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釜 国 男

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X76

英 米 両 国 に お け る ギ ブ ソ ン ・パ ラ ド ッ ク ス と フ ィ ッ シ ャ ー 方 程 式 の 安 定 性 に つ い て

StabilityoftheGibsonparadoxandFisherequationintheUnited StatesandtheUnitedKingdom

国 男

KunzoKAMA

=L。 は じ め に 2.金 利 と 物 価 の 変 動

3.推

4.テ ス ト方 法 5.テ ス ト結 果

6.他 の 実 証 結 果 と の 比 較

1.は じ め に

今 世 紀 は じめ 米 国 の経 済 学 者1.フ ィ ッシ ャ ーは 一 連 の 著 作 で 名 目利 子 率 と予 想 イ ン フ レの 関 係 を 研 究 し,米 国 と英 国 で は 金 利 と イ ン フ レの 間 に 強 い 正 の相 関 が 存 在 す る こ と を 明 ら か に し た.そ の 後,長 い 間 フ ィ ッ シ ャ ー の研 究 は ほ と ん ど顧 み られ なか った が,1970年 前 後 か ら イ ソ フ

レ傾 向 が 強 ま る と と もに 金 利 と イ ソ フ レ の 関 係 が 再 び 経 済 学 者 の 注 目を 集 め る よ うに な った.特 に,M・ フ リー ドマ ン〔8〕はAEA会 長 就 任 演 説 で フ ィ ッシ ャー仮 説 を 取 りあ げ,ケ イ ンズ 派 マ

ク ロ理 論 に も とず く〔低 〕金 利 政 策 の 限 界 と危 険 性 を指 摘 して 金 融 政 策 の 議 論 に一 石 を投 じた.

フ ィ ッ シ ャー の指 摘 を まつ ま で もな く,理 論 的 に は 名 目金利 は イ ソ フ レ と相 関 す る は ず で あ る が,実 際 に は しば しば 物 価 水 準 と の 間 で きわ め て 高 い 正 の 相 関 が 観 察 され る.J・M・ ケ イ ソ ズ

〔16〕 は,こ の 金 利 と物 価 の 密 接 な 関 係 を"ギ ブ ソ ソ ・パ ラ ドッ クズ'と 命 名 し1),「数 量 的 経 済 学 の全 領 域 の な か で 最 も完 全 に 実 証 され た 経 験 的 事 実 の ひ とつ 」 とみ な した2).

歴 史 的 に は 金 利 は あ る 時 期 に は イ ソ フ レ との 間 で,別 の 時期 に は 物 価 水 準 との 間 で正 の相 関 を 持 って お り,一 見 した と ころ 矛 盾 した 動 きを 示 して い る.し か し こ うした 現 象 は,「 フ ィ ッ シ ャ ー 効 果 」 と イ ソ フ レ予 想 形 成 の観 点 か ら統 一 的 に 説 明可 能 で あ る.い ま,実 物 資 産 と金 融 資 産 の 問 で金 利 裁 定 取 引 が 完 全 に 行 な わ れ,さ らに 均 衡 実 質 金利 は 一 定 と仮 定 す れ ば,名 目金 利 は期 待 イ

1)こ れ が パ ラ ドッ ク ス と考}ら れ た の は,古 典 派 経 済 理 論 に よ れ ば,名 目 金 利 と 物 価 水 準 と の 間 に は 負 の 相 関 関 係 が 存 在 す る と 考}ら れ て い た か ら で あ る.

2)ケ イ ソ ズ,ナ リ ジ ナ ル 版 〔16〕の198ペ ー ジ.

(2)

March1986 1agi,P

国 男:英 米 両 国 に お け る ギ ブ ソ ソ ・パ ラ ド ッ ク ス と フ.ッ シfi方 程 式

物価 変 動 が 完 全 に予 想 され た

ときの金 利

物価 変 動 が 不完 全 に予想 さ れ た ときの金 利

一 一 τ 詞 ④%

io・ e

・ ●o

177

図1物 価 変動 が 完全 に予想 され た とき と不 完 全 に予 想 された と きの金 利 の動 き

ン フ レの 変 化 を 正 確 に反 映 す る.さ らに また,人 々 は 過 去 の イ ン フ レか ら将 来 の イ ソ フ レを 予 想 す る と仮 定 す れ ば,名 目金 利 は過 去 の イ ソ フ レ と正 の 相 関 を 示 す.と ころ が,期 待 形 成 に お い て 遠 い 過 去 の イ ン フ レ ま で考 慮 さ れ る と,予 想 イ ソ フ レ は物 価 水 準 に 類 似 した 動 きを 示 す た め に 見 か け上 金 利 は 物 価 水 準 と高 い 相 関 を 示 す こ とに な る.以 上 は フ ィ ッ シ ャ ー に よ る ギ ブ ソ ン ・パ ラ

ドッ ク ス の解 釈 で あ るが,こ れ を 図 解 す る と図1の よ うに な る(フ リー ドマ ン=シ ュ ワル ツ〔10〕

の497ペ ー ジ 参 照).局 面AとCで は 物 価 は 一 定 割 合 で 上 昇 し,BとDで は 一 定 割 合 で 下 落 して い る.物 価 の動 きが 瞬 時 に か っ 正 確 に 予 想 さ れ る場 合 に は,名 目金 利 はAとCで は 高 く,BとCで は低 くな る.実 質 金利 が 一 定 で あ れ ば,AとBの 間 で の 金 利 格 差 は そ れ ぞ れ の イ ソ フ レ率 の 差 に 等 しい.こ の 場 合 に は イ ソ フ レ と金 利 の 間 に は完 全 な 正 の 相 関 が 存 在 す る が,物 価 水 準 と金 利 は 無 相 関 で あ る.次 に,何 らか の 理 由 で イ ソ フ レ予 想 が 瞬 時 に調 整 さ れず 短 期 的 に 予 測 誤 差 が 生 ず る場 合 に は,名 目金 利 は点 線 で示 した 波 状 の パ タ ー ン とな る.こ の 場 合 に は 金 利 と物 価 水 準 の 問 に は 相 関が み られ るが,金 利 と イ ソ フ レ は 無 相 関 とな る.

結 局,金 利 と物 価 また は イ ン フ レ率 と の相 関 度 を 決 定 す る の は 予 想 イ ソ フ レの調 整 ス ピ ー ドに 他 な ら な い.技 術 的 にい え ば,イ ン フ レ率 に つ い て の 分 布 ラ グの パ タ ー ソが ギ ブ ソ ン ・パ ラ ド ッ

クス を 解 く カ ギ とな る.そ れ で は ラ グ ・パ タ ー ソは 何 に よ っ て 決 ま る の で あ ろ うか.明 らか にそ れ は 物 価 の歴 史 的 変 動 パ タ ー ンに,究 極 的 に は マ ネ ー サ プ ラ イの 動 きに 左 右 され る とみ られ る.

しか る に長 期 的 に み て マ ネ ー サ プ ラ イの 動 きに 最 も重 要 な 影 響 を 与 え るの は 通 貨 制 度 の あ り方 で

あ る.従 って 通 貨 制 度 が 変 更 さ れ る と金 利 と イ ン フ レま た は物 価 水 準 との 関係 も変 化 す る こ とが

予 想 され る.と ころ で,米 国 は1929‑33年 の 大 恐 慌 を 契 機 に 実 質 的 に 金 本 位 制 度 か ら管 理 通 貨 制

度 へ 移 行 した.同 様 に英 国 も1931年9月 に 金 本 位 制 度 を廃 止 して 管 理 通 貨 制 度 を 採 用 した.従 っ

(3)

エ78季 刊 創 価 経 済 論 集Vol・XVNo .2,3,4 て,以 上 の推 論 が 正 しい とす れ ば1930年 代 初 頭 に 金 利 と イ ソ フ レ また は物 価 と の 関 係 は 変 化 した は ず で あ る.本 研 究 の 目的 は 通 貨 制 度 の 変 更 に伴 っ て 金 利 と イ ン フ レ の 関 係(フ ィ ッ シ ャー方 程 式)お よび 金 利 と物 価 水 準 の 関 係(ギ ブ ソ ン ・パ ラ ドッ クス)が 構 造 的 に シ フ トした か ど うか を 英 米 両 国 に つ い て 検 討 す る こ とで あ る.こ こ で は た また ま統 計 デ ー タ の 関 係 で 英 国 と米 国 の2国

しか 検 討 し な か った が,他 の 先 進 諸 国 で も通 貨 制 度 は歴 史 的 に 変 化 し て い る の で,得 られ た 結 果 は 他 の 国 で も参 考 と な る で あ ろ う.

2.金 利 と物 価 の変動

こ こ で は1876年 か ら1975年 ま で の 年 次 デ ー タ を 分 析 す る が ,デ ー タは す べ て フ リー ドマ ン と シ ュ ワ ル ツ の 近 著r米 国 と 英 国 に お け る 貨 幣 経 済 の 長 期 変 動 』 か ら と っ た.す な わ ち,米 国 の 金 利 デ ー タ に は コ マ ー シ ャ ル ペ ー パ ー利 回 り,コ ー ル レ ー ト,優 良 社 債 利 回 り,優 良 工 業 債 利 回 りを, 英 国 に つ い て は3ヵ 月 手 形 レ ー ト と コ ン ソ ー ル 利 回 りを 使 用 した.物 価 は 名 目GNPを 実 質GN

P(1929年 価 格 表 示)で 割 っ た イ ソ プ リ シ ッ ト ・デ フ レ ー タ ー で あ り,物 価 の 対 数 値 の 差 で イ ン フ レ率 を 表 わ し た .フ リー ドマ ソ=シ ュ ワル ツ は 景 気 循 環 局 面 ご と の 平 均 値(phaseaverage)

を 使 用 し た が,こ こ で は 自 由 度 を 増 や す た め に 年 次 デ ー タ を そ の ま ま 用 い る こ と に し た .本 論 に

一5

‑‑10

‑‑/5

図2米 図 の コ マ ー シ ャ ル ペ ー パ ー 利 回 り 、 物 価 水 準 、 お よ び 物 価 変 化 率(1876‑1975年)

年 率 パ ー セ ン ト 指 数(!929=100)

コ マ ー シ ャ ル ペ ー バ ー 利 回 り

1へ \ ,!

コ マ ー シ ャ ル ペ ー パ ー 利 回 り ハ!\

1ノ し!

勿イ面オくミ

1876'78'80'82'84'86'88,90,92'94'96,98/900,02,04,06'08'10'12,14,16'!8,20,22,24

350 300 2JO 200 150 100 50

(4)

March1986釜

(図2っ づ き) 年 率 パ ー ・セ ン ト 25

20 15 ユ0

一10 一 ユ5

‑20

国 男:英 米 両 国 に お け る ギ ブ ソ ソ ・パ ラ ド ッ ク ス と フ ィ ッ シ ャ ー 方 程 式

才旨萎文(1929=100)

照 貫=縞 レ ー/

V!\

1926'28'30'32'34,36'38'40'42'44'46'48'50,52'54'56'58'60'62'64'66'68'70'72'74

179

350 300 250 goo 150 100 JO

入 る 前 に,先 ず 金 利 と物 価 の 動 きを 検 討 す る こ と に し よ う.

図2の 上 段 と下 段 は各hコ マ ー シ ャル ペ ーパ ー利 回 りを イ ソ フ レ率 と物 価 水 準 に 対 比 さ せ た も の で あ る(但 し金利 の 目盛 りは 同 じで は な い).ま ず 米 国 の 物 価 水 準 を 見 る と,物 価 は1876年 か ら1896年 ま で 平 均 年 率1%で 低 下 した あ と,第1次 大 戦 が 始 ま る ま で漸 騰 した.大 戦 中か ら戦 後 に か け て物 価 は 急 騰 した が,1920‑21年 の反 動 不 況 で 急 落 して20年 代 は ほ ぼ 一 定 水 準 に と ど ま っ た.そ の 後1929‑33年 の 大 恐 慌 で約3割 下 落 した あ と,物 価 は1940年 まで ほ とん ど変 化 しな か っ た.し か し第2次 大 戦 の 勃 発 と と もに 戦 時 イ ン フ レが 発 生 し,物 価 は著 し く上 昇 した3).戦 後 物 価 は 反 落 す る こ とな く上 昇 傾 向 を 続 け,60年 代 後 半 以 降 物 価 の 騰 勢 は一 段 と強 ま っ て い る.以 上 の よ うな物 価 の動 き を反 映 して イ ン フ レの 性 質 は1950年 こ ろ を 境 に 大 き く変 化 し て い る.す なわ ち,50年 代 以 前 は イ ソ フ レ率 は ほ ぼ ラ ン ダ ムに 変 化 し て イ ソ フ レ と デ フ レが 交 互 に発 生 す る パ タ ー ンを 繰 り返}し て い た が ,50年 代 以 降 イ ソ フ レが恒 常 的 な 現 象 と な りイ ン フ レ率 は 上 昇 の 一 途 を た ど って い る.

CPレ ー トと イ ソ フ レ率 の 関 係 を 見 る と,1950年 代 以 前 に は短 期 的 に 同 方 向 の 動 きを 示 す こ と もあ るが,全 般 的 に 両 者 は 極 め て 弱 い形 で しか 相 関 して い な い.と こ ろ が,50年 代 以 降 イ ソ フ レ 3)米 国 で は 第2次 大 戦 中 か な り厳 しい 物 価 統 制 が 実 施 され た が,一 部 の企 業 は 品 質 低下 そ の他 の 手 段 で

統 制 回 避 を は か った.こ の た め 実 効 物 価 は公 式 統 計 の物 価 よ りも一 段 と上 昇 した とみ られ る.こ こで 使

用 した 物 価 系 列 は こ の点 に つ い て 調 整 して あ る.

(5)

z80

ド00DO9911

一 ユ0

‑15

‑2a

季 刊 集Vol.XVNo.2,3,4

図3英 国 の3ヵ 月 手 形 レ ー ト、 物 価 水 準 、 お よ び 物 価 変 化 率(1876‑1975年)

年 率 パ ー セ ン ト 指 数(1929=100)

3ヵ 月 手 形 レ ー ト

'‑「 隔 刷一 ̲一̲ノ

牛勿イ面変 イヒ捧{

1876'78'80,82,84'86'88'90'92,94,96'98'1900'02,04℃6'08'10'工 一2・14,ユ6,ユ8・20・22,24

(図3つ づ き)

25年 率 パ ー セ ン ト 指 数(1929=1・ ・)

20

15物 価 変 化 率

10

一5

‑‑10

‑‑15

700 000

×00 400 .3ao 'LOO 100

90

、/、

vハ

牛勿イ面7」く鷲隻

soo 700 GOO XOO goo Sao 200 100

(6)

March1986釜 国男 ・ ・ 英米両 国におけ るギ プ ソソ ・パ ラ ドックス とフ ィッシャー方程式 ・8・

傾 向 の 定 着 化 に伴 っ て両 者 の 関 係 は非 常 に タ イ トな もの と な っ てい る.他 方,物 価 水 準 と の 関 係 を 見 る と,第1次 大 戦 前 に はCPレ ー トは物 価 と強 い 相 関 を 示 して い る が,大 戦 後 相 関 関 係 は ほ と ん ど存 在 しな い.

図3は 英 国3ヵ 月 手形 レ ー トと物 価 お よび イ ン フ レ との 関係 を 示 した もの で あ る.物 価 は1876 年 か ら1914年 ま で ほ ぼ 一 定 で,第1次 大 戦 中か ら戦 後 の 一 時期 にか け て 急 騰 した あ と,1920年 代 か ら30年 代 半 ば にか け て 下 落 した.そ の 後 物 価 は 上 昇 に 転 じ,年 次 デ ー タで み る限 り1935年 か ら 75年 まで 英 国 経 済 は 一 度 もデ フ レを 経 験 し て い な い.こ とに60年 代 後 半 以 降,物 価 上 昇 に 一 段 と は ず み が っ い て い る こ とが 注 目 され る.次 に イ ン フ レ率 を 見 る と,1950年 代 前半 ま で は 変 動 が 激 し くイ ソ フ レ とデ フ レが 交 互 に 発 生 して い るが,50年 代 以 降 イ ソ フ レ率 が 毎 年 着 実 に 上 昇 して 英 国 経 済 を悩 ませ て い る こ と が 分 か る.手 形 レー トと物 価 の 動 きを 比 較 す る と,第1次 大 戦 前 ま で は 弱 い な が ら も相 関 が 認 め られ る が,そ の 後 シ ス テ マ テ ィ ヅ クな 関 係 は み られ ない.手 形 レ ー ト と イ ソ フ レ率 は1950年 代 半 ば ま で は ほ とん ど相 関 して い な い が,そ の 後 は か な り類 似 した 動 きを 示 し て い る.但 し英 国 で は 物 価 統 制 が 繁 頻 に行 な わ れ,ま た イ ン グ ラ ソ ド銀 行 が 公 定 歩 合 を 通 じ て し ば し ば手 形 レ ー トを 操 作 して い た こ とか ら,手 形 レー トと イ ソ フ レの 関 係 は 米 国 に お け るほ ど緊 密 な も の で は な い4>.

な お 本 節 で は短 期 金 利 と イ ソ フ レお よび 物 価 水 準 と の 関 係 を 概 観 した が,長 期 金 利 は短 期 金 利 と連 動 した 動 き を示 して い る の で長 期 金 利 に つ い て も お お む ね 以 上 の よ うな 関 係 が 観 察 され る.

上 の 図2と 図3は,金 本 位 制 度 の 下 で は ギ ブ ソ ソ ・パ ラ ド ッ クス が 成 立 し,管 理 通 貨 制 度 の下 で は フ ィ ッシ ャ ー 関係 式 が 観 察 さ れ る こ とを 示 喚 し て い る が,次 節 以 降 で は厳 密 な 統 計 的 手 法 を 用 い て この 点 を さ らに詳 し く検 討 す る.

3.推 計 式

先 ず,ギ ブ ソ ン ・パ ラ ド ッ ク ス を 計 測 す る た め に 名 目 金 利 を 定 数 項 と 物 価 水 準(対 数 値)に 回 帰 さ せ る と表1の 結 果 が 得 られ る5).標 本 期 間 は1876‑1975年 で,標 本 数 は100個 で あ る.結 果 を み る と,物 価 水 準 の 係 数 は 全 部 プ ラ ス で,CPレ ー ト と 工 業 債 利 回 り以 外 で は5%水 準 で 統 計 的 に 有 意 で あ る.し か し コ ソ ソ ー ル 利 回 り 以 外 で は 決 定 係 数 が 極 端 に 低 く,金 利 変 動 は 物 価 水 準 で は ほ と ん ど 説 明 で き な い こ と が 分 か る.ま た ダ ー ビ ン ・ ワ トソ ン 比 は 誤 差 に 系 列 相 関 の あ る こ と を 強 く示 唆 し て い る.従 っ て 表1の 結 果 か ら 判 断 す る と,一 般 に,戦 時 と平 時 を 含 め た 全 標 本 期 間 で は パ ラ ド ッ ク ス は 成 立 し な い と 言}る.そ こ で 物 価 統 制 が 行 な わ れ た1914‑18年,1939一

4)詳 し くは フ リー ドマ ン=シ ュ ワル ッ前 掲 書 の 表10・6を 参 照.そ こで は名 目金 利 と イ ン フ レ率 お よ び 物 価 水 準 との 相 関 係 数 が 様 々な 期 間 ご とに 示 して あ る.

5)推 定 式 の ダ ー ビ ン ・ワ トソン比 は か な り低 い が,第4節 の 安 定 性 テ ス トに 合 わ せ て こ こ で もOLSを

用 い る こ とに した.

(7)

182 季 刊 創 価 経 済 論 集 表1ギ ブ ソ ン ・パ ラ ドック ス の 計 測 結 果

Vol.XVNo.2,3,4

説明 変数

(米) コ マ ー シ ヤ ル ペ ーパ ー利 回 り

(米) コ ー ル レ ー ト

(米) 優良社 債

利回 り

(米) 優 良 工 業 債

利 回 り

(英) 3カ 月 手 形 レー ト

(英) コ ン ソ ー ル

利 回 り

定数項 3.76 (2.374)

一一2 .413

C‑1.531)

11SI co.os7)

4,7ユ7 04.262)

1・:

C‑4.X88)

‐7 .3go (‑8.433)

ogYt 0.0539 (0.155)

ユ,355 (3.93ユ)

1::・

(4.684)

0.0ユ08 (0.044)

i.79s C7.069)

2,466 (ユ3.405)

RZ D.W.

÷0・

0,335

0,ユ36 0.X74

0,183 0,074

÷0 0,054

0,338 0,336

0,647 0,245

(注)係 数 推 定 値 の 下 の カ ッ コ内 の 数 値 はt値 で あ り,従 属 変 数 の デ ー タ期 間 は す べ て ユ876‑1975年

で あ る。

45年 を 除 い て 再 推 定 す る と,決 定 係 数 と ダ ー ビ ソ ・ワ ト ソソ比 に 改 善 が み られ る もの の,コ ソ ソ ー ル利 回 り以 外 で は や は り金 利 を 物 価 水 準 で 説 明す る こ とは 困 難 で あ る .

次 に 名 目金 利 と イ ソ フ レ の 関 係 を 検 討 し よ う.い ま 実 物 資 産 と金 融 資 産 の 間 で 完 全 な 金 利 裁 定 取 引が 行 なわ れ,し か も予 想 イ ソ フ レは 過 去 の イ ソ フ レに 基 づ い て 形 成 され る と仮 定 す る と

n

Rt=ρ*+Σ ω 乞 πε一恋

2=O (1)

が 成 立 す る.こ こでRtはt期 の名 目金 利 で あ り,ρ*は 均 衡 実 質 金 利 で コ ソス タ ン トとみ な す.

π図 は2期 前 の イ ソ フ レ率 で あ る.右 辺 の 分 布 ラ グの 長 さ は貸 付 期 間 に よ って 異 な り,長 期 金 利 ほ ど長 くな る で あ ろ う.そ れ は ま た,イ ン フ レ率 の 統 計 的 性 質 に も依 存 す る とみ られ る.実 質 金 利 は,一 般 に 予 測 期 間 が 長 くな る ほ ど イ ソ フ レ予 測 は難 か し くな リ リス クが増 大 す る の で 貸 付 期 間 に 比 例 して 高 くな るで あ ろ う.フ ィ ッ シ ャー〔7〕は 『利 子 の 理 論 』 で米 国 と英 国 の長 期 債 利 回 りと卸 売 物 価 変 化 率 に っ い て(1)式 を 計 測 した が,20年 か ら30年 とい う異 常 に 長 い 分 布 ラ グを 使 用 した.し か しギ ブ ソ ソ ・パ ラ ドッ ク ス の説 明 自体 は本 稿 の 目的 で は な い の で,も っ と短 い ラ グ を 用 い る こ とに した.す な わ ち 短 期 金 利 に つ い て 過 去5年 問,長 期 金 利 につ い て は 過 去9年 間 の イ ン フ レ率 を 説 明 変 数 と し て使 用 した.

表2は 標 本 期 間 と して 戦 時 も含 め た 場 合 の(1)式 の計 測 結 果 で あ る.定 数 項 は長 期 金 利 の 方 が 大 き くな る傾 向 が み られ るが,こ れ は 資 金 の 貸 付 期 間 に応 じて均 衡 実 質 金 利 が 高 くな る こ とを 示 唆 して い る.イ ソフ レの 係 数 を み る とCPレ ー トと工 業 債 利 回 りで は プ ラス 符 号 と マ イ ナ ス 符 号 が 混 在 して い る が,そ の 他 の 金 利 で は 係 数 は 全 部 プ ラ ス で あ る.し か し な が ら係 数 のt値 は 低 く,統 計 的 に 有 意 で は な い.こ れ は主 と してOLS推 定 法 を 使 用 した こ と と,戦 時 お よ び第1次 大 戦 前 の デ ー タ を 含 め た こ とに よ る.平 時 の デ ー タだ け を 用 い た 場 合 に は,ほ と ん ど全 部 の 係 数

に つ い て 有 意 性 が 高 ま り決 定 係 数 も若 干 上 昇 す る も の の,全 体 的 な 結 果 は表2と 大 して 変 わ ら な

い.

(8)

March':・ 国 男:英 米 両 国 に お け る ギ ブ ソ ン ・パ ラ ド ヅ ク ス と フ ィ ヅ シ ャ ー 方 程 式

i83

表2フ ィ ッ シ ャ ー方 程 式 の計 測 結果

1

説 明 変数

(米)1) コ マ ー シ ャ ル ペ ーパ ー利 回 り

(米)1) コ ー ル レ ー ト

(米)2) 優 良 社 債 利 回 り

(米)2) 優 良 工 業 債

利 回 り

(英)1) 3カ 月 手 形 レ ー ト

(英)3) コ ン ソ ー ル

利 回 り

定数項

3,950 φ

(ユ8.311)

3,524 (ユ5.665)

3,989 028.770)

4,801 (30.294)

2,851 (11.73ユ)

3,366 (4.130)

Ilt

一 〇 .00732 C‑0.173)

0.0256 {0.578)

o.oa149 (0.056)

一 〇 .022 (‑0.400

0,ユ07 (2.ユ09)

0,ユ30 (2.732)

∬t‑1 0.00721

(0.ユ58)

o.oユ94 (0.409)

0.00720 (0.249)

一 〇.00609

(‑0.ユ84)

0.0454 0.687)

0.0115 (0.ユ82)

Ilt‑z

一 〇 .00963 (‑0,210)

0.0ユ42 (0.296)

0.00265 (0.09ユ)

一 〇.0133

C‑0.400)

0.0ユ34 (0.20t)

0.0577 CO.906)

∬t‑3 0.0436 CO.955}

1.1:

C7.278)

0.00677 0.234)

o.ooili O.034)

0.00923 CO.139)

0.0102 co.isl

∬t‑4

i!!・Z (0.232)

0.0209 CO.472

0.0工26 CO.427)

0.00127 0.038)

0.0505 CO.963)

11.1.

(0.950)

∬t‑5

0.00853

(0.295)

一 〇 .00159 C‑0.048)

Ooo77s (0.121)

∬ レ6

0.00330

(0.114)

‐o .otoo C‑o.3a4)

0.0429 (0.669・)

11t‑7 111'・.'

CO.340)

一一〇 .00372

←0.114)

0.00290 (0.0461)

Ilt‑s

0.00521

(a.工97)

一 一〇 .00512

←0.ユ69)

0.0655 (1.336)

Rz D.W.

0,0ユ6 0,328

0,064 0,492

0,022 0,061

0,014 0,059

0,185 0,256

o.3zo O,ユ68

(注)1)従 属 変 数 の 期 間 は ユ876‑一一1975年

2)〃 ユ878‑X975年

3)〃 ユ877‑1975年

4.テ ス ト方 法

級 済 学 の 実 証 分 析 で は 方 程 式 の 係 数 推 定 値 と 共 に 係 数 の 安 定 性 が し ば し ば 問 題 と な る.古 く は フ リ ー ドマ ン=マ イ ゼ ル マ ン〔9〕 と 安 藤=モ デ ィ リア ニ ー 〔1〕 の 間 で 論 争 さ れ た 投 資 乗 数 と 貨 幣 流 通 速 度 の 安 定 性 の 問 題 が あ り,最 近 で は 貨 幣 需 要 関 数 シ フ トの 問 題 が あ る.従 来,回 帰 係 数 の 安 定 性 を テ ス トす る た め に 様 々 な 方 法 が 用 い ら れ て き た が,何 れ も 研 究 者 の 主 観 的 判 断 を 要 す る と い う欠 点 を も っ て い る.し か し 最 近,ク ォ ソ ト〔19〕,ゴ ー ル ドフ ェ ル ト=ク ォ ン ト〔13〕,お よ び ブ ラ ウ ソ=ダ ー ビ ソ=エ バ ソ ス 〔3〕が 構 造 変 化 を 検 出 す る 新 し い 方 法 を 開 発 し て 広 く使 わ れ る よ うに な っ た6).こ の 方 法 は 計 算 手 続 が や や 複 雑 に な る が,デ ー タ 以 外 の 情 報 は 一 切 必 要 と し な い 点 で 優 れ て い る.そ こ で 本 研 究 で も ブ ラ ウ ン=ダ ー ビ ン の 方 法 を 用 い る こ と に し た .筆 者 の知 6)経 済 学 の分 野 で ブ ラ ウ ソ=ダ ー ビ ン法 を 適 用 した 代 表 例 と して,カ ー ン 〔17〕,〔18〕,ボー トン 〔2〕 ,

ヵ メ ロ ソ 〔4〕,ス タ ー ン他 〔20〕等 を あ げ る こ とが で きる.

(9)

・84季 刊 創 価 経 済 論 集VoLXVNo。2,3,4

る 限 り で は これ ま で 我 が 国 で は 使 用 さ れ た 例 が な い 比 較 的 新 しい 方 法 な の で,実 証 結 果 を 検 討 す る 前 に,本 節 で は ブ ラ ウ ソ=ダ ー ビ ソ 法 を 説 明 す る こ と に し よ う.

(1)残 差 の 累 積 和 テ ス ト(CusumTest)

先 ず 次 の よ う な 標 準 的 回 帰 モ デ ル を 仮 定 す る.

∠ ソ、=κ〆β、+ut,渉=1,2,…,7「(2)

こ こ で 夕,はt期 の 従 属 変 数 で あ り,xtはk個 の 説 明 変 数 か ら成 る カ ラ ム ベ ク トル で あ る.xtの 一 番 目 の 要 素 は 常 に1で あ り ,残 り の 要 素 は す べ て 確 定 変 数 と 仮 定 す る.β 、は 回 帰 係 数 の ベ ク ト ル で あ り,誤 差 項 勧,…,uTは 互 い に 独 立 な 平 均 ゼ ロ,分 散6・2,…,6T2の 正 規 変 数 で あ る.

帰 無 仮 説 は 回 帰 係 数 と 誤 差 項 の 分 散 が コ ン ス タ ン トと い う仮 説 で あ り, β、=β2=…=βT=β

2‑,22‑2‑61̀=6 à==6T̀=6

で表 わ さ れ る.い ま最 初 のr個 の観 測 値 か ら計 算 した 回 帰 係 数 の最 小 自乗 推 定 値 をb,と し,次 の よ うな変 数w.を 定 義 す る.

wr‑

N(、+素 告 淘 一万 ・Y‑k+1,… ・T(3)

こ こ でX/r‑、=[x1,…,xr‑i]で あ り,分 子 はY.の 予 測 誤 差,分 母 は 標 準 化 の た め の ス ケ ー ル 変 数 で あ る.帰 無 仮 説 の 下 でwk.・,…,wrは 互 い に 独 立 で 平 均 ゼ ロ,分 散 ♂ の 正 規 分 布 と な

る.

い ま β、 が あ る 特 定 の 期 に 変 化 し て そ の 後 再 び 一 定 に と ど ま る と 仮 定 す る と,wrの 平 均 値 は 1期 か ら そ の 期 ま で は ゼ ロ で そ の 後 は ゼ ロ以 外 の 値 と な る.そ こ で ま ず 最 初 に 考 え ら れ る の は, 予 測 誤 差 の 累 積 和

r

6ゴ ニ滝+1

A6:6の 推 定 値 で 全 期 間 の デ ー タ使 用

を 時 間 と 共 に プ ロ ッ ト し て 変 動 パ タ ー ン を 調 べ る こ と で あ る.帰 無 仮 説 が 正 し い と き に はWk。 、,

… ,YYTの 確 率 分 布 は 特 定 の 性 質 を も っ た 正 規 変 数 で 近 似 可 能 で あ る.そ こ で こ の 性 質 を 利 用 し て 棄 却 域 を 設 定 で き る が,こ こ で は こ う し た グ ラ フ に よ る 方 法 の 代 わ り に1確 。iの 最 大 値 を 求 め て 有 意 性 検 定 を 行 な う こ と に し た.な お 回 帰 係 数 が 標 本 期 間 の 最 初 の 部 分 で は 不 安 定 で 途 中 か ら 一 定 と な る 場 合 を 考 慮 し て 時 間 軸 を 逆 に し て 以 上 の テ ス トを 繰 り返 し た .

(2)残 差 自 乗 の 累 積 和 テ ス ト(Cu̲umofSquaresTest)

こ の テ ス トで は(3)式 で 定 義 した",を 自 乗 し て 累 積 和

Sr‑r

j=k+、 観 皇 、w,2,Y‑k+・ ・ …,T(5)

を 計 算 し,そ の 変 化 パ タ ー ン を 調 べ る.S。 は 全 期 間 の 自乗 和 で 基 準 化 し て い る た め0と1の 間 に

(10)

March1986'釜 国 男:英 米 両 国 に お け る ギ ブ ソン ・パ ラ ドヅ クス と フ ィ ヅ シ ャ ー方 程 式 ・$5 あ り,Y=kの と き0でr=Tの と き1と な る.帰 無 仮 説 の 下 でSrは 平 均 値(r‑k)/(T‑k)の

ベ ー タ 分 布 と な る 性 質 を 用 い て 棄 却 域 を 設 定 で き る が,こ こ で は[S。‑E(Sr)iの 最 大 値 を 求 め て 有 意 性 検 定 を 適 用 し た.以 上 の 前 方 テ ス トに 加 え て,最 後 か らk番 目 の 観 測 値 か ら始 め て1番 目 の 観 察 値 で 終 わ る 後 方 テ ス ト も 同 時 に 行 な っ た.

③ ク ォ ン トの 対 数 尤 度 比 テ ス ト

こ の テ ス トは,回 帰 パ ラ メ ー タ ー が 標 本 期 間 の 途 中 で1回 だ け シ フ ト し た 疑 い が あ る 場 合 に 有 効 で あ る.こ れ は 通 常 の 尤 度 比 テ ス トの 一 種 で,対 数 尤 度 比

ム ー1・gio(帰無 仮 説 の 下 で の観 察 値 の 最 大 尤 度 対 立 仮 説 の 下 で の 観 察 値 の 最 大 尤 度)

(6)

をk+1期 か らT‑h‑1期 に つ い て 計 算 す る.対 立 仮 説 は,回 帰 パ ラ メ ー タ ー は1期 か ら7期 で は(β 、,σ 、2),(y+1)期 か らT期 で は(β2,622)と い う仮 説 で あ る.実 際 の テ ス トで は(6)式 の 代 わ り に 右 辺 を 展 開 し て 得 ら れ る.

弓7・1・w296?+12(T一 り1・9潔 一 告 丁 ・1・g62(7)

を 使 用 す る.こ こ で6、2,6z,^26は そ れ ぞ れ 最 初 のY個 の 観 察 値,残 り7L7個 の 観 察 値,全 期 間 の 観 察 値 か ら 計 算 し た 回 帰 残 差 の 自 乗 和 を 標 本 数 で 割 っ た も の で あ る.テ ス トで はL.が 最 小 と な る 時 点 で 回 帰 パ ラ メ ー タ ー の シ フ トが 起 き た と み な さ れ る,し か し 帰 無 仮 説 の 下 で 五rの 最 小 値 が ど の よ うな 確 率 分 布 と な る か 未 知 で あ る た め に,今 の と こ ろ 有 意 性 検 定 は 利 用 で き な い 。 し か し な が らLrの 最 小 点 で チ ャ ウ のF検 定 を 適 用 し て 構 造 変 化 を チ ェ ッ ク で き る し,さ ら にL.

の 動 き は 構 造 変 化 が 突 然 生 じ た か 徐 々 に 生 じ た か を 判 断 す る 手 が か りを 与 え て くれ る.

(4)均 一 性 テ ス ト

標 本 期 間 全 体 を 長 さnの 互 い に 重 複 し な い ρ 個(ρ はT/nの 整 数 部 分)の 期 間,(1,η),(@+

1),2n),…,((p‑2)n+1,(p‑1)n)9((ρ 一1)n+1,T)に 分 け,各 期 間 ご と に 回 帰 式 を 推 計 し て (T‑kp)s(1,T)一{s(1,%)十 、S(n十1,2n)十 …‑1‑S(ρ%一%十1,T)}

(妙 一 ん){S(1,n)+S(n+1,2の+…+S(加 一 π+1,T)}

を 求 め る.こ こ でs(r,S)は 期 間(r,S)の 残 差 自 乗 和 で あ る.標 本 期 間 を 通 じ て 回 帰 係 数 が 一 定 で あ れ ば 上 の 比 率 は 自 由 度(kp‑k,T‑kp)のF分 布 と な る.こ の た め 通 常 のFテ ス トを 用 い て 構 造 変 化 を チ ェ ッ ク で き る.

5.テ ス ト結 果

表3は 表1に 示 した 回 帰 式 の 安 定 性 テ ス ト結 果 を示 して お り,そ の 内 容 は 以下 の よ うに 要 約 で き る.

① 残 差 累 積 和 に よ る と手 形 レ ー トと コ ソ ソ ール 利 回 り以 外 の金 利 で は構 造 不 変 仮 説 は1%水 準

(11)

エ86

季刊 創 価 経 済 論 集

Vol.XVNo.2,3,4 表3ギ ブ ソ ン ・パ ラ ド ッ ク ス の 安 定 性 テ ス ト結 果(全 期 間)

テ ス ト方 法

残 差 の 累 積 和 前 方 後 方 残 差 自乗 の 累 積 和

前 方 後 方 ク ォ ン トの 尤 度 比

最 小 値 日 付 F値

均 一 性 統 計 量 亘)

(米) コ マ ー シ ャ ル ペ ーパ ー 一利 回 り

1.376*

2.197*

0.425 0.245

一一51.62 1930 97.02 38.35

(米) コ ー ル レ ー ト

1.234*

2.a2i

0.258 0.267*

33.80 1929 55.54 21.69

(米) 優 良 社 債

利 回 り

1.563 2.378

0,495*

0.238

一51 .41 ユ943 104.80

31.33

(米) 優 良 工 業 債

利 回 り

ユ.650*

2.499

0.490' 0.256

55.48 1934 86.61 53.72*

(英)(英)

3カ 月 コ ン ソ ー ル 手 形 レ ー ト 利 回 り

0.766 2.ユ72*

0.435 0.213**

一50 .04 1931 87.46 37.44

0.747 2.655*

0.681 0.219*

一65 .92 ユ940 ユ22.ユ3*

29.53

(注)*1%有 意水準 で仮説 は棄却で きる。

**100水 準で は仮 説 は棄却で きないが ,5%水 準で は棄 却で きる。

1)移 動回帰 の長 さは30年。

で棄 却 さ れ る.ま た,す べ て の 金 利 で 後 方 テ ス トの 方 が 前 方 テ ス トよ りも仮 説 を 強 く棄 却 す る .

② 残 差 自乗 累 積 和 に よ る と全 部 の 金利 で仮 説 は1%ま た は5%水 準 で 棄 却 さ れ る.但 し前方 テ ス トが 後 方 テ ス トよ り も仮 説 を強 く棄 却 す る傾 向 が み られ る7).

③ 尤 度 比 テ ス トは1930年 代 か ら40年 代 に か け て 構 造 変 化 が起 きた こ と を示 唆 して い る.尤 度比 最 小 値 のF値 は す べ て1%水 準 で有 意 で あ る.英 米 両 国 と も30年 代 初 頭 実 質 的 に 管 理 通 貨 制 度 へ 移 行 した 点 を 考 慮 す る と,金 本 位 制 度 の 廃 止 と 同 時 に ま た は多 少 遅 れ て ギ ブ ソ ン ・パ ラ ドッ クス が 消減 した こ とが 窮 わ れ る.

④ 均 一 性 統 計 量 もパ ラ ドッ クス の 消 滅 を示 唆 して お り,移 動 回 帰 の長 さを20年 に短 縮 して も結 果 は ほ とん ど変 わ らな い.

次 に表4は テ ス ト期 間 を平 時 に 限 定 した と き の 結 果 で あ る .表3と 比 較 す る と残 差 累 積 和 は 一 つ の ケ ース(コ ン ソ ール 利 回 り,前 方 テ ス ト)を 除 い て 小 さ くな り,均 一 性統計量 も大 幅 に低 下 す る.し か し依 然 と して 構 造 不 変 仮 説 は は っ き りと棄 却 され る.残 差 自乗累積 和 は表3と ほ とん ど変 わ らず 構 造 変 化 を 示 唆 して い る.尤 度 比 最 小 点 のF値 は どれ も1%水 準 で 有 意 で あ るが ,日 付 は 最 高5年 のず れ が あ る.し か し この 程 度 の ず れ は 標 本 変 動 の範 囲 内 に あ る も の とみ て さ しつ か え な い で あ ろ う.

以上 の結 果 か ら・ ギ ブ ソ ン ・パ ラ ドッ クス と よ ば れ る金 利 と物 価 水 準 の 間 の 正 の 相 関 は金 本 位 制 度 が 廃 止 され た1930年 代 を も っ て 消 滅 した と言 え る.先 の 図2と 図3か ら は短 期 金利 と物 価 の

関 係 は 第1次 大 戦 前 後 に 変 化 した こ とが 読 み 取 れ るが,統 計 的 テ ス トは これ を 裏 付 け て い る.

表5は(1)式 の 安 定 性 を テ ス トした 結 果 で あ り,以 下 の よ うに 要 約 で き る.

7)ガ ル パデ 〔11〕のモ ソテ カル ロ実 験に よる と,残 差 自乗累積和 テス トの方 が累 積和 テス トよ りも検 出

力が高い.表3か ら表6の 結果 は これを裏付 けてい る.

(12)

March1986釜 国 男 英 米 両 国 に お け る ギ ブ ソ ソ ・パ ラ ドッ ク ス と フ ィ ッ シ ャ ー 方 程 式

i87

表4ギ ブ ソ ン ・パ ラ ドック ス の 安 定 性 テ ス ト結 果(平 和 時 だ け)

(米)一(米)

(米) (米) (英)

(英)

テ ス ト方 法

コマ ー シ ヤル

ペーパL利 回 り

コ ー ル レー ト

優良社債 利 回 り

優良 工業債 利 回 り

3カ 月 手 形 レ ー ト

コ ン ソ ー ル 利 回 り

残 差の累積和

前 方

1.195* 1.126** 1.449* 1,524 0,605 0,804

後 方

1,806*

ユ,697*

1.952*

2.XO7* 1.869* 2.312*

残 差 自乗 の累積和

前 方 0.425* 0,249 0.512* a.495

0.448* 0,691

後 方

0.222* 0,250 0,267 0,280

0,233

0.237'

ク ォ ン トの 尤 度 比

最小値

一40 .01 一26 .35 一58 .67 一54 .4ユ 一41 .51 一65 .50

日 付 1930. ユ929 ユ938 1938 1932 ユ937

F値 65.38

41.25

工50.71* 118.78

68.52* 15.20*

均 一 性統 計 量1) 6.38 4.08* 5.54 8.34 3.14

5.14

(注)*1°o有 意 水 準 で 仮 説 は 棄 却 で き る 。

**1°o水 準 で は 仮 説 は 棄 却 で き な い が, 1)移 動 回 帰 の 長 さ は30年 。

5°o水 準 で は 棄 却 で き る 。

表5フ ィ ッシ ャー方 程 式 の 安 定 性 テ ス ト結 果(全 期 間)

i(米)

(米) (米) (米) (英)

(英)

テス ト方 法

コマ ー シ ャル

ペ→{L利 回 り

コ ー ル レ ー ト 優良社 債 利 回 り

優良工 業債 利 回 り

3カ 月 手 形 レ ー ト

コ ン ソ ー ル 利 回 り

残差 の累積 和

前 方

1.673* 1.019** 0.681* 玉,096* 0.X87 1,752

後 方

1.377* 1.500* 1.509* 1,376 2,288 1.418*

残 差 自乗 の累積和

前 方

0,430 0.256* 1.602* 0,477 0,465 0.7ユ1*

後 方

0,251 0,289 工.534* 0,415 0,394 0,352

ク ォ ン トの 尤 度 比

最小値

34.53 一23 .31 一63 .99 一50 .09 一41 .32 一104 .59

日 付 ユ930

1957 1945 1945

ユ964 ユ964

F値

5.35* 7.89 27.oo 3.95 9.73 36.54

均 一 性 統 計 量1)i 2.60 0.61

0.35*1

0.97 1.47 2.60

(注)*1%有 意 水 準 で 仮 説 は 棄 却 で き る。

**1%水 準 で は仮 説 は 棄 却 で きな い が , 1)移 動 回帰 の 長 さ は30年 。

5%水 準 で は 棄 却 で き る。

① 残 差 累 積 和 に よ る と 前 方 テ ス トで は 半 分,後 方 テ ス トで は全 部 の金 利 で 仮 説 は1%ま た は5 0水 準 で 棄 却 され る.

② 残 差 自乗 累 積 和 に よ る とす べ て の 金 利 で 前 方,後 方 い ず れ の 場 合 も仮 説 は1%水 準 で棄 却 さ れ る.

③ 尤 度 比 テ ス トのF値 は す べ て 有 意 で,構 造 変 化 を 示 唆 し て い る.尤 度 比 最 小 点 はCPレ ー ト を 除 くと1940年 代 半 ば か ら60年 代 半 ば に集 中 して い る.

④ 均 一 性 統 計 量 に よ る とCPレ ー トと コ ソ ソ ー ル利 回 りで は仮 説 は1%水 準 で棄 却 で き るが,

そ れ 以 外 の 金 利 で は 仮 説 は5%水 準 で は棄 却 で き な い.均 一 性 統 計 量 を 用 い る と他 の テ ス トとは

(13)

エ88季 刊 創 価 経 済 論 集Vol.XVNo .2,3,4 か な り違 っ た 結 果 が 得 ら れ る が,こ れ は 必 ず し も 矛 盾 し て い る 訳 で は な い.な ぜ な ら,一 口 に 構 造 変 化 と い っ て も そ の 内 容 は 実 に 複 雑 で 実 際 に は 様 々 な 変 化 パ タ ー ソが あ り,各 テ ス トは そ れ ぞ れ 異 な る 変 化 パ タ ー ン を 検 出 し よ う と し て い る か ら で あ る.

先 に 述 べ た よ うに,対 数 尤 度 比 の 動 き を 見 れ ば 構 造 変 化 の 有 様 と 尤 度 比 最 小 点 の 性 質 を 知 る こ と が 出 来 る.そ こ で そ れ ぞ れ の 金 利 に つ い て 対 数 尤 度 比 を プ ロ ッ トす る と 図4a〜fの よ うに な る,CPレ ー トの 場 合 に は 尤 度 比 は 最 初 ゆ っ く り低 下 し た あ と,1930年 に 反 転 急 増 し て い る こ と か ら,30年 前 後 に 急 激 な 構 造 変 化 が 起 き た こ と は 明 らか で あ る.コ ー ル レ ー トは あ ま りは っ き り し た パ タ ー ン を 描 い て い な い.50年 代 以 降 に シ フ トし た こ と は 確 か で あ る が,日 付 を 確 定 す る こ と は 困 難 で あ る.優 良 社 債 利 回 り は コ ー ル レ ー ト と 同 じ パ タ ー ン を 描 い て お り,せ い ぜ い1945年 以 降 に 構 造 変 化 が 起 き た と し か 言 え な い.工 業 債 利 回 りの 尤 度 比 は1934年,45年,57年 の3時 点 で 最 小 点 に 達 し て い る が,前 後 の 変 化 パ タ ー ンか ら み て45年 に 構 造 シ フ トが 起 き た と 考 え ら れ る,3ヵ 月 手 形 レ ー トの 尤 度 比 は1955年 以 降 不 規 則 に 変 化 し て い る が,全 体 的 な パ タ ー ソ か らみ て65年 前 後 に 構 造 変 化 が 生 じ た と 言 え る.最 後 に,コ ソ ソ ー ル 利 回 りに つ い て は 一 応1964年 に 構i 造 変 化 が 起 き た と み な し た が,図3fか ら 明 ら か な よ う に 尤 度 比 は そ の 後 さ ら に 低 下 す る 可 能 性 が あ る.し か し シ フ ト時 点 が60年 代 以 降 で あ る こ と は 確 か で あ る.

表6は デ ー タ 期 間 か ら戦 時 を 除 い た と き の 結 果 を 示 し て い る.表5と 比 較 す る と 金 利 と イ ソ フ

一10

一20

一30

ユ920ユ92519301935194019451950ユ9557asal965

(14)

March1986釜 国 男:英 米 両 国 に お け る ギ ブ ソ ン ・バ ラ ド ヅ ク ス と フ ィ ヅ シ ャ ー 方 程 式

一10

一20

一30

j89

192019251930 39351940!945×950195519QO1965

一20

一40

一so

一̲

1915!9201925 19301935 ユ9401945195019551960

(15)

z90

一20

一30

一4d

一50

季刊 創 価 経 済 論 集

Vol.XVNo.2,3,4

1915ユ9201925 1930193519.019=5195019551960

一20

一30

一40

19201925 19301935ユ9401945!95019551960!965

(16)

March1986釜 国 男:英 米 両 国 に お け る ギ ブ ソ ン ・パ ラ ド ヅ ク ス と フ ィ ヅ シ ャ ー 方 程 式

一40

一60

.1

一 ユ00

iga

1915ユ9201925 19301×/35

!90 194519501955 1960

表6フ ィ ッ シ ャー 方 程式 の安 定 性 テ ス ト結 果(平 和 時 だ け)

テ ス ト方 法

残 差 の 累 積 和 前 方 後 方 残 差 自乗 の 累 積 和

前 方 後 方 ク ォ ン トの尤 度 比

最 小 値 日 付 F値 均 一 性 統 計 量D

(米) コ マ ー シ ヤ ル ペ 「ゾ,o一禾1」 回 り

1.426 1.2ユ0*

o.4i9*

0.181

一31 .82 1933 1ユ.30*

2.75**

(米) コ ー ル レ ー ト

0.735

!:

0.178 0.154

一17 .50 ユ965 5.00 1

(注)*ユ%有 意 水 準 で 仮 説 は 棄 却 で き る 。

**1io水 準 で は 仮 説 は 棄 却 で き な い が , 1)移 動 回 帰 の 長 さ は30年 。

(米) 優 良 社 債

利 回 り

0.929 0.924

0,64ユ*

0.403

一一62.97 1958 24.40 1t

(米)(英)

優 良 工 業 債3カ 月 利 回 り 手 形 レー ト

0.944 0.992**

0.480 0.349

0.731 1.768' 0.446*

0.400

一50 .92‑35.96 19331964

9.33*16.69 1.490.18

5%水 準 で は 棄 却 で き る。

(英) コ ン ソ ー ル

利 回 り

1.524*

1.106**

0.676 0.33ユ*

一92 .14 1964 27.41 0.76

レの 関 係 は や や 安 定 した も の とな る が,戦 争 に 伴 う掩 乱 作 用 は 構 造 変 化 の原 因 で は な い の で 全 般 的 な 傾 向 は 変 わ らな い.

表5お よび 表6の 結 果 に よれ ば,第2次 大 戦 後 初 め て 金 利 と イ ソ フ レの 間 に シ ス テ マ テ ィ ッ ク

な 関 係 が 観 察 され る よ うに な った.こ れ に は幾 つ か の 理 由 が 考 え られ るが,特 に 重 要 とみ られ る

(17)

・g2季 刊 創 価 経 済 論 集Vol.XVNo.2,3,4

の は 戦 後 イ ン フ レ傾 向 が 定 着 化 し た こ と で あ る.戦 後 欧 米 諸 国 で は 経 済 活 動 に 対 す る 政 府 の 役 割 が 大 き くな り,完 全 雇 用 の 達 成 と 成 長 促 進 を 目標 に 財 政 政 策 と 並 ん で 景 気 刺 激 的 な 金 融 政 策(チ ー プ マ ネ ー ・ポ リ シ ー)が と ら れ た .こ の た め 次 第 に 物 価 騰 勢 が 強 ま っ て イ ン フ レ 心 理 を あ お

り,予 想 イ ン フ レ の 調 整 ス ピ ー ドを 高 め た と み ら れ る.も う ひ と つ の 重 要 な 原 因 と し て,い わ ゆ る"ダ ー ビ イ 効 果"(ダ ー ビ イ 〔6〕参 照)が あ げ られ る.い ま 限 界 税 率 が 渉で あ る と き,税 引 き 後 の 実 質 金 利 が 課 税 前 と 同 じ に な る よ う に 金 利 が 決 定 さ れ る と仮 定 す る と,(1)式 で 予 想 イ ン フ レ の 係 数 は1‑tの 逆 数 と な る.こ の た め 利 子 課 税 が 導 入 さ れ る と,フ ィ ッ シ ャ ー 方 程 式 で イ ソ ブ レ 率 の 係 数 は 餅/(1一 の と な る.

以 上 二 つ の 理 由 と そ の 他 の 理 由 が あ い ま っ て,戦 後 ギ ブ ソ ソ ・パ ラ ド ッ ク ス に 代 っ て フ ィ ッ シ ャ ー 方 程 式 が 観 察 さ れ る よ うに な っ た 訳 で あ る が,こ の よ う な 変 化 が 一 時 的 な も の か 永 続 的 な も の か 速 断 で き な い.な ぜ な ら,そ れ は 今 後 の 物 価 状 勢 よ り基 本 的 に は 金 融 政 策 の あ り方 に か か っ て い る か ら で あ る.

6.他 の実 証結果 との 比較

冒 頭 で 述 べ た 通 り1970年 前 後 か ら金 利 と イ ソ フ レ の 関 係 が 再 び 注 目 さ れ る よ う に な り,米 国 を 中 心 と し て 数 多 くの 実 証 研 究 が 報 告 さ れ て い る.そ の う ち 特 に カ ー ギ ル=マ イ ヤ ー 〔5〕,ホ ー ム ズ=ク ワ ス ト〔14〕,ギ ブ ソ ソ 〔12〕,イ ブ ラ ヒ ム=ウ ィ リア ム ス 〔15〕の 研 究 は フ ィ ッ シ ャ ー 方 程 式 の 安 定 性 を 検 討 し て い る の で,本 節 で は そ れ ら の 結 果 を 要 約 し て 本 稿 の 結 果 と 比 較 す る こ と に し よ う.

① カ ー ギ ル=マ イ ヤ ー

こ れ は 米 国 の イ ソ フ レ 率 と短 期 金 利(CPレ ー ト)ま た は 長 期 金 利(鉄 道 債 利 回 りにAaa債 利 回 りを 接 続)に つ い て(1)式 を 推 計 し た も の で あ る.関 数 の 安 定 性 は1861‑1970年 を 数 期 間 に 分 割 し て 各 期 間 ご と の 係 数 推 定 値 を 比 較 す る こ と に よ っ て 検 討 す る.OLSに よ る と 月 次 お よ び 四 半 期 デ ー タ で は 長 短 い ず れ の 金 利 で も フ ィ ッ シ ャ ー 方 程 式 の 存 在 と安 定 性 を 裏 付 け る よ うな 結 果 は 得 ら れ な い.但 し1960年 代 は 例 外 で,金 利 と過 去 の イ ソ フ レ の 間 に は 高 い 相 関 が 認 め ら れ る.年 次 デ ー タ で は 期 間 の と り方 次 第 で(1)式 が 観 察 さ れ た り さ れ な か っ た りす る.ア ー モ ン 推 定 法 を 用 い る と 全 般 的 に 統 計 的 に 有 意 な 関 係 が 観 察 さ れ る.特 に1961年 以 降 金 利 と イ γ フ レ は 非 常 に 強 い 相 関 を 示 し て い る.し か し 年 次 デ ー タ を 用 い る とOLSの 場 合 と 結 果 は ほ と ん ど変 わ ら な い.

イ ン フ レ 予 想 形 成 に 幾 何 級 数 分 布 ラ グ を 想 定 す る と 大 部 分 の ケ ー ス で 推 計 式 の フ ィ ッ トは 改 善 さ れ る が,予 想 の 調 整 期 間 が 異 常 に 長 くな る.

以 上 の 結 果 か ら カ ー ギ ル=マ イ ヤ ー は,「 金 利 と イ ソ フ レ の 間 の 仮 説 的 関 係 は,し ば し ば 主 張

さ れ る ほ ど確 立 さ れ た も の で は な い 」(p.1002)と の 結 論 を 下 し て い る.確 か に 明 確 な 経 済 学 的

(18)

March1986釜 国 男:英 米 両 国 に お け る ギ ブ ソン ・パ ラ ドック ス と フ ィ ッシ ャ ー方 程 式 工93 根 拠 な し に ア ー モ ソ ラ グ や 幾 何 級 数 ラ グ を 仮 定 す る こ と に は 問 題 が あ り,た と え 分 布 ラ グ を 用 い て 高 い 相 関 が 得 ら れ た と し て も 必 ず し も フ ィ ヅ シ ャ ー 方 程 式 の 存 在 を 立 証 し た こ と に な ら な い.

但 し,1960年 代 に は ど の 推 定 法 で も統 計 的 に 良 好 な 結 果 が 得 ら れ る こ と か ら,(1)式 が60年 代 に 成 立 す る こ と は 確 か で あ る.

② イ ブ ラ ヒ ム=ウ ィ リア ム ス

本 稿 で は ギ ブ ソ ン ・パ ラ ド ッ ク ス の 消 滅 と フ ィ ッ シ ャ ー 方 程 式 の 成 立 を 主 と し て 貨 幣 制 度 の 変 更 と い う観 点 か ら 説 明 し た が,イ バ ラ ヒ ム=ウ ィ リ ア ム ス は こ の 解 釈 に 実 証 的 根 拠 を 与 え て い る.

ま ず 米 国 の イ ソ フ レ 率 に ボ ッ ク ス ・ジ ェ ソ キ ン ス のARIMAモ デ ル を 当 て は め る と,第2次 大 戦 の 前 後 で 極 め て 対 照 的 な 結 果 が 得 ら れ る.す な わ ち,戦 前 に は イ ソ フ レ率 は ほ と ん ど 自 己 相 関 を も た ず ホ ワ イ ト ・ ノ イ ズ と み な せ る が,戦 後 は 自 己 相 関 が 強 くな り一 階 自 己 回 帰 モ デ ル が 妥 当 す る,期 待 イ ン フ レがARIMAモ デ ル か ら 導 か れ た 予 測 値 に 等 し く,さ ら に フ ィ ッ シ ャ ー仮 説 が 成 立 す る と 仮 定 す れ ば,名 目金 利 は 一 年 前 の イ ン フ レ 率 と 高 い 相 関 を 示 す は ず で あ る.実 際 戦 後 に つ い て 名 目 金 利 を 前 年 の イ ソ フ レ に 回 帰 さ せ る と統 計 的 に 良 好 な 結 果 が 得 ら れ る.と こ ろ が 戦 前 に つ い て 同 様 の 回 帰 推 定 を 行 な う と 統 計 的 に 意 味 の あ る 結 果 は ほ と ん ど 得 ら れ な い.こ れ は 予 想 イ ソ フ レが 常 に 一 定 で 過 去 の イ ソ フ レ に 影 響 さ れ な い た め で あ る.金 本 位 の 時 代 に あ っ て は 過 去 の イ ン フ レ は イ ン フ レ予 想 に 全 く役 立 た な い.し か る に 戦 後 イ ソ フ レ は 強 い 系 列 相 関 を も ち,過 去 の イ ン フ レ は 将 来 の イ ソ フ レ予 想 に 欠 か せ な い も の と な っ た.こ の た め フ ィ ッ シ ャ ー 方 程 式 は 戦 後 に な っ て 観 察 さ れ る よ うに な っ た 訳 で あ る.

③ ギ ブ ソ ソ

前 節 で は(1)式 の 安 定 性 を 検 討 し た が,こ の 式 は も と も と 五〜 孟=ρ*十 ∂ π占 ¢

と い う式 で 予 想 イ ソ フ レn.etの 代 理 変 数 と し て 過 去 の イ ン フ レ を 代 入 し て 得 られ る 式

n

1〜Fρ*+∂ Σ φ 、 π、.2

i=0

を 簡 単 化 した も の で あ る.し た が っ て(1)式 の 係 数 妨 はbと φ盛の 積 に 等 し く,bま た は φ乞が 変 化 す れ ば 当 然 妨 も 変 化 す る.本 稿 で は カ ー ギ ル=マ イ ヤ ー,イ ブ ラ ヒ ム=ウ ィ リァ ム ス と 同 様 に ゐは コ ン ス タ ン トと 仮 定 し て 画 の 変 化 に 注 目 し た.一 方,ギ ブ ソ ン お よ び ワ ー ム ズ=ク ワ

ス トは うの 安 定 性 を 調 べ た .

係bの 推 計 に は π̀θの 観 察 値 が 必 要 で あ る が,ギ ブ ソ ン は こ の た め に リ ビ ン グ ス トン ・デ ー タ を 使 用 し た ・ こ れ は 半 年 お よ び1年 後 のCPIに 関 す る ア ン ケ ー ト調 査 結 果 で

,1946年 以 降 半

年 ご と に 公 表 さ れ て い る.財 務 省 証 券 利 回 り を 被 説 明 変 数 と し て 上 の 最 初 の 式 を1952‑7Q年 の 期

間 に っ い て 推 計 す る と,期 待 係 数 は 符 号 条 件 を 満 た し統 計 的 に 有 意 で フ ィ ッ トも 良 好 で あ る .し

か し 推 定 期 間 を59年 で2分 す る と 係 数 は 前 半 で は 大 幅 に 低 下 し 後 半 で は ほ ぼ1に 等 し く な る .60

(19)

x94季 刊 創 価 経 済 論 集Vo1.XVNo,2,3,4

年 代 に 入 る と 名 目 金 利 は 予 想 イ ン フ レ の 変 化 を 完 全 に 反 映 す る よ うに な っ た が,こ の 理 由 と し て ギ ブ ソ ン は イ ソ フ レ の 高 進 を あ げ て い る.つ ま り イ ン フ レ 傾 向 が 強 ま っ た 結 果,よ り正 確 な イ ソ フ レ予 測 が 利 用 さ れ る よ う に な り,金 利 決 定 に 際 し て 予 測 値 が デ ィ ス カ ウ ソ トさ れ る こ と な くそ の ま ま 考 慮 さ れ る よ う に な っ た か ら で あ る.金 融 業 務 の エ レ ク ト ロ ニ ク ス 化 に よ る 情 報 コ ス トの 低 下 は こ の よ う な 傾 向 を さ ら に 一 段 と強 め て い る.妨 は ろ と 偽 の 積 に 等 し い の で イ ン フ レ高 進 はb,亟 の 増 加 を 通 じ て 餅 を 増 大 さ せ,金 利 と イ ソ フ レ の 相 関 を 高 め て い る.し た が っ て ギ ブ ソ ソ の 結 果 は,60年 代 以 後 フ ィ ッ シ ャ ー 方 程 式 が 成 立 す る と い う前 節 の 結 果 と整 合 的 で あ る だ け で な く,ひ と つ の 有 力 な 根 拠 を 与}て い る.

④ ホ ー ム ズ=ク ワ ス ト

こ れ は ブ ラ ウ ソ=ダ ー ビ ソ 法 を 用 い て 期 待 係 数 の 安 定 性 を 検 討 し た も の で あ る.テ ス ト期 間 は 1952‑76年 で,金 利 デ ー タ に は 米 国 財 務 省 証 券 利 回 り,BAレ ー ト,CPレ ー トを 使 用 し,期 待 変 数 と し て リ ピ ソ グ ス ト ソ ・デ ー タ を 使 っ て い る.実 証 結 果 を み る と,一 般 に 期 待 係 数 は60年 代 後 半 に シ フ トし て 市 場 金 利 が イ シ フ レ予 想 の 変 化 に よ り敏 感 に 反 応 す る よ う に な っ た こ と を 示 唆

し て い る.こ れ は ギ ブ ソ ソ の 結 果 と 同 じ で あ る が,シ フ ト時 点 が 若 干 遅 く な る.

参 考 文 献

(1)Anda,A,andF.Modigliani.,"TheRelativeStabilityofMonetaryVelocityandthe InvestmentMultiplier."AmeYicanEconomicReview(September1965}pp.693‑728.

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1;3)Brown,R.L.,J.Durbin,andJ.M.Evans.,"TechniquesforTestingtheConstancyof RegressionRelationshipsOverTime".JournaloftheRoyalStatisticalSociety,SeriesB

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(20)

March1986 国 男:英 米 両 国 に お け る ギ ブ ソ ソ ・パ ラ ド ッ ク ス と フ ィ ッ シ ャ ー 方 程 式 エ95

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[15)Ibrahim,1.B.,andWilliams,R.M.,"TheFisherRelationshipunderDifferentMonetary Standards".JournalofMoney,Credit,andBanking(August3978)pp.363‑70.

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イ ソ ズ 全 集 第6巻)東 洋 経 済 新 報 社.昭 和55年,

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〔18ユ.,"TheRelativeStabilityofVelocityandtheTnvestrnentMultiplier".Journalof MonetaryEconomics(Januaryユ978)pp.103‑19.

〔19〕Quandt,RichardE.,"TestsoftheHypothesisthataLinearRegressionObeysTwo SeparateRegimes".JournaloftheAmericanStatisticalAssociation(3une1960)pp.324‑30.

[20)Stern,RobertM,ChristopherF.Baum,andMarkN.Greene.,"EvidenceonStructural ChangeintheDemandforAggregateU.S.ImportsandExports",journalofPolitical E60%o粥 」y(February1979)pp.179‑92.

(経 済 学 部 助 教 授)

参照

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