一 は じ め に 二
仲 裁 人 と 仲 裁 鑑 定 人 三
プ ロ イ セ ン 最 上 級 裁 判 所
( 以 上
、 二 八 巻 一 号 一 頁
) 四
ラ イ ヒ 高 等 商 事 裁 判 所
( 以 上
、 二 八 巻 二 号 九 一 五 頁
) 五
ラ イ ヒ 裁 判 所
( 以 上
、 三 六 巻 二 号 一 頁
) 六
自 由 仲 裁
( 以 上
、 本 号
) 七
ま と め
( 次 号
)
六 自 由 仲 裁 鯉 判例 1 自 由仲 裁
(
ar b itr iu m me ru m
) は
、 一 九世 紀の パ ンデ クテ ン法 学 に属 する 学説 に よっ て、 一 般的 に 承認 され てい た と いわ れる
。た とえ ばア ルン ドゥ ツ
(
A rn d ts
) によ ると
、債 務の 対象 は、 ある 程度 は正 確に 定め
、他 人の 公平 な裁 量( 善 き 人の 裁断
ar b itr iu mb o n i vir i
)ま たは
「 単な る自 由 裁量
(
b lo ß eG u td ü n k en
)」 に よっ て定 める こと がで き る、 後 者の 場合
─ ─
(
)
─ ─1
ド イ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成 ( 四 )
豊 田 博
昭
四 八
〇 四 八
〇
に 債務 の存 在は
、自 由裁 量の 判断 に条 件づ けら れる とす る。 他の 学説 も同 旨を 述べ てい
そし て多 くの 学説 は、 その 法 的 根拠 とし て、
C o d .4 , 38 , 15
(第 三者 によ る売 買価 格の 確定
)お よび
Di g .1 7, 2, 76
( 二種 類の
A rb itr iu m
が 存す る、 ひ とつ は
、 そ の判 断は 不当 なと き も拘 束力 を有 する 仲裁 人
(
ar b ite r
)(
exc o mp ro mi ss o
) で あり
、 もう 一 つは
、 その 判断 は公 平 な 裁 量に より 行わ れる 仲裁 人
(
ar b ite r
) であ る) を 引 用し た。 前 者の 法源
(
C o d .4 , 38 , 15
) から
、 売 買は 当事 者に よっ て そ の価 格の 確定 のた めに 選任 され た第 三者 が実 際に もそ の判 断を 下す とい うこ とに かか って いる との 見解 が導 かれ た。 判 断 が下 され るこ とが
、法 律上
、売 買契 約の 成立 のた めの 条件 とみ なさ れた
。条 件が 発生 した とき に、 初め て、 右行 為は 完 全 に効 力を 生ず る。 売買 価格 の確 定が 行わ れな いと きは
、売 買契 約は 締結 がな かっ たと みな され る。 そこ で、 その 判断 前 に おけ る売 買の 目的 物の 引渡 しは
、条 件付 きの 所有 権の 取得 であ り、 判断 がな され ず、 した がっ て条 件の 発生 がな かっ た と き、 所有 権は 自動 的に 売主 に回 帰す 上述 した よう にラ イヒ 裁 判所 も、
【
】一 八 八三 年判 決(
R G Z1 0, S .1 30 ff.
)で
、ロ ー マ法 源(
L .7 6 Di g . p ros o cio1 7, 2
)に
11
よ ると、事 前 に「 無 条件 で」 シー ズマ ンの 確定 に服 する こと がで きる 旨を 指摘 し、 ま た【
】一 八八 四年 判決
(
S eu ffA rc h 12
40 , S .1 61
) では
、 火災 保険 契約 にお ける 鑑定 人
・審 判人 によ る損 害査 定の 合意 を第 三者 の公 平な 裁量 によ る善 き人 の裁 断 を 認定 す る際 に
、別 の選 択 肢と して 第三 者 の自 由な 随意 に よる 自由 仲裁 を あげ てい る。 そし て【
】 一 八八 九年 判決
(
R G Z 15
24 , S .3 57 ff.
) は、 生命 保険 会社 の傷 害保 険約 款上 の、 労 働能 力の 喪失 期 間と その 程度 につ いて
、 専門 家委 員会 が法 的救 済 の 途を 排除 し て判 断す る条 項 につ き、 当事 者の 意 思に よる と、 第三 者の 認 定は 無条 件 で基 準に なる と 判示 して
「自 由仲 裁
」 を認 定し たも のと 解さ れる
。右 判旨 は、
【
】八 三年 判決 のい う「 当事 者の 明確 な意 思」 を、
「 法的 救済 排除 条項
」に 認め
11
たも のと 解さ れる。
( 1
る)
。
( 2
る)
。
─ ─
<
論 説>
修 道 法 学 三 七 巻 一 号
(
)
─ ─2
四 七 九 四 七 九
再び ヴィ ンタ ー説 の引 用す る「 自由 仲裁
」に 関す る判 例に つい
以下 に検 討す るこ とに する
。ラ イヒ 高等 商事 裁判 所 の いず れも 一八 七五 年の 三件 の判 例中
、ま ず自 由仲 裁を 認定 した もの と思 われ る判 例と して つぎ のも のが ある
。 2
【
】 ライ ヒ高 等商 事裁 判所 一 八七 五年 六月 一日 判 決(
R OHG E1 8, S .3 37 ff. ; S eu ffA rc h3 2, S . 14 9, Nr .1 18
) 当時 の法
16
制 やロ ーマ 法に 通じ ない 筆者 にと って、判 旨は 大変 に難 解で 詳細 な検 討ま でで きて いな いこ とを まず お詫 び申 し上 げる
。 理 解 し う る 限 り
、 つ ぎ の よ う な 事 案 お よ び 判 旨 と 思 わ れ る
。 東 プ ロ イ セ ン 南 鉄 道 会 社 Y 社 の 財 務 問 題 の 委 員 会
(
F in an zc o mi te
定 款五 七条
。以 下
「財 務委 員会
」 とい う。
) は総 合企 業X 社と の間 で、 工 事の 進捗 程度 に応 じて
、 会社 技 師 の発 行し た証 明書 によ って
、 会社 の株 券で もっ て
(
inA ct ie n
) 支払 いを 行う 旨の 鉄道 建設 工事 を内 容と する 請負 契約 を 締 結 した
。 その 後 に、 工 事完 成 前に Y社 の 財務 委員 会は X と合 意を 締結
(「 ブリ ュ ッセ ル合 意」 と称 され て いる
。)
、 そ れ に よる と、 Xは 右請 負工 事か ら撤 退し て、 建設 部門 を別 の建 築体 に譲 渡す る、 しか し請 求権 の補 償に つい ては
、当 時Y 社 の 技師 であ った Aが 査定 し、 Xが Aの 査定 に同 意し たと きは
、Y 社の 財務 委員 会は Xに 証明 書を 発行 する
、査 定に 不満 が あ ると きは
、金 額の 確定 は仲 裁人 の裁 判
(
sc h ie d sr ic h te rli ch er E n ts ch ei d u n g
) に委 ねら れる 旨が 定め られ た。 Yは
、定 款 五 九条 違反 ない し右 査定 の暫 定的 な 性格 を理 由に して
、A が 査定
・X が同 意し た株 式資 本金
(
A ct ie n ca p ita lb et ra g
)を X の 権 利継 承者 に引 き渡 すこ とを 拒否 した こと で、 ブリ ュッ セル 合意 の法 的拘 束力 が訴 訟上 争い にな った
、と いう 事案 のよ う で ある
。 第一 審・ 控訴 審と も、 右合 意は 法的 拘束 力な しと 主張 する Yの 異議 を退 けた
。た だし 第一 審は
、A 査定 に対 し反 証を 認 め て証 拠調 べを 実施 し、 Xの 請求 の一 部を 認容 した のに 対し
、控 訴審 は、 査定 人の 詐欺 また はそ の自 由な 意思 確定 を妨 げ
( 3
て)
、
─ ─ ド
イ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 四
)( 豊 田
)
(
)
─ ─3 四
七 八 四 七 八
る 事情 が証 明さ れな い限 り、 A査 定が 基準 にな ると して
、査 定額 全額 を認 めX の請 求を 認容 した
。Y 上告
、複 数の 論旨 中、 本 稿で 関心 のあ る問 題点 につ いて ライ ヒ高 等商 事裁 判所 はつ ぎの よう に判 示す る。
(
ⅰ) ブ リュ ッセ ル合 意で 技師 A に託 され た機 能は
、仲 裁鑑 定人
(
ar b itr at o r
)の それ と みな けれ ばな らな い。 Y社 は、 定 款 九条 にお いて
、技 師A が労 働に つい て証 明し た範 囲で 漸次 的に 株券 をX に支 払う べき 義務 を負 って いる
、右 技師 の任 命 と 解雇 は会 社の 随意
(
Wi llk ü r
)に 委ね られ てい る、 会社 は指 示に 従わ ない 技師 を別 の 技師 に交 替さ せる こと がで きる ので あっ て、 定め られ た証 明書 は技 師と 会社 の事 前の 通信 結果 とみ なす こと もで きる かも しれ ない
。し かし ブリ ュッ セル 合意 にお いて は、 Aは
、「 その 査定 が被 告 Yの 義務 の 程度 につ いて 確 定す る人 物」 であ ると 定 めら れて いる
。 Y は、 契 約 当事 者の 契約 意思 の未 確定 部分 に つい て補 充を 行う ので はな く、 単に 特 定の 限ら れた 給付 の価 値を 査定 ない し見 積る 方法 によ っ て 確 定を す る人 物 は、 仲 裁 鑑 定人
(
ar b itr at o r
) と みな す こと は で きな い と主 張 する が
、 その 根 拠は 確 か でな い。 まさ に
「単 なる 評価 また は査 定を する
」の は、 主 とし て「 仲裁 鑑定 人(
ar b itr at o r
)」 で ある
。判 旨は ここ でラ イヒ 高等 商事 裁判 所 の
【5
】一 八七 一年 判決
(修 道二 八巻 二号 九一 六頁 参照
)、
【 9】 一八 七二 年判 決( 同号 九二 八頁 参照
)、
【 2】 プロ イセ ン 最 上 級裁 判所 一 八五 四 年二 月七 日 判決
( 同巻 一 号一 七頁 参 照)
、 プ ロイ セ ン一 般ラ ン ト法 第一 編 第一 一章 四 八条
( 法 文は 同巻 一号 一六 頁以 下 参照
)、 およ び 学説
(グ リ ュッ ク、 ホル ツシ ュ ラー
)を 引用 する
。Y の考 え る反 対命 題(
G eg en sa tz
)は
、 実 際に は存 在し ない
。給 付ま たは 物の 価格 が第 三者 の判 断に 委ね られ た場 合、 まさ しく 契約 意思 の重 要部 分は 確定 して い な い。 第三 者に とっ て、 その 任務 が、 一般 的な 査定 原則 を特 定の 給付 また は物 に適 用し て瑕 疵を 調査 する こと に限 られ て い るか
、そ れ以 外に も、 査定 中に 含ま れる 給付 の範 囲を 自身 で確 定す るこ とま で委 ねら れて いる かは
、概 念に とっ て重 要 で は ない
。 決定 的な こと は、
「仲 裁鑑 定人
(
ar b itr at o r
) の場 合、 評価 の点 に関 して
、 契約 当事 者 の意 思に 代わ り第 三者 の
─ ─
<
論 説>
修 道 法 学 三 七 巻 一 号
(
)
─ ─4
四 七 七 四 七 七
意 思が 現れ る」 こと であ り、
「 単な る鑑 定人
」、 つま り、 その 鑑定 は、 当事 者が 訴訟 に対 して 基準 的価 値と 考え てい る事 柄 の 証 拠を 提示 す る鑑 定 人と は異 な る。
「 第 三者 が意 図 した こと を
、 契約 当 事者 は当 該 の点 に関 し て合 意し た
」 ので あ り、 特定 の査 定原 則に よっ て何 かが 明ら かに なる とい うも ので はな い。 当事 者が
、自 身の 意思 につ き特 定の 原則 を第 三者 に指 図す るこ とは ある かも しれ ない が。
(
ⅱ)
判旨 はさ らに
、 控訴 審の 判 断す ると ころ では
、 プロ イセ ン 法に おい ては
、 その よう な
ar b itr iu m
は
、 プロ イセ ン 一 般ラ ント 法(
A . L . R .
)第 一章 第一 一 部四 八条 およ び四 九条 にお いて 述べ ら れた 原則 によ れば
、詐 欺 また は
、控 訴 審裁 判 官 が考 え るよ うに
、
ar b itr at o r
の自 由な 意思 の 確定 を妨 げ るそ の他 の 事情 があ る場 合 にの み取 り 消し うる と する が、 これ に は 同意 で きな いと す る。 四 八 条お よび 四 九 条に おい て 売買 のた め に定 めら れ た売 買価 格 につ い ての 第三 者 の判 断を
、「 自 由 仲裁
(
ar b itr iu m me ru m
)」 と 性質 決定 する こと は認 めう るか もし れな いが
、こ の特 別規 定か ら、 プ ロイ セン 一般 ラン ト 法 によ ると
、あ ら ゆる
ar b itr iu m
は自 由仲 裁(
ar b itr iu m me ru m
)と み なさ なけ れば なら な いと いう 一般 的原 則を 導く こと はで きな
右四 八条
・ 四九 条が 対応 す ると ころ の法 源
(
l.1 5C o d .d ec o tr ah .e m t. IV , 38
) に 定め られ た
ar b itr iu m
も
、 自 由 仲 裁
(
ar b itr iu m me ru m
) と 解さ れて いる
( ゴー ル ドシ ュミ ット
、 アル ン ドゥ ツ、 ホ ルツ シュ ハ ー、 ド ーネ ラス の文 献 を引 用)
。し かし 右規 定を 除く と、 法 源に よっ ても
、 第三 者の
ar b itr iu m
を
「 純粋 な
(
re in es
)
ar b itr iu m
」 と考 える か、 そ れ とも
、重 大 な不 公正
(
p ro p te r m ag n ami m p ro b ita te m
)を 理由 にし て裁 判 官の 修正 に服 する
「 公平 な裁 量 のそ れ」 と 考え るか は、
「 具体 的な 事件 にお ける 判断 事項
」で あ る。 契約 当事 者の 一方 によ る
ar b itr iu m
に限 らず
、善 意( 誠意
)の 行為 の 場 合(
b ei n eg o tii sb o n a fid ei
)に も
、疑 わし いケ ース では 後者
(公 平な 裁量 によ る
ar b itr iu m
) と考 えら れる
( ライ ヒ高 等 商 事 裁 判 所 一八 七 五 年 三月 二 日 判 決
R O H G 16 , S .4 27 ff.
を 引 用)
。 判 旨 は 法 源
(
l.7 6 D. p ros o ci o , 17 , 2; l.3 0 D. De o p e ris
( 4
い)
。
─ ─ ド
イ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 四
)( 豊 田
)
(
)
─ ─5 四
七 六 四 七 六
lib er t., 38 , 1
)お よび 学説
(シ ェッ ぺ、 ケ ラー
、ベ ニ ング
・ ユー ゲン ハイ ム、 ア ルン ドゥ ツゥ
、ズ ィ ンテ ニイ スの 文献
)を 引 用し てい る。
(
ⅲ) 判 旨は
、 さ らに つづ けて
、 ド イツ の新 しい 法案 は、 第 三者 の
ar b itr iu m
を 公平 な裁 量 によ るも の、 し たが って 明 ら かな 不公 平を 理由 にし て裁 判官 が修 正し うる もの と捉 えて いる
(バ イエ ルン 民法 典第 二編 三一 条a 六一 頁、 連邦 国家 の た め の債 務関 係 に関 する 法案 九 条・ 三 四条 以下
・ 五 六条 一二 六頁
)。 他方
、 プ ロイ セン 一 般ラ ント 法
( 第一 編第 五 章七 二 条
・ 七三 条は 第三 者の 判 断の 性質 につ いて 詳細 に定 めて な
四 八条
・ 四 九条 は特 別な
ar b itr iu m
を自 由仲 裁
(
ar b itr iu m
me ru m
) と 性質 決定 して いる
) が、 これ ら以 外の
ar b itr iu m
の事 案に つい て、 普通 法学 説が 一般 的に 考え てい た善 き人 の 裁 断(
ar b itr iu mb o n i vir i
) の推 定か ら乖 離し よう とす る意 図で あっ たか は、 疑問 であ る( とり わけ
、確 定 され てい ない 合 意 部分 は公 平な 裁量 の観 点か ら補 充さ れる とい う一 般的 原則 は、 さま ざま なと ころ で現 れて いる
。プ ロイ セン 一般 ラン ト 法 第一 編第 五章 二三
〇条
・二 六〇 条・ 二六 七条
、第 一一 章八 七一 条・ 八七 三
ス トゥ ルー ベン を引 用) とし たう えで
、 し かし 本件 にお いて は、
「事 案の 特 別な 状況 によ れば
、こ こ で合 意 され た
ar b itr iu m
は契 約当 事者 の意 思か らみ て、 何ら か の 不公 平を 理由 とす る( 裁判 官の
)修 正は でき ない もの とみ なけ れば なら
」な いと して
、右 問題 につ き裁 判所 は判 断を す る 必要 はな いと する
。
(
ⅳ) 判 旨は
、今 日の 法に とっ て、 義 務の 範 囲が 未確 定と い う理 由か ら、 第三 者の 純粋 な 自由 裁量
(
re in eG u tb ef in d en
) の 合意
(公 平な 観点 から の修 正は 行わ れな い) の有 効性 を認 めな い見 解が ある
(ズ ィン テン ス、 ホル ツズ ュー ヒャ ー、 債 務 法草 案第 一編 一二 六頁
)。 し かし 判旨 は、 本件 にお いて
、鉄 道建 設工 事全 体に つき 定め られ た株 式資 本(
A ct ie n ca p ita l
) に より 給付 範囲 の限 界線 は存 在し
、ま った く抽 象的 であ ると いう 疑問 はな いと して
、右 見解 が正 当か は未 定に して よい
、
( 5
く)
、
( 6
条)
、
─ ─
<
論 説>
修 道 法 学 三 七 巻 一 号
(
)
─ ─6
四 七 五 四 七 五
そ の客 観的 な限 界線 の枠 内で
、第 三者 が相 当と した 株式 資本 を、 異議 を留 めず に給 付す る旨 の合 意は 何ら 妨げ られ ない
、 今 日 の普 通法 によ っ ても
、 自由 仲裁
(
ar b itr iu m me ru m
) の 適法 性に つ いて 一般 的に 疑い は ない のと 同様 であ る、 と判 示 す る( 前掲 の文 献、 ウイ ンド シャ イ
ロ ーマ 法源
(
l.7 6 D. p ros o cio1 7, 2.
) を引 用)
。 発行 され た証 明書 に従 って 株式 資本 全部 を即 時に 交付 する 義務 は、 異議 を留 めず に交 付す べき 義務 と同 義で ある
。特 に 合 意中 で、
「 契約 当事 者双 方を 区別 して 取り 扱っ てい る」 点が 決定 的で ある
。技 師A だけ が異 議を 申し 立て る権 限を 有し
、 そ の後 の手 続が 定め られ てい る。 技師 Aの 受諾 した 金額 の支 払い を会 社が 拒否 する のは
、義 務の 履行 の拒 絶と みな され
、 そ の強 制の ため に仲 裁手 続は 必要 ない
。判 旨は
、ブ リュ ッセ ル合 意は
、合 意中 でま だ確 定さ れて いな い査 定原 則に つい て の 判断 も技 師の 裁量 に委 ねた もの であ り、 技師 の証 明書 は合 意中 に定 めら れた 権限 の限 定を 守っ てい ると する 原審 の判 断 に 従う
、と する
。 右判 旨は
、① Xお よび Yが ブリ ュッ セル 合意 によ って 技師 Aに 委ね た査 定ま たは 評価 の内 容、 つま り、 請負 工事 債権 の 譲 渡に 伴い Yが 給付 すべ き義 務の 程度
(補 償額
)を 確 定す ると いう 任務 から
、A を仲 裁鑑 定人
(
ar b itr at o r
)と みな して い る
。査 定原 則を 確定 する 判断 も、 その 裁量 に含 まれ ると する
。そ の際 に右 判旨 は、 プロ イセ ン最 上級 裁判 所と ライ ヒ高 等 商 事裁 判所 の先 例を 引用 し てい るが
、そ れぞ れ
、( ア
)補 償額 の査 定(
【2
】プ ロイ セン 最上 級裁 判所 一 八五 四年 判決
)、
(イ
) ヒ ョ ウ災 害に よる 減 収額 の確 定
( ライ ヒ高 等 商事 裁判 所
【 5】 一 八七 一 年判 決)
、
③ 海難 救助 料 の確 定
(ラ イ ヒ高 等商 事 裁 判所
【9
】 一八 七二 年判 決) が問 題に なっ た事 案で
、【 2】 判 決 およ び
【5
】 判決 はそ れ ぞれ
、 第三 者は
、 法的 紛 争を 判断 する 仲裁 人で はな く、 評価 また は査 定を 行っ て契 約を 補充 する 任務 を有 する 仲裁 鑑定 人と みな して いる
。こ れに 対し
、
( 7
ド)
、
─ ─ ド
イ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 四
)( 豊 田
)
(
)
─ ─7 四
七 四 四 七 四
【9
】 判決 は それ を 仲裁 合意
、 し たが って 仲 裁人 の判 断 と解 し たも ので あ った が、 普 通 法と は 異な りブ レ ーメ ン法 の 適用 事件 であ った ため に上 訴を 肯定 して いる
。そ して
、同 判決 も普 通法 に関 して は【 5】 判決 と同 旨を 述べ てい る。 そう する と、 右判 旨は
、こ れら 先例 に従 って
、技 師A の任 務内 容か ら仲 裁鑑 定人 と解 した もの と思 われ る。 仲裁 鑑定 人の 評価 は、
「契 約当 事者 の意 思に 代わ
」る もの と判 示し てい る点 で、 その 任務 は契 約の 補充 と考 えて いる こと がう かが える
。
② 判旨 は つづ けて
、( ア) 普 通 法学 説は
、 プ ロイ セン 一 般ラ ント 法 第一 部第 五 章四 八条
・ 四 九条 は売 買 価格 に関 して 第 三者 の
「自 由仲 裁
」 を定 めて いる と 認め てい る
(ロ ー マ法 源
(
l.1 5C o d .d e co tr ah .e mt . IV , 38 .
し かし
、 批 判説 もあ る)
)、
(イ
)た だし
、 右特 別規 定か らす べて の
ar b itr iu m
を自 由仲 裁と みる こと はで きず
、 純粋 な(
re in es
) 仲裁 鑑定 か、 それ と も 公 平な 裁量 に よる 裁断 かは
、 事 件毎 の判 断 事項 とす る。
(ウ
) そ して
、 当事 者 の意 思が 疑わ し いと きは
、 公 平な 裁量 に よ る裁 断で ある と解 され てい ると する
。上 述し たよ うに
、ウ イン ドシ ャイ ド説 も( イ) およ び( ウ) につ いて は、 同旨 を 述 べ てい る
(後 掲注
( 7) 参照
)。 この よう な考 え方 にた って
、 判 旨は
、 本件 合意
(ブ リュ ッセ ル合 意) は
、 査 定原 則の 確定 およ びY の給 付義 務に つい ての 証明 書の 発行 を技 師A の裁 量に 委ね
、Y はそ れに 異議 なく 従う 趣旨 であ ると して
、こ れを
「自 由仲 裁」 と同 じも ので ある と解 して いる
。ワ イズ マン 説が 第三 者の 自由 仲裁 につ いて 論じ たと きに
、引 用し たの は右
【
】七 五年 判決 であ
16
3と ころ で【
】 七五 年判 決は
、判 旨(
ⅱ) 部分 で当 事者 の意 思が 疑わ しい 場合 の解 釈基 準を 述べ る際 に、 その 三か
16
月前 にな され た【
】 ラ イヒ 高等 商事 裁判 所一 八七 五年 三月 二 日判 決
(
R OHG E1 6, S .4 27 ff. ; S eu ff B d .3 5, N r. 23 7
) を引 用
17
す る。 この 判決 は、 毛織 物製 造業 者の 組合 に対 し、 非組 合員 であ る相 続人 が、 被相 続人 が当 該組 合か ら脱 退し た際 の退 職( 8
る)
。
─ ─
<
論 説>
修 道 法 学 三 七 巻 一 号
(
)
─ ─8
四 七 三 四 七 三
賠 償金 を訴 求し た事 件 で判 示さ れ たも ので ある
。組 合 契約
(
S o cie tä ts ve rt ra g
)に は
、被 相続 人死 亡 後の 退職 金(
A b fin d u n g
) の 算定 方法 が定 めら れて い
(
ⅰ) ラ イヒ 高等 商事 裁判 所は
、補 充的 な法 律規 定お よび その 種の ケー スに 定め られ た裁 判手 続の 原則 を排 除し たう え で
、当 事者
(
p ac is ce n te n
)が 意 図的 に十 分確 定 して いな い非 常 に重 要部 分に 関 する 事後 的な 確定 を、 善き 人(
g u teM an n er
) に よっ て、 いわ ば契 約当 事者 の心 で行 う旨 の合 意は
、地 域の 取引 需要 から 生ま れた もの であ ると して
、右 合意 の意 義は
、 原 則と して 仲裁 人の 判断 に向 けら れた もの では ない とし た。
①判 旨は
、そ の理 由と して
、当 事者 の意 思は
、意 図的 に不 完 全 にし てい る確 定を 補充 的に 完全 なも のに する とい うも ので
、契 約内 容に つい ての 争い を裁 判す るも ので はな い。 この 際 に 判 旨は
、 前掲 ラ イヒ 高等 商事 裁 判所 の先 例
(【 5
】 七一 年 判決
、【 9】 七 二年 判 決)
、 お よび プロ イセ ン最 高 法院 の先 例
(【 1】 四四 年判 決、
【2
】 五四 年 判決
) な
引 用す る
。
②判 旨は また
、 契 約当 事者 の意 図 は、 合 意の 存続 が 事後 的な 確 定 にか かっ てい ると いう
、真 実の 条件 に向 けら れた もの では ない
、む しろ
、実 定法 規に 定め られ た場 合を 除き
、契 約当 事 者 の意 思に 従っ て、 必要 な場 合に は裁 判官 の裁 量
(
A rb itr ir u n g
) が補 充的 に加 わる
、特 に商 取引 では そう した 明確 な意 思 が 基 準に なる
(商 法典 二七 八 条・ 二 七九 条)
、 と する
。
③ さら に判 旨 は、 必 ずし も 事後 的な 確定 を 第三 者に 委 ねる 必要 は な く、 共同 契約 者
(
M itc o tr ah en te n
) の 一人 に契 約上 そう した 権限 を認 める こと は一 般的 に許 され る。 すな わち
、 契約 者 が その 誠実 さと 良心 を信 頼し てい る点 に、 合意 また は法 律に よる 保障 に代 わる 十分 な正 当化 の根 拠が 認め られ るの であ り、 重 大な 信頼 の濫 用が 阻止 され る限 り、 処 分権 者を その 思慮 なき 行為
(
U n b es o n n en h ei t
)の 結 果か ら保 護す る理 由は ない と す る。
(
ⅱ) 判 旨は また
、売 買や 用益 賃貸 借の 目的 物・ 価格 など
、そ の性 質上
、法 律の 規定 によ る補 充が でき ない 重要 な契 約
( 9
た)
。
(
)
ど10
を
─ ─ ド
イ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 四
)( 豊 田
)
(
)
─ ─9 四
七 二 四 七 二
上 の定 めを 契約 当事 者の 一方 の裁 量に 有効 に委 ねる こと がで きる かは 疑問 があ るか もし れな いが
、普 通法 の法 源は そう し た 合 意の 適法 性 に疑 問を も って いな い、 とす る
(ロ ー マ法 源の 引
①判 旨に よる と
、 多く の ケー スに お いて
、 契約 当 事 者の 一方 の公 平な 裁量 が義 務の 範囲
、む しろ 義務 の存 在に とっ て決 定的 な内 容の 合意 は、 有効 であ ると 承認 され てい る
(ロ ーマ 法源 の引
② ただ し、 合意 から
、契 約当 事者 の随 意が 決す るの か、 それ とも 公平 な裁 量で ある のか が明 らか に な ら ない 限 り、 解 釈 によ って 後 者の 意 味で 契 約を 維持 す ると い う一 般 的な 原則 が 承認 さ れて い る
(ロ ーマ 法 源の 引
③そ のよ うな 公平 な裁 量、 善き 人の 裁断
(
b o n i vir i ar b itr iu m
) は、 客観 的な もの
、し たが って 裁判 官の コン トロ ール
、必 要 な場 合に その 修正 に服 する もの とみ なさ れ、 それ ゆえ に不 公平 な確 定は 裁判 官に よっ て修 正さ れる
、と いう 一般 的な 法 原 則が たて られ てい る、 とす る。
(
ⅲ) 判 旨は これ に続 けて
、し かし なが ら、 プロ イセ ン法 では その よう な規 定が 欠け てい ると 指摘 する
。① むし ろプ ロ イ セン 一般 ラン ト法 によ ると
、そ の対 象が まっ たく 確定 でき ない
、ま たは
、そ の確 定・ 履行 が義 務者 の「 随意
」に 委ね ら れ て いる 契約 は
、 拘束 力が な い
(同 法 第一 編第 五章 七 一条
)。
②ま た解 除 条件 が、 意思 表示 を した 者ま たは そ れに より 義 務を 負 う 者が ま っ たく 確 定 され て い ない 随 意 にか か っ てい る よ うな 場 合
、 意思 表 示 自体 は ま った く 法 的 効果 を も たな い
(同 法同 編第 四章 一〇 八条
)。
③ さら に履 行が 可能 性ま たは 場所 につ いて 未確 定の 表現 で約 束さ れて おり
、履 行時 期を 義務 者の 随意 に委 ねる こと はで きな い限 り、 裁判 官の 確定 が行 われ る( 同法 同編 第五 章二 三六 条)
。こ のよ うに 述べ たう えで
、 判旨 は、
④そ れゆ えに 理論 や実 務で は、 契約 当事 者の 一方 の「 公平 な裁 量」 が詳 細な 定め のな い義 務の 範囲 を決 する とい う趣 旨の 契 約は 有効 とみ なさ れて いる
、と する
。
(
ⅳ) 最 後に 判旨 は、 この 事件 の解 決と して
、① Xの 申立 てを 認容 した 控訴 審判 決は
、組 合契 約上 の合 意は プロ イセ ン
(
)
用11
)。
(
)
用12
)。
(
) 13(
)
用13
)。
─ ─
<
論 説>
修 道 法 学 三 七 巻 一 号
(
)
─ ─10
四 七 一 四 七 一
一 般ラ ント 法第 一編 第五 章七 一条 に違 反し てい るこ とを 看過 して いる
、② しか し、 控訴 審裁 判官 は、 償還 すべ き持 分権 の 算 定の 原則 につ き、 組合 員の 随意 では なく 一定 の裁 量に 委ね られ てい ると 解し てい る点 に、 注視 する
。つ まり
、控 訴審 裁 判 官は
、組 合構 成員 に対 して
、法 律が 裁判 所の
「価 格査 定人
」に 課し てい るの と同 じ「 慎重 さ、 誠実 さ、 およ び中 立性
」 を 要求 して いる ので ある とし て、 判旨 は控 訴審 判決 を正 当と して 維持 して いる
。 右 判旨 は、 そ の
(
ⅰ)
① 部分 で
、【
】 六 月判 決と 同 じラ イヒ 高 等商 事裁 判所 お よび プロ イ セン 最高 法院 の 判例 を引 用
16
し て本 件合 意を 解釈 して おり、契 約を 補充 する 仲裁 鑑定 人像 を本 件組 合契 約の 構成 員に 認め たも のと 解さ れる
。し かし
、 判 旨(
ⅰ)
②部 分で は、 その 法的 性質 につ いて の「 条件
」説 を否 定す るよ うな 判示 にも 解さ れる
「真 の」 条件 では な い とし てい る点 では なお 条件 説に とど まっ てい ると も解 せよ うか
。さ らに 判旨
(ⅰ
)③ 部分 では
、契 約の 事後 的確 定を 第 三 者で はな く、 共同 契約 者の 一人 に委 ねる 合意 も適 法と して いる
。第 三者 の独 立性 の問 題は
、た とえ ば【
】 六月 判決 は、
16
Y 社の 技師 Aに よる 判断 の事 案で あっ たに もか かわ らず、判 旨は この 問題 につ いて 特に 言及 して いな いが
、本 件は 当該 組 合 の構 成員 自身 によ る確 定の 事案 であ り、 判旨 は特 にこ の点 にも 言及 する 必要 があ った もの と解 せよ うか
。し かし 右判 旨 は また
、そ れを
「思 慮な き行 為」 と批 判的 な評 価を 加え たう えで
、そ の代 償が その 者の
「誠 実さ と良 心」 であ ると 指摘 し て いる
。こ の点 では
、自 由仲 裁を
「特 定の
」人 物に よる 判断 と位 置づ ける 学説 との 親近 性が うか がえ るよ うに 思わ れる
。 ま たそ の場 合の 判断 基準 の確 定も 個別 的事 案で の判 断と して
、当 事者 の意 思が 疑わ しい とき は、 一方 の契 約当 事者 によ る
「公 平な 判断
」と して いる 点で は、
【
】六 月判 決と 同旨 であ る。
16
判旨 は、(
ⅱ) 部分 では 普通 法、
(ⅲ
)部 分で はプ ロイ セン 法の それ ぞれ 扱い につ いて 判示 して いる
。普 通法 に関 して は、
(
)
が14
、
─ ─ ド
イ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 四
)( 豊 田
)
(
)
─ ─11 四
七
〇 四 七
〇
ロ ー マ 法源 が 引 用さ れ て いる が
、 筆 者は そ の 検討 を して い な い。 ま た プ ロイ セ ン 法に よ る と、 一 方 の契 約 当 事者 に よ る
「 随意
」 の 確定 は許 され ない が
、 学説 や判 例は
「公 平」 な 確定 を許 容 する と指 摘す る。 判 旨 は、 最 後の
(
ⅳ) 判示 部分 に お いて
、こ の考 え方 から 原判 決を 維持 した もの と解 され る。 4
【
】 ライ ヒ高 等商 事裁 判所 一八 七五 年一
〇月 一八 日判 決(
R OHG E1 8,S .2 58 f.
) 事 件 の詳 細は
、判 旨か ら明 らか で
18
な い。 被告 Y社 の主 張に よる と、 Y社 は原 告X に対 して、年 収(
p roa n n o
) 一二
〇〇 ター レル で事 務所 のポ スト を与 える
、 同 社の 期待 通り に仕 事が 遂行 でき たと きは
、一 五〇
〇タ ーレ ルま で給 与を 増額 する
、双 方の 契約 解雇 の期 間は 三か 月と す る 旨の 通知 をし てい る。
(
ⅰ) 判 旨は
、右 文言 から する と、 Yの 裁量 によ って
、X の職 務遂 行が 申し 分の ない もの であ ると みな され る場 合に
、 Y はX の給 与を 徐々 に一 五〇
〇タ ーレ ルま で引 き上 げる 趣旨 の約 束を 含む もの と解 され る。 右約 束は 義務 を基 礎づ ける も の で、 単な る見 込み を示 すも ので はな い。 しか しそ れに もか かわ らず
、添 付の 約定 は、 商法 典に よる 試供 品の 売買 の場 合 と 同様
、Y の純 然た る随 意に よる もの と解 され るの であ り、 約束 は( Yに
)義 務を 発生 させ るこ とは でき ない
。
(
ⅱ) ま た判 旨は
、Y は随 意で はな く、 公平 な裁 量に よっ て、 Xの 職務 遂行 が申 し分 のな いも ので ある かを 判断 する と い う見 解も
、考 えら れる
、そ の場 合に
、Y の受 諾は 義務 を基 礎づ けた こと にな るが
、本 件に おい てそ のよ うな 見解 は相 当 で ない とす る。 判旨 はつ ぎの 点を 指摘 する
。① すで に「 約束 の文 言」 が、 それ に反 対す る。 Yの 主張 する よう な表 現を す る 者は
、文 言の 意義 によ ると
、被 雇傭 者の 職務 遂行 が給 与を 増額 する のに ふさ わし いほ どに 満足 でき るか 否か の判 断を
、 も っぱ ら、 自己 の感 情外 にあ って
、あ らゆ る客 観的 な基 準を 排除 した 個人 的な 裁量 に残 して おく もの であ る。
②ま たY の
─ ─
<
論 説>
修 道 法 学 三 七 巻 一 号
(
)
─ ─12
四 六 九 四 六 九
約 束の 文言 解釈 によ る右 結論 は、 三か 月の 解雇 期間 の合 意に よっ て基 本的 に支 持さ れる
。( 右 合意 は)
、非 常に 短期 間に 関 係 を解 消す る権 能を
、Y と同 様、 Xに も付 与し たも ので
、右 権能 と並 び、 Yが 法的 な義 務を 引き 受け る意 思で あっ た蓋 然 性 は非 常に 小さ い、 とす る。 右判 旨に つい て筆 者の 理解 はな お十 分で はな いが
、当 事者 間の 雇傭 契約 に基 づく 報酬 額の 増額 につ いて
、契 約の 一方 当 事 者で ある Yの 随意 によ る裁 量を 肯定 した が、 法律 上の 義務 まで は認 めな かっ た事 例と 解せ よう か。 同様 に雇 傭契 約上 の 合 意ケ ース であ るが
、ラ イヒ 高等 商事 裁判 所は つぎ の事 件で は自 由仲 裁の 合意 を認 めて いな い。 5
【
】 ライ ヒ高 等商 事裁 判所 一八 七七 年一
〇月 一三 日判 決(
R OHG E2 3, S .8 1f f.
) 原 告X は被 告Y 社に 属す るガ ス工
19
場 の管 理者 に雇 用さ れて いた。一 八六 六年 三月 一九 日、 雇傭 契約 は雇 傭期 間を 五年 間延 伸し て更 新さ れ、 報酬 額は 一二
〇
〇
(
sl.
) に引 き上 げる
、さ らに Xは 契約 期間 の終 了時 にY の株 式を 額面 相場 で受 け取 る旨 Yと の間 で合 意を した
。た だし
、
「管 理委 員会
(
V er w alt u n g sr at h
) が、 五年 間に Xの 仕事 に満 足し た場 合は
」 と いう 文言 が右 合意 に付 され て いた
。 Yは
、
L .R .S .
一一 七四 条
(フ ラン ス民 法典 一一 七四 条参 照) の 準用 を考 えて いる
。事 案は
、 Xが Yに 対し
、 株券 の引 渡し を求 め て 提起 した 訴訟 であ る。
(
ⅰ) 判 旨は
、Y の主 張は 理由 がな いと する
。株 券の 配当 は、 もっ ぱら Yの 随意 だけ にか かっ てい るも ので はな い。 条 件 付き の売 買に つい て
(「
si re sp la cu er it
」)
、そ れは 単に 自由 仲裁 によ るだ けで なく
、善 き人 の裁 断に よる もの であ ると の 見 解が 主張 され てい るが
、右 見解 は、 本件 のよ うな 契約 に対 して は
L .R .S .
一 一三 四条 三項
(
§. 3.
)を 適用 しな けれ ばな ら
─ ─ ド
イ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 四
)( 豊 田
)
(
)
─ ─13 四
六 八 四 六 八
な い。
(
ⅱ) 職 務遂 行に 対す る報 酬の 一部 の支 払い が契 約期 間の 最後 に延 期さ れる 場合
、そ れに より 雇い 主は 誠実 な職 務遂 行 を 確保 した ので あり
、被 雇傭 者は 雇い 主の 満足 を得 られ るよ うに 職務 遂行 に専 念し よう とい う自 覚や 決心 が強 いほ ど右 の よ う な報 酬確 定 を承 諾 する こと も 多く なる の であ る。 つ ま り、
「X は、 明 ら かに Yの 主 観的 な 随意 に服 す る意 思は な く、 客観 的な 要 素、 X の仕 事 は申 し分 の ない もの で ある とい う 事実 に服 する
」 つ もり で ある
。 それ に よる と、
「そ のよ う な約 束は
、争 いが ある とき は、 Yは 不満 な点 の理 由を 説明 して
、そ のた めの 事実 を指 摘し なけ れば なら ず、 かつ
、裁 判官 はそ の相 当性 につ いて 判断 しな けれ ばな らな いと いう 効果 を生 ずる
。」 判
旨は
、雇 傭契 約に おい て報 酬額 の増 額の ため の管 理委 員会 の判 断に 関し て、 当事 者の 意思 は、 Yの 主観 的な 随意 判断 では なく
、「 客観 的な 要素
」を 考慮 した 確定 であ り、 それ に対 する 争い は裁 判官 に委 ねる 趣旨 であ ると 指摘 して
、「 自由 仲 裁
」の 合意 を認 めて いな い。 さて
、以 上に 検討 した ライ ヒ高 等商 事裁 判所 の判 例に おい ては
、① 第三 者ま たは 一方 契約 当事 者の 随意 によ る「 自由 仲 裁
」 の 合 意を 認 定 した ケ ー ス
(【
】 七五 年 六 月一 日 判 決、
【
】 同年 一
〇 月一 八 日 判決
) と そ れを 認 め なか っ たケ ー ス
16
18
(【
】 同年 三月 二日 判決
、【
】 七 七年 一
〇月 一三 日判 決) に 分か れる
。
② 七五 年の
【
】 六月 判決 およ び
【
】 三 月判
17
19
16
17
決が 判示 して いる が、 普通 法学 説は プロ イセ ン一 般ラ ント 法第 一部 第五 章四 八条・四 九条 は売 買価 格に 関し て第 三者 の自 由仲 裁を 認め たも のと 解し
、ロ ーマ 法源 にそ の起 源を 求め てい る。 そこ でい う自 由仲 裁は
、契 約補 充型 の仲 裁鑑 定人 像が
─ ─
<
論 説>
修 道 法 学 三 七 巻 一 号
(
)
─ ─14
四 六 七 四 六 七
考 えら れて いる
。そ して 自由 仲裁 は第 三者 だけ でな く、 契約 の一 方当 事者 が行 うこ とも でき る。 ただ し、 随意 か公 平な 裁 量 かは
、事 件毎 の裁 判所 の解 釈に 委ね られ
、当 事者 の意 思が 疑わ しい とき は、 公平 な裁 量に よる もの と解 され
両者 の 違 い は出 訴に よ り裁 判 官の 修正 に 服す るか 否 かで あり
、 公 平な 裁 量に よる 裁 断の みが 裁 判官 の修 正 に服 する
。【
】 七五
17
年三 月判 決は、契 約の 一方 当事 者に よる 給付 確定 の合 意に つい て、 普通 法と プロ イセ ン法 の扱 いの 違い を判 示し てい るが
、 つぎ のプ ロイ セン 最上 級裁 判所 は、 契約 の一 方当 事者 によ る随 意の 判断 を定 めた 合意 の拘 束力 につ いて 判示 して いる
。 6
【
】 プロ イセ ン最 上級 裁判 所一 八七 五年 一月 八日 判決
(
Ob T rib7 4, S .1 ff.
) 被告
・ レス トラ ン経 営者 Yは
、 賃貸 人
20
X との 間で、一 八六 六年 九月 二六 日付 けの 書面 によ る契 約で
、庭 園を 含む 複数 の建 築用 地を 一八 六六 年一
〇月 一日 から 一 八 七二 年ま での 六年 間賃 借り する こと にし た。 右賃 貸借 契約 第六 条は
、つ ぎの よう に定 めて いた
。す なわ ち、 賃借 人Y は 賃 借地 にお いて レス トラ ンを 経営 し、 その ため に建 築物 の改 築を 行う
。Y は、 改築 建物 を契 約解 消時 に存 置す る義 務を 負 い
、X は自 己の 裁量 でY に補 償す る義 務を 負う
。Y は、 契約 期間 中に ホー ルや ポー チを 設置 した が、 期間 終了 後に 移転 す る 際に 右建 物を 撤去 し、 資 材を 保有 した
。こ れに 対し Xは
、撤 去時 の建 物の 価値 は四 三〇 ター レル
(
T h lr n .
)、 裁量 で定 め た 補償 額五
〇タ ーレ ルを 控除 して 三八
〇タ ーレ ルを Yに 請求 した とい う事 件で ある
。第 一審
、控 訴審 とも Xの 請求 棄却
、 X の無 効抗 告は プロ イセ ン最 上級 裁判 所に より 棄却 され た。
(
ⅰ) プ ロイ セン 最上 級裁 判所 の判 旨に よる と、 控訴 審裁 判官 は、 賃貸 借契 約六 条中 の合 意を
、Y は撤 去に 当た りX に 一 定の 建物 を売 買に より 存置 する 義務 を負 うと いう 趣旨 の、 独自 の副 次的 合意 とみ なし たが
、こ れに 対し 無効 抗告 によ っ て 不服 申し 立て はで きな い、 とす る。 六条 は主 たる 契約
・賃 貸借 契約 とは 独立 した 副次 的契 約で ある と解 した 場合
、こ の
(
)
る15
。
─ ─ ド
イ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 四
)( 豊 田
)
(
)
─ ─15 四
六 六 四 六 六
契 約も 契約 の総 則規 定に よっ て判 断し
、そ の要 件に 合致 する もの でな けれ ばな らな い。 Yが Xに 存置 すべ き目 的物 は、 十 分 に特 定さ れて いる
。し かし それ は無 償で はな く、 Xは その 建物 に対 し特 別に 補償 をし なけ れば なら ない
。補 償額
、す な わ ち、 売買 によ って 存置 され る目 的物 の価 格は
、義 務者 であ るX の裁 量に 委ね られ る。 つま り、 補償 額は 完全 に義 務者 の 随 意に かか って いる
、そ の確 定は いか なる 方法 によ って も制 限さ れな い。 その よう な事 実上 の要 件の もと では
、プ ロイ セ ン 一般 ラン ト法 七一 条が 適用 され る。 同条 によ れば
、そ の目 的物 が未 確定 の契 約、 また は、 その 確定 ない し履 行が 義務 者 の 随意 に委 ねら れて いる 契約 は、 拘束 力が ない
。
(
ⅱ) 控 訴審 裁判 官は
、ま た、 一定 の目 的物 の売 買に よる 存置 が当 事者 間で 合意 され てい ると 判断 する こと で、 プロ イ セ ン一 般ラ ント 法四 七条 を指 示し てい る。 同条 によ ると
、売 買価 格そ れ自 体ま たは 将来 の出 来事 につ いて は、 然る べく 確 定 され なけ れば なら ない 旨規 定さ れて いる
。無 効抗 告は
、Y が六 条に より 補償 を求 める 権利 を有 して いる こと を認 めて い る
。補 償の 額が 賃貸 借契 約の 締結 の際 に、 概括 的な 金額 では ない にし ても
、何 らか の基 準に よっ て、 たと えば 鑑定 人の 鑑 定
、消 耗費 用を 考慮 して 出費
、ま たは 公平 な裁 量に よっ て確 定さ れる 旨な ぜに 規定 され てい ない のか
、明 らか でな い。 し か し、 Xの 主張 する 補償 額を もっ ぱら 自身 の裁 量だ けで 定め ると いう 権利 は、 契約 の本 質と 合致 しな いほ どに 限定 され て な く、 随意 的な もの であ る。 Yが この 際に Xの 随意 を認 容し よう とし てい たこ とは
、X の主 張す る請 求権 から 明ら かに な る
、そ れに よる と、 Xは
、撤 退時 の建 築物 の価 格を 四三
〇タ ーレ ルと 見積 もり なが ら、 Yに 対し 五〇 ター レル の補 償額 し か 認め てい ない ので ある
。X の引 用す る当 裁判 所第 四部 の一 八六 五年 六月 一三 日判 決は
、異 なっ た要 件事 実を 基礎 にお い て いる
。
(
ⅲ) 本 件に おい ては
、控 訴審 裁判 官の 契約 の解 釈に よっ て、 反対 給付 の確 定は 義務 者で ある Xの 随意 に委 ねら れて い
─ ─
<
論 説>
修 道 法 学 三 七 巻 一 号
(
)
─ ─16
四 六 五 四 六 五
る
、し たが って
、賃 貸借 契約 六条 中の 合意 は、 プロ イセ ン一 般裁 判所 法七 一条 に服 する と認 定さ れて いる
。同 法二 七〇 条 は
、法 的拘 束力 のあ る契 約を 前提 にし たも ので あり
、X に有 利と はな らな い。 両規 定の 違反 に基 づく 無効 抗告 は、 理由 が な い、 とす る。 ラ イヒ 高等 商 事裁 判所 の前 掲
【
】 七 五 年三 月判 決 が同 旨を 述 べて いる が
( 前掲
③判 示 部分
)、 右プ ロイ セ ン最 上級 裁
17
判 所【】 七五 年判 決は プロ イセ ン一 般ラ ント 法七 一条 を適 用し て、 本件 賃貸 借契 約上 の義 務者 の随 意に よる 補償 額の 確
20
定 合意 につ いて、そ の拘 束力 を認 めて いな い。 それ は、 契約 の本 質に 反す る合 意で ある と指 摘さ れて いる
。 7 最後 に、 ライ ヒ裁 判所 の自 由仲 裁に 関す る判 例を みる こと にす る。 前掲
・ラ イヒ 裁判 所は
、一 般論 とし て「 自由 仲 裁
」を 肯定 して いる
(【
】一 八八 三年 判決
、【
】 一八 八四 年判 決、
【
】 一八 八九 年判 決)
。ラ イヒ 裁判 所の 判例 とし て
11
12
15
は、つ ぎの 二件 が引 用さ れて いる
。 ま ず
【
】 ライ ヒ 裁判 所一 八八
〇年 四 月二 三日 判決
(
R G Z1 , S .3 38 ff.
) であ り、 つぎ のよ うな 事件 であ る
。 原告 X女 の
21
夫 A は、 X およ び 五人 の子 を 残し て死 去( 一八 七三 年 二月
)、 Aお よび X の双 方近 親 者か らな る 親族 会は
、 遺 族へ の援 助 が相 当で ある と決 定し た。 Xの 両親 は、 生涯 にわ たり 住居 を無 償で 提供 する 義務 を負 い、 亡夫 Aの 五人 の親 族は 普通 法に 従っ て親 族会 を構 成し
、年 四回 特定 額の 定期 扶養 料を 支払 う義 務を 負う
、X は生 命保 険料 を親 族会 の管 理に 委ね
、す べて の関 係者 が契 約書 に署 名し た( 一八 七三 年二 月二 六日 付け
)。 この 契約 書に は、 つぎ の趣 旨の 定め がお かれ てい た。
「 援助 は受 取人 の道 徳的 な態 度、 およ び子 たち の良 好な 教育 にか かっ てい る。 受取 人ま たは 就業 能力 を得 た子 たち が自 ら一 家を
─ ─ ド
イ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 四
)( 豊 田
)
(
)
─ ─17 四
六 四 四 六 四
扶 養で きる よう にな った とき は、 援助 は直 ちに 中止 する
。そ れに つい ては
、親 族会 が判 断す る。
」。 一 八七 四年 末か ら一 八 七 六年 末ま で、 援助 金は 支払 われ たが
、一 八七 七年 二月 一五 日、 親族 会は
、X が援 助の 条件 を守 って いな いと の理 由で
、 書 面で 援助 金支 払い の中 止と とも に、 親族 会の 解散 を決 定し た。 ただ し、 親族 会の 構成 員の 一人 は出 席せ ず、 書面 で決 定 に 賛成 し、 もう 一人 は右 決定 に反 対し た。 Xは 親族 会の 四人 の構 成員 Yら に対 して
、滞 納分 の援 助金 の支 払い と将 来に わ た る継 続的 給付 につ いて の拘 束力 のあ る承 認を 裁判 所に 訴求 した
。Y らは 契約 によ る義 務の 引き 受け を争 い、 予備 的に 契 約 の解 約は 親族 会の 随意 に委 ねら れて いる 旨を 主張 した
。 第一 審は
、中 止決 定の 日ま での 扶養 料の 支払 いを Yら に命 じ、 その 余の 請求 を棄 却し た。 第一 審は
、証 書に よる と、 扶 養 料 の継 続的 承 認は
、「 もっ ぱ ら親 族会 の 事前 の中 止 決定 に服
」 し
、 親族 会 は裁 判官 の コン ト ロウ ルを 排 した 自由 な裁 量 に よ って 判断 し なけ れば な らな い、 そ れ によ ると
、「 過去
」 の 扶養 料 分に つい ては
、 義 務者 が 契約 から 解 放さ れる こと は あり えな いが
、「 将来 分」 は、 親 族会 の 決定 の日 から
、 そ の効 力を 生 ずる とし た。 X 控 訴、 控 訴審 は 第一 審判 決を 維 持し たが
、 Xの 上 告に 基づ き ライ ヒ裁 判 所は 原判 決 を破 棄し た。 Xの 抗告 も ある が
(認 容
)、 当 面 のテ ーマ に 関す る上 告 部分 のみ につ いて 以下 に検 討す る。
(
ⅰ)
ライ ヒ裁 判所 は、 援助 金中 止決 定の 法的 意義 につ いて
、控 訴審 が、 その
「継 続的 な認 可は 義務 者の 随意 に委 ねら れて いる
」 と 考え てい る 限り で、 そ れ を誤 りと する X の批 判を 正 当と する
。 判 旨に よる と、
①親 族会 の判 断 は、
「契 約の 精神 およ び文 言」 か らみ て、
「 随意 的な もの
(
w ilk ü rli ch e
)」 であ って はな らず
、む しろ
「 特定 の、 か つ、 客観 的に 特定 し う る要 素」 によ らな けれ ばな らな い。 した がっ て、 契約 の解 約を 基礎 づけ る事 実の 認定 それ 自体 が親 族会 の決 定に 服す る 場 合、 そ の決 定に 対し て
、扶 養 の権 利を 有す る 者(
A lime n ta tio n sb er ec h tig te n
)は
「明 らか に不 公平 で ある
」と し て不 服申
─ ─
<
論 説>
修 道 法 学 三 七 巻 一 号
(
)
─ ─18
四 六 三 四 六 三
立 てを する こと がで きる
。そ の場 合、 右扶 養の 権利 者は
、主 張さ れた 事実 は真 実で ない と証 明す るこ とも あれ ば、 ある い は
、そ の真 実を 前提 にし て、 合理 的か つ公 平な 裁量 によ れば 親族 会の 判断 は正 当化 でき ない と証 明す るこ とも ある
。
②判 旨は
、そ うし た事 情の もと で、 Yが
、契 約を 解約 する 事情 があ ると 単に 陳述 して いる だけ では
、十 分と いえ ない
、 と する
。Y は、 親族 会が
、将 来に 向け た扶 養給 付の 中止 を決 定す るに 至っ た理 由を 実際 に証 明し なけ れば なら ない
、そ し て
、右 決定 自体 を裁 判官 の事 後審 査に 服さ せる
、必 要が ある とき は、 中止 決定 の理 由の 存在 およ び重 大性 に当 たる 事実 つ い て、 証拠 調べ を経 たう えで 裁判 官に 変更 させ るこ とに なる
。こ れら につ いて Xが 証明 責任 を負 うこ とは
、争 いの ある 合 意 によ り形 成さ れた 法律 関係 の性 質か ら導 かれ る、 それ によ ると
、権 利者 の批 判は
、義 務者 は年 金継 続を 条件 づけ る関 係 に つい て、 誠実 かつ 公平 に考 慮し てい ると いう 信頼 を濫 用し てい ない とい う点 にの み向 けら れる こと にな る。 ロー マ法 源 お よ び先 例 の引 用
(
l.2 2§ . 1 Di g .d eR .J .
(
50 , 70
)
; l.3 0p r. Di g .d eo p er .li b .
(
38 , 1
)
; l.7p r. Di g .d ec o tr. emt .
(
18 , 1
)
; l.3 . C o d .d e
d o t. P ro m.
(
5, 11
)
; l.6 .7 7 – 80 Di g .p ro so cio
(
17 , 2
)
. S eu ffe rt , A rc h ivf u r E n ts ch ei d u n g enB d .2 0 Nr .2 18 ; B d .2 6 Nr .1 87 ; B d .3 0
Nr .2 37 ; B d .3 2 Nr .1 18 ; B d .3 3 Nr .1 13 .
)。
(
ⅱ) 判 旨は
、① 一八 七七 年二 月一 五日 付け の親 族会 の中 止決 定を
、明 らか な不 公平 を理 由に 取消 すこ とは
、一 八七 三 年 二 月二 五日 付 けの 証 書が
、「 この 証書 は すべ ての 点 に関 して 不 服申 し立 て はで き ない
」 と定 め てい る事 情 があ った と し て も、 差し 支え ない とす る。 右条 項は
、Y の契 約違 反の 態度 に基 づく 出訴 の許 容性 を、 いか なる 場合 にも 排除 する もの で は ない
。② また Yの 弁護 士は
、控 訴審 判決 は契 約の 中止 は「 義務 者の 随意 に委 ねら れて いる
」と の事 実上 の考 慮に たっ て い ると 主張 して いる が、 判旨 はこ れも 正当 でな いと する
。事 情か ら認 識し うる 関係 者の 意思 によ って
、問 題の 約定 はY の 考 える 意味 で解 釈し なけ れば なら ない とい う趣 旨の 事実 認定 は、 ここ で問 題に なっ てい る点 に関 して
、控 訴審 判決 に含 ま
─ ─ ド
イ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 四
)( 豊 田
)
(
)
─ ─19 四
六 二 四 六 二
れ てい ない
。そ れは
、争 い のあ る条 件(
V o rb eh alt
)は 右の 内容 を有 する とい う「 証書 の文 言
」の みか ら導 かれ てい る
。争 っ てい る当 事 者間 で合 意 が成 立し た場 合 に、 Y の 履行 は、 自 由 思想 や道 徳 的な 拘束 力 では なく
、「 法的 義 務に 基づ いた
」 も ので ある
。し かし
、上 告裁 判所 はそ の法 見解 に拘 束さ れな い。 契約 の解 約要 件の 発生 につ いて の判 断は 親族 会に 属す る旨 の定 めが ない 場合
、裁 判官 のコ ント ロウ ルの 問題 が発 生す る余 地は なく
、む しろ
、一 定の 事象 の発 生と とも に終 了す る他 のあ らゆ る合 意の 場合 と同 様に
、事 象が 発生 した か否 かの みが 調査 され るの であ る。 所定 の要 件が ある とき に、 契約 の中 止に つい ての 判 断は 義務 者に 留保 さ れて いる とい う付 加 条項
(
Z u sa ß
) こそ が、 右 問 題を 契約 関係 のな か に持 ち込 むも の で あり
、そ して 当該 条項 は、 疑わ しい とき は、 義務 者は 公平 な裁 量に 従っ て態 度を とら なけ れば なら ない とい う趣 旨に 解 釈 しな けれ ばな らな いも のな ので ある
。③ 最後 にY は、 義務 の中 止問 題は
、契 約の 内容 およ び存 続と そも そも 分離 する こ と は でき ない と主 張す る が、 判 旨は これ も また 正当 でな いと す る。 問 題の 合意 を 決定 の条 件
(
R es o lu tiv b ed in g u n g
) と み よ うと した 場合
、そ れが 発生 した とき に、 契約 はす べの 効果 とと もに 消滅 する もの では なく
、契 約は 最初 から 締結 され て い なか った とみ なさ れる こと にな ろう
。す なわ ち、 契約 は扶 養給 付の 継続 を考 慮し て中 止さ れる
、他 方で
、す でに 理由 の あ る効 果は 存続 する
。
(
ⅲ) 以 上の よう に判 示し たう えで
、判 旨は
、援 助中 止を 承認 した 一八 七七 年二 月一 五日 付け の親 族会 の決 定は
、総 論 部(
all g eme in
)と 一定 の事 実を 引用 した 理由 づけ 部分 から なる が
、そ の うち 後者 にお ける Xの 財産 状態 から した 理由 づけ は、 裁判 官の 評価 にと って まっ たく 不十 分と 解し た原 判決 の 判断 に賛 成で きる
、と する
。他 方で 判旨 は、 前者 の点 は、 第 一 審で 事後 的に なさ れた 理由 づけ につ いて さら に証 拠調 べを 要す ると して
、事 件を 原審 に差 し戻 した
。
─ ─
<
論 説>
修 道 法 学 三 七 巻 一 号
(
)
─ ─20
四 六 一 四 六 一