テレビゲーム遊びが小学生に与える影響についての 研究
著者 畑 成人
雑誌名 金沢大学教育学部学校教育教員養成課程(保健体育)
・スポーツ科学課程卒業論文抄録 = Excerpta of Graduational Thesis on Physical Education, Health and Sport Sciences, The Faculty of Education, Kanazawa University
巻 52
号 2003
ページ 5‑8
発行年 2004‑03‑01
URL http://hdl.handle.net/2297/36008
テレビゲーム遊びが小学生に与える影響についての研究
学 校 教 育 教 員 養 成 課 程 9 9 − 0 8 8 畑 成 人 I.研究の動機・目的
家庭で遊ぶことができるテレピゲームが登場してから20年余りがたった。今では、テ レピゲームの種類も増え、従来のようにテレビに接続して遊ぶものから、どこへでも携帯 できる小型のもの、さらに、インターネットに接続して遊ぶものまである。もはやテレビ ゲームは、子どもの遊びとしての文化を形成している。そうしたテレビゲームが進化し続 ける一方で、テレピゲームは、コミュニケーション能力の低下や、現実と非現実との区別 ができなくなるなどの子どもに対しての悪影響が懸念されている。私が小学生のときも、
親は私に「勉強の邪魔になるから」「眼が悪くなるから」といって、テレピゲーム機を買っ てくれなかった。そのとき私も親の意見に納得しそれ以上テレピゲームを欲しがらなかっ た。つまり私も、テレビゲームは自分にとってよくないものだと思っていた。しかし、坂 本')は「テレビゲーム遊びが、社会的不適応を招くことや攻撃性を増すことについて今ま での研究ではきちんと因果関係は認められていないものである」としている。また、森ら 2)は「テレビゲームに熱中している子どもたちはテレビゲーム遊びの結果、勉強や読書を おろそかにしているわけではなく、よく言われているような問題のある特別子どもたちで はない」と結論を出し、さらに「テレビゲームに熱中する子どもは、いろんなことに興味 を抱く好奇心旺盛なタイプの子である」2)と述べている。このように、今まで私が当然あ ると思っていたテレビゲームの悪影響は、メディアが報道し大人たちが勝手に作り上げた イメージであることを知ったのが、この研究に取り組もうと思った動機である。
本研究の目的は、T小学校の5,6年生にアンケート調査を行い、小学生のテレピゲー ムに関する行動の実態を明らかにし、テレビゲームを適量でやめられるかと、テレビゲー ムが友人関係に及ぼす影響を明らかにし、テレビゲームは小学生に悪影響を与えるかを明
らかにすることである。
Ⅱ . 研 究 の 方 法
本研究では、質問紙法による調査を実施した。
1.調査方法
調査は、T小学校の協力を得て5,6年生を対象に実施した。調査票の作成にあたって は、筆者自身が調査対象である5,6年生の担任に調査の概要を説明した後、調査内容に 問題がないか等の確認を得て作成した。調査は調査票を担任に渡し配布と回収を代理でお 願いする方法をとった。
2.調査期間
平成15年12月11日〜15日 3.調査対象
T小学校の5,6年生の児童(173人)に調査を依頼した。
4.回収率
172人の児童から質問用紙を回収でき、回収率は100%、実質回収率は99.4%であった。
5年と︼︼一 6年と一一一
一雪ロ今ロ
男 子 47 53 100
女 子 41 31 72
5.調査内容 1)個人属性
2)いつもの生活について
3)持っているテレピゲームについて 4)テレビゲーム生活について
5)テレビゲームをするときの決まり(ルール)について 6)友だちと遊ぶときについて
Ⅲ 、 結 果
1 . い つ も の 生 活 に つ い て
回答者のうちスポーツや塾などの習い事をしているものは85.4%であった。また、ス ポーツや塾に行く回数の平均値は2.7回であった。習い事の種類を①スポーツ、②学習、
③習い事に分類すると、①スポーツが最も多く63.7%、③習い事が43.8%、②学習が 42.7%であった。
テレビゲームの経験とそれに対する欲求を見ると、テレビゲームの経験があるもので テレビゲームを「もっとやりたい」と思っているものが69.8%、「やりたくない」と思って いるものが27.2%、テレビゲームの経験がないものでテレビゲームを「やりたい」と思っ ているものは0%、「やりたくない」と思っているものは3.0%であった。テレビゲーム機 に対する欲求でも、この結果と同じような結果が見られた。
2.テレピゲーム生活について
1週間のテレビゲーム実施日数を見ると、平均値は3.5日,平日のテレピゲーム実施時 間は60.3分、休日は78.8分であった。
誰と一緒にテレビゲームをすると楽しいかという質問の回答は、「友だちと」と答えた ものが最も多く53.5%、「きょうだいと」が22.1%、「ひとりで」が14.5%、「親と」が1.7%
であった。
テレビゲームに対する夢中度をたずねたところ、「何よりもテレビゲームに夢中だっ た」と答えたのが16.0%、「テレビゲームにも夢中だったが、それ以外の遊びにもっと夢 中だった」が44.9%、「テレビゲームにはほとんど夢中にならなかった」が39.1%であっ た。
3.テレビゲームをするときの決まり(ルール)について
テレビゲームをするときの決まり(ルール)があるものは57.6%、ないものが42.4%で あった。ルールの内容は「時間に関するもの」が63.2%、「時間に関するものとやること をやってから」が26.3%、「やることをやってから」が10.5%であった。このようなルー ルを作ったのは、「家族が勝手に作った」が最も多く51.1%、「家族と相談して作った」が 25.0%、「自分で作った」が23.9%であった。また、ルールを「守っている」ものが58.2%、
「ときどき守っている」ものが34.1%、「守っていない」ものが7.7%であった。ルール を守らなかったとき、罰はあるかという質問に対し、「しかられるjと答えたものが最も 多く44.0%、「何もいわれない」が42.9%、「ゲーム禁止になる」が18.7%、「ゲームを取
り上げられる」が16.5%であった。
4.友だちと遊ぶときについて
テレビゲーム以外に現在、熱中していることは「サッカー」が25.5%、「マンガ」が18.1%、
「カードゲーム」が15.9%、「プリクラ」が13.4%、「テレビ」が12.8%、「読書」と「野球」が 10.7%と続いていた。また、友達とよくする遊びは「テレビゲーム」が最も多く31.0%、「サ ッカー」が24.5%、「おしゃべり」が19.4%、「カードゲーム」が18.7%、「野球」が12.9%
であった。この結果は、体を動かさない遊びが多いように見えるが、季節を考慮すると 外で遊びにくい状況が考えられるので、一概に外遊びまたは体を動かす遊びが減少して いるとはいえない。
友だちとテレビゲームの話をするかという質問に対する回答は「する群」(よくする+
ときどきする)と「しない群」(あまりしない+まったくしない)に大きく二つに分かれてい
問に対し「いつもテレビゲームを優先する」と答えたのが5.3%、「友だちと遊ぶことを 優先する」と答えたのが64.1%、「そのときによって違う」と答えたのが30.6%であった。
Ⅳ 、 考 察
1.子どもはテレピゲームを適量でやめられるか
子どもがテレピゲームを適量でやめられるかは、テレピゲームに対する欲求とそのとき のテレビゲームに対する夢中度と深い関係があり【図1】、テレビゲーム実施時間を抑制す るには決まり(ルール)を作ることが効果的であることがわかった。さらに、その決まり
(ルール)を守るための要因として、決まり(ルール)を子ども自身が作ること、決まり
(ルール)を守らなかったときの罰の内容はテレビゲームができなくなることが挙げられ る。
【図1】この1週間のテレビゲームに対する夢中度×この1週間でテレビゲームを した日数
何よりもテレビゲームをやりたかった
テレビゲームにも夢中だったが、それ以外 の遊びのもっと夢中だった
テレビゲームにはほとんど夢中にならな か っ た
36脇 640%
■■■■■■■■
〃 笏 瀦 職 ↑ 8 8 % 藤
5%
0 % 2 0 % 4 0 % 6 0 % 8 0 % 1 0 0 %
2.テレピゲームが友人関係に及ぼす影響
小学生にとってテレビゲームで遊ぶことは、1人遊びとしてではなく、サッカーや大縄 跳びなどの1人ではできない遊びと同様に、友だちと遊ぶ遊びのひとつとして考えられて いると予想できる。よって、本研究の調査ではテレビゲームが1人で遊ぶことのできる遊 びという特徴を小学生が重視しているということはいえない結果となった。また、会話の 中のテレピゲームに注目しても、テレビゲームに夢中なものは友だちとテレビゲームの話 をよくするが、夢中でないものはあまりしないという結果がでたことより【図2】、テレビ ゲームが友人関係維持のための要因になっているとはいえない。つまり、テレビゲームは 友人関係維持のための数ある要因の一つであるに過ぎないといえる。
【図2】この1週間のテレビゲームに対する夢中度×友だちとテレビゲームの話 をするか
何よりもテレビゲームがやりたかった
テレビゲームにも夢中だったが、それ以外 の遊びにもっと夢中だった
テレビゲームにはほとんど夢中にならな か っ た
1 5 7 % I 蝋
0 % 2 0 % 4 0 % 6 0 % 8 0 % 1 0 0 %
図よくする
園ときどき する
□あまりし ない 図まったく
しない
、
3.テレビゲームは悪影響を与えるか
テレビゲームに夢中な子どもはテレピゲームに夢中でない子どもより、スポーツに関す る習い事に通っていたり、体を動かす遊びをよくしていることがわかった【図3】。よって、
坂本3)が紹介しているテレビゲームが社会的不適応を招くといった悪影響は本研究の調査 では感じられなかった。それどころか、テレビゲームで遊ぶものは、よく体を動かしてい るという結果が出ている。テレビゲームが子どもにとってプラスになっているとまでは言 い切れないが、悪影響は及ぼしていないと考えられる。
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|l︲Illi︲【図3】この1週間のテレビゲームに対する夢中度×友だちとよくする遊
│何よりもテレピゲームをやりたかった
│テレビゲームにも夢中だったが、それ
I以外の遊びのもっと夢中だった
i テ レ ピ ゲ ー ム に は ほ と ん ど 夢 中 に な
| らなかった 一 声 昌 苧 T ヨ ー ヲ 1
0 % 2 0 % 4 0 % 6 0 % 8 0 % 1 0 0 %
結 論
本研究の調査結果では、テレビゲームの1週間の実施日数の平均値は3.5日であった。
また、平日のテレビゲーム実施時間の平均値は1日あたり60.3分、休日は78.8分で あった。
テレビゲームに対する夢中度については、「何よりもテレビゲームがやりたかった」と 答えたものが16.0%、「テレピゲームにも夢中だったが、それ以外の遊びにもっと夢 中だった」と答えたのが44.9%、「テレビゲームにはほとんど夢中にならなかった」
と答えたのが39.1%であった。テレビゲーム実施時間はテレピゲームに対する欲求や 夢中度と深い関係があり、テレビゲームに対する欲求や夢中度が高いものほどテレピ ゲームを多く実施している結果となった。
テレビゲームを適量でやめるために、テレピゲームの実施に対する決まり(ルール)
があるものは全体の6割弱であった。ルールを守らなかったときの罰の有無に関わら ず約5割のものがルールを守っていた。ルールの作成、ルールの内容について、親が 子どものやりすぎを規制する傾向がうかがえた。
小学生にとってテレビゲームで遊ぶことは、1人遊びとしてではなく、友達と一緒に 遊ぶ遊びのひとつとして考えられていることが示唆された。
また、テレビゲームは友人関係維持の一要因とみなせる可能性が示唆された。
本研究の調査結果では、テレピゲームに夢中なもののほうがそうでないものよりもス ポーツに関する習い事に通っていたり、体を動かす遊びをよくしていることがわかっ た。この結果は、テレピゲームでよく遊ぶ子どもが外で遊ばないというような悪影響 を感じさせないものであった。
●Ⅳ1
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V . 引 用 ・ 参 考 文 献
1)坂本章(1999年):「テレビゲームは子どもの心にどう影響するか①テレピゲームをめ ぐる社会現象」、金子書房、児童心理、第53巻第1号、ppll2‑120
2)森榊・湯地宏樹(1994年):「ファミコン子の特性に関する調査研究一小学生の場合一」、
幼年教育研究年報、第16巻
3)坂本章(1992年):「子どものテレビゲーム使用と社会的発達一共感性・共同性・認知 的複雑性・攻撃性・戦争観.学級内地位・成績」、お茶の水女子大学人文科学紀要、第