感染と防御・第9回
代表的なウイルス感染症-1
ウイルス感染症の例として、インフルエ ンザについて解説する。
インフルエンザの症状
インフルエンザは急性の呼吸器疾患で、発熱・
頭痛・倦怠感・筋肉痛・関節痛といった全身症 状を伴う。
一般には、頭痛、悪寒、咳などの症状が急に始 まり、その後高熱を発する。
しばしば大流行する季節性の感染症
インフルエンザ(Influenza)
インフルエンザはインフルエンザウイルスを病 原体とする急性の呼吸器疾患。
インフルエンザ菌と間違えないでね!
(Haemophilusinfluenzae)
インフルエンザウイルスの標的細胞 インフルエンザウイルスは、主に気道の上皮細 胞に感染する。
呼吸に伴い、鼻や口から気道に入る
インフルエンザウイルス
インフルエンザウイルスには、3つの型(A,
B,C)がある。流行的な広がりを見せるのは A型とB型。
A型インフルエンザウイルス A型インフルエンザウイルスは、哺乳類や鳥類 に感染する。
A型インフルエンザの起源
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水禽(カモ、ガンなど)のA型インフルエンザ ウイルスが変異して、他の鳥類や哺乳類に感染 するようになったと考えられている。
自然宿主である水禽に対しては、ほとんど病原 性を示しません。
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本来の宿主は水禽と考えられている
水禽:ガン、カモの仲間
2008~09年に流行したインフルエンザ 2008~2009年にヒトで流行したインフルエンザ は、A香港型(H3N2)、Aソ連型(H1N1)、新型イン フルエンザ(A/H1N1)、及びB型である。
2010~11年シーズン以降
2010~2011シーズン以降、ヒトで流行したイン フルエンザは、A香港型(H3N2)、新型インフルエ ンザ(A/H1N1)、及びB型である。
新型(A/H1N1)の流行でAソ連型(H1N1)が絶滅
インフルエンザウイルスと宿主生物 の分子生物学Part-1
ウイルス構成因子の特徴と役割
インフルエンザウイルスの構造
HA(ヘマグルチニン) NA(ノイラミニダーゼ) 脂質二重膜
M1タンパク質
M2タンパク質
分節RNAゲノム
インフルエンザウイルスの構造 A型インフルエンザウイルスの遺伝物質は、RNA である。
A型とB型は8分節、C型は7分節
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A型インフルエンザウイルスは、表面タンパク 質(ヘマグルチニンとノイラミニダーゼ)の抗 原性の違いにより亜型に分類される。
A型インフルエンザウイルスの亜型
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A型インフルエンザウイルスには、HAとNA の組み合わせにより理論上144種類の亜型が 存在するが、ヒトに感染しうる亜型はごく一部 である。
16X9=144
HA(16種類) NA(9種類) H1~H16 N1~N9
インフルエンザウイルスの構造
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A型インフルエンザウイルスは、宿主細胞由来 の脂質二重膜と、ウイルス糖タンパク質からな るエンベロープで包まれている。
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A型インフルエンザウイルスのエンベロープは、
M1タンパク質によって裏打ちされている。
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A型インフルエンザウイルスのエンベロープに は、少量のM2タンパク質が貫通している。
HAの役割
HAは、宿主細胞の受容体(細胞膜に存在する糖 タンパク質のシアル酸)を認識する。
受容体=Receptor
NAの役割
NA(ノイラミニダーゼ)は、HAと受容体(シアル酸 残基)の結合を切断する酵素である。
NAの役割
NAは、シアル酸とHAの結合を切断することによ り、新たに合成されたウイルス粒子を細胞から 遊離させる(未感染細胞への感染を促す)。
シアル酸とHAが結合した状態では、子ウイルス の放出が阻害される
NAは、子ウイルスの遊離を促進する
インフルエンザウイルスと宿主生物 の分子生物学Part-2
インフルエンザウイルスの 進化と多様性
(季節性インフルエンザと新型インフルエンザ)
インフルエンザウイルスの多様性
インフルエンザウイルスの遺伝物質はRNAであり、
変異株が生じやすい。
ウイルス抗原の変異
遺伝子に変異が生じることで、抗原性が変化す る(表面抗原タンパク質の立体構造が変化する)。
何度もインフルエンザに感染する理由 表面抗原が変化したインフルエンザウイルスに は、獲得免疫(抗体)が作用しにくい。
新型ウイルスに対する免疫
数十年に一度登場する新型ウイルスには、従来 型ウイルスに対する抗体がほとんど作用しない。
HAが類似性するため、いくら か抗体が作用する。
HAが異なるため抗体が作用し ない。
新型ウイルス
従来型の
変異ウイルス
インフルエンザのパンデミック 新型インフルエンザウイルスが出現すると、世 界的大流行(パンデミック)が起きる。
20~21世紀に起きたインフルエンザのパンデミック 1918年 スペイン風邪 H1N1 1957年 アジア風邪 H2N2 1968年 香港風邪 H3N2 1977年 ソ連風邪 H1N1 2009年 新型A/H1N1 H1N1
新型(A/H1N1)によるパンデミック 2008~2009年シーズンに発生した新型インフル エンザ(A/H1N1)は、世界流行に発展した。
メキシコ周辺で発生したと考えられている
新型インフルエンザウイルス(A/H1N1)
毎年流行していたAソ連型とは別のウイルス Aソ連型ウイルス(H1N1)と新型A/H1N1ウイルスは、
亜型が同一でも起源が異なり、遺伝子も異なっ ている。
新型インフルエンザウイルス(A/H1N1)
両者の抗原性は、ほとんど一致し ない(Aソ連型ウイルスとの交差免 疫が期待できない)。
新型A/H1N1
ウイルス
Aソ連型
A/H1N1ウイルス
新型A/H1N1ウイルスの遺伝的特徴 トリおよびヒトのインフルエンザウイルスを起 源とするブタインフルエンザウイルスが、世界 各地に存在している。
新型A/H1N1ウイルスの遺伝的特徴 新型A/H1N1ウイルスのゲノムは、トリ、ブタ、
ヒトのインフルエンザウイルスが持つ遺伝子が 混ざり合ってできている。
ハイブリッド・ウイルス
ブタの上部気道細胞には、ヒトとトリの両方の ウイルスに対する受容体分子があり、両方のウ イルスがブタに混合感染した場合、遺伝子交雑 したハイブリッドウイルスが作り出される。
ヒトの細胞 ブタの細胞 トリの細胞
ヒトのウイルス トリのウイルス
受容体 受容体
新型インフルエンザに対する警戒 2009年に新型A/H1N1ウイルスが発生したように、
将来、他の新型インフルエンザが発生する可能 性は十分ある。
鳥インフルエンザ
普通の 鳥インフルエンザウイルス
高病原性 鳥インフルエンザウイルス 鳥のA型インフルエンザウイルス
病原性が極めて強い鳥インフルエンザウイルス が存在する
高病原性鳥インフルエンザ
高病原性鳥インフルエンザウイルスは、家禽(か きん)に大きな被害を及ぼす。
鳥インフルエンザの発生状況
鳥インフルエンザは渡鳥により伝播されるため、
世界的に被害(野鳥&家禽)が広がっている。
今後、感染爆発の危険性がある。
鳥インフルエンザ
発生年 ウイルス亜型 発生地域 死亡者数 1997年 高病原性H5N1 香港 6名 1999年 H9N2 香港 0名 2003年 高病原性H7N7 オランダ 若干名 2003年~ 高病原性H5N1 東アジア諸国 100名以上
2013年 H7N9 中国 100名以上
鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染し、強
毒性を示した事例が報告されている。
新型インフルエンザウイルス 高病原性鳥インフルエンザウイルスがヒトから ヒトへ効率よく伝播するようになると(新型ウイ ルスの発生)、パンデミックの可能性がある。
注:現在、鳥インフルエンザは感染症予防法の四類に、
インフルエンザは五類に分類されている。
インフルエンザの疫学͒
Part-1
感染経路・症状・治療
インフルエンザの感染経路
ウイルス粒子は咳やくしゃみをしたときに唾液 などの飛沫に混じって放出され、他者の気道に 感染する(飛沫感染&飛沫核感染)。
抗インフルエンザウイルス薬 国内で臨床使用されている抗インフルエンザ治 療薬として、アマンタジン、ザナミビル、オセ ルタミビルなどがある。
抗インフルエンザウイルス薬
一般名 商品名 作用機序
アマンタジン シンメトレル
*A型インフル&パーキンソン
M2阻害 リマンタジン フルマジン?
*国内未承認