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住宅におけるリノベーションの実態と改修手法に関する研究

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Academic year: 2021

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住宅におけるリノベーションの実態と改修手法に関する研究

序章

-研究背景-

近年、「リノベーション(renovation)」という言葉が建築 の住宅分野においても定着してきた。実例・関連書籍も増え、

一般にも浸透してきている。しかし、人口減少、都市構造の 変化、環境問題などにより、建築を再生することの意義・重 要性が年々高まっている社会背景がありながらも、日本での 建築再生は海外に比べなかなか定着していない。「保存」とい う観念では、日本でも昔からリノベーションは行われ、数々 の研究がなされてきたが、最近では「保存」を主目的としな いリノベーションが用途を問わず建築的に価値の無い建物で もおこなわれるようになってきた。バブル崩壊後は、経済成 長の停滞、土地神話の崩壊、非正規雇用の増大、格差社会の 進展、さらには人々の結婚や家庭に対する意識の変化などに よって、旧来の住宅政策が想定した「普通の人生」が必ずし も主流ではなくなり、パターン化された住宅モデルは通用し なくなってゆく。「リフォーム」とはまた違った建築再生の方 法が大衆に認められ、地位を獲得したのだ。そこで新しい住 のかたちを模索する動きのなか、2009 年に象徴的に浮上した キーワードが「リノベーション住宅」である。既存の建物を 再利用するため、新築よりコストは安く済み、スクラップ・

アンド・ビルドに比べて廃棄物が少なく環境にやさしいとい うメリットもある。さらに新建設市場が年々拡大していると いう調査(建設省「新建設市場の将来予想 報告書」)がある ことからリノベーションはますます注目されると予想される。

-研究目的-

近年「リノベーション住宅」が増加の一途をたどるなか、

近い将来にそなえるために「リノベーション住宅」の現状を 把握し、問題を踏まえる。そして、建築ストックが多数存在 する今の日本で、改修手法を操作の観点から類型化し、明ら かにすることは有用と考えられる。本研究は住宅建築特有の 空間利用を改修操作の点から把握し、住宅建築の再生の可能 性を探ることを目的とする。

-研究方法-

本研究では、事例を挙げ、新築時にはないリノベーション 特有の「条件」という観点から比較分析をする。

1章では、用語の定義を初めとし、保存の概念の成立と歴 史からリノベーションの変遷を辿ってきたのかを捉え、海外 における現状から日本での変遷を相対化し、日本での現状を 認識する。2章では、前章の続きとして、より建築個体の話 に向ける。実際に日本でリノベーションを行うときに、「新 築」とは違う、特有の不可避な条件である法規・構造の観点 から設計手法を捉える。3章では、前章とは対にある避ける

ことが出来る条件について、活動・物質の記憶や地域性の観 点から捉える。4章では、建築家によるリノベーション住宅 作品において適用された改修操作の観点からデータシートを 作成し、5・6章でデータをもとに分析・考察をしていく。

1 章 リノベーションの変遷

-保存という概念の成立と歴史-

ヴィオレ・ル・デュックとジョン・ラスキンの「反修復」

と「修復」、アテネ憲章、ヴェニス憲章、バラ憲章のプロセス を経て、「保存」という理念は、修復という過程で「歴史を偽 らない」「価値を付加する」「状態を凍結するのではなく、時 代に合わせて活用する」という意識の下、成立し、世界へと 広まることとなる 。保存という概念が成立した時、すでに

「保存」と「再利用」という意図の対立はできあがっていた のである。

-海外でのリノベーションの実態-

海外、特にヨーロッパなどでは日本とは違い、リノベーシ ョンは当たり前のものとして一般に浸透している。住宅寿命 に関しては諸外国のそれに比べて3分の1から2分の1程度 短いとされている。また、全住宅に対する割合も日本とは比 較にならない。その理由として人々の建築・都市景観に対す る意識の違いからくる文化・歴史、建物の構造などの違いか らくる内的要因、災害・気候などの違いからくる外的要因が 挙げられる。

-日本の現状-

日本におけるリノベーションの原点を探ると「曳家」にた どり着く。現代の言葉で言い直すならば「リロケーション」

である。昔から日本では建築ストックをこのような方法で再 利用してきたが、高度経済成長と共に廃れることとなる。建 築遺産として価値を見出され、「保存」の意図と共にリノベー ションは再び息を吹き返し、その流行は「保存」を意図とし ない「再利用」の精神で社会に広まっていくこととなる。そ の背景に「大衆意識の変化」と「建設市場の変化」が挙げら れる。

2 章 手法と現実

-住宅再生における社会背景-

リノベーションは新築以上に、設計手法に複雑な条件が加 わってくる。その代表である「法規」、「構造」の二つに焦点 を当てる。これらの大きな特徴は「クリアしなければいけな い」不可避な条件であるということである。新築時にもこの 2つの条件は関わってくるが、改修時には性質の違う条件と して立ちはだかる。竣工時は法規も構造も満たしていたが、

いざ改修をするとなると現行の法規を満たしている場合は少 なく、いかにして既存を活かしつつ手を加えていきクリアし

建設工学専攻

建築設計研究 510022-7 長田

お さ だ

きわむ

指導教員 赤堀

あかほり

しのぶ

(2)

ていくかというスタンスが必要となる。

-建築基準法と既存不適格-

建築基準法の前身は

1919

年に制定された「市街地建築物法」

である。日本の法規・構造規定はここから始まる。その後、

天災などを教訓にして改正が重ねられ、今日の建築基準法に 至った。この規定の変化は既存建築物に、法を遵守している かという点で格差をもたらすこととなる。この経緯が耐震性、

避難規定、防火性などの条件を生み出し、設計手法に影響を 及ぼすこととなる。

3 章 新・旧の対比

-既存建築が持つ歴史-

全ての既存建築は、その建物が培ってきた時間・記憶を包 括した歴史を持つ。これは改修をする際の手法に大きな影響 を与えてきた。これもある種、条件と言える。この条件もま たリノベーション特有のものであるが、前章のそれとは違い

「クリアする」という類のものでもない。しかし、設計者は 果敢にこの条件に挑んでいる。ある人はこの条件を無視し、

ある人はこの条件を設計意図の手がかりにする。

-活動と物質の記憶-

既存建築はその身に2種類の歴史を孕んでいる。ある場所 で行われていた「活動・経験」という眼にみえない歴史と、

古材となった「物質」という眼にみえる歴史である。リノベ ーションが一般化するまで「物質」の歴史は設計意図・手法 の大きな手がかりとして捉えられ 、扱われてきたが、 近年 様々な改修が行われていくにつれ「活動・経験」の歴史を扱 う動きが出始め、新たな手法が提案されてきている。

4 章 データシート

-事例の選定-

分析対象とする事例は、リノベーション住宅がメディアに 露出してきた 2000 年頃から現在までの作品を対象とする。そ の中から本論の軸である、図面が正確に読み取れるものであ り、設計意図と改修操作が明記されているものを選定した。

-データシート-

データシートを構成する上で、「改修操作」の他に分析に必 要な事柄を選択し、下記のようにまとめた。

fig.1 データシート例(no.10 奥沢の家)

-改修操作-

リノベーションと新築の決定的な違いは「既存建物」がある という点である。ゼロから新しいものを建設せずに、既存を いかして設計を進めていく上で重要となる設計手法は既存建 築の構成要素を「操作する」ということになる。この操作に 着目し、以下の7つの観点から事例を通し設計手法・設計意 図を分析していく。

fig.2 改修操作

5 章 考察

建築名称 壁 スラブ 屋

根 開 口 部

内 装

構 造 補 強

外 部 環 境

歴 史 を 汲 ん だ 操 作

YS BLD. 〇 〇 〇 〇 〇 〇 構・ス

Casa Dourada 〇 〇 内

世田谷フラット 〇 〇 壁・内

駒沢公園の家 〇 〇 〇 〇 〇 壁・開

目黒のテラスハウス 〇 〇 〇 〇 〇 壁・外

YA-CHI-YO 〇 〇 〇 〇 外

Sakura flat 〇 〇 〇 〇 開・内

上大須賀の家 〇 〇 〇 〇 内

PROTO plus 〇 〇 〇 〇 〇 〇 構

奥沢の家 〇 〇 〇 〇 開・外

fig.3 分析結果一部一覧

ここまでの分析結果、文献から住宅のリノベーションにお ける改修手法を以下に示す。まず、ほとんどの事例で壁、内 装の操作、構造補強が見られた。これはリノベーションの特 性を表しており、古い建物が抱える経年変化の実情は「人の 住み方」や「材」にまで及んでおり、現在の要求に合致して いないため、これらの操作が多くなる。また、法規・構造の 条件から必然的に選ばれる操作と、設計意図を表現するため に選ばれた操作の違いが見られた。この設計意図というのは ほとんどが歴史を汲み取り表現するためのもので、操作の数 を増やしてまで選ばれている。これは複数の操作を組み合わ せている場合も多く、設計意図を表現するために注力されて いるのがわかる。逆に、スラブ・屋根の操作はあまり見られ なかった。これは、構造や経済性が重要なハードルとなって いるためである。

終章 法規・構造などの条件を満たしつつ、歴史を汲み取った改 修は、操作を増やしてまでも「条件」をコンセプトとして表 現していることが見られた。これは、改修における歴史の重 要性の裏付けととらえることができる。「なくなる」というこ とは物質的な喪失と同等かそれ以上に記憶・経験という歴史 の喪失がリノベーションでは重要であり、今後改修をする上 で歴史を損なわずに都市が更新する一つの手がかりとなるの ではないか。本論では改修の操作に絞って論を展開したが、

実際はさらに複雑な条件が絡み合っている。ひとつのリノベ ーション住宅のあり方を考える指針になることを期待する。

主要参考文献 『保存と創造を結ぶ』吉田桂二 建築資料研究社

『生きられた家』 多木浩二 青土社

『新建築』2000-2011 新建築社

参照

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