• 検索結果がありません。

の常習的飲酒行為および薬物乱用

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "の常習的飲酒行為および薬物乱用"

Copied!
27
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

i

説 〉

ス ペ イ ン にお け る懲 戒 解雇 正 当原 因 と して の常習的飲 酒行為 お よび薬 物乱用

岡 部 史 信

一・.マ ドリ ッ ド自治 州管 区 高 等裁 判 所 社 会部2005年4月12日 判 決 を契 機 して 1.=rの 概 要 お よ びマ ドリ ッ ド社 会裁 判 所 判 決

2.マ ドリッ ド自治州 管 区 高等 裁 判所 社 会 部 判 決 3.問 題 点 の所 在 と本 稿 の 目 的

二.労 働 者 憲 章 法54条2項r号 の要 件 上 の諸 問 題 につ いて の分 析 1.「 常 習 性 」要 件 の 判 断基 準

2.「 労 働 へ の悪 影 響 」 要件 の判 断基 準 一 行 為 の重 大 性 との関 連 にお い て 一一 3.労 働 者 の行 為 の 有 責性 の判 断 基準

三.労 働 者 憲 章 法54条2項f号 の 存在 意 義 一r号 廃 止 の 視点 を中 心 に 一 1.労 働 者 憲章 法54条2項f号 の 削除 を求 め る主 張

2.労 働 者 憲箪 法54条2項r号 削 除 につ い て の考 察

マ ドリ ッ ド自治 州 管 区 高 等 裁 判 所 社 会 部2005年4月12日 判 決 を 契 機u

と し て

1.事 実 の概 要 お よ び マ ド リ ッ ド社 会 裁 判 所 判 決

2004年4月23日 に家 電 修 理 を主 た る業 務 とす る有 限 会 社NS社 に お いて 、1998 年4月28日 か ら正 社 員 と して雇 用 され て い た 従 業 員Dに 対 す る懲 戒 解 雇 処 分 の 手 続 きが と られ た。NS社 がDの 懲戒 解 雇 処 分 を決 定 した理 由 は、2004年7月23 日 の マ ド リ ッ ド社 会 裁 判 所 が 認 定 した 事 実 に よれ ば次 の通 りで あ っ た 。

NS社 は顧 客Eか ら家 電修 理依 頼 が あ っ た た め、4月19日 、DにE宅 へ 出 向 く よ う指 示 した 。Dは この 業 務 命 令 に従 い 同E121時30分 ご ろにEの 自宅 を訪 問 し た が 、 その とき飲 酒 した状 態 で あ っ た。 また 、 その 後4月21E1に もNS社 が別 の 顧 客Bか ら洗 濯機 の修 理 依 頼 を受 けDに 指 示 した とこ ろ、 この とき もB宅 に到 碧

(2)

Z

した 時 点 で す で に飲 酒 して い る状 態 で あ った 。 この どち らの 場 合 に も修 理 は行 わ れ たが 、EとBは とも に作 業 員 が飲 酒 して い た こ とに 対 してSL保 険 会社 に苦 情 を 申 し出 た。

実 は 、Dが 飲 酒 した状 態 で 業 務 を行 って い た 事 実 は 以 前 か ら も確 認 され て い た。NS社 で 適 用 され て い る労働 協約 に は 「勤 務 中 の 飲 酒 が 極 め て重 大 な 違 反 行 為 で あ る こ と。 飲 酒 行 為 が 繰 り返 され る(処 分 を受 け て か ら3か 月 以 内 の 飲 酒 行 為)場 合 に は 懲 戒 解 雇 し得 る」 とす る規 定 が あ り、 これ に基 づ い て 過 去 にD が飲 酒 して作 業 して い た こ とを理 由 と して 、2002年10月ll日 に30111間 の 停 職 と 賃 金 カ ッ ト、 ま た2003年9月2日 に も修 理 作 業 中 に飲 酒 して いた こ とを理 由 と して 同 じ懲 戒 処 分 を科 して い た。 この よ うな 過 去2度 の 処 分 に もか か わ らず 、 今 回新 た に2件 の苦 情 が 出 され た 事 態 を璽視 したNS社 は、4月23日 に文 書 で 労

z)

働 者 憲 章 法54条2項f号 労 働 に悪 影 響 を 及 ぼ す 常 習 的 な 飲 酒 行 為 また は 薬 物 乱 用 」 を理 由 と して 懲 戒 解 雇 処 分 とす る こ と をDに 通 知 した の で あ る。

この 通 知 が 出 され た 当 初 、Dは こ の書 面 へ の 署 名 に 同意 して い たが 、 そ の後 この 懲 戒 解 雇 は 不 当 で あ る と主 張 して 、7月23日 に マ ド リッ ド社 会 裁 判 所 に救 済 の 申 立 て を提 起 した。 しか し、 同 裁 判所 は即 日の 判 決 で、NS社 は懲 戒 解 雇 前 の 手 続 きに お い て も改 善 の た め の 尽 くす べ き義 務 を果 た して お り、 した が っ て NS社 の処 分 は 正 当 で あ る と してDの 申立 て を棄 却 した 。 この た め、Dは 、f号 の 要 件 で あ る 「飲 酒 行 為 の常 習 性 」 お よび 「労 働 へ の 悪 影 響 」 の どち ら も証 明

され て いな い な どを主 張 し、 労 働 訴 訟 法191条 に基 づ い て マ ドリ ッ ド自治 州 管 区 高 等 裁 判 所 社 会 部 に 控 訴 した 。

2.マ ド リ ッ ド自治 州 管 区 高 等 裁 判 所 社 会 部 判 決

Dの 主 張 に対 して 、2005年4月12日 、 マ ドリ ッ ド自治 州 管 区高 等 裁 判 所 社 会 部 は 以 下 の理 由 を示 して 社 会 裁 判 所 の 判 決 を 破 棄 し、Dの 主 張 を 認 容 す る判 決

を下 した 。

最 高 裁 判 所 が1986年5月29日 判 決 で 明 らか に し、 そ の後 の判 決 で も繰 り返 し 述 ぺ て い る と こ ろ に よれ ば 、 労 働 者 憲 章 法54条 が 定 め る勇 働 契 約 の す べ て の 消 滅 原 因 に共 通 す る こ と と して 、 重 大 か つ 有 責 性 の あ る行 為 で あ る こ とが 解 雇 の 根 拠 とな るた め に必 要 で あ る。 軽 度 の違 反 で あ る場 合 に は解 雇 よ り も軽 度 の 懲

(3)

ス ペ イ ンに お け る懲 戒 解雇 正 当原 因 と して の 常 習 的飲 酒 行為 お よび 薬物 乱 用3

戒 処 分 で 矯 正 が 可 能 で あ り、 最 高 度 の 処 分 で あ る解 雇 は 、 そ の他 の 制 裁 で は 埋 め合 わ せ が で きな い程 度 の 重 大 か つ 深 刻 な 労 働 者 の 行 為 に適 用 され な け れ ば な らな い 。 こ う した 重 大 か つ 有 責 性 の あ る行 為 で あ る こ とが 確 認 され な い場 合 に

4)

は 、労 働 者 憲 章 法53条3項 お よび56条 に規 定 され た とこ ろ に よ り、解 雇 は 不 当 で あ る と判 断 され る。 本 件 の 場 合 は 、 控 訴 人 が 飲 酒 した 状 態 で業 務 に従 衷 した 回 数 お よ び そ の 状 態 の 程 度 、 そ の業 務 に お け る具 体 的 な悪 影 響 、 警 告 そ の他 の 制 裁 措 置 な どが す べ て 懲 戒 解 雇 の正 当性 を判 断 す る た め に 考 慮 さ れ な けれ ば な らな い 。 認 定 され た 事 実 に よれ ば、 控 訴 人 が 飲 酒 して業 務 に 従 事 した こ とが確 認 され て い るの は2日 間 だ け で あ る。2003年9月 と2002年10月 の行 為 は考 慮 し な い。 な ぜ な ら、被 控 訴 会 社 で 適 用 され て い る 労 働 協 約 に は 「繰 り返 し行 わ れ る こ と」 が 記 載 され て い るが 、 そ の評 価 は 「3か 月 以 内 に繰 り返 され か つ 処 分 を受 け て い る こ と」 が 基 準 とな っ て お り、 そ れ ぞ れ6か 月前 お よ び1年 以 上 前 に起 き た行 為 は考 慮 で き な い か らで あ る。 した が っ て 、2回 の 行 為 の み で は控 訴 人 が 「常 習 的」 か つ 「繰 り返 し」 飲 酒 した と判 断 す る こ とは で きな い 。 また 、 上 記 労 働 協 約 に は 「勤 務 中 の飲 酒 は 、 そ れ 自体 で極 め て 重 大 な 違 反 」 と規 定 さ れ て い るが 、 控 訴 人 の 飲 酒 に よ って 企 業 に 特 別 な 損 害 や 危 害 を及 ぼ した わ けで も、 ま た人 や 物 に対 す る危 険 を 生 ぜ しめ た わ けで もな い 。 飲 酒 そ れ 自体 は 契 約 上 の誠 実 義 務 違 反 を構 成 す る し、 ま た そ の行 為 に よ っ て54条2項 が 列 挙 す る原 因 を生 じさせ 得 る。 した が って 、54条2項 で 列 挙 され て い る他 の 原 因 とは 異 な るf号 独 自の意 義 は、 労 働 者 の飲 酒 が 「常 習 的」 で あ る こ とに加 え て 、 その 行 為 が 「労 働 に悪 影 響 を及 ぼ す 」 もの で あ る とい う2つ の要 件 が 満 た され て い な け れ ば な らな い。 この 要 件 は 、 憲 法9条3項 お よび 労 働 者 憲 章 法3条1項 を根 拠 と して 法 が 要 求 す る最 低 限 度 必 要 な もの で あ る。 した が って 、 勤 務 中 の飲 酒 行 為 自体 を直 ち に極 め て重 大 な 違 反 行 為 と と らえ て 解 雇 の 可 能 性 を 示 唆 す る 上 記 労 働 協 約 の 規 定 は 認 め られ な い。 また 、 仮 に控 訴 人 が 飲 酒 した 状 態 で 修 理 業 務 を行 っ た こ とが顧 客 に不 快 な感 情 を抱 かせ るな どの 悪 影 響 を及 ぼ した と して も、

飲 酒 行 為 が2回 しか 確 認 さ れ て い な い 以 上 、 常 習 性 要 件 を 満 た して い る とは い えず 、 本 件 に お い て はf号 を 理 由 とす る解 雇 を正 当 化 す る こ とに は な らな い。

以 上 の こ とか ら、 解 雇 に相 当 す る重 大 か つ 有 責 性 の あ る不 履 行 を構 成 す る事 実 は 認 め られ ず 、 控 訴 人 の 請 求 を 認 容 し当該 解 雇 を不 当 と判 断 す る。

(4)

4

3.問 題 点 の 所 在 と本 稿 の 目的

この マ ドリ ッ ド自治 州 管 区 高 等 裁 判 所 の判 決 は、f号 の 問 題 点 を よ く表 して い る典 型 的 な例 の ひ とつ で あ る とい え る。 そ の 問 題 点 を具 体 的 に整 理 す れ ば 次 の よ う に な る。

まず 常 習 性 判 断 基 準 に つ い て、 この 判 決 で は 「2回 の 行 為 の み で は、 常 習 的 か っ 繰 り返 し飲 酒 を行 っ て い る と判 断 で き な い 」 と判 示 して い るが 、 そ れ で は どの よ うな基 準 に よ っ て な ら判 断 し得 る の で あ ろ うか 。 ま た この 判 決 で は 、 こ の事 件 に つ い て は労 働 協 約 を適 用 して 過 去2回 の 飲 酒 行 為 を判 断 材 料 と しな い とす るが 、 仮 に この 協 約 が 存 在 せ ず4回 と認 定 され た場 合 に は 常 習 性 を 認 定 で き るの で あ ろ うか 。 す な わ ち 、労 働 者 の責 任 を追 及 し得 る常 習 的 な 飲 酒 と は ど の よ う な状 態 の こ とを い うの で あ ろ うか 。

次 に労 働 へ の 悪 影 響 の 判 断 基 準 につ い て は 、 こ の判 決 で は 「飲 酒 に よっ て 企 業 に 特 別 な損 害 や 危 害 を 及 ぼ した わ け で も、 また 人 や 物 に対 す る危 険 を 生 ぜ し め た わ け で もな い」 と して 悪 影 響 の 存 在 を 否 定 す る見 解 の よ うで あ る が 、 他 方 で 「仮 に飲 酒 した 状 態 で 修 理 業 務 を行 っ た こ とが 顧 客 に不 快 な 感 情 を抱 か せ る な ど悪 影 響 を 及 ぼ した と して も」 と述 べ 、 そ う した影 響 の 存 在 を認 め て い る よ うで も あ る。 素 直 に考 えれ ば 、悪 影 響 に は 客 観 的 な実 損 害 だ け で は な く、 企 業 の信 用 や 評 判 を既 め る行 為 も当 然 含 ま れ るで あ ろ う。 それ で は 、 悪 影 響 の 程 度 とい う もの も ど の よ うに 評 価 す べ き な の で あ ろ うか 。

さ ら に懲 戒 解 雇 処 分 の 対 象 とな り得 る飲 酒 行 為 の判 断 基 準 に つ い て は、f号 に は 「常 習性 」 と 「労働 へ の悪 影 響 」 が要 件 とさ れ て い る か ら、 この判 決 の い う よ うに 「労 働 者 の飲 酒 が 常 習 的 で あ る こ とに加 え て 、 そ の 行 為 が 労働 に悪 影 響 を及 ぼ す もの で あ る とい う2つ の要 件 が 満 た され な けれ ば な ら」 な い。 また 、

5)

労働 法 源 適 用 に お け る最低 限 度 の 規 範 を適 用 す る原 則 か ら判 断 して も、 「この要

G)ア ラ

件 は、 憲 法9条3項 お よ び労 働 者 憲 章 法3条1項 を根 拠 と して 、 法 が 要 求 す る 最 低 限度 必 要 な もの 」 で あ っ て 、 こ れ を軽 減 す る 「労 働 協 約 の 規 定 は 認 め られ な い」 とす る判 断 は正 当 で あ ろ う。 しか し、例 えば 、 「勤務 中 の 飲 酒 行 為 自体 を 直 ち に極 め て 重 大 な 違 反 行 為 と と らえ て 解 雇 の可 能 性 を示 唆 す る 上 記 労 働 協 約 の 規 定 は 認 め られ な い」 とい う こ の判 決 理 由 の部 分 は 、f号 を理 由 と して は懲

8)

戒 解 雇 で きな いが 、54条2項 が 列 挙 す る他 の 理 由 を根 拠 とすれ ば 正 当 とな り得

(5)

スペ イ ンに お け る懲戒 解 雇 正 当原 因 として の常 習 的 飲酒 行 為 お よび薬 物 乱 用5

る こ と を暗 示 して い る と理 解 で き る。 要 す る に 、 労 働 へ の 悪 影 響 の 程 度 に よっ て は常 習 性 要 件 が 軽 視 され る可 能 性 が 指 摘 で き るが 、 この2つ の要 件 の関 連 性 を どの よ うに把 握 す べ きな の で あ ろ うか 。

f号 に関 連 す る事 件 の裁 判 例 で は 、 こ の判 決 だ け に 限 らず 、 常 に多 くの 疑 問 が 残 る もの が 多 い と感 じ られ る が 、 その 最 大 の 原 因 はf号 自体 の 規 定 の曖 昧 さ に あ り、 結 局 の とこ ろ そ の 存 在 理 由 に も関 わ る問 題 で あ る と思 わ れ る。 そ こで 本 稿 で は、f号 の 諸 論 点 を整 理 す る と と もに 、 近 年 議 論 され て きて い るr号 廃 止 の 可 能 性 に つ い て も考 察 す る こ と に した い 。

二.労 働 者 憲 章 法54条2項f号 の 要 件 上 の 諸 問 題 に つ い ての 分 析

冒 頭 の マ ド リッ ド自 治 州 管 区 高 等 裁 判 所 判 決 で は最 高 裁 判 所 の 判 断 を 引 用 す る形 式 で 述 べ られ て い るが 、 本 来 的 に労 働 者 憲 章 法 を根 拠 と した 懲 戒 解 雇 処 分 が正 当 と評 価 され る た め に は、 そ の 規 定 上 少 な く と も3つ の 要 件 が 必 要 で あ る

とい え よ う。 ひ とつ は 、労 働 者 の行 為 が 「労 働 に 関連 した不 履 行 」(58条1項)

9)

で あ り、 そ の行 為 が 労 働 法 規 範 に お い て要 求 され る程 度 の 「重 大 か つ 有 責 性 の あ る」 もの で あ り(54条1項)、 か つ そ の行 為 が 懲 戒 解 雇 の正 当原 因 とされ る具 体 的 な 列 挙 項 目(54条2項)に 該 当 して い る こ とで あ る。

この 前 提 はf号 労 働 に悪 影 響 を及 ぼ す 常 習 的 な飲 酒 お よ び 薬 物 乱 用 」 の 適 用 にお い て も当 然 同 じで あ る。 した が っ て 、f号 を根 拠 と した 懲 戒 解 雇 は 、 労 働 者 の 「常 習 的 な飲 酒 ま た は薬 物 乱 用 」(薬 物 乱用 に は文 言 形 式 か ら判 断 して 「 習 性 」 は要 件 とさ れ て い な い)と い う行 為 が 労 働 に 関連 した 璽 大 か つ 有 責 性 の あ る不 履 行 を もた ら し、 深 刻 な 「労 働 へ の悪 影 響 」 を及 ぼ す もの で あ っ た 場 合 に正 当 と評 価 され る こ とに な る。 しか しf号 で は 、 「常 習 的 な飲 酒 また は薬 物 乱 用 」 お よ び 「労 働 へ の 悪 影 響 」 と い う2つ の 要 件 自体 が 曖 昧 な た め、 労 働 との 関連 性 の把 握 、 両 方 の 行 為 の重 大 性 な らび に労 働 者 の 有 責 性 の 判 断 基 準 につ い て 、 法 解 釈 上 複 雑 な 問 題 を 内包 して い る と いわ ざ る を得 な い よ う に思 わ れ る。

それ で は 以 下 、f号 の 要 件 上 の 問 題 点 に つ い て、 主 と して裁 判 例 の理 論 を 中 心 に 具 体 的 に 考 察 す る。

(6)

6

1。 「常 習 性 」 要件 の 判 断基 準

例 えば カ タ ル ー ニ ャ 自治 州 管 区 高 等 裁 判 所 は 、 「労 働 者 が 飲 酒 した 状 態 で業 務 に従 事 した事 実 ま た は 労 働 時 間 中 の そ う した 事 実 は 、 それ が散 発 的 な もの で あ れ ば 、f号 に該 当 す る とみ る こ と はで き な い。 〔f号 は〕 常 に 〔そ の よ う な行 為

io)

が〕 常 習 的 な もの で あ る 〔こ と を要 件 と して い る〕」 と述 べ て い る。 この 裁 判 例 だ け で は な く、 従 来 か ら多 くの 裁判 例 お よび 学 説 で も、 「f号 で は常 習性 が 要 件 とさ れ て お り、 散 発 的 また は一 回性 の もの は 該 当 しな い 」 とい う主 張 が な され て い る。 しか し、 労 働 者 憲 章 法 には 何 を判 断 基 準 と して 「反 復 ・継 続 的 な状 態 」 を認 識 す るの か とい う点 に つ い て 明 記 され て い な い た め 、 裁 判 例 で は 「常 習性 」 が 要 件 で は あ る も の の 、 その 具 体 的 な 認 定 基 準 につ い て は 未 だ十 分 に統 一 を見 て い な い よ うで あ る。

これ まで の裁 判 例 を整 理 す る と、 裁 判 例 の考 え方 は い ち お う大 き く2つ の タ イ プ 、 す な わ ち 、 飲 酒 に よ る違 反 行 為 の 純 粋 な 回 数 に よ り常 習 性 を 判 断 す る基 準 、 飲 酒 に よ る違 反 行 為 の 重 大 性 と回 数 の両 方 か ら常 習 性 の 存 在 を可 能 な 限 り 推 定 す る基 準 が あ る よ うで あ る。

(1)「 常 習 性 」 要 件 に つ い て 、 まず 回 数 の み の基 準 を採 用 した裁 判 例 で は、 例 え ば 、 あ る労 働 者 が あ る 日の 夜 間 の 工 場 施 錠 業 務 の 際 に 制 服 を 着用 せ ず 唖 え煙 草 で か つ 飲 酒 した 状 態 で あ っ た こ と を理 由 に 、 この1回 の 事 実 を も っ て企 業 側 がf号 を根 拠 に懲 戒 解 雇 処 分 と した 事件 で 、 最 高 裁 判 所 は 、 「この1回 の 事 実 の みで は 常 習 性 の 要 件 に 当 て は ま らな い 。(…)。 常 習 性 の 概 念 は 、個 人 生 活 に確 固 と して 根 ざ した 持 続 性 、 換 言 す れ ば 、 お お よ そ の規 則 的 な間 隔 を もっ て で は

あ る が 、 当 該 行 為 の お お よ そ の継 続 性 を要 求 す る」 と判 示 した 。 また 、 鉄 道 の 駅 の 開 閉 業 務 を担 当 して い た 労働 者 が あ る 日の業 務 を完 全 に酩 酊 した状 態 で行 っ て い た こ とを理 由 に、 そ れ に よ る 事 故 な どは な か っ た が 事 態 を 重視 した 会 社 が r号 を根 拠 に 当該 労 働 者 を 懲 戒 解 雇 した 事 件 に つ い て 、 バ ス ク 自治 州 管 区 高 等 裁 判 所 は 、 「本 件 の 労 働 者 の 状 態 は 〕 常 習 的 な 酒 酔 い 状 態 で は な く、 当 該 日 に

iz)

泥 酔 して い た状 態 で あ っ て 、 〔f号 の要 件 に該 当 しな い〕」 と判 示 して い る。 さ らに例 え ば、 飛 行 機 の 中 で の 販 売 接 客 業 務 の担 当 者 が飲 酒 した状 態 で か っ 上 品 で な い 言 動 で 接 客 な ど した こ とを理 由 に航 空 会 社 側 がf号 を根 拠 と して 懲 戒 解 雇 処 分 と した 事件 にお い て 、最 高 裁 判所 は、 「当該 労 働 者 が 飲 酒 状 態 で あ った こ

(7)

スペ イ ンにお け る懲 戒 解 雇正 当原 因 と して の常 習 的飲 酒 行 為 お よ び薬 物乱 用7

とが 確 認 で き る 〔が 〕、f号 は 明確 に その 行 為 が 繰 り返 さ れ 、 か つ 悪 影 響 が あ っ た こ と を要 件 と して い る こ とか ら、 同号 を根 拠 とす るの は適 切 で は な い。(…) 本 件 の 場 合 に お い て は 、 当 該 労 働 者 の 行 為 は企 業 の 信 用 を傷 つ け 、 ま た乗 客 に 対 す る義 務 を怠 る もの で あ る 〔か ら、 懲 戒 解 雇 理 由 と して は〕 労 働者 憲 草 法54

13)

条2項b号 な どが 適 切 で あ る。〕」 と判 示 して い る。

冒 頭 の マ ド リッ ド自 治 州 高 等 裁 判 所 の 判 決 を 含 め、 回 数 を主 た る基 準 とす る 裁 判 例 を総 合 的 に と らえ て み れ ば 、 少 な く と も 「お お よ その 規 則 的 な間 隔 で 」

継 続 的 ま た は 習慣 と して 保 た れ て い る行 為 」 に よ る状 態 、す なわち、飲酒行為

14)

の 繰 り返 しを 重 視 した基 準 に な っ て い る よ うで あ る。 この よ うな 判 断 基 準 を 採 用 す る裁 判 例 は比 較 的多 く、 他 に も例 えば 、 バ ス ク 自治 州管 区高 等 裁 判 所 が 「 働 者 の 習慣 的 とは認 め られ な い 一 回 性 の個 々 的 な飲 酒 行 為 は 、 常 習 的 な 飲 酒 に

15)

よ る解 雇 の 原 因 で は な い」 と判 示 し、 ま た 最 高 裁 判 所 も 「労 働者 が 業 務 中 に 飲 酒 して い た 行 為 が 複 数 回 で な け れ ば、 そ の 行 為 を原 因 とす る解 雇 は不 当 な も の

で あ る と推 定 され る」 と述 べ て い る。 要 す る に これ らの 裁判 例 で は 、飲 酒 が 「 習 的 」 で あ る と判 断 し得 な い場 合 に はf号 の 要 件 を 満 た して お らず 、 飲 酒 行 為

自体 が 懲 戒 解 雇 の 正 当 理 由 と は な らな い とされ て い る。

も ち ろ ん 、 常 習性 が あ る状 態 とは 、言 語 的 意 味 に お い て も ち ろ ん反 復 ・継 続 す る状 態 の こ とで あ るか ら、 飲 酒 行 為 が 単 に散 発 的 ま た は一 回 性 の もの で あ れ ば原 則 的 に常 習性 の あ る行 為 と評 価 され な い で あ ろ う。 しか し、 この 判 断 で は 未 だ十 分 とは い え な い とwわ れ る。 な ぜ な ら、 必 ず し も 日常 的 に飲 酒 す る状 態 で な くと も、 比較 的 頻 繁 に 飲 酒 す る者 の 飲 酒 行 為 が 「継 続 的 ま た は 習 慣 性 の あ

 の

る状 態 」 と推 定 され る こ とに もな り得 る し、 ま た そ の行 為 が 現 時 点 で1回 で あ っ て も、 常 習 性 を推 定 し得 る場 合 もあ り得 る か らで あ る。 この よ うな 場 合 が 想 定 で き る こ とか ら も、 そ もそ も回 数 の み で 判 断 す る こ とに 疑 問 が な い わ け で は な い 。

(2)そ こで 、 飲 酒 行 為 の 重 大 性 と回 数 の両 方 か ら常 習 性 要 件 を 判 断 す る考 え 方 も出 さ れ て い る。 この 基 準 を採 用 した裁 判 例 で は 、例 え ば 、 レス トラ ンの マ ネ ー ジ ャ ー を 任 さ れ て い た 従 業 員 が 、 あ る 日の 午 後 、食 堂 か ら離 れ た 場 所 で 飲 酒 して お り、 その 時 の 接 客 お よび 給 仕 を行 わ な か っ た こ とを理 由 に 店 側 がf号

を根 拠 と して 懲 戒 解 雇 処 分 と した 事 件 に お い て、 最 高 裁判 所 は、 「f号 違 反 の 非

(8)

8

難 を 受 け るに は、 飲 酒 が 常 習 的 で あ っ て 、 か つ 労働 に悪 影 響 を及 ぼ す も の で な け れ ば な らな い(…)。 当 該 従 業 員 が正 当 な 理 由 な く業 務 の遂 行 を怠 っ た 〔と し て も〕、 そ の 行為 が 懲 戒 処 分 に値 す る程 度 の 重 大 な もの で あ る必 要 が あ る(…)。

契約 上 の 誠 実 義 務 違 反 また は企 業 に対 す る背信 行 為 と い うた め に は、 労 働 者 が そ う した 意 図 を も っ て 積 極 的 に義 務 を放 棄 す る な どの 違 反 が 確 認 され な けれ ば

18)

な らな いが 、 本 件 の場 合 に は(…)確 認 で きな い」 と判 示 した 。 また 、 あ る労 働 者 が 飲 酒 を原 因 と して 内 臓 機 能 が 低 下 して い る との 労 働 衛 生 局 か らの報 告 を 受 け た 会 社 が 、 業 務 へ の影 響 も懸 念 され た た め 当 該 労 働 者 を ア ル コー ル 依 存 者 支 援 施 設 に入 所 させ る 手続 き そ の他 の 便 宜 を 図 った と こ ろ、 一 時期 改 善 の 兆 し が 見 られ た もの の 、 当該 労 働 者 が 再 び 飲 酒 した こ とで 状 態 が 悪 化 す る に至 っ た た め 、 会 社 がf号 を根 拠 に 懲 戒 処 分 に した 事 件 にお い て 、 マ ドリ ッ ド自治 州 管 区 高 等 裁 判 所 は 、 「f号 の要 件 は 、 労 働 者 の 行 為 が契 約.ヒの 重 大 か つ 有 責 性 の あ る不 履 行 で あ り、 それ が 常 習 的 な飲 酒 行 為 で あ り、 か つ 労働 に悪 影 響 を及 ぼ す とい うも ので あ る。(…)54条 の 消滅 原 因 に共 通 の こ と と して 、 軽 微 な違 反 行 為 に は程 度 の軽 い処 分 を行 うべ きで あ っ て 、 解 雇 とい う最 高 度 の 処 分 を 科 す こ と

10)

はで き な い」 と、 そ の 後 に出 さ れ た本 稿 冒頭 の判 決 と同趣 旨 の判 示 を して い る。

さ ら に別 の例 で は 、 船 舶 の操 縦 業 務 を担 当 して い た 労 働 者 が 、 一 度 飲 酒 しな が ら業 務 を 行 っ た こ と を理 由 に 注 意 処 分 を 受 けて い た が 、 そ の 後 再 び飲 酒 して業 務 を行 っ て い た と こ ろ、 乗 船 客 か らの苦 情 に よ っ て その 事 実 を 知 っ た 会 社 がf 号 を 理 由 に懲 戒 解 雇 処 分 と した 事 件 につ い て 、最 高 裁 判 所 は、 「飲 酒 行 為 の習 性

が 、(…)重 大 で 有 責 性 が あ り、 船 舶 や 乗 客 の 安 全 を擁 護 す る業 務 の 遂 行 に悪 影

20)

響 を 及 ぼ した 場 合 に は 、(…)f号 に 該 当 す る」 と判 示 して い る。

この 判 断塞 準 の 特 徴 は、 常 習 性 を証 明 す るた め に 、 同 様 の 行 為 に よ る以 前 の 制 裁 の 存 在 を 証 拠 と して 利 用 す る とい う考 え方 、 す な わ ち、 常 習 性 の認 定 方 法 は 労 働 者 の飲 酒 行 為 自体 の 特 定 で は な く、 そ う した 行 為 を理 由 と して過 去 に す で に 処 分 を受 けか つ そ の 行 為 か ら生 じ る結 果 を認 識 して い るに もか か わ らず 、 同 じ行 為 を繰 り返 して い る事 実 が 存 在 す る こ とで 判 断 す る と して い る こ とで あ る。例 え ば 、 アス トゥ リ ア ス 自 治 州 管 区高 等 裁 判 所 は 、 「わ が 国 の実 定 法 に は 、

違 反 行 為 〕 が頻 繁 に 行 わ れ て い る とい う概 念 を回 数 に よ っ て確 定 しな けれ ば な らな い とい う規 定 は存 在 しな い け れ ど も、 確 か な こ とは 、 頻 繁 に行 わ れ て い る

(9)

スペ イ ンに お け る懲戒 解 雇正 当原 因 と して の常 習 的飲 酒 行 為 お よ び薬 物乱 用9

状 態 で あ るか 否 か は 、 労 働 者 が 飲 酒 行 為 に よ っ て 懲 戒 解 雇 とな る可 能性 が あ る こ とを 以 前 に警 告 され て い る とい っ た 処 分 を受 け て い る に もか か わ らず 、 そ の 後 に再 び 同 様 の行 為 が 繰 り返 され た事 実 を も っ て 、 そ の競 合 す る状 況 に応 じて

zi)

裁 判 に よ っ て さ ま ざ ま な方 法 で証 明 され る とい う こ とで あ る」 と判 示 して い る。

確 か に 、 労 働 者 が 意 識 的 に 飲 酒 行 為 を 繰 り返 して 労 働 を 提 供 す る行為 自体 が

'L2)

悪 質 で あ る とは い え るで あ ろ う。 しか し、 こ の行 為 自体 を判 断 基 準 に す る こ と に も間題 が な い わ けで は な い 。 例 え ば 、 飲 酒 行 為 が 本 来 一 回 性 の もの で あ っ た が 、 そ の 一 回 性 の 行 為 が 単 に 繰 り返 され た 場 合 に 、 それ を 「常 習 性 」 とす る こ

23)

とは で きな い で あ ろ う。 冒頭 の 判 決 が 「業 務 中 の2日 間 の 飲 酒 で は 、 常 習 性 を

za)

評 価 し得 な い」 と判 示 して い るの も同 じ趣 旨 で あ る とい え る。 しか も、 悪 質 な 繰 り返 し行 為 で あ れ ば、 あ え て 「常 習性 」 と認 定 してf号 の対 象 と しな く とも、

他 の原 因 に よ る懲 戒 解 雇 は十 分 可 能 で あ る。 す な わ ち、 「常 習性 」 で あ る こ と 自 体 が 要 求 され る意 味 が 不 明 な の で あ る。

2.「 労 働 へ の 悪 影 響 」 要 件 の 判 断 基 準 一 行 為 の重 大 性 の 判 断 基 準 一 例 え ば ア ンダ ル シ ア 自治 州 管 区高 等 裁 判 所 マ ラガ 社 会 部 は 、 「論 理 的 に は 、r 号 で 要 求 され て い る要 件 は 〔労 働 へ の 悪 影 響 と常 習 性 の あ る飲 酒 行 為 の 〕2つ で あ る。 したが っ て 、 常 習性 が 単 に存 在 して い る こ とか ら労 働 へ の悪 影 響 を推

25)

定 す る こ とにつ い て(…)、 こ の解 雇 原 因 は 意 味 が な 〔い 〕」 と述 べ て い る。 確 か に 、f号 が 懲 戒 解ktIの正 当 原 因 と され るの は 、 常 習 的 な 飲 酒 行 為 ま た は薬 物 乱 用 が全 くの 私 的 行 為 で は な く、 そ う した 行 為 が 労 働 生 活 に 関 連 した 行 為 で あ る こ と、 そ して そ れ が 重 大 な 影 響 を及 ぼ す か らで あ る。 した が っ て 、 常 習 的 な 飲 酒 ま た は 薬 物 乱 用 とい う行 為 が 労 働 に どの よ うな 悪 影 響 を 及 ぼ した か を連 関 させ て判 断 す る こ とが よ り重 要 とな る。 「労 働 へ の悪 影 響 」 要 件 は 、f号 を根 拠 とす る 懲 戒 解 雇 の正 当 性 を判 断 す る上 で 、 従 来 か ら多 くの裁 判 例 に よ っ て 亟 視

zc)

され て きて い る。

こ の要 件 に関 して 明 らか な こ との ひ とっ は、 飲 酒 行 為 や 薬物 乱 用 行 為 が あ っ て も 、 そ の 行 為 が現 実 に労 働 に悪 影 響 を及 ぼ した こ とが 証 明 され な け れ ばf号 を根 拠 に 懲 戒 解 雇 で き な い とい うこ とで あ る。 例 え ば 、 労 働 者 が 違 法薬 物 を使 胴 して業 務 に従 事 して い た疑 い が あ る こ と を理 由 と してf号 を 根 拠 に 懲 戒 解 雇

(10)

io

処 分 とさ れ た事 件 で 、 ア ス トゥ リ アス 自治 州 管 区高 等裁 判所 は、 「f号 が 常 習 的 な 飲 酒 お よ び薬 物 乱 用 を 有 効 な解 雇 原 因 と分 類 して い るの は、 労 働 へ の悪 影 響 が み られ る場合 で あ る。(…)こ の 影 響 につ い て は 、 使用 者 が 証 明 しな けれ ば な

らな い 」 と判 示 して い る。 また 例 え ば 、 飲 酒 した 状 態 で 会 社 所 有 車 両 を運 転 し て 乗 員 を危 険 な 状 態 に お い た 労 働 者 の 解 雇 に 関 す る事 件 で 、 カ ン タ ブ リア 自治 州 管 区高 等 裁 判 所 は、 「適 用 され る労 働 協 約 に常 習 的 で な い 飲 酒 行 為 が 単 に 璽 大 な 違 反 で あ っ て極 め て 重 大 な 違 反 と され て い な い とき、 そ の 行 為 が 労 働 者 の安 全 や 健 康 に 危 険 を及 ぼ す よ うな 場 合 に は 、 解 雇 で は な くそ の 他 の 懲 戒 処 分 を科

'L8)

す こ とが で き る」 とす る趣 旨 の 判 示 を した も の な ど も あ る。 さ ら に例 え ば、 企 業 の 定 期 健 診 に お い て 薬 物 乱 用 の 事 実 が 発 見 さ れ た 場 合 にf号 を根 拠 に懲 戒 解 雇 で き るか 否 か が争 わ れ た 事 件 に お い て、 憲 法 裁判 所 は、 「企 業 の 定 期 健 診 の 尿 検 査 に お い て あ る労 働 者 の麻 薬 の 使 用 が検 知 さ れ た と して も、 こ れ に よ り当該 労働 者 を適 性 を欠 く と して 解 雇 す る こ とは 、憲 法18条1項 で 定 め る プ ライ バ シ ー

20)30)

権 を侵 害 す る こ とに な る」 と判 示 して い る。 この最 後 の 裁 判 例 で は、 あ え て プ ライ バ シ ー の 権 利 を 持 ち だ さず とも 、仮 に薬 物 服 用 自体 が 労 働 者 と して の 適 性 を 欠 く こ とが 推 定 され る と して も、 そ れ が 現 実 に 労 働 に悪 影 響 を及 ぼ して い な い に も か か わ らず 、 その 状 態 を 発 見 した こ とで 懲 戒 解 雇 す る こ とが で きな い こ

と は当 然 で あ ろ う。

また も うひ とつ 明 白な こ とは 、 上 記 ア ン ダ ル シ ア 自治 州 管 区 高 等 裁 判 所 マ ラ ガ社 会 部 が 述 べ て い る よ う に、 「労働 へ の 悪 影 響 が 確 認 さ れ れ ば 、 労 働 者 の 常 習 的 な 飲 酒 行 為 や 薬 物 乱 用 の時 間 や 場 所 が 労働 提 供 す べ き以 外 の 場 所 また は私 生 活 の 時 間 に 行 わ れ た と して も懲 戒 解 雇 が 許 され る 」 こ とに な る とい う こ とで あ

31)

る。 こ の点 、 例 え ば 、 あ る学 校 の 児 童 教 育 学 級 の担 当 教 員 が公 共 の場 所 で 酒 に 酔 った 状 態 で あ る こ と を生 徒 や その 保 護 者 に 目撃 され 、 ま た 酒 に酔 っ た 状 態 の ま ま授 業 を して た び た び 保 護 者 か ら苦 情 が寄 せ られ た た め 、学 校 がf号 を根 拠 に 懲 戒解 雇 処 分 と した 事 件 で 、最 高 裁 判所 は、 「学 校 以 外 の 場所 に お い て ア ル コー ル 飲 料 を摂 取 した行 為 の 結 果 と して 、 生 徒 の 保 護 者 か ら苦 情 が 寄 せ られ 、 ま た そ う した行 為 に よ り学 校 の評 判 が 低 下 す る程 度 に まで 悪 影 響 が 表 れ 〔て い る壌

32)

実 が確 認 さ れ て い る こ とか ら〕、懲 戒 解 雇 は正 当 で あ る」 と判 示 して い る。 また 、 運 転 業 務 を 担 当 して い る労 働 者 が 事 業 所 外 で 日常 的 に違 法 薬 物 を摂 取 し、 作 業

(11)

スペ イ ンに お け る懲戒 解 雇 正 当原 因 として の常 習 的飲 酒 行 為 お よび薬 物 乱用//

能 率 が低 下 した だ けで な く第 三 者 に 対 す る危 険 を 生 ぜ しめ た こ とを 理 由 に、 会 社 がf号 を根 拠 と して 懲 戒 解 雇 した 事件 で 、 ム ル シ ア 自治 州 管 区 高 等 裁 判 所 は、

違 法 薬 物 の 摂 取 場 所 につ い て 特 に言 及 せ ず 、 そ の 行 為 の璽 大 性 か ら 「f号 を 根

33)

拠 と して 懲 戒 解 雇 し得 る」 と判 示 して い る。

しか し、 この 要 件 の最 重 要 課 題 は 、 常 習 的 な 飲 酒 ま た は 薬 物 の摂 取 が 労 働 に 悪 影 響 を与 え た こ とを具 体 的 に証 明 しな け れ ば な らな い こ とで あ る。 しか し、

この 判 断 基 準 に つ い て も労 働 者 憲 章 法 に は何 も規 定 さ れ て い な い。 も ち ろ ん 、 常 習 的 な 飲 酒 また は薬 物 乱 用 を理 由 とす る労 働 へ の 悪 影 響 とは 、原 則 と して と うぜ ん 労 働 義 務 の 不 履 行 の 重 大 性 を この 原 因 に 属 しめ得 る影 響 とい う こ とで あ るか ら、 そ の 影 響 の 程 度 とは、 例 え ば カ ン タ ブ リア 自 治 州 管 区高 等 裁 判 所 が 述 べ て い る よ う に、 「一 定 の 客 観 性 、 重 大 性 また は持 続 性 の あ る もの」 で な け れ ば

34)

な らな い で あ ろ う。 しか し、 労 働 へ の 悪 影 響 とい っ て も、 その 態 様 に は 、例 え ば 労 働 に お け る忠 実 義 務 や 協 力 義 務 の 重 大 な 変 更 、 労 働 者 に課 せ られ て い る誠 実 義 務 の 破 壊 、 安 全 衛 生 設 備 や 手 段 に対 す る不 誠 実 な行 為 、 正 常 な 業 務 指 揮 命 令 また は規 則 に 対 す る服 従 義 務 違 反 な どさ ま ざ ま な もの が あ る。 そ して そ の 具

体 的な推定 は、企業 の評 判や信用 を失墜 させ るこ と、顧 客 または第三者 か らの

3G)37)

苦情 、 企 業 の 経 済 的 利 益 へ の マ イ ナ ス 効 果 、 実 際 の作 業 能 率 の低 下 状 況 ま た は 企 業 で の 共 同 作 業 の 困難 性 、 災害 また は 自己 も し くは 当 該 労 働 者 自身 ま た は 他

38)

者 に 危 険 を も た ら し得 る可 能性 の 状 況 か ら行 われ る こ とに な ろ う。 したが っ て 、 この 判 断 に お い て 重 要 な こ とは 、 こ う した 労 働 へ の悪 影 響 が 常 習 的 な飲 酒 また は 薬 物 乱 用 の 推 定 に お い て 具 体 的 か つ 深 刻 な 程 度 で現 実 に発 生 して い る こ とを

3W

具体 的 な状 況 に 応 じて どの よ うに 認 識 す るか とい う こ とで あ る。

この 点 に お い て 裁 判 例 は、 前 節 で み た よ う に常 習 性 自体 の判 断基 準 を設 定 す る こ と 自体 が 困難 な こ とか ら、例 え ば カ タ ル ーニ ャ 自治 州 管 区 高等 裁 判 所 の 「(…)

常 習 性 お よび 薬物 服用 の 要 件 は〕 違 法 薬 物 の お お よ そ の常 習 的 な摂 取 が あ る と

40)

い う意 味 で 弾 力 的 に解 釈 し得 るで あ ろ う」 と い う表 現 か ら うか が え る よ うに 、 む しろ常 習性 要 件 を形 骸 化 して 、 飲 酒 状 態 が 重 大 な危 険 を予 想 させ ま た は その 状 態 で の一 般 人 や 顧 客 との 直 接 的 な接 触 が あ った 場 合 に飲 酒 行 為 自体 の 重 大 性 を 重 視 して解 雇 を正 当化 しよ う とす る考 え 方 、 す な わ ち 、 適 用 し得 る労 働 協 約 の規 定 で も解 雇 が 可 能 で あ る とい う考 え方 が 多 い よ うで あ る。

(12)

/2

例 え ば、 飲 酒 して 運 転 業 務 を 行 い交 通 安 全 違 反 で 有 罪 と され た トラ ック運 転 手 を懲 戒 解 雇 処 分 に した 事 件 つ いて 、 カ ス テ ィー ジ ャ ・イ ・レオ ン 自治 州 管 区 高 等 裁 判 所 は、 「当 該 労 働 者 は、 長 距 離輸 送 業 務 の た め交 通 量 の 多 い公 道 を木 材 その 他合 計65ト ン もの貨 物 を積 載 した 大 型 車両 のハ ン ドル を、明 らか に 酒 に酔 っ た 状 態 で操 作 す る とい う自他 に 対 す る非 常 に危 険 な行 為 を行 った もの で あ る。

この よ うな 行 為 は 、(…)明 らか に業 務 怠 慢 行 為 で あ り、(…)労 働 契 約 の 締 結 か ら派 生 す る忠 実 義 務 お よび 忠誠 義 務 に抵 触 す る もの で あ り、(…)著 し く信 頼

41)

を 損 な わせ る行 為 で あ る」 と判 示 して懲 戒 解 雇 を正 当 と評 価 して い る。 また 、 地 下 鉄 の運 転 手 が 飲 酒 しなが ら業 務 を行 っ て い た こ と に対 し、 会 社 が 社 内 規 則 124条 他 者 に危 険 を 及 ぼ し得 る場 所 に お い て業 務 に従 事 す る労働 者 の 飲 酒 行 為 は極 め て重 大 な 違 反 行 為 」 に基 づ い て地 下 鉄 で の 当該 運 転 手 の 違 反 行 為 を厳 重 に 処 罰 す る と して、f号 を根 拠 とす る懲 戒 解 雇 処 分 と した事 件 で 、 マ ド リ ッ ド

自治 州 管 区 高 等 裁 判 所 は 、 「社 内規 則 に 明確 に処 分 す る旨が 記 載 され て い る こ と か ら、f号 を論 証 す る必 要 が な い(…)。 〔f号 は 〕 常 習 性 を要 件 と して い るが 、

内部 規 則 は 〕 その 要 件 が 排 除 さ れ て お り、 また この 要 件 の排 除 は 、 これ ま で も

42)

各種 輸 送 機 関 の 運 転 手 の 場 合 に は 見 られ た と ころ で あ る」 と判 示 して い る。 さ ら に、 荷 車 運 搬 を担 当 す る労 働 者 が 作 業 時 間 に遅 刻 した だ け で な く明 らか に酩 酊 した 状 態 で あ っ た た め 、 上 司 が 作 業 をせ ず 帰 宅 す るか 別 の場 所 で 休 憩 す る こ

と を指 示 した が 、 当 該 労 働 者 が その 命 令 を 聞 か ず 作 業 を行 っ た こ との報 告 を受 け た 会 社 側 が 、 当該 労働 者 の そ う した行 為 が 過 去 に も何 度 か あ っ た こ とか らf 号 を根 拠 に 懲 戒 解 雇 した 事 件 で 、 カ ス テ ィー ジ ャ ・イ ・レオ ン 自治 州 管 区 高 等 裁判 所 ブル ゴ ス社 会 部 は 、 「何 度 か飲 酒 した 状 態 で の作 業 が確 認 され て お り、 か つ この 状 態 は、 当該 労 働 者 だ け で な く、 そ の 他 の 労 働 者 に 対 す る危 険 を生 じ さ せ る も の で あ る。 この 事 実 は 、f号 の解 雇 原 因 に相 当 す る もの で あ る」 と判 示

43)

して い る。 他 方 、 例 え ば 、 あ る木 材 会 社 の 社 内規 則 の 中 の従 業 員 の禁 止 項 目の ひ とつ と され て い た 「社 外 に お いて 制 服 を着 用 して の 飲 酒 」 に該 当 す る行 為 を した 者 を解 雇 処 分 と した 事 件 で 、 最 高 裁 判 所 は、 「〔こ の規 定 に該 当 す る行 為 が あ って も〕 こ う した軽 微 な違 反 で 解 雇 処 分 とす る こ とは で きな い」 と判 示 して

い る。

しか し、 これ らの 判 例 の共 通 点 で あ る と同 時 に 疑 問 点 とす べ き こ と は、 ひ と

(13)

ス ペ イ ンに お け る懲 戒解 雇 正 当 原 因 と して の常 習 的 飲 酒行 為 お よび薬 物 乱 用13

つ は 、 常 習性 の 意 義 を過 小 評 価 して 、 一 回 限 りの 飲 酒 行 為 で あ っ て も懲 戒 解 雇 を正 当 化 す る とす る考 え 方 、 す な わ ち、 重 大 な 危 険 を発 生 させ る可 能 性 の高 い 業 務 に従 事 す る労 働 者 の 場 合 で あ れ ば常 習性 要 件 が 軽 減 され るか の よ うに 判 示

45)

され て い る こ とで あ る。 も うひ とつ は、 軽 微 な 違 反 行 為 が 繰 り返 され る こ とに

ac)

よ っ て重 大 性 が 評 価 され る場 合 も見 られ る と い う こ とで あ る。 この よ うな考 え 方 に は、 飲 酒 行 為 自体 が 「契 約 上 の 誠 実 義 務 違 反 お よび 業 務 遂 行 上 に お け る背 信 行 為 」 な どf号 以 外 の 正 当事 由 が 確 認 され れ ば 、 そ の 一 回性 の 飲 酒 で あ って も懲 戒 解 雇 され る とす る裁 判 所 の 意 思 が読 み 取 れ る。 しか し、 前 者 の疑 問 点 に つ い て は 、 仮 に飲 酒 行 為 が 一 回性 の もの で あ って も常 習 性 が 判 断 し得 る余 地 が あ る とす れ ば 、 逆 説 的 に、 常 習性 を持 ち だ さ な くて も上 記 そ の 他 の 原 因 に 組 み 込 め る こ と に な っ て しま い 、f号 の独 自性 が か え っ て 曖 昧 に な るで あ ろ う。 ま た 、 後 者 の 疑 問 点 に つ い て は 、 本 来 、 繰 り返 しを基 準 と した行 為 の 重 大 性 の 評 価 は、 常 習 性 要 件 と して 独 立 した 形 式 で証 明 され な けれ ば な ら な い こ とで あ ろ

47)

う。 原 則 論 的 な観 点 か ら は、 本稿 冒頭 の判 例 が い う よ う に、 「常 習性 」 は こ の原 因 を正 当 化 す る最 低 限 度 の要 件 で あ る とす る考 え 方 の ほ うが 素 直 で あ る。 もっ とも、 そ うで あ るな ら 「常 習 性 」 要 件 とは 何 か とい う振 り出 しの 問 題 に 戻 る こ とに な る。 結 局 、f号 が 常 習 性 要 件 を規 定 す る 以 上 、 常 習 性 が 原 則 的 に 飲 酒 行 為 自体 との 関 連 で判 断 で きな けれ ば な らな い はず で あ るが 、 事 実 上 、飲 酒 行 為 自体 の 労 働 へ の影 響 との 関連 で しか と ら え る こ とが で き な い の で あ る。

3.労 働 者 の 行 為 の 有 貴 性 の 判 断 基 準

も うひ とつ 、f号 の 正 当性 判 断 に 際 して は労 働 者 の 有 責 性 の 存 在 が確 認 され

48)

な け れ ば な らな い 。 これ が認 め られ な い 場 合 に は 、 そ の行 為 を理 由 とす る少 な

49)

く と もf号 を根 拠 と した懲 戒 解 雇 処 分 は 許 さ れ な い。 この 有 責 性 の判 断 に際 し て も、例 え ば ラ ・リオ ハ 自治 州 管 区高 等 裁 判 所 が 「(…)労 働者 の す べ ての 過 失 ま た は 不 履 行 が 、 労 働 法 秩 序 が 抽 象 的 に 分 類 し規 定 す る違 反 行 為 に 該 当 す る と

して も、それ に よ って 直 ち に最 も重 い処 分 が 生 じ るわ け で は な い。(…)し た が っ て、 〔労 働 法 が 規 定 す る〕最 低 限 の 客 観 的 基 準 の適 用 は 排 除 され 、 む しろ、 当該 事 実 を構 成 す る諸 状 況 お よび 当 該 勇 働 者 の 状 況 を 考 慮 す る こ とで 、 各 々 の 行 為 の 個 別 的 な分 析 が 求 め られ る。 こ の 視 点 か らの み処 分 の 比 例 性 を評 価 で き る」

(14)

/4

と判 示 して い る よ うに 、 個 々 の場 合 ご との個 別 的 お よび 客 観 的 な 状 況 が 慎 重 に

らの

考 慮 され な けれ ば な らな い。 す な わ ち、 そ の 原 因 が 労 働 者 本 人 の 意 思 に よ って 修 正 可 能 な 単 な る 日常 行 動 に お け る悪 癖 と して の もの か 、 ま た は 本 人 の通 常 の 意 思 や 努 力 で は 矯 正 す る こ とが 相 当 困 難 も し くは不 可 能 で あ っ て 、 医 師 な どの 支 援 が 必 要 な病 気 に よ り発 生 して い る も の か と い う点 が 判 断 さ れ な け れ ば な ら な い で あ ろ う。 労 働 者 憲 章 法45条1項 お よ び48条 に は、 この 有 責 性 の視 点 にお い て 、 病 気 の場 合 に は労 働 契 約 の効 力 が 保 持 され た ま ま停 止 す る 旨が 明 記 され

51)

て い る こ とか ら、 常 習 的飲 酒 が 病 気 で あ る と確 認 で き る場 合 に は 労働 者 憲 章 法 と相 い れ な い だ けで は な く、 病 気 の者 を差 別 して い る とい う推 定 も成 り立 つ こ

52)

とに な る。

もっ と も、 有 責 性 の 判 断 もか な り困難 で あ る。 この 点 に つ いて は 、 例 え ば カ タル ー ニ ャ 自治 州 管 区 高 等 裁 判 所 が 「特 に精 神 的 な 病 気 の場 合 に 顕 著 で あ るが 、 処 分 を受 け る行 為 の 有 責 性 を 評 価 す るた め に、 当 該 労 働 者 の 〔そ の具 体 的 な行 為 に お け る その 時 の 〕 認 識 能 力 の 存 在 を 決 定 的 な 要 素 とす るの で は な く、 そ の 病 気 が(…)当 該 労 働 者 の判 断 を惑 わせ 、 そ の行 為 の 不 正 また は不 道 徳 を識 別 す る判 断 力 、 要 す る に善 悪 を 区 別 す るた め の 決 定 的 な 判 断 力 を奪 う有 害 な効 果 を もた らす こ とが要 求 され る。 当 該 事 件 の場 合 の よ う に、(…)隠 ぺ い の意 図 を も って 慨 怠 行 為 お よび そ の計 画 を企 て て い る こ とが 明 らか で あ 〔る よ うな 場 合 に は 〕、 そ の 内 容 を評 価 す る際 に 、制 御 不 能 な 危 機 的 状 況(…)と す る こ とは で きな い 。 要 す る に、 この こ とは、 危 機 的 な病 理 学 的概 念 と相 いれ な い(…)」

53)

判 示 して い る よ うに 、従 来 裁 判 所 は 労 働 者 の 病 的 な 状 態 が 永 続 的 な もの か 否 か で は な く、 労 働 者 の違 反 行 為 と病 的 な状 態 の 時 間 的連 関 性 お よび 具 体 性 を判 断

基 準 に して きて い る よ うで あ る。

この よ うな 裁 判 所 の判 断 の仕 方 は 、 原 則 的 に は正 確 な基 準 とい え よ うが 、 実 際 に そ う した基 準 で 評 価 す る こ とは 極 め て 困 難 で あ ろ う。 そ の 判 断 基 準 を 緩 や か に す れ ばf号 適 用 の 幅 を拡 大 す る危 険 性 が あ る し、 反 対 に厳 格 に す れ ばf号 を形 骸 化 して しま う こ と に な る。

(1)実 際 に 、 飲 酒 行 為 に対 す る裁 判 所 の評 価 は、 例 え ば マ ド リ ッ ド自治 州kS 区高 等 裁 判 所 が 「労 働 者 の 行 為 に 過 失 が 存 在 す る か否 か は、 ア ル コ ー ル摂 取 の

直 接 的 な〕 結 果 か らで は な く、 ア ル コ ー ル を 摂 取 す る動 因 とな っ た 背 景 との 二

(15)

ス ペ イ ン にお け る懲 戒 解雇 正 当 原 因 と して の 常 習的 飲 酒 行為 お よび薬 物 乱 用15

55)

極 的 な 経 過 の 結 果 か ら 〔判 断 され な けれ ば な らな い 〕」 と述 べ 、 ま た例 え ば ガ リ シ ア 自治 州 管 区 高 等 裁 判 所 が 、 明 確 に常 習性 が 確 認 で き な い飲 酒 行 為 に つ いて

業 務 を遂 行 す べ き とき に ア ル コ ー ル を摂 取 して い る状 態 で あ る こ とは 契 約 上 の 誠 実 義 務 違 反 で あ り、 ゆ え に 労 働 者 が そ れ を 摂 取 した 結 果 の事 実 で あ る こ とは

当 該 行 為 に 対 す る労 働 者 の帰 責 性 を軽 減 す る こ とに な ら な い」 と判 示 して い る こ とに見 られ る よ うに 、 従 来 か ら総 じて厳 格 な態 度 で あ る。 こ う した考 え 方 の 基 底 に は、 例 え ば 最高 裁判 所 が 「常 習 的 な ア ル コー ル依 存 が 病 気 で あ る と(…) 認 定 され る と して も、 明 白 な こ とは、 そ の 元 とな る原 因 が 当該 労 働 者 に よ るエ チ ル ア ル コー ル の長 期 的 な飲 用 に あ り、 ゆ え に そ の解 雇 の 不 当 を認 め る理 由 と はな ら な い。(…)不 能 状 態 が そ う した 状 態 を発 生 させ た者 自体 に責 任 が あ る と き に は、 労 働 契 約 は も ち ろ ん解 消 す る こ とが で き る」 と早 くか ら述 べ て い る よ

57)

う に、 病 気 自体 を制 御 す る責 任 が 労 働 者 に あ る とい う考 え方 が 存 在 して い る よ うで あ る。

こ う した裁 判 所 の判 断 の 仕 方 は、 労 働 者 の飲 酒 行 為 が 常 習 的 な もの で は な く、

一 時 的 また は散 発 的 な も の で あ る と認 定 され た場 合 に は もち ろん そ の通 りで あ

る。 しか し、 常 習性 要 件 の 評 価 基 準 自体 が 上 記 の よ う に曖 昧 な もの で あ る以 上 、 本 質 的 に病 気 の 者 までf号 を根 拠 に排 除 して しま う危 険 性 が 指 摘 で き よ う。

(2)薬 物 乱 用 の場 合 は飲 酒 と は異 な り、 上 述 の よ う に、 労 働 者 憲 章 法 の 規 定 の 仕 方 か ら も そ れ が 習 慣 的 ・常 習 的 で あ る こ とは要 求 され て い な い。 こ こで い う 「薬 物 」 とは 、 最 高 裁 判 所 に よれ ば、 「心 地 よ い感 覚 や痛 み を 解 消 す る効 果 を 生 み 出す 物 質 」 で あ り、 そ う した 物 質 の 「依 存 」 に よ る 中毒 で あ るか ら、 「ア ル コ ー ル飲 料 を暴 飲 す る こ とに よ っ て 引 き起 こ され る アル コー ル 依 存 症 お よ び一 定 の 物 質 を 乱 用 す る こ とに よ って 引 き起 こ され る薬 物 中毒 症 」 の 両 方 が 含 まれ

59)

る と判 断 され て い る。 そ う した 原 因 に よ り、 労 働 に 悪 影 響 を及 ぼ した こ とが 推 定 さ れ れ ば 、 直 ち に 懲 戒 解 雇 の 正 当事 由 とな る と解 釈 し得 る。

例 え ば 、 薬 物 依 存 状 態 が病 気 と診 断 さ れ て い た 労 働 者 が 何 度 も薬 物 を 服 用 し 欠 勤 な どを 繰 り返 した た め 、 その 度 に企 業 が 出勤 停 止 や 賃 金 カ ッ トな どの 処 分 を行 っ た が 改 善 が見 られ ず最 終 的 に 当 該 労 働 者 を解 雇 した と こ ろ、 病 気 の 者 を 客 観 的原 因 に よ る解 雇 で は な く懲 戒 処 分 とす る の は 不 当で あ る と して撤 回 を求 めた 事 件 で、 最 高 裁判 所 が 「飲 酒 行 為 に つ い て は 常 習 性 が 要 件 と され て い るが 、

(16)

16

薬 物 乱 用 の 場 合 に は 〔そ の 要 件 す ら〕 必 要 と され て い な い 。 なぜ な ら、 労 働 者 憲 章 法 に は そ れ を要 件 とす る文 言 は存 在 しな い 。 ま た 、 薬 物 依 存 の 重 大 性 も そ の 病 気 治療 中 で あ る こ とに お け る労 働 へ の 影 響 に つ い て も規 定 さ れ て い な い 。 そ して本 件 の 場 合 に は、 当該 労 働 者 の労 働 者 憲 章 法52条a号 で い う不 適 格 は 明 らか で あ り、(…)何 度 も懲 戒 処 分 を受 け て お り、(…)か つ 〔確 認 され た 事 実 に よれ ば〕 そ う した 状 況 を改 善 す るた め の機 会 が あ った と 〔考 え られ る〕。(…) 薬 物 中毒 もア ル コー ル依 存 も、(…)こ う した 状 態 を被 っ て い る者 の 意 思 とは無 関 係 で あ る とは み な し得 な い か ら、 懲 戒 解 雇 の正 当 な 原 因 とな る」 と判 示 して

co>

い る こ とか ら も 、薬 物 依 存 の原 因 が 労 働 者 に帰 責 し得 るか 否 か を問 題 とす る の で は な く、 薬 物 服 用 の 場 合 に は 飲 酒 の と き以 上 に元 々 の 原 因 を発 生 さ せ た 状 態

自体 が 労 働 者 と して の 適 性 を 欠 く とい う判 断 が 働 い て い る よ う に思 わ れ る。

しか し、 薬 物 乱 用 の 場 合 に だ け ほ ぼ 自 動 的 に懲 戒解 雇 し得 る とす るの は、 例 え ば そ の他 の さ ま ざ まな 違 法 行 為 の 場 合 の 取 扱 い との 関 係 か ら考 え て も必 ず し

も合 理 的 とは い え ず 、 む しろ差 別 を推 定 させ る こ とに な る危 険 性 を指 摘 せ ざ る を 得 な い で あ ろ う。

三.労 働 者 憲章 法54条2項f号 の 存 在 意 義 一f号 廃 止 の視 点 を中 心 に 一

1,労 働 者 憲 章 法54条2項f号 の 削 除 を 求 め る主 張

前 節 まで の分 析 か ら も明 白 な よ う に、f号 の 規 定 は 曖 昧 さ を 払 し ょ く し得 な い た め 、 この条 項 の 削 除 を求 め る主 張 も近 時 大 き くな って き て い る。

そ の 代 表 的 な 考 え方 は2つ で あ る。

ひ とつ は 、例 え ば ロ ド リゲ ス ・ラモ ス 教 授 に よ っ て 主 張 さ れ て い る 立場 で あ り、 この 原 因 を 懲 戒 解 雇 の 正 当原 因 と して列 挙 して お くこ とは 不 必 要 で あ る と い う見 解 で あ る。 す な わ ち 、 使 用 者 が 労 働 者 を懲 戒 解 雇 し得 る正 当 原 因 で あ る た め に は、 労 働 と関 連 した 行 為 で あ る こ とが 必 要 不 可 欠 で あ る。 そ して 、f号 に は 「常 習 的 な 飲 酒 ま た は薬 物 乱 用 」 が 「労 働 に悪 影 響 を及 ぼ し得 る」 こ とが 明記 され て い る。 こ の後 者 の 要 件 の 判 断 に は 、 そ の行 為 の 具 体 的 な状 況 に お い て、 常 に54条2項 が 列 挙 す る他 の 原 因 の い ず れ か が 考 慮 され る こ とに な る。 し

(17)

ス ペ イ ン にお け る懲 戒 解雇 正 当 原 因 と して の 常 習 的飲 酒 行為 お よび 薬物 乱 用/7

た が って 、 そ れ が 前 者 の 要 件 の 比 重 を相 対 的 に低 下 さ せ て い る とい う趣 旨 の 主

cq

張 で あ る。

も う ひ とつ の 主 張 は 、 例 え ば シ ス カ ル ト ・ベ ア教 授 に よ っ て主 張 され て い る 立 場 で あ り、f号 が 憲 法 で 禁 止 され て い る平 等 取 扱 い原 則 に違 反 す る とい う も の で あ る。 す な わ ち 、f号 の 要 件 の ひ とつ と され て い る 「常 習 的 な 飲 酒 また は 薬 物 乱 用 」 は病 気 の状 態 で あ っ て 、 本 人 の意 思 の み で この 状 態 を 改 善 す る こ と は通 常 相 当 の 困 難 を伴 う もの で あ る と推 定 で き る。 仮 に 本 人 の 意 思 に よ る改 善 が 不 可 能 で あ る とす れ ば 、 病 気 の状 態 とそ の状 態 か ら派 生 す る状 態 や 活 動 を 区 別 す る必 要 が あ るが 、 ア ル コ ー ル依 存 また は薬 物 中 毒 の 状 態 の 者 が 直 ち にf号 を根 拠 と して懲 戒 解 雇 さ れ る危 険 性 が あ る。 この こ とは 、2つ の点 で 今1≡1の 秩 序 の原 則 に相 い れ な い。 ひ とつ は 、 それ が 労 働 者 の私 生 活 に対 す る干 渉 で あ り、 も う ひ とつ は 、 そ う した 状 態 が病 気 に よ っ て 引 き起 こ され て い るな らば 、 現 行 労 働 者 憲 章 法 で は 疾 病 に よ る契 約 の停 止 が 認 め られ て い るに もか か わ らず 、 この 場 合 の み を懲 戒 解 雇 の 正 当 原 因 と して 扱 っ て い るの で あ って 憲 法14条 で 宣

G2)GG)

言 され て い る平 等 原 則 に反 す る と評 価 せ ざ る を得 な い とい う もの で あ る。

こ う したf号 の 削 除 を 求 め る主 張 は 、議 会 に お い て も2000年 の労 働 者 憲 章 法 改 正 法 案 の 提 出理 由 の 中で も見 られ た。 この 法 案 提 出 理 由 に は 上 記2つ の 考 え 方 が 収 敏 さ れ て お り、 「『労 働 に 悪 影 響 を 及 ぼ す 常 習 的 な飲 酒 ま た は薬 物 乱 用 』 が 解 雇 原 因 と して示 され る場 合 に は、 次 の2点 に つ い て 検 討 す る こ とを要 す る。

この 規 定 は 、 ア ル コー ル 依 存 者 また は薬 物 中 毒 者 で は な い そ の他 一 切 の 労 働 者 に 対 して 、54条2項 が 列 記 す るそ の他 の 正 当原 因 との 関 連 に お いて 、 そ う した 行 為 が 解 雇 を 正 当 化 し得 る程 度 の 契 約 上 の 重大 か つ 有 責 性 の あ る違 反 と し得 る とい う こ とで あ る。 この よ うな 人 の そ う した 行 為 に対 してf号 を 根 拠 とす る制 裁 が 正 当 化 さ れ る の で あ っ て、 ア ル コ ー ル依 存 者 ま た は 薬 物 中毒 者 に対 して こ の規 定 は無 用 で あ る。 も う ひ とつ は 、f号 が ア ル コ ー ル 依 存 者 また は薬 物 中 毒 者 以 外 の 労 働 者 に は無 意 味 で あ り、 違 反 行 為 者 が そ う した 人 で あ るTrに よ っ て の み 意 味 が あ る とい う こ とで あ る。 この よ うな も の で あ れ ば、f号 の 不 正 義

ま た は 差 別 的 な要 素 が 問 わ れ な け れ ば な ら な い で あ ろ う」 とい う趣 旨の こ とが

ゼの

述 べ られ て い た。

も っ と も、 現 在 まで の と こ ろ、 少 な く と も立 法 作 業 に お け るf号 削 除 の 具 体

参照

関連したドキュメント

 処分の違法を主張したとしても、処分の効力あるいは法効果を争うことに

方法 理論的妥当性および先行研究の結果に基づいて,日常生活動作を構成する7動作領域より

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

主として、自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為以外の開

[r]

einer rechtliche Wirkung gerichtete

在宅医療 注射 画像診断 その他の行為 検査

・ シリコンシーリングを行う場合、ア クリル板およびポリカーボネート板