• 検索結果がありません。

中 小 企 業 経 済 論 考

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "中 小 企 業 経 済 論 考"

Copied!
28
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

一223一

中 小 企 業 経 済 論 考

一 一 し て

阪 口 伸 六 郎

1.序

2.中 小 企 業 の 問 題 3.中 小 企 業 金 融 の 問 題 4・ 中 小 企 業 金 融 難 の 原 因

5.賃

6.若 手 の 考 察 7・ 金 融 面 の 考 察

8.結

1.序

一 部 の大 企 業 を 除 い て 申小 企 業 が わが 国産 業 の99.9%(企 業数)で あ る と い わ れ てい る現 在,申 小 企業 の研 究が大 企業 の研 究 と切 離 して は 行 わ れ得 ない の で あ る に も拘 わ らず,大 企 業 偏 重 の研 究 ば か りで あつ た わが 国 の 実 証 研 究 も,最 近 は 次 第 に中小 企 業 を採 り上 げ るに至 つ た こ とは,中 小 企業 の研 究 こそ が わ が国 の産 業 構造 の研 究 に連 関 す るこ とを 自覚 す るに 至 つ た もので あ る と考

え られ る。勿 論 戦 後 の わが 国 は ・市 場 を失 い ・過剰 人 口 を抱 えて 死 苦 悩 の裡 に 沈 ん で い るが,中 小 企 業 は た め に潜 在 失 業者 を吸収 す る場 となつ て 経 済 的 に も 社 会 的 に も大 企 業 か ら圧 迫 きれ つ 、 も,却 つ て経 済 的 に も社 会 的 に も大 きな役

割 を果 してい るのが現 状 で あ る こ とに もよ るので あ る。 それ は わが 国 の生 産 と 国 民 所 得 と税 収 の約7割 が,申 小 企 業 によつ て 占 め られ て い るこ とか ら も分 る の で あ るが,金 融 にお い て は中 小 企 業 は全 体 の2割 を受 けてい る に過 ぎない の で あ るこ とを見 落 して は な らない ので あ る。

申 小 企 業 につい ては従 来 い ろい ろ の角 度 か ら論議 され て は い るが,そ の問題 の 本質 を 具 体 的 に把 握 す る こと は容易 な こ とで は ない。 企 業 の形 態 や そ の成 立

(2)

一224‑一 商 学 討 究 第7巻 第2・ 第3号

の歴 史 的 な展 開 ・金 融 の対 策 と もい うべ き もの ・経 営 にお け る能 率 的 な組 織 化 の 問題 ・技 術 進歩 や経理 計算 の整 備 や労働 問 題 の如 き企 業 の 近代 化 と合理 化 ・大 企 業対 小 企業 との連 関 か らの維 持育 成 等 と解 決 を要 す る多 くの 問題 を持 ち,

しか もそれ らの問題 の解 決 は困 難 に して急 を要 す る もの ばか りで あ るか らで あ る。 政府 は申 小 企業 の環 境 を整 備 して その活動 を活 発 に させ よ うと企 図 してい るが,大 企業 の不 当 な圧 迫 を排 除 出来 ない ま ㌧に してお い て,深 刻 な る過剰 競 争 を 安定せ しめん と して も到 底 調 整 し得 ない し,況 ん や申 小 企 業 の市場 拡 大 対 策 とい つ て も簡単 に効 を奏 すべ くもない』 生 産 力 の向上 か ら取 り残 された い わ ゆ る低 賃金 と過 重労 働 で あ る 「暗 い谷 間」 が,日 本 経 済 にお い て戦 前 で も戦 後 で も相変 らず大 きな存 在 で あ る中 小 企 業 に対 して,後 進 国 で あつ た こ と の故 に 大 企 業 政 策の み を と らなけれ ば な らなか つ た政 府 も,今 日以 後 は いつ まで も大 企 業 の ぎせ い に曝 してお くわ け に はいか ない で あろ う。

小 論 は現 在 の 日本 の経 済 理論 学 者,殊 に英 米 の経 済 学 の尖端 を 必 死 に探索 し てい る学 者 か らみ る と,怪 しか らぬか び臭 い もの としか思 わ れ る に す ぎないで あろ うが,し か しわれ わ れは 日本 経 済 の実 態 に即 して,乏 しい 資料 の申 にお い て如 何 な る問題 が ひそん で い るか を探 っ てみ よ うか と思 うので あ る。 わ た くし は 「米 国 で は大 企 業 が断 然 多 い と」思 っ てい た ところ,実 は 米 国 で も92・5%

(企 業数)も 申小 企業 が 占 め てい るとい うこ とを知 り,最 近 の 日本 経 済が 毎 年 130万 の労 働 力 を こ な して い るが,そ れ の 多 くはサ ー ヴ ィス業 と卸 売 ・小 売 な ど の商業 部 門に吸 収 され てい る こ とを示 され るにつ け て,申 小 企 業 の問題 を国 民 経 済 の循環 を通 じて考 えて み たい とい う気持 に 狩立 て られ た ので あ る。

2.中 小 企 業 の 問 題

お きぎ りに され てい る中小 企 業 に おい て むつ か しい二 つ の問題 が あ る。 そ の 一 は中小 企業 と大 企 業 との ひ どい格 差 で あ る。 す なわ ち,中 小 企業 の 生産 性 と 賃金 の関係 で あ る。申 小 企 業 に あつ て は,成 年 労 働 者 に つ い てみ て も一 番 安 い

と ころで は月 収3000円,高 い と ころ で大 体9000円 〜10000円 止 りで あつ て,普 通 の 産 業 の 平 均 給 与 は大 体1万3000〜4000円 で あ る と いわ れ てい る。 従 つ て

この こ とは生 産 性 の いか ん を問 わず,賃 金 それ 自身 の平 衡 運動 が そ の中 で起 る

(3)

中 小 企 業 経 済 論 考(阪 口)‑225一

こ とを意 味す るの で あ る。問 題 の そ の二 は金 融問題 で あ る。申 小 企 業 に対 す る大 企 業 の支 払 いが 非 常 に悪 く,機 械工 業 だ け で も現 在 未 払 い300億 を数 え る とい わ れ てい るが,法 律 で もつ て(支 払 い促 進 法)処 理 す る以 外 に途 が ない とまで考 え られ て い るの で あ る。金 融 の問題 は か く して,第 一 の問 題 に 波 及す るので あ つ て 第 一の問題 と第二 の問題 は相 互 に連 鎖運 動 を続 け る必 然 性 を持 っ て い るか らで あ る。申小 企業 の金 融 の現 況 を申小 企 業 庁 の 「中小 企 業金 融実 態 調 査」 に み よ う。 これ は 昭和30年6月 か ら11月 まで の6ケ 月 間 を調 査 時点 とす る もの で ・ 東 京 ・横 浜 ・名 古屋 。京 都 。大 阪 お よび 神 戸 の六 大都 市 の 申 小 企業 者(工 業 ば 従 業員5〜300人 未 満,商 業 は30人 未 満)を 対 象 と した もので あ るが,そ の あ ら

ま しは次 の通 りで あ る。

《 資金 の需 要 》30年6月 か ら11月 まで の6ケ 月 間 に 「資金 借入 の 必 要 に追 られ た」 とす る ものが工 業 部 門 で は全 体 の80%を 占め,商 業 部 門で は卸 売 業が 75.5%・ 小 売 業 が45・9%を 占め て い る。工 業部 門 で は化 学工 業90.2%・ 電気 機 械 器 具 製造 業86%・ 金 属 製品 製 造 業85・2%・ 専 問 機 械 器具 製造 業83.8%,商 部 門で は織 物 衣 服 お よび身 回 品 販売 業 が最 高 で72.6%で あ る。

《資 金 借 入 希望 額 》(借 入 申込額 で は な く実 際 の希 望額)工 業部 門 で は設 備 資 金 が8%・ 運 転 資金 が92%(両 者 合 計100%),一 企 業 当 りの平 均 借 入 希望 額 は設 備 資金93万1000円 ・運 転 資金 が1074万100ρ 円(両 者合 計 の一 企 業 当 り平 均 借 入 希 望額1167万 円)。 設備 資 金 の需要 が1割 以 上 を 占 め る業 種 は 印刷 出版 業 ・武 器製 造 業 ・皮 革 品 製造 業 ・ガ ラス お よび土石 製 品 製造 業 ・紡 績 業 。商 業 部 門で は運 転 資金 が94.7%・ 設備 資 金 は5・3%(両 者 合計100%',一 企 業 当 り の平 均 借入 希望額 は卸 売 業 で は637万5000円 ・小 売 業で は92万9000円 で あ る(両 者 合計 の一 企 業 当 り平 均 借入 希 望額302万 円)。

《資 金 の借 入先 》 必 要資金 の 申込 先 は大銀 行 が74.7%で,次 いで 地 方 銀 行' 信 用 金 庫 となつ て い るが,設 備 資金 の中 小 企 業金 融 公庫 お よび 商 工 中 金 へ の 申

込率 は特 に高 く工 業 で は60%以 上 ・商 業 で は43.7%に お よん で い る。

《 資 金 借 入 成功額 》 工 業部 門で は90.2%(29年76.6%),一 企 業 当 りの平 均 借 入 成功 額 は1053万 円,借 入 申込額 に対 す る借 入成功 率 を 借 入先 別 にみ る と, 地 方 銀 行96.3%・ 大銀 行95.2%・ 信 用 金 庫93.4%・ 申 小 企 業 金 融 公庫 直 接 借

(4)

一226一 商 学 討 究 第7巻 第2・ 第3号

93.1%・ 商 工 申 金 転 借91.5%。 この 成 功 率 を 企 業 の規 模 別 に み る と,5〜29人 未 満73.4%。30〜99人 未 満89.9%・100〜199人 未 満91・6%・200〜299人 未 満 99.2%と 規 模 の大 き く な るほ ど成 功 率 は高 くな つ て い る。

商 業 部 門 で は 成 功 額 は85.3%で 一 企 業 当 りの 平 均 借 入 成 功 額 は270万1000円 と な っ て い る。こ れ を 業 態 別 に み る と成 功 率 は 卸 売 業 で は88.9%(29年82・1%)s 小 売 業 で は70.1%(29年70.1%)で か な り低 い も の で あ る。 借 入 申 込 額 に 対 す

る成 功 率 を借 入 先 別 に み る と地 方 銀 行97・7%・ 大 銀 行93.4%・ 申 小 企 業 金 融 公 庫 代 理 借98.2%・ 商 工 中 金 転 借80・4%と な つ て い る。

《 借 入 金 利 》 借 入 金 の金 利 を 日歩 で み る と,設 備 資 金 の 最 高 金 利 で は 貸 金 業 者17銭2厘 で あ る(親 戚 知 人7銭2厘 ・取 引先6銭3厘 ・商 工 中 金4銭3厘)。

運 転 資 金 の 最 高 と最 低 は 貸 金 業 者17銭2厘 〜12銭3厘 ・親 戚 知 人10銭5厘 〜6 銭9厘 ・信 用 組 合4銭 〜3銭7厘 ・信 用 金 庫3銭7厘 〜3銭1厘 ・商 工 中 金3銭

・4厘〜3銭3厘 ・相 互 銀 行3銭7厘 〜3銭 ・地 方 銀 行2銭9厘 〜2銭4厘 ・中 小 金 融 特 別 店 舗2銭9厘 〜2銭6厘 ・大 銀 行2銭7厘 〜2銭4厘 とな つ て い る。

《 歩 積 ・両 建 預 金 》 借 入 先 か ら要 求 され た もの は ・ 工 業 部 門 で は全 体 の39

%,商 業 部 門 は 全 体 の24・7%に 達 し て い る。 歩 積 率 で は 工 業 部 門 に お い て は 最 高 は 相 互 銀 行 の10%・ 最 低 は 大 銀 行 の2.2%,商 業 部 門 で 最 高 は 相 互 銀 行 の11・3

%・ 最 低 は 大 銀 行 の4・1%。 両 建 預 金 の 比 率 で 工 業 部 門 の 最 高 は相 互 銀 行 の 金 融 機 関 別 に み た工 業 部 門 に お け る歩 積 率 ・両 建 預 金 の 比 率 表

()

=

(5)

̀

中 小 企 業 経 済 論 考 く阪 口)一 一227‑‑

50・4%・ 最 低 は信 用 組 合 の21,4%,商 業 部 門 の 最 高 は相 互 銀 行 の41.6%・ 最 低 は 大 銀 行 の20・8%で あ る。 ま た 歩 積 ・両 建 預 金 な ど拘 束 預 金 の 総 預 金 残 高 に対 す る比 率 は,規 模 別 に み る と大 きい 企 業 ほ ど低 く零 細 に 近 ず く に つ れ て 高 い 。

5人 〜29人 で は 平 均54%・30人 〜99人 で は47・6%・100人 〜199人 で は38.3%・

20C人 〜299人 で29.7%と な つ て い る。

《 借 入 金 の 使 途 》 工 業 部 門 に お い て 使 途 は 主 と し て 運 転 資 金 で あ るが,通 常 の 支 出 に 充 当 す る 資 金 の 比 率 は 全 体 の40.8%・ 増 産 に 伴 う 増 加 運 転 資 金 は 28・2%,こ れ を規 模 別 に み る と5〜29人 に お い て は 増 加 運 転 資 金 の比 率 が32.2%

で あ るが,30〜99人 に お い て は 通 常 の 支 出 に充 当 す る資 金 の 比 率 は35.9%・10 0〜199人 で は52・2%,ま た 使 途 別 の 借 入 希 望 額 に対 す る借 入 成 功 率 は,通 常 の 支 出 に 充 当 す る資 金 の 借 入 成 功 率 が 最 高 で97.3%・ 更 新 の た め の 設 備 資 金94・1

%・ そ の 他92.9%・ 納 税 資 金92.6%と な つ て い る。.

商 業 部 門 に お い て は,使 途 は 商 品 仕 入 資 金 が72.2%・ 販 売 高 の上 昇 に よ る増 加 運 転 資 金8.4%・ 滞 貨 商 品 の た め の増 加 資 金5.9%・ 設 備 資 金4・9%,使 別 必 要 資 金 に対 す る借 入 成 功 率 は 納 税 資 金94.6%。 旧 債 返 済 資 金92.4%・ 商 品 仕 入 資 金89.1%・ 販 売 高 上 昇 に よ る増 加 運 転 資 金87%と な つ て い る。

《 借 入 金 残 高 》 一 企 業 平 均 の 借 入金 残 高 は 工 業626万 円(29年428万 円)・

卸 売 業256万 円(29年256万 円)・ 小 売 業46万 円(29年46万 円),こ れ を借 入 先 別 に み る と大 銀 行69.8%が 最 高,規 模 別 に み る と,5〜29人134万 円(29年17 6万 円)・30〜99人652万 円(29年586万 円)・100〜199人2740万 円(29年2487 万 円)・200〜299人11796万 円(29年7315万 円),商 業 部 門 にお け る借 入 先 別

に み る と大 銀 行60.2%・ 地 方 銀 行15.9%・ 信 用 金 庫4.8%で あ る。

《 預 金 残 高 》 一 企 業 平 均 預 金 残 高 に つ い て み る と工 業 部 門130万 円(29年 222万 円)・ 商 業 部 門129万 円(29年102万 円)と な つ て い る。

《 返 済 期 限 到 来 の 借 入 金 》 昭 和30年11月 末 現 在 返 済 期 限 が 来 て い る に も拘 わ らず,未 返 済 借 入 金 を 持 つ て い る もの は,工 業 部 門16.5%・ 商 業 部 門25・4%, 一 企 業 当 り平 均 延 滞 借 入 金 は 工 業179万 円 ・商 業153万 円,期 間 別 に み る と6ヶ 月 以 内 の も のが 工 業43%・ 商 業89・1%,1年 以 内 の もの工 業22・1%・ 商 業5.4%,

1年 以 上 の もの工 業33.6%・ 商 業5.5%で あ る。 t

(6)

一228一 商 学 討 究 第7巻 第2・ 第3号

《 信 用 補 完 制 度 の 利 用 状 況 》 昭 和30年 の6月 か ら11月 ま で の 間 に 信 用 保 証 協 会 の 保 証 を 申込 ん だ もの は,=[業 部 門 で は 全 体 の17.5%・ 商 業 部 門10・7%, 保 証 を 申 込 ん で 全 額 保 証 を得 た もの工 業54.7%・ 商 業34・4%で あ る。 同 期 間 内 に 信 用 保 険 付 の 資 金 を 借 入 れ し た もの は,工 業 で は 全 体 の3.6%・ 商 業 で は2.9

%に 過 ぎ な い 。信 用 保 険 制 度 を 認 識 して い る もの は 工 業 に お い て は全 体 の50・7

%・ 商 業 に お い て は3・8%で あ る 。

3一 中小企 業 金融 の 問題

昭 和30年tl月 末 日を調 査 時点 とす る 「中小企 業 金 融実 態 調 査 」 の 結果 を概 括 す る と,一 般 の経 済 好調 の 波 に乗 つ て資 金 繰 り状 況 も前 年 に比 して 好転 した と い うこ とが 出来 る。す な わ ち,昭 和29年 に比 較 して資 金需 要 の増 大が 目立 つ て い るが,借 入成功 率 も高 率 にな っ た し,借 入金 残 高 は総 体 的 に減 少 して お り, 預 金残 高 も工 業 は減 少 してい るが,商 業 は増 加 の状 況 にあ る。 しか し拘束 預 金 は釦 〜50%と い う高率 で ・金 融 機 関 の申小 企 業 に対 す る信 用 度 は 依 然 とV .て低 く,信 用 保証 ・信 用 保険 制 度 の利 用程 度 も認 識 度 合 も不 十分 で あ つ て,中 小 企 業 の金 融 難 は容 易 に解 決 すべ く もない 。小 口貸 付 の条件 を緩 和 した り,直 接 貸 付対 象 の拡 大 を図 つ た り,貸 付最 高 限度 の 引上 げ を行 い更 に貸 付 期 間 の延 長 を なす こ とが 果 して出来 るで あろ うか。

特 掲金 融 機 関(全 国銀 行 ・相 互 銀 行 ・信用 金 庫 ・信 用 協 同 組 合 ・商工 申金 ・ 国民 金 融 公庫 ・申 小 企 業 金 融 公庫 ・日本 輸 出入 銀 行 ・日本 開発 銀 行 ・生命 保険 会 社 ・損 害 保 険 会 社)か ら申小 企業 へ の融 資 残 高 は30年12月 末 で約1兆9229億 円で戦 後 最 高額 で あつ た 。31年1月 末 で は約1兆8879億 円 で,そ の内訳 を 金 融 機 関別 にみ る と銀 行約1兆1117億 円(58.9%)・ 相 互 銀 行 約36i3億 円(19.3%)・

信 用金 庫 約2163億 円(11.4%)・ 商工 中 金 約631億 円(3.3%)・ 国民 金 融 公庫 約469億 円(2・5%)・ 信 用 協 組 約390億 円(2.1%)・ 申 小 企 業金 融 公庫 約 463億 円(2・5%)で あ る。 申小 企 業 が 借 りて い る資 金 は 殆 ん ど銀 行 か らで (6割),申 小 業 企専 門金 融機 関 か らは4割 しか 出 て い ないか ら,従 つ て 法 律 を もつ て普 通銀 行 の融 資 総額 の5割 まで を 中 小 企 業 向 け に まわ し,そ の上 郵便 貯 金 と簡 易 保険 の 年間 増加 額 の半 分(約1000億 円)を 中 小 企業 に 還 元 せ よ とい

}

(7)

中 小 企 業 経 済 論 考(阪 口)一 一229‑一

特 掲 金 融 機 関 貸 出 残 高 申 に 占 め る申 小 企 業 貸 出 の 割 合 の 推 移

(単位1(〜0万円)

年 月1総 劉 審小企蓄i比 率%睡 月1総 額 暇 小企叢i比 率%

"""30"

312,813,149 1213,584,727

33,636,194

6 9 0 1 2 1 2 1 ← ー エ ー ﹂

3ill。4綱 、,656,63。

1・

,2・7,243i 1・548・422;

1,539,605;

 3 ,693,6631,520,016,

1:lli:;謬ll:瓢1…

3,887,7321,580,213 4・006・9701・648・9991 3,992,1371,620,770

42.9 43.1 42.3 41.1 40.7 40.6 40.6 40.1 40.6 40.6 40.9

30 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 31

!"1014・252・232,1・793・358i

414,・58,47・ ・,66・,478 sl4・ ・82・24…67・ ・297i 614…7・878・ ・69・ ・375「

1ほ溜翻:羅l

914・230・275i1・773・650illl Il

lli4・312・347i1・827・950i

'lll:織1

・1::ll:;1:l

ll

40.9 40.9 41.0 4L1 41.4 41.9 42.2 42.4 43.0 42.6

う政 治 運動(日 本 申 小 企 業政 治 連盟)が 起 つ て来 てい る。

次 に貸 出金 利 で あ るが,中 小 企 業 庁 の 「金 利 負 担 調査 」 に よれ ば,貸 金 金 利 の 一 番 安 い市 中 銀 行 の申 小 企 業 に対 す る実 質 貸 出金 利 は 日歩3銭4厘 〜7厘 い われ てい る。現 在 の 申小 企 業専 門金 融機 関 の貸 出 金利 は,申 小 企 業金 融 公庫 ・ 国 民 金 融 公 庫 は 日歩2銭6厘3毛(年9分6厘)・ 商工 中 金 は 手 形 割 引 日歩2 銭7厘 ・手 形 貸 付 日歩2銭7厘5毛 ・申 期 貸 出(1年 以 上2年 未 満)日 歩3銭 1毛(年1割1分)・ 長 期貸 出(2年 以上)日 歩3銭1厘5毛(年1割1分5

厘)・ 相互 銀 行 や信 用金 庫 は平 均 日歩3銭2厘 で あ る。銀 行 は現 在 普 通 日歩2 銭2厘 で あ るか ら申小 企業 専 門 の金 融 機 関 の貸 出金 利 は高 過 ぎ るので あ る。 し

か も多額 の歩 積 ・両建 預金 が 要 求 きれ るが故 に,実 質金 利 は 上述 の金 利 よ り5 割 増 ぐ らい とな るの で あ る。 中 小 企 業金 融 の問題 は,① 申小 企 業 専 門金 融 機 関 の資金 が 乏 しい こ と,② 貸 出金 利 が高 い こと,③ 申 小 企 業 の信 用 力 が 薄 弱 で あ る と要 約 され る。 そ して その金 融 難 を招 く原 因 として,技 術 や設 備 の 不 良 と大 企業 よ りの影響 や問 屋 組 織 の混 乱 な どが挙 げ られ るので あ る。

4.中 小 企 業 金 融 難 の 原 因

中 小 企 業 金 融 難 の最 大 の原 因 は大 企 業 よ りの 影響 で あ ろ う。 大 企業 の 下請 企

(8)

一一230一 商 学 討 究 第7巻 第2・ 第3号

業 に対 す る支 払 遅 延 は,90日 〜120日 が圧 倒 的 に 多 くて 全 体 の77.9%を 占 め て い る。 これ に品 物 を納 入 し て か ら手 形 を 受 け る ま で の 日数 約60日(検 収 期 間10

日〜20日 ・検 収 後 支 払 い ま で30日 〜 如 日)が 加 算 され るか ら,結 局150〜180日 日は か'〉る こ と に な る 。 申 小 下 請 工 場 実 態 調 査(昭 和29年5月)に よ つ て作 ら れ た 第1表rv第5表 を 参 照 し て そ の 結 果 をみ れ ば,「 大 企 業 に 泣 く 下 請 企 業 の 低 収 入 ・低 實 金 の 悪 循 環 」 が 表 面 化 して い る こ と が 読 み と り得 る の で あ る。

第1表 受 取 手 形 の 期 日別 業 者 数(単 位%) 別t醍1鶏16・ 日lg・ 日1・2・日1・5・日i150愚1計

自 動 車 工 業 オー ト三輪及び オー トバイ工業 自 転 車 工 業 電 気 機 械 工業 通 信 機 械 工業 産業諸機械工業 紡 織 機 械 工業 原 動 機 工 業 光 学 及 び 精密 ミ シ ン 工 業

(U O 5 2 5 3 1 占 ー ム ー ←

500900000502506855515853850811111211111111

5.6

2.2

3.7 3.3

52.3 7.1 6.1

42.4i54.6

5.6i72.2

1

3.3i83.3

3.4138.。

16.0 2.2169.5

142.9

37.5

3.0 16.6 13.4

55.213.4

68.0 19.6 50.0 62.5

16.0 6.5 7.1

32・816i・2 3,03.0

闇 即醐 姐

56.0 3.763.0

30.O・20.0 17.715.3 20.4i27.3 14.378.6

8.7i45.4

44.・1 29.6 30・01 28.5

32.5

13.4【3。3 38・Si

;

5・411・9

1100.0

100.0 100.0 100.O lOO.O lOO.O IOO.0 100.0

rOo.0 ユσ0.0 100.O lOO.0

ユ00.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0

第2表 支 払遅 延 の影 響 別 業 者数 ・(単 位%)

業 種 別1苓 際 し 窺 騰1斐 襲 謂 を1不劇 計

64.6 47.2 54・9

1

23・71

26.2 47.2 33.3 47.4

9.2 5.6 9.8 28.9

2.0

1・ ・…

100.O lOO.0 100.0

(9)

自 転 者 工 業1 電 気 機 械 工業 通 信 機 械 工業

灘 難 華1

無 概 盤 計

中 小 企 業 経 済 論 考(阪 口)

Q ! 9 σ 9 醒 ! 0 ワ . ム コ 9 μ

! 0 3 0 乙 0 0 ー ム ー0 9 臼 2 0 δ 9 飼 9 飼 0 δ 4 9 臼

450099Q/

00750!09494437104

50.Ol 36・21 40・81 42.81 39.。i 36,6i 27.81

4・.・1 28・gl

ll:釦

・5・511

11::i

23.1 29.0 33.3 28.6 25.6 14.6 50.0

31.3

23.7 21.2 29.6 1.2 ユ8.9 19.7

1.5 3.7

3.7 2.4

3.0

7.1

1.9

一231‑一

lOO.0 100.0 100.O lOO.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0

第3表 支 払遅 延 の支 障 別 業 者数(単 位%)

一対象工場がご項 目以上答えた もの も含 めて集合した もの

自 動 車 工 業 オー ト三輪及び オー トバイ工業 自 転 車 工 業 電 気 機 械 工業 通 信 機 械 エ業 産業諸機械工業 紡 織 機 械 工業 原 動 機 工 業 光 学 及 び 精密 ミ シ ン 工 業

21.7

9.1 3.4

8.9 10.0 6.7 9.4

21.4 8.7 10.0 5.9 5.6

7.5

34、8 21.1 27.3 41.4 3L6 26.7 60.0 26.7 34.0

1難 糊1識

47.4 59.1 44.8 42.1 46.7 75.0 66.7 54.7

56・5[43・5β4・84・31S・7

5.3

lllii;liiliii;15.。

29.4135.370.635.3i

鵬:1酬

ll:1潔1翻il:1

57・ ・157・ ・

31.636.8 36.4136.41 44.813L。13.4 42.、13、.61S.3 46.726.716.7

:1:1:19:15.0

43.4132.111,91 57.123.8、4.8

i7.・

6.9 5.3 11.1 5.0

9.4

7.1 17.4

5.6

7.1 5.9

4.3

9.1 10.3 10.5 8.9 35.0 20.0 9.4 19.0 2L4

4.3 15.0 11.8 11,1

21,4 11.7

三慧賂

霞止等陣

20.7 5.3

5.0 6.7 5.7

00

051

0 0 ﹁ ⊥ ‑ 凸 阿 ̀

ワ ・ P O

17.4

13.6

10.51 17.8

5.0 6.7 13.2

2L4 8.7

23.5 16.7 7.1 14.3 10.6

4.5 3.4 42.1

5.7 4.8

5.9 5.6 42.9 7.1 5.9

対象数

000000000000000000000000000000000000000000000000000000111111111111111111

(10)

一 一232一 商 学 討 究 第7巻 第2・ 第3号

第4表 下 請 単 価 の利益 状 況 別 業 者数(単 位%)

鴫隊

産干生若lI

す価

産す生れIIーを価

産て生つ

沿沿︒0'000︒00㎜㎜m㎜㎜㎜m㎜鵬m㎜㎜㎜mmmm㎜

副 刎詔 ー 職 判 儒 ーー 開 ー ︑ ! ー 馴 ‑ 祀 ︑

脚 ー ー l I ‑ 1 ‑

53︒129'0333

銘4460714644666645395562365159467851

︒6 23π'3π 62 9ρ 59 847473323525029285143383752娼29461841

1ーーl

i Il ー ﹁ 1 1

﹂ 3 ︒9 価 4 '7 ユ 洛 ユ 2 ユ78324317101175

1   譲 蕪 難 盤 ㍗

この 支 払 い 遅 延 が(第2・3表 を み て も分 る よ うに)中 小 企 業 金 融 の 支 障 と な つ て い る もの が53・2%で あ り,さ らに そ の シ ワ よせ は 賃 金 の 支 払 遅 延 ・賃 金 の 切 下 げ ・労 働 強 化 ・人 員 整 理(34.7+3.4+5.9+11.7=55.7)と な つ て 従 業 員 に55.7%も よせ られ て い るの で あ る点 を注 目 し な け れ ば な らな い 。 申 小 企 業 の 低 収 益 性(第4表 参 照)も 勿 論 この 悪 循 環 の 一 環 で あ つ て,到 底 設 備 の更 新 や 近 代 化 な ど は 思 い も よ ら な い こ と を 物 語 る も の で あ る。

5.賃

中 小 企 業 の低 収 益性 に よ る結 果 と もいい得 る問題 として,低 賃金 とい わ れ る 実 態 が あ る。今 日低 賃金 の問題 の 申 で,問 題 として最 後 まで残 る問 題 は,事 所 の規 模 に よ る賃金 格 差 で あつ て,第5・6・7表 に て も分 るよ うに 中小 企 業

の 賃金 は,大 企 業 に比 べ る と6〜7割 とい うのが よ うや く とい う現 状 で あ る

(11)

φ

第5表 製 造 業 規 模 馴 平 均 賃 金 (昭和29年5月)(単 位 円)

業lq人 以 下i・ ・人 一 ・9人2・ 人 一29人3・ 人 一49人5・ 人 一一99人100、 断20049互 天 ¶}5・・人 以 上

品 製 造 業

衣服及び身廻品製造業 木材及び木製品製造業 印 刷出 版 及 類似産業

ゴ ム 製 品 製 造 業 ガラス及び土石製品製造業

第 一 次 金 属 製 造 業 金 属 製 品 製 造 業

電 気 機 械 器具製造業 輸送用機械器具製造業 精 密 機 械 器具製造業 そ の 他 の 製 造 業

m

8876890081009109

1 漏 ‑ 占 ‑ 占 ‑ 占 ‑ 占 ‑ 占 ‑ 占

9,040 8,676 6,935 6,086 8,200 10,409 10,946 9,557 8,807 10,861 10,406 ]0,778 11,015 11,920 '8 ,699

9・517i

9,536i

9,059 6,879 6,589 8,565 11,668 12,702 U,840

9,088 11,609 10,859 10,716 10,402 11,525 10,235 9,587

09768130921101001111一1111111 1211069863718081

03086484878241019927229125LLLLL11111111111

63 34 59 12 15 娼 12 08 10 63 21 06 97 31 07 40 2 4 0 9 4 5 6 8 5 2 4 7 8 8 7 5

2 3 8 6 0 3 4 1 2 5 4 3 2 5 2 3 1 ← ■ ⊥ ‑ ⊥ ‑ ⊥ ‑ ← ‑ ▲ ‑ よ ー ⊥ ■ ⊥ 1 4 1 ← 1 1 ← ‑ 1 謡 濃 釜 難 畿 初 蜘 畿 認

348725718755464611111111111111 10000

1 ▲ ■ ⊥ ■ ⊥ 噸

9619437253416%6622821559105196%9722987808911121111211 ()b●Q︒

(12)

一・234‑一 商 学 討 究 第7巻 第2・ 第3号

(ア メ リカの中小 企 業 の賃金 は大 企 業 と変 らない とい うこ とで あ り・ 且 つ 中 小 企 業 は大 企業 に従属 してい ないで あろ う し,大 企 業 の中小 企 業 に 対 す る支 払 い は短 期 の現 金 支 払 か三 十 日以下 の手形 で あ ると聞 くので あ る。 従 つ て中小 企 業 は商品 の販売 に さ え努 力 をす れ ば,資 金 繰 りにお い て大 企 業 と対 等 た り得 るわ け で あ り・ この事実 が 重 要 で あ る)。

第6表 男 子労 働 者 の企 業規 模 別平 均給 与

(労働者 ・個別賃金調査)昭 和29年

模i 業1

ユ5‑29人 11,309円 (83) 11,175円 (83)

30‑・99 13,567 (100) 13,405 (100)

100‑499 15,804 (117) ξ 15,845 (118)

500‑999 17,954 (132) 18,549 (139)

1000一 19,708 (ユ45) 20,924 (156)

第7表 製 造工 業労 働 者(男 女 計)の 企 業規 模別 平 均 給 与 (労働省毎月勤労統計)

252627282930

平 均 月 間 給 与

3・一馴102釧5・ ・人「3・一一99人1101酬5・ ・人

6,774 7,968 8,891 10,091 10,893

8,154 9,803 11,324 12,663 13,392

…28・1・3・5・2

9,S99"l U・8881 13,903 15,657 16,793 17,620

100 118 131 149 161 167

100100 120124 139145 155163 164175 166184

しか も年 を追つ て賃金 の規 模 別 格差 は拡大 す る傾 向 に あ り,大 企業 の申 で も 高 額 賃 金 を受 け る もの の数 は比 較 的僅 かで あ る。昭 和29年 の事 業 所 統 計 調 査 に よれ ば,500人 以 上 の大 企 業 と もい うべ き 事 業所 にお け る 従 業者 の 数 は 全 事 業所 従 業 者数 の15%で あ り,こ れ に反 して30人 未 満 の 事 業所 の 従 業 者 は 全 従 業者 の過 半 の58%で あ る。製 造工 業 の事 業所 におい て も500人 以 上 の 大 企 業 の 従 業 者 の22%に 対 して,30人 未 満 の小 企業 の従 業者 が44%を 占めて い る ので あ る(第8表 参照)。 そ して 年 を追つ て 増加 す る従業 者 の半数 以 上 が,30人 未満

(13)

中 小 企 業 経 済 論 考(阪 ロノ ー・235一 の小 企業 に吸 収 されて い るので あ るか ら,賃 金 格 差 を縮 少 せ ん とす れ ば 全 国 的 に は莫大 な る企 業収 入 を要 す るので あ り,到 底 現 今 の低 収 入 の 小 企 業 に とつ て は格 差 の解消 とい うこ とは夢 想 だ に も及 ぼない こ とで あ る。 ア メ リカや英 国 に お いて は大 企業 と申小 企業 との問 に賃金 格差 のみ られ ない 原 因 の一 つ と して,

「最 低 賃 金制 が 実 施 され て い て,賃 金 の下 限 が そ れ に よつ て支 え られ てい るか らで あ る」 と説 か れて い るが,わ が 国 にお いて も最 近 に至 つ て漸 くこの事 も論 議 され出 して はい るが,何 とい つ て も申小 企業 の 低 収益 をそ の ま ㌧に しては, 最 低 賃金 制 の確 立 だ なん て 叫ん で も,机 上 の空論 に等 しい で あろ うと思 わ れ る。

第8表 事 業所 の規 模別従 業 者数

(統計局 ・事業所統計調査)・

数(1000入) の業 昭和22i昭 和261昭 和29

昭和22}昭 和 ・61昭 和29

全 産 判

1‑29人 3J‑99 100‑・499 500‑999 1000一

iil

9・057i10・194i10。9601

2.44612.594i2.7371

2・37812…312・22・1 8226681735・

1・7431・97gi2・1371

・6・446・7・5281・8・7881

55.0 14.9 14.5 5.0 10.6 100.0

製嵩 9美1

30‑99 100‑499 500‑‑999 1000‑一

3.0841

・.・461

・921

8161

3401

6.178i

2.386 970 914 319 954 5.543

1:畿1

…6211

6・1961 }

50.0 16.9 14.4 5.5 13.2 100.0

58.2 ユ4.8 11.9

3.8 11.3 100.0

58.3 14.6 11.8 3.9 11.4 100.0

41,3 ユ7.5 16.3

5。7

・7・21 100.0

43.7 ユ7.5 17.1

6.5 15.1

100.0

考1000人 以 上 の 大 企 業 の 賃 金 を100と して,50人 以 下 の小 企 業 の賃 金 を み れ ば,ア メ リカ82.6,英 国82。5,日 本48.5を 示 してい る。 労 働 の 賃 金 とい う もの は,結 局 は 国 全 体 と して 持 つ て い る生 産 力 に よ つ て 規 定 き れ る とす る な らば,ア メ リカ ・英 国 ・日本 の 国 々 の 国 全 体 と して 持 つ て い

る生 産 力 が こ れ を規 定 し て い る こ と に な る で あ ろ う。

(14)

一236一 商 学 討 究 第7巻 第2・ 第3号

6.若

大 企業 と中 小 企 業 との 間 を如何 に調整 す るか とい うこ と と,資 本 の投 下 が 何 故 に申 小 企 業 に砂 い のか とい う日本経 済 の宿命 的 問題 を,ど の よ うに 理 解 しそ の根 拠 を何処 に求 め る こ とが 出 来 るで あろ うか 。 又 い ろい ろ と圧 迫 を受 け てい る中 小 企 業 にお い て,自 由公正 な競 争 が行 わ れ るよ うに合理 化 を行 うとい うこ とを,理 論 的 に ど う理 解 した らよい ので あろ うか 。

完全 競 争 を前 提 とす るな らば,同 種 産 業 の各工 場 の生産 物 は理 念 的 にい え ば 全 く同一 とな り,生 産物 一 単位 当 りの 費用 が 最 小 に な るよ うに企 業 が行 なわ れ るで あろ う。そ うな ばれ賃 金 の格差 も起 らないで あろ うし,大 企 業対 申 小 企 業 の対 立 もな くなつ て,最 適規 模 一 色 の企 業が 実現 す る と考 え られ る。 そ れ に反 して独 占 とい う仮説 か ら出発 す る とそ の点 は一 体 ど うな るの で あ るか,独 占の 弊 害 と して非難 きれ る点 は,高 い価 格 を きめて 消 費者 の利益 を奪 う とい うこ と で あろ う。独 占者 に とつ て は ・同一 の商 品 を異 つ た地 域 や階 層 に属 す る購 買 者

群 に対 して,異 なつ た価 格 で 販売 す る こ との方 が有 利 とな る。 完 全競 争 の支 配 して い る場 合 に は 「一 物 一価 の法 則 」 が支 配 す る筈 で あ る。経 済上 の競 争 に あ つ て は,互 に他 を排 して最 大 の経 済 的効果 を発 動 せ ん とす るか ら,競 争が 行 な わ れ るた め に は,完 全競 争 に しろ,独 占 に しろ,自 由経 済 とい う前提 条件 を必 要 とす るので あつ て,こ の点 が頗 る重要 で あ る。経 済 上 の 自由 とは,各 人 が 如 何 な る職 業 に従 事 しよ うと・ ま た如 何 な る生 産 を しよ うと,如 何 な る消 費 を し よ うと,な ん ら拘 束 を労 け ない ことを意 味す る もの で あ る。 従 つ て,統 制 や計 蓋 の劇 しい強 固 な る中央 集 権化 の もとに あつ て は,競 争 の行 な われ る余地 は全 くな い。 この意 味 にお い て,現 実 の基磐 で あ る資 本 的 経 済的 自由が 完 全 に 自由 で な いの で あれ ば,完 全 な る競 争 も独 占 も起 らない こと とな る。 けれ ど も現 実 の 自由が完 全 で もな く申 間 的 の もので あれ ば,競 争 で も完 全 競 争 で も独 占で も ない 中 間的 の もの とな るの は 当然 の ことで あ る。

さて完 全競 争 とい うこ とで あ るが,純 粋 の競 争 の もと にあつ て は 自然 に 市 場 価 格 が 与 え られて,そ の価 格 の もとにお いて最 大 の経 済 的効 果 を収 め る こ とが 出来 る よ うに,商 品 の需 給量 が 調節 せ られ るので あ る。 この時 正 に価 格 の パ ラ

̀

(15)

ρ

中 小 企 業 経 済 論 考(阪 口)‑237‑・

メ ー タ ー機 能 に 従 つ て,売 り手 ま た は 買 手 の 行 動 が 決 定 され る の で あ る。 完 全 市 場 と い うの は,同 種 の商 品 が 人 為 的 ・制 度 的 ・技 術 的 に 制 限 な く 取 引 き し得 る場 で あ る 。 完 全 競 争 の 行 な わ れ る完 全 競 争 市 場 に お い て は,消 費 者 計 査 も 生 産 者 計 書 も市 場 価 格 が 申 心 と な つ て 行 な わ れ る わ け で あ る か ら,長 期 的 に み れ ば,市 場 価 格 は 平 均 生 産 費 に 一 致 す るで あ ろ うし,限 界 生 産 費 と も一 致 す る こ と に な る。 す な わ ち,内 部 的 に も外 部 的 に も均 衡 条 件 が 成 熟 し て ・ 最 適 規 僕 の も と に お い て 「一一物 一 価 の 法 則 」 の 支 配 が 行 な わ れ る に至 る の で あ る。

独 占 に あつ て は,自 然 的 独 占 や 法 律 的 ・制 度 的 独 占 は さ て お き,経 済 的 独 占 の 場 合 に は,企 業 者 間 に 激 し い 競 争 が 生 じ て 大 規 模 設 備 を 利 用 す る結 果,弱 企 業 は 市 場 よ り駆 逐 きれ るが,こ の 時 大 企 業 の 利 す る点 は,大 規 模 設 備 利 用 に か 〜る大 量 生 産 に よ つ て 平 均 生 産 費 を低 下 せ し め る こ とが 可 能 と な る こ とで あ る。 か 〜る 大 企 業 生 産 に対 して,消 費 者 は 消 費 組 合 とか 労 働 組 合 とか の 組 織 の力 を もつ て,組 織 的 に 対 抗 す る以 外 に手 段 や 方 法 が な い の で あ る。 そ れ と同 様 に,大 企 業 の 出 現 に な る 不 完 全 競 争 に 対 す る対 抗 手 段 と し て は,中 小 企 業 は

"組 織 の 力 に 頼 る

こ と以 外 に は な い 。 不 完 全 市 場 に お け る問 題 とし て い わ れ て い るの は,輸 送 費 と して 不 完 全 知 識 の 点 で あ り,不 完 全 市 場 に お い て 均 衡(産 業 均 衡)が 成 立 す るた め に は,限 界 生 産 費 と限 界 収 入 とが 一 致 す る こ とが 必 要 で あ る と さ れ て い るが,価 格(一 産 業全 体 の平 均 収 入)と 平 均 生 産 費 とが 均 等 す る こ とが 更 に 必 要 な る条 件 と し て加 つ て来 る の で あ る。 一 企 業 が 均 衡 状 態 で あ れ ば,そ の 限 界 収 入 と限 界 生 産 費 とが 均 等 とな つ て,カ レ ツキ ー の説 く如 く そ の 独 占 利 潤 は 次 の式

xPPt=xeas+x(O。,‑Om)十x(w。‑Wm)+x(ra一 κm) に よ つ て 与 え られ る 。 そ し て これ を経 済 全 体 に 拡 大 す れ ば

.>7xPpt==Xκeα十Xx(Oa‑Om)十 ∫濫(wα 一 ωm)十 Σx(ra‑rm)と な る

⊂kalecki,m.:Essaysint王e』TLeoryofEconomicFluctuationsP.18‑32〕 そ して 資 本 設 備 を一 定 とす る短 期 に お い て は,独 占 企 業 に よ る経 済 的 搾 取 の 程 度(独 占度)は,「 総 生 産 額 に 対 す る粗 資 本 家 所 得 と労 働 の 報 酬 と の分 配 率 が 近 似 値 的 に平 均 独 占度 に 等 し い 」 と な る の で あ る。 自 由放 任 に お い て は 期 せ ず して 完 全 競 争 も独 占 も 「一 物 一 価 の 法 則 」 が 純 粋 理 論 的 に 成 立 す る の で あ る と

(16)

一238一 商 学 討 究 第7巻 第2・ 第3号

せ られ て(勿 論 前提 の設 け方 に お い て問 題 が あ るが),両 者 を並 べ てみ て 結 論 的 に い えば同 じ法 則 に帰 結 せ られ るの は何 故 で あろ うか?と い う問題 こそ 重 要

で あ る とわ た くしは感 じ てい るので あ る。

完 全 競 争 にお い て は,長 期 的 にみ て行 きつ い た点 に て市 場 価 格 が平 均生 産 費 に一 致 し,独 占に お いて は,短 期 的 には限 界生 産 費 と限 界 収 入 とが 一 致 し,或 は価 格 と平均 生 産 費 とが 均 等 す る こ とが条 件 となつ たので あつ た。 前 者 は市 場 価 格,後 者 は一産 業 に お け る市場 価 格 と もい わ るべ き平 均収 入 とい う差 が あつ て も,安 定 か不 安定 か ・長 期 か 短期 か は と もか く均衡 状 態 にお い て は,「 一 物

」価 の法則 」 が成 立 す るとみ て よいで あろ う。 そ の上 「一物 一一価 の 法 則 」 は, 一 定 の時 ・同一 の公 開 市場 にお い ての無 差 別 の法 則 か ら導 か れ た もので あ る と か,市 場 の完 全 性 か ら導 か れた もの で あ るとい われ るけれ ど も,異 時 点 にお い ては 同種 の商品 も変 動 す るの で あ るが,し か しrこ の ことは 「一 物 一価 の 法 則」

の 成 立 を妨 げ な い』 とい う命 題 に も問題 が あ るので あ る。 そ して今 一 つ の問 題 と して 考 え られ る もの は,均 衡 状態 とい う点 で あ る。 自由経 済 ・完 全 市場 ・ 均 衡 状 態 そ して 「一 物 一価 」 と きめつ け て,日 本 経 済 の現 実 を分 析 す れ ば一 体

ど うい うこ と とな るので あ るか 。 市場 関係 の非 独立 性 に悩 んで い る 日本 の 中小 企 業 は,市 場 形 態 を通 じて完 全 競 争 理 論 や不 完 全競 争理 論 で もつ て し ては,均 衡 論 的考 察 に とつ て も有 益 な 出発点 とな り うるで あろ うか?

次 に問題 として考 えね ばな らない こ とは賃 金 で あ る。 そ もそ も賃金 とは 「法 的 に 自由な契 約 に よつ て正 当 に確 定 され た労 働 用役 の報 酬 で あ る」 とい わ れ る が,前 提 とされ るべ き社 会 条 件 はか ㌧る賃金 の成 立 を現 実 に おい て 許 さ ない 。

も し もす べ て の人 が皆 同様 で あつ て,且 つす べ ての職 業 が 同様 で あ るな らば,

いか な る種 類 の労 働 に対 す る賃金 水 準 の間 に も格 差 の生 ず る筈 が な い ので あ る が,し か し といつ て,危 険 で あ る仕事 と危 険 で な い仕 事 ・職 務 遂行 上愉 快 な仕 事 と不愉 快 な仕 事 ・習 熟 に長 年 月 を要す る仕事 とそ うで ない 仕事 ・ とい うよ う

に当然 格差 をつ け て賃金 の均 等 化 を図 らね ば な らな い均 等 化的 格差 とい われ る もの(わ た くしは 当然 格差 と呼 ん で い るの で あ るが),そ の よ うな格差 は認 め ね ばな らない ので あ る。 けれ ど も現 実 は,殊 に申 小 企 業 に あつ ては,当 然 格差 す ら も重 んぜ られ ない ど ころか 無 視 され てい るの で あ る。 「同一 労 働 同一 賃

参照

関連したドキュメント

21 「委託・外注費」か「借料」だけで申請できますか 公募要領 p1 に記載の通り、 「設備等導入費」(補助対象経費の 1/2

It is inappropriate to evaluate activities for establishment of industrial property rights in small and medium  enterprises (SMEs)

この小論の目的は,戦間期イギリスにおける経済政策形成に及ぼしたケイ

 新型コロナウイルスの流行以前  2020 年 4 月の初めての緊急事態宣言 以降、新型コロナウイルスの感染拡大

参考資料ー経済関係機関一覧(⑤各項目に関する機関,組織,企業(2/7)) ⑤各項目に関する機関,組織,企業 組織名 概要・関係項目 URL

奥村 綱雄 教授 金融論、マクロ経済学、計量経済学 木崎 翠 教授 中国経済、中国企業システム、政府と市場 佐藤 清隆 教授 為替レート、国際金融の実証研究.

CSR 先進中小企業 

平成21年に全国規模の経済団体や大手企業などが中心となって、特定非営