rあそびの中で子どもは何をどう考えているか」
…紙ひこうき」であそぶ実践の中から一
茨城大学教育学部附属幼稚園 副園長野 原
教 山柴 田 〃 山 路
〃 羽 生 研究にあたって
幼稚園での子どもは,つねに体を動かして楽しそうに遊んでいる。
これを,ただ外から見れば,
なりに 考え たり くふう したり 試し たり,それから 悩ん 私たちは,この子どもたちの様相を,
役立てたいと考えている。
ここに掲げた事例は,つたない私たちの実践の一端である。
実践例
一紙ひこうきを とばそう一
i.期日 11月12日(土)〜16日(水)
2. 対象 5才児 33名 3.ねらい
できる。
て和純直 る子子子
「楽しそうだ。」で終ってしまうが,細かく見れば,子どもは子ども だりしているのである。
こまかく観察して捉え,幼椎園における子どもたちの指導に
1)紙ひこうきに興味・関心を持ち,いろいろな材質や折り方を工夫して遊ぶことが
2)いろいろな場所で紙ひこうきを飛ばしてみて,その飛び方が,風の向きや力に関 係することや,紙ひこうきの形や材質にも関係めあることに気づく。
4.準備・環境
・興味を持って集ってきた幼児が自由に材料を選んで活動できるように準備しておく。
・材料台に準備した紙は,幼児がふだんから使いなれているものである。
v
和紙 26×36(cm)
色紙 15×15(侃)
5.活動形態
「紙ひこうき」は,11月頃になると幼児の活動の中にごく自然に出てくる遊びである。その時 間をとらえて上記のような材料を準備しておき,興味・関心を持たせ活動に誘っていったもので ある。したがって,時間をきめて一斉にやったのではなく,すき なあそびの中で,興味・関心を 一一 1 39一
持.つた幼児が次々に加わり活動が展開していったものである。
下の表は11月12日出から11,月16日㈱までの4日聞にわた:る個人の活動の記録である。
(表9) (1)
11/12(土)
X:20 9:30 9:40 9:50 10:00 10:10 10=20 10:30 玉0;40 1!/!4(月)
X:00 9:10 9:20 9=30 9:40 9:50
△ のぞく 折るとば蜜 外でとます 折る 外でとばす 諮る 盤ぬり,幅
△ のぞく 折る 中でとばす 外でとばす 折る とばず 折る り とば劉
△ 折る 中でとばす ・艪驕@働り繹墨と塾認腰
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(表亙) (2)
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⑭おる とばす
愚 コき
一一@1 41 一
6.考察
(1) 「紙ひこうき」の遊びの参加率と時間について
・ 1日目は,男児の方が興味関心をはやく持ちはじめ,興味の継続時間も長かった。
・ 2日目は,男女児とも朝からすぐに活動にとりくんでいた。
・・ 3日目は,折り方やとばし方の工夫やためしがみられ,活勤時間が長くなった。
. 4日霞になると,活動の参加率に男女の差がみとめられて,興味の継続時聞もみじかくな り充分に活動し,他活動へ興味関心が移ってきているようすがみとめられた。
男女を比較してみると,やはり,男児の方に強い興味,関心がみられた。これに比べて・
女児の方は,だんだんに上り坂になるような傾向がみられた。
(表II)
第 1 日 目 第 2 日 目 第 3 日 目 第 4 日 目
男 51分 38分 50分 21分
継 続
栫@間 女 37分 39分 47分 13分
男 100% 100% 94% 81%
参加率 女 9墨% 80% 81% 35%
(2)考えたり工夫した点について
・ 知っている折り方で折ったり,友だちに教えてもらった折り方で折ったりしながら飛ばし ているうちに,折り目をきちんと折らないとよく飛ばないことに気づいていた・・
・ 手近かな紙で折って飛ばして遊んでいるうちに,紙質が飛ぶことに影響することに気づい ていた◎
・ 場所を変えたり,飛ばし合ったりしているうちに風との関係に気づいていた。 (表雌)
分類 活動の姿 1開(11月P2臼) 2藏目(14日) 3日目(15日) 婆臼館(16霞)
つ マρい 少し、いている 折り方の
ュふう
・知っている折り方で折る E友だちに教えてもらって折る B新しい折り方を自分で考えて折る
ワり目を揃えて,きちんと折らないと。飛ばないことに気づく
ほんのすこしある師 噺 可 _ − 哨 需 } ㎡_「
@ 魅
紙質に対 オての関
S
・1種類の紙で折る
Eいろいろな紙を使ってためしてみる D(まだ使ったことのない紙を使ってた
゚してみる)
B薄すぎる紙や大きすぎる紙では,うま
@くいかないことに気づく
とばし方 フくふう
。飛んでも飛ばなくても隅じところでと
@ばす
B場所をかえて とばしてみる E風の方向を考えながらとばす E走りながら とばす E何回も何回もとばしてみる E外でとばしてみる E友だちととばし競争をする
Eテープで重りをつけてとばすことに気づく
●■ 一 葡 鞘 一 一 獅 一
旧 断 唱 胴 一 一 } 一
J 一 需 酬 一
罹 幽 } 一 … _ 一 一 } 一 } 一
その他
。色をぬったり模様をつけたりしてとばす
@ 「
E何かにみたてて 名前をつける。 吐
P 闇 一 幽 需 一 齢 一 } } 一 一
ず罵 襯 一 一 ㎝ 一 一 一
一 142 一
(3)材質の選択について
材料台から幼児がどういう意図で紙を選んでいるかについてたずねたものである。
A・・材質と飛び方との関係を考えて選んでいる場合 (男児 19% 女児 6%)
(例)「重くてよく飛ぶと思った。」「かたくて重さがあるからいい。j
B…単によく飛びそうだからと考えて選んでいる場合 (男児 31% 女児 35%)
C…飛ぶこととは無関係に選んでいる場合 (男児 50% 女児 39%)
(例)「すきだから。」 「かっこいいから。」 「青だから。」
・ 男児の方が女児よりも,紙ひこうきをよく飛ばすために考えながら材料を選んでいるようす がみとめられた。
・ 紙はかたくてしっかりしているものの方がよく飛びそうだということについて,数人の幼児 が気づきはじめているようすがみとめられた。
(4>飛び方の条件について
「紙ひこうき」を飛ばしているうちに気づいたことのことばの記録を下のように分類してみ た。
A…飛び方の条件を考えている場合 (男児 56% 女児 29%)
B…現象のみをとらえている場合、 (男児 44% 女児 71%)
・ 男児の方が女児よりも, 「飛び方と形」 「飛び方と風」「飛び方と飛ばし方」の関係につい て考えながら遊んでいるようすがみとめられた。
・ 女児は,なぜそのように飛ぶのかというところまで考えず飛ばしているというようすがみと められた。 (表N)
男1 どんなふうにとぶか 分類 女児 どんなふうにとぶか 分類
△ ぐるぐるまわる。まわんない・もある。ふつ
、の高さでとんだ。 B ⑰ 同じ折り方なのに赤い方がよくとぶ。 B
△ 小さいのは回転してとぶ。大きいのはしゅう
チてとぶ。 A ⑱ かけないと,まっすぐとばないの。低くとん
ナおちぢゃう。 A
△ 空中回転した。穴あけたから。 A ⑲ かけてとばすとくるんとまわったりまっすぐ
ニぶ。・ A
△
まっすぐ下の方にとんで着陸するとき下むい ス。 くるくるまわってうらがえしになる。風
ェ強いから。 A ⑳ 曲ったりする時もあるし,まっすぐにいくと
ォもある。 B
△
鳥が羽でとんでるみたいにまっすぐとんで2
?まわってひっくりかえる。あんまり紙がか
スいのかなあ。 A ⑳ こうでしょ!〜〜ヘ 一→ B
㊧ これ,ぐるつとまわると,よくとぶし,上に
゙けるととぶ。 A
△ 上むけたら高くとんだ。ネッシーの体みたい
ノ丸くとんだ。 A ㊧ まっすぐの時もあるし,まわる時もある。1つ B
△ 上にやるとまつすぐいく。へやの中でやると
痰カところにとんでいくよ A ⑳ 横にとんでおちる。 B
㊧ くるくるまわりながらとんだ。 B
△ まっすぐとんだ。少し風がふいているとき少
オまがった。 B ⑳ とんでおりる時,さかさになっておりる。 B
△ あんまりよくとばない。すぐおっこつちゃう。 B ⑳ まっすぐの時もあるし→ 山にもなるし!㍉
ハのは\ A
△ はじめ空中回転してまたとんだ。とまってと
だ。ゆっくりとんだ。 B
鰺 まっすぐにいって下へおちる。 B
△ ピラピラとんだ。ひこうきがおちるとピラピ
奄ウっとおちる。 B ㊧ 上にしたら下におりる。下にしたら上にいく。 B
ひこうきがついらくする時。、おちる。又ぐ
箏 遠くまでいった。 (ままごとのところまで) B 血 るぐるまわってついらくする。 B ⑳・ まわる。つ まっすぐいく一・ B
⑫ あんまりとばない。 B
畠 背の高さでとんでついらくする蒔下ってきて
ソょっととんでおりる。背中が重い。 A ⑳ 1回まわる。 /〆う B
血 ふわっととんだ。 B
& くるくるまわってとんだ。 B
盒 風が強かったからまつすぐとんで,おりた時
コむいた。 A
一143一
⑤ 形の種類について
・ 幼児が作った紙ひこうきの形を分類してみると,下図のように○□△の3原型に分類でき,
その変化したものを加えると16の形がみられた。
・ ①の形は,折り方が簡単であり,又よく飛ぶので作る幼児が多く,日が経つにつれて変形さ せていき種類も多くなってきていた。
e 女児が特によく作っていたのは,霞型のツバメひこうきである。これに目を書き人形のよう にして遊ぶようすがみられ,女児は形から遊びに入っていく傾向がみとめられた。
・ 形は偶然にでき上ったものもあるようだが,どれも対称的に作りあげていくようすがみられ,
バランスや重心を前方に置くなどの点について無意識のうちに認識していると思われる。
(図1)
形
占目 護目 畠目 凸目 形囁 凸目 昌目 一目 昌目
形
四目 四目 置目 昌爵
①
男1.女8
14
秩@ 鳳 備
V
117
6一 隔5⑥
〆 ⁝1 }一 … 購一 麟
⑪ 一一
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一 一 2−1
馴
○型は先がとがっていてスピードの出るとび方をする。口型は折りこみが複雑で鳥のような形 で小さい。△型は羽が広く耐空時間が長い。
一144一
ま とめ
以上「紙ひこうきで遊ぶ」なかで,状態をとらえてきたが,次のような点が考察された。
(1)男・女差について
男・女の興味関心の盛り上りは「遊びの参加率と継続時間について」にあらわれている。第1日園 9時40分までに男児は16人中2人を除いて全員が参加しているが,女児は16人中,6人の参加であ る。女児はこの年令になるとひこうきとばしは男児の遊びという観念が強いためと,このような科 学的思考を必要とする遊びに,とり.〈み方にちがいがあるのだろう。
そこで,全く関心をむけなかった女児が友達に教わりながら,その過程でいろいろな事に気付いた り,想像したりして,次第に楽しく活動をするようになった例を,ことばの記録をとおして提示し たい。
⑳・何考えようかな,どうしょうかな。(2日目はじめてやってみようという気がおこる。)
・私は○○君のと同じひこうきにしよう。(模倣をする)
・これとぶかなあs■こんなに小ちゃいんだよ。だめだ。(不安,落胆)
⑳・持ってきてごらん,はじめ折り目っけて,ひろげて,これ折り目だよ。
⑳・両方同じなの,ちょっとここがむつかしいんだよね,わかんなくなつちゃった。(努力する)
⑳・この手あかすの,そしたらここ折っ:て,合わなきゃだめだよ。
⑳・何で合わないのかな。(形のちがいに気づく)
・ウワ,ツバメひこうき,でき上り。ツバメさんが立っています。(飛ばす事より形に興味をも つ)
・先生,みてて,みてて,ほらすごいでしょう。(喜び)
(2) くふうしている状態について
遊びのなかで子どもは材質をくふうしたり,形をくふうしながら,飛ばしているうちにとばす方法 を考え始めたりしてくるが,くふうの状態には実にさまざまな姿がみられた。
1)形6? 一一一定にして材質を変化させている。
△男児 形 色画用紙(青・竹色) △男児
① 白画用紙 西洋紙
この紙好きだなあ
ぐるぐる廻ってよく飛ぶよ
形① 色画用紙(青・竹色)コンピューター用紙
白画用紙 西洋紙C大・小)
色紙
〉たくて重さが あるから,この
践,選んだんだ
⑳女児
2)いろ
形 色画用紙
② 西洋紙 色紙
わら紙
ろいうな形をつくりためす 麺 和紙
② 色画用紙
⑥ 圖
まっすぐな時もあるし一一→(手で示す)
イ〈:\二1∴
一145一
⑳女児
1日目
形①②⑩⑫
色画用紙 色紙
白画用紙 ri2日目
形圃⑦ 色画用紙
色紙 西洋紙
コンピューター紙
形国
3日目
西洋紙
Rンピューター紙 墲邇
色紙の ・・
よくとぶ
の
rNv/rp
3)材質・折り方・一定でとばし方のくふうをする。
形① 色画用紙 ・競争しよう,この線からだよ。ぼくのはコンコルドだ。
・・ 魔チてとばそう。・松の木にひっかかっちゃったあ
・おもりがついているからよく飛ぶんだよ。合体しよう。
ことばの記録より(△男児のつぶやき)
・かたい紙じゃないと重くなんないよ
・やわらかい紙だとね,あんまり早くとべないの,急降下みたいじゃなくてゆっくりとぶの,
・固い紙だと早くとぶの
・ぼくのはあんまりょくとばないけど,空中でドリル回転するんだ。
幼稚園という集団の中では,友だちの影響が大きい,互にモデリングしあいながら,刺激を受け,,
更に考えが広まったり,深まったりしていく事がうかがわれる。ひとりひとりの観察を密にして,個 に応じた適切な引き出し方を心がけたい。
一146一