奈良教育大学学術リポジトリNEAR
子どもにおける「保健室」のイメージと学校適応の 関係
著者 豊田 弘司, 檜垣 志保
雑誌名 教育実践総合センター研究紀要
巻 11
ページ 23‑27
発行年 2002‑03‑31
その他のタイトル The Relationship between Children's Images of
a Health Room and their Adaptation to School
URL http://hdl.handle.net/10105/4076
豊 ‖ 弘 MJ (奈良教育大学心理学教室)
槍 垣 志 保 (奈良市立三碓小学校)
The Relationship between Children's Images of a Health Room and their Adaptation to School
Hiroshi TOYOTA
(Department of Psychology, Nara University of Education) Sh ho HIGAK
(Mitsugarasu Elementary School, Nara)
Abstract:The present study attempted to examine the needs of students of an elementary school for a Health Room and their emotional images of it. The students answered a question about reasons for visiting a health room and a question to assess their adaptation to school. They were also asked to give colors to the names
"Health Room" and "My Class". The reasons for visiting the health room varied as a function of the grade and sex of the children. This result indicated the need for a "Health Room"depended upon developmental and sex differences. The words "Health Room"elicited two colors, white and red, whereas the words ̀̀My Class elicited many other colors. These results were interpreted as indicating that the students had positive and neg ative emotional images of their class, but had positive emotional images of the health room. The color "black was elicited from some children in response to the words "Health Room"and "My Class. These children were rated by their class teachers as not adapted to school. This suggested that a response which was elicited in the color‑name association could be used for assessing the level of a student's adaptation to school.
Keywords:保健室health room、適応adaptation、色彩連想color‑name association
1.はじめに
児童・生徒に対する「心のケア」の必要性が叫ばれ て久しいが、学校においてその中心的役割を果たすの が、 「保健室」である。中央教育審議会(1997)の答 申では、いじめ・不登校・問題行動等現在の子どもた ちの状況を「心を失う危機」と称し、新しい時代を拓 く心を育てる方針が打ち出された。そして、学校は、
「心を育てる場」としての位置付けが強調されている。
この位置づけを背景にして、保健室の役割も重視され ている。そこでは、保健室の機能として心身の健康に 問題を有する児童生徒の保健指導、健康相談・健康相 談活動(ヘルスカウンセリング)を行う機能が指摘さ
れている。また、保健体育審議会(1997)の答申にお いても、 「心の居場所としての保健室」や「保健室の カウンセリング機能」、 「身体的不調の背景と子ども達
の発するサイン」などが指摘され、学校における「心 のケア」の中心的役割を担う保健室の役割が強調され ている。
このように、学校における「心のケア」の中心的存 在が「保健室」であるという指摘は多いが、果たして 児童・生徒は「保健室」に対してどのようなニーズを 持っているのであろうか。児童・生徒の「保健室」に 対するニーズを検討することは、保健室が上述した機 能を十分発揮するためにも必要である。
「保健室に来室する理由」を調べた日本学校保健会
の研究(平山ら、 1996;高石ら、 1998)からは、 「保
健室」に対する児童・生徒のニーズをうかがい知るこ
とができる。しかし、 「保健室へ来室する理由」を学
年・男女ごとに詳細に発達的に分析した報告はなされ
ていない。そこで、本研究の第1の目的は、 「保健室
来室理由」を分析し、 「保健室」に対する児童のニー
豊田 弘司・槍垣 志保
ズにおける性差及び発達差を検討することである。
また、児童は、 「保健室」に対してどのような感情 を持っているのであろうか。山本(1999)は、 「教室 にいきづらい子が集まる学校の中のシェルター(避難 場所)が保健室である」と指摘している。この指摘を 待っまでもなく、保健室のもっカウンセリング機能は 重要である。ただし、児童が「保健室」に対して否定 的な感情を持てば、 「保健室」へは行かなくなり、保 健室のカウンセリング機能を果たせなくなる。反対に 肯定的な感情を持てば、 「保健室」へ抵抗なく行き、
そこで必要な「心のケア」を受けることができるだろ う。それ故、 「保健室」に対する感情を検討すること は意義のあることである。そこで、本研究の第2の目 的は、色彩連想を用いて「保健室」に対する感情を発 達的に検討することである。色彩連想を用いたのは、
言語能力の個人差が反映されにくく、児童に対して実 施しやすい方法であるからである。また、田中・別府 (1983)が指摘しているように、無意識の感情が反映 される可能性が高いと考えたからである。
さらに、先に述べたように「身体的不調の背景と子ど も達の発するサイン」を見落とさないことは、 「保健 室」の重要な役割である。それ故、養護教諭は、絶え ず、児童の行動観察から上述のサインを読みとらなけ ればならない。しかし、クラスの担任とは異なり、養 護教諭が児童に接する時間は限られている。それ故、
それを補うための検査が必要となる。そこで、本研究 の第3の目的は、色彩連想反応が児童の学校適応と関 係しているのか否かを検討することである。貝体的に は、学校適応を調べる質問項目を設定し、その項目へ の反応と色彩連想の関係を調べ、さらに、通常は考え られない色彩連想反応をする児童について担任の教師 にクラスでの学校適応状況をたずねる方法を用いるこ とにした。もし、色彩連想反応と学校適応の関係が多 少とも兄いだされれば、色彩連想という検査が、学校 不適応児の発見に貢献できる可能性を示唆することに
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