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ポリ塩化ビニルの直流電気伝導に対する電圧印加経歴の影響

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(1)

ポリ塩化ビニルの直流電気伝導に対する電圧印加経歴の影響

西

弘*

(昭和47年9月30日受理)

The lnfluence of Voltage Career on D C Electric Conduction of Polyvinylchloride,

Munehiro NlsHlyAMA

(Received September 30, 1972)

 In this paper, author describes the influence of d c voltage applied to PVC sheets.

low to high and frorn high te lew. Results obtained are as follows.

(1) At low voltage, in case of gome sheets, current inereases to nearly initial value.

(2)The increase appears after the electric field of oh耐s Law area.

D C voltage was applied from

1.まえがき.

 高分子の低電界の電気伝導から高電界の絶縁破壊に至る までの研究は種々の面からなされ,直流電気伝導に関する 研究はその一翼を担うものである。.一般に,低電界ではイ

オン伝導が,高電界では電子伝導が主役となるとされてい るが,電子超伝導を裏づける報告も多くなされてきた(1)。

 低電界あるいは高電界における電荷担体を考える場合,

印加された電界のみでなく,それまでに印加された経歴に よっても影響があり,それに関する新しい報告もなされて

いる(2)。

 また,直流電気伝導特性は絶縁試験法の一つとして取り 上げられ,有意な資料を提供するものである(3)(4)。

 一度電圧を印加された試料は残留電荷を有し,つぎの電 圧印加に大きい影響を与え,一般に電流値は減少する。し かし,薄いP・ E・フイルムにおいて電流の増加する場合の 報告があり(2),筆者のPVCの実験においてもこれに似た 現象を経験した。電圧印加経歴があると再現性のある資料 が得られにくいことが多いが,何回かの印加によって再現 性のある結果が得られたので,ここではPVCを用い,電 圧を低電界から高電界へ,またその逆にと上下しながら印 加をくり返す中で電流の増加する場合があることについて 報告する。

2.実 験 方 法

 試料には,厚さ0.05mmのPVC(ポリ塩化ビニル,三 井東圧化学製)を使用した。電源は安定化電源より供給

し,試料を流れる電流をチョッパ形増幅器と記録計で測定 した。電圧は103V/cm」t 一 ダーの低電圧から印加し,電圧 を1段高めるたびに,再び当初の低電圧を印加した。

 印加にあたっては,前毅階の電圧印加後,試料の短絡電 流ができるだけ少なくなるのを待つため,15〜30分短絡し てのち印加した。

 電極として,主電極直径40mm,ガード電極内径50mm,

外径60mm,対電極直径70mmのアルミ箔を,シリコング リースで密着させた。当初,銀蒸着電極を使用したが,破 壊電圧と電流一時間特性に大差ないことが認められたこと

と,薄い試料では蒸着電極は使用中剥れやすいことのため アルミ箔を用いた。

3・実験結果と検討

*電気工学科

 1.印加経歴の電流値に対する影響

 電流一時間特性の一例として,試料温度30。Cの場合を Fig.1に示す。 Fig.2は10分値をとり,電界強度に対して プロットしたものである。最低電界強度は6×103V/cm(30 V)で,電圧印加順序を図中,1・2………の数字で示し

た。

 図において6×103V/cm印加では,1−3−5……と順次

一 301 一

(2)

津山高専紀要 第3巻 第3号(1973)

電流は減少し,電圧印加経歴の効果が現われるが,7.5×

104V/cm印加後の9では逆に増加し,1の場合と同程度に なる。多くの試料についてこのような増加は,9または11

(105V/cm印加後)で現われる場合が多く,7(5×104V/cm 印加後)で見られる場合もある。

 高い電界では,空間電荷層の形成によって内部電界の強 さは外部印加電界の増加ほどには増加せず,電流の増加が 抑えられる。

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Fig.1 Current vs. time characteristics at 300C.

   (Number shows the order of applied voltage)

  璽6

合,現象的にはそれと類似したものであるが,15〜30分の 短絡では通常十分な回復とはならず,試料中のキャリアに 変化が生じたと思われる。

 Fig・3には,電圧印加経歴のない試料につき電流を電界 強度に対してプロットしたものである。図中の各点はそれ ぞれ,3〜5枚の試料の平均値を示しているが,各試料の バラツキはあまりない。電流はFig,2に示すより全体に大 きいが,105V/cmあたりではその差は小さい。

 また,104V/cm rk 一・ダーの低電界とそれ以上の電界とに 差が認められ,前者では大きさは時間に対してあまり変化 せず,勾配は電界に対しオーム則を満足しているが,後者 においては10分値ではほゴオーム則に近い勾配を示すもの の,5分値,1分値では勾配は大きく,イオンの移動度が 増加したことを示している。

 さらに,両者の電界領域は7.5x104V/cm附近を境にし て分けられる。Table・1には,直流電圧を破壊まで約10秒 かyる程度の一様な速さで上昇した場合の破壊電圧を示す が,その破壊電圧の大きさから考えると,使用した試料に 関しては,この附近の電界を境にして低電界領域と高電界 領域とに分けられる(5)。

  Table.1 D.C. breakdown voltage (KV)

極極電電土着べ蒸

ア銀

最低値 平均倒二値

4. 74

4. 70

5. 33

5. 43

6. 00

6. 05

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 Fig.2 Current vs. electric field strength at 300C.

    (Number shows the order of applied voltage)

 電圧印加後,試料を長時間短絡放置した場合,分極の回 復のため電流値は初期の値に戻ることがある。今回の場

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Fig.3 Current characteristics of new samples.

一 302 一

(3)

ポリ塩化ビニルの直流電気伝導に対する電圧印加経歴の影響 西 山

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Fig.4 Current characteristics of the samples applied    continuously step voltage.

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 試料の放電をせず,電圧を段階的に連続して印加した場 合をFig.4に示すが,この場合にも105V/cm附近で勾配の 変化が見られる。しかし,内部電界の減少のためFig・3ほ

ど顕著ではない。

 2.最:低印加電界による相違

 前述のように,低電界における電流の増加はオーム則の 成り立つ電界領域を越える附近の電界を印加したあと現わ れることからみると,低電界領域の電界を最低電界とした 場合には,同様な現象を生じることが考えられる。

 Fig.5には最低電界強度を2×103V/cm(10V)とした場 合を示す。電圧印加経歴の効果は500V以下の電圧印加で はあまり顕著に現われず,ほts 同一の値を示すが,しかし

9において幾分増加したことが示される。

 また,最低電圧を50Vにした場合には, Fig・2と同様な 結果を得た。

 Fig・6には最:低電界を5×104V/cm(250V)とした場合 を示す。この場合には,印加するたびに電流値は減少し,

増加する場合が見られない。

 3.検   討

 一般に,高分子絶縁物に直流電界を加えたとき,時間と ともに減衰する吸収電流が流れるが,印加電界が大きくな ると,試料内部に形成される空間電荷層によって内部電界 が弱められ,電流減少は非線形の現象を示してくる。

 Fig・2以下の図において,電界強度の増加に対して電流 の増加が鈍ってくるのは,この空間電荷の形成によるとこ ろが大きい。低電界においては,空間電荷の形成は少ない と考えられ,分極にもとつく吸収電流と試料の漏れ電流と が流れる。

 Fig. 2の9において電流が増加することは,見掛上初試 料に電圧を印加したことと同じであり,したがって,この

現象を長時間試料を短絡したあとに見られるような分極の 回復にもとつくと考えるか,イオンの移動度が増加するほ どの電界によって,局部的に電界の不均一tが生じたとみる か,またはそのほかに原因を求めるかは,現在の結果から は十分には判定しにくいが,しかし,Fig.2, Fig.3を比 較すると,Fig・ 3の方が全体に電流値が大きいが,105V/cm ではほゴ同一の値を示している。このこのことは電圧印加 経歴が大きな影響を有していないことを示し,イオン移動 度の増加によって分極の回復が速まったことが考えられ

る。最低電界の高い5×104V/cmの場合には,電流は単調 に減少するが,イオン移動度の増加が生じると考えられる 電界は図中2の電界附近であり,その後の電圧印加3で

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Fig.5 Current vs. electric field strength in case of    the minimum voltage 10V.

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Fig.6 Current vs. electric field strength in case of    the minimum voltage 250V.

一 303 一

(4)

津山高専紀要 第3巻 第3号(1973)

は,電流は1とほs 等しい。

 一一般に,同一値の電圧を断続的に印加すると,回数を経 るほど電流値は減少するが,Fig・6の場合には高電界領域 と考えられる電界までに印加する回数は2回であり,その 印加による電流の減少は少い。

        参 考 文 献

(1)広田;高分子材料の導電性,電試調査報告No・166

(2)木村,青笹,矢作;絶縁材料研究会資料IM−71−35

(3)寺瀬;非破壊絶縁試験法,オーム社

(4)電気学会;絶縁試験法ハンドブック,オーム社

(5)高分子学会;高分子の電気物牲とその応用,丸善

4.ま と め

 直流電圧を上下しながら印加して,直流電気伝導特性を 調べた。その結果を要約するとつぎのようである。

1.印加経歴の影響を示す申で,低電界において電流が増  加する場合がある。

2.電流の増加は低電界から高電界へ印加電界を強めたあ  とに生じる。

3. この増加はイオンの移動度の増加に基因すると考えら  れる。

 おわりに,蒸着装置の使用にあたって,保守管理に御努 力下さった本校技官,徳方孝行氏に謝意を表します。

一一@304 一

参照

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