建築請負人の債権担保 に関す る考察
‑ ス イ ス 法 ・ ドイ ツ法 を手 掛 りに, 転 用 物
( ve r s oi nr e m) の 視 角 か ら‑ ( ≡ ) ( 完)
藤 原 正 則
目 次
一 . は じめ に
二 . スイス法 ( 以上 4 6 巻 2. 3 号)
≡ . ドイツ法 ( その‑)一 民法典 か ら GSB まで‑ ( 以上 4 6 巻 4 号) 四. . r 自 白 . r 目 白 ドイツ法 ( その二) ‑ I GSB の挫折 か ら BGB§ 6 4 8a まで‑
五
BGB§ 6 4 8 の抱 える問題 とその対処
BGBi 6 4 8a の立法一建築請負人の債権担保手段の土地か らの切 り離 しへ一 小指 と補論 ( 不 当利得)
おわ りに
スイス法 ・ドイツ法 の総括 わが法 の不動産工事の先取特権
若干の コメ ン ト ( 完)
四. ドイツ法 ( その=) 一一 一GSB の挫 折 か ら BGBi 64 8a まで」
( ‑)BGB§ 648 の抱 える問題 とその対 処
1. 三 の 冒頭 で もふれ た ように 、BGB§ 648 の建築 請負人保 全抵 当には種 々の欠 陥が あ り, しか もその こ とは ( 立法者 の決 断 に基 づ いて いた とはいえ問題 点 と
しては)既 に立法 時 か ら意識 され て いた1 ) 。 しか し, 同条 を建築 陪審等 の行政
1)この点につ き,特 に法改正を経た BGB§ 6 4 8a の視角か らも併せ見た BGB§ 6 4 8 の欠 陥について ,Fr a nkPe t e r s , St a udi nge r ‑ Komme nt a r , 1 3 .Anf l . , § 6 4 8 ,Rdz . 2 f f . が詳細である 。Gr o β, a. a. 0. , S. 1f f . も BGB§ 6 4 8 の問題性 に GSB との対比で歴 史的叙述を与えている。
〔 1 3 7 〕
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機関に よる建築資金の コン トロール を通 じて側面支援 しようとした GSB の私 法規定は,ついに施行 され るに至 らなかった。その結果,特 に第二次世界大戦後 の建 築 業 界 の分 業 化,例 え ば しば しば注 文 者 自身 で は な く建 築 責 任 者
( Baube t r e ue r ) が建築計画 を進めるという現実,多数の下請人 ( Nac hu云t e r ‑ ne hme r ) が建築 に従事す るなどの事情の下で ,BGB§ 64 8 の抱 える問題が一層顕 在化す るに至った 2) 。以下では,こうした背景の下での BGB§ 6 48 の枠 内での問 題解決の試み,及 び VOB の規定, GSB の公法規定の定め る建築金受領者の建 築金使用義務 ( Ve r wendungs pf l i c htγom Baugel d) を BGB§ 8 23Ⅰ Ⅰの保護法 規 ( ei nde nSc hut ze i nesande r e nbez we ckt esGes e t z ) と解 して請負人の保 護 をはか る判例 ・ 学説 を概観す る。即 ち, BGB§ 64 8a が立法 される以前か ら存 在 した請負人の債権担保の可能性 についてである。
2. ( 1) BGB§ 6 48 で まず問題 なのは,同条が強行規定ではな く任意規定だ とい う ことである3 ) 。その為建築市場下の力関係か らは,請負人は注文者か ら保全抵 当 請求権の放棄 を強い られ る恐れが高い と言える。だか ら, BGB§ 6 4 8 を排除 ・ 制 限す る合意の有効性 は,非常に厳格 に解 されている。まず,普通契約約款 による 保全抵 当の排除は, AGBG§9H Nr. 1 ( 法規の中心的な基本理念)に抵触す る と解 されている 。BGB§ 64 8 は,先履行義務 を負 った請負人の唯一の報酬請求の 担保手段だか らである。それ故,保全抵 当の放棄 にみあった充分 な担保供与が合 意 されている場合 にだけ,任意法規 ( BGB§ 6 4 8 ) か らの逸脱が有効 となるので
ある4 ) 0
さらに,個別の合意による制限 も,一義的かつ明確 であることが必要 とされ る5 ) 。例 えば,グロスの挙 げる例では,「 受注者 は予め発注者の同意 を得ない とき は,その債権 を抵 当権で担保す る権利 はない」 と合意 されて も, BGB§ 6 4 8 の
2)BT‑ Dr 1 2 /1 3 8 6 , S.5f. には,その概観が要領良 くまとめられている。
3)Fr ankPe t e r s ,a. a. 0. , Rdz . 4 2 ,Soe r ge l , M㌫l C he ne r ‑ Ko mme nt e r , 2.Auf l . , § 6 4 8 , Rdz . 2. 等。
4)Fr a nkPe t e r s , a. a. 0. , Rdz . 4 3 ,I n ge ns t a u/Ko r bi o n, YOB‑ Komme n t a r , 1 2 . Auf l . ,B! 1 6 , 6 , Rd nr AO 3 f f . ,So e r ge l ,a.a. 0. , Rdz . 2 30
5)Fr a nkPe t e r s ,a. a. 0 リRdz . 4 2 , Gr o β, a.a. 0. ,S. 8 等。
建築請負人の債権担保に関する考察 1 3 9 保全抵 当の請求権が排除 されたこ とにはな らない とされている。土地所有者の 同意 は同条のみな らず抵 当権 の登記一般 に必要であ り,右 の合意 は明示的 に保 全抵 当権 と関係づ け られてはいな い か らである6 ) 。又,保全抵 当権 の請求権 を放 棄す る合意 も,注文者の資力が悪化すれば無効 とな ると解 されている ( BGB§
24 2 信義則乃至 BGB§ 1 57 信義則 による契約の解釈, BGB§ 321 不安の抗弁権 を 根拠 とす る) 。請負代金の分割払いの一回分 を遅滞 した ときも同様 である,等7 ) 。 以上 の ように 、BGB§ 6 4 8 が任意規定であるに もかかわ らず,それ と異なった合 意の有効性が厳格 に解 され るのは,同条の保護 している建築請負人の債権 担保 の必要性の重大 さの故 に他 な らない8 ) 0
( 2) BGB§ 6 4 8 の解釈でスイス法 と対照的なのは,建築物 に対 して物質的ではな く精神的給付 を行 った建築家 ( Ar c hi t e kt ) の報酬請求 ( Honor ar a ns pr uc h) の 担保可能性である。 当初判例 は,建築家は建築 に物質的給付 を した訳で はない ( RGZ63, 31 2, 31 6 ) とか,建築家契約 ( Ar c hi t ekt ve r t r a g) が設計だけにとど まらず建築現場での監督 を伴 うものであって も, その契約 の性質 は雇用であっ て請負ではない ( RGZ87, 7 5 等)として,建築家 を保全抵 当の請求権者か ら除い ていた 9) 。 しか し,( 具体的事案で BGB§ 6 48 の適用 を肯定 した訳ではないが) 痩 築家契約の主なる性質が雇用ではな く請負 とす る BGH の判例一一一 建築家 は確 かに有形の建築の義務 を負 ってはいないが,建築物 を設計通 り戦痕 な く完成 さ せ る義務 を負 う 。BGB§ 64 8 に言 う請負人 に関 して問題 なのは注文者 との法律関 係 であって,建築物の作成への技術的・ 経済的関係 ではない ( BGHZ3 2, 2 0 6, 207
‑ が転機 とな り,現在 では判例 ・ 学説 とも建築家が保全抵 当権の請求権者 とな 6)Gr o β,a. a. 0. ,S. 8.
7) Fr a nkPe t e r s , a̲ a. 0. , Rdz A2 ,I n ge n s t au/ Ko r bi on, a. a. 0. , Rdn r AO 2 ,So e r ge l , a.a. 0. ,Rdz . 2.
8) 古 くは, Pa ulOe r t me 禦I n・Ko mme n t a rz um Bur ge r l i c he nGe s e t z buc he・Da s Re c htde rSc bul dve r hal t ni s s e , 1 9 0 6 , S.6 6 2 が,又 Gr o β, a. a. 0. , S. 8 も,本来 同条は強行法規 とさるべ きだった,と言っている。
9) 但 し,かつても Oe r t ma nn, a. a. 0. , S. 6 6 1 は,建築家にも保全抵当権請求権が帰属
すると説いていた。エル トマンのこういった立場は,ドイツ民法典が請負契約の項目
に請負人の保全抵当権を置いたことに拘束された判例 とは別に,広範な転用物の視
角から問題を考えていたことに由来するのであろう。
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ることで一致 している。但 し,その前提 は,建築家の設計が現実に建物 に具体化 されていることである 10) 。 さらに,同様 の理は狭義の建築家 ( Ar chi t ekt ) のみ な らず,精神的給付 を与 える他の専門家 ( Fachl eut e) に もあてはまると解 され ている 11 ) 。 こう した判例 ・ 学説の態度 は, BGB§ 648 の基礎 をとなっている請負 人の先履行義務,付合 による材料所有権 の喪失 に対す る保護 とい う思想 とは必 ず しもお りあわない。しか し,現在の分業化 された建築工事が各種の専門家の精 神的給付 な くしては進め られない 12) とい う現実 に鑑 れば, ドイツ法 の方向性 は
こういった現実の変化 に即応 しているとも評 し得 よう 1 3 ) 0
( 3 ) ところで,BGB§ 648 に関 して学説上最 も議論 され判例 も多いのは,注文者 と土地所有者が異 なる場合の保全抵 当権 の成否 である。 ドイツ法 の保全抵 当の 請求権 はスイス法 の ように物的債務 といった性質 を持 たない,請負人の契約相 手方たる注文者 に対す る純粋 に債権的な請求権 にす ぎない。だか ら,請負契約締 結時 に土地所有者が注文者であって も,保全抵 当の ( 仮)登記請求以前 に土地が 第三者 に売却 されて しまえば保全抵 当の登記請求 は挫折す る。但 し,反対 に注文 者が建物完成後 に土地 を取得すれば,登記請求が可能 となる。要す るに決定的な のは登記請求時の注文者 と土地所有者 との同一性 である1 4 ) 。しか し,夫が妻所有 の土地‑の建築 を注文 した り,合名会社 の無 限責任社員が合名会社の土地 に建 築委託 した ときの ように,注文者 と土地所有者 とが経済 的 に一体 だ とみな され るような状況で保全抵 当の請求が土地所有者 に対 して行 なえない とい うのは, 確 かに衡平感 には反 している 1 5 ) 。現 に施行 には至 らなかった とは といえ ,GSB§
1 0 )Fr ankPe t e r s , a. a. 0. , Rdz . 1 5 ,Cr o p , a. a. 0. , S. 2 3 f f "Soe r ge l , a. a. 0 "Rdz. 6.
ll ) Soe r ge l ,a.a. 0. ,Rdz. 7f f . ,Gr o β,S. 2 9 f f . 等.具体的には ,I nge ni e ur( 技師) , Ve r me s s ungs i nge ni e ur ( 測量技師) ,St at i ke r ‑Tr ac kwe r ks pl a ne r ( 基礎工事の 技術者)等.さらに,Baul e i t e r ( 建築責任者) ,Ba ut r age r ( 工務店)のように建築 の監督,全体のプラン作 りをする,狭義の技師ではない者 も保全抵当請求権を持つと 解されている。
1 2 )Soe r ge l ,a.a. 0. ,Rdz. 6.
1 3 )Zo bl ,a.a. 0. ,S. 6 5 f f . では,精神的給付が法定抵当の保護を受けるか否かにつき, 各国法の鳥観がなされている。 ドイツ法についても詳細な記述がある。
1 4 )Fr ankPe t e r s ,a. a. 0. ,Rdz. 1 9 ,Gr oβ,a.a. 0. ,S. 5 6 f f . 等。
1 5 )Fr ankPe t e r s ,a.a. 0. ,Rdz . 2 0 .
建築請負人の債権担保に関する考察 1 4 1 1 8 Ⅰは土地所有者の建築‑の同意 を要件 として建築抵 当の請求 を可能 としてい
たO もちろん多数の判例 ・ 学孟 鋸も BGB§ 648 の文言 に忠実 に保全抵 当の成立 に 注文者 と土地所有者の法的人格の同一性 を要求す るが, これ を克服せ ん とす る 試み も存在 しない訳ではない。
その際に,注文者が合名会社,合資会社で土地所有者がその無 限責任社員であ るとい うケースでは,請負人は社員 に対 して保全抵 当権 の登記請求が可能だ と 解 されている。HGB§§ 1 2 8, 1 61 は会社債務 につ き社員の個人責任 を肯定 してい
るか らである( 反対 に注文者が社員で土地所有者が会社の ときは,もちろんその 理 が あ て は ま る訳 で は な い) 16) .そ の 他 で も,例 え ば OLG Mt i nc hen
( N J W 1 975, 220 ) は,注文者た る有限会社が二つの合資会社の唯一の無限責任 社員であ り,かつ建物が建築 された土地 をこの二つの合資会社 と共有 してい る
とい うケースで,注文者 と土地所有者の人格の同一性 は法形式的 ( f or mal j ur
is
‑t i s c h) ではな く経済的に ( wi r t s c haf t l i c h) 判断 さるべ きであるとして,請負人
の保全抵 当権 の ( 仮)登記請求 を容認 してい る。同判決 を支持す る判例 ・ 学説 も あるが,注文者 ・ 土地所有者の経済的同一性 ( wi r t s chaf t l i c hel dent i t at )がそ れだ けで は法 的評価 の基準 と して一般化 で きる もので はないの は当然 で あろ う 17) 0 BGH ( BGHZ1 02, 95 ) は,BGB§ 6 48 の保全抵 当の請求が成立す るに は,注文者 と所有者 との法人格が同一 なのが原則 であ り,場合 に よって信義的 ( BGB§ 242 ) か ら土地所有者 に対す る直接請求が基礎づ けられ るにす ぎない。
その際,土地所有者が建築 を知 ってい るか又 は承認 しただけでは足 りず,請負契 約 に よ る給付 の経済 的 結果 か ら利 益 を受 け る可 能性 が あ った 点 が決 定 的 だ 1 8 ) , としている。 しか もこの判例が強調す るのは,BGB§ 648 の文言,及び注 1 6 )Fr ankPe t e r s ,a.a. 0 . ,Rdz . 2 0 ,Gr o β,a.a. 0 リS. 5 9f.
1 7 )こういった判例 ・学説の状況については,Gr o β,a.a. 0 リS. 6 2 f f . が詳細である.
1 8 )この事件では,土地所有者Y はその母親 と Mとともに注文者A 合資会社の資本のほ とんどを保有する無限責任社員 ( A の資本の内,Y が1 9, 4 0 0 DM , M が6 0 0 DM で総 て) であった 。Mは土地に役権を持ち, Aに土地を賃貸。A が請負人Ⅹに建築工事を 委託する以前に, Mは死亡して役権は消滅。A のY ‑の建築委託は,B に土地・ 建物
を転貸する目的であったが ,Aは破産O判決は,Aは一人会社ではないにしてもYが
Aのほほ完全な支配権を持つ点とともに,Ⅹの工事により土地が増価 LYが高額の
1 4 2 商 学 討 究 第 47 巻 第 1 号
文者が土地所有者ではない場合の保全抵 当権 の成立 を明示的 に否定す る民法典 の立法者意思,又 GSB § 1 8 Ⅰが却 ってこの理 を確認 させ るという事情であ り, BGB§ 6 48 自体の解釈か らは保全抵 当権 は成立 しない,と判示 している。だか ら そこで説かれているのは, いわば法人格否認の法理 ( ges el l s c haf t l i c heDur ch ‑ gr i f f s haf t ung) の請負人の保全抵 当権 に即 しての具体化 であ り,注文者が土地所 有者ではない場合一般 を捕捉す る契機 は存在 しないのである1 9 ) 0
本間に対 して最 もはっきりとした解釈学上 の提言 を行 っている学説 は, 7ェ ール ( Nor be r tFe h l )である。 フェ‑ル は,土地所 有者が注文者に対 して建築 への同意 を与 えた ときは,注文者が 自分 の名前で契約 して も BGB§1 85( 処分授 権 ,Ver f agungs er m昌cht i gung) の準用 によ り保全抵 当の請求権 が成立すると説 く。確かに,ここでは保全抵 当の対象 たる土地が処分 されている訳では もちろん な く,問題 となってい るのは保全抵 当権 の登記請求 に服す る とい う債権的義務 にす ぎない。又, ドイツ法では債務負担授権 ( Ver pf l i c ht ungs e r macht i gung) の制度 は認め られていない。 しか し, ここでの授権者 たる ( べ き)土地所有者の 負担 は保全抵 当の対象 となる土地の物的範 囲 に限定 されてお り,際限のない責 任 を負担す る可能性が ある債務負担授権 とは場合が異 なる。 こういった状狸の 下では,請負人の債権担保 の利益が,負担 を免れ ようとい う土地利用者の利益 に 優 先すべ きだ2 0 ) 。又,現代 の建 築業 は分 業化 して お りその為 に建 築 責任 者 ( Baubet r e uer ) ,建築工務店 ( Bat r ager ) 等が挿入 されて注文者 と土地所有者 が分裂 していることも多い。立法者意思 にこだわ らず,こういった現実の変化 に
賃料を収取する結果 となる,という事実を重視 している。
1 9 )Fr ankPe t e r s ,a.a. 0. ,Rdz . 2 2 ,Gr o A a.a. 0. ,S. 6 8 .
2 0 )Nor be r tFe hl ,ZurI de nt i t a tYonBe s t e l l e ruudGr unds t ac ks e i ge nt Gme ral s Vo r aus s e t z un gf urdi eBe s t e l l ungde rBaus i c he r un gs hypot he ki .S.Yo n§ 6 4 8 BGB, BB1 9 7 7 ,S.6 9 f f . なお,フェ‑ルの議論は,他の論者よりもその射程が広い。
第 1 にフェ‑ルは,動産を修理 した請負人の修理目的物への法定質権 ( BGB§ 6 4 7 ) が,注文者≠所有者の場合にも所有者の修理‑の同意があれば BGB§ 1 8 5 の準用に
よって成立するとする。かつ,このこととパラレルに BGB§ 6 4 8 にも,同様の法律構
成を与える。第 2 に,他の論者が主に念豆 削こ置いているのは,経済的には一体の土地
所有者と注文者 とが法人の利用によって法人格を異にしている場合であるが,フェ
建築請負人の債権 担保 に関す る考察 1 4 3 も即応 すべ きで はな いか 2 1 ) ,と言 うの で あ る。フ ェ‑ル の見解 に対 して は,授権 の理論構 成へ の疑 問 は措 いて も,土地所有者 の建 築‑ の同意 を即 座 に保 全抵 当 の負担 に対 す る釆認 と考 え るこ とはで きな い と指摘 され て お り,通説 的学 説 の 賛 同 を得 てい る訳 で はない2 2 ) 。又 ,フ ェ‑ル を別 にすれば他 の論者 が主 に念豆 削こ お いてい るの は法 人 の関係 す るケース で あ り,注文者 と土地所有 者 の人格 の分 裂一般 の克服 が企 て られ て い る訳 で もない。それ故 に,請負人 が土地所 有者 で は ない者 と契約 した場合 に保 全低 当に到達 す る可能性 は, その意 味 で も限 られ た もの なので あ る。シュ レヒ トリームが指摘 して い るように,ここでの問題 の実質 は,民法 典 の立法 者 が 明示 的 に これ を峻 拒 した転 用 物債権 の復 活 に他 な らな
い