国士舘大学審査学位論文
「現代外交の変容:中央アジア、カザフスタン
-外交官の視点」
クルマンセイト・バトルハン
「現代外交の変容:中央アジア、カザフスタン
―外交官の視点」
クルマンセイト・バトルハン
国士舘大学客員研究員(アジア・日本研究センター) 元在日カザフスタン共和国大使館
現カザフスタン日本経済委員会委員長
目次
1.はじめに pp.3-12
2.現代外交の諸問題 pp.12-31
3.外交分野における新技術の役割 pp.31-53
4.国際関係分野における教育の役割 pp.54-64
5.文化外交と民間外交の重要性 pp.65-88
6.カザフスタンの国際社会における外交実績 pp.88-97
7.カザフスタ ン外交の軌跡と自ら の関り pp.98-106
8.おわりに pp.106-109
註 pp.109-113
参考文献 pp.114-118
1 .はじ めに
現代 世 界 にお け る 「 外交 」 の 変化 に つ い て論 ず る こと が こ の 論考 の 目 的 であ る 。 現代 世 界 の 「外 交 」 には 大 き な 変化 が 迫 って い る 、 ある い は や や極 端 な 観方 を す れ ば、 こ れ まで の よ う な「 外 交 」は 消 失 し てゆ く 、 とい っ て もよ い の か もし れ な い。 そ の 原 因は い う まで も な く 多様 で あ る。
国際秩序の東西冷戦後の変容、EU や ASEAN に代表される地域共同体 の 深化 、 多 極化 、 地 球 的課 題 の 拡が り 、 グ ロー バ ル 化、 高 度 情 報化 、 政 府予算の緊縮、民間外交や NGO、NPO の進展とそれにともなう対外関 係 チャ ネ ル の多 様 化 、 政策 決 定 とそ の 遂 行 の過 程 の 透明 化 の 増 大な ど 、 す ぐ気 付 く 要因 の み を 挙げ て も 、そ れ ら は 長大 な リ スト を 構 成 する 。 さ ら に現 代 外 交の 「 変 化 」「 変 質 」に つ い て は、 こ の 小論 の 筆 者 のみ な ら ず多くの関係者や識 者が現代の重要な課題として取り上げている。
筆 者 の 立場 は 、 現 在「 外 交 」に 現 場 で 携わ る 者 とし て 、 そ の経 験 か ら、
さ まざ ま な 局面 で 変 化 の渦 中 に ある 「 実 践 者」 と し ての 観 察 お よび 知 見 に 基づ い て 、今 、 現 に 起こ っ て いる 諸 現 象 を記 述 し 、そ れ ら に ささ や か な 検討 を 加 えて ゆ こ う とす る も ので あ る 。 国際 関 係 の展 開 や 外 交政 策 そ の もの を 論 ずる の で は なく 、 あ るい は プ ロ トコ ル や 交渉 の 駆 け 引き な ど の 「外 交 術 」に 関 し て 追求 す る とい う の で もな く 、 たと え ば 外 交公 館 の 数カ国に よる共 同運 用や IT の 利用に よ る「外交 」の電 子メ ディア化 、 ま たい わ ゆ る「 外 交 当 局」 に と どま ら ぬ 、 経済 や 環 境を め ぐ る 国際 協 力 な どひ ろ く 外交 実 践 の 場で 起 こ りつ つ あ る 「変 化 」 に注 目 し よ う、 と い う のが 本 論 考の 主 要 な 焦点 で あ る。 筆 者 の 課題 探 求 の立 場 は 、 必ず し も 政治 学 や 国際 関 係 と いっ た 単 一の デ ィ シ プリ ン に 立脚 す る も ので は な く、
あ る意 味 で メデ ィ ア 研 究や 社 会 研究 に も 拡 がっ て お り、 外 交 実 践と 学 際 研究を組み合わせた方法といえようか。
総じ て 筆 者は 、 今 後 「外 交 官 」や 外 交 機 関の 存 在 感が 低 下 し 、こ れ ま で のよ う に 対外 関 係 の 唯一 の 「 専門 家 」 「 専門 機 関 」と し て の 特有 の 地 歩 は減 少 し てゆ く と 判 断し て い る。 し か し なが ら そ れは 、 対 外 関係 、 外 と の繋 が り の重 要 性 を いさ さ か も減 ず る も ので は な い。 グ ロ ー バル 化 の さ らな る 進 展、 情 報 化 の展 開 、 交通 の 利 便 性拡 大 な どに よ る 、 国境 を 越 え る経 済 の 相互 依 存 の 高ま り 、 ヒト 、 モ ノ 、カ ネ 、 情報 の 加 速 度化 し た
「 交通 」 、 内、 外 の 一 体性 の 高 まり 、 そ れ らの す べ てが 「 対 外 」( い や
「 内」 と 「 外」 を 峻 別 する こ と じた い が 意 味を 失 う であ ろ う ) の重 要 性 を ま す ま す 際 立 た せ て く る の で あ る 。 た だ そ の 際 に 、 こ れ ま で の 「 外 交 」が 果 た して き た 役 割は 、 よ り限 定 的 と なり 、 対 外関 係 の た だひ と つ の 「窓 口 」 とい う 「 特 権的 」 地 位と し て と どま る こ とは あ り え ない で あ ろう、と考えている 。
この よ う な視 点 か ら 「外 交 」 につ い て 考 えて み る こと は 、 現 代世 界 に お ける 特 定 の産 業 の 変 遷や 企 業 形態 の 変 化 、た と え ば輸 出 入 の 仲介 や 代 理 と し て の 機 能 が 中 心 で あ っ た 商 社 が 、 国 境 を 越 え て 企 業 同 士 ( 製 造 業 )が 直 接 取引 を す る よう に な った 時 代 に 、商 社 が 海外 の 生 産 拠点 に フ ァ イナ ン ス を行 い 、 製 品の 流 通 まで に 関 与 する よ う にな る こ と など ( こ の 場合 、 「 外交 」 が 縮 小す る の に対 し 「 拡 大」 と い って よ い が )に み ら れ る変 化 と の類 比 を 想 わせ る か もし れ な い 。今 回 、 将来 の 「 外 交」 の 新 展 開に つ い て積 極 的 な ビジ ョ ン を示 す こ と はで き て いな い が 、 多く の 分 野で こ う した 現 代 的 見直 し の なか に 諸 制 度が 位 置 づけ ら れ ざ るを え な い、
大 きな 転 換 期と し て 現 代世 界 ( とく に 2 0 世紀 末 か ら今 世 紀 初 頭) を 捉 える背景は明らかだと考える。
さて 外 交 に従 事 す る 実践 者 と して 、 鮮 度 の高 い 事 例や 体 験 を もっ と 直 接 的に 提 示 でき れ ば 、 とい う 想 いは 強 い が 、守 秘 義 務や 他 国 へ の配 慮 と
いう こ と もあ り 、 多 くの 部 分 では 公 開 さ れた ネ ッ ト上 の 情 報 を利 用 し た。
こ れら の 情 報は 現 象 解 決 策 や コ メン ト と し てと い う より 、 そ れ じた い が 資料 と し て、 外 交 を とり ま く 現実 の 一 端 であ る と の認 識 で 紹 介し て い る。
こ の点 に つ いて は 、 違 和感 や ご 批判 を も た れる 方 々 もい ら っ し ゃる で あ ろ うが 、 上 に述 べ た 事 情と も 合 わせ て 、 メ ディ ア 上 の情 報 を 利 用す る こ と が 、IT 化 す る 現 代 の ひ と つ の 様 相 の 反 映 で も あ る と 、 ご 理 解 戴 け れ ば幸いである。
また カ ザ フス タ ン 共 和国 の 外 交官 の 一 員 とし て 、 わが 国 の 外 交の 経 緯 と 現状 に つ いて も 章 を 設け た 。 全体 の 構 成 から み て 、い さ さ か の不 整 合 が ない わ け では な い が 、自 ら の 立ち 位 置 と 、比 較 的 に直 接 情 報 の少 な い カ ザフ ス タ ン 外 交 の 現 状に つ い て、 多 少 の 情報 提 供 とな れ ば と 念じ た 次 第である。現代外交の変容について直接述べている第 2 章 〜第 5 章につ い ても 、 現 代の 外 交 現 場に 従 事 する 者 と し ての 観 方 から の 考 察 であ り 、 ま たそ れ は ソ連 邦 の 一 員と し て の歴 史 を 持 ちつ つ も 、新 生 カ ザ フス タ ン 共 和国 外 交 や自 ら の 社 会・ 文 化 の影 響 を 受 け、 中 央 アジ ア と い う独 特 の 地政学的意義のなかで活動する一外交官の視点と 無縁ではない。
筆 者 は 、 在 日 カ ザ フ 共 和 国 公 使 を 経 て 、 現 在 カ ザ フ ス タ ン=日 本 経 済 協 力委 員 会 のカ ザ フ ス タン 側 委 員長 と し て 両国 の 経 済交 流 、 協 力を 推 進 す る任 に 当 たっ て い る が、 本 論 考は あ く ま で外 交 に 従 事 す る 過 程で こ れ ま でに 遭 遇 した 状 況 や 経験 、 そ して 外 交 を 巡る 電 子 媒体 情 報 、 研究 書 か ら 得 た 外 交 の 現 在 を 示 す 「 資 料 」 を 提 示 し 、 目 下 起 こ り つ つ あ る 「 変 化 」の 様 相 を記 し た も のと い っ てよ い 。 す でに 述 べ たよ う に 、 本論 考 は 外 交 を め ぐ る 理 論 ( 存 在 し た と し て ) の 研 究 で は な い し 、 外 交 交 渉 の 個 々の 事 例 を深 く 研 究 する も の でも な い 。 ただ 大 き な変 化 に 見 舞わ れ て い る人 類 社 会に お い て 、外 交 も 例外 な く そ の影 響 を 受け て い る 点に 注 意
を 喚起 し た いの で あ る 。と く に 、い わ ば 「 内側 」 の 人間 と し て 、そ の 点 を強調したい。
さて 本 論 考の 内 容 に つい て 概 略的 に 記 し てお こ う 。第 二 章 「 現代 外 交 の 諸問 題 」 では 、 「 は じめ に 」 で触 れ た 、 現代 世 界 にお け る 外 交の 実 情 に つい て 、 より 具 体 的 に示 し 、 また そ の 前 提と な る 「外 交 」 の 定義 、 位 置づけについての基礎を紹介している。
こ こ で は 、外 交 が 外 交専 門 家 や当 局 の 従 来の 専 有 を越 え て 拡 大し 、 ま た 在外 公 館 の共 同 使 用 や多 国 間 交渉 の 拡 大 など 新 し い展 開 に つ いて 述 べ てい る 。 しか し 章 中 にも 記 し たよ う に 、 これ ら の 新事 態 に も かか わ ら ず、
旧 来の 外 交 、た と え ば 大使 な ど の役 割 が 完 全に 消 滅 した と ま で はい え な い 。た と え ば偵 察 衛 星 や電 子 的 手段 の 進 展 によ っ て 機密 情 報 の 収集 が 遠 隔 地か ら 行 える よ う に なっ た と いっ て も 、 直接 の 人 的接 触 や 参 与観 察 的 な 情報 収 集 の、 い わ ゆ るヒ ュ ー ミン ト の 側 面の 重 要 性は 依 然 高 いの で あ る。
第三 章 「 外交 分 野 に おけ る 新 技術 の 役 割 」は 、 情 報、 コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン技 術 の 革新 が 外 交 に与 え た 大き な 影 響 につ い て の論 議 を 中 核と し て い る。 こ う した 技 術 的 イノ ベ ー ショ ン は 、 外交 コ ミ ュニ ケ ー シ ョン の あ り 方そ の も のに も 変 質 を迫 り 、 また 外 交 に 従事 す る 人員 の 削 減 をも も た らす。
こ うし た イ ノベ ー シ ョ ンは 、 た と え ば 工 場 生産 に お ける ロ ボ ッ ト化 の 進 展 のよ う に 、雇 用 や 生 産過 程 の 大き な 変 化 をも た ら す。 そ れ ら はと り も な おさ ず 労 働観 や 社 会 シス テ ム の変 容 に も 繋が る も ので あ り 、 外交 の 変 化 もこ う し た現 代 の シ ステ ム ・ シフ ト と 軌 を一 に す ると い っ て よい も の で あ ろ う 。 さ ら に 閉 さ れ た 外 交 回 路 に と ど ま ら ず 、 い わ ゆ る ソ ー シ ャ
ル ・ネ ッ ト ワー ク の 利 用に も 拡 大す る 。 新 しい メ デ ィ ア の 活 用 は当 然 外 交 プロ セ ス の透 明 化 に も繋 が る が、 同 時 に それ は ウ ィキ リ ー ク ス現 象 と い った 問 題 も投 げ か け る。 情 報 技術 の 発 達 は曲 折 は あろ う と も 、閉 鎖 的 な 専門 家 集 団内 で の コ ミュ ニ ケ ーシ ョ ン を 、よ り 「 開放 的 」 な もの へ と 変質させるであろう。
第四 章 は 、こ れ ま で の外 交 の 範疇 を 拡 大 する 「 教 育」 に つ い て述 べ て い る 。J.ナ イ の 主張 し た 「 ソ フ ト ・ パ ワ ー 」 の ひ と つ の 有力 領 域 と し て、
留 学や グ ロ ーバ ル な 学 生の 移 動 は現 代 世 界 にと っ て 、ひ と き わ 大き な 意 味 をも つ 。 グロ ー バ ル 化は 、 従 来か ら の 、 世界 の 知 的中 心 へ の 留学 や 研 修 を、 質 量 とも に さ ら に拡 大 さ せ、 ま た シ リコ ン バ レー に 代 表 され る よ う な新 産 業 の国 境 を 越 えた 人 材 集積 の 基 礎 をつ く り あげ て い る 。一 国 の パワ ー を 考え る 際 、 創造 的 な 留学 、 研 究 の拠 点 と なる こ と は 重要 で あ り、
ま たそ う し た外 か ら の 人材 活 用 こそ が 新 た な産 業 技 術の 開 発 や 新産 業 分 野 の形 成 に 大き く 寄 与 する 。 こ れは 必 ず し も旧 来 の 「外 交 」 の 専管 領 域 で はな い が 、「 外 交 」 の多 様 化 、民 間 外 交 の高 ま り のな か で 、 広義 の 外 交として捉えるべき主柱となりつつある。
第五 章 は 、ソ フ ト ・ パワ ー の 概念 を さ ら に展 開 し 、外 交 の 複 線化 、 多 様 化の 状 況 を、 文 化 外 交と 民 間 外交 に 焦 点 をあ て て 論ず る 。 こ うし た 趨 勢 は旧 来 の 外交 を 超 え るこ と で はあ る が 、 他方 外 交 当局 の こ れ まで の 取 り 組み の な かに 、 新 た な要 素 を 加え る も の であ る 。 従来 は 、 外 交公 館 の ス タッ フ に 、外 務 当 局 以外 の 他 の省 庁 の 出 向ス タ ッ フを 派 遣 す るの み で あ った が 、 こう し た 傾 向に よ り 、民 間 人 が 公館 の ス タッ フ と し て起 用 さ れることがますます増加している。
六章 、 七 章は 筆 者 自 らの 経 験 も踏 ま え 、 カザ フ ス タン 共 和 国 の外 交 の 歴 史の 一 端 と、 自 ら の それ に 対 する 関 わ り につ い て 述べ て い る 。こ れ ま
で の章 に お いて 触 れ た 現代 外 交 の「 変 容 」 と も 意 外 なほ ど 関 係 が認 め ら れ ると い っ てよ い 。 独 立以 来 年 月も 浅 い カ ザフ ス タ ン 外 交 は 、 まさ に 現 代 外交 の な かに い き な り放 り 込 まれ た と い って も よ く、 ま た 中 央ア ジ ア 地 域が は じ めて 外 交 の プレ イ ヤ ーと し て 登 場し た こ とも 合 わ せ て 、 カ ザ フ スタ ン 外 交が 注 力 す る非 核 、 環境 、 宗 教 間対 話 な どに 示 さ れ る、 今 日 的課 題の 具現化 の例として取り上げたものである。
以上 の 議 論を 経 て 、 「お わ り に」 で は 、 結論 を 述 べる の で は なく 、 今 後の展望を中心に現在の過渡的な状況について記している。
これ ま で 総じ て い ず れの 国 家 にお い て も 、「 外 交 」を 担 当 す る機 関 は 当 然国 家 機 関で あ り 、 日本 語 の 表現 で い え ば外 務 省 ない し 外 交 部と 呼 ば れ てい る 。 アメ リ カ 合 衆国 の 場 合は 日 本 語 で「 国 務 省」 と 呼 ば れ若 干 ニ ュ アン ス が 異な り 、 ま たそ れ が 合衆 国 の 「 外交 」 を 特徴 づ け る とい っ て よ いか も し れな い 。 外 務省 と 総 称す る が 、 それ が 依 然と し て 第 一義 的 に
「 外交 」 を 担っ て い る こと は 各 国と も さ ほ ど違 い は ない で あ ろ う。 ま た そ こに は 「 外交 官 」 と 呼ば れ る いわ ば 専 門 家が 存 在 し、 さ ま ざ まな 相 手 国 に大 使 館 、総 領 事 館 、駐 在 事 務所 等 の 「 公館 」 を 構え 、 そ の 任に 当 た っている。
しか し な がら 以 前 か らあ っ た とは い え 、 大統 領 、 首相 な ど 国 家元 首 が 担 う「 首 脳 外交 」 の 割 合は 、 い わゆ る サ ミ ット 会 議 やG 2 0 な どの 大 規 模 会議 の 場 の増 加 や 、 ホッ ト ラ イン を 用 い た直 接 的 な意 見 交 換 など に よ っ て急 速 に 大き く な っ てき た 。 さら に 国 際 的な 複 数 の国 家 が 参 加す る 経 済 交渉 、 環 境や 生 物 を めぐ る 国 際会 議 、 軍 縮や 安 全 保障 に 関 す る交 渉 、 軍 隊の 共 同 訓練 ま で 、 いわ ゆ る 「外 交 」 専 門家 に と どま ら ぬ 各 分野 の 専 門家を含む国際的な交渉 および協働 の場も加速的に増加している。
こう し た 国家 や 「 官 」が 中 心 とな る 「 外 交」 に 加 えて 、 企 業 や非 政 府 組 織に よ る 国際 間 の 交 渉、 協 同 の必 要 性 と 機会 も ま た急 速 に 増 加を み せ て いる 。 都 市や 地 域 の あい だ の 交流 、 大 学 や研 究 機 関の 相 互 連 携も 当 り ま えの 日 常 現象 と な っ てい る 。 この よ う な 対外 関 係 の拡 が り を まの あ た
り にす る と 、従 来 の 専 門家 集 団 によ る 「 外 交」 や 「 プロ ト コ ル 」で は 捉 え きれ ぬ 展 開が 進 展 し 、狭 義 の 外交 専 門 家 を超 え る 人び と が 対 外関 係 の 構 築や 交 渉 に従 事 す る 度合 が ま すま す 拡 大 して い る とい っ て よ い。 国 境 を 越え る 災 害救 助 、 援 助活 動 、 エボ ラ 出 血 熱の よ う なパ ン デ ミ ック 疾 病 対 策協 力 に 明ら か な 、 グロ ー バ ルな 共 通 利 害に 対 応 する 国 際 協 力活 動 も その重要性を増している。
他方 、 タ リバ ン 、 ア ルカ イ ダ 、イ ス ラ ム 国の よ う な集 団 が 、 国家 と は 非 対称 な か たち で 国 際 秩序 の 大 きな 脅 威 と して 出 現 した 。 「 外 交」 ( あ る いは そ の 延長 と し て の武 力 対 応) は 国 家 間の 交 渉 、関 係 と い う範 囲 を 越 え、 ま す ます 多 様 で 、ま た 従 来の 方 法 で は対 処 し きれ な い 相 手の 存 在 にいささか当惑してい る かのような印象を持たざるを得ない。
「 外 交 」に 降 り か かる こ う した 変 化 の 背景 を あ らた め て 考 えて み る と、
以 下の い く つか の 点 を 挙げ る こ とが で き よ う。 ま ず 第一 は 上 に 述べ た よ う に対 外 関 係が 多 面 化 、多 様 化 した た め に 従来 の 対 外窓 口 で あ る外 交 機 関 や外 交 官 だけ で は 対 応で き な くな っ た こ とが あ る 。国 家 と 国 家が 国 交 を 結び 条 約 を締 結 す る こと 、 加 えて 領 事 業 務を 中 心 とし て き た 「外 交 」 を 越え る さ まざ ま な 関 係性 の 増 加、 多 分 野 化の 趨 勢 はさ ら に 強 まっ て い る。 こ れ を加 速 化 し たの が グ ロー バ ル 化 の影 響 と 情報 化 の 展 開で あ ろ う。
グ ロー バ ル 化の 進 展 は 「国 境 が 低く な る 」 と い う 点 では 国 と 国 とい う 旧 来 の外 交 の 枠を ハ ミ 出 して し ま う。 国 境 を 越え た さ まざ ま な 組 織や 人 び と の直 接 的 か つ 迅 速 な 結び つ き は、 「 外 交 チャ ネ ル 」の 多 様 化 を促 進 す る。
他 方 グ ロー バ ル 化 はロ ー カ リズ ム や ナ ショ ナ リ ズム を 一 面 で強 化 す る。
外 部世 界 と の従 来 を 超 える 繋 が りは 、 内 向 きの ナ シ ョナ リ ズ ム やポ ピ ュ リズ ム 的 な反 応 を 世 界各 地 で 引き 起 こ し てい る と いっ て も よ いの で あ る。
今 日 わ れ わ れ は 世 界 の 一 員 と い う 意 識 を 持 ち な が ら 、 同 時 に 「 自 分 自 身 」で あ り たい と い う 欲望 を 抱 く。 専 門 家 が 専 門 領 域と し て 「 外交 」 の 特 別な 位 相 で活 動 す る と、 そ れ は大 衆 国 民 社会 の 視 点か ら は 不 透明 と み え たり 、 国 民一 般 の 願 望 と は 異 なっ た よ う に受 け と ら れ る 。 「 外交 」 が 二 国間 で い えば 、 必 ず しも 一 方 の国 の 要 望 どお り で なく 、 あ る 種の 妥 協
や 共通 領 域 への 歩 み 寄 りと し て 懸案 解 決 へ 向か う 場 合、 と か く 外務 当 局 や 首脳 の 「 弱腰 」 と 映 るこ と が ある 。 「 内 政」 と 比 較す る と 「 外交 」 に 大 衆か ら の 批判 が 集 中 しや す く 、事 柄 が 分 り難 か っ たり 、 不 鮮 明で あ る だけ に 感 情論 や ゼ ノ フォ ビ ア に陥 り や す いの で あ る。 今 日 多 くの 地 域 で、
ま たさ ま ざ まな 懸 案 で 、「 外 交 」は 、 国 民 感情 や 民 族、 そ し て 宗教 と い った 「 本 源的 」 な ア イデ ン テ ィテ ィ と ポ ピュ リ ズ ム に 対 峙 せ ねば な ら ず、
ま たそ の た めに 対 外 関 係が ス ム ース に 進 ま ない 「 外 交不 在 」 や 「外 交 困 難」の状況に見舞われることが増えている。
情報 化 に よる 影 響 は 、情 報 環 境の 変 化 が 「外 交 」 過程 に 与 え る変 化 、 す なわ ち ヴ ィザ の 電 子 化か ら 外 務担 当 者 の 必ず し も 対面 的 で は ない 情 報 交 換、 交 渉 など の 変 化 、も あ る が、 同 時 に 情報 の 専 有が 崩 れ 、 外交 担 当 者 プロ パ ー 以外 の 人 び とが ひ ろ く情 報 に ア クセ ス で きる 可 能 性 が増 大 し て いる 。 も ちろ ん 「 外 交機 密 」 に容 易 に ア クセ ス で きる と い う こと で は な いが 、 逆 に「 外 交 」 その も の 情報 が つ ね に相 手 国 家や 社 会 の 現実 を 正 確 に伝 え て いる か ど う かに も 大 きな 問 題 が ある 。 現 地の 大 使 館 情報 よ り 日々社会と接する NPO や 、現地とさまざまな接点と持つ企業のほうが リ ア ル タ イ ム で 地 に 足 の 付 い た 情 報 を も た ら す こ と も 多 い 。 こ こ で も
「外交」の「専門性」に対する二面的な評価が生じている。
さ ら に ナ シ ョ ナ リ ズ ム と の 関 連 の な か で も 述 べ た が 、 い わ ゆ る 「 内 政 」と 「 外 政」 の 関 係 性 と い う 点で も 困 難 が生 じ て いる 。 「 外 交」 が 専 門 家集 団 の みの 問 題 で はな く な り、 特 権 的 な領 域 を 形成 し え な くな る と
( 民主 化 の 進展 や 情 報 化の 加 速 がこ う し た 傾向 を 促 す) 、 国 民 感情 や 国 内 政治 の 力 関係 が 「 外 交」 に 影 響を 及 ぼ さ ざる を 得 なく な る 。 これ に は 透 明性 の 確 保と い う 面 で積 極 的 に評 価 す べ きと こ ろ もあ る が 、 国内 事 情 に 規 定 さ れ て穏 当 な 国 際関 係 の 維持 確 保 が 難し く な ると い う 欠 点も 潜 在 する。
以上 の 点 を踏 ま え て 、 最 近 多 くの 研 究 者 や学 者 、 また 外 交 ・ 国際 関 係 な どに 関 心 を持 っ て い るジ ャ ー ナリ ス ト や 専門 家 た ちが 、 現 代 社会 に お け る国 家 の 諸活 動 と 同 様に 、 外 交分 野 も ま た急 激 に 変化 を 遂 げ てお り 、 時 代の 新 た な要 求 ・ 挑 戦に 応 え るた め に 、 外交 の 構 造や 推 進 方 法な ど が
変 化し て い るこ と に つ いて 多 様 な観 点 か ら の様 々 な 見解 を 取 り 上げ て い る。
その な か で 、 今 ま で の外 交 手 段 な ど は 将 来消 失 し てい く だ ろ うと 予 測 す る人 も い れば 、 グ ロ ーバ ル 化 がハ イ ス ピ ード で 進 む中 で 、 例 えば 国 際 ビ ジネ ス に 関わ る 企 業 やビ ジ ネ スマ ン が 外 国の パ ー トナ ー と 直 接交 渉 を 行 い、 直 接 ビジ ネ ス が でき る よ うな 時 代 に おい て は 、非 常 に 管 理主 義 的 で ある 外 交 政策 を 担 当 する 国 家 機関 の 力 を わざ わ ざ 借り る 必 要 が無 く な っ てき て い るこ と を 踏 まえ 、 果 たし て 外 交 官と い う 職務 そ の も のが 必 要 だろうか、という厳しい問い を投げかける専門家もいる 。
それ で は 、将 来 の 外 交は ど う なる の だ ろ うか 、 も し、 変 わ る とし た な ら ば、 ど の よう に 変 わ るの か 、 それ と も 、 外交 と は 変化 し な い もの の 部 類 に入 る も のな の か ? 普通 後 者 の質 問 は 、 外交 官 自 身が 勝 手 に 幻想 し て い るよ う に 、外 交 と は 保守 的 か つも っ と も 特徴 的 で 、エ リ ー ト しか 関 わ る こと の で きな い 分 野 であ る と 考え る 人 々 が抱 く も ので あ る 。 しか し な が ら、 現 在 の事 情 が 、 多く の 外 交官 が 想 像 して い る 以上 に 、 遥 かに 急 速 に変化していることを真面目に受け止める必要があると思う。1
い う ま で もな く 、 国 際関 係 や 世界 政 治 の 諸問 題 、 国際 舞 台 で 行わ れ て い るこ と な どは 、 常 に 政治 家 の みな ら ず 、 多く の 国 際ジ ャ ー ナ リス ト 、 専 門家 、 研 究者 た ち の 関心 の 中 心に あ っ た 。 他 方 で は、 国 際 関 係や 外 交 政 策 に つ い て 、 そ し て 如 何 に そ れ を 実 現 し て い る か に つ い て 、 つ ま り
「 外交 」 そ のも の に つ いて は 、 どち ら か と いえ ば 、 一部 の 人 し か関 心 を 持っていないのも事実である。
し か し 、 現 在 グ ロ ー バ ル 化 が 加 速 す る 中 、 複 雑 な 国 際 状 況 は 各 国 の
「 外交 」 に 対し さ ま ざ まな 課 題 を突 き 付 け てい る 。 更に 、 急 激 に変 化 を 遂 げて い る 国際 社 会 に おい て は 、国 際 関 係 の推 進 方 法も か つ て ない 速 度 で 変わ り つ つあ る 中 で 、 大 き な 流れ の な か では 、 現 代の 外 交 が 外務 省 、 あ るい は 外 交官 の み の 「独 占 分 野」 で な く なっ て い るこ と に 注 目す る 必 要があると思う。
また 、 国 際社 会 に お ける 諸 問 題 を 、 政 治 大国 や 軍 事大 国 、 ま たは 経 済 大 国な ど の 先進 国 の み の外 交 力 で解 決 で き てい な い 現代 に お い ては 、 途 上 国 や国 際機 関、 そ して 国 際レ ベ ルで活 動 を行ってい る NPO や NGO の役割の重要性が年々増してきている。
私は こ こ に、 こ れ ま で読 ん で きた 専 門 書 、啓 蒙 書 など 、 そ し てと く に 近 年情 報 リ ソー ス と し て重 要 性 を増 し た イ ンタ ー ネ ット 上 の ニ ュー ス や メー ル マ ガジ ン な ど から の 引 用を 含 め 、 そし て そ れら の 情 報 に基 づ い て、
「 現代 外 交 」に 関 し て 、以 下 に 自分 の 考 え をま と め てみ た 。 そ れと と も に 私自 身 が これ ま で 従 事し た 「 外交 」 や 「 外交 現 場 」で の 経 験 も踏 ま え て 、現 代 に おけ る 「 外 交」 が 提 起す る 諸 問 題に つ い て論 じ よ う と考 え て い る。 た だ し、 「 外 交 」の 当 事 者で あ る 自 らの 立 場 を考 え る と 、よ り 実 際的 で 、 かつ 生 き 生 きと し た 「生 の 」 情 報や 自 ら 関与 し た 案 件に つ い て、
「 守秘 義 務 」の 壁 は 高 く、 し た がっ て 電 子 メデ ィ ア の一 般 情 報 やコ メ ン ト を適 宜 利 用す る 度 合 が高 く な った こ と も 、こ こ で 明ら か に し 、そ の 点 に つい て の ご理 解 を 要 請し な け れば な い と 申し 述 べ てお き た い 。ま た 本 論 考は 、 あ くま で 「 外 交」 の 実 践と 方 法 に とく に 焦 点を あ て る もの で 、 外 交を 考 え る場 合 に 等 しく 重 要 な「 外 交 政 策」 に つ いて は と く に取 り 扱 っ て い な い 。 こ の 点 に 関 し て は 古 典 的 な 外 交 に つ い て 述 べ た H.ニ コ ル ソ ンの 立 場 に近 い か も しれ な い 。ま た 近 年 の大 き な 変化 に 見 舞 われ て い る のは 、 外 交の 実 践 や 方法 の 部 分で あ る と の認 識 を もっ て い る こと も 明 らかにしたい。
2 .現代 外交 の諸 問題
「 外 交 」 とい う 概 念 の定 義 は 数多 く あ る が、 大 方 の定 義 は 、 外交 と は 国 際関 係 を 実現 す る 手 段で あ り 、国 家 の 国 際分 野 に おけ る 活 動 、 そ の た め の政 府 役 割 の 一 部 で ある 、 と い う も の で ある 。 そ して そ れ と 同時 に 大 方の 定 義 は 、 外 交 と 「 交 渉 」 が直 接 的 な 関係 に あ るこ と を 意 味し て い る 。
そ のた め 、 外交 の 定 義 につ い て 語ら れ る 場 合 、 し ば しば 「 交 渉 」が 中 心 に 立ち 、 ま たは 「 交 渉 」 が 現 代 外交 活 動 の 主要 な 役 割と さ れ る こと が 多 い。
しか し 、 「 外 交 」 を 「 交 渉 」 だけ に 帰 す ると す れ ば、 そ れ は 少な か ら ず誤 解 で あろ う と 思 う。 も し 外交 の 最 終 目的 を 交 渉だ け と す るの な ら ば、
例え ば 、 領事 業 務 や 情報 収 集 、人 的 交 流 、 文 化 交 流な ど と 言 った よ う な、
さ まざ ま な 外交 活 動 を どう 扱 う かと い う 質 問に 答 え る必 要 が あ る。 も ち ろ ん、 情 報 収集 や 人 脈 づく り が 最終 的 な 交 渉の 基 礎 であ り 、 ま たそ の 準 備 とな る こ とを 否 定 す るも の で はな い が 。 また 当 然 のこ と な が ら、 国 際 秩 序の 形 成 や外 交 政 策 の構 築 な ど、 対 外 関 係の 情 勢 把握 と 枠 組 みの 策 定 などの政策部分といった重要な側面も欠けてしまう。
多く の 国 際関 係 の 研 究者 や 外 交官 は 、 現 代外 交 の 特色 に 関 し て 語 る と き 、 二 つ の 鍵と な る 側 面 を 取 り 上げ て い る 。ま ず は 、昔 の よ う に貴 族 や エ リー ト だ けで は な く 、さ ま ざ まな 層 の 国 民が 外 交 活動 に 関 わ るこ と に よ って 、 そ して 、 国 家 によ り 署 名さ れ た 諸 協定 、 合 意書 な ど に つい て 社 会 にお い て 幅広 い 情 報 が存 在 す るこ と に よ って 、 現 代の 外 交 で は過 去 と 比 較し て 公 開性 が 大 き くな っ た こ と が あ る 。ま た 、 様々 な 問 題 に取 り 組 ん でい る 数 多く の 国 際 機関 な ど のレ ベ ル に おけ る 多 面的 な 外 交 の急 激 な 展開である。
過去 に お いて 外 交 活 動は 、 相 互的 な 外 交 使節 の 交 換 に よ っ て 主と し て 二 国間 の あ いだ で 行 わ れて い た のに 対 し 、 現代 の 外 交は 、 相 当 な水 準 で 多 面的 な 性 格を 帯 び て おり 、 諸 課題 の 検 討 と決 定 に 、多 く の 関 係国 が 同 時 に参 加 し なけ れ ば な らな く な って い る 。 世界 が よ りグ ロ ー バ ル化 し て い く中 で 、 国際 社 会 に おけ る 諸 事情 は 、 同 時に 多 く の国 の 利 害 に触 れ る よ うに な っ てお り 、 国 際政 治 に おい て も 、 国際 経 済 関係 に お い ても 、 大 国 の立 場 と 利益 と 同 等 に、 そ の 他の 関 係 国 の利 益 が 重視 さ れ な けれ ば 国 際関係が成り立たなくなっている。
大き な 変 化に 見 舞 わ れて い る 現代 の 外 交 では あ る が、 外 交 の 定義 の ス タン ダ ー ドを 考 え る と、 未 だ に触 れ て お かね ば な らな い 観 方 が存 在 す る。
そ う し た 従 来 の 「 外 交 」 に 関 す る 見 解 と し て 代 表 的 な も の が 、 H.ニ コ ル ソ ン の 著 作2と い っ て よ い 。 そ れ は 多 く の 識 者 か ら 「 外 交 論 の 古 典 」 と いう 評 価 を得 て お り 、今 か ら 見れ ば 「 旧 き良 き 時 代」 の 「 外 交」 に つ い てそ の 範 囲 と 相 貌 を よく 伝 え てい る 。 ニ コル ソ ン 自身 外 交 官 の家 系 に 生 ま れ 、 本 人 も 、1919 年 パ リ 講 和 会 議 に 英 国 政 府 代 表 の ひ と り と し て 参加、その後経験豊富な外交官となり、退官後は著述家となっている。
さて ニ コ ルソ ン の 外 交論 の 特 徴を ひ と 言 でま と め るた め に 、 著書 『 外 交 』の 翻 訳 者斎 藤 真 氏 と深 谷 満 雄氏 の 言 を 借り る と すれ ば つ ぎ のよ う に なる。
「ニ コ ル ソン は 、 対 外関 係 の 立法 的 側 面 (対 外 政 策の 決 定 ) と執 行 的 側 面( 外 交 交渉 ) と を はっ き り 区別 す る こ とを 主 張 する 。 そ し て前 者 、 政 策に 対 し ては 、 議 会 、世 論 な どを 通 し て 国民 が 参 与す る 必 要 性、 い わ ゆ る外 交 の 民主 的 統 制 が主 張 さ れる 。 そ の 制度 的 側 面と し て は 、条 約 の 批准 に 対 する 議 会 の 同意 権 が 指摘 さ れ る 。た と え 、調 印 さ れ た条 約 案 が、
議 会の 同 意 が得 ら れ ず 、批 准 さ れな く て も 、そ の こ とは 国 際 信 義の 問 題 で ある ま え に、 ま ず 国 民の 権 利 の問 題 で あ る。 し か し他 方 、 外 交交 渉 そ の もの は 、 専門 家 に ま かせ る べ きで あ る と いう の が ニコ ル ソ ン の主 張 で あ る。 場 合 によ っ て は 、秘 密 の 交渉 も 必 要 であ ろ う 。『 公 開 外 交』 と は
『 公開 に よ って 達 せ ら れる 』 と いう こ と で はな い 。 交渉 の 結 果 が公 開 さ れ 、そ れ が 国民 の 討 議 を経 て 最 終的 に 成 否 が決 定 さ れる と い う こと に 他 な らな い 。 本書 [ 『 外 交』 ] は 、主 と し て 、後 者 の 面、 す な わ ち外 交 交 渉 の面 に つ いて 、 そ の 歴史 的 由 来、 そ の 各 国の 特 色 、民 主 的 統 制と 交 渉 などについて、素人にも判りやすくのべたものである。」3
彼は 書 中 『オ ッ ク ス フォ ー ド 英語 辞 典 』 によ る 「 外交 」 の 定 義を ひ い て 、「 外 交 とは 、 交 渉 によ る 国 際問 題 の 処 理で あ り 、大 公 使 に よっ て こ れ らの 関 係 が調 整 さ れ 処理 さ れ る方 法 で あ り、 外 交 官の 職 務 あ るい は 技 術 で あ る 。 」4と 述 べ て い る 。 ま た 明 治 期 日 本 の 外 交 に も 大 き な 影 響 を 与え た ア ーネ ス ト ・ サト ウ [ イギ リ ス の 外交 官 ] の定 義 に 倣 い「 つ ま り、
外 交は 道 徳 哲学 の 体 系 では な い ので あ る 。 外交 と は アー ネ ス ト ・サ ト ウ 卿 が定 義 し たよ う に 、 『独 立 国 政府 間 に お ける 公 的 関係 の 処 理 に知 性 と 気 転 と を 適 用 す る こ と 』 で あ る 。 」5と も 記 し て い る 。 こ の よ う に ニ コ ル ソン の い う「 外 交 」 とは 国 家 間、 政 府 間 の交 渉 で あり 、 そ こ には 外 交 コ ミュ ニ テ ィと も い う べき 共 通 的な 「 文 化 」を 共 有 する 「 職 業 外交 官 」 が その 交 渉 の担 い 手 と して 存 在 する ( す で にニ コ ル ソン が 外 交 実務 を 行 っ た時 代 に は、 英 国 の 伝統 的 外 交と は 必 ず しも 同 じ では な い 、 合衆 国 の ウ ィ ル ソ ン 流 の 外 交 や ソ 連 邦 の 「 社 会 主 義 的 」 外 交 が 存 在 し て は い た が)ことが前提されていた。
こう し た 背景 を 考 え ると 、 ニ コル ソ ン が 第一 次 大 戦後 の 状 況 につ い て
「 民主 主 義 」が 外 交 に 及ぼ す 「 負の 影 響 」 を懸 念 し てい た こ と も彼 の 文 脈のなかではもっともなものと理解できる。
彼が 負 の 影響 と し て 挙げ る の はつ ぎ の よ うな 諸 点 であ る 。 ま ず批 准 拒 否 につ い て 彼は 、 「 も し両 方 の 交渉 者 が 、 相互 の 互 譲妥 協 が 自 国内 の 主 権 者に よ っ て承 認 さ れ ると い う こと を 完 全 に保 証 で きな い と な ると 、 交 渉 の 全 過 程 が 甚 だ し く 阻 害 さ れ て し ま う こ と は 明 ら か で あ る 。 」6 と 述 べる 。 ま た国 民 の 無 責任 に 触 れて 、 「 民 主的 外 交 に伴 な う 危 険の も っ と も強 力 な 源が 、 主 権 者で あ る 国民 の 無 責 任さ に あ るこ と は 広 く認 め ら れ てい る と ころ で あ ろ う。 と い う意 味 は 、 今日 で は 国民 が 対 外 政策 を 究 極 的に 統 制 する 主 権 者 であ る に もか か わ ら ず、 そ の 結果 伴 な う 責任 に は 国 民 が ほ と ん ど ま っ た く 気 づ い て い な い と い う こ と で あ る 。 」7 ま た 国 民の 無 知 に関 し て は 、「 か く して 、 教 育 ある 選 挙 民で す ら 、 どの よ う な 条約 が 現 在自 国 を 拘 束し て い るの か 、 ほ とん ど ま った く 気 づ かな い で い る。 こ れ らの 条 約 は 公表 さ れ 、議 会 で 討 議さ れ 、 そし て 新 聞 紙上 で 論 ぜ られ た 。 けれ ど も 国 民の 大 多 数 に と っ て はそ の 存 在は ま っ た く念 頭 に な く、 そ れ らに つ い て はす っ か り忘 れ て し まっ て お り、 ひ と た び思 い 起 こ さ れ た 場 合 に は 、 き ま っ て 『 秘 密 外 交 』 に つ い て 騒 ぎ た て る 。 」8と いうことになる。
無知 の 問 題も 大 き い が、 大 衆 の「 知 識 」 につ い て もニ コ ル ソ ンは 警 告 を 発す る 。 「大 衆 の 無 知以 上 に さら に 危 険 なも の は 、大 衆 の あ る種 の 知
識 であ る 。 職業 外 交 官 は、 外 国 の心 理 や 状 態の 研 究 に生 涯 を 費 やし た の で ある が 、 性急 に 観 察 され た 現 象に 基 づ い て一 般 的 な結 論 を く だす に は 非 常に 慎 重 であ る 。 と ころ が 選 挙民 は こ の よう な 躊 躇を 示 さ な いも の で あ る。 [ ア ドリ ア 海 の 東岸 ] ダ ルマ チ ア を 夏遊 覧 し たと か 、 [ ドイ ツ 南 西 部の 森 林 地帯 ] ブ ラ ック ・ フ ォレ ス ト を 一度 自 転 車で 旅 行 し たと か 、
[イ タ リ アの ] ポ ー ト・ フ ィ ーノ で 三 週 間楽 し く 過ご し た と いう だ け で、
彼 は近 東 問 題、 ヒ ッ ト ラー 総 統 とそ の 参 謀 本部 と の 関係 、 お よ びイ タ リ ア の世 論 に たい す る エ チオ ピ ア 侵略 の 影 響 につ い て ある 深 い 確 信を 抱 い て戻ってくる。」9
さら に 加 えて 「 遅 延 の危 険 」 につ い て 付 言し て い る。 民 主 的 外交 の 手 ま ひ ま か け た 結 論 は 独 裁 者 に よ る 性 急 な 結 論 よ り は ま し で あ ろ う が 、
「 ある 一 定 の世 論 が 確 定す る 前 に経 過 し て しま う 数 ヶ月 は 、 有 効な 政 策 や 交 渉 に と っ て し ば し ば 致 命 的 な 数 ヶ 月 と な る こ と が あ る 。 」1 0 さ い ご に彼 は 「 不正 確 の 危 険」 を 指 摘す る 。 「 すべ て の 民主 主 義 国 は( と く に アン グ ロ ・サ ク ソ ン 系の 民 主 主義 国 は ) 杓子 定 規 な定 義 よ り も融 通 無 礙な や り 方を 好 む と いう 傾 向 があ る 。 い かな る 外 交も ど れ だ け有 効 か は、
そ の外 交 が はた し て ど れだ け 確 信ま た は 確 実性 を も たら し て い るか の 程 度 に依 存 す る。 も し 政 策が 曖 昧 であ る な ら ば、 そ の 下僕 で あ る 外交 も ま た 曖昧 と な らざ る を え ない 。 こ うし て 民 主 主義 国 の 政府 は 、 曖 昧模 糊 た る 言葉 で 政 策発 表 を 行 い、 そ の 政府 が ま さ に阻 止 し たい と 望 む 危険 を 、 結 果 と し て 招 来 し て し ま う こ と が し ば し ば 起 こ る の で あ る 。 」1 1 政 治 家 が民 主 主 義体 制 の 下 では 外 交 につ い て も 大衆 迎 合 的に な り が ちで あ る と の指 摘 も 含め て 、 ニ コル ソ ン は第 一 次 大 戦後 の い わゆ る 民 主 主義 的 外 交 に大 い な る危 惧 を 抱 いて い た 。書 中 ニ コ ルソ ン の 本領 は 、 「 理想 的 な 外 交官 」 の 章で 、 誠 実 さ、 正 確 さ、 平 静 さ 、忍 耐 と 勇気 、 よ い 機嫌 、 謙 虚 さ、 適 応 力、 忠 誠 な どき わ め て常 識 的 な 徳目 を と り上 げ て い ると こ ろ に ある 。 ま た外 交 慣 行 、外 交 用 語、 手 続 き など 実 務 的な 各 章 に も、 「 外 交 」と そ れ を専 門 的 に 担う 「 職 業外 交 官 」 の制 度 が 近代 社 会 で 確立 し た か にみ え た ある 時 代 の 基準 、 そ れは ま た す ぐに か げ りを 見 せ る よう に な るのだが、が示されている。
「外 交 」 とい う 空 間 ある い は 領域 が も っ とも よ く 確立 し た か にみ え る 20 世 紀 初 頭 か ら 第 一 次 大 戦 直 後 の 時 期 を 中 心 と す る ニ コ ル ソ ン の 所 説 にはもちろんその前後に及ぶ歴史や軌跡がある。
ニコ ル ソ ンが 描 い た 「外 交 」 はい わ ゆ る 「旧 外 交 」と 呼 び な らわ さ れ る もの で 、 その 後 合 衆 国の ウ ィ ルソ ン 大 統 領は 「 新 外交 」 を 掲 げ、 民 主 主義 の イ デオ ロ ギ ー を強 調 し 、ア メ リ カ の世 界 関 与の き っ か けと な っ た。
そ れと は 逆 であ っ た が 、革 命 後 のソ ヴ ィ エ ト国 家 も 、や は り イ デオ ロ ギ ー 重視 と い う 点 で は 同 様に 社 会 主義 的 な 「 新外 交 」 を宣 言 し て いる 。 細 谷 雄一 に よ れば 、 「 『 新外 交 』 とは ま ず 、 その 言 葉 が示 す と お り、 『 旧 外 交』 の 外 交文 化 や 外 交慣 習 を 批判 し て そ れを 改 宗 し、 世 界 を 新し く 塗 り 替え る こ とを 目 的 と して い た 。そ れ ま で の外 交 が 『秘 密 外 交 (secret diplomacy) 』と し て、 宮廷 文 化や 貴 族 階級 の世 界 によ っ て 独占 され る 中 、一 般 の 人々 の 与 り 知ら ぬ と ころ で 秘 密 裏に 行 わ れて い た こ とを 批 判 す る。 そ し て、 『 公 開 外交 』 と して 人 々 が 外交 を 見 守り 、 一 般 市民 の 同 意 を得 る 必 要を 主 張 す る。 い わ ば、 外 交 の 『民 主 化 』で あ り 、 民主 主 義 の イデ オ ロ ギー に よ る 外交 の イ デオ ロ ギ ー 化で あ っ た。 さ ら に は、 勢 力 均衡 や 同 盟関 係 と い った 、 古 くさ く 権 謀 術数 の 渦 巻く 国 際 政 治を 変 革 し、
会 議外 交 や 国際 組 織 に よっ て 、 公開 の 討 議 によ り 紛 争を 解 決 す るこ と を めざす。」1 2ということになる。
「旧 外 交 」以 前 の 外 交の 歴 史 を辿 れ ば 、 それ こ そ シュ メ ー ル 、エ ジ プ ト を経 て 、 ギリ シ ア 、 ロー マ の 時代 か ら ビ ザン テ ィ ン、 近 代 外 交の 発 祥 と いわ れ る 一五 世 紀 北 イタ リ ア (常 駐 大 使 の発 足 ) 、そ し て ヨ ーロ ッ パ 大 陸へ の 外 交の 拡 が り (一 六 世 紀フ ラ ン ス のリ シ ュ リュ ー 時 代 の仏 外 務 省 の創 設 ) など 、 外 交 が専 門 分 野と し て 成 立す る 前 史あ る い は その 萌 芽 期 の様 相 が 明ら か と な る。 ま た 用語 の 問 題 もあ る が ニコ ル ソ ン の「 旧 外 交 」以 前 の 、そ れ こ そ ウィ ー ン 会 議 に 象 徴 され る 一 九世 紀 ヨ ー ロッ パ 外 交 は「 古 典 外交 」 と よ ばれ る こ とが あ り 、 たと え ば 高坂 正 堯 の 『古 典 外 交 の 成 熟 と 崩 壊 』1 3は 、 「 旧 外 交 」 の 基 礎 を な す 「 同 質 性 」 「 貴 族 性 」
「 自立 性 」 につ い て い わゆ る 「 欧州 協 調 」 時代 の 外 交の あ り 方 を鮮 や か に示している。
駆け 足 で 長大 な 外 交 「史 」 を 一覧 し た の は、 「 外 交」 が 曲 折 を経 て 、 同 質の コ ミ ュ ニ テ ィ ( 同様 の ア クタ ー ) 、 近似 の 文 化的 背 景 、 専門 家 集 団 の誕 生 、 国家 と い う 同類 の 外 交パ ー ト ナ ーの 形 成 を経 て 、 収 斂し た と 見 えた の ち 、 世 界 の あ り方 は 大 きく 変 化 し 、そ れ こ そ今 日 の テ ロリ ズ ム や 国家 と は 非対 称 な 潜 在的 外 交 相手 ( あ る いは 外 交 不能 ) の 問 題に 繋 が る端緒が見え隠れしている、その継続性が重要と考えるからである。
ニコ ル ソ ンが 代 表 す る「 伝 統 的」 な 「 外 交」 で は 、そ の 当 事 者が 「 ヨ ー ロッ パ の 先進 国 」 で あり 、 ま さに サ イ ク ス= ピ コ 協定 が 代 表 する ご と く 、ヨ ー ロ ッパ の 大 国 が他 の 地 域に 、 い っ てみ れ ば 恣意 的 に 国 境を 画 定 す るこ と ま で行 っ て い た。 し か し現 代 の 外 交 で は そ れと は 違 っ た意 味 も 含めて非 対称的な相手との交渉が珍しいことではなくなっている。
さて 現 代 世界 に お け る外 交 の あり 方 の 変 化と し て 、ま ず 第 一 の事 例 を 示 そう 。 こ こに と り あ げる の は 、新 た な 複 雑性 の 問 題で あ り 、 それ は イ ン ドと ロ シ アと の 外 交 関係 に 影 響を 及 ぼ し てい る 。 二国 間 関 係 に収 斂 し そ うな 外 交 課題 は 、 ロ シア が 他 の国 々 と 関 税同 盟 を 結ん で い る ため に 多 国 間の 問 題 とな り 、 敵 対し て い る訳 で は な いが 、 問 題解 決 に 手 間が 掛 か るという事例である。
ここ で 、 国際 社 会 に おい て 、 また 国 際 的 な通 商 ・ 経済 協 力 関 係に お い て 、大 国 間 と、 そ し て 必ず し も そう で な い 国の 利 害 関係 が ど の よう に 交 差する のか につ いて 、イン ドの 出版 物“ Hindu Business Line”に 記載 さ れ て い た ‘Kazakh blocking India -Russia free trade pact.
Manmohan Singh may ask Putin to intervene ’と題する 記事を引用 して一つ例をあげてみることにする 。
米 国 と EU の 市 場 が 経 済 危 機 を 続 け て い る こ と を 踏 ま え て 、 イ ン ド は 製 品 輸 出 先 を 多 様 化 す る こ と を 決 定 し 、 最 近 ロ シ ア と の 経 済 関 係 を も っ と も 重 視 し て い る 。 し か し 、 イ ン ド と ロ シ ア の あ い だ の 二 国 間 自 由 貿 易 協 定 を 締 結 す る 計 画 に は 、 今 の と こ ろ カ ザ フ ス タ ン が 支 障 を も た ら し て い る 。 そ の た め 、 イ ン ド の シ ン 首 相 は 、 ロ シ ア を 訪 問 し た 際 に 、 こ の 問 題 の 解 決 に 向 け て カ ザ フ ス タ ン を 説 得 し て も ら う
よ う ロ シ ア の プ ー チ ン 大 統 領 に お 願 い す る こ と に な る だ ろ う 。 イ ン ド は 、 ロ シ ア が カ ザ フ ス タ ン に 対 し 、 イ ン ド と の 貿 易 協 定 に 同 意 す る よ う 説 得 す る こ と を 期 待 し て い る 。 何 故 な ら 、 現 在 に お い て ロ シ ア と の い か な る 経 済 条 約 も 、 必 ず ロ シ ア と の 関 税 同 盟 に 入 っ て い る カ ザ フ ス タ ン と ベ ラ ル ー シ の 意 向 な し に は で き な い 。 昨 年 、 イ ン ド は 関 税 同 盟 と の 間 で 、 経 済 協 力 に 関 す る 協 定 締 結 の 可 能 性 に つ い て 研 究 す る た め の 共 同 グ ル ー プ を 組 織 す る こ と を 提 案 し た 。 そ し て 、 ロ シ ア と ベ ラ ル ー シ は こ の 提 案 を 受 け た が 、 カ ザ フ ス タ ン が 反 対 し た 。 そ の 結 果 、 こ の 構 想 は 未 だ に 実 現 し て い な い 。 イ ン ド 側 関 係 者 が 現 地 大 使 館 を 含 め て さ ま ざ ま な チ ャ ン ネ ル を 通 し て カ ザ フ ス タ ン 政 府 と 交 渉 を 行 っ て い る が 、 現 在 ま で 結 果 が 出 て い な い 。1 4
こ れ は け っ し て 、 カザ フ ス タン と イ ン ドの 関 係 が発 展 し て いな い と か、
両 国の 間 に 解決 で き な いよ う な 問題 が 存 在 する と い うよ う な こ とを 意 味 し ない 。 た だ、 現 在 、 国際 協 力 関係 の 問 題 を解 決 す るに は 、 す べて の 関 係 国の 利 益 を考 慮 し な けれ ば な らな い と い う一 例 を 示す こ と に ほか な ら な い。 ち な みに 、 カ ザ フス タ ン は イ ン ド と の関 係 を 重視 し て お り、 国 の 南 部か ら 、 イン ド の 国 境ま で 石 油パ イ プ ラ イン を 敷 設 す る 案 件 を検 討 し て いる 。 そ して こ の パ イプ ラ イ ンを カ ザ フ スタ ン 南 部か ら ま ず ウズ ベ キ スタンにまで敷設し、そしてさらに TAPI ルート(現在計画されている ト ルク メ ニ スタ ン か ら アフ ガ ニ スタ ン 、 パ キス タ ン 、そ し て イ ンド に ま で 至る 幹 線 パイ プ ラ イ ンル ー ト )を 通 す 案 件で あ る が、 こ れ ら の全 て の 国 の利 害 に かな っ た 形 でし か 実 現で き な い 案件 で あ り、 こ れ も 現代 の 国 際関係の特徴の一例 となるだろう。
こ の よ う な事 例 を み ると 、 過 去の よ う に 大国 な ど が 自 己 の 利 益の み に 集 中し 、 極 端に 閉 鎖 的 な態 度 を 取る ハ ー ド ・交 渉 概 念か ら 、 パ ート ナ ー と 共同 で 諸 問題 の 検 討 と解 決 を めざ す よ う な 概 念 に 代わ っ て ゆ く趨 勢 が 確 認で き る 。そ れ は 、 相互 利 益 の 充 足 と 十 分に 公 開 され た 性 質 の交 渉 を 志向したものとなるだろう。
そし て 対 話へ の 志 向 は、 国 際 社会 が 抱 え る共 通 の 環境 問 題 や 国際 テ ロ リ ズム 、 さ まざ ま な 対 立の 調 整 、統 合 プ ロ セス な ど の展 開 と 結 びつ い て 発 生し て い る諸 問 題 を 、ま さ に 共同 の 努 力 で解 決 す る必 要 性 に よっ て 形 づ くら れ て いる も の と 位置 づ け るこ と が で きる 。 そ の結 果 、 国 際問 題 を 多 国間 の 参 加、 話 し 合 いに よ っ て 解 決 す る こと が 、 客観 的 に 見 て 現 代 外 交の主要な役割となって くる。
しか し な がら 、 多 面 的な 外 交 と多 面 的 な 交渉 は 、 同時 に 、 実 際の 外 交 に おい て 少 なく は な い 困難 を 生 み出 し て い る。 そ こ で、 問 題 の 討議 に 参 加 する 国 の 数が 増 え た こと は 、 利益 の 全 体 構造 の 複 雑化 や 参 加 国同 士 の 同 盟の 創 設 、交 渉 形 態 にお け る 指導 国 の 出 現な ど を もた ら し て いる 。 そ の 他、 多 面 的な 交 渉 で は、 日 程 や場 所 の 設 定、 決 定 の策 定 と 採 択、 会 議 の 議長 国 の 選出 な ど 、 多く の 組 織上 の 問 題 や手 続 き 問題 、 そ の 他、 さ ま ざ まな 技 術 的な 問 題 が 発生 す る 。そ し て 、 この こ と が ひ い て は 、交 渉 過 程の官僚主義化を促進する。
現代 外 交 の多 面 性 と 公開 性 は 世界 の グ ロ ーバ ル 化 や民 主 主 義 化と も 関 係し て い る。 そ の 結 果、 交 渉 や締 結 さ れ た協 定 、 そし て 外 交 活動 全 体 が、
社 会の 真 剣 な注 視 の 下 に置 か れ てい る 。 こ のよ う な こと が 進 行 して い る の は、 マ ス コミ 、 メ デ ィア に よ る情 報 伝 達 や、 多 く の協 定 は 批 准承 認 さ れ なけ れ ば なら な い と い う こ と のお か げ で ある が 、 更に は 、 非 政府 組 織 や さま ざ ま な種 類 の 運 動体 、 例 えば 、 少 数 民 族 や 宗 教系 の 無 数 のN P O な ど、 同 じ く、 社 会 団 体や 科 学 者集 団 が 、 ます ま す 頻繁 に 国 際 舞台 に 登 場 す る よ う に な っ た こ と に よ る 。 こ の 外 交 の 傾 向 は 、‘ Track Two Diplomacy’ 、つまり、「非公式 外交」という名 称で知られている。
この よ う に、 現 在 、 外交 問 題 の範 囲 は 著 しく 拡 大 して い る 。 討議 や 調 整 に付 さ れ るの は 、 軍 縮や 環 境 問題 、 国 際 テロ リ ズ ム、 貧 困 と の闘 い 、 食 糧危 機 問 題、 様 々 な 社会 問 題 など で あ る 。そ の た め、 原 則 的 に外 交 交 渉 の対 象 と なり う る ア ジェ ン ダ は極 め て 複 雑化 し て おり 、 外 交 官自 身 が これまで知らなかっ た分野を習得せざるを得なくなっている。
二極 シ ス テム と そ の 後の 冷 戦 構 造 の 崩 壊 や2 0 世 紀末 の ソ 連 邦の 崩 壊 と 欧州 連 合 の形 成 は 、 世界 の 様 相を 変 え た 。あ る 国 の国 境 は 一 層透 明 性 を 増し 、 あ る国 は 国 際 的に 孤 立 化に 陥 っ て いる 。 グ ロー バ ル 化 する プ ロ セ スの 影 響 で外 交 や 外 交官 自 身 が変 わ ら ざ るを 得 な くな っ て い る。 あ ら ゆ る国 で 外 務省 の 本 質 や外 交 業 務の 意 味 自 体が 変 化 して い る 。 さて こ こ で 、T・ ゾ ノ ワ 博 士 ( モ ス ク ワ 国 際 関 係 大 学 外 交 講 座 ) の“Gazetta 紙 2004 年 6 月 16 日 号に載ったインタビューから引用しよう。
こ の こ と に 関 し て 、 伝 統 的 な 外 交 業 務 が 必 要 な の だ ろ う か 、 あ る い は そ れ を 根 本 的 に 変 え る 必 要 が あ る の か 、 と 言 っ た 生 々 し い 論 争 が 行 わ れ て い る 国 は も は や 少 な く な い 。 更 に は 、 も っ と 過 激 な 発 想 さ え あ る 。 例 え ば 、 有 名 な 発 言 で も あ る が 、 米 国 大 統 領 の 国 家 安 全 担 当 補 佐 官 だ っ た ブ レ ジ ン ス キ ー 氏 は 『 英 国 に 来 る と 、 ロ ン ド ン に あ る 米 国 大 使 館 は 必 要 な い と 思 う し 、 む し ろ 、 学 生 用 の 寄 宿 舎 に し た 方 が 良 い 。 全 て は 世 界 市 場 に よ っ て 自 ら 調 整 さ れ て い る 現 在 に お い て は 、 外 交 官 は 要 ら な い 』 と さ え 発 言 し て い る 。 勿 論 、 こ れ は 極 端 な 発 言 か も 知 れ な い が 、 外 交 官 自 身 が ど う 受 け 止 め る か は 別 と し て 、 現 代 の 外 交 に つ い て 考 え さ せ ら れ る 発 言 で あ る と 思 う 。1 5
グロ ー バ ル化 の 条 件 下で は 、 国家 と 国 家 、 国 民 と 国民 、 そ し て、 組 織 な どの 間 の 関係 が 著 し く 深 化 し てき て お り 、国 境 そ のも の が 徐 々に 相 対 的 なも の に なっ て き て いる 。 こ れま で 外 務 省が 相 当 程度 、 国 際 交流 、 国 際 関係 を 管 理す る こ と がで き て いた と し て も、 現 在 にお い て は それ は 外 務 省だ け が 担え る も の では な い 。あ ら ゆ る 国 で 外 務 省の 本 質 が 変化 し て き てお り 、 外務 省 の み が、 日 々 深く な り 複 雑化 し 続 ける 国 際 関 係の 管 理 者 であ る こ とは 考 え ら れな く な り、 国 際 交 流の コ ー ディ ネ ー タ 役を 担 え る か、 そ れ も こ う し た 状況 を み ると 、 ど こ まで で き るか と い う とこ ろ で あろう。
国際 舞 台 に進 出 し 、 世界 情 勢 に真 剣 な 影 響を 与 え る能 力 が あ る非 政 府 系の国際組織 が急激に増大しており 、これらの NGO などと協力関係を 構 築す る こ とは 、 現 代 外交 の 大 きな 職 業 的 課題 で も ある 。 従 っ て、 現 在
存 在し て い るよ う な 大 きな 官 僚 主義 の 部 署 を持 つ 外 務省 や 大 使 館は 、 将 来 、不 要 な もの に な る かも 知 れ ない と い う 意見 が 、 かな り 頻 繁 に現 れ る よ うに な っ た。 ま た 、 電 子 メ ー ルや イ ン タ ーネ ッ ト の 発 達 に よ って 、 派 遣 国に お い て新 聞 な ど を読 み な がら 情 報 収 集を 毎 日 のル ー チ ン ワー ク に し てい る 外 交官 の 数 を 削減 す る 必要 性 に つ いて 考 え ざる を 得 な くな っ て い る。 現 在 は、 メ デ ィ アを 通 し た 情 報 収 集 の 高 度 化 のお か げ で 、外 交 官 をわざわざ外国に派遣させる必要がなくなってきているからである。
外交 関 係 の多 国 化 や 外交 ア ク ター の 多 様 化と 軌 を 一に し て 、 こう し た 複 雑化 に 対 応す る ひ と つの 方 策 が、 つ ぎ に 挙げ る 事 例が 示 す 、 効率 化 や コストの削減の例である。ここでは北欧諸国や EU のような世界的共通 性 や共 同 体 とし て の 密 接な 繋 が りを 有 す る 国々 の あ いだ に お け る新 し い 連携に触れることとする。
あま り 話 題に な ら な いが 、 す でに 、 外 交 業務 に 対 する 効 率 化 およ び 支 出 削減 の 具 体例 も あ る 。例 え ば 、ノ ル ウ ェ ーで は 、 外務 省 の 経 費削 減 の た め、 い わ ゆる 「 出 張 大使 」 と い わ れ る 職 務が 誕 生 した 。 大 使 館や 宿 舎 の 維持 経 費 や 大 使 と 大 使館 員 の 給与 を 節 約 する た め 、こ れ ら の 大使 た ち は 、オ ス ロ に居 住 し つ つ、 派 遣 国の 外 務 省 とイ ン タ ーネ ッ ト を 通じ て 交 流 して お り 、 現 地 で 行 なわ な け れば な ら な い何 ら か のこ と が 起 きた 場 合 のみ、そちらに向かうという外交推進である。
特 に現在 EU においては、 著しく分岐した官僚主義的なシステムが 根 付 いて い る こと を 考 え ると 、 以 上の よ う な 発想 が 欧 州に お い て 生ま れ た こ とは 、 大 変 興 味 深 い もの で あ り、 当 然 生 まれ る べ きこ と で も ある よ う に思う。というのも、現在 EU のすべての参加国の間には 二国間の外交 関 係が 構 築 され て お り 、そ れ ぞ れの 国 お い てそ れ ぞ れの 国 の 大 使館 が あ る 。 更 に そ れと 平 行 し て、 欧 州 委員 会 に は EU 参 加 国の す べ て が代 表 を 置き、欧州委員会自身もまたそれぞれの EU 参加国に代表を置いて いる。
そ して こ の 欧州 諸 国 の 相互 関 係 が、 膨 大 な 管理 主 義 を生 ん で い るだ け で はなく、膨大な経費を 要 している。
今 日、 国家が未だ存続し、しかしながら EU という共同体がその 地歩 を 固め つ つ ある 現 在 、 ある 時 に は「 重 複 的 」か つ 余 分な 課 程 を 含ま ざ る
を えな い よ うに な っ た 。こ の よ うな 複 雑 な シス テ ム の合 理 化 の ため 多 く の 検討 が な され て い る 。時 に は 、 そ れ は な いだ ろ う と驚 く ほ ど の発 想 も ある が 、 兎 に角 さ ま ざま な コン セプ ト が 出て き てい る。 例 え ば、EU の 全 ての 加 盟 国 の た め の 唯一 の 外 務省 を 創 設 しよ う と 言う ア イ デ ィア が あ る 。今 、 こ の問 題 は 、 少し 賢 明 では な い よ うに 見 え る。 一 つ の 外務 省 を 創 設す る に は、 共 通 の 外交 政 策 を有 す る 必 要が あ る 。安 全 保 障 に関 す る 共 通政 策 が 策定 さ れ な い限 り 、 これ は 不 可 能で あ る 。も っ と 単 純な 提 案 もあ る 。英 国人 が 提 案し て いる のだ が 、EU のあ る 国々 に は 「領 事 」機 能 を、 他 の 国々 に は 「 経済 関 係 」を 担 当 さ せ、 そ の 他の 国 々 に は「 政 治 的」機能を与えると いうものである。一部の EU 参加国は、ラテン・ア メ リカ 諸 国 が 試 み て い る、 第 三 国に 共 通 の 大 使 館 を 持ち 、 共 通 の常 駐 代 表 を置 き 、 その 大 使 は 順番 で 交 代す る 、 と いう 経 験 を取 り 入 れ たい と 考 えている。
ここで 、メールマガジン『Business Media 誠』に掲載 された、非常 に 興味 深 い 記事 「 大 使 館も 共 同 運営 さ れ る 時代 」 ( ジョ ン ・ ガ ー ズ マ 、 マ イケ ル ・ ダン ト ニ オ )の 一 部 を 引 用 さ せ て頂 き た い。 外 交 を めぐ る 大 き な変 化 の 実態 を 伝 え るた め に 、も っ と も 「オ リ ジ ナル 」 な 材 料は 自 ら 関 った 案 件 を述 べ る こ とで あ ろ うが 守 秘 義 務の 問 題 もあ っ て な かな か そ う は行 か な い。 そ こ で 情報 メ デ ィア 上 の 相 応し い と 思わ れ る 情 報に 依 拠 す るこ と と する 。 い さ さか 長 い 引用 と な る が、 こ れ はア イ デ ィ アや 議 論 そ のも の の 引用 と い う より は 、 むし ろ ウ ェ ッブ 上 の 外交 を め ぐ る「 フ ァ ク ト」 の 記 述と い う こ とが で き る。 そ の 点 のご 理 解 を得 ら れ れ ばと 考 え ている。
「 大 使 館 も 共 同 運 営 さ れ る 時 代 」
時 代 遅 れ の 官 僚 制 が イ ノ ベ ー シ ョ ン を 妨 げ て い る と い う よ く あ る 批 判 は 真 理 の 一 面 を 衝 い て は い る 。 福 祉 の 充 実 し た 国 で は 、 社 会 が 硬 直 し て 機 能 不 全 に 陥 り か ね な い 。 し か し 政 府 内 部 に も 、 非 常 に 疑 い 深 い 人 に さ え 将 来 へ の 希 望 を 抱 か せ る よ う な 、 協 力 、 長 期 的 な 発 想 、 イ ノ ベ ー シ ョ ン が 見 ら れ る 。
ベ ル リ ン に は 、 フ ェ レ ス フ ス ( デ ン マ ー ク 語 で 『 み ん な の 家 』 の 意 ) と 呼 ば れ る 複 合 ビ ル が あ り 、 そ こ で は 「 女 神 的 」 理 念 の 極 み と も い え る 手 法 で 外 交 が 展 開 さ れ て い る 。6 棟 の モ ダ ン な 低 層 ビ ル か ら な る フ ェ レ ス フ ス に は 、5 カ 国 ( フ ィ ン ラ ン ド 、 デ ン マ ー ク 、 ス ウ ェ ー デ ン 、 ノ ル ウ ェ ー 、 ア イ ス ラ ン ド ) の 大 使 館 が 入 居 し 、 ス ペ ー ス や 補 助 ス タ ッ フ を 共 有 し て い る 。 大 使 館 員 は 、 共 通 の 理 解 や 目 的 の た め に 相 互 に 自 由 に 行 き 来 し て い る 。
フ ェ レ ス フ ス に 入 居 す る 北 欧 5 カ 国 は 、 当 然 な が ら 歴 史 や 伝 統 も 共 通 点 が 多 い 。 社 会 の 流 動 性 、 経 済 上 の 機 会 、 社 会 全 般 に お け る 女 性 の 地 位 な ど の 面 で も 世 界 の 上 位 に つ け て い る 。 大 使 館 の 共 同 運 営 に よ っ て コ ス ト を 下 げ 、 政 府 間 で 合 理 的 な 関 係 を 築 い て い る 。 わ た し た ち の 取 材 の 窓 口 と な っ た フ ィ ン ラ ン ド 大 使 館 の レ オ ・ リ ス キ は 、 「 フ ェ レ ス フ ス が あ る お か げ で 、 各 国 が 経 済 と 社 会 の 両 面 で 、 格 段 に 足 並 み を 揃 え や す く な り ま し た 」 と 語 っ た 。 「 ビ ジ ネ ス も 遥 か に 進 め や す く な り ま し た 。 互 い に 信 頼 が 生 ま れ ま す か ら 」 。 こ れ は 、 物 を 売 る 、 旅 行 す る 、 不 動 産 を 購 入 す る 、 仕 事 を 求 め て 移 民 す る な ど 、 さ ま ざ ま な 局 面 に 当 て は ま る 。 大 使 館 を 共 同 運 営 す る ア イ デ ア が 持 ち 上 が っ た の は 、 ベ ル リ ン の 壁 が 崩 壊 し て 、 ド イ ツ の 首 都 が ボ ン か ら ベ ル リ ン に 移 っ た 後 で あ る 。 フ ェ レ ス フ ス の 建 築 に あ た っ て は 、 ガ ラ ス を 多 用 し た り オ ー プ ン ス ペ ー ス を い く つ も 設 け た り す る な ど 、 透 明 性 を 重 視 し た ほ か 、 一 体 感 も 表 現 し た 。 五 ヶ 国 の 利 害 の 一 致 を 象 徴 す る た め に 、 緑 色 が か っ た ベ ル ト 状 の 銅 板 を 地 上 15 メ ー ト ル の 高 さ に 張 り 巡 ら せ 、 建 物 ど う し を つ な い で い る 。 こ れ は 通 り か ら も 見 え 、 「 こ こ は 相 互 支 援 に よ っ て 成 り 立 つ 安 全 な 場 所 な の だ 」 と い う 印 象 を 訪 問 者 に 与 え る 。1 6
さて 、 こ のよ う な 試 みは 、 歴 史、 文 化 、 そし て 現 在の 社 会 モ デル の 面 で共 通 性 が高 い 北 欧 五ヶ 国 だ から こ そ 可 能で あ る とい う こ と もで き よ う。
ま た EU が曲折を経ながらも、新しい地域共同体として、その可能性を 開 花さ せ た 時代 で あ っ たか ら こ その こ と で ある 。 国 家間 の 違 い が、 様 々 な レベ ル で 顕著 な 場 合 、い く ら 隣国 同 士 で あっ て も この よ う な こと に は 困 難が 伴 う 。 で は 五 ヶ 国が 大 使 館の 共 同 運 営を 行 っ てい る そ の 原点 を み てみよう。
「 大 使 館 の 共 同 運 営 」
リ ス キ は 、5 カ 国 を フ ェ レ ス フ ス で の 大 使 館 共 同 運 営 へ と 導 い た 理 由 を 説 明 し よ う と し て 、 第 二 次 世 界 大 戦 の 教 訓 と 冷 戦 の 経 験 を 引 き 合 い に 出 し た 。 当 時 、 紛 争 や 孤 立 が い か に 大 き な 犠 牲 を 生 む か 、 誰 の 目 に も 明 ら か だ っ た 。 実 弾 が 飛 び 交 う 戦 争 と 冷 戦 の 両 方 が 過 去 の も の に な る と 、 新 し い 仕 組 み が 生 ま れ た 。 「 危 機 の 時 代 に は 、 誰 も が と も す れ ば わ が 身 の こ と し か 考 え ま せ ん 」 と リ ス キ 。 だ が 平 和 の 訪 れ を 確 信 す る と 、 い ろ い ろ な こ と を 考 え ら れ る よ う に な る 。 こ の 結 果 、E U
( 欧 州 連 合 ) が 誕 生 し て 、 い く つ も の 短 所 を 持 ち な が ら も 、 相 互 理 解 と 安 全 保 障 の 増 進 に 寄 与 し て き た 。
こ の よ う に 、 欧 州 大 陸 の 各 国 の 政 府 は お お む ね 、 従 来 か ら EU に 好 意 的 な の で あ る 。 フ ェ レ ス フ ス が 象 徴 す る 北 欧 諸 国 の 結 束 も 、 こ れ と 同 じ 意 味 合 い を 持 つ 。 リ ス キ は 「 結 束 し た ほ う が 安 全 だ と 分 か っ て い ま す か ら 」 と 言 い 添 え た 。
北 欧 諸 国 に と っ て は 、 単 独 で 動 く よ り も フ ェ レ ス フ ス を 介 し た ほ う が 、 社 会 と の 交 流 や 外 交 活 動 が 著 し く 効 率 化 す る 。 単 独 で 大 使 館 を 構 え る と 、10 人 ほ ど の 職 員 を 置 い て も 訪 問 者 は ま ば ら で 館 内 は い つ も 静 ま り 返 っ た 状 態 だ ろ う 。 と こ ろ が 5 カ 国 が 集 ま る と 、 年 間 に 1 0 0 回 も の 公 開 イ ベ ン ト を 開 催 で き 、 フ ェ レ ス フ ス を 活 動 拠 点 と し た 影 響 力 増 大 も 可 能 に な る 。 コ ス ト 削 減 効 果 は さ て お い て も 、 影 響 力 は 強 ま っ た 。1 7
以上 は 複 数の 国 家 が 共同 し て 外交 公 館 を 運用 し 、 費用 の 削 減 や、 共 通 し た外 交 課 題の 明 確 化 、 そ し て 同 様 な プ ロ グラ ム の 充実 化 を 図 る、 新 時 代 へ向 け て の合 理 的 な 外交 実 践 とい え る が 、も ち ろ んこ う し た 可能 性 が 生ずる背景には北欧地域の近縁性に加えて EU の存在がある。EU の結 び つき は 経 費削 減 の 志 向に と ど まる だ け で はな く 、 当然 な が ら さま ざ ま なグ ロ ーバ ル課 題 に 対す る 共同 歩調 形 成 にも 向 かっ てい る 。EU 諸国 の な かに 経 済 運営 や 対 外 姿勢 の 面 で 異 な る 見 解は あ る のだ が 、 環 境や 資 源