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「 走れメロス」の語 りに着 目した読みの交流

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(1)

「 走れメロス」の語 りに着 目した読みの交流

松 本 修 0 は じめに

本稿 の 目的は、『文学 の読み とその交流 のナ ラ トロジー』I )において提 出 した ( 読みの 交流)活動 を中心 とした話 し合い学習 とい うものの具体的様相 を描 き出そ うとい うところ にあ る。 「 走れ メロス」の ( 語 り) に着 目した学習課題 に基づ く学習過程の中か ら、ある グループの話 し合いプ ロ トコル を とりあげ、質的三層分析一 三とメタ認知的 レベルでの言及 の分析 とによって、読みの交流が どの よ うに達成 されてい るかについて検討す る。

ここで扱 うグルー プの話 し合 いデー タは、『文学の読み とその交流 のナ ラ トロジー』 に おいて も一部用いてい るものであるが、あま りに も典型的に読みの交流 を達成 してい るよ うに見えるせ いで、これ まで論文化 をため らってきた とい う経緯 を持 っている。ここでは、

学習のデザイ ンか ら分析 までを一つのま とま りを持 った形で述べてい くために、前著や既 発表論文 と重複 した記述 を含 ま ざるを得ないが、逆に言 えば本論 は一連 の研究のエ ッセ ン スをま とめた もの とも言 える。

1 学習のデザイ ン

松本 ( 2006) に述べ た よ うに、 「 走れ メロス 」 は、いわゆる描 出表現お よびそれ に近い 表現 を多 く含 んでお り、ナ ラ トロジーの観点か ら興味深 いテ クス トである。 こ うしたテ ク ス トの場合、作中人物 に寄 り添 う読み手 と語 り手に寄 り添 う読み手 との間に解釈の違いが 生 まれやす く、 しか もその根拠 が ( 語 り) に関連づ けて説明 しやす い。 ( 語 り) を手がか

りに読みの交流 を中核 においた学習 をデザイ ン しやすい学習材 である。

調査 にあたっては、二カ所 の描 出表現 に着 目し、解釈上の課題 とす る とともに、話 し合 いのテーマ とした。 この調査の授業は、「 走れ メロス」 ( 学校図書 『中学校国語 2』平成 1 2 年度版) を学習材 として 、2002 年 2 月 22 日か ら 3 月 2 日にかけて 5 時間扱 いで上越教育 大学附属 中学校 2年生 を対象 として行 われた。 4人 グループによる話 し合いのデー タは、

カセ ッ トテープによる録音デー タを トランス クライブ した ものである0

学習は、 A 「 走れ ! メロス。」 とい う中盤 の部分テ クス トと、 B 「 塔楼 は、夕 日を受 けて き らき ら光 ってい る。」 とい う終盤 の部分テ クス トについて、それぞれ 「 誰の声が聞 こえるか」 とい う学習課題 に答 え、それ をめ ぐって話 し合いが行 われ てい る。

指導過程 は次の よ うな ものであった。

第 1 次 テクス トとの出会い。読みの形成‑の手がかりをつかむ。

第 1 時 ・授業者による朗読 学習者は目で本文を追 う。

・「 この物語を私はこう読んだ」という題で文章を書く。

主題よりは自由な構えで、物語の全体的な感想を引き出す

・「 何でもいいから気づいたこと」を書く。

ここでは、疑問点や気づいた点、気になる点などを自由に書かせる。本文の箇所

(2)

を明示 させて書かせ る

表現への着 目、内容への着 目など、それぞれの着 目に応 じて様 々なことが らが指 摘 されると思 うので、それ らを回収後分類整理す る

第 2 時 ・気づいたことの うち、語 りに関す る要素 について整理 したプリン トを配布、指摘 さ れたことが らを概観す る 。 語 りの基本構造の確認。

・描 出表現 を指摘 したプ リン トを配布、その知覚の基点 を記入 させ る

なぜそ う言 えるか とい う根拠 を、テクス トの該当の部分 、別の部分か ら抜 き出 させ、

それがなぜ根拠 となるかを説明 させ る

第 2 次 描出表現の部分 に関す る読みを交流す る

第 3 時 ・グループを作 り、グループ内で互いの考 えを発表す る

・他者の考 え方 について、感 じたこと、疑問な どを提示 し、話 し合いを行 う

・個人で、初発の感想 と描 出表現 についての読み方 との関連性 を考 える 。

第 4 時 ・グループを作 り、グループ内で初発の感想 を発表す る

描 出表現の読みが初発の感 想 との関連 において、 どう考 えられるか、意見 を交換す る。

・討議 をふ まえ、自分 に欠けていた視点などについてまとめ させ る 。

第 3 次 主題 を検討 し、 自分 な りの解釈 をまとめる。

第 5 時 ・「 私は 「 走れメロス」 をこう読んだ」 とい う題で再び文章 をまとめる

可能 な限 り、根拠 となる表現 とその解釈、影響 を受 けた他の学習者の意見 などに言 及 させ る

学習 に用いた学習 シー トは以下 の ような ものである

学習 シー ト① B4 縦書 き横置 き 1 この物 語 を私 は こ う読 ん だ○

2 「 話 邑

気づ いたこと

し合い」マニュアル

・最初の発表者は西南の人、以下右回 り ○ 最初の発表者が司会 をす る○ (まず録音機 をスター トさせ る○)

・学習 シー トの記述 をもとに、わか りやす く自分の考 えを説明す るo

・聞いている人は、その発表者の考 えを聞 きなが ら、疑問や感想 な どをポス ト ■ イツ トに書 き、

んでお くつポス トイ ッ トの一番上 には 「 石川‑井上君」 とい うように、誰の誰への意見か かるように してお く ○

・発表が終 わった ら、聞いていた人は右隣か ら順 に、ポス トイッ トの記述 をもとに疑問や感禿 な どを述べ る○発表者は順 に答 え られる範囲で答 えてい く

質問な どが終わった ら、その はポス トイッ トを発表者の学習 シー トに貼 る

・全体の発表が一巡 した ら、問題 になった ところや、意見が食い違 つ‑ た ところな どにらいて、

(3)

学習 シー ト② B4 縦書 き横置 き

・は じま りの三文 は、ふ つ うな ら もうち ょっ と後 に くるべ き文 だ と思 ったO最初 に 「メロス は 激怒 した。」 と書 いてあ って もなんで ?となる 。 だけ ど、それが きっ とね らいだ と思 う 。( K)

・同 じセ リフ を二 回繰 り返 して書 いて あ る こ とが二 度 三度 あ った。 ああす る と強調 で きる 一 行 に短 い文 がい くつ も入 ってい る

だか らけっ こ う読 みやす い 。 ( 0)

・考 えてい る こ とや心 の 中で思 ってい る様子 が多 い。 (F)

・状況 な どの説明が、読 み手 にか た りか けてい る ような書 き方 を してい る。 (Ⅰ)

・誰 の考 え ( 言 葉 )か分 か らない文 が あ る

私 はそ れ を、 メロスの心 の 中 ( 考 えてい るこ とで はない) だ と思 うのですが、 ただの とが きか も しれ ませ ん。 ( Y)

・人物 の気持 ちには 「 」 がつか ない 。( T)

・メロスが心 の 中で思 って い る こ とが 、 えん えん と続 きっぱ な しの ペ ー ジが あ る 。 ( 1 28 ‑1 31 ) ( N)

・メロスが心 の 中で 自分 を言 い きかせ てい る ところが多 い 。 (K )

・セ リフで はない所 もセ リフの よ うに気持 ちが 入 ってい る所 が あ った。( 例 p1 31 の一行 ) (IT)

2 「語 り 」 の基本構 造 冒頭部

メロスは激怒 した。必ず、かの邪知暴虐の王を除かなければならぬと決意 した。メロスには政治が分からぬ。メロス は、村の牧人であるO笛を吹 き、羊 と遊んで暮 らしてきた。けれども邪悪に対 しては、人一倍に敏感であった。今日未

まち

明メロスは村を出発 し、野を越え山越え、十里離れたこのシラクスの市 にやって来た。メロスには父も、母 もない。女 房 もない。十六の、内気な妹 と二人暮らしだoこの妹は、村のあるi )ちぎな‑牧人を、近々、花婿 として迎えることに まち なっていた。結婚式 も間近なのである。メロスは、そオ 故 、花嫁の衣装やら祝宴のごちそうやらを買いに、はるばる市 にやって来たのだ。まず、その品々を買い集め

それから都の大路をぶらぶら歩いた。メロスには竹馬の友があった。

まち いし く

tl )ヌンテ ィウスである。今はこのシラクスの市 で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつ もりなのだ。

久 しく会わなかったのだから、訪ねてい くのが楽 しみであるG歩いているうちにメロスは、町の様子をあや しく思った

まち

ひっそ りしている。もう既に日も落ちて、町の暗いのは当た り前だが、けれども、なんだか、夜のせいばか りではなく、市 全体が「 ̲やけに輯 折 のんきなメロスも、だんだん不安になってきたっ道で会った若い衆を捕まえて、何かあったの か、二年前にこの市 に来た時は、夜で も皆が歌を歌って、町はにぎやかであったはずだが、と質問 した。若い衆は、

7̲/うキ

首を振 って答えなかった。 しばらく歩いて老爺に会い、今度はもっと、語勢を強 くして質問 した。老爺は答えなかっ

‑‑"

i た。メロスは両手で老爺の体を揺すぶって質問を重ねた。老爺は、辺 りをはばかる低声で、わずか答えた。

語 り手 作 中人物 知覚 ・感 覚

説 明 ・描 写

学習 シー ト③ B4 縦書 き横置 き 1 誰の声が聞こえるか。

A p131・1 走 れ ! メロス。

B p132・3 塔楼 は、夕陽 を受 けて きらきら光 ってい る

(4)

誰 の 声 か

E 根拠 となる表現 ( ページ ・行 を明示) 根拠の説明

2 疑 問 ・ 感 じ た こと ( 他の人か ら) ( ポス トイッ トを貼 る) )

学習 シー ト④ B4 縦書 き横置 き 1 他の人の意見 に対 して考 えたこと

2 3 か ら か ら か ら

「この物語 を私 はこう読んだ 」 との関連

疑問 .感 じたこと ( 他の人か ら)

l l

l l

学習シー ト⑤ B4 縦書 き横置 き

「 走れメロス 」 を私 はこう読 んだ

・自分の. 読み を支えている本文 中の表現 をきちんと引用 して説明す ること

・自分の読み に影響 した他の人の意見 を具体的にあげて自分が考 えた過程 を きちん と説明すること

この ように、学習過程 は、描出表現 を具体的にとりあげ、その部分テクス トをめ ぐる解 釈 とその根拠、作品全体の読み とその根拠 をめ ぐって、互いの考 えを交流 し、その違いに ついて 自由に検討するとい う形でデザ インされている

ーこうした語 りに着 目 した学習課題 によって、 どのような読みの交流が行 われ̲ るか、話 し合いの成立 と読みの交流の成立 とい う二つの観点か ら検討す る。

2 話 し合いの成立

ここでは、質的三層分析 によって、話 し合

充実

し た も の と し て

成立 しているか どう

か を検討す る

質的三層分析 とは次の ような ものである

。 ●j

(5)

状 況 の文脈 ( s i t ua t i ona トc o nt e xt ,s i t ua t i on) を導 入せず に、その本来の文脈 ( t e xt ua l ‑ c ont e xt , c o‑ t e xt )の範 囲内で、形式 的 な特徴 i会話上 の機能 ・意味 的 な内容 の三つの側 面 に着 目

して、発 話 プロ トコル をそれぞれの角度 か ら分析 し、それ らの相互 の整 合性 を検討す る こ とで、話 し合 いの 間主観性 を保 った分析 ・解釈 を行 う方法。

三つ の側 面 は一つ の発話 に重 なった形 で現 れ るこ とも多いが、それ を手続 き上分 けて分 析 し、三つ の側 面が矛盾 を きた さなけれ ば、充実 した話 し合 いが行 われてい る と判 断す る わけであ る

したが って学習 においては、評価の方法 と して も用 い るこ とがで きる

なお、 ここで言 う 「 状 況 の文脈 」 は、学習課題 にあ る ような、学習者 の解釈 において駆 動 され る状 況の文脈 で はな く、話 し合 いその ものの状 況 の文脈 、 と りわけ学習者 や授 業者 にか か わ る人 間関係 や学習集 団の特性 、授 業 の周辺 的 な状 況 な どをさ してい る 。 本来 の

文脈 」 は話 し合 いその もの をさ してい る

分析 には、 プ ロソデ ィー ( 超分節 的 な音声 的要 素 、声 の表情 ) な どの付 随的要素 も必 要 な情報 であ り、 したが って、 プ ロ トコル作成 にあ た って は、 その よ うな要素 の反映 で きる書式 を用 い る必 要が あ る

ここで用 いてい る書式 は次 の ような ものであ る

記述 の方法

・発話の単位 は、間 と内容 ( 接遇表現 +叙述表現) によって認定す る

内容 的 に一連 の発話 は 連続 して記述す る

・発話 には発話番号 を付す。

・発話者 をアル フ ァベ ッ トで示す

・漢字 ・平仮名 ・片仮名交 じりで表記す る 。

記号

// 発話 の重 な り。直後 の//の後 の発話 が重 なっている。

途切 れの ない発話 のつ なが り。直後の ‑の後の発話がつ なが ってい る

( ) 聞 き取 り不能。 中に記述のある場 合 は、聞 き取 りが不完全で確定で きない内容 。 (3) 3 秒 の沈黙。

( .) 「、 」 で表記 で きない ご く短 い沈黙。

直前 の音がの びている。

直前 の音 が不完全 なまま途切 れてい る。

、 発話 中の短 い間。 プロ ソデ ィー上 の何 らかの区切 りの表示 を伴 う

? 語尾 の上昇。

。 陳述 の区切 り

語尾の下降 な どの プロ ソデ ィー上 の区切 りの表示 を伴 う 。

下線 部の音 の強調 ( 音 の大 きさ)。

o o 間の音 が小 さい。

(( )) 注記

以上 の記述方法 は以下 を参照 して定 めた。

P ・ザ トラウスキー F日本語 の談話 の構造分析 J くろ しお出版 1 993 西 阪 仰 r 相互行為分析 とい う視点 j 金子書房 1 997

好 井裕 明 ・山田富秋 ・西坂 仰 r 会話分析へ の招待 J 世界思想社 1 999

野村真木夫 F日本語 のテ クス トー関係 ・効果 ・様 相 J ひつ じ書房 20 00

(6)

この書式 に従 って、第 3時 ・第 4時 における 2度 の話 し合い を録音 したテープか ら トラ ンス クライブ し、 プロ トコルを作成 した。 なお、 この グループ全員 はそろわなか ったが、

単元終了後 にインタビュー を実施 し、それ も トランス クライブ し、プロ トコル を作成 した。

メ ンバ ーは以下の ようになってい る

男子 1:AH 、女子 1:TK 、男子 2 :FT 、男子 3 :YS ( 授 業者 : MO) 2. 1 形式的 な特徴

第 1の話 し合 いは、 2 カ所 の描 出表現 ( 「 走れ ! メロス 。 」、「 塔楼 は、夕陽 を受 けて き らきら光 っている 。 」 ) について、個 々人が考 えた知 覚の基点 ( 誰 の声 か) を書 き込 んだ学 習 シー トに基づいて、根拠 も含めてそれぞれの考 えを述べ、他者の考 え方 について、感 じ た こと、疑問、な どを提 示 し、や りと りを行 った ものであ る。

この話 し合いでは、当然の こととして、 4 人の グループの メ ンバ ーが交代 に各 自の考 え を発表す ることか ら始 まるので、司会の指示 によ り交代 で述べ る組織立 っていて フォーマ ルな形 にな りやすい。実際 その ように進行 している。冒頭 は次 の ようになっている

1 AH はい、え ::、 じゃあ。

2 FT YSくんから

3 AH はい じゃあ ぼ く休んでいたので、はい、はい、司会だけということになって しま うんですけど。はい、 じゃあ右隣というと、はい。便宜的にFT 君の方を向 くとやっくんが右 隣なので、YS 君、どうぞ。

4 YS え ::と 、A の部分ですが、走れメロスというのは、えーおそらくメロスの・ ‑‑( 略 :以下同 じ)

発話 の交代 は AH の司会 とメ ンバーの 自主的 な判 断で しか しスムーズ に行 われていて、

フォーマルな形であ る

しか し、その中で も、連続発話 や同時発話 も現 れている 。 次 の よ うな部分 である。

7 YS ‑‑多分それはメロスの中の神ゼウスの声だからじゃないんで しょうか‑

8 TK ‑ですね

もし、自分で言ってたらおかしいですね。

9 YS ですね、「 やっぱおれって勇者 じゃん」みた//いな ( ( 笑い) )変ですね。

10 TK // ( ( 笑い) )勇者 じゃ変。

11 FT 自覚症状あ りあ りだね ( ( 笑い) )

Y Sが最初の発表の前半部分 を終 えた ところで、 TK が連続発話 で 自発 的 に発話 を行 っ てお り、それ にY Sが応 じている 。 TK もY Sの発話 に介入す る同時発話 で YSの発話 に 同調 している

なお、 ここには、笑 いが現 れてお り、早 い段 階か らフォーマルな中に、 く だけた閥連 な話 し合いの特徴 が現 れている

3 人の発表が終 わる と互 いの発 表 に対す るコメ ン トをポス トイ ッ トに書 いて互 いの学習 シー トに貼 り付 ける とい う作業 を行 ってい るか、その間に も自由に会話 を行 ってい る

次 の ような形 である。

58 FT なにどっち? A、B どっち? どっちも? 一 A はメロスの心の中の声で 。B は、

本当にメロスが感 じた、感 じたというかメロスが本当に思ったこと 。

59 TK うんうん。

6、 o FT 自分で、自分自身で考えたこと

61 TK 同感だ同感だ。

62 YS きびしいなあ。 ( )

なお、 ここでのや りと りを通 して、十分 な準備 はないが、 AH も発表す る とい うこ とに

(7)

な り、発 表 してい る。 この発 表 は シー トの記載 に基づ いてい ないた め、 口調 も くだ けてお り、間 に他 の メンバ ー の発 話 が挟 まれ る形 で進行 してい る。 次 の よ うにな ってい る。

81 AH ちょっとまってよ、え ::とね、ど ::なってんだこれは。ま、 とりあえずメロ スはね、Aは絶対メロスで、えっとその理由は、‑‑・ 多分、まあ、負けず嫌いなメロスですか ら、はい、えー とこうい うところで自分を活気づけてあの ::見失わないように頑張って、や ろうかなと// うん、そ うい うがんば りとか ? が ? ん ? はい、

82 TK // そ うなんだ

83 AH いろいろ、励ま してる中で走れメロスってい うのは、あの、ほらよくあるじゃな いです//か、自分のこと、自分のこと AH君 とか言 う人。

84 TK //ねえ、あるよね。いやあそれは‑

85 AH ‑そ う AHはねえとかそ うい う//そ う、い う。

86 TK //それはいいけど、自分のさ、名前でこう//い うのが。

87 AH //で、 自分、走れわた しでもいいんですけど、走れわた しだと‑‑‑

AH と TK との介入 に よる同時発 話 の連続 とい う形 で発 表 が進行 して い る。 この発 表 を 受 けてのや りと りで は、 同時発 話 が多 くな り、 口調 も くだ け、笑 い もあって 、 自然 なや り

と りが な され てい る。 次 の よ うな形 で あ る。

112 YS TKさんの ところでも書いたんですが、一人称を自分で呼びますかね‑

1 ̲13 AH ‑堕望//互生.

114 TK //呼びますOそれは私 も言お うとしたんです.

115 Y S 呼びますか ? 116 TK 呼びます。

117 AH 例えばかお りは ::とか言 うで しょ。// ( )

118 TK //違 う、( 笑い)そ うじゃなくて、ーじ、一人称励ました りするときとか ? この よ うに、 フォーマル な形 にの っ と りつ つ 、 自然 なや りと りが聞達 にな され てい る も の と見 られ る。

第 2 の話 し合 いは、最 初 の読 み の段 階 で課題 と して書 かせ た 「この物語 を私 は こ う読 ん だ 」 と第 1の話 し合 い にか か わ る描 出表 現 の読 み との関連 とい う課題 につ いて書 い た メモ を も とに行 った もので あ る。 しか し、 この課題 の意 味 が十分 に伝 わ ってい なか ったた め、

話 し合 い のテ十マ そ の もの を 「この物 語 を私 は こ う読 んだ」 に限定 した よ うな形 で進行 さ せ て い る。

最 初 か らくだ けた 自由な形 で発 話 が行 われ 、 メモ を も とに した発 表 で も、読 み上 げ る よ うな形 にはな ってい ない。 次 の よ うなや りと りとな ってい る。

16 AH そ うだね。 よし、俺か らかい ? 17 FT そ うそ う。

18 AH こう読んだ ? はいはい。え ::とですね、最初の方 どう読ん、ん ? 最初の方 ? はですね。はい。 とりあえず訳が分か らない文章だったので、個人的な、はい、え ::と、

メロスとセ リヌンティウス と、デ ィオニスだっけ?

19 TK そ う。

20 YS 確かデ ィニオス。

21 AH デ ィニオス? そ うそ うそ う。

22 TK ふふ。

23 AH そ う、その 3 人について、あの、現代人だった らどうい うことかなってい うふ う

に自分で考えてみたんです よOで、個人的に、えー と最初は、あの、メロスとセ リヌンティウ

スが、えー と友達思いなんだけど、実は片方の友達 としか、あの、友達になれず ? もし他の

(8)

人と友達になるんだったら、すごくだまされやすいタイプかなというふうに解釈をしました‑

24 TK ‑んふふ

25 YS じゃあ超正直者と人見知 り?

26 AH そう、超正直者 と人見知 り 。 で、え ::と、そのうちメロスの方は、えっと自分 勝手な一面 もあるし、え ::と、なにげにいろいろ心理状況をいろいろ解説するので、多分本 好 きな人かな‑と思いました。

「え ::とです ね 」 とい うような発話 や上昇 イ ン トネー シ ョン 「?」 が現 れ、 メ ンバ ー も自在 に発 話 を してい る

冒頭近 くなので同時発 話 は少 ないが、連続発 話 も見 られ、最初 方 自由 なや りと りになってい る

以下 この ような傾 向で話 し合 い は進 んでお り、基本 的 に 第 1の話 し合 いの形式 的特徴 をよ り自由に した ような形 とな ってい る。

以上 、この グループの話 し合 い は一応司会 を中心 と した フ ォーマ ルな形 を保 ちなが ら も、

さまざまな形式上 の特徴 に 自在 で閥連 なや りと りの特性 が表 れてお り、それ は第 1 の話 し 合 いで は後 半 に向けて よ り強調 された形 で表 れてい る。 FT の発 話が比較 的少 ないが極端 な偏 りとは言 えず 、 形式 的 には活発 でかつ 自在 な話 し合 い になってい る もの と考 え られ る

2.2 会 話上の機 能

第 1の話 し合 いの 冒頭 は次 の ようになってい る。

1 AH はい、え ::、 じゃあ。

2 FT YS くんから

3 AH はい じゃあ ぼ く休んでいたので、はい、はい、司会だけということになって しま うんですけど。はい、 じゃあ右隣というと、はい。便宜的に FT 君の方を向 くとやつくんが右 隣なので、 YS 君、どうぞ 。

4 Y S え ::と、A の部分ですが、走れメロスというのは、えーおそらくメロスの‑‑

AH が司 会であ るが 、第 1 の話 し合い においては、前 の時 間 に欠席 していたので、内容 的 には十分 な準備 が ない まま、司 会担 当 をす る事情 を説 明 してい る 。 2FT は、 AH の事 情 に配慮 し、 Y S か ら発 表 を始 めた方が よい とい うア ドバ イス を した ものであろ う 。 3A

S はそれ を受 けて、再確認 しなが ら YS の発 言 を促 してい る 。 司会 を中心 に話 し合い を推 進す る上 での機 能 を担 った発話が な されてい る。

形式 的 な特徴 で見 た よ うに、話者 の交代 な どは 自在 にス ムーズ に進 め られてい るが、意 図的 に話 し合 い を円滑 にすす め る機 能 を担 った発 話 も見 られ る

次 の発 話 は、「す ぼ ら し いです ね 」 とい う評価 をメ ンバーの一 人が行 い、つ いで司会が 「 拍手 」 とい う形 でそれ を メ ンバ ー に広 げてい る。以後 、発表 を終 える とみ んなで拍 手 をす る とい う形 が、第 2 の話

し合 い まで続 け られてい る。

13 TK 長かったですね。すぼらしいですね ( ) 14 AH とりあえず拍手。

( ( 全員で拍手) )

話 し合いの手続 きをめ ぐってのや りと りも次 の よ うにな されてい る0

16 YS あれ じゃねえか、右から、右端、右隣から順番にポス トイットで記述をもとに質 問 を ( 3) ( )

17 AH 発表が終わったらじゃなかった示 ナ。

18 YS 全員 ? 19 AH 多分。

20 YS 失礼 しました。

l ∫

(9)

上 の例 は順序 をめ ぐる ものだが、話 し合 いの中でのや りと りのあ り方 をめ ぐっての発話 もあ る

次 の ような例 である。

99 YS あそう 。 じゃ、じゃ質問を受け合おうよ 。

100 TK はい。あ、あ、あ。質//間したかったんだけど

101 YS //傷をなめ合うというか、はいどうぞ。

102 TK はい。

103 YS L、司会者。

104 AH はい、 じゃあYS 君について、はい、YS 君//について。

YS が ポス トイ ッ トのや りと りが終 わ った ことを受 けて、 99 で 「質問 を受 け合お う 」

とい う提案 をす る。 TK がそれ を受 けて 100 で質問 を しようとす る 。 101YS の介入 に よる同時発話 は 99 の補足 であ る と考 え られ る 。 101YS の 「はい どうぞ。」 は司会 の AH に向 けての発話 であ ったが、 TK は 102 で発 話 を しようと して 「はい。 」 と答 え ている。 YS は TK を指名 して発 言 させ るの を司会の AH にさせ ようと 103 の発話 を行 ってい る 。 104 は AH がそれ を受 けて話 し合い を進行 させ ている。 この ように、 自然 な や りと りの中で、司会 を中心 に した フォーマルな形 を意識 して話 し合い をメ タレベ ルか ら モニ ター していることがわか る

第 2 の話 し合いで も、 この ような話 し合 い を推進す る機能 を担 った発話があ り、 メ タレ ベ ルか らモニ ター しなが ら、話 し合いの進行 をコン トロール してい ることが変 わ らず見 て 取 れ る。

122 TK ‑‑真の友情 というものを確かめられてよかったです。はい。

(( 拍手) )

123 AH 何かうるさすぎ

124 FT 俺はずいんだけど‑

125 AH はいえーとね、はい、ちょっと今のはちょっとうるさかったよ。だって今、今、

ほとんど班、なおきの班、見て‑

126 FT もう、やる気だそう

127 TK いや、最後だから説得力あるようにやってね 。

128 YS 注目一

第 1の話 し合いか ら維持 されてい る 「 発表が終 える と拍手 でね ぎらう 」 とい うシステム について 123 「 何か うる さす ぎ 」124 「はず いんだけ ど」とい う言及が なされてい る

これ を司会が 「ち ょっ と今 の はち ょっ とうる さか った よ 。 」 と確認 してい る 。 126FT は、 これ をやや転換 させ て次 の発 表が FT であ る こ とを踏 まえ、「や る気 だそ う 」 とい う 形 で本来の話 し合い に 引 き戻 している 。 127TK 、 128YS は これ を受 けて次 の発表

を促す発話 になってい る

この ように、会話上 の機能 の側面か ら見 て、話 し合 い を有効 に推進す るための発話が な されてお り、全体 と してバ ラ ンスの とれた話 し合 い になっている もの と考 え られ る。

2. 3 意味的 な内容

ここでは、第 1 の話 し合いお よび第 2 の話 し合いか ら、話 し合いが意味 的 な内容 を伴 っ た もの となっているか どうか を、それぞれ‑ カ所 のや りと りを見 ることで確認す る

第 1 の話 し合いでは、次 の ような部分が ある

146 YS じゃ、 じゃ、メロス、走れメロスというのは、泉の水を見て、希望からきた言

葉だったのか、メロスが前向きな人間で、そういう人間性からきた言葉なのかっていう。メロ

(10)

スが前向きだから、走れメロスで、メロスと自分に言いかけて、自分を活気づけたのか、泉か らの水を、流れてきて、で、その水にこう、希望をちょっと持てて、その希望から走れメロス と自分を励 ましたのかっていう‑

147 TK ふふ、//私の質問ではないので ‑ 0

148 AH // うーん、ちょっと、ちょっとタンマ。え ::とですね、それはね、え ::

と、( 6 )え ::とあの、前の ? (1) ところで、( 2 )あの ::、前のところで、あの ::、

えーと、あの、自分をけなしてるところあ りますね ? 149 TK うん。

150 AH はい、自分を、え?

151 YS はい、はい、はい、はい。

152 AH あ りますね。自分をあの‑//なんて言 うか、私はバカですがっていう、そう いうところがあ りますね。まあ、そういうところから、あって、こういう気持ちは、あの、生 まれたってことは、多分希望の方が強いんじゃないかなっと思います。あの、ま、確かにあの 一、希望から生 ::ま ::れたのもあるし、もしか したら、あの、水を飲んで自分の人間を?

あの、自分を見うしな、見失った自分を、 もう一回自分で見つめ直 した ? ていう ::こと から人間性 ともとれるので、多分これは両方兼ねているかなと思います。はい。

153 TK ふふふふふ 。

154 Y S じゃ、そこで言ってた希望って、自分を取 り戻 したと 。

155 AH そう

156 Y S 自分の希望だ

146YS は AH に対 して、 81AH にあ った 「A は絶対 メロスで、えっ とその理 由 は、 ( 中略) あの 1 30 ペー ジの ? 8 行 目で、「その泉 にすい込 まれ る ようにメロスは身 をかがめた 」 とか、で、そ っか らず っ と追 って くと、あの、 メロスがあの名誉 を守 る き、

わず か なが ら希望 が生 まれ た とい うこ とで、 メ ロス に希望 が生 まれた こ とが わか ります ね ? えー と、それでその希望か ら、 えー と後 ろの方で僕 は、あのその希望 か ら、生 まれ た こ とか ら、 自分 を励 ま してい る言葉 だな、 とい うふ うに、あの、 ( 中略) これ は現実 的 にあの、 えー と、 1回、多分、 まあ、負 けず嫌 いなメロスですか ら、はい、 えー とこうい うところで 自分 を活気づ けてあの ::見失 わない ように頑張 って、や ろ うか な と// う ん、そ うい うが ん・ ぼ りとか ? が ? ん ? はい 、 」 とい う発言 を受 けて、「メロスが立 ち 直 ったのは、泉の水 のおかげなのか、それ ともメロス 自身の人間性 か らきた もの なのか」

とい う質問 を している 。 A、 H の発言 自体が二つの意味 合い を持 っていることを理解 し、そ の上 で、 どち らか とい う質問 を しているわけであ る 。 AH は前時 に欠席 してお り、準備不 足 もあ って暖味 な発言 になった もの と思 われ るが、 AH は 148 で 「うーん、 ち ょっ と、

ち ょっ とタンマ。 え ::とですね、それはね 、 」 と考 えなが ら反応 してい る

それ を、 1 49TK や 151YS が相づ ちによって助 け、発 言 を促 している

その中で、 152AH が説明 を行 い、「 多分 これは両方兼ねているのか な と思 い ますJ o はい 。 」 とまとめ る と、 T K は 153 の笑 いで説明 をな し遂 げた ことを評価 し、 YS は 154 で内容 を確認 し、 15 6 で 「 旦 分 の希望 だ。 」 とい う強調 された発話 で まとめ、確認 ・評価 してい る。ここで は、

準備不足であ った AH の発言 を確認 し促 しなが ら話 し合いが行 われ、それが AH の話 の内 容 を きちん と聞 き取 り理解 した ことで行 われてい る ことが見 て取 れ る0

第 2 の話 し合い には、次 の ような部分が ある。

276 AH 何でゼウスにこだわるんですか ?

277 TK はい ? ̀

278 YS あ、なるほどね。あ、別に、あの何だ、前回の時間 F 君からその、心のなんだ、

(11)

メロスの心のかっこメロスとは別の声って書いてあって、すっごい、あの、あっそうか、別に ゼウスじゃなくてもし 、 、 いんだなと思うたんですが、何か、ゼウスの方が何かと都合がいいのか なと、メロスの中の別のメロスっていうふうに考えちゃうと、結局メロスだから、な、何かこ う、自分と他人 じゃないと客観的にみれないっていうか、自分のことを外から見て くれないん ですよ。走れメロスというのも自分の中の自分が言うわけじゃなくて、自分の中のメロス、あ、

ゼウスがあ くまで自分に言 うわけであって、やっぱ り第三者が必要なんだろうなと

279 TK じゃ、メロスがさ、今まで、こう勇者 とか言われてるのはゼウスのお陰なの ? 280 YS いや、自分のメロスの中のゼウスが、ゼウスが自分に、お前は勇者だって言っ てる。

281 TK あ

282 FT だからその力でメロスが本当の力を出してたんじゃないの

283 TK ふふ。

284 FT 後押 し

285 YS メロス自身が俺って勇者 じゃんって言ってるんじゃなくて、自分が、いやゼウ スは俺のこと勇者だと思っててくれてるよ、絶対みたいな

286 TK ああ、でも//みんなからもけっこう勇者勇者言われて。

y sは、学習課題 となっていた A 「 走 れ ! メロス。」 とい う表現 についてゼ ウスの声 とす る考 えを提 出 していた。 また、 この第 2 時の話 し合いで も、 77YS 「ち ょっ と考 え たのが 、 も しか した ら、その③ プ リン トの B の ところ ? 且 、 もしか した らゼ ウス じゃな いか な‑ と// ってい うか。ゼ ウスの考 えた ことが、すべ て ‑」 79Y S 「 違 うな、 メロ スが考 えた ことが、全部 ゼ ウスが こう代弁 して、 ここに書 いて くれて るだった ら、何 かい ろいろ と説明がつ くん じゃないか なあ と、その メロスが見 えてるんだけ ど、 メロスの中の ゼ ウスだか ら、ゼ ウス に も見 えて るんだ と//言う ような ことも、考 えてみ た りとか。 」 とす る見解 を出 していて、他 の メ ンバ ー とは異 なる解釈 を提示 している 。 79YS の発話 に対 しては他 の メ ンバ ーすべ てか ら 「 す ぼ ら しい」 とす る賞賛 ( やや邦稔 的 な印象 もある が)の言葉が返 されてい るが、 この違 い について、 AHが 276で 「 何 でゼ ウスにこだわ るんですか ?」 と尋 ねてい るわけであ る。 F 君 の発 言 に言及 しなが ら、 Y S は、別の解釈 との比較 を行 いなが ら、自分 の解釈 を入り心理 とい う 「 常識」に訴 えなが ら展 開 してい る

279TK は、別の角度か ら、 メロスの勇気 とい うもの を評価 しないのか とい うような立 場 で反論 を試 みてい る し 、282FT は YS の立場 に立 って解説 し 「 後押 し」してい る ( 2

84の発話 は FT 自身の発話 の機能 をメ タレベ ルか ら解説 した もの と言 えよ う)。 ここに は、互 いが互 いの解釈 をあ る程度理解 しつつ、疑問点 を明 らか にす る とい う内容 を保 った 話 し合いが見 られ る。

以上二つの部分 について検討 した ように、 この グループの話 し合 い においては、意味 的 な内容 について も話 し合いが有効 に展 開 してい る もの と見 ることがで きる。

2.4 三層のかかわ り

以上、形式 的 な特徴 ・会話上の機能 ・意味 的 な内容 の三つの側面 に着 目 して、発話 プロ

トコル をそれぞれの角度か ら分析 した。形式的 な特徴 においては、 フ ォーマ ルな話 し合 い

の形式 を守 りなが らも、 自由で閥連 な話 し合 いが展 開 されてい る ことが わか り、会話上 の

機能か ら見 て も、話 し合い をメ タレベ ルか らモニ ター しなが ら話 し合い を有効 に推進 しよ

うと してい ることが わか った。 また、意味 的 な内容か ら見 て も、互 いの解釈 の内容 やそれ

ぞれの解釈 の違 い を踏 まえた話 し合 いが展 開 されてい る。この三層 か らの分析結果 によ り、

(12)

形式 的 に も機能的 に も意味 的 に も活発 で内容 のある話 し合いが展 開 された と捉 えることが で きよう。 ただ、意味 的 な内容 については、 この学習が 「 読みの交流 の成立」 を目標 とす る ものであ ることか ら、以下、改 めてその観点か らその成否 を検討す る

3 読 みの交流の成立

読みの交流 をどの ように捉 え、どの ようにその成立の成否 を見 るか とい う点 については、

松本 ( 2 0 06)で述べ たが、その概要 をまとめ る と次 の ようになる

読 みの交流活動 においては、個 々の読み手 の読みの形成 において リソース として導入 さ れ るテ クス トの文脈 c o ‑ t e x tと状況の文脈 s i t ua t i onが ともに リソース として駆動 される。

個 々の読 み手 は、 テクス トの ことばを自分 な りに関係づ け、意味づ けるが、同時 に、テ ク ス ト外 の様 々な要素 、 た とえば、「これ は俳句 だか らこう読 むべ きだ 」 とい うようなジ ャ ンル意識 や 「 色彩語が 目立つか ら集 めてみ よう」とい うような技術 な どの読みの方略、「 羊 飼 い とい うのは素朴 な暮 ら しを してい る人だ」 とい うような知識や 「か もめ とい うのは矢 印 に似 てい る 」 とい うようなイメー ジな どの背景 的 な既有 の情報 な ど、個 々の読者が持 っ てい る経験 ・知識 ・認知的特性 な どを呼 び出 し、利用 してい る

読みの交流 において も、

そ う したテ クス トの文脈 と状 況の文脈 をともに導入 し、それぞれの読み を説明 した り、他 者 の読み を理解 した‑ りしようとす る

テ クス トの文脈 は共通 の対 象 と して一応認 めることがで きる

しか し、それへ の働 きか け方 ( 読 みの方略) は読者 によって異 なる

読みの方略 自体 も状 況の文脈 の一つ として働 く

状況の文脈 は読者 によって異 なる

個別 の経験 ・知識 ・認知的特性 な どが作用す る

読 みの交流 は、行為 と しては社 会的相互行為 ・相互作用 であ り、内容 と しては読み ( 解 釈 )の交換 である。

読みの交流 は読みの変容 を もた らす。その変容 には解釈 の変化 としての認知的変容 と、

読みの方略 の変化 としての メ タ認知 的変容がある。● 4読みの変容で よ り重要 なのはメタ認 知 的変容 であ る

メ タ認知 的変容 を伴 わない認知 的変容、読みの乗 り換 え' 5は合理的 には あ り得 ない。認知的変容 を一見伴 わない メ タ認知的変容 は読みの再確認 の ような形 であ り 得 る。

この ような読みの交流 に働 く様 々な要素 を図式的 に整理す る と次 の ようになる

図 読 みの交流の理論 的モデル

読者 A‑ メタ認知的変容 ( +認知的変容 )

† 読者 A

解釈 A ‑‑‑‑・ ‑‑・ ・ ・ 1‑状 況の文脈 A ( ⊃読みの方略 A) 交換 J† 相互作用 †J テ クス トの文脈

解釈 B‑

‑‑・ ‑‑‑‑‑ I‑状 況の文脈 B ( ⊃読みの方略 B)

読者 B l

読者 B

l

r メタ認知 的変容 ( +認知的変容)

文学教材 の読みの学習 において、学習者 同寺がそれぞれの解釈や感想 を述べ合 うとい う

形 の話 し合いの活動が行 われ るようになってお り、 この ような活動 を 「 読みの交流」 と呼

(13)

ぶ こ とが 一般 化 してい る

しか し、単元 にお ける 「 話 し合 い 」 の位置づ けや、話 し合 いの 話題 に よって、 その活動 にお ける相互作 用 の実 質 は大 き く異 なってい るのが現実 であ る

学 習者相 互 の読 み を互 い に提 示 しあ う活動 を、(読 みの交流 ) と呼 び、そ こに高 い教 育 的意義 を認 め る議論 は、1 98 0年代 以 降の読者論 の影響 な どを背景 と して、現在 で は主流 にな ってい る

また、そ う した学習活動 を通 じて個 々の読者 に (読 みの変容 )が もた らさ れ る と考 え、その変容 を学習 の成果 と見 る考 え方 も支配的で あ る

しか し、 これ までの議論 で は、読 みの交流 が どの ような要件 を満 たせ ば成立 した と言 え るのか、検討 を欠い た まま、個 々の解釈 の提 示 をただ交流 とみ な して きた きらいが あ る。

また。 メ タ認知 的変容 を見 るため に、必 要条件 で はない認知 的変容 を見 ようと して きた と い う矛盾が あ った。つ ま り、解釈 が変 わ った とい うこ とを根拠 に読 みの交流 を認定 してい た。 これで は、単 なる解釈 の乗 り換 えが読 みの交流 と認 定 されて しまい、読 みの深 ま りの ない ままで も学習 の効果が認 め られ る こ とになる

衝突 の ない多様性 の容認 や、衝突 の な い読 みの乗 り換 えが、 自分 の読み を見直す読 み直 しを含 む交流 と同一視 されて しまう。行 為 と して の相互行 為 が あれ ば よい とみ なす安 易 な状 況論 的学 習観 も同 じ問題 を抱 えて い る。 い わば、 メタ認知 的 な レベ ル と相互行 為 の まさに行 為 と しての レベ ルが 関連 す るはず なの に、もっぱ ら認知 的 な レベ ル と相互行為 が直接 に関連づ け られて語 られ た側面が あ り、

さらに単純 な場 合 には相互行 為 の レベ ルだけで学習 の意味 が語 られて きた側面が あ る

自 分 自身や他 の学習者の読 み について、それ を比較 した り相対 化 した りす る言及や、読み方

な どメ タ認知 に関す る言 及が あ る こ とに よって、読 みが変 わ らない場 合で もメタ認知 的変 容 を見取 る こ とがで き、読 みの深 ま りを確認 す る こ とが で きる

以下、 この枠組 み に よ り、特 に第 1の話 し合い において、交流 が成立 したか どうか を検 討 す る こ とにす る

まず 、個 々の解釈 は、学習課題 お よび学 習 シー トに よって、 テ クス ト中の二 カ所 の描 出 表現が 「 誰 の声 か」 を、 テ クス トの他 の箇所 と関連づ けて根拠づ けて述べ る もの とされて お り、 テ クス トの文脈 を リソース と した解釈 と して提 示 され る よう枠づ け られてい る

た だ し、根拠 の説 明の 中 には、個 々の読 み手 の状況 の文脈 が導 入 され る

た とえば、 Y S の 解釈 お よび根拠 の説 明 は以下 の よ うにな ってい る。 テ クス トの文脈 に下線 、状 況 の文脈 に 二重下線 を付 す。

4 Y S え ::と、 A の部分ですが、走れメロスというのは、えーおそらくメロスの中にい るゼウスの声だろうと 。 つとなにゆえゼウスかと申します と 、(2 )その 130 ページの 14 行 目ら辺か ら 「 私は信 じられている」 とオ 「 私の命なぞは関係ない」 とか 「 私は信頼に報いな けれ旦奉らぬ 」 というような、「 私は 」 私は 私は」 というふ うに続いていて、あの、「 走れ メロス」と自分のことをtあの、メロス自身が三人称で言 うの もおか しかろうと、で、もう 「 走 れメロス」 というのは、こうメロス自身が自分に言い聞かせている声だろうから、メロスの声 なんだけどメロスじゃないと 。 じゃ一体これは誰なのか と考えたときに、おそらくメロスが自 分の中につ くっている神ゼウスのことなんだろうと

で、メロスではな くゼウスのことを話の 話題 に出してますが、自分の中にいるメロスが、自分に対 して 「 お前は真の勇者なんだ」 とか

「メロスお前の恥 じゃない」 とかいうふうに自分にとって都合のいいことを言っているような 神 をつ くり出 しているとしたら、なんか納得がい くん じゃないかなあというふ うに考えたので、

「 走れメロス」 というはメロスの中の神ゼウスの声なんじゃないかなあと考えました。

7 Y S そんなところ、そういうふ うにこうメロスの中のゼウスが、メロスに語 りかけてい

るところがけっこうた くさんあると思います。例えば 131 ページの4 行 目、「メロスおま 」 「 メ

ロスお前の恥ではない、やは りお前は真の勇者だ 」 って言 うのは、何かあまりにもメロスにと

(14)

って都合が よす ぎるなあってい うふ うに思 ったんですが、多分それはメロスの中の神 ゼウスの 声だか らじゃないんで しょうか‑

12 YS B の部分ですが、 B の部分、私 はメロスだ と考 えま した。で、あの、その ⊥土旦

スは、今ほ とん ど仝裸体であった、呼吸 もで きず、 2 度 3 度口か ら血が吹 き出た 」 ってい う 1 32 ページの 1 行 目は語 り手の文章だ と思 います。 これはメロスがなんとかだった。 とか、メ ロスはこんな様子で したってい うふ うに、 こう、客観的に見たってい うか、ち ょっと高い視点 か ら見た感 じで、メロスの状熊 を蓑 しているので、これは語 り手の文章だろうと。( . )だけど、

そのす ぐ下 に くる 「 み える」 ってい うのは、あの、他の誰か見たわけで もな く、メロスが見え たわけで、そ こが もし語 り手 の文章だった らメロスは見えていた、 とか、メロスは見ていまし た。みたいな過去形で、 しか も上か ら見たってい うか、 自分の ことじゃない ようなふ うになっ てると思 うんです よ

そ うす るとこれは、語 り手の文章ではな くて、あの、一緒 に走 ってたセ リヌ ンテ ィウスのお じさん (( フイロス トラ トスの誤 り) )で もな くて、多分 メロスのことであ ろ うと、そ うす ると、その、見 えるって、その塔楼が夕 日を受 けてキラキラ光 ってるっている 文 も多分 メロスの ことではないで しょうか。 と考 えま した。以上です。

テ クス トの近傍 の表現 を引用 しリソース としつつ、「自分の ことを三人称で言 うのはお か しい」 とい う個人的感覚、解釈の整合性、ナラ トロジー的な観点か らの三人称 による描 写 についての判断、「夕系列 」 文末表現 と現在形可能表現 との相違 についての判断が状況 の文脈 として導入 され、駆動 されて解釈 を形成 していることがわかる。

TK 、 FT 、AHは 「 走れ ! メロス 。 」 については 3 人 とも 「メロス 」 としてお り、

相違がある 。 TK はそのことを次の ように述べている。

24 TK 負けそ うな自分 に、 こう、一生懸命呼びかけて、いる ものなんだ と思います。え ー と、なんだ、ま、 メロスだけに、こうい う走れメロス とい う話だけにかかわ らず、えっと、

いろんな本 に今 まで、えー とその上 に、例 えば自分 を励 ます時 とかなんか、あの、がんばれ私 :だ とか、えー となん とかだ とか、 自分 に呼びかけるようなことをよ く、そ うい うシー ンが よ くあって、えーっと、あ と、そ うその 130 か ら 131 にかけて、えー と、ん‑ と ::何だ ? えー と、私 は信 じられている とか、えー と、私の命 な どは問題ではない とか、そ う自分にこ う ::思 っていることを言 っているので、 この、走れメロス とい うの も自分 に対 して、一生懸 命呼びかけて走 ろ うと、頑張 っているんだと思います。

ここには、他のテクス トにおける語 りのパ ター ンが状況の文脈 として導入 され、提示 さ れている。

この ような解釈 と、解釈 に駆動 されているテクス トの文脈お よび状況の文脈が話 し合い 活動の中で、互いに意識 され、理解 された上でメタ認知的変容が認め られるか どうかが問 題 である

上 にあげた YS と TK の読みの違いの原因の一つ として、二人の状況の文脈の相違があ る

この ことが話 し合いの中で表面化す る

112 YS TK さんの ところで も書いたんですが、一人称 を自分で呼びますかね‑

11 3 AH ‑堕空//呈土 。

114 TK //呼 びます。それは私 も言お うとしたんです。

115 YS 呼 びますか ? 116 TK 呼びます。

117 AH 例 えばかお りは ::とか言 うで しょ 。 / / ( )

1Ⅰ8 TK //違 う、 ( 笑い)そ うじゃな くて、 じ、一人称励 ました りす るときとか ? 119 YS 自分の名前 を、 まあ、 自分 はなん とかです とかってい うのはやるけ ど、 ( 3 )が んばれ俺 とかあんま り言 わない じゃないですか。 I

120 TK え、言 うよ、言 うよ ( .)あ//の ::

(15)

この状況の文脈 の相違 は経験 と感覚 による ものだ と思 われる。 112YS の発話 は直接 的 には 87AH の 「自分、走れわた しで もいいんです け ど、走れわた しだ となん と、何 と な く、普通 自分の名前であの、別人の ように励 まされているほ うが、多分 自分で も元気が 出 る と、多分考 えたので しょう 。 」 とい う発話 に向け られた質問である。 しか し、 AH と 同様 の読み を示 していた TK が ほぼ同時 に反応 してい るこ とが 114 の発話 に見 て取 れ る 。 AH は一人称 では不 自然 だか ら 「 名前 で別人の ように」 としているが、 TK は YS の 疑問 に促 されて 「 一人称 で も名前で も言 う」 とい う主張 をす るに至 っている。

125 TK 126 FT 127 YS

128 TK 129 Y S 130 FT 131 TK 132 AH

//がんばれ、がんばれわたし。//いつも思ってんだけど。

//うっわー

私とか代名詞ならまだしも、自分の名前だぜ ? え? //いや、いや

がんばれ安田、がんばれ安田

それはね。

何で、思うよね。

けっこう言いますよ

133 TK がんばれかお り、がんばれかお りって、//強めたいときは自分の名前言うん じゃない ?

134 Y S なんかすごい不思議。

135 AH よくマンガ見ればわかるんだよ?

136 TK マンガ見れば。

137 AH 例えばなんだろうなあ。

138 TK ドラマを見たまえ

この議論 は平行線ではあるが、 YS の導入 した状況の文脈が他 の 3 人 と異 なるこ とが明 確 に表れてお り、その背景 として、マ ンガや ドラマの ようなジャンルの語 りの様式がある ことが明 ら' か になっている。互いに解釈 の違 いに状 況の文脈がかかわっていることが メタ 認知的 レベルで意識 され、言及 されている 。 ここには読みの交流が成立 している

YS は、第 2 の話 し合いで、 64YS 「で、それ を、 この、誰の声か とい うところを考 えた ときに、その、 A の走れメロスの ところを、ゼ ウスの声 だ と言 った じゃないですか、

これは、メロスが、心の中にゼ ウスを持 っていて、そのゼ ウスが 自分の悪い ところを全部、

いい ように都合 をつけて説明 して、何 とい うか ごまか して くれる役割 を、メロスの中で し てるんで、 メロスは自分の中のゼ ウス をつ くって 自分の悪 い ところをすべ てゼ ウスに任せ て しまって、 自分 の悪 い ところを見 ない ように してい る 。 」 とい うように、人物論 を展開 す る中で 「メロスは自分の中のゼ ウス をつ くって」 としてお り、 自分で 自分 を名前 で呼 ん で励 ますのは不 自然 だ とい う主張 とは異 なる説明 を行 っている。 YS は自説 を変化 させ て いないが、その説明の仕方 を変 え、他の メンバーに理解 され ようとしている 。 そ して他の メ ンバーは既 にみた ように賞賛で応 えてい る 。 YS は解釈 の整合性 を保つ とい う状況の文 脈 も導入 してお り、他 のメンバー との解釈の相違 とその背景 にある状況の文脈 の相違 をふ まえつつ、少 な くとも状況の文脈‑の言及の仕方の変更 を伴 って解釈 の修正 を行 っている。

この ように、個 々の解釈 に導入 されてい るテクス トの文脈 と状況の文脈が互い に理解 さ れ、その ことへの メタ認知的 なレベ ルでの言及な どがあ って、個の読みが影響 を受 けてい ることが確認 され る

ここには明確 な読みの交流が成立 している と見 ることがで きる

学習 シー ト、 と りわけ最後の 「 走 れ メロス 」 を私 は こう読んだ」 に明確 な相互引用 な

どが少 なか ったのは、読みの交流 とい う学習 に不慣 れであった ことが影響 しているか もし

(16)

れ ないが、事後イ ンタ ビューでは、 FT が 「 登場 人物 、心の 中 を覗 いた り、それ でそ っか ら話 し合 った りして、 うん、まあ、その点について面 白かったんですね。あと、うーん、

その、いろいろ、そ、す るんです よ。」 とい うよ うな感想 もあった。語 りにかかわる学習 課題 を通 して、読みの交流は一応達成 された と思われ る。

4 おわ りに

以上、語 りにかかわる学習課題 をめ ぐる話 し合いのプ ロ トコル を対象 として、質的三層 分析 によって話 し合いが有効であったこと、読みの交流の成立基準に照 らして話 し合いの 中で読みの交流が成立す る条件が満た されていた ことを明 らかに してきた。読みの交流は、

語 りにかかわる課題 によってのみ成立す るわけではない し、学習者の発達段階や状況によ って も左右 され る。ただ し、 どのよ うな課題 によるにせ よ、読みの交流が成立す るには、

話 し合いが話 し合い として意味あるもの として行われ、その中で、メタ認知的変容にかか わる読みの交流の成立条件が満た されなければな らない。本論での検討は、読みの交流が 成立 したか どうかを検討す るための一つのモデル として提出す るものである。

*注に掲げた文献以外の参考文献や この授業の他 のグループの話 し合 いに関す る細かな解釈 と文脈 の関係 、 このグループの話 し合いにおける状況の文脈 に関す る分析 については、松本 ( 2 0 0 6 ) を参 照 されたい。

*本研究にかかる 3 つのプ ロ トコル について詳細 に見たい場合は、次のア ドレスにメール を送って いただければ、添付 ファイルで提供す る。 os a mu@j ue n. a cj p

*1 松本修 ( 2 0 0 6 ) 『文学の読み と交流のナラ トロジー』東洋館

* 2 松本修 ( 2 0 0 4) 「 国語科教育研究における話 し合いプ ロ トコルの質的三層分析」『臨床教科教育 学会誌』第 3 巻第 1 号 臨床教科教育学会 2 0 0 4. 6 p p . 7 4 ‑ 8 2

* 3 松本修 ( 2 0 0 4 ) 前掲 p. 7 7 に基づいて要約

*4 ここで言 う認知 ・メタ認知は読みにかかわるものなので、通常 よ り複雑な内容を含む ものを認 知に含 めてある。 メタ認知は、 自らの読み方 を意識す るとい う意味で方略にかかわる。

*5 他者 の読み を簡単に取 り入れ、 自分の読みを放棄す るよ うな読みの転換 を 「 乗 り換 え」 とここ では呼んでいる。

( まつ もと お さむ 上越教育大学大学院 准教授

学習臨床講座 ・教職大学院準備講座)

参照

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