アフリカにおける自然資源の持続的利用と地域開発 : 生業アプローチを中心として
著者 勝俣 誠
雑誌名 明治学院大学国際学部付属研究所研究所年報 =
Annual report of the Institute for International Studies
号 9
ページ 65‑69
発行年 2006‑12
URL http://hdl.handle.net/10723/488
アフリカにおける自然資源の持続的利用と地域開発
-生業アプローチを中心として-
勝 俣 誠
研究の目的と研究方法
アフリカにおける自然資源は急激な人口増、生活向上への願望、グローバル化の市場拡大傾向など により破壊ないし悪化の一途をたどっている。その状況下では単に貴重な動植物が失われるだけでな く、自然資源の枯渇や沙漠化などの危機を通じて地域住民自身の生活・生業が脅かされている。この 研究は、かかる状況を克服するために効率的な自然資源の持続的利用のプログラムを策定・運用する ことを通じ、新しい地域発展のあり方を検討・提案していくことを目的としている。研究方法は、広 義には、地域研究の基本的手法として、地域住民の生活を取り巻く自然科学、社会科学および人文科 学からの観察に基づく知見を踏まえる複数学問分野(pluri-disciplinary ないし inter-disciplinary)アプ ローチを採用した。
具体的には、所与の自然資源に大きく依存する生業形態の分析と類型化に着目し、そこから引き出 される持続可能な自然資源の利用プログラム策定の可能性を地域住民・団体のヒアリングおよび参加 型観察などを通じて探ろうと試みた。
研究内容
アフリカ地域は、今だ経済発展が不十分なため、圧倒的住民は農業に依存しており、地域の自然資 源の賦存状況および更新条件に大きく左右される。
したがって、持続可能な自然資源の利用形態をいかに地域住民が体得してきたかを理解し、また改 善していくかを考察することが地域住民の福祉向上の点からも必要とされている。かかる観点から、
2005年度は主として共同研究は以下の内容とした。
1) 自然資源の持続的利用の実態分析 2) 参加型自然資源利用の方法論分析
3) 自然資源の持続的利用に対する理解の増進を目指した環境教育プログラムの実践とその効果の 分析
活動の概要
東アフリカおよび西アフリカの3地点の村落レベルにおける自然資源管理の実態把握が中心となっ た。
1. ウガンダでの事例研究
ウガンダ共和国カリンズ森林では、環境教育が地元の子ども達の意識に与える影響についてのモニ タリング調査を行った。地元に建設した環境教育センターで、月例の講演プログラムと毎週日曜のオ
ープンスクールプログラムを実施し、それと並行して、地元の森や動植物に対する意識調査のアンケ ートを実施した。アンケートは初めてこれらのプログラムを受ける子どもと複数回プログラムに参加 した子どもを対象に実施した。
2005年から2006年1月までに実施したプログラムと参加人数は、日曜オープンスクールが39回
のべ約2,606人、月例講演会が12回のべ約2,047人だった。アンケートの結果は現地で英語に翻訳し
てデータ化し、プログラムへの参加回数と回答内容との関係について分析を進めている。
2. セネガルでの事例研究
西アフリカ地域では前半1980年代末から1990年代初頭にかけてのチエス州周辺村落のモノグラフ ィーを収集し、9月に実施する現地調査地の確定作業を行った。
9月の現地調査は20日から25日まで行われた。今回は4つの村の予備調査が実施された。主とし て資源管理の実態を住民苗畑の運営を中心に把握し、村長および住民自然資源管理旧責任者のインタ ビューを実施した。
10 月以降の作業は、日本側の自然管理プロジェクト参加(緑の推進プロジェクト、JOCV)の旧ス タッフのインタビューを中心に、セネガル側と日本側双方の管理形態の把握、成果評価方法などの突 き合わせが中心となった。
3. ケニアでの事例研究
ケニアの農村部での植林活動の実態調査を3月末に実施した。日本の政府開発援助による参加型開 発案件と NGO グリーンベルト・ムーブメント(GBM)の活動を対象とした。より詳細な分析は 2006年度の課題となる。
中間所感
1. セネガルとケニアについて
ミクロとマクロという2つのレベル・エンパワーメントから評価を試みたが、中間所感は以下の通 り。
・ミクロレベル
半乾燥地社会林業強化プロジェクトにおいても、グリーンベルト運動の支援するコミュニティ 活動でも、住民の組織化が着実に進められ、リーダーシップが育ち、農業振興や土壌保全と組み 合わせた植林活動が根づいてきているが、両者とも、植林をいかに実際の生計向上につなげてい くか、どのように住民のモティベーションを持続的に高めていくか、プロジェクトが終了した後、
あるいは、外部からの介入・支援がなくなったときに活動をどう維持していくかという共通の課 題を抱えているという所感を得た。こうした課題は一朝一夕に解決されるものではないが、例え ば、グリーンベルト運動の支援するコミュニティ・ネットワークは、自分たちで銀行口座を管理 し、ネットワーク構成員のコンセンサスに基づいて、植林活動を通じて得られた収益を様々な収 入向上活動に投資し、コミュニティ全体の生計向上に寄与しようとしており、このような住民に よる主体的なイニシアティブを促すことが、活動の持続可能性を高めていく上で重要な鍵を握っ
ているように思われた。2006年度はこの側面の観察と分析を進めることが重要であろう。
・マクロレベル
地域開発にかかわる住民参加型活動は、プロジェクトという案件の範囲内のみで評価すべき でなく、それを越えた地域行政、全国行政(国内政治)レベルなどからも考察する必要がある。
換言すれば、地域で生成される個別の活動がどう社会運動として拡がりを有し、国内政治に影 響力を及ぼせるかを問う作業である。この観点から、セネガルの地域住民活動もケニアの住民 活動も、より公正な社会をめざす政治の実現(公の確立)手段として民主化運動を重視してき ている。ケニアの JICA 案件はこのマクロ・レベルのエンパワーメントを明示的に目指してい ないが、今年度調査対象となったセネガル・チエス川およびケニアのGBMは、明確にこの展 望を目指しているとの所感を得た。今後、このレベルのエンパワーメントを各国の行政と住 民・市民との関係の性格と強さなどに着目し、その特質を明らかにする必要があるとの所感を 得た。
2. ウガンダにおいて
環境教育プログラムについては、期待以上の成果を上げることができた。まず、環境教育プログラ ムなどを推進するために設立した特定非営利活動法人カリンズ森林プロジェクトが、2005 年に外務 省から日本NGO 支援無償資金協力の資金援助を受けることができ、これを用いて環境教育センター の蔵書やAV装置を大きく充実することができた。このため、月例講演会やオープンスクールにより 多くの参加者が集まるようになった。また、教育プログラムへの参加回数とその効果を調査するため に、子供たち一人一人に参加記録手帳を渡したが、これが子供たちの参加意欲を増進させることにな った。
アンケートの結果についてはまだ分析中であるが、森林に隣接する村に住みながらも村の動植物し か知らない子供たちが、教育プログラムに参加することによって野生の動植物への関心を深めていく 傾向が感じられた。自然資源の持続的利用に対する地元住民の理解を深めることがこの研究の究極的 目的であるが、そのためには、まずは地域住民が自分たちのもっている自然資源の種類とその価値を 知る必要がある。その意味で、このプロジェクトで行った教育プログラムは大きな成果を上げつつあ る。
教育プログラムの効果を確かめるには、さらに長期のモニタリングが必要になる。また、現在は子 供たちを大正としているアンケートによるモニタリングを、おとなにも広げる必要がある。これらの 点については、2006年度の調査で継続して取り組んでいきたい。
※ 本報告書は国際学部付属研究所共同研究「アフリカにおける自然資源の持続的利用と地域開発」の中間 報告書である。
<参考資料>
『昔のケニヤ野生動物保護局の啓蒙ポスター』2点
スワヒリ語:CINEMA YA IDARA YA UTUNZAJI YA WANYAMA NA NYASI INAWALETEA ELIMU YA UFUGAJI BORA
(意訳:野生動物保護局の映画)
スワヒリ語上段:UFYEKAJI WA MSITU KWA KUTUMIA
(意訳:森林利用管理)
スワヒリ語2段目:MCHOMO ULIOZUIWA KATIKA MISTARI YA MOTO
(意訳:指定区画での野焼き)
スワヒリ語3段目左:UKATAJI ULIOCHAGULIWA
(意訳:選定伐採)
スワヒリ語3段目右:KUNYUNYIZA MIMEA INAYOKUA KWA DAWA
(意訳:樹木農薬散布)
スワヒリ語4段目:HUSITAWISHA MALISHO
(意訳:牧草生産)