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台湾における変額保険の導入と展開

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台湾における変額保険の導入と展開

曽 耀 鋒

■アブストラクト

台湾の生保市場は他の国・地域より,比較的遅れて,2000年から変額保険 の販売を始めた。導入してからわずか10年が経ったに過ぎないが,台湾での 変額保険は,目覚ましい成長を遂げた。2007年の台湾生保の新規契約保険料 収入の内訳で,変額保険の割合は5割強を占めた。本稿は台湾生保市場にお ける主力商品の変遷を踏まえたうえで,変額保険の導入のきっかけとその理 由について論じる。銀行窓販の開始および税制優遇などが変額保険の販売に 有利な影響を与えたと考えられるが,急激な市場拡大のために,変額保険の 販売をめぐるトラブルや不祥事も相次いでいる。今後,変額保険が持続的な 成長と発展を続けるためには,販売にかかわるルールと規制をより明確する ことが不可欠であると考える。台湾における生保に関する税制改革が,変額 保険そのものに及ばす影響についても継続して注視すべきであろう。

■キーワード

変額保険,銀行窓販,海外保険事情

1. はじめに

一つの国・地域の保険業の発展を図る際,いくつかの指標を用いることが できる。その一つが,保険普及率 である。2000年から台湾における保険普 及率は長く世界の上位を占めており,新興工業国の中で目覚しい成長を遂げ

/平成23年9月8日原稿受領。

1)

GDP(国内総生産)に対する保険料の割合。

(2)

た。

台湾生保市場において保険販売数は右肩上がりで,新興工業国において成 功例と言われている。しかし,近年世界の経済情勢の不安定および市場金利 が徐々に下がっているため,保険契約における実際の運用利回りが予定利率 を大きく下回る,いわゆる 逆ざや が台湾生保業界の経営を大きく圧迫し ている。また,台湾国内において金融持株会社が相次いで設立され,各社の 競争が激しくなった。その結果,保険会社の統合や合併が促進され,生保業 界は今まで持ってきた販売チャンネルで厳しい現実に直面している。このよ うな二つの大きな経営環境の変化にさらされている中,すべての台湾生保会 社は,積極的に新型商品を設計し,新たな販売チャネルを開拓しようとして いる。

近年,新たな保険商品の主力となっているのが,変額保険である。変額保 険とは,大きな特徴として,金利変動リスクを契約者に移転する特性を持つ。

図1:歴年台湾生保市場の保険普及率

単位:%

出典:Swiss Reが出版する各年度の

Sigma(2001年第6期,2002年第6期,2003

年第8期,2004年第3期,2005年第2期,2006年第5期,2007年第4期,

2008年第3期,2009年第3期,2010年第2期)から整理した。

(3)

好況の場合,特別勘定の資産の運用実績が上がり,保険金額が増加する。不 況の場合,生保会社は金利に対し保証をしないため,予定利率と実際の運用 利回りとの差による衝撃を軽減することができる。変額保険のこの特性から,

台湾の生保業界は変額保険の今後の発展に大きく期待しており,関連商品を 開発,販売に努力を続けている。

本稿は近年に台湾の生保商品の変遷を踏まえて変額保険の歴史的な意味を 吟味した上で,現在の変額保険の種類,市場占有率,および必要な販売資格 を紹介する。その後,変額保険がどうして台湾市場において高い割合を占め るに至ったのか,その理由と,それによってもたらされた各種のトラブルに ついて論じてみる。これらにより,現在の台湾における変額保険の販売動向 について,読者に全体的な概念を理解してもらえるであろう。

2. 変額保険の販売

台湾における変額保険の導入は2000年以降のことである。以下では,まず 2000年以前の主力生保商品の変遷を簡単に紹介し,その上で変額保険の導入 に至った背景を描き込みたい。

⑴ 変額保険の登場前(2000年前)

①短期生存保険から養老保険へ(1962年〜1972年)

日本統治時代の台湾では,日本本土に本社を持つ生保会社が多数出店し,

台湾資本の生保会社は存在しなかった。1945年終戦をきっかけに,日本の生 保会社の在台湾支店はすべて日本本土へ引揚げた。そのため,台湾の生保市 場は,日本の生保会社の諸支店を接収した上で改組された台湾人寿,および 中国大陸から渡ってきた中央人寿しか営業しておらず,1946年から1961年ま で台湾の生保市場は,この二つの公営会社に独占されたため競争が起きず,

市場の成長が遅れた。1962年になって,台湾政府は新たな生保会社の設立を 認め,8社の国内生保会社が新規に市場に参入した。しかし当時は,長く公 営であったことや,国民所得がまだ低かったこと,生保会社の創業からまも

(4)

なくて経験不足であったこと,会社のブランドや特色がまだ確立されていな かったなど,消費者は生保業界に対し依然不信感を抱いたままであった。そ のため,各社は 生保の貯蓄性 をアピールするという販売戦略を策定し,

3年間から6年間までの短期生存保険を商品の主力に注力した。

ところが,貯蓄性が高い生存保険は,その満期金の予定利率が市場金利よ り低く,さらに被保険者が亡くなっても,十分な保険保障を得ることができ ない。そのため,トラブルが続出し,主務官庁はこの種の短期生存保険は,

本来の保険保障という機能を持たないと判断し,契約者利益保護の観点から,

1967年1月より5年間以下の短期生存保険の販売を各生保会社に禁じた。

ちょうど1960年代後半から,世界経済が好況に転じ,台湾は海外への輸出 が大幅に成長し急速な経済発展を遂げ,それにともない国民所得も徐々に増 加した。結果,台湾では経済の形態が農業中心から労働密集型へ移行し,働 く場所が大都市圏に集中して,地方から都市部に移り住む人々が激増した。

これまでの大家族制度は崩壊し,核家族化した世帯個々での生活保障の必要 性が一般的に認知されるようになった。生保会社はこの社会経済的な変化を 踏まえ,養老保険を開発し,主力商品として販売を促進した。

②傷害・災害割増型から配当付型へ(1973年〜1985年)

1973年10月に第一次石油危機が発生し,原油の供給逼迫と価格高騰によっ て,世界経済が混乱した。台湾は資源の殆どを海外からの輸入に依存してい たため,インフレ昻進,物価上昇など経済と国民生活は深刻な影響を受けた。

石油危機による衝撃は,台湾の生保会社の契約業務にも大きな打撃をもたら した。

石油危機がもたらした不況にあえぐなか,生保業界は社会の工業化にとも ない,様々な傷害事故が起きていることに着目し,そういったトラブルに対 応する新たな保険商品を開発することに力を注いだ。新しい主力商品として,

インフレに配慮し,不慮の事故による死亡・障害状態に備える傷害・災害割 増特約が人気を集めるようになった。これらは,交通事故,火災,航空機墜 落による死亡,または所定の高度障害状態になったとき,主契約の死亡保険

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金に加えて割増保険金が支払われることによって,特定事故のリスクに対処 するものである。

1978年1月に主務官庁は,市場金利の上昇により利差益が生じることを考 え,保険契約の配当に関する規則を公布し,予定利率が8%より低くなった 場合,契約者配当金を分配すべきと定めた。1979年年末,第二次石油危機が 発生したため,物価が再び急上昇し,台湾経済は深刻なインフレに直面した。

そのため,インフレに対応できる商品を開発した。加えて生保会社は,主務 官庁による保険契約の配当規則に従い,契約者配当金を配分するため,この 時期の保険商品には,主契約に配当付増額特約を付加している商品が多かっ た。

③終身保険から医療保険へ(1986年〜1999年)

1987年台湾と米国の間に貿易協定が結ばれた結果,自国の保険商品を売り 込みたいアメリカからの圧力に対し,米国系の生保会社の新規参入を許可し た。これによって,年間2社の新規支店開設を認めた。米国系の生保会社の 特徴の一つとして,保険の保障性を重視することがあげられる。米国系の生 保会社の進出に加え,この時期の台湾において一般の人々の間で,保険の保 障機能についての知識が広く受け入れられるようになった。それに伴い,養 老保険のニーズが徐々に低下していった。養老保険による既存契約件数の割 合は,1986年の92.4%から1998年の49.8%まで減った。養老保険の新契約件 数の割合も1986年の90.7%から1998年の37.6%までに減少した。それに対し て,同時期の終身保険は,既存契約件数の割合が7.2%から49.3%に増加,

加えて新契約件数の割合は1986年の9.2%から61.9%まで上昇した。保険の 保障機能という認識が消費者に広がった結果と言える 。

1990年代後半以降,保険会社の新規設立が全面的に解禁されたことによっ て,8社の本国籍の生保会社が新たに設立され,同時に多数の外国籍の生保 会社が台湾に進出した。新規参入の生保各社は市場シェアを拡大するために,

既存の商品に加え,消費者のニーズに合わせた新商品の開発も手掛けた。例 2) 秦賢次, 瑞松(2008),343‑344頁。

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えば,がん,脳卒中,慢性腎不全,急性心筋梗塞,肢体喪失,主要臓器移植,

冠動脈バイパスといった7種の特定の病気にかかった場合に対応する重大疾 病保険がデビューし,消費者に歓迎された。これはその後の多くの生保会社 の熱売商品となった。

1992年台湾保険法が修正され,年金保険制度がスタートした。近年,台湾 は急速な高齢化が進行しており,長期介護保険,年金保険,終身医療保険な ど老後に向けた保険商品も続いて開発された。

⑵ 変額保険の登場(2000年以降)

2000年後,経済発展を促進するため,台湾の中央銀行(日本銀行に相当す る)は14回にわたって金利を下げ,預貯金金利も連動して下がった (図2 を参照)。これにより生保会社が高い予定利率に達成する見通しはなくなっ

3) 賴本隊(2002),69‑70頁。

図2:台湾における責任準備金の予定利率,2年期の定期預金利率,および 10年期の国債利率の推移

:責任準備金の予定利率; :10年期の国債利率; :2年期の定期預 金利率。

出典:台湾の中央銀行のホームページ

http:

//

www.cbc.gov.tw

/

mp

1

.htmlから整

理した。

(7)

たので,主務官庁はその衝撃を緩和し,台湾生保市場の国際化および自由化 を円滑にするために,保険法施行細則を修正した。 人保険の責任準備金に 基づく予定利率は,年間4%より低く,または10%より高く設定してはいけ ない。 という規定を, 各種の保険の責任準備金を設定する際に,それに基 づく予定利率は,経済情勢および保険種類によって定める。 と改定した。

これによって,責任準備金に基づく予定利率の上限と下限は,事実上解除さ れたが,生保会社の利差損リスクはまだ続いている。

1999年9月米国駐台商会(American Chamber of Commerce in Taipei;

AmCham)は,毎年発行する 台湾白書 (1999 AmCham  White Paper

) の中に,生保業界のソルベンシー危機への解決策を提案した。その一つが,

変額保険の導入である。生保会社は長期の商品を販売しており,数年前の予 定利率に基づいて二,三十年に渡る保険料の計算をするゆえに,絶えず変化 する利率が低下した際は,実際の利回りを予定利率に達成させることは非常 に難しいことになる。米国駐台商会は生保業界が変額保険などの資産運用に 基づく商品を導入すべきと提案した。それらの商品は予定利率を保証しない ため,生保会社はより有効的に資産を運用し,ソルベンシーから免れること ができ,さらに消費者はより多くの商品を選択するメリットを受けることが できる。

2000年米国駐台商会は台湾の保険主務官庁を訪問し,台湾の低利環境に生 保会社が対応できるようにするために,海外で長く販売された実績のある変 額保険を台湾で販売できように要請した。さらに,2000年9月に出版する台 湾白書(2000

AmCham  White Paper

)の中に,再び変額保険の台湾導入 を提言した。主務官庁はその提案を支持したが,当時の台湾において公布さ れていた法令上の制限によって,依然として生保会社は,直接に変額保険の 設計や販売をすることなどができなかった。そのため,法令の改正前に,指 数連動型商品の販売に着手するよう,と主務官庁は生保業界に勧奨した。こ の背景がもととなって,台湾初の指数連動型商品に属する据置年金保険商品

(8)

が,2000年末より販売を開始した 。

その後,主務官庁は米国駐台商会の協力を得て,指数連動型商品向けの監 督方針を制定した。しかし,他の国々で販売されている変額保険と比べると,

台湾の保険法によって指数連動型商品の投資対象は限られていたため,米国 駐台商会は本格的な変額保険の販売に遂行できるよう,主務官庁に保険法の 改正を求めた。法令上の制限を緩和するために,2001年立法院の立法委員

(日本の国会議員に相当する。)は,保険法の改正を提案した。2001年7月に 立法院は,保険法の改正案を通過し,変額保険に関する条文を新設した。そ れによって,台湾での変額保険の販売は,初めて法律上の根拠を備えること ができた。

⑶ 変額保険の販売資格

変額保険は一般の生保商品より商品の内容が複雑と考えられているため,

台湾では特定の資格を取得した者しか販売できない規定を設けた。保険業外 務員管理規則によれば,外務員が販売しうる保険商品は,外務員の所属保険 会社によって決まる。しかし外務員本人が,主務官庁の定める特定の資格を 取得した場合,販売できる商品はその限りではない。主務官庁はその規定に 基づいて,変額保険外務員資格試験に合格した者のみ変額保険を販売できる と定めた。そして,変額保険の研修および資格試験の運営に関して,2001年 から財団法人保険事業発展センター(Taiwan Insurance Institute)に委託 した。2011年該当試験の内容については,表1を参照のこと。

4) それは宏利人寿(Manulife)が販売したものである。

(9)

⑷ 変額保険の販売成績

変額保険は人保険の一つに属するが,人保険の種類については,台湾保険 法第13条によると,生命保険,医療保険,傷害保険および年金保険という4 種類に分けられる。変額保険は上述の生命保険と年金保険にのみ当てはまる。

主務官庁が公布した人保険商品の審査に関する注意事項によれば,生命保険 および年金保険は伝統型と変額型に分けられるため,事実上,台湾では変額 生命保険および変額年金保険という2種類しか存在しない。また,同注意事 項は変額保険の商品名について,変額生命保険の場合は,

○○○○変額生

命保険 ,

○○○○変額ユニバーサル生命保険 ,または ○○○○ユニッ

トリンク投資保険 を称するが,変額年金保険の場合は,

○○○○変額年

金保険 を称すべきと定める。変額保険の商品名が上述の例に当てはまらな い場合,該当商品を審査に提出する際に,主務官庁にその理由について明記 すべきと定めている。したがって,台湾生保市場における変額保険は,原則 的に上述の4つが商品の名前についている。

2010年までに,台湾において本国籍の生保会社と外国籍の生保会社,合計 26社が変額保険を販売しており,主務官庁の販売許可を得た変額保険商品は,

171個に達した 。内訳として,変額生命保険は26個,変額ユニバーサル生 5) 林佳怡(2009),39‑42頁。

出典:㈶ 保 険 事 業 発 展 セ ン タ ー の ホ ー ム ペ ー ジ

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//

www.tii.org.tw

/から整理した。

⑤ 資産管理

④ 債券,証券の評価分析

③ 投資論

② 金融システムの概要

① 変額保険の概要

100分 50分

選択問題,100問 選択問題,50問

試験問題 試験時間

科目

表1:変額保険外務員資格試験

(10)

命保険は71個,ユニットリンク投資保険は10個,変額年金保険は64個となっ ている。

表2によれば,2002年保険法を改正し,変額保険の導入を認めてから,変 額保険の販売は明らかな成長の傾向を示している。変額保険の新規契約保険 料収入の占める率は,2004年に初めて30%を突破し,2007年に50%を超えた が,2008年には20.06%までに減少した。さらに2009年には世界金融危機の 影響により,変額保険にリンクする投資信託の報酬が大幅に下落し,変額保 険への購入意欲が著しく低下したため,新規契約保険料収入の占める率は 6.62%までに減ったが,2010年には11.99%までに回復した。

⑸ 変額保険の販売チャネル

変額保険の好調について,銀行の窓口による販売が大きく貢献していると 表2:歴年の変額保険の保険料収入

年度

変額保険新規 契約保険料収

変額保険既存 契約保険料収

新規契約保険 料総収入

既存契約保険 料総収入

変額保険新規 契約保険料収 入の占率

変額保険既存 契約保険料収 入の占率

0.80% 6.23% 11.25% 15.78% 20.20% 29.01% 15.64% 9.03% 8.37% 2.66%

20.09% 30.71% 36.99% 44.97% 54.18% 20.06% 6.62% 11.99% 8,893

11,327 13,085 14,578 15,637 18,751 19,188 20,066 23,128 2,635

3,443 4,462 5,409 5,264 7,518 8,552 9,215 6,315 71

705 1,472 2,301 3,158 5,440 3,002 1,812 1,935 70

6,92 1,370 2,001 2,367 4,073 1,716 610 757 2002

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

単位:億台湾ドル

出典:台湾生命保険協会のホームページ

http:

//

www.lia-roc.org.tw

/から整理し た。

(11)

考えられる。低利の経済環境により,銀行の利差益が減り,銀行は販売手数 料を確実に得られる保険販売に力を注ぎ始めた。2009年8月までには,台湾 の37社の金融機関は,子会社の形で保険代理店または保険ブローカーを開設 した 。大量の銀行員が保険販売に参入したため,銀行窓販の成績は急成長 しており,銀行窓販は台湾生保業界のもっとも重要な販売チャネルとなった。

その中でも,個人の資産づくりの一環として推奨・販売される変額保険は,

銀行窓販にとっても主力商品となり,新規契約の保険料収入に大きく貢献し た。

2004年から2007年までの台湾の某大手銀行の例によれば,変額保険による 保険料収入は,同銀行の保険料収入の7割を占めた 。さらに,台湾の生保 業界において,銀行窓販による新規契約の保険料収入は,2008年初めて保険 会社の外務員による同収入を上回り,全体に占める割合は42.9%に達した。

2009年には世界金融危機の発生により,変額保険の売上は減ったが,銀行は 主力商品を貯蓄性が高い商品に移転したため,銀行窓販による新規契約保険 料収入の占める率は減少しなかった。台湾生命保険協会(The Life Insur-

ance Association of the Republic of China

)の 統 計 デ ー タ に よ れ ば,

2010年生保業界の新規契約の保険料収入は,1兆6,109.8億台湾ドル(約4 兆8,329.4億円),生保会社の外務員チャネルからは3,729.9億台湾ドル(約1 兆1,189.7億円)で,全体の32.1%を占めた。それに対して,銀行窓販のチ ャネルからは7,582.5億台湾ドル(約2兆2,747.5億円)で,全体の65.3%に も達した(図3を参照)。銀行窓販において,伝統型の個人年金,生命保険 および変額保険の販売成績は,すでに生保会社の外務員チャネルを上回った。

生保会社の外務員チャネルは個人傷害および医療保険のみにおいて優位を維 持している 。

6) 銀行窓販の新傾向 經濟日報 ,2009年8月6日,A19面。

7) 変額型商品,伝統型より好調 經濟日報 ,2009年5月27日,B4面。

8) 保険業,銀行窓販に依存 經濟日報 ,2010年1月5日,A14面。

(12)

⑹ 変額保険の税制優遇

変額保険がその販売契約を大きく伸ばしたきっかけとして,銀行窓販によ る貢献のほかに,税制優遇があったことも要因と考えられる。変額保険は人 保険に属するため,原則上,人保険向けの税制優遇も適用される。税制上の 優遇について,主に以下の2項を取り上げる。

①所得税に関する生命保険料控除

台湾の所得税法によると,納税義務者,配偶者または扶養する直系親族に よる人保険,労災保険,国民年金,軍人保険,および公務員・教師保険の保 険料について,一人ごとに,2万4,000台湾ドル(約7万2,000日本円)まで 控除の対象とすることができる。さらに,国民健康保険の保険料はその限り ではない。日本における生命保険料控除の控除額は,生命保険料と個人年金 保険料についてそれぞれの計算式に当てはめて計算する。この方法で計算し た金額の合計額が生命保険料控除額となる。台湾の規定は,納税義務者の一 世帯内の人数によって計算されるため,日本における所得税の生命保険料控 除より控除額が多いと考えられる。

図3:銀行窓販による新規契約の保険料収入の占める率

単位:%

出典:台湾生命保険協会のホームページ

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www.lia-roc.org.tw

/から整理し た。

(13)

また,営業法人が契約者となり,そこで働いている従業員を被保険者とし て支払った保険料は,法人のコストの額に算入することができるが,算入さ れる保険料は,保険金受取人が,被保険者の従業員またはその遺族の場合に 限られている。同保険料は月2,000台湾ドル(約6,000円)以内の場合,該当 従業員に対する給与とならず,超過部分のみ給与として認め,所得申告が必 要となる。

②保険金が相続税の課税対象外

保険金の給付について,台湾の所得税は生存保険金を課税の対象外と定め るが,それは保険金受取人が自然人である場合に限られている。保険金受取 人が法人の場合,課税の対象となる。また,相続および贈与税法によれば,

保険金受取人を指定した死亡保険金は,課税遺産総額に計上されないため,

納付税額に含まれない。この規定の立法理由は,保険の保障機能を活用し,

人々の経済生活の安定を図るという目的であるが,生保会社はこれらの税制 優遇を濫用して,相続税対策が必要となる資産家の消費者に死亡保険の加入 を勧誘する問題も浮かび上がっている。

租税優遇策は産業誘致・育成・発展等のために必要であるとしながらも,

台湾における生命保険に関する控除額が少なくないため,これら優遇制度に は各種問題も生じている。そこで,台湾では保険給付に関する税制上の優遇 措置が改正され,2006年1月1日に 所得基本税額条例 が施行された。本 来の税制優遇に基づく税の計算の一部を修正し,新たに税を徴収する考え方 が,この所得基本税額(ミニマムタックス制度)の概念である。当該制度に 基づく税額の計算は以下のとおり,個人の基本税額=基本所得額 ×税率 。 詳しく説明すると,個人の基本税額=【〔納税義務者,配偶者および扶養家族 の課税所得+納税義務者,配偶者および扶養家族の減免税対象所得〕−600万 台湾ドル(約1,800万円)控除額】×20

%。

したがって,所得基本税額条例の施行により,前述の優遇措置は,2006年 1月1日前に締結した保険契約に限定される。2006年1月1日以降,締結し た保険契約について,生命保険および年金保険における保険金受取人が契約

(14)

者・被保険者以外の人の場合,保険金受取人が受領した生存保険金は,保険 金受取人の基本所得額の一部と見なされ,課税の対象となる。死亡保険金に ついては,3,000万台湾ドル(約9,000万円)以下の部分は,基本所得額と見 なさず,課税の対象とならない。

一方,変額保険は満期保険金の額は,株式や債券を中心に資産を運用する 特別勘定に応じて変動するもので,一般の保険商品と異なることがある。変 額保険の特別勘定にかかわる課税問題について,台湾における各官庁の見解 が分かれ,論争が起きた。保険の主務官庁は変額保険の発展のために,課税 対象外にすべきと論じるが,税制の主務官庁は,政府の税源を確保するため に,課税すべきと主張している。2011年現在,所得税に関する暫定措置とし て,2010年1月1日以降締結された場合,変額保険の特別勘定による収益は,

保険会社のコストおよび必要な経費を差し引いた金額で契約者の当該年度の 所得に計上する旨を定める。当該年度とは,変額保険の特別勘定がリンクし た投資信託は利益配当を行う年,または契約者は一部解約を行う年をいう。

それに対しては,相続税上の暫定措置として,契約締結当初の動機,年齢,

保険金額,健康状況など総合的に判断し,課税の対象になるか否かを税務機 関がケースバイケースで決めることとしている 。

⑺ 変額保険を巡るトラブル

変額保険は一般の保険商品と異なって,特別勘定を設けてファンドや債券 に連結しているため,販売に関するトラブルが起きやすい。特に,変額保険 は,国内外の株式・債券等で運用しており,運用実績が保険金額や積立金 額・将来の年金額などの増減につながるため,株価や債券価格の下落,為替 の変動により,積立金額,解約返戻金は払込保険料を下回ることがあるとい う特性を有する。それにもかかわらず,外務員はこのリスクに関する説明を 契約者に対して行うのを怠り,契約者に誤解させたまま契約させ,結果,

様々なトラブルが起きている。毎年保険主務官庁が,官庁および㈶保険事業 9) 相続税上の変額保険の課税 経済日報 ,2011年3月10日,B1版。

(15)

発展センターの相談窓口に寄せられた苦情を 保険苦情受付件数調べ とい う名で,統計データを公開している。同統計データによれば,2010年生命保 険業の苦情件数は3,092件であり,そのうち,保険契約に関する苦情の発生 原因について項目別に見ると,募集をめぐるものが一番多くなっている。苦 情の件数は,伝統型の保険商品が1位,変額保険が2位となるが,既存契約 件数の占める率を考えると,変額保険をめぐる苦情の発生率が圧倒的に上位 となる。苦情の内容として,一般商品からの契約乗り換え,契約に関する諸 費用,特別勘定の運用リスクなど,外務員が募集する際に,十分に説明義務 を果たしていなかったことによるものがほとんどである。

3. 結びに代えて

台湾における変額保険の導入はまだ長くないが,短時間に相当な数の契約 が締結されたため,台湾生保業界における21世紀最初の10年の主力商品とい えるであろう。変額保険の発展のプロセスを見れば,同商品の発展はかつて 台湾生保市場で登場した主力商品と同じく,生保会社の積極的な参入,およ び主務官庁の監督態勢に大きく起因すると考えられる。生保会社が新たに変 額保険という商品の販売を始めるに至った主な理由として,生保会社が伝統 型の生保商品による逆ざやを軽減するため,逆ざやが生じにくい新型の商品 を求めたところにある。その一方,米国駐台商会が主務官庁に与えた影響も 無視できない。台湾は国際政治の中で特殊な立場にある。その中で,米国は 比較的強い影響力を台湾に持ち,それゆえ米国駐台商会のロビー活動が台湾 主務官庁の政策に影響を及ぼしたことは想像に難くない。台湾における変額 保険の販売は,外国籍の生保会社から始まったが,本国籍の生保会社もその 作法を模倣して販売を始めた。変額保険の登場プロセスは,かつての台湾市 場における新しい保険商品の登場例と類似しており,つまるところ,最初に 販売したのは外国籍の生保会社で,本国籍の生保会社はその後を辿ったこと になる。外国籍の生保会社の台湾進出が解禁されたあと,こうした傾向はよ く見られる現象である。

(16)

また,変額保険の発達によって,多くの問題にも直面している。例えば,

変額保険の課税問題について,当局の見解が分かれている。仮に税制優遇策 がなくなった場合,変額保険はこうした急成長を維持できるか否か,生保業 界の関心を集めている。一方,変額保険の商品構造は一般の商品より複雑な ため,契約者の理解と外務員の説明に隔たりがあると,当然トラブルが生じ る。契約者は運用実績によっては大きな保障を期待しているが,株価や金 利・為替などの変動により損失が生じ,生保会社との間で訴訟が起されたケ ースもよく見られる。契約者と生保会社との間に相当な情報の格差が存在し ているため,主務官庁は海外での変額保険の監督規制などを参考としたうえ で,外務員の販売にかかわるルールを明確化し,生保会社側の商品の説明義 務を果たさせ,顧客との情報格差を軽減し,よりよい商品の販売体制を作り 上げることができるよう,導いていくべきである。

(筆者は台湾台中技術学院助教授)

参考 献(年代順)

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参照

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