On a Heegaard surface homeomorphism obtained by
bridge position of a knot
岡崎 真也 (大阪市立大学)
∗概 要
本稿では
3
次元球面に埋め込まれた絡み目の橋位置により、その絡 み目に沿って0 −
手術して得られた多様体のヘゴード分解が自然に得 られるということを示す。さらにこのヘゴード分解の同相写像は2
次 元閉曲面の写像類群のいわゆる鈴木生成元により具体的に記述できる ということを示す。1. イントロダクション
M を向き付け可能な連結 3 次元閉多様体とする。任意の向き付け可能な連結 3 次 元閉多様体は 3 次元球面 S
3からある絡み目に沿った 0 − 手術により得られるとい うことが知られている。このことから次のように M に対する橋種数と組み紐種数 が定義できる。 M の橋種数 g
bridge(M ) を S
3から 0 − 手術により M が得られるよう なあらゆる絡み目の橋指数の最小値と定める。同様に M の組み紐種数 g
braid(M ) を S
3から 0 − 手術により M が得られるようなあらゆる絡み目の組み紐指数の最 小値と定める。g
H(M ) を M のヘゴード種数とする。このとき次の定理が成り立 つ。[3]
定理
1.1. 次が成り立つ。
g
H(M) ≤ g
bridge(M ) ≤ g
braid(M ).
定理 1.1 の証明 [3] において S
3の橋位置にある任意の絡み目 L から S
3から L に 沿って 0 − 手術して得られる多様体のヘゴード分解が得られる事を示した。従っ
て g
bridge(χ(L, 0)) と g
braid(χ(L, 0)) はヘゴード分解の同相写像に対してある制限を
加えたのものの種数になっていると思われる。本稿では簡単の為に話を結び目に 限定して、この制限がどのようなものかを考える為に χ(K, 0) のヘゴード分解の 同相写像を閉曲面の写像類群の鈴木生成元を用いて表現する。絡み目の場合も本 稿と同様に示すことができる。以下が本稿の主定理である。
定理
1.2. 任意の条件 ( ∗ ) を満たす S
3の n 橋位置にある結び目 K に対し ρ、 ˜ ω ˜
1、
˜
ρ
12、 ξ ˜
012の積 φ ˜ で K = ˜ φ(κ
n) を満たすものが存在する。φ を φ ˜ |
Fとする。このと き χ(K, 0) はヘゴード分解 (H
1, H
2; φo
κnφ
−1ψ) を持つ。
定理
1.3. 任意の条件 ( ∗ ) を満たす S
3の n − 組み紐 K に対し ρ、 ˜ ω ˜
1、˜ ω
1ξ ˜
120ω ˜
1−1の 積 φ ˜ で K = ˜ φ(κ
n) を満たすものが存在する。φ を φ ˜ |
Fとする。このとき χ(K, 0) は ヘゴード分解 (H
1, H
2; φo
κnφ
−1ψ) を持つ。
∗
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ρ、˜ ˜ ω
1、˜ ρ
12、 ξ ˜
120はハンドルボディの写像類群のいわゆる鈴木生成元と呼ばれる ものである。[4] 条件 ( ∗ ) と結び目 κ
nと同相写像 o
κn、ψ はあとで定義する。
2. 主定理を示すための補題
H
1と H
2を種数が等しいハンドルボディとし、同相写像 f を f : ∂H
1→ ∂H
2で定 める。M に対し 3 組み (H
1, H
2; f) を M のヘゴード分解とする。g
H(M ) を M のヘ ゴード種数とする。B
3を球とし、h
iをハンドル D
2× I とする。(i = 1, 2, . . . , n) h
0i= D
2× { 0 } 、h
1i= D
2× { 1 } とする。H を S
3に埋め込まれた種数 n の絡 まっていないハンドルボディで次を満たすものとする。H = B
3∪ ∪
ni=1
h
iかつ B
3∩ ∪
ni=1
h
i= ∂B
3∩ ∪
ni=1
∂h
i= ∪
ni=1
h
0i∪ ∪
ni=1
h
1i。F を H の境界とする。
M (H) を H の写像類群とし、 M (F ) を F の写像類群とする。 ρ、˜ ˜ ω
1、˜ τ
1、 ρ ˜
12、 θ ˜
12をそれぞれ [4] で定義されている M (H) の元とする。ρ、ω
1、τ
1、ρ
12、θ
12、µ
1をそれぞれ [4] で ρ、 ˙ ω ˙
1、 τ ˙
1、 ρ ˙
12、 θ ˙
12、µ
1として定義されている M (F ) の元とす る。これらが鈴木生成元と呼ばれるものである。このとき ρ、ω
1、τ
1、ρ
12、θ
12は ρ、˜ ˜ ω
1、˜ τ
1、˜ ρ
12、 θ ˜
12の F への制限である。これらの同相写像がどのようなもので あるかは結び目の数学 III の HP にある筆者の講演スライドの絵を参考されたい。
以下の定理が [4] にて鈴木により証明されている。
定理
2.1. [4] 写像類群 M (F ) は ρ、τ
1、θ
12、µ
1により生成される。
M (F ) の元 ξ
120を次で定める。
ξ
120= ρµ
1ρ
−1θ
12ρµ
−11ρ
−1以下の等式が成り立つ。
ω
1= µ
21ρ
12= θ
12−1ρµ
−11ρ
−1µ
−11θ
12−1ρµ
−11ρ
−1µ
−11θ
−121µ
21補題
2.2. S
3の n 橋位置にある絡み目 L に対して次を満たすような S
3のヘゴード 分解 (H
1, H
2; ψ) が存在する。
L ⊂ intH
2h
i∩ L = { 0 } × I
B
23∩ L は n 本からなる自明タングル
( ∗ )
証明 橋の数が
n なので S
3の中に次を満たす 2 次元球面 S が取れる。S は S
3を 2
つの球 B
1と B
2に B
1∩ B
2= S かつ B
i∩ L (i = 1, 2) が n 本の自明な曲線となる
ように分解する。H
1= B
1∪ N (L)、H
2= B
2− N (L) とする。ここで H
1と H
2は
種数 n のハンドルボディ。 ψ を B
1と B
2の張り合わせから ∂H
1= ∂H
2へのスラビ
ライゼーションにより得られる同相写像とする。すると (H
1, H
2; ψ) が S
3の種数
n のヘゴード分解となる。
( ∗ ) を満たす結び目 κ
nを次で定義する。κ
nは H の内部に含まれ、κ
n∩ h
iは h
iの核となり、κ
n∩ B
3は B
3の中で n 本の曲線からなる 0 タングルとなっている。
結び目 κ
∗nを次を満たすものとする。κ
∗nは F 上にあり、H の中のアイソトピー { i
k} (0 ≤ k ≤ 1) で i
0= id
κnかつ κ
∗n= i
1(κ
n) ⊂ F を満たすものが存在し、
H ∈ R
3∈ S
3に対し正射影 p : R
3→ R
2で p(κ
n) = p(κ
∗n) を満たすものが存在 する。
補題
2.3. 任意の ( ∗ ) を満たす n 橋位置にある結び目 K に対して、˜ ρ、˜ ω
1、˜ ρ
12、 ξ ˜
120の積 φ ˜ で K = ˜ φ(κ
n) を満たすものが存在する。
証明 任意の
K に対して H に ρ、 ˜ ω ˜
1、 ρ ˜
12、 ξ ˜
120を施すことによって κ
nが得られ ることを示す。H = B
3∪ ∪
ni=1
h
iの B
3は S
2× I と B
03の和で S
2× I ∩ B
03= S
2× { 0 } ∩ ∂B
03= S
2を満たすものと思える。任意の ( ∗ ) を満たす n 橋位置にある 結び目 K は H の中で次の位置にあると思ってよい。K ∪ S
2× I は 2n 本からなる 組み紐で K ∪ S
2× { 1 } と K ∪ S
2× { 0 } は組み紐の端点で K ∪ B
03は n 本の曲線 からなる 0 タングル。
K ∪ ∂B
03内の任意の2点 p
iと p
j(i, j ∈ { 1, 2, . . . , n } , i < j) に対して、 B
3内のアイ ソトピー ι
±ijを p
iと p
jを入れ換えるものとする。すなわちアイソトピー ι
+ijは 2n 本 の組み紐に σ
iσ
i+1· · · σ
j(σ
iσ
i+1· · · σ
j)
−1を加えて (σ
iσ
i+1· · · σ
j)
−1を B
03内に押し込 む変形と一致し、アイソトピーι
−ijは 2n 本の組み紐に(σ
iσ
i+1· · · σ
j)
−1σ
iσ
i+1· · · σ
jを加えて σ
iσ
i+1· · · σ
jを B
03内に押し込む変形と一致する。ι
±ijを施すことにより B
3を K ∪ S
2× I は 2n 本の純組み紐で K ∪ B
03は互いに絡まらない n 本の曲線か らなるタングルとなるように変形できる。
純組み紐群は 2 本の紐 l
iと l
j(i, j ∈ { 1, 2, . . . , n } , i < j) との間の ± 1 フルツイス トにより生成されるということが知られている。l
iと l
jとの間の ± 1 フルツイスト は H に対して ρ、˜ ˜ ω
1、 ρ ˜
12、 ξ ˜
120の積を施すことにより解消できる。従って S
2× I 内の 2n 本の純組み紐は自明にすることができる。こうして得られた H 内の結び 目を K
0とする。S
2× I 内の 2n 本の組み紐を ι
±ijを用いて変形する際、ι
+ijか ι
−ijか をうまく選ぶことによって K
0を自明な結び目とできる。よって K
0は ( ∗ ) を満た す自明な結び目としてよい。H 内の自明な結び目は ρ、 ˜ ω ˜
1、 ρ ˜
12の積で κ
nに変形 できる。よって補題 2.3 が成立する。
補題
2.4. 任意の ( ∗ ) を満たす n 組み紐結び目 K に対して、˜ ρ、˜ ω
1、˜ ω
1ξ ˜
120ω ˜
1−1の積 φ ˜ で K = ˜ φ(κ
n) を満たすものが存在する。
証明 任意の
K に対して H に ρ、˜ ˜ ω
1、˜ ω
1ξ ˜
012ω ˜
1−1を施すことによって κ
nが得られ ることを示す。H を h
iをスライドさせることにより次のような形に変形できる。
この変形を ι で表す。K ∪ B
3は K ∪ h
0iが i 番目の紐の上端で K ∪ h
1iが i 番目の紐
の下端であるような n 本からなる組み紐。補題 2.3 の証明と同様に K は n 本から
なる純組み紐と閉じたものが自明結び目となるような組み紐の積と思える。さら
にこの n 本からなる純組み紐は ι
−1ρι、ι ˜
−1ρ ˜
12ι、ι
−1ω ˜
1ξ ˜
120ω ˜
−11ι を用いて自明なるよ うに変形にできる。よって閉じることにより ( ∗ ) を満たす自明な結び目となる組 み紐が K から得られる。この自明な結び目は ρ、 ˜ ρ ˜
12、˜ ω
1ξ ˜
120ω ˜
1−1により κ
nへ変形 できる。よって補題 2.4 が成立する。
例
2.5. K を ( ∗ ) を満たす三葉結び目とする。このとき K = ˜ ξ
012ω ˜
−11(κ
2)。
∆
cを F 上の単純閉曲線 c に沿ったデーンツイストとする。F の自身への同相写 像 o
κnを ∆
κ∗n
τ
1−1で定める。
H から ( ∗ ) を満たす結び目に沿った 0 − 手術で得られる多様体はまた種数 n のハ ンドルボディである。従って H の ( ∗ ) を満たす結び目に沿った 0 − 手術により H の自身への同相写像とその制限として F の自身への同相写像が得られる。このと き次の補題が成り立つ。
補題
2.6. o
κnは H の κ
nに沿った 0 − 手術により得られる H の自身への同相写像 の F への制限である。
証明
H は B
3と κ
nを核とするソリッドトーラス T が n 枚のディスク D
i(i = 1, 2, . . . , n) で交わっていると思える。T の κ
nに沿った 0 − 手術を考える。 T の核に 沿った 0 − 手術で得られる多様体はまたソリッドトーラスである。これを T
0で表 す。m を ∂T のメリディアンとする。さらに l を ∂T のプリファードロンジチュー ドとする。m
0を ∂T
0のメリディアンとする。さらに l
0を ∂T
0のプリファードロン ジチュードとする。同相写像 f : T → T
0を T を核に沿って 0 − 手術して得られる 同相写像のひとつとして次で定める。f により l は m
0にうつり、m は ∂T
0上の単 純閉曲線 m
0−1l
0−1へうつり f |
Di= id
Diである。f の ∂T への制限は ∆
κ∗n
τ
1−1と一 致する。よって f |
∂T= o
κn|
∂T。T
0と B
3を T
0∪ B
3= ∪
ni=1
D
iとなるように貼り合 わせると種数 n のハンドルボディが得られる。同相写像 f
0: H → H
0を f
0|
T= f かつ f
0|
B3= id
B3で定めると、o
κn= f
0|
Fである。よって補題 2.6 が成り立つ。
o
Kを H から K = ˜ φ(κ
n) に沿った 0 − 手術により得られる F の自身への同相写 像とする。K
∗を F 上の結び目 φ(κ
∗n) で定める。ここで φ は φ ˜ の F 上への制限。
φ(κ ˜
n) と φ(κ
∗n) の絡み数を n
Kで表す。このとき次が成り立つ。
補題
2.7. 以下の等式が成り立つ。
o
Kτ
1nK= ∆
K∗τ
1−1証明 証明は補題
2.6 と同様である。H は B
3と K を核とする絡まったソリッド
トーラス T が n 枚のディスク D
iで交わっていると思える。H に τ
1nlを施すこと
は T にメリディアンディスク D
mに沿ったデーンツイスト ∆
Dmを n
K回施すこと
に等しい。T から K に沿った 0 − 手術で得られる多様体はまた同じ絡み方をした
ソリッドトーラスである。これを T
0とおく。m を ∂T のメリディアンとする。さ
らに l を ∂T のプリファードロンジチュードとする。m
0を ∂T
0のメリディアンと する。さらに l
0を ∂T
0のプリファードロンジチュードとする。T から K に沿った 0 − 手術によって定まる同相写像のひとつ f : T → T
0を次で定める。f は l を m
0にうつし、m を T
0の単純閉曲線 m
0nK+1l
0へうつし f |
Di= id
Diである。明らかに f ∆
Dm= o
Kτ
1nK|
Tである。f ∆
Dmの ∂T への制限は ∂T に m 沿ったデーンツイス トを施した後に K
∗に沿ってデーンツイストして得られる同相写像である。よっ て f∆
Dm= ∆
K∗τ
1−1|
Tである。T
0と B
3を貼り合わせることで新たな種数 n のハ ンドルボディH
0が得られる。H
0は H と一致する。f∆
Dmを H から H
0への同相 写像と思えば、φ
Kτ
1nK= f ∆
Dm= ∆
K∗τ
1−1: H → H
0が得られる。従って求まる 補題が得られる。
3. 主定理の証明
証明
o
γ(K)τ
1nl= φo
κnφ
−1を示す。K = κ
nのときは明らか。従って任意の γ ∈ { ρ, ω
1, ρ
12, ξ
120} に対して ∆
K∗τ
1−1= γφo
κnφ
−1γ
−1が示せればよい。ρ に対して。
∆
ρ(γ(K∗))τ
1−1と ργφo
κnφ
−1γ
−1ρ
−1で F のメリディアンの ψ による像 A がどのよう にうつるかを比べると、∆
ρ(K∗)τ
1−1(A) と ρφo
κnφ
−1ρ
−1(A) は一致していることが 分かる。ω
1、ρ
12、ξ
120に対しても同様。従って定理が成り立つ。
例