• 検索結果がありません。

超 産 業 戦 略 ―― 内子フレッシュパークからりの事例 ―― 板 倉 宏 昭

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "超 産 業 戦 略 ―― 内子フレッシュパークからりの事例 ―― 板 倉 宏 昭"

Copied!
32
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

超 産 業 戦 略

―― 内子フレッシュパークからりの事例 ――

板 倉 宏 昭

1.は じ め に

本稿では,内子フレッシュパークからりの事例を検討することを通じて,地方圏に 有効な地域力創出モデルとして,内部力(ジモティ)と外部力(ヨソモノ)の新結合

Neue Kombination)による超産業戦略を示したい。

わが国は,世界最先端の成熟化社会に突入している。農林水産省の20年の農林 業センサス(速報値)によると,日本の20年の農業就業人口は25年より75万 人減少し,20万人になった。5年間の減少率は22.4%である。また,過去1年以上 作付けがなく,今後も数年は耕作する見通しのない耕作放棄地が5年前より2.6%増 加し,初めて40万ヘクタールに達した。耕作放棄地の面積は,香川県の2倍以上で,

鳥取県よりも広く,滋賀県とほぼ同じ面積である。農業の就業人口の平均年齢は65. 歳と5年間で2.6歳上昇した。地方圏は,さらに,高齢化している。平均年齢が最も 高い広島県は,70.5歳であり,山口県や島根県も70歳を超えている。わが国は,子 供と老人の人口比率が低く,生産年齢人口の比率が高い人口ボーナス!が消失し,1 年代から人口構成が重荷となる人口オーナス期に入っている。

成熟化が先行する地方圏では,地方圏に合った成熟戦略が必要である。地域の素材 には,良質なものでも埋もれてしまっているものも多い。そのため,高付加価値を提

(1) 人口ボーナスとは,人口ボーナス指数とは,子どもや高齢者などの 従属人口 に対 して, 労働人口 が何倍いるかを示したもの。生産年齢人口(15歳〜64歳)÷従属人 口(0歳〜14歳,65歳以上)で表される。指数が2を超える期間が人口ボーナス期で,

経済成長が加速するといわれる。

香 川 大 学 経 済 論 叢 第83巻 第4号 21年3月 35−3

(2)

加工・製造 サービス 素材

地域プロデューサー 地域コミットメント

外部力内部力

成果

(パフォーマンス)

経済 訪問 購入 居住 魅力度 超産業戦略

供できる可能性を生かせていない。

成熟化社会における地域力創出のためには,新たな産業観が必要である。こうした 状況では,新たな耕作地を開拓することより,既存の耕作放棄地をまとめて,後継者 に引き継ぐことが有効である。引退する農家などが農地を他の農業法人等に貸与する 傾向がある。20年の農林業センサス(速報値)によると,法人を含む経営体数で 見ると,経営規模が5ヘクタール未満が減少し,5ヘクタール以上が増加した。経営 体の平均経営面積は5年前より0.3ヘクタール拡大し,2.2ヘクタールに拡大した。

また,農業経営の多角化がみられる。農産物加工に取り組む農業経営体が4割以上増 えて3万4,0となり大幅に増加した。

2.超産業化の概念

超産業化とは,素材を生かしながら,加工・製造によって付加価値を高め,さら に,サービスを提供する産業を超えたビジネスモデルである。農業で言えば,素材で ある農産物栽培だけでなく,農産物を加工・製造し食品として,付加価値を高める。

さらに,レストラン,農業体験,観光などのサービス業を行うことである。6次産業 化,あるいは,農業の総合産業化といった概念に近いが,超産業は,3次産業から1 次産業や2次産業への融合あるいは,2次産業から1次産業への融合も含まれる。

超産業戦略は,既存の概念とどのように違うのであろうか。垂直的統合(Vertical

−336− 香川大学経済論叢

(3)

Integration)は,牽制関係にある上流(川上)・下流(川下)工程を取り込む行動を指 す。例えば,自動車メーカーが自動車販売会社や部品供給会社を系列化する行動を指 す。また,垂直的統合は,競争の激化から,コスト削減と安定供給を図ることが主な 目的である。これに対し,超産業化は,消費者に新しい価値を提供する新たな新結合 を指す!

スマイルカーブで示されるように,コモディティ化している製品・サービスの場 合,加工・製造段階で付加価値を得ることは難しくなってきている。アーキテクチャ ーが共通化され,オープン化・モジュール化すると,加工・製造プロセスは,安い労 働コストの国や地域で行うことになる。したがって,労働コストが高い日本で,十分 な利益を得て,競争優位性を獲得する可能性は低い。素材といった上流のプロセス,

あるいは,下流のサービスのプロセスでの企業戦略が求められている。

素材型の製造業は,組み立て型の製造よりも比較的競争優位が継続しやすい。例え ば,四国地域は,紙,化学,繊維などが比較的多い。例えば,徳島県阿南市の日亜化 学工業などのLED,高知市にあるニッポン高度紙工業(NKK)の土佐和紙からシフ トした世界シェア70%のコンデンサのセパレータ,愛媛県松前町の東レの炭素繊 維,スポーツ用品や小物への展開がみられる香川県東かがわ市の手袋産業,愛媛県今 治市のタオルなどである。

なお,超産業戦略は,地方ビジネスに限らない。グローバルなビジネスに当てはま る。加工・製造(第2次産業)からのサービス(第3次産業)への超産業化の例とし ては,アップル社が挙げられる。ハードウェアのアイポッド(iPod)と音楽配信サー

ビスiTuneを結合している。iPadは,専用のOSで,アプリケーションソフトもアッ

プルストアからしか買えない。映画,音楽,書籍などのコンテンツもアップルから購 入する。アップルの戦略は,10年代に進行した水平的統合とは,異なる戦略と捉 えることができる。IBM社はハードウェア中心のビジネスから,サービスビジネス に大転換した。PC事業は,中国のレノボに売却した。ハードディスク事業は日立製

(2) 垂直的統合と同様に,垂直的多角化は,現在の製品の上流(川上)や下流(川下)へ の多角化である。なお,上流(川下)への多角化を前方的多角化,下流(川上)への多 角化を後方的多角化と呼ぶことがある。

超産業戦略

−337−

(4)

作所へ売却した。

第3次産業から第1次産業,第2次産業への超産業化の例としては,ワタミがあげ られる。ワタミは,農業へ進出して,農業生産法人!ワタミファームを通じて7つの 直営農場を経営している。ワタミは,有機JASチーズやバター,バニラやチョコレー トのソフトクリームミックスなどの食品を加工・製造している。

また,ワタミは,介護ビジネスにも進出している。外食事業のノウハウを生かし て,おいしく,安全で食べやすい介護食の提供を通じて満足度を高めている。介護分 野は,労働力不足で,有効求人倍率が1を超える例外的な産業である。高齢化社会で 介護サービスの需要は,今後益々増加し,25年に必要な労働力は,10万人程度で ある(野口,20)。ワタミの他,セコム,ベネッセ,ニチイ学館,明治乳業,キュ ーピー,ユニチャーム,INAXなども他業種からの参入である。財政措置で抜本的な 措置を講じて促進する必要がある(野口,20)

わが国の純金融資産は1,3兆円とGDPの2倍以上であり,そのうち65歳以上が 2兆円と8割以上を占めている。高齢者向きの介護や医療などのサービスは,魅力

的な業界である。

第2次産業から第1次産業への超産業化として,植物工場が挙げられる。鉄鋼大手 JFEJFEライフとして参入したほか,オリンパス,カゴメ,キユーピーなどが 参入している。三菱化学は,カタールなど中東へコンテナ式植物工場を輸出してい る。天候に左右されず,LEDを使うことで電気代を節減でき,放熱も少ないメリッ トがある。これらは,工場内の遊休地を活用したことが元になっている。成熟化した 我が国では,余剰設備や遊休地を活用するための戦略が必要である。

3.超産業戦略の要素

それでは,超産業化のための戦略の要素とは何であろうか。

第1に,「地域コミットメント」である。これは私がネーミングしたものであるが,

人々と地域の関係性を示すものであり,地域愛,地域を自分のこととして内在化させ ること,功利的に関与すること,地域への使命感の4つの要素からなっている。

地域コミットメントの延長線として「ゾーニング」という概念を挙げたい。特定の

−338− 香川大学経済論叢

(5)

ビジネス上でまとまった空間を設定することであるが,必ずしも行政区画と一致する 必要はない。むしろ広めすぎないほうがいい。例えば一つの県単位で何か売り込もう とすると,「この商品とあの商品の売り込みを平等に扱わなければならない」といっ たジレンマも起きる。国単位,県単位ではなく,もっと小さい単位だからこそより効 果が生まれることもある。地方ビジネスにおいては,地域コミットメントを通じた顔 の見える関係が重要な働きを示す。

第2に,地域の担い手の地域プロデューサーを挙げることができる。本稿では,産 業を限定せずに,地域プロデューサーを「地域に造詣が深く,地域愛をもち,地域の 内部力(ジモティ)と外部力(ヨソモノ)を結び付ける地域活性化の担い手」と定義 する。地域プロデューサーに対する期待が高まっている。例えば,経済産業省は,農 商工連携事業!の一環として,地域プロデューサー事業を行い,現在の登録数は37人 に上っている。観光庁は,観光振興により地域活性化を図る市町村を対象に,観光地 域プロデューサーモデル事業を平成19年度から行ってきた。

地域プロデューサーの潜在的な希望者は多いと思われる。内閣府の社会意識に関す る世論調査[3]によると,28年から社会貢献意識が急増し,約7割の者が社会 のために役立ちたいと回答している。しかし,実際の場が限られており,情報も不足 していることから,実際の活動に踏み切れないという人が多い。

地域内部だけでは人材も資金も需要も不足している。そこで外部力(ヨソモノ)と 内部力(ジモティ)を結び付ける能力に注目する。地域の担い手は,地域内部の狭義 の先導型のリーダーシップの要素だけではなく,異なる複数の要素が必要であり,担 い手も外部力(ヨソモノ)が大きな役割を演じていることが多いからである。

第3に,その外部力(ヨソモノ)である。地域外の専門家,文化人,企業などによ る課題発見力,需要動向の把握力,企画・デザイン力,販路開拓力があげられる。地 域内だけでは,人材も資金も不足していることが多い。いかに外部力(ヨソモノ)を 取り込むかが課題である。

なお,成果(パフォーマンス)の考え方は,経済的指標だけで十分であろうか。そ

(3) 経済産業省は農商工連携と呼んでいる。本稿では,1次,2次,3次産業を意識して 農工商連携と呼んでいる。

超産業戦略

−339−

(6)

うではないだろう。もはや,高齢化,人口減少,コモディティ化した製品サービスの 加工・製造プロセスの海外移転を前提としなければならない。図の右側の成果(パフォ ーマンス)の指標は,経済的指標だけではなく,例えば,その地域を訪問したいかと いう「訪問魅力度」,地域の製品・サービスを購入したいかという「購入魅力度」,そ の地域に居住したいかという「居住魅力度」等で測ることが有効であろう。

以上のように,地域コミットメントが基盤となり,地域プロデューサーが内部力

(ジモティ)と外部力(ヨソモノ)の新結合(Neue Kombination)を図り,素材を生 かして,加工・製造や付加価値の高いサービスと組み合わせて,超産業化する戦略 が,超産業戦略である。以下では内子フレッシュパークからりを事例に検討する。

4.内子フレッシュパークからりの事例

4.1 概要

株式会社内子フレッシュパークからりは,愛媛県内子町と農業協同組合と農家1 人を含む町民33人が出資した第3セクターである。資本金を27年に増資し7, 万円となった。

内子町は,松山市から南西4kmに位置し,25年1月1日に,旧内子町,旧五 十崎町,旧小田町の3町が合併し,人口18,6人(20年10月),うち農業人口は 2割強を占める。

世帯数は,7,0戸で推移しており,農業主体とした生活基盤である。2,0戸が 農業を営み,内40戸が専業農家,後は第3次産業などに関わる兼業農家である。

からりは,特産物直売所とパン工房・薫製工房・シャーベット工房・あぐり加工場 などの農産物加工施設,レストランからりやあぐり亭の飲食施設や通信販売という超 産業化を通じて地域活性化に貢献している。

図の「素材」に関しては,内子町の77%は山林であり,役場付近の標高10メー トルからスキー場のある1,0メートルの小田深山まで標高差があり,谷あい,山あ いに,帯状,棚状に田畑が点在し,平均耕地面積は,8aと小規模ながら多種類の農 業が営まれている。棚田米も生産している。泉田の棚田は,最も美しい棚田として,

農林水産省から指定を受けている。

−340− 香川大学経済論叢

(7)

加工・製造 サービス 素材

地域プロデューサー:

地域コミットメント:

・知的農村塾・運営協議会・アグリベンチャー 21 を通じた農家女性 の経営者意識

・からりネットや第 3 セクターへの出資による参加意識

外部力内部力

成果

(パフォーマンス)

・小規模ながら 多種類の農業

(果樹,シイタケ)

・気候の多様性

・内子豚

・町並(和ろうそく の商家や内子座)

・1,000

m

級の山並 み,村並み

・小田川の河原

・デザイナー山内氏に よるパッケージ

・シャーベット,パン,

パスタ,内子バーガー,

ソーセージ

・からりネットによる トレーサビリティ

・内子のものを使う 安全・安心

・「森の中の直売所」

(武智氏デザイン)

のレストラン

・テーマパーク

(河原・からり橋)

・キャンプ場隣接

野田文子(からり特産物直売所運営協議会名誉会長)

稲本隆壽(内子フレッシュパークからり初代支配人,現内子町長)

山内敏功(ビンデザインオフィス有限会社代表取締役)

武智和臣(Atelier A&A 代表取締役)建物設計

・買 物 客 累 計 500 万人突破

(2009 年 8 月)

・売上 7.23 億円

(2008 年度)

(内農産物 4.6 億円・内子町 農業生産高の 13%)

・雇用 48 人

(2010 年 3 月)

・農業経営者と しての誇りと 自信

・国内外交流

(農業加工体 験や研修)

内子フレッシュパークからりの超産業戦略 超産業戦略

−341−

(8)

標高10メートルから40メートルの中腹を中心に,葉タバコや栗,柿,梨,葡 萄,桃,リンゴ,キウイフルーツ,ミカンなどの果樹やシイタケなどが栽培されてい る。

葉タバコは,四国の1/2の生産量,全国1,2位を争う生産量を誇ったが,過疎 化高齢化,後継者不足によって,葉タバコ生産は1/5に低下している。落葉果樹生 産の中で,柿は,四国1位,全国8位である,沢山の種類ができるが産出高では,規 模が小さいため,全国的な産地という訳ではないが,多くの種類ができるのが内子町 の特徴である。

スキー場があるような地形の標高差を利用して,気候の多様性を取り込むことがで きている。栽培時期の幅ができ,ある場所で終わったときに他の場所で出荷が始ま る。

内子町は,観光の町として知られてきた。江戸時代から明治時代に和蝋燭で発展し た商家の町並が国の重要伝統的建造物群保存地区に指定され,木造の歌舞伎劇場「内 子座」など観光資源に恵まれた町である。全国から年間50〜60万人の観光客が訪れ る。

なお,からりを流れる小田川には,からり橋という吊り橋がかかっており,河原が

−342− 香川大学経済論叢

(9)

あり,子供たちが1日中遊ぶことができる。

「加工・製造」については,内子でとれたトマトなどのシャーベット,パン,パス タ,内子豚を使ったソーセージなど内子の素材を生かした製品が製造されている。

シャーベットは,夏場には,1日1,0本も販売されることがある。また,デザイ ナー山内氏によるパッケージには一貫性がある。

「サービス」については,「森の中の直売所」というコンセプトで,1級建築士の武 智氏デザインのレストランやからり亭が人気である。0円の「内子豚もろみ焼きバー ガー」は,内子町内の醸造所でつくった「もろみみそ」をスライスした豚肉に塗って 焼き,地元の新鮮なレタスと玉ねぎを組み合わせた。からりは内子町以外のものを扱 わない。からりでだけしか味わえない限定性による付加価値を通じたスノッブ効果が あり,28年度は年間2万5,0個を販売した。

4.2 内子フレッシュパークからりの設立の経緯

こうした内子の原動力は,15年から活動を開始した「知的農村塾」という学習 会である。塾長は,愛媛大学農学部教授の白石雅也氏であり,農村における高齢者や 女性の役割についての学習会を行った。

3年に,小さな直売所を作ってトレーニングと実験を行った。物の売り方,生 産の仕方,どのような物がお客さんに好まれるのか,売れるのか,といったことに,

農家が当番で売り場に来て,農家自ら販売して,消費者との交流が始まった。

5年に,国の補助を受けて地域振興のための特産物の直売所,内の子市場を 作った。これは,当時全国的にさかんであった。内子町でもという感じであったこと は確かである(内子フレッシュパークからり代表取締役社長,冨永昌枝氏)

6年に,地域振興を目的とした第3セクターとして,株式会社内子フレッシュ パークからりが設立された。専業農家の減少,兼業農家弱体化,農地が遊び荒廃と いった衰退していく農業を元気にするのが目的であった(内子フレッシュパークから り代表取締役社長,冨永昌枝氏)

町が半分,生産者が半分を出資した。設立に際して募集された株式は,19株の募 集に対して45株の申し込みがあったことからも,当時農家からの関心が非常に高

超産業戦略

−343−

(10)

かったことがうかがえる。

資産土地は内子町が保有,指定管理者として株式会社内子フレッシュパークからり が運営している。地産地消にもとづいた経営をレストランやパン工房などで行ってい る。地域で製造・生産したものしか売らないというコンセプトである。企画は,各部 門の主任による合議体(主任会議)で企画をおこなう。どんな商品を作るか,どのよ うに宣伝するか,マスコミに取り上げてもらえるか,月1回会議を行う。景観を大切 にしたり,内子のものに限定していこうというコンセプトが生まれている。

「自動販売機をおかない。ペットボトル(お茶とお水)は売店で売っている。

道の駅なのに自動販売機がないとは何ゴトゾ,とよく言われる(笑)うちも,考 え方なんでねぇと(答える)(内子フレッシュパークからり代表取締役社長,冨 永昌枝氏)

高齢化や人口減少が進む内子町の山間部では,後継者不足や価格低下によって,主 要地産品のひとつである葉タバコの生産減少が課題となっていた。また,「山ぎりの 農業」即ち,山間部の農業で「いいものを作れば売れるはず」の限界や将来の不安が あった。JAの規格どおりに「言われたままに作る」には,展望がなく,後継者が育 つはずがないと考えていた。

「自分は専業農家だった。山の上の生活,町にはあんまり出てこなかった。山村 の農業ギリで自分が一生終わるのはすごくみじめだというような想いが強かっ た。なんとかここを成功して,自分の農業とこことを結びたいという強い夢が 在った。

「自分は山の暮らしをしてたから,町と農村を!ぎたいという大きな夢があっ た。此処に直販所を開くという話があったとき,飛びついてしまった。申し込ん だ所,1番という大きな会員番号をもらった。

「実験室というようなことを始めていただいて,新しい農業の姿に感動してし まった。こういう農業だったら山村の農業も楽しく取組んでいける。自分がそう,

−344− 香川大学経済論叢

(11)

思い込んでしまった。此処に夢中になった。

「結婚してから27年,48歳ぐらいだったから,山村の農業のくらしは痛い程自 分がわかっていた。なんとかしてこういうような山村ギリの農業をしていたので は絶対活性化しないと思っていた。

「だんだん農業が衰退していくし,自分自身が楽しくないものをなぜ後継者が山 で活性化することができることは絶対ないと思っていた。自分が面白くないんで すから。

直販に取組んだときは別世界だった。48歳ぐらいだから未だ元気があった。

これだったら自分の中山間地の山で物をつくって,この内子町の町に出て来れ る,山ギリじゃなくて,山とこの町との農業ができるという想い。ほんとに,別 世界の農業を見たっていう,感じでした。(からり特産物直売所運営協議会名誉 会長 野田文子氏)

知的農村塾を通じて内子のフルーツパーク構想が計画されていった。その3つの方 針とは,農業にサービス業的視点を導入すること,都市と農村の交流を促進するこ と,農業の情報化を図ること,である。こうした3点を柱とした構想を元に,内子町 と農家が一体となり,経営者意識の形成と第3セクターへの出資を通じた参画がもた らされた。

地域プロデューサーの野田文子氏は,17年に,からりの取締役に就任して経営 に携わる一方,18年に,からり特産物直売所運営協議会会長に就任し,現在は名 誉会長となっている。

野田氏は,「作るだけの農業」からドライフラワーなどを「工夫して作り,加工し,

サービスする」経営者に変わった。「消費者が買い物に行ってレジのところで清算す るとき,いかに自分の商品がそのカゴの中に入れられているか」を考え,売れる商品 作りをするようになった。

以下は,野田氏のからり以前の葉タバコやしいたけ生産など従来の農業に関する発 言である。

超産業戦略

−345−

(12)

「葉タバコ,椎茸生産は,大量生産大量出荷。そうしないと農業経営できない。

葉タバコは一町歩から上,作っていた。それは休む暇もないというような感じ よ。葉タバコにしたって椎茸にしたって,ゆずにしたって。だから,それぐらい しないと農業所得というのが,農業ギリで,専業農家で食べていくということは できないからね。大量生産大量出荷だった。葉タバコは専売公社,椎茸は森林組 合,県森連。乾燥物ですから。生椎茸でパックにしてJA関連もやった。ゆずも 大量に一町歩から作っていた。それもJA(内子町)だった。

「うちの農業経営は,おとうさんものすごい働き者だったから,四桁農業(1千 万円)やらんといかんのだというて,四桁農業常に目標立ててやっていたから。

「葉タバコよりは椎茸の方が消毒しなくても楽だけど,年取ったらできないでき ない。もう限界が来ている私たちにも。原木だから。原木椎茸も植えてきたし,

人の買わなくても出来るように,計画立ててやってきたから。だから限界がある んですよね。

「葉タバコは真夏の仕事なんです。反収的にも50万ぐらい取っていた。だから,

良かったんですよ,私たちが止める時点では。だけど,今では耕作者が減ってし まっているし,価格も低迷しているし,結局止めていてよかった。時代の流れ,

これも。とてもじゃないし,真夏だし。葉タバコというのは根っこからとって,

ぼすんと乾燥するんじゃないから。一枚一枚,下からはいで1ヶ月か2ヶ月かけ て取っていくんだから,色味ながら。だから大変な仕事,雨が降ろうと日は照ろ うと,一乾燥する間は,採り始めたら,一つの乾燥が満杯になるようにやらない といけないから。雨が降ろうと日が照ろうと休むことできないの,その乾燥機一 杯にするためには採らなきゃいけないから。

「消毒もしないと病気になって,全滅だめになっていくし。葉と葉の間に芽が伸 びるし,その芽を常に,葉タバコ採って乾燥機に入れたら,すぐ芽取をしないと

−346− 香川大学経済論叢

(13)

いけない。それはとてもじゃない,農業つらいんですよ,大変なんですよ,タバ コは。労働力がすごく要るし,労働時間がすごくかかるし。もう,葉タバコして たら,その収穫終わるまでは他の作物で来ません。若い人のやる仕事じゃない し,金ができたらやる仕事じゃないなと,わたしは思ってきた。専業農家ほど大 変だと思います。だって月給じゃないから所得が入ってこないから,いい物つ くって,しっかりと販売しないと。

「大変ではありますよ,ゆずは新芽が伸びていくから,剪定しながら集めて焼い て。JAさんの方針,何月に肥料,何月に消毒しなさいっていう,に合わせて,

消毒をしていた。作っていい商品であれば,いい値段で買っていただいていた。

だから専業農家では,イイモノ作り,秀品づくり。だから,消毒もする。これか らの農業は浴びるような消毒したんではいけない,減化学肥料,減農薬になって きた。時代に合わせた農業経営の取組み方をやってきた。

「人でも減ったし,おとうさん(義父)も亡くなったし,二人がやれる農業経営 は椎茸しかないって,消毒もしなくていいし。専業農家で椎茸作りをやろうと二 人で決めた。それはここが始まる前の話。だから,椎茸に!けてやろうと言って,

取組もうとしていた。それこそ愛媛県でも一位ぐらいの植込みをしないと,それ 専業のプロでやろうとするんですから。計画を立ててやりよったんだけど,わた しは,椎茸作りよりも,ここの方にすごく魅力があったから,おとうさんの希望 に合わすことができなかったんだけど。そこで,すごい葛藤があった,これに椎 茸に専業農家としてやっていこうとしている矢先に,直売所が始まったから。主 人と私とのすごい葛藤があって,そこで。平成5年に葉タバコやめて,椎茸一本 に絞ったんだから。専業農家として誇れる農業経営をやろうと言って。

だけど,これだったらいつも私は山に引っ込んで,町に出ることないし,いい 物作りだから,それに専念しないといけないし。だから,それよりもずっと,わ たしは,山でずっと引っ込んでおる農業よりも,人と出会ってふれあってやる農 業のほうがこれから先,自分にはすごく農業が楽しいと思ったから,そちらの方

超産業戦略

−347−

(14)

を選んでしまったの,私自身。だからここが一番大変だった。

「ここがこんなに成功すると思わなかったし,先が見えなかったんだから。これ を切りかえようとするから,自分が。なかなか安定して入る所得が,入ら無くな るじゃないですか,私がこっち向いたら。そしたら農業経営をどうするんだ,と いうことになって。

「主人が,おまえがこっち向いたら,金になるやら成らんやら分からんのにか ら,なんで,というけど,やっぱり,山の中でずっとと自分が,自分の一生が終 わるんだと思ったときに,自分は農業をやっていて,こんな椎茸作り物作りに励 んでいて,自分はすごく寂しいし,わたしはみんなと一緒になっていろんな情報 を聞きながら,みんなと一緒に交流しながら,新しい農業に向けて,こっちのほ うがやりたかったから,やらせてくれって,お願いして,一生懸命やるからって 言って。でもこっち成功したからよかったの。成功していなかったら大変なこと に成っていたと思う。収入が途絶えるんですから,私やらないし,できないんだ から,こっち走るから。専業だったら二人が助け合いながら,それに取組んでい くから。(からり特産物直売所運営協議会名誉会長 野田文子氏)

以下は,野田文子氏が,商品を工夫して作り,組み合わせて,サービスする,とい う経営の楽しさについて語ったインタビューである。

「商品を売るアイデアは,わたしは切り花用の花を作っていた。良く売れる花だっ たら,みんな真似して作る。次の年,できますよ。先私は走る,先頭立って。要 は売れる物を作らないと行けない。こんなことしよったんではいけない,生花で 売れなくて取って帰るようなことしていたんではいけない。それを加工に向け て,これは加工にしてドライフラワーに!げていった。

「自分で売ってみて,売れる花と売れない花がある。売れる花はどんどん次の年

−348− 香川大学経済論叢

(15)

も作っていく,売れない花はパスしていく。いろんな試行錯誤して作った。いろ んな包装の仕方によって値段の変化をつけたり。花束の組み合わせとか,いろん な変化をつけて,取り合わせをしながら商品化,品数を増やしていった。同じ物 を大きく一束にして出すのではなくて,小さくしてみたり,何か違う物を添えた り変化を付けて束ねて,自分のものがたくさん売れていく仕組みをつくった。

「一つだけそれを売るよりも変化を付けてその品物を売っていく方が,買う人の 想いがあるから,売れる範囲が広いじゃないですか,小分けしていろんなパター ンを作っていく方が。だからそうやって,品数を増やしていったんです。

「だから,売れる商品作り,自分が考えて,売れる動向を見ながら消費者が飛び つくような商品作りをしないといけないから,自分が工夫,工面をして,そうい う変化をつけて,売れる商品作りをしていた。

「楽しかったですよ,自分が作り上げていく,売れていく,そういうスリルが あったからすごく楽しかったです。

「そういうふうにしながら,自分が売れる商品作りをしていたから,こういう風 にしたら売れるんだとか,これは,売れない商品が出てくるじゃないですが,な んぼか作りよって。あっ,これは,こういうことしたらいけないんだということ を,自分がやりながら自分が勉強していった。直売ならではのスリル。

「私はよくみんなに,生産者に言ったんだけど,消費者が買い物に行ってレジの ところで清算するとき,いかに自分の商品がそのカゴの中に入れられているか,

そういう風な物作りをして出さないと,売上げが自分に!がらないよって,それ をよく言ってきた。いかにそのカゴに自分の商品が入れられているかで勝負が決 まると。結局そうなんですよ,自分の商品がカゴのなかに入れられることによっ て自分の売上げに!がっていく。毎日のことですから。

超産業戦略

−349−

(16)

「からりに出荷するのは,兼業も多いし,最近は専業も多い。こんなに人が来た ら,兼業ではやっていけないと思う。わたしたちも専業でずっと葉タバコ作っ て,ゆず作って,椎茸つくって,やっていたけど,わたしはすべて此処にやって しまったの,農業経営を。わたしは全部よそに出すことはない,皆ここで売って しまう。

それでも,1,0万近く売ったから。だから,やり方によったらね。楽しい農 業の方がよかったよんよ。だんだん人が来て物が売れだしたから。おとうさんの 椎茸だって,ここで完売してしまうんですよ。一番最高で売ったときは,おとう さんの椎茸だけで60万超えていた。おとうさんの椎茸の方が価格も高いから所 得もあげたけどね。(からり特産物直売所運営協議会名誉会長 野田文子氏)

野田氏は,生産者の顔が見える安全・安心な農産物を追求し,リース教室ツアーな ど年間をとおした農業体験活動を実践するとともに,研修等の講師など農村女性起業 家や観光カリスマとして活躍している。

野田氏は,ラベンダー作りの工夫について,下記のように,インタビューで語って いる。

「ドライフラワーは1年間にかけて,ドライフラワー作りをする。時期があるか ら。今一生懸命,鷹の爪,とんがらし,赤い。あれを人に頼みながらこしらえて いる。それを1年間使えるぐらい補充しておくんですよ,今の時期じゃないとで きないから。で,おとうさんの椎茸乾燥の箱を使わせていただきながら,それで 囲うておくんです,1年中出せる様に。麦もそうだし,鷹の爪もそうだし,そこ の中にはいっている玉すだれっていうキリなんですけど,それもドライフラワー には必要だからそれも作っているし,ラグラスとか貝細工とかドライになるもの は常に。今の時期に芙蓉の実がなるんですよ,それは走りよったら農家の人が 作っている,それを見ては分けてくださいと言って,そこで買い込んどくんで す。必要になる物は自分の目で見て,農家のひとに貰いながら集めてそれを1年 中使える様に。これから百合の実が乾いてくるから,その実を農家の人に頼んだ

−350− 香川大学経済論叢

(17)

り,自分が見つけて採って集めたり。それが集まって初めてドライの花束が出来 ていくんです。(からり特産物直売所運営協議会名誉会長 野田文子氏)

「ここが始まったときに,私はなんとかして消費者に,どういう所に住んでい て,どういうものを,自分の地域を見てもらいたいという想いがあって。うちの 地域はラベンダーの評価が高いから,まず植えてみようと思って。ラベンダーの 苗を5株ぐらい買った。ラベンダーの品種がいっぱい在るから,どの花が自分の 地域にふさうんだろうかということで,それをいろいろと取り合わせながら自分 が挿し木して増やしてきた。もう5,6年かかった,畑を一反半ぐらい作った。

出来上がってから,ラベンダー狩りというのを此処で取組んでやった。野田さん の園にラベンダー狩りにいきませんか,っていうのを此処に出して,ここでレス トランの食事を取り込んで,ここの研修室を借りて,ラベンダーの工作,とって きたのでバンドルつくったりバスケットつくったり,体験学習みたいなものを取 組んできた。2,0円の会費でイベントとして。

「参加する人は此処で募集するから,ここに買い物に来られた方がそれを見て やってくる。そして住所と電話番号をいただく。次にその人にご案内をだしてい く。こんどはリース教室ですから,もうぼつぼつご案内していかないけんなと思 いよるんだけど,クリスマスリースとか,リース作りをしませんかといって,こ こに広告を出していくんですよ。かならずレストランとセットしながらイベント を作り上げていく,2,0円,リース教室をします。主婦の方と,子供をまじえ て。主婦が多いですね。若い人もいるし年取った方もいるし,いろいろさまざま ですね。ここで,からりで募集するから。松山からも来られますね。今回は,もっ と遠い新居浜の方の人にもご案内だそうかなと思っています。ドライフラワーす るんだけどからりに来ませんかって,おうた人に,いつも。行きたいな,ご案内 くださいという人には,必ず住所と電話番号もらいます。わからなくなったらい けないから,すぐに,ここの事務局でパソコンに登録してもらう。そして,日程 が設定できたら事務局がご案内を出してくれるんですよ。参加しませんかといっ

超産業戦略

−351−

(18)

て,それで何日までにご返事くださいという案内をだしてもらって。返信しても らって,そして,人数を取っていくんです。ファン作りです。お友達を連れてき てくれたり,バスや乗用車できたりいろんなパターンがある。

「最初はドライフラワー部会といって農家の人がグループを作ってやっていたん だけれど,打ち合わせしないといけないし,なかなか大変なんです。だからもう だいたい2人か3人がぐらいでやるんですよ,勝手に。その方がずっとまとまり やすいんです。すごくリースが好きなひとを講師として雇うんですよ,生産者で すけど。わたしが集める人になっていくんですけど。人集めですから,会社が施 設を借してくれるんです。そういうことを,直売所の会長を10年やっていて,

いまは名誉会長という役職を貰っているんですけど,会社にも,人集めをやって よ,と言われるから,個人的に,リース教室するよっていって,会社から,事務 所から流してもらった方が私もやりよいから。ここの施設を利用するから事務所 も協力して。だからやりやすいんですよ。

「材料は私たちが,誰かにお願いして採っていただくし。そうやってするから,

からりのファンがおるんです。ここのレストランバイキングを取り込んでやった りするから。だから私向けのファンじゃなくて,からり向けのファン作りをやっ て,いろんなイベントをしながら。個人的だったら,ここは使わせてもらえない し。だから,此処を巻き込みながらうまく,消費者を取り込んでいく,そしてか らりのファンを増やしていく。

「わたしはからりが自分の仕事場だと思っているから,個人的にはやらない,自 分の会社だと思っている。だからいかにファンを増やしながらここのお客を増や していくかというのをやりたいと自分は思っている。個人的だったら,生産者も いろいろいうけど,会社向けだから,別に,私がどうこう集めても何も言わな い。(からり特産物直売所運営協議会名誉会長 野田文子氏)

−352− 香川大学経済論叢

(19)

4.3 外部力(ヨソモノ)の取り込み

松山市のビンデザインオフィス有限会社代表取締役であり愛媛大学農学部客員准教 授の山内敏功氏が,アイスクリームの箱のデザイン,パスタの箱のデザインなど内子 フレッシュパークからりのコンセプトづくりとその維持に深く継続的に関わってい る。

「からりのデザインの決め方は,デザインはスタッフで こういったものがいい と案を出して,あとビン先生の方でいくつか出していただいて,想いを説明 していただいて決まるというか,想い, どうして白なの ってなったときに−

無添加なので,まわりは白だね とか言う感じで。そんな感じのものをいろい ろと説明していただいて。私たちは, ここピンクがいいよね,とか紫がいいよ ねってなって,どうしてここ白なの というと,そういう説明をしていただい て。

「小さい手がたくさん−みんなの手で,一人じゃ出来ないから,農家の方の手を かりながら,皆さんの手を借りながらびん先生が考えて,内部と意見交換をしな がら,いろいろお話をしてイメージをわかさせてもらって。(内子アグリベン チャー21,山田重美氏)

なお,建築のデザインは,伊予市の有限会社アトリエA&A代表取締役の武智和臣 氏が担当した。行政で決めるのではなく,デザイナーと生産者が一緒になって作り上 げていった。

外部力(ヨソモノ)としては,コンサルタントの愛媛サポートからも支援を受けて いる。同社は,愛媛,四国のものを手がけている。東京のレストラン,ホテルへ紹介 を行ってもらっている。消費者の嗜好として,「重い物はよくない,田舎なら自動車 であるが,電車,徒歩での買い物が多いから,小包装がいい。トマトケチャップな ら,ビンは重い。」といったアドバイスを受けている。

超産業戦略

−353−

(20)

4.4 からりネット

内子フレッシュパークからりの情報ネットワーク「からりネット」は,消費者と生 産者を結ぶトレーサビリティとからり会員を支援する農業情報を提供する。出荷者が すべての商品に添付するバーコードシールは,顧客が問い合わせをする際に管理さ れ,その情報は,生産者別,商品別にからりネットのサーバーに情報が蓄積される。

生産者には,自分の商品の売り上げが電子メールや電話やファックスにて送付され る。出荷者は,そのデータを元に日々の商品を出荷したり,今後の出荷計画を立てる ことが可能となった。

POSレジについては,15年前から導入し,販売管理を行っている。

情報のネット化については,農家−からり−直売所が直結している。POSレジと 連動し,現在の販売状況がリアルタイムにわかる。今の時点の売上げを配信してい る。電話ガイダンス,FAX配信,インターネット,携帯電話による配信を行ってい

−354− 香川大学経済論叢

(21)

る。メールアドレス登録によって,希望時間に売上げ情報を生産者へ自動配信するこ とも可能である。

例えば,朝,30本,大根を出荷のうち午前11時現在,28本売れているという情報 を配信して,生産者が午後の出荷準備ができ,直売所に多くの品揃えが可能となり,

消費者の購買利便性が上昇する。また,販売状況コメントを生産者に流すこともでき る。例えば, 今,店にはスイカがないですよ,品薄ですよ , お客さんが○○○を 求めています , 今日,大型バスが2台入ってきます といった販売状況コメントで ある(からり代表取締役社長,富永氏)

インターネット販売は,楽天市場へ商品提供している。楽天でインターネットを通 して購入可能となっている。これは,実施して1年足らずである。一方,ふるさと小 包販売を役場とタイアップして行っている。これは,電話に依る取引である(からり,

岩井氏)

サーバー構成については,販売管理(POSシステム)とデータベースサーバーは,

一台で行っている。他に,栽培履歴管理サーバーと売上げデータ携帯メール配信,

FAX配信,音声配信サーバーがある。なお,携帯メール配信が一番利用頻度が高い。

サーバーは自前で立てている。システム開発はメーカーへ委託した。栽培履歴に関す る登録は生産者が行う。入力端末はバーコード発行PCと直売所内の同じ場所に設置 し,履歴サーバーへ情報を格納する。登録情報に不備がないか,事務所の管理端末に て確認している。生産履歴の運営は,役場・からり・生産者の3者である。農薬など のマスター情報は役場の支援センターが提供している。生産者は栽培履歴を直配所で 登録する。自宅では入力できない。消費者は,インターネットを通してwebサイト にアクセスし,バーコードシール番号を入力すると生産履歴を参照できる。なお,

バーコードシール番号には,生産者番号,商品番号,単価が含まれる。一つの商品に ついて一つの履歴となる。

システム開発,管理は,地元のソフトハウスへ委託している。当初はNECであっ たが,保守管理費10万円/年とNECより安いので,変更した。なお,生産者のシ ステム利用研修は,生産者同士で教え合うことにつながっている。

超産業戦略

−355−

(22)

「うちは全部トレーサビリティーを5年位前から取組んで,記帳しながら履歴作 りをしてきたから。ここには履歴のないものは置いてないんですよ。これが生き 残りなんだと言って。ほんとに役場もよくやってくれて,農家も取組んでくれ て。安心安全,トレーサビリティ。うちもずっと取組んで,よそに負けない位取 り組みができていると思います。農家の人も,専業農家で山の仕事やっていたか ら,こういう農業,すごくあたらしかったから,みんな興味があって,取組む姿 勢でがんばってきた,10年間程。

「パソコンはからりが始まってから,家に取り寄せてもらった,インターネット !いでもらった。けどね,農業というのは座って習う時間,とてもじゃない,

できない。私たちは物作りだから,パソコンを座って習得するのがとてもじゃな い,時間が。私にとっては,無駄でした,無駄になるっていうか,時間がなかっ た。もうこれは,パソコンは無しでいこうと。パソコンを習得しないと見ること も面白く見えないし,それを使いこなすことに依って,あのパソコンは役に立つ のであって,ちょっと見るからって自分には役に立たなかった。だから止めてし まったんだけど。畑で物作りをしないと,出来ないんですから物が。物を作って 直販に出すことが所得に!がるのが大きかったから,すべてからりに任せて,か らりが最低限のパソコンを農家が使える様な段取りをしてくれた。だから,それ で十分だったと思います,私自身にとっては。バーコードを出すように教えてく れるし,携帯で!いで,ここからの売上げが見えるようなこともしてくれたし。

今現在は何が足りないよ,何が売れているよというメールも来るし。これは農家 にとっては,最小限の情報が自分に入ってくれれば,他には何にも必要と思わな かった。私たちは農家の販売するのが目的ですから,その販売の売れ行き,売れ 高,何が売れているよという情報,其れが来れば不自由していない。

「情報をいただいて,それを作付けに使う。売れた時点では,農業って言うのは,

3ヶ月半年かかるんだから,そういう情報を自分に取り込んで,次はこれを植え てみようかなと,自分の計画が立てられる。

−356− 香川大学経済論叢

(23)

「だけど私たちは,出荷に毎日にこの直売所にきているから,何が売れているか というのは自分の目で確かめられるから,それほど前もってこの情報を見てやら ないといけないということもない。

「もし自分が今現在持っている物がよく売れているという情報がはいることに よって自分のものを束ねて持ってくることは出来る。だから次の年にこれを植え ようかなという計画性は立てられると思う。でも現場に出てるから,それほど は。今現在自分の畑に持っているものが売れてるよっていう情報をもらえれば明 日持っていこうかな,という取り組みは出来る。(からり特産物直売所運営協議 会名誉会長 野田文子氏)

4.5 内子アグリベンチャー2

からりの運営に大きくかかわっているもう一つの組織が,農家の女性38名(2 年9月現在)で構成されている内子アグリベンチャー21である。内子アグリベン チャー21は,農産物の加工を研究する組織として農林水産省の補助金を得て設立さ れた。素材,惣菜,製麺,菓子製造の4部門で活動している。からりとは別に,法人 格をとっており,名本良子氏が会長である。

1年2月に設立された。からりの中にある。内子アグリベンチャー21との連携 によって,あぐり亭もレストランからりとともに人気を集めてきた。アグリベン チャー21では,地元生産品を生産して販売しているほか,からりで生産している各 種農産品の体験教室を実施するなどして,女性による新しい農業の可能性を切り開こ うとしている。

内子アグリベンチャー21には4つの部門がある。菓子製造部は,柿のようかんな どの研究を行っている。内子町の小麦粉を使ったクッキー,ボーロなどを焼いてい る。また,大判焼き,たこ焼きは,毎日店舗で販売している。大判焼きは内子町のよ もぎ,!麦を使っている。

次に,製麺部は,内子独特の!麦うどんを開発して,あぐり亭で販売している。香 川県へ出向いて,研究を進めた。惣菜部は,お弁当などを販売している。からりと競

超産業戦略

−357−

(24)

合しないように注文生産である。なお,素材部は,内子町内の素材を活かす,椎茸,

かぶ,トマトの研究をしている。トマトケチャップを開発した。もったいない精神か ら,直売所に出して売れ残ったトマトを使う。農家の方は持ってかえっても処分に困 る。何か出来るものは無いかという依頼からトマトケチャップを開発した。体験教室 は,お菓子作り,うどん,そば,櫓!などである。

農家の婦人のみで,加入した後は,4部門の中から,自分が活動出来る所へ自由に 参加する。部門は兼ねても構わない。内子の兼業農家のおかあさんが,農家の仕事を しながら合間をみて参加する研究組織である。

収益は,菓子,製麺,素材,惣菜の売上げであるが,研究組織であるので,仕入れ を引いた残りは,賃金に回している。利益はとらない。賃金も協議して決める。

4.6 からり出荷者協議会組合

0名の生産者が,からり出荷者協議会組合に加入している。組合とからりが委託 販売契約を結んでいる。売上げの15%をからりへ,そのうち8%を組合へ手数料と して還元している。10円の売上げがあれば,15円がからりの売り上げとなり,1円 0銭が組合還元となる。組合還元費の使途は,事務局員の雇用,委員会諸雑費,事

務経費である(内子フレッシュパークからり代表取締役社長,冨永昌枝氏) 組合は,4つの部会を通して,自治的に運営している,第1は,イベント委員会で あり,集客力を高めるためのイベント企画を行っている。第2は,店舗レイアウト委 員会である。どのような品物をどのようにディスプレーすれば,生産者,消費者に気 持ちよく販売できるかを検討している。第3に,品質管理委員会は,消費クレームの 対応である。運営方法として,からりと組合が対等に協議しながら運営している。第 4に,トレーサビリティー推進協議会である。食の安心安全のため,生鮮野菜にすべ て栽培履歴,審査をパスしなければ出荷できない。また,トレーサビリティ推進協議 会は,からり,組合,内子町で組織され,抜き打ちの残留農薬検査を年間50回から 0回行っているが,これまで違反はない(内子フレッシュパークからり代表取締役

社長,冨永昌枝氏)

直売所の商品は,品質管理委員から,期限を過ぎたものを展示していないかチェッ

−358− 香川大学経済論叢

参照

関連したドキュメント

①Lyra 30 Fund LPへ出資 – 事業創出に向けた投資戦略 - 今期重点施策 ③将来性のある事業の厳選.

事業所や事業者の氏名・所在地等に変更があった場合、変更があった日から 30 日以内に書面での

○齋藤部会長 ありがとうございました。..

 高松機械工業創業の翌年、昭和24年(1949)に は、のちの中村留精密工業が産 うぶ 声 ごえ を上げる。金 沢市新 しん 竪 たて 町 まち に中村鉄工所を興した中 なか 村 むら 留

関西学院大学社会学部は、1960 年にそれまでの文学部社会学科、社会事業学科が文学部 から独立して創設された。2009 年は創設 50

会におけるイノベーション創出環境を確立し,わが国産業の国際競争力の向

安心して住めるせたがやの家運営事業では、平成 26

これらの事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的