
【第2層】
地域住民
【第2層】
地域福祉活動の担い手である地域 住民。
A.体制整備事業推進に係る研修会 対象:地域住民等
内容:協議体構成員による実践報告
X 県
地域福祉コーディネーター人材と して,「専門人材」に「生活支援コー ディネーター(主に第1層)」,「地 域福祉を支える人材」に「生活支 援コーディネーター(主に第2層)」
を位置づけ。
A.生活支援コーディネーター等養成研修(初級)
対象:経験2年未満の第2層CO,配置予定者,協議体構成 員,行政職員等
内容:体制整備事業に関する解説,事例報告,生活支援 コーディネーターに求められる役割(アセスメント や資源開発等)に関する講義と演習
B.生活支援コーディネーターフォローアップ研修 (現任研修)
対象:経験2年以上のCOまたは行政職員や協議体構成員 内容:現任研修として,実践事例から学ぶコース,ファシ
リテーションコース,地域アセスメントコースの3 種。少人数課題検討型研修として,事例検討ベース の研修。
【表2】X県および県下5市の生活支援コーディネーター任用者と主な養成プログラム
5.考察
(1)生活支援 CO の位置づけおよび広報啓発に 関する課題
今回の調査によって,①自治体により生活支援 COの位置づけが異なること,②生活支援COに 関する情報公開状況が異なることが確認できた。
当該情報をもとに,その2点について課題を検討 する。
生活支援COの位置づけが異なるのは,当該地 域の地域性,それまでの地域福祉の実践の累積,
介護保険制度地域支援事業や地域づくりに関する 自治体の方針などが影響するものであり,自治体 の「加工の自由」18)が発揮できる事業ならではと もいえる。生活支援体制整備事業は,給付行政で ある介護予防給付に関連する条件整備行政とし て,地域福祉との協働を求めるものである。もち ろん,介護保険制度による基本的な枠組みはある ものの,地域福祉の状況,地域の状況が異なれば,
生活支援COの担うべき具体的な役割が変化する のも当然である。よって,今回確認できた位置づ けから,どの市町村が優れているといった評価が 一概にできるものではない。一方で,生活支援 COの役割規定が厚生労働省の地域支援事業実施 要綱そのままに準じているものも散見され,これ については一考の余地があると考える。国が示し ている大枠を踏襲するだけでは十分とは言い難 く,いかに当該事業を活用して,生活支援体制の 整備や地域福祉との協働推進につなげていくかを 検討することが必要である。生活支援体制整備事 業による生活支援COのはたらきは,国の政策を 活用した市町村による条件整備事業といえる。そ の開発にあたっては,国の政策を活用しつつ,市 町村が独自にそれを加工し,市町村行政自身が開 発の主体となることでマネジメントを進める必要 がある19)。
生活支援COに関する要綱やてびき,取り組み 等,情報公開状況も多様であった。これについて は,位置づけ同様に地域性があって当然である面 と,情報量や広報手法の不十分さがある面を考え たい。地域性によって左右されるという点では,
例えば当該自治体の人口動態や企業所在数の多 寡,特に広報を強化したいターゲット層等がある。
高齢化率が高く昔ながらの広報媒体が好まれる地 域では掲示板や回覧版,企業が多数所在する地域 ではWeb媒体やSNS,新たな担い手を探すために チラシを全戸配布する等,その意図に応じて手法 は様々である。他方,情報量や広報手法の不十分 さも指摘できる。例えば,今回の調査では33市 町村中,市町村のホームページで事業情報等が確 認できなかったのは20市町村(60.6%)にのぼる。
小地域を対象とした資源開発中心の事業であるた め広く周知はしなくてよいという解釈,あるいは 事業委託をしている法人・施設に任せているとい う判断もあるかもしれないが,事業実施主体とし て市町村による一定の情報公開は必要であろう。
小地域を中心とした取り組みとはいえ,第1層域 でのWebやSNSの活用によって新たな担い手が 発掘されたりニーズがサービスとマッチングされ ることは十分にあり得る。仮に委託先に任せると しても,公開する情報についてその目的や指針を 共通認識として当該自治体全体での事業推進を進 めるために,一定の基準を設定することが効果的 であると考えられる。
(2)生活支援 CO の養成プログラムに関する課題 X県下5市の生活支援CO委託状況と任用者,
およびX県も含めた養成プログラムの実施状況に ついて概観した。生活支援COの位置づけ同様に,
自治体によって委託するか否か,生活支援COを 誰が担うかといった運用状況は異なる。結果をも とに,本稿では養成プログラムに着目する。
X県が生活支援CO初級研修,現任研修・フォ ローアップ研修を段階的に計画しているものの,
その活用状況は市町村ごとに様々である。G市の ように,県による研修参加を推奨している自治体 もあり,今回取り上げた5市のほかにもその研修 参加を生活支援COの要件としている自治体も あった。一方で,県による研修では自治体の方針 や意図とそぐわず,独自研修を企画実施している 自治体もあった。国の政策による統一事業の場合,
総論的で一般化できる内容の研修を都道府県で,
120 大 妻 女 子 大 学
人間関係学部紀要 人間関係学研究 22 2020
より地域性が反映される各論的な研修を市町村で 計画し,重層的な養成プログラムが組まれる必要 がある。しかし,当該事業については大きな軸で ある生活支援COの位置づけや運用ですら市町村 ごとの違いが大きく,結果「県の研修では本市の 方針にそぐわない」といった判断がされるものと 考えられる。加えて,生活支援COや協議体につ いて「国,自治体,区単位で共通理解が不足して」
いるという指摘20)もある。だとすれば,都道府 県での当該事業に関する総論的な研修はさてお き,市町村域で総論から各論まで,都道府県では 事業推進に資する専門的な知識や手法,先進事例 を一般化するような研修が必要であろう。例えば,
X県がフォローアップ研修として実施しているよ うな地域アセスメントやファシリテーション,地 域福祉援助に関する研修が有用だと考える。また,
当該事業は地域性によって多様な運用がされてい るものの,生活支援COの配置が行政直営か事業 委託か,専門職任用か地域住民任用か,協議体設 置が常設か否か,といった類型は可能である。そ ういったタイプ別の先進事例による解説なども,
より広域を把握できる都道府県による研修として は有用であろう。さらに,X県でフォローアップ 研修の代替として実施されている市町村へのアド バイザー派遣事業も,都道府県による市町村支援 の条件整備プログラムとして効果的であると考え られる。そのうえで,地域性に左右される内容,
具体的にまちのことを取り上げて当該自治体内の 専門職や住民参加を多くしたほうが効果的な内 容,身近な圏域で受講したほうがより「我が事」
になる内容については,市町村や事業委託先の法 人で計画することが望ましい。
6.おわりに
本研究では,生活支援体制整備事業における生 活支援COについて,X県下各市町村のWeb情報 および選定した5市の状況をもとに,その位置づ けや情報公開の状況,任用者や養成プログラムに 関する検討を行った。結果,自治体がより主体的 に事業を加工する必要性とその可能性,情報公開・
広報啓発に関する課題,都道府県と市町村におけ
る重層的な養成プログラム構築に向けた示唆を得 た。一方で,あくまでX県下におけるWeb情報 および5市の状況によるものであり,事業運営の 多様性からみても容易に一般化できるものではな い。
今回着目した養成プログラムでいえば,市町村 における生活支援COの位置づけと養成プログラ ムの連動や,より重層的な養成プログラムの検討 に向けて,質的・量的研究による実態調査,対象 に合わせた効果的な養成プログラムの検討が求め られる。養成については自治体の予算規模に左右 される可能性も考えられるため,複数自治体の協 働についても検討が必要であると考える。そのほ か,生活支援COの配置によって資源開発や体制 整備が推進されているかどうか,地域福祉計画や 介護保険事業計画等の計画による事業マネジメン ト,従来地域づくりに取り組んできた社協との関 連・協働等,職種導入期である生活支援COに着 目した研究は社会的ニーズがある21)。高齢者が住 み慣れた地域で自分らしく住み続ける一助となる 生活支援COについて,今後も研究を進めたい。
【引用文献】
1 ) 厚生労働省(2018).地域支援事業実施要綱
(最終改正 平成30年5月10日老発0510第 3号通知).
2 ) 厚生労働省(2015).平成26年度生活支援コー ディネーター(地域支え合い推進員)に係 る中央研修テキスト.
3 ) 黒宮亜希子(2020).生活支援コーディネー ター(地域支え合い推進員)に関する文献 研究,吉備国際大学研究紀要(人文・社会 科学系),30,1-7.
4 ) 山村靖彦(2020).今日の地域福祉における 生活支援コーディネーターの可能性―「地 域共生社会」の活路として,福祉社会科学(大 分 大 学 大 学 院 福 祉 社 会 科 学 研 究 科 紀 要 ),
12,29-41.
5 ) 松岡洋子(2020).デンマーク&世界の地域 居住―エイジング・イン・プレイス(134)
生活支援体制整備事業は足を使った地域ア セスメントから(佐賀県嬉野市),文化連情 報,509,66-70.
6 ) 佐藤朋紘(2019).札幌市白石区における生 活支援体制整備事業の取り組みについて(地 域福祉実践シリーズ札幌市の実践),コミュ ニティソーシャルワーク(日本地域福祉研 究所),24,70-76.
7 ) 前掲3
8 ) 榊原美樹(2018).地域支援のプロセスと構 成要素―生活支援コーディネーターの活 動記録の分析から,明治学院大学社会学・
社会福祉学研究,150,1-20.
9 ) 隅河内司(2019).生活支援コーディネーター の現状と課題―相模原市社会福祉協議会 の取り組みから,田園調布学園大学紀要,
13,81-99.
10 )山下興一郎(2019).生活支援体制整備事業 における地域福祉の推進に関する一考察,
総 合 福 祉 研 究( 淑 徳 大 学 紀 要 ),23,129- 141.
11 )社会福祉法人横浜市社会福祉協議会(2017).
第2層生活支援コーディネーター活動事例 集.
12 )株 式 会 社NTTデ ー タ 経 営 研 究 所(2019).
介護予防・日常生活支援総合事業及び生活 支援体制整備事業の実施状況に関する調査 研究事業報告書,平成30年度老人保健事業 推進費等補助金老人保健健康増進等事業.
13 )社会福祉法人X県社会福祉協議会(2020).
令和元年度市町村社協活動現況報告書.
14 )公益社団法人さわやか福祉財団(2019).政 令指定都市における生活支援体制整備の現 状とあり方に関する調査・提言書.
15 )株式会社日本総合研究所(2018).生活支援 コーディネーター・協議体の効果的な活動 のための研修プログラムの開発に関する調 査研究事業報告書,平成29年度老人保健事 業推進費等補助金老人保健健康増進等事業.
16 )前掲15 17 )前掲1
18 )平野隆之(2020).地域福祉マネジメント
―地域福祉と包括的支援体制,初版,株 式会社有斐閣,12.
19 )前掲18
20 )永田志津子・林美枝子(2019).協議体構成 員の特性からみた生活支援体制整備事業の 現状と課題,札幌大谷大学・札幌大谷大学 短期大学部紀要,49,43-54.
21 )前掲3