• 検索結果がありません。

保険取引から見た債権法改正

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "保険取引から見た債権法改正"

Copied!
22
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

保険取引から見た債権法改正

平成25年度大会シンポジウム

パネルディスカッション

【司会・山本哲生】それでは時間ですので,パネルディスカッションを行い たいと思います。ディスカッションでは,各報告で取り上げられた論点のう ち幾つかを選んで,パネリストの皆さんで議論をしていただきます。

最初に約款の組み入れ要件ですが,契約の内容とならないという場合の処 理について,白砂報告と西羽報告でそれぞれ取り上げられていたところです けれども,その点について,まず,西羽さんから白砂さんにご質問をお願い いたします。

【西羽 真】中間試案で,組み入れの瑕疵があった場合の 契約の内容とな らない ということに関する話を私からいたしましたが,そもそも個別合意 というものが何かが明確になっていないということもありますし,瑕疵があ った場合に,契約内容が結局どうなるのかという点の考え方はいろいろある のかなとも思っております。私は全否定のような部分否定のような,少し中 途半端な意見を申し上げておりまして,どちらかというと前者を採られてい る白砂さんの考え方とは違っていたように思っています。その意味で,白砂 さんにご確認したいのは,保険者が保険約款によってしか保険契約を締結し 得なかったと思われる場合には,そもそも契約が成立しないというような考 え方をされているのかなと思うのですけれども,それ以外の帰結が考えられ るのかということです。

私の例で示しました,契約成立自体はお客さまも望んでいて,中心的な事 項も合意はされているけれども,ある条項は契約内容にしたくないし,それ

(2)

でいて不意打ち条項にはならないというような場合にどうなるか,お考えを お聞かせいただければと思います。

【司会】白砂さんに答えていただく前に,民法の先生である山下先生に解説 というか,コメントをしていただいてから白砂さんにお答えいただきたいと 思います。

【山下純司】民法の授業で契約の成立過程を教える場合は,まず契約が成立 しているかという問題,つまり意思表示の合致があるかという問題を扱い,

その後に,その成立した契約の内容はどういうものかということを契約の解 釈の問題として扱って,最後に,その内容の契約が法律に違反している場合 や,あるいは当事者の意思に反している場合について,公序良俗違反とか錯 誤とかいう無効の問題として扱うというような3段階に分けて説明するのが 一般的ではないかと思います。約款の組み入れ要件というのは契約が締結さ れた後である約款がそこに組み入れられるかという問題ですから,第二のレ ベルの契約内容の問題のほうに入るのではないかと思うのですけれども,今 のご議論は,約款が組み入れられなかったことが,第一のレベルの契約は成 立していないという評価のほうに及ぶのではないかという議論かと理解して おりますが,そういった理解で正しいのかも含めて,白砂さんにお答えいた だければと思います。

【白砂竜太】生命保険会社の実務では,承諾通知は,そもそも契約は約款の 内容によるということを前提としている中で,申し込みと承諾の意思が合致 しているのか,そういうところが一つあるのかなと思っていたところです。

山下先生からのご指摘を踏まえて,もう少し私なりに考えてみますと,約款 によるサポートがない状態で,申込書と承諾通知で合致した内容で果たして 契約の要素が確定されていると評価することができるのか,幅があり得ると いう面もあるのかなとも思います。

(3)

西羽様からいただきましたご質問, 契約者側に不意打ち条項には該当し ないような特定の条項の拘束力を否定したいような事情がある場合にどう考 えるのか ということについて,私見を申し上げますと,約款のコントロー ルの効いていない保険契約,特に傷害疾病定額保険契約は,健全な保険制度 の運営という観点からは極めて望ましくなく,この点,約款使用者の相手方 の保護という観点につきましては,民法が用意する約款の内容コントロール の枠組み,即ち不意打ち条項規制であるとか不当条項規制,これで必要十分 であるとも考えられることからすると,保険契約者が約款の組み入れの瑕疵 を根拠に主張できる範囲というのは,無効までであるということでよいので はないか,考え方としては合理的なのではないか,そのように思います。

ただ,付随的な条項まで含めて考えたときには,また少し違う見方があり 得ると思います。給付記述を含まない,要は取引条件だけが書いてあるよう な約款につきましては,組み入れの瑕疵があった場合には付随的条件だけが 抜け落ちるわけですけれども,先に述べたような考え方によれば,給付記述 が約款に含まれるか否かで,組み入れの瑕疵があった場合の付随的条項の扱 いが変わってくることになります。それはそれで少し不整合があるという見 方もありうるのではないかなとも思います。

結局,給付記述と付随的条項を同じ枠組みで処理している,そこら辺にま だ少し課題があるということなのかなとも思います。

【司会】それでは,次に不意打ち条項規制についてです。山下報告では,時 間の関係でそれほど強く出ていなかったような気もしますが,レジュメを見 ていただきますと,不意打ちの認定というのはあまり緩やかにするべきでは なく,むしろ厳しくするべきであって,不意打ちで処理するよりは,説明義 務違反で処理したほうが望ましいのではないかというようなご意見が示され ているところです。この点について,西羽さんにコメントをお願いいたしま す。

(4)

【西羽】レジュメの7ページのところかと思います。時間の関係で,あまり 説明がなかったところかと思いますが,基本的に保険の場合にはかなり統一 的な内容を維持する必要性が高いということもあって,不意打ちということ よりも,説明義務違反で対処していくということが望ましいのではないか,

ということと理解しました。不意打ちと説明義務との関係をそのように考え たことが今までなかったのですが,非常に合理的な考え方で,なるほどと思 いました。今後,われわれ業界の主張においても,そのような考え方を反映 させていく必要があるのではないか,と感じたところであります。

先ほどの説明の中では十分にお伺いすることができなかったので,若干補 足の説明をお願いします。不意打ちに関しては,中間試案の補足説明におい て,個別の相手方ごとに具体的に判断をするのか,あるいは想定している相 手方をある程度客観的な基準で判断するのかという, 主観か,客観か と いう点は解釈に委ねると書かれている中で,先生の考え方は,どちらかとい うと後者を採るべきということだと思うのですが,そのような理解で良いか ということも含め,お願いします。

【山下】ありがとうございます。時間切れできちんと説明できなかったとこ ろをフォローしていただいておりますが,不意打ち条項と情報提供義務につ いて,私が主張したかったのは,不意打ち条項を広く認めることで,個別の 約款について,この契約者との関係ではこの条項が有効だけれども,この条 項はこの契約者との間では抜け落ちてしまうというような状況になるくらい であれば,一律に契約条項が適用されることを前提に,情報の説明が足りな かった人だけ情報提供義務違反で処理をするというほうが事案の処理として 適切な場合があるということございます。

それで,西羽さんからの今のご質問は,そういった両者の制度が,両方適 用できる場合もあるのではないかと。両者の関係はどうなるのかということ をご質問になられたと理解しております。それで,この点が非常に難しいと ころでございますけれども,私は,やはり約款といってもいろいろなものが

(5)

あるなかで,保険約款というのはどういうものかということを考えたときに,

保険約款というのは,約款条項や説明文書等が,当該保険商品がターゲット にする平均的な顧客の予知能力,予測能力みたいなものを前提に,かなり標 準化されている約款ではないかと。これがもし,その標準化の程度が不十分 なせいでよく分からず不意打ち的であるという話になった場合は,これは商 品全体の設計の問題にかかわる問題ですので,全顧客との間で,一律にそん な条項は駄目でしょうという話になるのではないかと思うわけでございます。

そうすると,これは,むしろ不当条項として処理する方が適切であるように 思います。このように,ある程度客観的な基準を満たしていないというもの はすべて一律にはじくということを前提にしたうえで,個々の顧客が理解で きなかったという条項に関しては,情報提供義務の問題として扱うべきでは ないかというのが私の理解です。ただ,中間試案の文言からこの解釈が当然 に導かれるというものではありませんので,これは私の意見ということでご ざいます。

【司会】それでは次の点に移りたいと思います。次は不当条項規制でありま して,これは皆さん取り上げられていたところですけれども,どういう場合 が不当になるのかについては,白砂報告でも取り上げられていたところです が,これについて,金岡先生にコメントをお願いいたします。

【金岡京子】まず全体的な問題で,不当条項規制の不当性判断基準というと ころが一番気になるところです。白砂さんは,その基準として契約目的の危 殆化を想定されていらっしゃると理解してよろしいですか。

それから,レジュメの7ページの1段落目で,不当条項規制の前段審査と して,比較対象とすべき標準的な内容からの乖離を一つの基準として,と述 べていらっしゃいます。この比較対象とすべき標準的な内容は,何を意味し ますか。

さらにレジュメの9ページの2段落目で,特に保険収支に影響を及ぼす場

(6)

合には,後段審査の 相手方に過大な不利益を与える場合 に該当しないと いうご見解ですが,この関係について,具体的にご説明いただきたく,お願 い申しあげます。

【白砂】私からも金岡先生にちょっと教えていただければと思うところがあ りますので,順番を入れ替えてご回答をさせていただければと思います。

まず,収支への影響の話ですけれども,適用の仕方によって効果が幾つか 変わってくることを気にされているのかなとも思うのですけれども,ここで 私が申し上げたいのは,保険収支に影響が及ぶような不当条項規制はすべき ではないし,また,保険収支に影響が及ぶ形で契約を維持させるべきではな いということです。不当条項規制単品では収支への影響があるのだけれども,

補充的解釈を行った結果,収支への影響は消えるというようなものは,中間 試案のレトリックによれば一定の回答は出るのかもしれませんが,私はそこ まで意図しているものではありませんし,また,今の段階で一定の考えがあ るというものでもありません。

つぎに不当性の判断基準についてです。中間試案では,中心的部分への適 用については解釈に委ねるとされている一方,対価以外にどのような条項が 含まれるのかは定かでないというようなことが書かれていますので,保険契 約については影響があると考えられることから,少し考え方を整理しておか なくてはいけないということで示させていただいたものです。ご存じのとお り,保険契約,特に傷害疾病定額保険契約の給付記述は,基本的には保険法 でも比較対象となるもの,デフォルトルール,これがないように思われます。

このような場合,債権法部会では,中井委員から 中心条項自体が問題とな ったときに比べるものがなければ,果たして無効になるのは暴利行為的な適 用がある場合になる というような見解が示されており,民法90条までさか のぼるということになるのかなと思っています。ただ,民法がこのような形 になった場合に,民法90条が問題になる前段階で,比較対象となる一般的な 法理なるものが全くないかというと,それは決してそうではなく,候補とな

(7)

り得るものは幾つかあるのではないのかと認識しています。金岡先生がレジ ュメでご指摘されたような透明性原則とか,契約目的危殆化基準は,一般的 な法理として定着すればという前提が付きますが,その候補となり得るので はないかと思います。

ただ,このレジュメを通してお話しさせていただいていることですが,給 付義務が意図に反して拡充されるような不当条項規制の適用は,付随的条項 への介入とはだいぶ性格が異なるもので,恐らく,付随的条項に対する適用 の考え方やルールとはかなり異なったものになってくるのではないのかなと 思います。中間試案の 相手方に過大な不利益を与える という要件では,

無効となることは説明できても,本来契約上の義務ではなかった給付義務が 課されることは多分説明できないのではないのかなと思います。契約義務で はなかった給付が求められる,そのような判断の根底には,異なる基本思想 があるはずではないかと思ったのですが,どのような基本思想があるのかよ く分からないところがありましたので,拙稿では,現在有力に主張されてお り,また,ドイツでも採用されている契約目的危殆化基準を挙げさせていた だいています。 これで問題がない と主張するものではありませんが,先 ほど申し上げました私の疑問に,一定の回答を示しているのではないかなと 思っているところです。

ここで,金岡先生にお考えをお聞かせいただきたいのですけれども,金岡 先生のご論稿の中では,免責条項について不当条項規制の適用の可能性があ り,また,今まで解釈で不当性の修正がなされたところについて,不当条項 規制に流れていく可能性があるとご指摘されていますが,今私が申し上げま したような,給付記述の一部への約款規制の適用によって取引の対象が変容 するようなもの,このような事象について,当たり前なのか,あるいは何か 特別な配慮があるのか,お考えがあれば,お聞かせいただければと思います。

また,給付をしないことが不当である,そういうことについて,一般的な 法理の網をかぶせて修正をしようというのであれば,特定の条項を無効にす るだけではカバーできない領域というのが恐らくあると思います。例えば,

(8)

特定の給付対象がそもそも列挙されていないようなものです。もし仮に,給 付記述のコントロールを目指すのであれば,不当条項規制という手法はミス マッチをしているとも思えるのですが,ここについても,何かお考えがあれ ば,お聞かせいただければと思います。

【金岡】例えば,傷害疾病定額保険における保険者の免責に関する保険法80 条の規定は,任意規定になっています。したがって,傷害疾病定額保険にお ける保険者の免責に関する保険約款の条項は,保険法80条の任意規定との比 較が問題となります。そして中間試案の基準によれば,保険契約者の権利の 制限又は義務の加重の内容,契約内容の全体,および契約締結時の状況その 他一切の事情を考慮したうえで,保険法80条を適用する場合に比べ,その保 険約款条項が,保険契約者に過大な不利益を与えるか否かが検討されること になります。このような中間試案の不当性判断基準に基づき,傷害疾病定額 保険契約における保険者の免責に関する保険約款条項が無効とされる場合が あるとすれば,そもそもそのような免責条項は,保険法の規範目的から逸脱 し,保険契約者が契約を締結する目的を空洞化してしまうものであると考え られますので,保険約款として使用することが適さない不当な内容であると 考えます。

【司会】次に約款解釈を取り上げます。西羽報告,金岡報告でも多少問題提 起がされていたところでありますが,要は,中間試案の契約解釈準則を約款 に当てはめると問題があるのか,ないのかというところですけれども,これ について山下先生にコメントをいただければと思います。

【山下】契約の解釈について,どういうふうな学説が民法の中であるかをま ず説明します。一般に,両当事者の共通の意思というものがとにかく前提に なるのだということは当然であるとされているわけでございますが,その先 は,要するに両当事者が合意していないとき,つまり内心の意思が食い違っ

(9)

ている場合についてどのように考えるかは多少説が分かれます。代表的なも のに,表示の客観的な意味というものを確定したうえで,両当事者の内心の 意思のうちより近いほうを優先するのだと考えるような立場や,表示のより 客観的な,裁判官が見たときの意味というものを優先するような立場などが あるのだと思いますが,いずれにしても,表示のある程度合理的な部分とい うのは何かということを判断するのだと思います。それで,合理的な理解が 決めかねるという話になると,これは,結局合意がなかったという話になっ て,確定不能という話になるのではないかと思います。中間試案がどういう 立場をとっているかというのは,それ自体が議論の余地があるのではないか と思いますが,共通の理解や表示の合理的な意味,客観的な意味とか,そう いったものを重視していくという点では,ある程度の客観性というのを維持 しつつ,しかし内心の意思にも配慮するという形で,主観と客観のバランス を取りながら契約を解釈するのだということが民法の中で考えられている原 則ではないかと思います。ですので,約款の解釈という問題に関しても,恐 らく,保険契約者の純粋な主観を,そのまま裁判官が採用していいというよ うなルールを民法学者が作ろうと思っているというわけではないと思われる わけですが,その先どのようなことになるのかというのは,今後議論してい くべき点ではないかと思います。

【司会】西羽さん,何かお返しはありますか。

【西羽】情けない事情の吐露と感想めいたものになりますけれども,契約の 解釈のところは,もともとかなり主観性が強いように感じており,客観性あ る解釈を求められる保険や約款にはなじまないのではないか,そうすると保 険とか約款には別の規律が要るのではないか,そのときには使用者不利の原 則なども入ってくるのではないかと考え,私としてはそういう方向に論じて いこうというのが当初の想いでした。ただ,解釈の理論の世界というのは,

相当に奥が深く,私も奥にたどり着けずに終わってしまった感じなのですが,

(10)

いろいろと調べていて,先ほどの山下先生の話でいう 分離から統合 とい うことなのかどうか分からないですが,保険や約款の解釈も,一般の契約の 解釈に近づけていくような動きが有ることを知りました。そこで,もう一度,

今回の提案を実務の事例を考えながら当てはめてみると,実はそれほど主観 ばかりではなく,微妙なバランスが,特に原則2のところで取られているの かな,と考えるに至りましたので,そのような報告をした次第です。そうい ったバランスを取っている,という考え方について,専門の山下先生からサ ポートするようなご意見をいただけたので,苦労した甲斐があったと思って おります。

【司会】それでは,このディスカッションの最後にしたいと思いますけれど も,金岡報告では,中間試案を前提とした場合に,保険約款改定の必要性が あるかどうかというようなことについて幾つか検討されていました。それに ついて,白砂さんに質問をお願いいたします。

【白砂】金岡先生はレジュメ3ページと9ページで,債権法改正で約款改訂 の必要性が考えられる項目についてご指摘をいただいております。実務とし ましては,民法改正後には約款改訂も検討する必要があることから,このよ うなご指摘は大変ありがたく感じます。この中で,一つ質問させていただき ます。

①では消滅時効についてご指摘をいただいております。ここについては,

前提として保険法がどうなるのか考えないといけないのかなと思います。今,

民法(債権法)の見直しの中では,消滅時効の起算点および短期消滅時効の 収束について議論されているところですが,保険法の3年の短期消滅時効に つきましても,上記の時効制度の見直しの趣旨を踏まえて,おそらく改正が 必要であるか検討をするということになってくると思います。保険法の3年 の短期消滅時効は,事故調査のための証拠保全の必要性や,保険制度の健 全・円滑な運営確保のための迅速決済という趣旨,あるいは,3年という期

(11)

間が,告知義務違反解除の5年の除斥期間との関係で非常に重要な役割を担 っていることなどを踏まえますと,現行の規律を維持して,見直しは慎重で あるべきと私は考えているのですが,この点につきまして,先生のご見解を いただければと思います。

【金岡】消滅時効の期間に関しては,山下先生のご報告と全く同意見です。

保険契約に係る債権の消滅時効の時効期間については,すでに保険法95条に 規定がありますので,特に変更の必要はないと考えております。

【司会】パネルの方にはいろいろお願いしていたのですが,時間の関係で,

ここでパネルディスカッションは終わりにしたいと思います。

長らくお待たせしましたが,フロアとの質疑応答に入りたいと思います。

どうぞ,ご自由に挙手していただければと思います。よろしくお願いします。

【早稲田大学・李 洪茂】李でございます。金岡先生に質問をさせていただ きたいと思います。現在も5%の固定金利が,遅延損害の計算のときに使わ れ,中間利息控除の計算のときにも使われていますが,それが変動金利にな りそうだという話をされました。それは,今の時代に5%はあまりにも高い ものであるので,実態に合わせるという意味であると思います。また,中間 利息控除の計算方法と,遅延損害の計算方法が異なってくるかも知れないと いうことでした。

普通に考えると,遅延損害は,過去のある金額に利息を累積していって,

最終の価値を計算するものです。しかし,中間利息控除は,ある将来の金額 から利息をマイナスして現在価値を算出するものです。この二つに同じ金利 と算出方法(複利か単利)を使うことは,将来価値を算出したものを現在価 値に計算しなおすと,同じ金額になるということになります(実際には,遅 延損害の計算には単利計算が使われ,中間利息控除の計算には複利計算が使 われている)。そういう意味では,遅延損害と中間利息控除の計算に同じ金

(12)

利が理にかなっていると私は考えております。それを別々のものにするとい うのは,まず,どういうことかというのが質問です。

遅延損害のほうは,過去のものが多いので,既に金利が分かっています。

例えば,3年が経過している場合の遅延損害の計算の際には,その3年間の 毎年の金利が分かっており,考え方としましては,毎年の基準金利で計算し て,プラスしていく方法があると思います。しかし,将来の収入を現在価値 に計算し直す中間利息控除の計算においては,毎年の異なる基準金利を使う ことは不可能のように思います。この二つの場合は,先ほど申しました,現 在価値を将来価値に計算したものを,将来価値から現在価値に直したときは,

数値が異なってきます。その辺も少し,ご存じの範囲で説明していただけれ ばと思います。

【金岡】ご質問いただき,ありがとうございます。実務的なことは西羽さん のほうが詳しいと思います。交通事故等の損害をてん補する損害保険契約の 実務では,将来の逸失利益や出費を現在価値に換算するために,損害賠償額 算定の基準時から将来利益を得られたであろう時までの利息相当額(中間利 息)を控除しています。そして中間利息控除に用いる利率の割合は,最高裁 の判例に基づき民法404条所定の法定利率5%を適用して中間利息控除額を 計算しています。したがって,債権法改正によって法定利率が変動制に移行 したときに,法定利率を中間利息控除に用いる利率とする場合には,損害保 険の実務に大きな影響が及ぶ可能性があると言われています。そのため,中 間利息控除に用いる利率に関しては,固定利率とするということが中間試案 において提案されています。私は,現在の段階では中間利息控除に用いる利 率を固定利率とすべきか否かについては,まだ研究中であるため,確たる結 論を述べる段階にまでは至っていませんが,民法に中間利息控除に関する特 段の規定が設けられなかったときに,損害保険実務において法定利率と異な る利率を中間利息控除に用いる場合には,約款でその旨を定めるべきではな いかということを指摘させていただきました。

(13)

西羽さん,中間利息控除の問題について,補足していただけますか。

【西羽】専門家ではないのですけれども,補足したいと思います。例えば,

将来の逸失利益が1,000万で,それを5パーセントで割り引いた額を払いな さいということになったときに,支払いが遅れると,遅延損害金が付きます。

それで,その遅延損害金に係る利率は3%ですということになると,5%

で割り引かれたものなのに,遅延損害金は十分に付かないということで,被 害者の方にとってみれば酷な結果になってしまいます。本来,5%で回せる はずということで5%が割り引かれているはずなので両方の割合を合わせる べきということも強く主張されている,と理解しています。これに対し,中 間試案では,法定利率は変動にするけれども,中間利息控除に係る利率は変 動にせず5%にするという提案になっているのは,そもそも中間利息控除に 用いる利率というものを,簡単に変える形にしてしまって良いのかという問 題があるためだと思っています。例えば,5%の割引率を3%の割引率に変 えて,2,000万円,3,000万円などの大きな金額について計算してみますと,

3割だとか4割だとか,期間にもよりますけれども相当な開きが生じてまい ります。そうすると,ある日を境に,こちらの事故だと2,000万円払われた けれど,こちらだと2,500万円払われたというように金額差が生ずることと なって,これは本当に公平なのかということになります。また,計算方法が 変わるということで,裁判実務もわれわれ損保会社の実務も大変になります し,お客さまからのクレームにもなるかと思います。更に,損害予測が変わ って保険料も変えなければならないということになりますので,われわれ損 保業界としては,やはり変動ではなく固定にしていただくのが良いかと考え ているのですが,ここはかなり賛否両論が強く分かれているところですので,

今後どのようになるかは分からないと思っております。

【李】一つ,確認させてください。変動という意味は,適用される期間全体 に対して,例えば,3%であったものを2%に変えるなどの話であると理解

(14)

します。しかし,先ほど申し上げたように,遅延損害の計算では,既に分か っている過去分の金利がありますので,毎年違う金利を適用するという考え 方があると思います。いずれの話でしょうか。

【西羽】今の法定利率に関する提案では,遅延損害金の利率は確定したとき に使われている法定利率で固定されるということではなく,法定利率が変わ った場合には以降の期間に係る利率は見直すものだとされています。おっし ゃるとおり,遅延損害金の利率については,その時々で変えていくという考 え方ができる一方で,中間利息控除はそういう考え方ができないということ で,違う要素がある二つの利率をリンクさせて同じにしなければならないと いう理屈はないのではないかとして,今後損保業界が主張していくべき話の ヒントをいただいた気がします。この点をどのように考えるのか,今後われ われとしても問うていきたい,と思います。

【立命館大学・村田敏一】村田でございます。山下先生と金岡先生へのご質 問でございます。まず,山下先生へのご質問ですけれど,保険法と今回改正 される債権法の適用の関係,これは一般論として言えば,保険法はごく近時 に立法された契約法の特別法でありますから,債権法がどのように改正され ようと,特別法である保険法の規律が優先的に適用されるわけで,それほど 気にすることはないと思っているのですけれども,新保険法の立法過程では,

法務省が尽力されて,片面的強行規定が明文で明示されるとともに,いわゆ る絶対的強行規定と任意規定の区別は解釈問題でありますけれども,この点 は, 一問一答 の中で立案者が明示されるということで,実務にとり,非 常に法的安定性が高まりました。しかし,適用順序の問題を考えていきます と,改正債権法で,片面的強行規定の明示とか,あるいは強行規定と任意規 定の区分けの明示,後者は解釈問題かもしれませんけれども,そうした問題 が,商法の立場からすると非常に関心があるわけです。一方で,民法の立場 では,どの程度こうした区分けを明示していくのかという問題意識につき,

(15)

商法とは,若干温度差があるような気がしますので,この点,教えていただ ければと思います。

【山下】ありがとうございます。片面的強行規定についてというか,むしろ 強行規定一般について民法学者は意識しているのかというご質問だと思うの ですが,民法に関していうと,やはり,強行規定というものが果たしてどれ なのかということは,確かにかなり解釈に委ねられている部分がございます。

それがある程度やむを得ないのかなと思う部分がありまして,それは,債権 法のほとんどについては,契約自由の原則で規定されている典型契約規定と いったものなどで構成されているということになりますので,完全な強行規 定というものを作ったときに,すべての契約についてそれを適用しないとい けないという話になったときに,果たしてうまくワークするのかという問題 があるからだと思うのですね。そういう意味では,かなり強行規定に関する 意識が低いと言われてしまうのかもしれません。ただ,現在の民法では,民 法90条などの公序良俗規定などを使って契約規範を一部無効にしていくとい った裁判所の介入を許してきたわけですけれども,こういった場合には,消 費者契約法10条と同様の発想で,個々の契約類型などで任意規定がどのよう に規定されているかということを配慮しながら考えていくべきであると考え られています。つまり,典型契約というのはそういった場合のスタンダード になり得るのだというような考え方というのが一般的なわけでございまして,

これを保険契約にあてはめますと,保険契約というものの特質を十分考慮し たうえで,今回導入される不当条項なども含めて適用されていくべきだと考 えられます。そういう意味では,民法が強行規定を新たに設けようというよ りは,保険契約という典型契約類型というもののスタンダードは何かという ようなことを議論したうえで,そこから大きく外れる場合にどういう効力が あるかというような,そういった考え方を民法学者はするのではないかと思 うわけでございます。うまくお答えできないのですが,取りあえずそういう ことでございます。

(16)

【村田】次に,金岡先生へのご質問です。私とは若干認識が違う点が多くあ るのですけれども,全部申し上げると時間が足りませんので,1点だけ指摘 させて頂きますと,レジュメの6ページに契約上の地位の移転に関する議論 があるのですけれども,受取人の介入権について申しますと,ドイツと違っ て,日本保険法の介入権というのは契約者の地位に変更はなく,単に債権者 の解除権等を制限しているだけですから,これは,そもそも,契約上の地位 の移転に関する規律とは無縁ではないかなと思います。

それと,ここで契約者の地位の譲渡に関する例の東京高判が挙げられてい ます。これは,上告不受理になったものですけれども,少なくとも,約款上,

保険者には同意権があるわけで,契約当事者である保険者として,契約者の 地位が移転するということは,これは継続契約で保険料支払者等が移転する わけですから,一般的に言うと,必ず保険者には,利害関係があるわけであ って,これに関する保険者の同意権が,新しい規律によっても,不当条項と 判断される余地は皆無であるように思うのですけれども,いったい何を心配 されているのかなという気が致します。その辺をもう少し教えていただけれ ばと思います。

【金岡】中間試案の契約上の地位の移転に関する規定の新設との関連で私が 気になっている部分は,保険金受取人の介入権に関する保険法60条および89 条の規定との関連です。保険金受取人が保険契約者の地位に移転することを 望まず,介入権を行使して目的を達成できた場合には,問題はないと思いま す。しかし保険金受取人が介入権を行使するような局面においては,保険契 約者が,保険料を継続して支払っていくのが難しい場合もあります。このよ うな場合に,保険約款に基づく保険者の同意が得られなかったとき,保険契 約者の地位を保険金受取人に移転することができないため,保険契約者は保 険料を支払うことができず,保険契約を継続できなくなる可能性もあります。

仮にこのような事態が生ずるとすれば,保険法に保険金受取人の介入権に関 する規定が設けられたにもかかわらず,その目的が没却するようなことにな

(17)

らないかという懸念を抱いています。

それから,契約上の地位の移転に関する中間試案には, 相手方がその承 諾を拒絶することに利益を有しない場合には,相手方の承諾を要しない旨の 規定を設けるという考え方がある。 という注記があります。この注記の考 え方が民法に規定として設けられた場合には,保険者が保険契約者の地位の 移転に関する同意を拒絶することについて利益を有しない場合には拒絶でき ない場合もあり得ます。例えば,保険者がその保険契約の性質上,保険契約 者として契約の相手方になることを認めない場合には,従来の実務では,保 険者の同意に関する保険約款に基づき,保険契約者の地位の移転を承諾しな いことも可能でしたが,中間試案の注記の内容が民法に規定された場合に,

保険契約者変更を拒絶することに保険者が利益を有するわけではないのに,

なぜ拒絶するのか。 という苦情が出てきたときに,民法の規定と異なる保 険約款は,不当規制の対象になる可能性もあるのではないかと考えました。

【村田】残念ながら,金岡先生のご説明は全く分かりませんでした。別に懸 念する必要はないと思うのですけれども。あと,介入権は,これは保険者と しては,別に同意は要らないわけで,契約者による同意ですから,契約者が 保険料を払えるか払えないかというのは別に規律には関係ないので,先生の ご懸念は当たらないと思います。

それから山下先生のご回答に関し,保険法の立法過程で,いわゆる強行規 定の解釈につき,私の尊敬する京大の山本敬三教授が,意思表示の中核とか 第三者が絡む対抗要件の中核部分は解釈上強行規定であると述べられている のが参考になりました。そうした考え方が,一問一答で,法務省が強行規定 を明示されたところにも割と表れていると思うのですけれども,そういうふ うに考えていくと,一般債権法においても,別にそう難しく考えずに,保険 法で解釈上採られた強行規定というものと同じような考え方で,割とクリア に強行規定というものは解釈上確定していくのかなという気もするのですけ れど,いかがでしょうか。

(18)

【山下】民法の個々の条文に関して,どれが強行規定かということをある程 度確定できるというのはそのとおりだと思います。民法の授業などでも,物 権に関するような規定とか,制度的にきっちり決まっていないといけないと ころというのは,動かせないので強行規定ですねというようなお話をして,

契約で,合意で決まるというような部分は比較的任意規定が多いですねとい うような話はするわけですけれども,ただ,ここでいう強行規定の意味が,

民法と商法ではかなり違うのではないかと思うのです。今回とは関係ないで すけれども,例えば所有権の定義とか,そういう民法の条文は,所有権につ いて変なものを作ってはいけませんという意味では,物権法をかたちづくる 強行規定といえますが,このような民法の強行規定というのは,かなり私法 制度の根幹にかかわるような部分と関連しています。逆に言うと,私法制度 の根幹が何かということについての議論を十分しないと,強行規定と任意規 定の境界線というのは結構あいまいかなという気が私はしております。今後,

議論を深めていただく必要はあるのかなとは思うわけですけれども,すべて を綺麗に分けるというのは,かなり時間がかかることかなと思っております。

【一橋大学・米山高生】米山と申します。よろしくお願いします。保険学会 なので,やや保険実務に近い質問で,少し具体的すぎる質問かもしれません けれども,現時点でのお考えをお聞かせいただければと思います。保険実務 と中間試案の期間の定めがある契約の規定の関係について,一つだけ質問さ せていただきたいと思います。

現行の保険実務に自動更新特約というものがあって,これは5年定期とか 10年定期とか医療に特約されているものであって,どういうものかというと,

もうご存じの方は多いと思いますけれども,私の理解に間違いがなければ,

主契約の満期以前に契約者が契約の更新をしないという意思を保険者に伝え ない場合は,医的選択なしで自動的に契約を更新するという特約だと思いま す。この場合は,当然保険料は新しい保険期間に相当するものになるので,

更新以前よりは割高になるということと理解しています。それで,この特約

(19)

に対して,逆選択が生じる可能性があるという批判もあるのですけれども,

実務的にはかなり長く定着している特約であると聞いております。この特約 は,民法で期間の定めのある契約にかかる規定において,どのように理解す べきなのかということを金岡先生にお聞きしたいということと,また,山下 先生には,こういう契約というのは,領域のCなのかDなのか,あるいはど ういうふうに取り扱うべきなのかということ,現時点で結構ですので,伺い たいと思います。よろしくお願いいたします。

【金岡】ご質問いただき,ありがとうございます。傷害疾病定額保険契約,

および生命保険契約における保険期間10年等の定期保険契約の場合には,保 険期間の満了の2カ月程度前に,保険契約者が保険者に対し,契約更新しな い旨を申し入れない限りは自動的に更新するという約定が設けられている場 合があります。この場合には,民法の中間試案で提案されている期間の定め のある継続的契約の終了に関する規定が適用される場合とは違いまして,お 互いの合意によって更新するということを約束するものであることから,民 法に同一条件みなし更新規定が入ったからといって,保険契約実務が何らか の変更とか対応を求められるものではないと思います。他方中間試案は,保 険契約期間終了時に,補償の見直し等を検討し,旧契約の終了とともに,新 たな契約を締結する損害保険契約において,保険契約者が 従前と同一の条 件で契約を更新したい と希望しているときに,保険者は,正当な事由がな い限りは同一条件での契約更新申出を拒絶できないと解釈し得る余地のある 規定案ですので,自動更新の場合とは異なると考えております。

【山下】ありがとうございます。領域のCなのかDなのかという質問を受け ましたが,私は先ほどCとDをレジュメと逆に黒板に書いたと指摘を受けて いまして,自分でもどっちかよく分からなくなっているかもしれませんが,

ご質問については,先ほどの金岡先生のお答えでほとんど尽きていると思い ます。私は,この継続的契約の新しい提案というのは合意によって排除され

(20)

るのではないかと思いますので,そういう意味では,直接に関係はないので はないかと思うわけです。規定ができたことで何か影響があるかというのは,

多分,同一条件の更新とか,そういった問題をお考えなのかもしれませんが,

合意がある場合は排除されるという意味では,この規定は恐らく任意規定と して立法されるのではないかという気がいたします。

【司会】他にございますか。

【三井住友海上火災・村田毅】村田と申します。山下先生に伺います。不意 打ち条項に関してのお話をされた際に,平均的な顧客を前提に標準化が十分 かを考え,標準化が不十分ならば,商品設計全体が不合理で不当条項かどう かの論点となり,不当条項ではなくて個別に誤解が生じたならば,情報提供 義務の問題,こういうふうに展開されたと思います。それについて,前段は 賛成ですが,後段は,それに反対というものではないものの,今,業界が説 明を簡素化していこうと一生懸命取り組んでいることとどういう関係になる のか質問を投げかけたいと思います。説明の簡素化は金融審議会のワーキン グ・グループの中でも議論されましたが,常識にかなっていること,合理的 に普通に理解できることはいちいち説明しない。そうしないと記述がやたら 増えていく。個別に誤解した人がいたから,説明義務・情報提供義務の問題 だと言うと,また何でもかんでも書こうという誘因になってしまう。今まで,

説明文書が長くて,分かりにくいと批判されてきたのですが,それは,個別 に問題が起きると,どうしても書き足すということの繰り返しできたことに よります。こういうことの反省に立って,それをバッサリ削ろうとしていま す。削るときには,やはり全体として合理的である,あるいは,世間の常識 にかなっているものはいちいち説明しないということを割り切らないとうま くいきません。そういう問題意識で今進めている中で,ここは少し違うかな と業界の人間として感じています。

(21)

【山下】ありがとうございます。貴重なご意見というか,実務上の問題意識 をお教えいただいたのだと思いますが,これは,恐らく民法の学者が想定し ている情報提供義務と保険業法などで規定しているというか,これから規定 されつつあると言われている説明に関する規定というのが,果たして一緒な のかという問題を,まずクリアしないといけないのではないかと思うのです。

西羽さんがご報告されていた点と絡むお話だと思うのですが,恐らく民法の 人間が考えている情報提供義務というのは,さまざまな情報の下でも,どう いう場合に情報を提供しないといけないかということを個別に判断するとい う意識がかなり強いのだと思います。私がそういう意識で報告を差し上げた ので,それは多分違うのではないかということで言われたのだと思いますが,

ここは私も悩ましいところでございまして,あまり個別化すると実務が回ら ないというのはよくわかるのですけれども,ただ,個別の状況を全く考慮せ ずに情報提供義務を判断して良い話なのかというのが,私の中で悩んでいる ところでございます。恐らく,個別の状況を判断せざるを得ない場合という のは,あるのだと思うのです。私が先ほど使ったロジックというのは,かな り標準化されて,平均的な顧客あるいは平均以下かもしれないような顧客も 含めて,ある程度はわかるように簡素化された説明等を,まずすると。その うえで,個別状況で,明らかにこの人は,まだ理解していないということが わかったときなどに,当該状況の中で説明を尽くしていないということの義 務違反というのが問題になるのではないかとイメージしているわけでござい まして,先ほどのご質問の,説明を簡素化するというほうは,むしろ私にと っては,その前の段階の標準化された約款とかとのセットになった意味での 情報提供なのではないかと理解しているのですが,まだ十分整理できていな いかもしれません。

【村田】もう1点,金岡先生に質問です。約款に法定利率を入れても,契約 当事者しか拘束できません。われわれにとって主要な問題は,自動車保険を 中心とした,賠償事案の被害者に対する損害額の認定における逸失利益の計

(22)

算なので,それに対しては有効性がないと思います。従って,そもそも逸失 利益の計算ということに関して,固定利率で規定を民法の中に入れてほしい というのが一つの考えです。確かに,債権法の中に損害賠償における逸失利 益の計算の利率を書くということは,収まりは悪いのかもしれませんが,一 言申し添えさせていただいて,ご見解を伺いたいと思います。

【金岡】例えば,責任保険契約に基づき被害者に支払う損害賠償額に関して は,被害者との示談もしくは訴訟等において,逸失利益等の賠償額が確定す るため,中間利息控除に用いる利率について,保険約款にあらかじめ規定す ることは難しいとしても,おそらく人身傷害保険契約等,傷害保険契約にお いて逸失利益等の算定基準をあらかじめ保険約款に規定している場合がある かと存じますが,その場合には,中間利息控除に用いる利率について,保険 約款で定めることができるような気がいたしますが,やはりそのような規定 を約款に設けることは困難でしょうか。

【村田】人身傷害保険等がそうなることはおっしゃるとおりです。

【司会】そろそろ時間ですので,これで質疑応答を終わりにしたいと思いま す。債権法改正については,皆さんいろいろご意見がおありだと思いますが,

必要であれば意見を発信していくことが重要だと思います。

今日のシンポジウムがそのような場の一つとして意味があるものであれば 幸いでございます。どうも今日はありがとうございました。

参照

関連したドキュメント

しかしながら、世の中には相当情報がはんらんしておりまして、中には怪しいような情 報もあります。先ほど芳住先生からお話があったのは

○菊地会長 ありがとうござ います。. 私も見ましたけれども、 黒沼先生の感想ど おり、授業科目と してはより分かり

「1 つでも、2 つでも、世界を変えるような 事柄について考えましょう。素晴らしいアイデ

【大塚委員長】 ありがとうございます。.

Schlosser/Coester-Waltjen/Graba [1977] : Peter Schlosser/ Dagmar Coester- Waltjen/Hans-Ulrich Graba, Kommentar zum Gesetz zur Regelung des Rechts der

・毎回、色々なことを考えて改善していくこめっこスタッフのみなさん本当にありがとうございます。続けていくことに意味

学側からより、たくさんの情報 提供してほしいなあと感じて います。講議 まま に関して、うるさ すぎる学生、講議 まま

〇及川緑環境課長 基本的にはご意見として承って、事業者に伝えてまいりたいと考えてお ります。. 〇福永会長