• 検索結果がありません。

科学研究費助成事業  研究成果報告書

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "科学研究費助成事業  研究成果報告書"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

科学研究費助成事業  研究成果報告書

様 式 C−19、F−19、Z−19 (共通)

機関番号:

研究種目:

課題番号:

研究課題名(和文)

研究代表者

研究課題名(英文)

交付決定額(研究期間全体):(直接経費)

12101 若手研究(B)

2015

2013

多様な社会性を示すチビアシナガバチ属における分巣行動の複数回起源に関する研究

Origin of swarm‑founding in the genus Ropalidia

70635755 研究者番号:

諸岡 歩希(Morooka, Fuki)

茨城大学・理学部・准教授 研究期間:

25840143

平成 28   6   2 日現在

     3,100,000

研究成果の概要(和文):アシナガバチ亜科(Polistinae)では、新しい巣の創設様式に女王が単独あるいは複数個体で 巣を創設する「独立創巣」と、多数のワーカーが女王個体を伴って巣の創設を行う「分巣」の2つのタイプが知られる

.分巣はアシナガバチ亜科において、南米に分布する1族と旧世界の2属において3回独立に進化してきたと考えられ ていた.しかしアシナガバチ亜科のうちチビアシナガバチ属(Ropalidia)においては1属内で、ニューギニア・オース トラリア地域に分布する種と東南アジアに分布する種それぞれで独立に分巣行動が進化してきた可能性を示した.

研究成果の概要(英文):The wasps in the vespid subfamily Polistinae fall into two groups in terms of  their modes of colony foundation. One is independent founding, in which a colony is founded by one to  several inseminated females. The other is swarm founding, where a colony is founded by a swarm of workers  associated with one to many queens. Genus Ropalidia is widely distributed in Old World tropics and  subtropics. They have the two way of these colony founding. Swarm‑founding species of Ropalidia are  divided into two groups based on their distribution ranges: Oriental species distributed from India in  the west to Borneo, the Philippines and western part of the Lesser Sunda Islands in the east; and Papuan  and Australian species. No swarm‑founding species are distributed in Sulawesi, Moluccas and eastern part  of the Lesser Sunda Islands. Phylogenetic analysis of Ropalidia wasps using molecular data shows dual  origin of the swarm founding in Ropalidia in accordance with their distribution.

研究分野: 昆虫分類学

キーワード: 進化

  2版

(2)

様  式  C−19、F−19、Z−19(共通)

 

1.研究開始当初の背景

アシナガバチ亜科におけるコロニーの創設 様式には、単独もしくは数個体の受精メスで コロニーを創設する「独立創巣」と、ワーカ ーが女王(受精産卵メス)を伴って新コロニ ー創設場所へと移動する「分巣」が知られて いる。「独立創巣」を行う種は受精メスのみ で巣を創設できるため分散能力が比較的高 いが、「分巣」を行う種はワーカーが道標フ ェロモンなどの化学的な信号を用いて新天 地まで仲間を誘導するため、水域をまたいで の移動は困難であり、分散能力が低いとされ ている。アシナガバチ亜科において、「分巣」

行動は南米のエピポナ族、旧世界に分布する チビアシナガバチ族のポリビオイデス属と チビアシナガバチ属でそれぞれ独立に3回 生じ、「独立創巣」よりも進化したコロニー 創設様式であるとされる(図1)。 

                                このうちチビアシナガバチ属は約 180 種から なるアシナガバチ亜科のなかでも大きなグ ループであるが、うち半数が分巣種であると され、本亜科では唯一、1属中に「独立創巣」

と「分巣」両方のコロニー創説様式が見られ る属である。チビアシナガバチ属において分 巣種は、ニューギニア+オーストラリア北部 とインド〜小スンダ列島中部に分断された 分布を示している(図2)。 

前述のように分巣種は長距離の水域を超え て分散することは困難であることから、現在 みられる分断された分布が成立するには、以 下のような「分巣」行動の進化と「分巣」種 の分散の 2 つのシナリオが考えられる。 

(1)「分巣」行動は単一起源で、かつゴン

ドワナ起源であり、アジアにおいてはインド 亜大陸がアジア大陸へ衝突した後に、「分巣」

種がインドから東に向かって東南アジアに 分散してきた。 

(2)インド‐東南アジアとニューギニア・

オーストラリア地域で、それぞれ独立して少 なくとも 2 回「分巣」行動が進化した。 

一方で、これまでに報告されているアシナガ バチ亜科の系統関係構築に用いられたチビ アシナガバチ属は数種であり、またチビアシ ナガバチ属の種を網羅した系統関係仮説は 存在しない。 

以上より、チビアシナガバチ属における「分 巣」の進化と、分巣種の分散過程を明らかに するためには、チビアシナガバチ属全体を網 羅する種間の系統関係仮説を構築すること が必要であると考えた。 

2.研究の目的

本研究の目的は以下の2点である。

(1)アシナガバチ亜科(25 属約 900 種)にお いて唯一、1 属内に「独立創巣」種と「分巣」

種を含むチビアシナガバチ属(Ropalidia)に ついて、属内の種を網羅する形で系統関係解 析を行い、種間系統関係を明らかにする。 

(2)「分巣」行動が進化したグループ(クレ ード)を特定し、旧世界の地史を参照して、

「分巣」種のニューギニア・オーストラリア 北部とインド〜小スンダ列島中部に分断し た分布の成立過程を解明する。 

3.研究の方法

研究は以下の方法で行った。

(1)チビアシナガバチ属(Ropalidia)を内 群とし、外群にはアシナガバチ亜科からアシ ナガバチ属(=Polistes、チビアシナガバチ族

Belonogaster4属数種)、エピポナ族(5 種)を用いて系統関係解析を行い、信頼性の 高い種間系統関係仮説を構築した。

①  分子データは、ミトコンドリア DNA よび核 DNA から複数のコード領域につ いてダイレクトシークエンスを行った。

また先行研究等で配列情報が公開されて いる種についてはDDBJ等の塩基配列デ ータベースを引用して作成した。

② DNA ダイレクトシークエンス用のサン プル採集および生態情報の充実のためイ ンドネシア等において現地調査を行った。

③  表形形質のデータマトリックス作成、お よび外群の分類学的整理のため、海外の 博物館等での標本調査を行った。

(2)文献やデータベースおよび既存標本の 観察から、分巣種のそれぞれについて詳細な 分布地図を作成した。

(3) 信頼性の高い系統関係仮説を参照し、

チビアシナガバチ属内で「分巣」が進化した クレードを特定した。また旧世界の地史を参 照し、分巣種の種分化および分散過程につい て考察し、分断分布が成立したシナリオを構 築した。

(3)

4.研究成果 

(1)チビアシナガバチ属の分巣種のうち、

インド〜小スンダ列島中部に分布する種と、

ニューギニア・オーストラリアに分布する種 が単系統群であることはすべての解析にお いて支持されず、それぞれ別々のクレードを 形成した。よって、本研究から分巣種はイン ド‐東南アジアとニューギニア・オーストラ リア地域で、それぞれ独立に進化し、チビア シナガバチ属内で少なくとも 2 回「分巣」行 動が進化したことが強く支持された。アシナ ガバチ亜科においては、「分巣」行動は南米 のエピポナ族、旧世界に分布するチビアシナ ガバチ族のポリビオイデス属で知られてお り、今回の研究から、アシナガバチ亜科では 独立創設型のコロニー創設から少なくとも 4 度の分巣型への進化が起こったことが示さ れた。 

  また、分巣種のうちニューギニア・オース トラリアに分布する種は単系統群を形成し たが、インド〜小スンダ列島中部に分布する 種については独立創設型の2種を内包する クレードを形成しているため、必ずしも単一 起源とは言えない。さらにR. malayana など 詳しい生態が不明であるが分巣種である可 能性がある種もこれらとクレードを形成し なかった。よってインド〜東南アジアではさ らに複数回分巣への進化が生じた可能性も 示唆された。 

(2)上記の結果から、分巣種の起源がゴン ドワナ大陸にあり、アジアにおいてはインド 亜大陸がアジア大陸へ衝突した後に、「分巣」

種がインドから東に向かって東南アジアに 分散してきたシナリオも考えられるが、その 場合は分巣種が系統樹上に入れ子状になる 可能性が高い。本研究では、推定された系統 関係仮説は現在の分断分布をよく説明して おり、また分巣種はその生態学的特性から水 域をまたいでの分散が困難であることから、

分巣への進化はそれぞれの地域で、それぞれ 独立して起こったと考えるのが妥当である。 

(3)本研究においては解析に形態学的特徴 および生態学的特徴もふくめた表形形質の データを用いた。特に外群として用いたチビ アシナガバチ族のParapolybia属については 詳細な分類学的精査が必要な状態であった が、博物館等の所蔵標本および文献調査によ って、未記載種等の整理を行った。またチビ アシナガバチ属の数種の生態学的情報につ いていくつかの新知見が得られ、学会等で発 表するとともに本研究の表形形質のデータ マトリックスに含めた。 

(4)アシナガバチ亜科は、その生活様式や 社会構造が社会性狩蜂の中で最も多様であ ることから、行動学的・社会生物学的研究の 主要な対象とされてきたグループである。社 会性進化を考察し、また社会行動(特にコロ ニー創設様式−独立創巣と分巣)からくる制 約を考慮して分布を論じるには、問題となる グループ間あるいは種間の系統関係を参照

する必要がある。アシナガバチ亜科では、族 レベルの分布については一応の解決をみて いる。つまり、アシナガバチ亜科はゴンドワ ナ起源の可能性が高く、Mischocyttarini 族 (=Mischocyttarus 属)が現在の南米に相当 する地域で初期の段階に分化した。その後、

現在の南米に相当する地域において分巣を 進化させた Epiponini 族と、現在の旧世界熱 帯域に相当する地域においてチビアシナガ バチ族との間で分断分化が生じた、というシ ナリオである。一方、新世界に比べてはるか に複雑な地史をもつ旧世界に分布が限られ るチビアシナガバチ族については、現在の分 布パターン、特に分断された分布をもたらし た属・種群・種レベルでの分化と分散過程の 解明が、社会性狩蜂の生物地理と適応放散、

特に社会行動の多様化の研究における懸案 の課題として残っていた。本研究は、この課 題に取り組んでおり旧世界に分布する社会 性狩蜂類の研究として非常に重要な結果を 残した。それと同時に本研究は、①社会性狩 蜂における社会性、特に分巣行動と分巣種に みられる複雑な社会構造進化の研究、②旧世 界の熱帯域に分布の中心をもつ昆虫あるい は他の節足動物類の生物地理学的研究にお いて参照可能なフレームワークを提供し、旧 世界の生物多様性研究に資する。 

 

5.主な発表論文等 

(研究代表者、研究分担者及び連携研究者に は下線) 

〔雑誌論文〕(計2件)

①  Saito-Morooka FNguyen LTPKojima J Review of the paper wasps of Parapolybia indica species-group (Insect a: Hymenoptera; Vespidae, Polistinae) in eastern parts of AsiaZootaxaVol.3947 No.22015pp.215–235、査読有

Saito-Morooka FThe prevalence of the parasitic nematode Sphaerularia sp. in the overwintering gynes of Parapolybia spp.

(Hymenoptera, Polistinae) Journal of Hymenoptera Research、382014pp. 37

43,査読有

DOI: 10.3897/JHR.38.6562  

〔学会発表〕(計4件)

① 諸岡 歩希、大内 康平、柳澤 夏樹、曽根 良太、郡司 涼、小島 純一、チビアシナガ

バチ属 Ropalidia 分巣種の形態カースト分

化、第 59 回日本応用動物昆虫学会大会、

2015.3.28、山形大学(山形県山形市)

② 諸岡 歩希、巨大なコロニー集合を形成す るチビアシナガバチRopalidia plebeianaの 個体群遺伝構造、第62回日本生態学会大

会、2015.3.21、鹿児島大学(鹿児島県鹿児

島市)

③ Saito-Morooka F Double-origin of swarm-founding in the genus Ropalidia.

(4)

International Union for the Study of Social insects (IUSSI)International Congress

2014.7.13-18、ケアンズ(オーストラリア)

④ 諸 岡 歩 希 、 チ ビ ア シ ナ ガ バ チ 属

Ropalidia)分巣種の起源と分布パターン

成立過程、第 61 回日本生態学会大会、

2014.3.17、広島国際会議場(広島県広島

市)

 

6.研究組織  (1)研究代表者 

  諸岡  歩希(MOROOKA FUKI) 

茨城大学・理学部・准教授    研究者番号:70635755   

(2)研究分担者  無し 

(3)連携研究者  無し 

参照

関連したドキュメント

  OI はその平たい分子形状から球状のミセ ルを形成せず、高濃度ではヒドロゲル化する ことがわかった。このことより繊維状の集合 体を形成しやすいことが示唆される。そのた

3種の LED による背景光源を開発した。各波長は 530nm、850nm、940nm である。コントロー ラによって、どの LED を発光させるかを選択することができ、それぞれに何

上記の雄器床特異的配列に加え,塩基性ア ミノ酸に富むプロタミン様タンパク質をコ ードする遺伝子 MpPRM が見いだされた。一般 に,プロタミンは精子においてヒストンの代 わりに

そこで、専門内容と言語を統合して学習する Content  and  Language  Integrated 

Gillberg, 1999;Kopp et al., 2010) ,実際には多くの発達障害児で動作の「ぎこちなさ」が付

膜厚の 1.0μm に比べると若干大きな値であ る。これは、設計値を Mg 2 Si の単結晶を仮定

      現在の iBIX の TOF 回折データを処理 するソフトウェアは TOF データ特有の

(2) 「教員が何を教えたか」ではなく、 「学 生が何をできるようになったか」 、